雇用情勢の改善が続いている。
厚生労働省が31日発表した9月の正社員の有効求人倍率(季節調整値)は1.02倍で、前月より0.01ポイント上がった。
統計をとり始めた2004年以降で最高で、4カ月連続で1倍を上回る高水準にある。
緩やかな景気回復に人手不足が重なり、企業は正社員採用を増やして人材の囲い込みを進めている。
ただ賃金への波及は鈍く、消費は勢いを欠いている。

 有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人に何件の求人があるかを示す。
パートタイム労働者らも含めた全体の有効求人倍率は1.52倍で、8月と同じだった。
高度経済成長末期の1974年2月以来の水準で高止まりしている。

 新たに出た求人をさす新規求人数は前年同月を5.6%上回った。業種別にみると、スマートフォン関連が好調な製造業が最も高く11.3%増だった。
慢性的な働き手不足に直面している運輸・郵便業(10.2%増)や医療・福祉(8.6%増)も伸びが大きかった。

 求人を出しても企業は思い通りに採用できていない現状がある。実際に職に就いた人の割合を示す充足率(季節調整値)は14.9%。
インターネットで企業の採用サイトに直接求職するといった場合を含まないため「7人雇おうとしても採用できるのは1人」という計算になる。

 総務省が31日発表した9月の完全失業率は、前月と同じ2.8%だった。
求人があっても職種や勤務地など条件で折り合わずに起きる「ミスマッチ失業率」は3%程度とされる。
3%割れは働く意思のある人なら誰でも働ける「完全雇用」状態にあるといえる。

 正社員は3483万人で、前年同月より76万人増えた。伸び幅は1年5カ月ぶりの大きさだった。
非正規社員は2万人減り、7カ月ぶりに減少に転じた。
また15〜64歳の人口に占める就業者の割合を示す就業率は75.8%で、前年同月より0.8ポイント上がった。
比較可能な1968年以降で最高を記録した。

 雇用改善の割に消費の回復は勢いを欠く。
総務省が同日発表した9月の家計調査によると、2人以上世帯の1世帯当たり消費支出は26万8802円だった。
物価変動の影響を除いた実質で前年同月を0.3%下回り、2カ月ぶりに減少した。

 気温が高かった前年の反動で、エアコンなど家庭用耐久財が17.9%減と大きく落ち込んだ。
ゴルフのプレー料金や宿泊料など教養娯楽サービスも5.0%減った。
「敬老の日を含む連休に台風が直撃したため」(総務省)という。
食料や衣料品への支出は増えており、消費の基調判断は「持ち直してきている」として据え置いた。

 消費持ち直しが緩やかなため、物価上昇ペースも緩慢だ。
9月の消費者物価指数(CPI)は値動きの激しい生鮮食品を除く総合で、前年同月比0.7%上昇となったが、
主因のエネルギーも除くと、伸び率は0.2%にとどまる。家計の節約志向も根強く、
小売り大手による日用品などの値下げが消費を下支えしている面もある。

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22913490R31C17A0MM0000/