SSのネタを書くから誰か書いてくれないか
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主人公は梨子
ある日ダイヤから紅葉狩りに行きませんか?と言われ山奥に紅葉を見に行くがその日から周囲で不可思議な事が起こり始める 梨子「お腹空いたわ」
梨子「もうお昼か。なに食べようかしら?」ピロン
梨子「あ、花丸ちゃんから返信来てる」
国木田花丸:どうしたんですか?急に?
国木田花丸:松ヶ山って病院の裏の山のことですよね?
梨子「(花丸ちゃん、なんかおかしいな)」
梨子「返信しとこ」
りこ:そうだけど、どうしたの?
りこ:これからの事で相談したい事があるから、明日会えるかな?
梨子「あ、既読ついた」
国木田花丸:いいですけど、これからの事ってなんですか?
梨子「ん?花丸ちゃん、どうしちゃったのかしら?」 りこ:幽霊とか、松ヶ山についてだけど覚えてない?
りこ:忘れちゃった?
梨子「(流石にこれ言えばわかるわよね...)」
そのあと、既読は付いたが返信は返ってくる事はなかった。
梨子「きっと練習が忙しいのよ」
梨子「午後はなにしようかしら?」
梨子「いくつかデモテープでも作っておこっかな...」
________
_____
___ 〜次の日〜
梨子「こんにちは〜」
梨子「花丸ちゃんいる〜?」
花丸「...こんにちは、梨子さん」
梨子「どうしたの、そんな暗い顔して」
花丸「梨子さんは、オラの事、どこまで知ってるんですか...?」
梨子「どういう事..?」
花丸「幽霊の事、どこまで知ってるんですか?」
梨子「...え?」
梨子「だってこの前花丸ちゃんから話してくれたじゃない」
花丸「へ...?」
梨子「ほら、黒猫の事とか、今後ろについてきてるよ?」
花丸「どうしてそんな事まで...」
梨子「花丸ちゃん、どうしちゃったの?」 梨子は花丸に色々と事情を説明する。
これまでの経緯、追っている怪異、そして黒澤家の事。
しかし、花丸は初めて聞くような顔をして聞き入っていた。むしろ困惑している。
梨子「って言う事なんだけど、どう?思い出した?」
花丸「いえ...何も...」
梨子「そっか...」
梨子「(この感じ、確かルビィちゃんも同じようになってた。もしかして、ルビィちゃんと同じ原因で記憶がなくなってしまったのかしら...)」
梨子「(でももしそうなら、記憶を消したのは誰?)」
梨子「(黒澤家の人が消したなら、身内の記憶を消すメリットは何?口を滑らせないため..?)」
梨子「(この事は花丸ちゃんに知らせない方がいいかも)」
梨子「(こうなったら、全部自分で調べるしかない...)」
梨子「ところで、花丸ちゃん、いつも新聞とか調べてたって言ってたけど、その場所ってどこ?」
花丸「それならこっちずら」テクテク 花丸「確かこっちに...あったあった」
花丸「ん?付箋が所々貼ってある。みんなの共有物なのにこんな事するのは誰ずら?」
花丸「はい梨子さんどーぞ。おらはこの付箋剥がしていくずら」
梨子「ありがとう。借りてきたい資料かどうか確認させて」パラパラ
付箋が付いているページで手が止まった。
この文字には見覚えがある。
隣の花丸を横目で確認すると、花丸は凍り付いていた。
花丸「...何これ」
花丸「まる、こんな所に付箋貼った覚えないし、こんな手紙挟んだ記憶もないのに...」
梨子「やっぱりこれ、花丸ちゃんの字、よね...」
記憶を失う前の花丸は、新聞の隙間に例の山や黒澤家についての資料をまとめていたらしい。
花丸は他人から見ても分かる様に動揺していた。
花丸「おら、やっぱり」
記憶が抜けているという事実をようやく受け入れた様だ。 花丸「梨子さん、記憶が無いって言ってたのは本当だったんだね」
花丸「さっき言ってた、山とか怪異についてまとめてあるみたい」
花丸「今のおらは記憶がないから、すべてを理解出来ないけど、このメモとかを辿ってけば、求めている真実に到達できるんじゃないかな?」
梨子「....そうかもしれないわ」
気づけば2人とも霧中になって資料を漁っていた。
断片的ではあるが、ある共通点に気づく。
梨子「(あの山では数年に一度、行方位不明者が出てる)」
梨子「(その翌年か翌々年は必ず、黒澤家に男児が生まれている)」
梨子「(黒澤家は地方紙に掲載されるぐらい有名なのね...)」
梨子「(あの山に捧げられてるものって、もしかして人間..?)」
梨子は想像する。そういえば、カルト的な物に人間を捧げているから行方不明者が見つからないという噂もあった。
梨子「(だとしたら、今生きているのはなぜ?ダイヤさんは何を捧げたの...?)」
悶々としながら資料を漁る。
突然、携帯の着信音が鳴った。 スマホを確認する。ルビィからだ。
ルビィ:お姉ちゃん、調子良くなったので、面会大丈夫になりました。
ルビィ:あと、腫瘍摘出為に手術をするそうです。
ルビィ:リハビリも含めて、1ヶ月は安静にと言われたので、その次のライブも無理そうです。
梨子「大変そうね...」
花丸「ダイヤさん、大丈夫なのかなぁ...」
すぐさま、全体ラインにも連絡が入る。
果南:お見舞い行っても大丈夫って事だよね?
ルビィ:そうです
ルビィ:あ、近々手術するみたいなので、早めに来た方がいいです。
マリー:沼津の市民病院よね?
ルビィ:はい
マリー:今日、夜に行くわ。伝えておいてもらえるかしら?
ルビィ:わかりました
千歌:明日の練習、休みにしてダイヤさんのお見舞い行かない?
曜:賛成
_______
____
__
一同賛成した様だ。明日はダイヤのお見舞いに行く事に決まった。
梨子「(ダイヤさんには聞きたい事が沢山ある)」
梨子「(ルビィちゃんは知らない、いや記憶を失くした様だったし、多分聞いてもわからない)」
梨子「(でも、この件に関して、簡単に喋ってくれるのかしら...?)」 キーンコーンカーンコーン
梨子「あっ、もうこんな時間」
花丸「ちょっと資料引っ張り出しすぎちゃった。早く片付けないと」アセアセ
花丸「ふぅ...なんとか収まった。じゃあ教室に戻ろうか」
梨子「花丸ちゃん、ありがとうね」
花丸「不思議な話だったけど、本当だったみたい。じゃあね梨子さん、また明日」
_______
____
__ 千歌「はぁー今日も授業終わった〜」
曜「数学小テストあるって言ってたね。全然わからないんだけどどうしよう」ジー
梨子「もう、しょうがないわね。明日でいいかしら?」
曜「やったぁ!梨子ちゃんまじ天使」
千歌「ほんと!?ありがとう!」
千歌「おっとっと、こんな時間だ。早く練習行かなきゃ」
曜「じゃあ梨子ちゃんまた明日!」パタパタ
梨子「ええ、また明日」
梨子「(2人とも元気ね...)」
梨子「(今日は図書館寄らないでそのまま帰りましょ)」
梨子「(家に帰ってもやる事ないから、久々に歩いて帰ろうかな...)」テクテク
校門を抜けて、坂を下り街道に出る。
家に着くまでおそらく30分も有れば十分だ。
梨子「(海の音が今日も綺麗ね)」
梨子「(寒いからかしら?海の方から霧が迫ってきてる...)」
梨子が気付いてから5分も経たないうちに、視界は濃い霧で閉ざされた。 梨子「全く前が見えないわ...」
梨子「道こっちであってるわよね?」
10m先も見えないぐらいの濃さだ。かろうじて音で車が近づいてきているのがわかる。
梨子「危ないなぁ」
梨子「車運転する人も大変そうね」
梨子「確かここらへん曲がれば」
梨子「よし、こっちであってる」
梨子「あともうちょっとで家に着く」
梨子「ただいま〜」
梨子「閉まってる。今日はお母さんいないのね」ガチャガチャ
そのまま二階に上がり、自分の部屋に着く。
制服を脱ぎながら梨子は外を眺めた。
段々と濃い霧が晴れていく。それも驚異的なスピードで。
梨子「(山から風でも吹いてきてるのかな?)」
梨子「(さっきは凪の時間だったから、あんな霧が出たのかしら?)」 梨子「それにしても今日はおかしな事だらけだったわ」
梨子「まさか花丸ちゃんがあんな事になるなんて...」
梨子「(状況を整理しなきゃ...)」
梨子「はじめに、黒澤家は男児を得る為に秘儀を行なっている」カキカキ
梨子「その秘儀は、江戸時代に絶えたが、現代に蘇った」
梨子「おそらく人の命を捧げている」
梨子「次に、私はそれに巻き込まれた」
梨子「でも私はまだ生きている」
梨子「最後に、ルビィちゃんは秘儀についての記憶を失っている様だ」
梨子「花丸ちゃんも同様に記憶を失った」
梨子「もう一つの疑問。どうしてダイヤさんは私を選んだの...」
梨子「よそ者だから?」ガチャ
母「ただいま〜」
梨子「あっ、お母さん帰ってきた。お帰り〜」
いくら悩んでも答えは出なかった。たとえ出たとしてもそれが正しいと言う証拠はどこにもない。 梨子「明日また図書館に行けば何かあるかもしれない」
梨子「ご飯も宿題も済ませたし、もう寝ましょう」
....夢を見た。
ダイヤさんと紅葉狩りに行く夢だ。
もうあれから1ヶ月とちょっと経っただろうか。
あの時の記憶と同じ様に、道を間違えてルートを変更し、滝壺へ向かう。
崖の様な斜面を、ダイヤさんは飛ぶ様に降りてゆく。
私は置いていかれるのが嫌で精一杯ついていこうとした。
突然景色が開け、滝壺と紅葉の老木が目に入る。
しばらく見惚れていたが、ダイヤさんがいない事に気付いた。
どうやら木の影に隠れているつもりみたい。
私はダイヤさんに近づく。
でも木の影にはいなかった。
突然誰かが私の背中を押す。
一瞬だけ、見えた。私の背中を押したのはダイヤさんだった。
私はそのまま滝壺に落ちていった。 梨子「...はっ!?」
梨子「嫌な夢を見たわ...妙にリアルな夢ね。でもちょっと記憶と違う様な...」
梨子「(突き落とされた時の浮遊感もまだ体に残ってる)」
梨子「(気持ち悪い)」
梨子「今は7時前...」
気持ち悪さを体に残したまま支度をする。
午前中の授業はそのせいで身が入らなかった。
軽く昼食を済まし、今日も図書館へ向かう。
梨子「こんにちは〜」
モブ「こんにちは」
梨子「(今日は花丸ちゃんじゃないんだ...)」
梨子は早速新聞置き場に向かう。
梨子「よし!今日もやるわよ」
梨子「....?あれ?」 梨子「付箋がなくなってる...どうして?」
梨子「花丸ちゃんが取ったってわけじゃ無さそうだし...」
梨子「先生もこの資料は触れないみたいだったのに急にどうして?」
梨子「でも、日付覚えてるから大丈夫よね」
そう言って梨子は新聞を手に取る。
昨日読みかけだった新聞を日付を頼りに探す。
確かあの山で行方不明が出たとかそんな記事だった。
梨子「....」ペラペラ
梨子「....」ペラペラ
梨子「....」ペラペラ
梨子「あれ?どこにもない...」
梨子「おっかしいなぁ、日付ちゃんと覚えてたのに...」
別の新聞を手に取り、記事を探す。
今度の新聞は記事の場所まで覚えていたから間違えないはずだ。
梨子「....」
梨子「.....嘘、なにこれ...」 そこには行方不明者の呼びかけの記事が載っていた筈だ。
だが、初めからなにも書かれていなかった様に空白だった。
梨子「どうして...?」
慌てて他の記事も確認する。同様に空白、又は別の記事に書き換わっていた。
梨子「どう言う事なの...」
梨子「誰かの悪戯じゃないわよね..」
梨子「もしかして、これも怪異なの?」
キーンコーンカーンコーン
梨子「予鈴...戻らなきゃ」
悶々としながら授業を受ける。
もはや授業の内容など頭に入ってこない。 ちょっとこの後の展開が思いつかないので明日書きます。
あともうちょっとで終わります。 キーンコーンカーンコーン
教師「それでは今日の授業はここまで」
曜「はぁーようやく終わった」
千歌「今日はダイヤさんのお見舞い行く日だね」
梨子「ええ、そうね」
千歌「バスの時間もあるから、一回集まってからにしよっか」
曜「さんせー」
千歌「じゃあ部室にレッツゴー」
スタスタ 千歌がラインに連絡を入れる。
しばらくすると皆部室に集まってくる。
その中でルビィは少し安堵したような、それでも不安の残る表情をしていた。
善子「ルビィ、あんた大丈夫?」
ルビィ「大丈夫だよ。ただ、お姉ちゃん、今日も起きてるかなって」
善子「それってそういう事?」
ルビィ「目覚めはしたんだけどね、最近寝てることが多いみたいなの。薬もきちんとしたの飲んでるし、検査もしてどこにも異常はないらしいんだけど...」
ルビィ「無理に起こすのも悪いから、どうしようもないんだけど」
鞠莉「そうだったのね。私が昨日様子見に行った時も寝てたわ」
善子「早く良くなるといいわね、ダイヤ」
ルビィ「ありがとう」
しばらく談笑した後、バスに乗り込む。
会話は弾まない。
次のライブどうしようか、などと話し始めても、二言三言で終わってしまう。そんな気まずい雰囲気の中、病院に着いた。 ルビィ「こっちです」
ルビィの後をついていく。
綺麗な、小ぢんまりとした個室についた。
ルビィ「コンコン、お姉ちゃん、入るね〜」
返事はなかった。
ルビィ「あはは、今日も寝ちゃってるみたいです」
果南「病気してるんだから当然だよ。今は寝かせておいてあげよう」
鞠莉「ダイヤ、寝てる姿もso cuteね。いつも働きすぎなのよ。休んだっていいじゃない」
ルビィ「ごめんなさい。せっかく来てもらったのに、こんなんで」
千歌「ううん、大丈夫だよ。ルビィちゃん、困ったことがあったら何でも言って。私たちはいつでも助けになるから」
ルビィ「ありがとうございます」
結局、そのまま解散となった。
果南と鞠莉はしたの購買で買った花と置き手紙を残す。 スマホ「ピロン」
梨子「ん?」
梨子「あ、お母さんからだ」
母:悪いけど、スーパー寄って醤油と油買ってきてくれない?
梨子「はぁ、全くもうしょうがないわね」
梨子「いいよっと」
千歌「どうしたの?」
梨子「お母さんからね、お使い頼まれちゃって」
梨子「ごめんなさい、ちょっと一緒には帰れないわ」
千歌「そっか残念」
梨子「じゃあね、また明日」
千歌「また明日!」 もう少しで日が落ちる。
あたりは少し暗くなってきた。
それと同じ頃から、あたりが白くなっていく。
梨子「(何かしらこれ)」
梨子「(...霧?)」
梨子「(最近霧が多いわね。寒暖差が激しいからかしら?)」
黄昏時を迎える頃には、あたりは白く包まれ、ネオンの光がぼんやりと輝く。
梨子「(最終バスの時間までまだまだ十分余裕があるわね)」
梨子「(さてと、早く用事を済ませちゃいましょう)」
適当にそこら辺のスーパーに入って目的のものを買う。
スーパーから出た後も霧は濃いままだった。
梨子「(これじゃ前が見えないわ)」
バス停を探し出すのに苦労した。
しかし街の人々は、霧など関係なしにスタスタと歩いている。
梨子「(やっぱり地元の人は慣れてるのかなぁ)」プワン
梨子「(あ、バスだ。乗らなきゃ)」
バスは霧の中を進む。 梨子「ただいま〜」
家に帰る頃には霧は薄くなっていた。
そのおかげで迷わずに家までたどり着けた。
母「お帰りなさい、色々とありがとね」
梨子「どういたしまして。はいこれ」
夕飯を済ませる。
田舎は都会に比べて、物が買える場所が少ないとかなんだとか話してその日は床に着く。
梨子「今日はダイヤさんに会えなかったな」
梨子「いつか会って話ができる日が来るのかな」
梨子「はぁ。寝よ」パチン 〜次の日〜
千歌「梨子ちゃんおっはよう〜」
梨子「千歌ちゃんおはよう」
今日もバス停で待ち合わせをする。
しかし梨子の顔は少し浮かない顔をしていた。
梨子「(今日もあの幽霊の男が乗ってるバスに乗らないといけないのか...)」
千歌「最近梨子ちゃんバス乗ってるとき顔色悪いよね?どうしたの?」
梨子「なんでもないわ。それよりバス、きたわよ」プワン
曜「おはよーソロー!」
千歌「おはよーソロー!」
梨子「おはよう」
そう言いながら梨子はあたりを見回す。
一番奥の席にいるはずの、虚な目をした男の幽霊は今日はいない。 梨子「(今日のバスは違うバスなのかしら?)」
梨子「(なにはともあれ朝から変なものを見ずに済んだわ)」
学校に着く。
門を抜け、靴箱をあけた。
いつもならこの辺りから黒猫の姿が見える筈だ。
梨子「(あれ?今日は来ないのかしら...?)」
少し不思議に思いながら授業を受ける。
最近は黒猫が近くにいる事に安心感を覚えていたせいで居ないという現実に少しソワソワし始めた。
梨子「(何かあったのかな?)」
梨子「(もう結構な時間が経つけど、まだ来ないのね)」
キーンコーンカーンコーン
梨子「んー授業疲れた〜」ピロン
梨子「ん?何かしら?」 母:ごめん、用事頼んでいい?
梨子「何かしら..なにっと」
母:お使いなんだけど、田中さんから道具をもらってきて欲しい
りこ:いつ?
母:できれば今日中に。貸してた道具が必要になって。でも取りにいく暇がないからお願いできる?
りこ:いいよ。学校終わったら田中さんのところ行くね
梨子「病院か...」
梨子「(運が良かったらダイヤさんに会えるかも)」
そう思いながら授業を受け、気づけば昼だ。
今日も資料を漁りに行く。
梨子「こんにちは〜」
花丸「こんにちは梨子さん」
梨子「今日も1人?」
花丸「今日は1人じゃないよ。黒猫ちゃんがきてるよ」
梨子「え?どこ?」
花丸「机の上、見えない?」
そう言って花丸は顔の前に狐の窓を作る。
花丸「ほら、真ん中の机の上」
梨子「?」
梨子は何度も目を凝らすが猫の姿は見えなかった。 梨子「あ、そうね、可愛いわね」
逆に見えない事に動揺した。
梨子「あ、花丸ちゃん、新聞の置いてある資料室なんだけど、そこに入ったり、資料いじったりした?」
動揺を隠しきれないので、他の話を振る。
花丸「オラは資料室に入った事“一度も”ないずらよ」
その言葉に違和感を覚える。
梨子「(この前みたく記憶が飛んでいる..?)」
梨子「(やっぱり最近なにかおかしい)」
梨子「資料室使ってもいいかしら?」
花丸「別にいいけど、そんな所誰も使わないのに珍しいずら」
梨子は資料室に入って行った。
新聞を漁る。花丸のメモも、新聞の記事も、初めからそこになにもなかったかのようになっていた。
梨子「おかしい。どうして?」
梨子「花丸ちゃんはおそらく、完全にあの山と追っている怪異、黒澤家の記憶を失っている」
梨子「それと同時にあの山に関する記録が消えた」
梨子「そして私は怪異を見えなくなってきている」
梨子「(本当に怪異が見えなくなってるのか、鐘が鳴る前に確かめないと)」
梨子「失礼しました。花丸ちゃん、お疲れ様」
花丸「お疲れ様ずら」 梨子はとある教室に向かって歩いていた。
“見える”ことを告白したとき花丸に連れてこられた教室。
埃臭くて、荷物が乱雑に置かれて、カーテンの隙間から差し込む光が不気味さを加速させている。
梨子「....」ガラガラ
梨子「(確かこの真ん中に)」
梨子「....」
梨子「........」
梨子「(なにも見えないわね)」
なんとなく、梨子は顔の前で狐の窓を作った。
梨子「きゃっ!?」
男の顔が目の前にあった。
即座に狐の窓をほどき、後ろに後退りする。
梨子「(完全に見えなくなったわけじゃなくて、力が弱まってるって事なのかな..)」
梨子「(とりあえず、教室戻ろう...)」
それから放課後まではあっという間だった。
ダイヤのことを考え、心がふわふわしていた事も原因だろう。
2人と別れ、病院へ向かう。 田中「ありがとね〜」
梨子「いえいえ、それでは失礼します」ニコ
別れを告げ、田中さんの病室を後にした。
梨子「(さて、どうしましょう...)」
時間を確認する。まだ面会時間に余裕はある。
梨子「(行って、居なかったらまた明日。とりあえず行ってみよう)」スタスタ
病棟を跨ぎ、昨日訪れたあの病室へと向かう。
708号室:黒澤ダイヤ
梨子「(来ちゃった)」
梨子「(アポイントもなしに来てしまったけど、大丈夫かしら...)」
ノックをするためにドアに手を伸ばす。それまでの瞬間がとても長く感じた。
ドア「コンコン」
「はい、何方でしょう?」 梨子「(良かった。起きてたみたい)」
梨子「私です。梨子です。たまたま病院に寄ったのでお見舞いに来ました。突然にすみません」ガラガラ
ダイヤ「ああ、梨子さんでしたか。お待ちしていましたよ。近々いらっしゃると思ってました」
ダイヤは本を読んでいる様であった。
紺色の病衣は儚げなダイヤの姿を更に引き立て、その場の空気に飲み込まれ、当初の目的なんて忘れてしまいそうだった。
きっと彼女の美しさに惚れているからだ。女同士なのに。
梨子「あ、あの体調大丈夫ですか?」
無難な、こんな言葉しか出ない。勇気を振り絞って本題に入らないと。
ダイヤ「ええ、大丈夫ですわ。昨日皆さんでお見舞いに来てくださった様ですが、相手が出来ずごめんなさい。」
梨子「い、いえ大丈夫ですよ。ダイヤさんの無事な姿が見れて良かったです」
「...」
「...」
次の言葉が思い浮かばず、お互い口を噤んでしまった。 ダイヤ「梨子さん」
そう言われてハッと気がつく。ダイヤは妖美なそれでもなお、聖母の様に似合いに満ちた笑みをこちらに向けた。
ダイヤ「おそらく梨子さんがここに来たのは、何か不思議な物が見えたり、体験しているからではありませんか?」
梨子「はい」
なんの躊躇いも、考えもなく返事をしてしまった。
ダイヤ「やはりそうでしたか。梨子さんには大変御迷惑をおかけしました。それらはもうすぐ止みます」
ダイヤ「黒澤家の長きに渡る軛がやっともうすぐ終わるのです。それまでの辛抱です」
梨子「...?」
ダイヤ「私はもうすぐ腫瘍摘出の手術をすることに表向きはなっています」
ダイヤ「しかし本当は別の手術をするのです」
ダイヤ「腫瘍は大きくなりすぎてしまいました。その為子宮を全摘出するのです」
梨子「....?!」
梨子「それって将来子供産めないってことじゃ...」
ダイヤ「その前に私の子宮はあちら側に持っていかれます。それまでの辛抱です。どうかご容赦を」
梨子「どういうことですか..?全く話が見えてこないんですが...」
ダイヤ「おそらく、梨子さんは今、すべてを忘れているのです。これまでのことを、すべて今からお話しいたします」 おそらく梨子さんはすでに知っていますでしょう。黒澤家と、あの山について。
黒澤家は、かつて神仏に背く施しを行いました。それによってもたらされたのは男児が生まれないという罰。
それに対し、私たちのご先祖様はある方法で対抗しようとしました。それがあの邪神と紅葉の邪法です。
あの邪神は、願いをすべて叶えます。そのかわり、願った人の財や名誉、果ては次の輪廻さえ操るとまで言われている恐ろしい邪神です。
祟れば妖怪、祀れば神という言葉があります。
その通り、怖い神ではありますが、祀ればなんでも願いを叶えてくれるのです。私たちは贄を捧げ、あの神に、自分たち一族の繁栄と栄華を祈り続けたのです。
贄は...すでにお察しの通り、生きた人間です。
私たちの栄華と繁栄は、人々の生き血の上に成り立ち、絢爛豪華な住まいは金ではなく血で黒々と光っていたのです。
これが、長きに渡る黒澤家の軛です。
私たちは何かを犠牲にしてまで自分たちの事ばかり考えていました。罪に償いを行うのではなく、罪に罪を重ねて行ってしまったのです。
積み重なった罪はいずれ誰かが精算しなくてはなりません。
それが私なのです。 一つ気になるでしょう。
なぜ祀るのをやめなかったのかと。
一度、儀式を取りやめた時期があったそうです。
これからは罪の精算を行おうと、そう生きていこうと決めた時期があったそうです。
しかし、それを期に、一族の誰かが、1人また1人と亡くなっていきました。
その時の当主の夢枕に、例の邪神が立ち、再度自分を祀らねばこの先未来はないと預言したそうです。
1人、また1人と死んでいく中、当主は悟りました。
これが私たちの生き方なのだと。邪神は恐ろしいほどに嫉妬深かったのです。
梨子さんには大変御迷惑をおかけしました。
梨子さんはおそらく覚えていないでしょう。
あの時の紅葉狩りの事を。
いえ、思い出さなくていいのです。
もう全てが、世界の全てが変わってしまったのですから。
ああ、今日も霧が出ていますね。
あの霧が辺りを包むと、次の日には皆忘れてしまうのです。
だから心配しないでください。
梨子さんはいずれ全ての事を忘れます。事の顛末を覚えているのは私だけ。それでいいのですわ。 霧が濃くなってきましたね。
梨子さんがすべてを忘れる前にお話しします。
おそらく途中まで覚えているでしょう。あの日の紅葉狩りの事を。
あの日渡したお守りを覚えていますでしょうか?
そう身構えないでください。あのお守りは梨子さんを守るものです。
願いを込めた紅葉の枝を詰めて相手に渡す。そうするとあの邪神が相手に幸福や運を授けてくれるそうです。
はじめに、あの儀式を行ったのは私の意思でも、両親の意思でもないのです。
一族というのは大きな木の様なもので、私達本家の人間は幹に例えられますでしょうか?
その枝葉の先に、分家や家から離れた人たちがいると思ってください。
幹を切られたら、枝葉は枯れてしまいます。
逆に枝葉は自分たちを切ってでも幹を守ろうとするのです。
枝葉は私たちを、いえ、黒澤家という形のみを守ろうとしました。それが今回の始まりなのです。
私の両親は儀式を行いませんでした。その結果が私達姉妹。もしかしたら枝葉は自分の死を恐れていたのかもしれません。 ...長くなりましたね。
あの日私たちは途中で道に迷い、滝壺へ向かいましたね。
あの忌まわしい紅葉の老木は過去に何人もの罪のない人々の命が捧げられました。
枝葉は、梨子さんを老木へ捧げようと工面をしていました。今回も行方不明で済ませるために。
おそらく梨子さんが選ばれたのは、この土地の者では無いから、そして内面に抱えた憂鬱のせいだと思います。
儀式を行う為に、私は老木の影に隠れました。
本当ならば、ここで梨子さんを殺めたのでしょう。
ですが私にとって梨子さんは大切な人です。
そんな事は絶対できません。
しかし枝葉の監視の目があります。
カモフラージュの意味も込めて、梨子さんを滝壺へと突き落としました。
滝壺へ沈んでいく梨子さんを見届けながら、私は儀式を行いました。
贄は私自身です。
私の将来と財産、そして次の輪廻すべてを捧げて祈りました。 全てを叶えてくれる邪神です。私はこの願いに全てを委ねました。
祖先の神仏への無礼と、それから連なる一切の出来事をなかった事にして欲しいと。
とたんに世界が反転しました。
なんと言ったらいいのでしょう、黒く染まっていったのです。
気付いたら、私は梨子さんと一緒に山を下っていました。
自分でも訳がわかりませんでした。
おそらく、願いは聞き入られたのでしょう。
だから滝壺に突き落としたはずの梨子さんも隣で笑っていましたから。
ですが誤算だった事は、梨子さんの何かが開き怪異を見れるようになってしまったこと。
これはおそらく、儀式に巻き込まれた代償だと思われます。それか、私がお守りを渡したからか。全ては神のみぞというのでしょうか。
梨子さんは紅葉狩りの、本当の記憶を覚えていないようですね。
病魔は元々私の身を蝕んでいましたが、これは両親の咎だと思います。邪神は嫉妬深い性格ですから、元々あちら側へ体が引っ張られていたのでしょう。贄として自分を捧げても捧げなくても私の行末はきっと同じだったのです。
邪神に願いを捧げても何も変化がない様に思えました。
ですが日に日に、邪神に関わる記憶が失われていることが分かったのです。はじめに枝葉の末端からそれは始まり、最近は幹の方でも起こり始めました。
様子を見るに、あと1、2回ほど霧がかかれば皆全てを忘れてしまうのではないでしょうか?
もうこの事を知っているのは、私と梨子さんだけなのかもしれませんね。 ダイヤ「これが事の顛末ですわ。梨子さん、私たちは貴方にとんでもない事をしました。心からお詫び申し上げます」
そう言ってダイヤは頭を下げた。
梨子「....」
梨子「ダイヤさんは、それでいいんですか?」
梨子「殺されそうになった事は事実ですが、自分の将来とか、不安はないんですか...」
ダイヤ「先ほども言いました様に、罪はいずれ誰かが清算をしなくてはなりません。それに、私たちは新しい生き方を模索すべきです」
ダイヤ「古い体制を作り出しているのは、私達自身。脱皮の時だった。それだけですわ」
梨子「...そうですか」
梨子「正直、今までの出来事は、悪夢の中にいる様な、そんな感じでした」
梨子「ダイヤさんの話を聞いて、納得した様な、してない様な、自分でもよくわからないふわふわした感じがあります」
梨子「怒りも、悲しみも湧いてきません。でも、こんな日々が終わると思うと少し安堵してる自分がいるんです。ダイヤさんがこんな事になってるのに..」 「.....」
ダイヤ「梨子さんは優しいのですね」
ダイヤ「私は大丈夫ですわ。きっと、この先も自分たちの力で切り開いて見せますわ」
梨子「...」
ダイヤ「さあもう遅いですわ。霧が深くなる前にお帰りなさいな」
梨子「...はい」
ダイヤは終始にこやかに、穏やかに話していた。
これから苦難の道を歩むはずなのに、どうしてあんなに冷静でいられるのか、梨子は理解ができなかった。
病室を抜けて、正面玄関に着く。
辺り一層の濃い霧の中、街の街頭がぼんやりと浮かんでいた。
バスに乗る。
乗客は梨子1人だけだった。
憂鬱を乗せながら、バスは動き出す。
梨子は今までの事を反芻しながら、車窓を眺めていた。
当然何も見えない。遠くから磯の香りがしてきた。
それをただぼんやりと眺める。
濃い霧の中を、バスは割きながら進んで行った。 あら、昨日ぶりですわね。
え?一昨日きたけど、“昨日”は来ていない?
うふふ、そうですか、失礼しましたわ。
ええ、私は大丈夫ですわ。”一昨日“より動けるようになりましたの。ほら!
ふふ、お土産もこんなにありがとうございます。
え?ルビィについてですか?
ええ、聞いていますよ。あんなことがあったなんて、家に帰ったらお説教ですわ。
私ですか?日中はあまり暇じゃないんですの。
ほら、検査とかがありますでしょう?だからくたびれてしまうんですの。
初日に比べたら、ある程度暇な時間も出来たんですけどね。
え?窓の外?
ああ、本当ですね。霧がかかってきましたね。
最近霧がかかることが多いですわね“どうして”でしょうか?
え?時計?あらまあもうこんな時間。
そうですね、霧が濃くなる前に帰りなさいな。
それではさようなら、梨子さん、また明日。
終わり 長々と駄文に付き合っていただきありがとうございました。保守してくださった皆様に感謝を申し上げます。
たこやきもとい鮒鮨様、私の稚拙な文章ではこれが限界でした。どうかご容赦ください。
最後にもう一度、この文章を読んでいただき有り難うございました。 やっぱり自分を犠牲にしてたのか……こういう役回りほんと似合うなダイヤさん
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