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千歌「――私と卓球、しませんか!?」 [無断転載禁止]©2ch.net
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2017/06/22(木) 16:31:22.54ID:i0UcVMUE
果南「……本当に大丈夫なの?」


千歌「やってみようよっ! 卓球なら千歌達でも出来そうじゃない!? 長い間やってたしかなり得意だし!」

千歌「スクールアイドル兼、卓球!」

果南「うーん……」


千歌「だってだって! 可能性は二倍なわけだよ! スクールアイドルだけで有名になれるかもしれないけど、スクールアイドル卓球をすればそっちで有名になれるかも……」


千歌「オリンピックを目指すような人達は普通の競技としての卓球をするわけだから、すっごい上級者はいないと思うんだ! ねね、それなら再開してもなんとかなると思わない!?」

果南「まあ……」

果南(半分くらいお遊びの卓球ってこと、かな?)


果南「千歌の言うことが本当なら、まあそうかもしれないけど……」

千歌「よしっ! じゃあ曜ちゃんも誘って来る!!」

果南「え!?」


 

千歌「――卓球! しに行こうよ!」
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2017/06/22(木) 16:33:07.64ID:i0UcVMUE
◇――――◇

曜「えっと、つまり……スクールアイドルスポーツっていうものがあって……スクールアイドルがスポーツで競う、と。強ければ知名度も上がって、本来のスクールアイドルの順位にも大きく影響する……確かに、可愛い女の子がスポーツをやるっていうのは興行的にも……」


千歌「うんっ! ラブライブとは別の日程で行われるんだっ!」

曜「バスケとかバレーとかテニスバドミントン……メジャー競技は大体あるんだね」

曜「でもなんで卓球……」

千歌「千歌が小さい時からやってたからっ!」

曜「あ……やってたね……」

千歌「曜ちゃんもしよ!! 出来るじゃん!」


曜「い、今更なあ……。高飛びとかないの……? それなら自信あるけど……」


千歌「曜ちゃん上手いじゃん! 新しく

果南「水泳ならあるみたいだよ」


曜「あ、そっちの方が良くない?」
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2017/06/22(木) 16:34:41.75ID:i0UcVMUE
千歌「水泳なら曜ちゃんは別に練習とか必要ないし、大会出るだけで済むでしょ! じゃあそれもしよっ!!」

曜「そ、それも……? 今のスケジュールに卓球の練習まで入れたら死んじゃう……」

果南「そうだよ、やるなら私たちぐらいしか」

千歌「……そ、そうだよね。ごめん……」

千歌「あと、水泳だけど、競泳水着じゃなくって普通の水着だからね」

曜「え」

千歌「全国ネットで普通の水着で泳ぐのが放送されるの。曜ちゃんの鍛え上げられた肉体が――」

曜「……そ、それはなんかやだ……」



曜「と、とりあえず今から卓球するんだよね? ちょっと見てるよ」


梨子「――部室にいないって思ったら、何してるの?」


千歌「あ、梨子ちゃん良いところに!」
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2017/06/22(木) 16:35:45.54ID:i0UcVMUE
◇――――◇


梨子「いいじゃん! ねね、やろうよ梨子ちゃんも!」

梨子「む、むりむりっ卓球なんて出来ないよ!」

千歌「大丈夫できる! やろ、ね?」

梨子「うぅ……」

千歌「よし決定! ね!」

果南「ほら強引に決めない」


千歌「で、でも……じゃあ! ちょっと見ててよ! 楽しいからっ!」

梨子「う、うん……」


千歌「ここの体育館ねえ、卓球部はあるんだけどみんなほとんど来てないから卓球台、使ってもへーきなんだよ」

梨子「そ、そうなんだ……」


梨子(卓球台が一台、周りには……球が飛んでいっちゃわないようにフェンスがいくつか……練習自体はいつでも出来るんだ、恵まれてるなあ……)


千歌「で、卓球をあんまり知らない梨子ちゃんのために解説! これがラケットだよ」

梨子「というかなんで千歌ちゃんは卓球知ってるの……?」

千歌「家に卓球台が二台あるの!」


果南「千歌のお姉さんさ2人とも昔、卓球をしてて、お客様用も兼ねて買っておいてあるんだって」


曜「私も一時期かなりやってたなあ、卓球」


梨子「あぁ……確かにあったかも」
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2017/06/22(木) 16:36:45.76ID:i0UcVMUE
千歌「そうなの〜だからね、果南ちゃんとか曜ちゃんと小さい頃からやってたり、たまに流れでお客さんと卓球することも……」

曜(旅館に泊まったら千歌ちゃんと卓球も出来るんだ……サービスになる……のかな? 一応)

千歌「で、話を戻すと。こっちの片面でしか打てないのが"ペンホルダー"ラケットで、こっちの両面で打てるのが"シェークハンド"ラケット!」

千歌「こっちはシャーペンを持つときの形と持ち方が似てるからペンって呼ばれて、こっちのシェークハンドは、握手するみたいにして握るからシェイクハンドラケット! 簡単でしょ?」


梨子「う、うん……ペン? っていうのしか知らなかった……」

千歌「でもねこっちのシェークっていう方が使ってる人は多いんだって! 志満姉が言ってた!!」


梨子「へえ……」


千歌「とりあえず果南ちゃんと打つとこ見て、次は梨子ちゃんもやってみよ!」

千歌「はい果南ちゃんこれ!」

梨子「果南さんはペンホルダー……」


千歌「私はシェークハンドだよー、志満姉のお下がりだけど!」

千歌「じゃあさっそく……」


果南「うー、久しぶり、できるかなあ……このラケットお遊戯用じゃん」
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2017/06/22(木) 16:37:55.26ID:i0UcVMUE
千歌「競技用の日ペンなんて都合よく持ってません、いくよー!」

カコンカコン

千歌「いいねー!」

果南「まあ、案外いけるみたい!」


梨子「あれ……ふ、普通に打ち合ってる……ピンポンって感じじゃ……」

曜「千歌ちゃんと果南ちゃん、一時期本当にハマっててさー、普通に出来ちゃうレベルなんだよ」

梨子「そ、そうなんだ……経験者みたい」

曜「経験者だから」アハハ

梨子「そ、そうなんだ」

梨子「曜ちゃんも出来るの?」


曜「まあそこそこくらいかな……」

梨子「そうなんだ……あっ」


果南「――あっ……うぅ、やっぱりバックは苦手だなあ」


梨子「ペンホルダーってバック側を打つとき、手首を捻らなくちゃだけど不利じゃないの?」

果南「不利だね」

千歌「だからシェークが多いんだよ」

梨子「なるほど……」

千歌「メリットもあるんだけどね!」


千歌「ということで、梨子ちゃんはどっちがいい!?」
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2017/06/22(木) 16:38:56.52ID:i0UcVMUE
曜「打ちやすい方にしてみたらいいと思うよ」

梨子「じゃあ最初はその、シェークで……」

千歌「はい。じゃあ果南ちゃん、ゆっくり球出ししてね」

果南「おっけー、いくよー」

梨子「え、ちょ……う、打ち方とか……」

千歌「? とりあえずさっき見てた感じでやってみて!」

梨子「え!」


梨子(み、見ただけで真似なんて出来ないよぉ……)

カコンッ

梨子(き、きたっ……えと、えとっ……)

梨子「えいっ」スカッ…


曜「あ……」

梨子「ぅ……」

梨子「察しないでよ曜ちゃんっ!」


曜「ご、ごめんっ」


果南「まあまあ、初めてなんだし、もう一回行くよ、球をよーく見てね」

カコンッ

ブンッポ-ンッ


梨子「あ……」
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2017/06/22(木) 16:39:57.52ID:i0UcVMUE
千歌「ホームラン!」

梨子「な、なにこれ難しい……」

千歌「じゃあ打ち方を教えるね」


千歌「卓球のフォアハンドラリーはね三角形を意識してやるんだよ。最初は胸の前、次はそのまま右に引いて右手側に、その後斜め上に振り上げて顔の前。胸、右手側、顔、これを繋ぐようにスイングするの。こうやって」ブンブンッ


梨子「三角形……」


千歌「この打ち方なら、フォア面の角度が自然に真っ直ぐか下の方を向くでしょ? だからホームランする確率も下がるんだよ!」


千歌「はいラケット持って! 千歌が後ろから教えてあげる!」ガシッ

梨子「……///」


梨子(千歌ちゃんが私に密着してる///)


千歌「胸、右手側、顔……胸、右手側、顔……そう、こういう感じだよ腕手離すから、自分で続けてみて」

梨子「うん。胸……右手側、顔……」


千歌「そうそう、最初はぎこちないけど、三角形が楕円っぽくなって来て滑かになるからね」


千歌「で、右手側に引いた時に腕だけじゃなくって、腰も右手側にちょっとひねってみて」


千歌「あー違う違う、ここをこうやって」ガシッ

梨子「///」


千歌「ちょっと腰も落として……」

梨子(自然にお尻触られてる……///)


千歌「果南ちゃん球!!!」

果南「は、はいっ」


曜(すごい気合……)
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2017/06/22(木) 16:42:31.30ID:i0UcVMUE
カコンッ

千歌「球見て! 最初は胸、右手側に引くと同時に腰を捻るっ、そして正面を向きながら顔目掛けて振り上げる!」


梨子「は、はいっ!」

カコンッッ

果南「……おお」

千歌「惜しい……もうちょっとで入ってたよ」

梨子(さっきより全然いい球が出せた……)

千歌「果南ちゃんどんどん出して」

千歌「対角線に打つこと、クロス方向を意識して……打った後は手元じゃなくって、自分が狙っている方向を見て! そうっ!!」

曜「おー、入ったね!」

梨子「遅いけど入った……」

果南「十分十分」

千歌「やったー! すごいよ!」ギュッゥ

梨子「///」

曜「……」

千歌「ちょっと続けてみようか!」
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2017/06/22(木) 16:43:14.77ID:i0UcVMUE
◇――――◇

梨子「三分の一くらいはコートに入るようになってきた……」

千歌「うんっ、次はバックハンドね!」

梨子「うぅ、まだあるんだよね……難しい」

千歌「バックはもっと難しいよー?」

千歌「シェイクバックハンド、フォアと違って身体の前で打球するんだよ」

千歌「フォアの3点打ち、みたいな明確なのは無いから難しいんだけど……ラケットの角度を意識して、身体の正面!」

梨子「そ、それだけ?」

千歌「ちょっとやってみるから見ててね」

カコンッ

千歌「あんまり得意じゃない人は、来た球に対して、ラケットの角度が上を向いてるの。それだとホームランしちゃうからね、こんな風に!」ポ-ンッ

千歌「だから角度は被せ気味か垂直ね! で、こんな風に身体の正面!」カコンッカコンッ

梨子「なるほど……」

千歌「球を迎えに行くんじゃなくって、球を引きつけて十分待ってから打球! 基本だからね!」

千歌「はいっ、やってみて!」

カコンッ

梨子「あ、入った……」

千歌「あれ、バックの方が綺麗……いいね!」

カコンカコンッ

果南「結構いいかも、バックの方が得意なのかもねー」
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2017/06/22(木) 16:44:02.93ID:i0UcVMUE
梨子(ラリーちょっとだけど続く……楽しい……かも?)

果南「じゃあさ、次はペン使ってみよ」


果南(まあ、もう結果は見えてそうだけど)

梨子「うん」

梨子「わ……シェイクと全然違う……」


果南「フォアハンドはシェイクとおんなじで3点を意識してみて」

梨子「こ、こう?」カコンッ

果南「そうそう、いい感じ!」

果南「で、問題はバックなんだけど……」


果南「ペンホルダーは構造上ラバー……この赤いやつね、これが片面にしか貼られていないの。だから片面で打つしか基本的にはできない」


果南「さっきから私がやってたから分かると思うけど手首を捻って、打球しなくちゃいけないんだよね。だから絶対に反応が遅れちゃうの、ここに関しては例外はないよ」


梨子「じゃあなんでペンホルダーなんて存在してるの……?」

千歌「フォアハンドが強いんだよ!」

梨子「フォアハンドが?」


果南「そう、バックを犠牲にする代わりにフォアハンドの威力がシェイクより強いって言われてる。その他にも手首の可動域が広いからサーブの回転がかけやすかったり、台上での処理がやりやすかったり……メリットはあるよ」
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2017/06/22(木) 16:44:44.83ID:i0UcVMUE
梨子「ぜ、全然わからない……!」

果南「あはは、だよね」

千歌「ペンでのバック打って見てよ! やり方は手首を返して、角度を合わせて打球!」

果南「シェイクと違って面を被せるのは難しいから、最初は角度は上向きでゆっくりて大丈夫だからね」


千歌「球行きまーす!」


カコンッ

梨子「っ」カコンッ

梨子「ぅ……む、難しい……」

果南「梨子ちゃんはシェークだね」

千歌「うん」

梨子「そっか、シェークなんだ私」

曜「まあ、ペンは難しいよねー」

梨子「曜ちゃんもシェーク?」

曜「うん」


千歌「よーしっ、じゃあちょっと1ゲーム果南ちゃんとやってみるから……どんな感じなのか見ててね?」
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2017/06/22(木) 16:45:50.53ID:i0UcVMUE
◇――――◇


果南「最初にジャンケンをして、勝ったらレシーブかサーブか選べるの」

千歌「あ、勝った! サーブを選ぶのが有利で一般的ね!」

千歌「じゃあ今回は1セットマッチで!」

果南「11点先取で1セット取れるの」

梨子「じゃあ今回は11点取った方が勝ち?」

千歌「そういうこと! 絶対絶対手加減しないでね!?」

果南「わかってるよ」

千歌「よろしくお願いします!」

千歌「ふー……」カツカツカツ……


梨子(なんか雰囲気が……)

千歌「ふっ」

キュッッ…ググッッ…


梨子「!?」


果南「!」


果南(下回転サーブ、打てないっ!! ツッツキでっ)
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2017/06/22(木) 16:47:14.62ID:i0UcVMUE
梨子(打ち方が全然違う……! 下からつっくくように……本当に経験者の打ち方って感じ……)


千歌「っぅ!!」キュッッズドンッ!!!


果南「くっ……」ポ-ンッ


果南(バック側にフォアドライブ……)


千歌「よしっ! 1-0!」

梨子(千歌ちゃんの打った球……なにあれ? 下から持ち上げるようにスイングして……台についた瞬間、ボールが一気に推進した……?)


梨子「さっきの、なに……?」

曜「ツッツキと、ドライブだよ」


曜「千歌ちゃんが出したサーブは下回転って言って、バックスピンが、かかってるの。普通に打つとネットミスするんだ。だから果南ちゃんはツッツキって言う下回転を下回転で返す守備的な打法で返したの」


梨子「ツッツキ……」


曜「そ、千歌ちゃんのサーブが短かったからそうするしかなかったね」


曜「ちなみにペンホルダーだとツッツキみたいな台上でする細かい技術がやりやすいの」


曜「まあ今は果南ちゃん久しぶりみたいだったし、ちょっと浮いちゃったけど」
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2017/06/22(木) 16:49:14.01ID:i0UcVMUE
曜「で、千歌ちゃんは果南ちゃんがツッツキで返した球をドライブで返した。ドライブっていうのは卓球で一番使われる技術で、ボールに対して上回転をかける技術なの」

曜「下回転を普通の打球で打つとネットミスになるから、上回転をかけて持ち上げるの。トップスピンがかかった打球は台についた瞬間色んな変化をする」

曜「その代表例が強い前進なんだ。下回転とは逆でラケットに当たった瞬間ポーンって打ち上げやすい。だからとっても攻撃的で、果南ちゃんは打ち上げちゃったんだよ」

梨子「い、一点の間にそんなこと、してたの……?」

曜「やってみるとそんなに考えなくても平気だよ」

梨子「そ、そうなのかな……」

梨子「というか詳しいね……」

曜「私も千歌ちゃんとやってたんだってば」アハハ…

 
 

曜「千歌ちゃんが辞めちゃったから――私もやめたけどね」

 

 


千歌「ふっ!! やった!」

果南「くっ、また……」

千歌「2-0!」

果南(だめだなぁ……全然足動かない……)

梨子「また……」


曜「3球目攻撃って言ってね、下回転サーブを出して、ツッツかせて、ドライブ攻撃。3球目に攻撃するのは一番代表的な点の取り方なんだよ」


曜「次は果南ちゃんのサーブ、おんなじようなことをするはずだよ」
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2017/06/22(木) 16:50:50.52ID:i0UcVMUE
果南「……」コツコツ

果南(取り敢えず下回転……普通に考えたら私の弱点のバックハンドにボールを集めてくる。短く出せばツッツキで返してくるだろうから、フォアに来ても見てから反応は出来る。やっぱり下回転だね……でもお遊戯用じゃかからないって)


果南「ふっ」キュッ

千歌(下回転!)ツッツキ


キュッ


果南(よしっ一応かかった、読み通り……)

千歌(バック側に回り込んだ!! フォアドライブ! フォア、バックどっち!?)

果南「んっ!!」キュパッ!!ズンッッ

スパ-ンッッ

千歌「くっ……」

千歌(フォアかあ……速くて触れない……)

果南「よしっ」

梨子「はや……」


曜「ペンのフォアドライブの破壊力は抜群だからね」

梨子(というか2人……こんな特技があったなんて……)


梨子(そういえば千歌ちゃんのプロフィールには特技卓球って書いてあったっけ……)


梨子(特技っていうより、普通に部活やってる人みたい……)


千歌「よしっ5-1!」
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2017/06/22(木) 16:53:21.57ID:i0UcVMUE
梨子「ふたりとも本当に上手い気がする……」

曜「千歌ちゃんの場合、お姉さん2人とも東海大会レベルに強かったんだよ。千歌ちゃんがラケット握ったのは小学生より前の頃からだし……その辺りの卓球部の子よりは全然強いかもね」


曜「果南ちゃんと私もそれに付き合ってたって感じで……あはは」


千歌(球が浮いたっ!! スマッシュで……!!)パコ-ンッ!!!!


果南「っ!!」スッッ

千歌「!?」


千歌(バックの深いところ……そんなところに、回りこめるわけ――)


キュパッギュインッ!!!

千歌「!?」


スパ-ンッッ…ギュルルルルルルルルルッッ

千歌「……え」

梨子(フェンスに引っかかってもすごい回転……)


果南「ほ……」


千歌(――な、なに、今の……)


千歌(ラケット、お遊戯用、だよね……?)ゴクッ…
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2017/06/22(木) 16:54:40.94ID:i0UcVMUE
梨子「よ、曜ちゃん今のは……?」

曜「フォアゾーンのネット手前にボールを出して、果南ちゃんが前のめりになってツッツいて球が浮いたところを、千歌ちゃんがバックゾーンの深いところにスマッシュしたの。でも果南ちゃんはすぐに回り込んでクロスに前進回転のドライブ」

梨子「でもなんか……さっきの球と動きだけ凄かった、気が」

曜「うん……そうみたいだね」

果南「いやー……まぐれまぐれ、良かった入って」コツコツ

果南「8-7、サーブどうぞ」

曜「……」

千歌「まぐれでも悔しい! 勝つぞー!!」


千歌「ふっ……」ギュンッッ

果南「くっ……」フワンッ…


千歌(浮いたっ、チャンス!!)

千歌「!!」スパ-ンッヅ


果南「オーバー」


千歌「ぅ」

 

果南「チャンスは確実に決めないとだよ」

果南「何事も、いつでもチャンスがあるわけじゃないんだからさ」

 

千歌「わかってるよー!!」
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2017/06/22(木) 16:56:12.17ID:i0UcVMUE
――

千歌「10-8!!」


曜「マッチポイントだね、次千歌ちゃんが取ったら勝つよ」

果南「……」

果南(うーん全然だめだ……)


果南(……下くらいしか普段出さないしなぁ、たまにはアレ、やってみよっかな……)スッ…

フッ…キュッッカコンッ


千歌(下回転! 回り込めないくらいバックの深いところにっ……)ツッツキッ


千歌「えっ」ポ-ンッッ

果南(よしっ……狙い通り)


千歌(回転がかかってない……ナックルサーブ……っ!!)


果南(後は、叩き込む、だけ!!)パシ-ンッ!!、


千歌「――っ!? いでっ!!」

果南「ぁ……」


コツコツコ……

千歌「もう! おでこ狙った!?」


果南「ち、違うってば。久しぶりだから全然入らなくて……あはは」


千歌「むぅ、ま、とにかく11-8で千歌の勝ちー!」エヘヘ

千歌「果南ちゃんにまた勝った!!!」ピョンピョンッ!
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2017/06/22(木) 16:56:49.99ID:i0UcVMUE
千歌「……手加減してないよね?」

果南「してないよ、だめだね最近は」アハハ…

千歌「ということで梨子ちゃん!」

梨子「は、はい」

千歌「どーだった?」


梨子「えと、うん……凄かったと、思う。素人だからよくわからないけど……」

千歌「やりたい!?」

梨子「えっ」

果南「だから強引に勧誘しない、卓球まで付き合わせちゃだめでしょ」


善子「……」コソコソ

梨子「?」

善子「!!」バッッ

果南「どうしたの?」
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2017/06/22(木) 16:57:25.74ID:i0UcVMUE
梨子「う、ううんなんでも……」


善子(た、卓球してる……!!)コソコソ…

善子(ここって卓球部とか活動してないって聞いたけど……)


善子(それに、あっちのポニーテールの人の、さっき一回見せたドライブ……)

善子(うぅ、久しぶりに燃えて来たわ……)

善子「堕天使の寵愛を受ける資格がありそうね……クク……」

善子「はっ……だめだめ」

善子(っていうかあの人たちと知り合いでもなんでもないし……今更卓球なんて……)

善子「……」ソソクサ


梨子「で、でも……ちょっとくらいなら……」

千歌「本当に!? やった!」ギュッ


梨子「い、痛いよ」

曜「……」
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2017/06/22(木) 16:58:01.20ID:i0UcVMUE
千歌「じゃあねじゃあね、千歌が教えてあげるねっ!!」

果南「梨子ちゃん、本当に大丈夫?」


梨子「うん、続いた時はちょっと楽しかったし……」

梨子「あ、暑いから離れて……」

千歌「あ、ごめん」

曜「いつやるの?」

千歌「とりあえず暗くなったら体育館に移動して……一時間くらい練習に充てようかなあ?」

果南「一時間も?」

千歌「もっとやりたいけど!」

千歌「みんなも予定あるだろうし……」


果南「まあ、そうだね。それなら曜もできる?」

曜「ま、まあ」


曜(いやーまさか卓球することになるなんて……まあ楽しそうだからいいけど)
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2017/06/22(木) 17:00:06.97ID:i0UcVMUE
 、
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2017/06/22(木) 17:00:24.13ID:i0UcVMUE
◇――――◇

旅館

千歌「あ、あのー……お客様、良かったら私と卓球……しませんか?」

千歌「あ! 私は、ここの旅館の三女で……」

志満「ちょっと千歌! 申し訳ありません……妹が」


志満「ほら行くよ」グイ

千歌「ぅ……すみませんでした」

リビング

美渡「はぁ、あんたまたなんかしたの?」

千歌「……卓球したかったの」

美渡「馬鹿じゃないの? お客さんのなんだから、やってない時ならともかくやってる時に割り込むなんて」

千歌「してくれる人もいるもん」

美渡「だからってね」

美渡「あんたみたいに体して可愛くない子じゃなくって、美少女に声かけられるっていうならお客さんも嬉しかったかもね」


千歌「な……なにさ!! いいじゃん別に!! 馬鹿!!」

志満「ちょっと、ふたりとも」

志満「千歌ちゃん……どうして急に卓球なんて」


千歌「ん……えっとね」
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2017/06/22(木) 17:01:26.93ID:i0UcVMUE
◇――――◇


美渡「あはははっ! スクールアイドルに、卓球? もう、冗談うますぎるって」

千歌「もう! なんでそうやっていちいち笑うの!? さいってい!!」

美渡「いくら普通の卓球と違うって言ったって、高校でやめちゃったけどそれまで強かった人はいるわけでしょ、そんなの無理に決まってるってこと、あんたが一番よく分かってるよね?」

千歌「っ……だって」

美渡「どうせすぐ辞めるんだから、やるの、やめておきなよ」

千歌「うるさい!!」

千歌「いいじゃんやってみたって……」

美渡「……」

志満「美渡ちゃん、すぐ酷いこと言わないの」

美渡「……」


志満「千歌ちゃん、確かに卓球ってあんまり疲れるスポーツってわけじゃないし、年齢関係なく誰でも出来る、でも……簡単じゃないってことはわかるよね?」

千歌「うん……」


志満「スクールアイドルだけじゃだめなの?」

千歌「……うん」

美渡「じゃ、少なくとも高校卒業までには私に勝ってみなよ」


千歌「勝つもん……絶対勝つ!!」


美渡「言ったな、そのくらいの言葉には責任持ちなよ」
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2017/06/22(木) 17:02:10.17ID:i0UcVMUE
千歌「うん……」


志満「じゃあ、ラケットも自分の買わなきゃね」

美渡「今志満姉のやつ使ってるんだっけ?」

美渡「千歌の戦型にまるで合ってないじゃんか」


志満「美渡ちゃんのラケットも全然違うしねえ……」

千歌「それも考えとく!!」


志満「うん、今日はもう寝なさい」


千歌「うん……分かった。おやすみ」

ドタドタ


美渡「はぁ、何考えてるんだか」

志満「ちょっと嬉しかった?」


美渡「は? 何言ってんのさ、そんなわけねーし」
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2017/06/22(木) 17:03:08.58ID:i0UcVMUE
志満「千歌ちゃんにも卓球して欲しかったから、小さい頃からやらせてたんでしょ」

美渡「ち、違う」

志満「まあ、いいけど……美渡ちゃんが本気でやれるくらい強くなるといいわね」

美渡「……知らない」


美渡「あ、お姉ちゃん」

志満「ん?」

美渡「今のラバーって、やっぱり進化してるかな?」

志満「んー……私に聞かれても、長い間変えてないし……」

美渡「そりゃそうか……」

志満「やる気になった?」


美渡「あの子になんか負けたくないだけだって」

志満「そっか」


美渡「そうだよ。おやすみ」


志満「おやすみ」
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2017/06/22(木) 17:04:18.81ID:i0UcVMUE
◇――――◇

梨子「……よっ、ふっ」カコンッ…


梨子「わわっ!」ブンッ


千歌「違う違うー! こーやって三角をイメージして……最初は横向きでもいいから……」


梨子「うぅ、壁打ち……難しい」

果南「壁打ちは1人でも出来るレシーブやラリーの基礎固めだからね、同じテンポならとりあえず100回くらいは続かないとだめだよ」

梨子「う、うそ……」


果南「バックは普通に出来てるのにねえ……」

曜「でもさ、初めての壁打ちでバックハンドがあそこまで出来るのはセンスあると思うな」


千歌「ねー、バックの方が最初から得意な人って珍しいよねー」


千歌「でもバックは出来るのにフォアになると空振るの、ちょっと可愛い……」


梨子「う。うぅ……」


千歌「じゃあ台に行こっか」
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2017/06/22(木) 17:05:04.82ID:i0UcVMUE
◇――――◇

曜「そ、今の感じだよ!」


梨子「う、うん!」

曜「今の感じをどこでも出来るように。だから壁打ちはオススメなの」

梨子「曜ちゃんも普通に壁打ちできるの?」

曜「んー、まあね!」

梨子「どのくらいで出来るようになったの?」

曜「うーん……割と短かったような。ていうか壁打ちから入らなかったから」

梨子「……あはは、曜ちゃんってなんでも出来るんだね、すごいや」

曜「全然! 千歌ちゃんには勝てないしねー」


千歌「うーんっ、やっぱりラケットとラバー……換えなきゃだよね」

果南「それカットマン用でしょ? そのまま練習してても変なクセつくだろうし……やめたほうがいいんじゃない?」

千歌「だよねえ……」

梨子「そのラケット……どこか悪いの?」


千歌「あ、ううん……このラケット自体は悪くないんだけど千歌には合ってないし……ラバーは劣化しきってるけどね」

梨子「え、えっと……?」

千歌「あ、ああ……えっとどこから説明すれば」

 


「――そのラケットはカットマン用、それに、ラバーも守備用の弾まないラバーですわ」
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2017/06/22(木) 17:06:47.76ID:i0UcVMUE
千歌「うげ……ダイヤさん……」


曜「なんでステージに……」


ダイヤ「全く……なにやらスクールアイドルなんて訳のわからないものをし始めたかと思えば……今度は何をしていますの?」

千歌「卓球です!」


ダイヤ「……卓球部にでも入ったの?」


千歌「い、いえそういうわけでは……」


果南「部長さんも使わないって言ってて、使わせてって言ったらいいって言ったからさ」


ダイヤ「なるほど。遊び……にしてはちょっとレベルが高いようでしたが」


果南「千歌も小さい頃から中学上がる時まで沼津の方のクラブに入ってたからね」

ダイヤ「へえ……」

千歌「さっきカットマン用のラケットとか言ってましたけど……ダイヤさんも卓球知っているんですか?」

ダイヤ「まあ多少は……そのラケット、貸していただける?」


千歌「は、はい」

ダイヤ(裏裏……)

梨子「……何が始まるの?」

曜「さ、さあ……」
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2017/06/22(木) 17:08:06.21ID:i0UcVMUE
 、
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2017/06/22(木) 17:09:17.92ID:i0UcVMUE
果南「……まだ出来るの?」

ダイヤ「当たり前ですわ! ボールを出して」

カツンッ

ダイヤ「ん」パコン

カコンカコンッ

千歌「おお、普通にラリーしてる……ダイヤさんも卓球出来るんですね」

ダイヤ「ええ、そこまででは、ありませんけれど」

果南「良かったよ、自分のラケット持ってきてさ」

梨子(ラリーをしながらちょっとずつ後ろに下がってる……?)

曜(この足の動かし方……)

ダイヤ「お願いですから、手加減してくださいね」

果南「わかってるよ」

千歌「……!」

果南「っ!」ギュインッ

ダイヤ(ドライブ……!!)

キュッッ…ガツンッッ

梨子「!?」

 


千歌「――カットマン……!!!」
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2017/06/22(木) 17:10:18.24ID:i0UcVMUE
果南「ふっ」ギュインッ

ダイヤ「っ」バツンッ

梨子「あの打ち方……なに?」


曜「カットって言ってね、上から下に振り下ろすようにして、ドライブの逆、下回転を掛けて相手に返球する打法だよ」

曜「後ろに下がって相手のドライブやスマッシュを返して返して返し続ける……卓球で一番守備的なスタイルなんだよ」

梨子「すごい……」


梨子(果南さんが打つ速いドライブを、ダイヤさんが打つと一気に遅くなってふわんてして、果南さんのコートまで戻っていく……)

梨子(打っても返して返して……ダイヤさんのところに引き寄せられているみたい……)


ダイヤ「っ!!」バツッ…ギュウンッッ!!

果南「!!」


果南(今までのより絶対切れてるっ……それに短い……ツッツキで――)チョン…ズドンッッ


果南「ぁ……」

果南(ネット……)


曜「今みたいにね、強烈な下回転を掛けると、ドライブで攻撃することも出来なくなるの。果南ちゃんはツッツキで合わせようとしたみたいだけれど、それ以上に切れてたみたいだからネットミス。カットマンは相手のミスを誘うの」


梨子「な、なんか……かっこいい」


ダイヤ「わかりましたか? 千歌さんが使っていたこのラケットは私のようなカット主戦型のものなのです」
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2017/06/22(木) 17:11:14.41ID:i0UcVMUE
ダイヤ「梨子さん、あなたのそのラケットと比べると……大きくて少し薄いでしょう?」


梨子「本当だ……」


ダイヤ「これは大きい方が当てやすく、薄い方が弾みが抑えられてオーバーミスが防げるためにこのような作りになっていますの。


ダイヤ「それに、ラケットは本来木で出来ていてこの赤と黒のゴムの部分、ラバーは別売りなんですの、ご存知でしたか?」


梨子「え!? で、でも普通に最初から付いて売ってるような」


曜「それはおもちゃみたいなやつだよ、競技用はラバーとラケットは別売りなの」

梨子「そ、そうだったんだ……」


果南「ラバーって意外と高いんだよ、片面8000円するのだってあるし。半年もしたらボロボロだしね、だから最低でも二、三ヶ月に一度くらいは替えないと」

梨子「け、結構お金かかるんだね……」

ダイヤ「ラケットとラバーは奥が深いので、調べてみると面白いと思いますわ」

梨子「は、はいっ」

ダイヤ「ありがとうございました千歌さん」

千歌「……」

ダイヤ「……?」


千歌「やりましょう……一緒に卓球、しましょうよ!!!」

ダイヤ「……は?」


千歌「やっぱりチームに1人はカットマンが欲しいんです! ダイヤさん、みた感じすっごく上手いですし、お願いしますっ!!」


ダイヤ「お断りしますわ」
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2017/06/22(木) 17:11:52.97ID:i0UcVMUE
千歌「えー!!」

ダイヤ「そんなに暇じゃありませんの、悪いですけれど、他を当たって」

千歌「そんな簡単にカットマンなんて見つからないですよー!!」ギュッ

千歌「ね、お願いします! 私が勝ちたい人の1人にカットマンがいるんです!! だから練習しないと……カット、打たせてくださいっ!!」キラキラ

ダイヤ「だから、忙しいと……」

千歌「そこをなんとか!!」

果南「千歌」

千歌「だ、だって……」

ダイヤ「……」

千歌「ごめんなさい……」シュン…

ダイヤ「邪魔はしませんから……応援していますわ」スタスタ

千歌「あ、あのっ!」

千歌「考え直してくれたら、いつでも言ってください! 待ってますから!」


千歌「はぁ……」

果南「仕方ないよ、いつも忙しそうだし」
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2017/06/22(木) 17:12:46.72ID:i0UcVMUE
千歌「そうだよねえ……」


果南「ダイヤも私と一緒でさ、おんなじ公民館で中学までやってたんだよ」


果南「高校に上がってからは私もあの子もやめちゃったんだけどね」

千歌「そうだったんだ……でもなんとか出来ないかな……」

果南「どうだろうね……家の都合だし」


千歌「はぁ……」

梨子「あの人がやってた打ち方、珍しいの?」


千歌「うん……かなり難しいし、それなら普通にドライブとかを練習した方が勝ちやすいから……」


千歌「だから上手いカットマンなんてなかなか見つからないの」


果南「卓球の強豪校なんかだと、練習台のためだけにカットマン転向させられる人もいたりするんだよ」

梨子「そう、なんだ……」


千歌「はぁ……いいと思ったのになぁ……ダイヤさんなら可愛いし」

果南「……どういう意味?」


千歌「どういう意味って……スクールアイドル卓球なんだから……可愛い方がいいに決まってるでしょ?」
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2017/06/22(木) 17:13:50.76ID:i0UcVMUE
果南「大会に出させるつもりだったの?」

千歌「うん! Aqoursにも入って貰って!」

曜「あ、あはは……」

果南「さ、流石に無理でしょ……」

千歌「そうかな……」



善子「……」コソコソ

善子(さっきの人、カットマン……? なにここ、カットマンまでいるの?)ウズウズ…

花丸「――善子ちゃん?」

善子「ひっ、びっくりさせないでよ!」

花丸「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃ」

花丸「何してるの? 最近よく体育館見てるけど……」

花丸「――卓球……?」


善子「べ、別になんでもないってば、あとヨハネね」


花丸「卓球かぁ……マルもちょっとやってたよ」
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2017/06/22(木) 17:14:20.42ID:i0UcVMUE
善子「え!?」


善子「部活入ってたの!?」

花丸「あ、部活じゃなくって……内浦にある近所の公民館で……ルビィちゃんもそこで」

善子「な、なによあの子も卓球してたの!? なんで言ってくれないのよ!」

花丸「え、ええ……? だって……言う機会もなかったっていうか……」

善子「ま、まあそうよね……」

花丸「卓球やりたいの? ちょっとなら教えられると思うけど……」


善子「クックックッ……残念だったわね花丸……これでも私、卓球には自信があるのよ……!!」

花丸「そ、そうなの?」


善子「今度ルビィも連れて市民体育館に行くわよ!!」

花丸「え、あ……うん!」
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2017/06/22(木) 17:16:24.58ID:i0UcVMUE
 、
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2017/06/22(木) 17:16:40.84ID:i0UcVMUE
◇――――◇

週末 卓球ショップ


千歌「んー……何がいいかなあ……」

果南「まずはラケットからだね」


梨子「色々あるんだね……本当だ、ラケットは木だけだ、これがラバー?」


果南「そ、でもやっぱり沼津は田舎だし品揃えはあんまり、かな?。専門店があるだけマシなんだけどね……」

曜「わかるっ! 欲しいのなかったりするよね!」

梨子「確かに……卓球のスペースは小さいかも……」


果南「いっぱいメーカーもあって、それだけラケットやラバーもあるから、全部は置けないんだよ。ラバーだけでも種類に加えて、厚さも五段階くらいあるからね」

梨子「そ、そんなに……」

千歌「ここはね、クラブもあってね、千歌はここで昔卓球してたんだよー!」

梨子「へえ、そうなんだ」

果南「千歌は道具とか適当だったよね」

千歌「うん、大雑把にしか知らない!」


千歌「ちゃんとした方がいいのかなあって……」


カランコロン…
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2017/06/22(木) 17:17:33.05ID:i0UcVMUE
千歌「……!!」


ダイヤ「――え」


果南「ダイヤ……?」

ダイヤ「な、なっ……どうしてここにっ!!」

果南「いやこっちのセリフ……」


千歌「……わかった! ダイヤさんも卓球したいんですよね!」ギュッ

千歌「ね!!」キラキラ


ダイヤ「そ、そういう、わけでは……」///


ダイヤ「その……久しぶりに趣味で、やる程度ならと思いまして……ラケットを取り出してみたら、ラバーが劣化していたので、見に来ただけですわ」


果南「そうだ……ダイヤは用具に詳しい方だし、千歌と梨子ちゃんにアドバイスしてあげてよ」


ダイヤ「そうは言われても……わたくしは千歌さんのプレイをあまり見たことがありませんし……」


千歌「……じゃあ卓球しましょ、ダイヤさん!」


ダイヤ「ぅ……そ、そうなりますのね」

千歌「お願いしますダイヤさんっ!!」


ダイヤ「わ、わかりましたわ……少しですわよ」

千歌「やたー!!」


果南「こら、お店の中で騒がない」
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2017/06/22(木) 17:18:26.05ID:i0UcVMUE
千歌「はい……」

ダイヤ「で、梨子さんのもの、でしたっけ」

梨子「お、お願いします」


ダイヤ「梨子さんは初心者……よね?」

梨子「はい」

ダイヤ「まずラケットから、初心者の方は基本的には木材のラケットをオススメされると思いますわ」

梨子「木材……鉄のラケットもあるんですか?」

千歌「ぷっ……」

果南「こら」

千歌「だ、だって、て、鉄……振れないってば」クククッ

梨子「ぅぅ」////


ダイヤ「木材の中にカーボンなど弾みが良いものが挟まれているラケットがあるんですの。重さ等はそこまで変わらずに、強い弾みが得られるのでトップ選手や実力がある方に好まれていますわ。それを"特殊素材ラケット"、というのです」

梨子「な、なるほど……」


ダイヤ「特殊素材ラケットは打球感が硬くなるので、コントロールが難しくなるの。だから初心者の梨子さんには、オススメできるとは言えませんわね」

ダイヤ「木材ラケットならば打球感が柔らかいものが多くて、手に掴むような感覚を得られるものもありますの。だからまずはそこから慣れるのがいいと思いますわ」

梨子「こっちが木材……こっちが、特殊素材……?」


ダイヤ「特殊素材ラケットは値段も割高なので、その面でも木材がオススメですわ」


梨子「でも、木材でもいっぱいあるんですね……」


果南「正直、最初は使いやすいって言われてるのから、フィーリングで選んでもいいと思うんだよねー。慣れて来たら自分がラケットに求めるものがわかってくるし」
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2017/06/22(木) 17:20:41.18ID:i0UcVMUE
千歌「でもでも! 千歌はわかんないよ?」

果南「それは考えてないからでしょ」

千歌「考えます……」

ダイヤ「あなたは大丈夫なんですの?」


曜「私? 私は卓球の練習に出てるだけで大会出る気はないんだー」

ダイヤ「なるほど」

千歌「曜ちゃんにこれ以上迷惑かけられないからさ」エヘヘ

曜「……」


千歌「ダイヤさん今ラケット持ってますか!?」

ダイヤ「え……持ってます、けど……」


千歌「――市民体育館に行きましょ! 今から!!」
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2017/06/22(木) 17:21:21.35ID:i0UcVMUE
◇――――◇

市民体育館


善子「堕天使ヨハネが罪を与えるっ!」

花丸「ひゃっ……」ポ-ンッ

花丸(スマッシュ……じゃないっ)


善子「っ……鎮魂の魔宴(サバトレクイエム)13式……」グググッッ…ブツブツ


善子「――"失楽園"!!」


ピョンッ…キュパッ…ッッ 

花丸「!!」


ギュォォンッ…コツンッ…ビュンッッ


花丸「ぅ」ピョ-ン……

花丸(なにこれ……やっぱり、すごい球……こんなの見たことないっ……!!)

ルビィ「11-3で善子ちゃんの勝ち、お疲れ様」

ルビィ「す、すごい……」

花丸「未来ずら……」


善子「未来って何よ、私はどっちかっていうとクラシックスタイルよ!」


花丸「そ、そうなの?」

善子「多分! そう言われてた!」
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2017/06/22(木) 17:22:24.82ID:i0UcVMUE
ルビィ「善子ちゃん……そんなに強いのにどうして卓球部に入ってないの?」

善子「だって活動してないじゃない」


花丸「まあ、そうだよね。クラブで続けてればよかったんじゃ……」

善子「……」


善子「目標に向かって全力でするー! とか、なんかクールなヨハネっぽくないでしょ! それだけ!」


ルビィ「そんなに強いのに……勿体無い……」


善子「勿体無くなんかないわ――強い人なんて幾らでもいるしね」

花丸「……」


善子「それより私が驚いたのは! 花丸、あなたが想像以上にまともに卓球経験者してるってこと!! ルビィもだけど!」


花丸「本当? そうかな」エヘヘ

善子「2人の戦型は中々嫌いだけど……」

花丸「よく言われるずら……」

ルビィ「ね」


ルビィ「でも善子ちゃん全然こういうの、効かないんだもん」

善子「対策されちゃうとね、どうしても苦くなるわよねあなた達の闘い方は」


善子「それにしても、偶然ね3人とも卓球が出来るなんて」

花丸「ねー、善子ちゃんがこんなにやってると思わなかったもん」
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2017/06/22(木) 17:23:11.73ID:i0UcVMUE
花丸「えーと、最近体育館で卓球してる人達いるよね、その人達に声かけて見たら?」

善子「べ、別にいいってば!」

花丸「千歌さんて人、スクールアイドルしてる人だよね? なんで卓球もしてるんだろう……」

花丸「ルビィちゃんもスクールアイドルしたいんだし、善子ちゃんは卓球がしたい……ちょうどいいずら!」

ルビィ「で、でもルビィはおねえちゃんが……」


千歌「――わ、空いてる空いてるー!!」


ダイヤ「引っ張らないでくださいっ」


ルビィ「――お、おねえちゃんっ!?」


ダイヤ「え……ルビィ! ど、どうして」


花丸「お久しぶりです、ずら!」


ダイヤ「花丸さん!」

果南「おー、卓球してるの? まだ続けてたんだ?」
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2017/06/22(木) 17:23:55.93ID:i0UcVMUE
 、
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2017/06/22(木) 17:25:01.37ID:i0UcVMUE
花丸「えへへ、一応……」

千歌「花丸ちゃんにルビィちゃん!! なんで卓球やってるの!?」

花丸「こっちの善子ちゃんが……」

曜「およ……善子ちゃんだ」

善子「ヨハネよ!」

ダイヤ「……善子?」

千歌「善子……」

善子「ヨハネ!」


ダイヤ「津島!」

千歌「善子ちゃん!?」

善子「え、え……?」


梨子「……」キョロキョロ…


梨子(わ、わたし、置いてかれてる……)
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2017/06/22(木) 17:25:20.69ID:i0UcVMUE
>>51
ほとんど全て網羅するつもりです。
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2017/06/22(木) 17:26:14.57ID:i0UcVMUE
◇――――◇

果南「つまり、私とダイヤとルビィちゃんと花丸ちゃんは一緒に、内浦にある公民館で卓球をしてたってわけ」

千歌「ほえー……ねね、ルビィちゃんに花丸ちゃん、そんっなに可愛くて、卓球も出来るなんて……!! ねえ、スクールアイドルしようよー!」


花丸「わ、私は全然……」

千歌「えー……ルビィちゃんは!?」

ルビィ「ルビィは――」


ダイヤ「――ダメに決まっているでしょう!? 妹まで巻き込まないで」


ルビィ「……」

千歌「お願いしますっー!」

ダイヤ「ダメですわ」

千歌「なんで!」グイッ

ダイヤ「なんでもです!!」グイッ

千歌「むぐぐぐ……」

果南「ストップストップ」

曜「って、いうか、どうして千歌ちゃんとダイヤさんは善子ちゃんのことを?」

善子「ヨハネって呼びなさいヨーソロー魔」

梨子「ヨーソロー魔……」クス…

千歌「こっちが聞きたいよ!」

ダイヤ「本当ですわ!」


曜「私はただ……バスの方面が一緒で……」


善子(一年生? って、いきなり話しかけてくるんだもの、どんなリア充よ)
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2017/06/22(木) 17:27:08.61ID:i0UcVMUE
善子(普通なの?)

曜「いやー話し相手がいるといいなーって。今まで千歌ちゃんが降りたら寝てただけだからねー」

善子「ヨハネの魔力に引き寄せられたのね」

千歌「魔力……?」

ダイヤ「先程から、一体……」

花丸「き、気にしないでくださいっ」


千歌(善子ちゃんて、前はこんな子だったかな……?)


千歌「善子ちゃん、私のこと覚えてない? 沼津の卓球クラブで一緒だった、一つ上の高海千歌って言うんだけど……」


善子「高海千歌……? うーん……ごめんなさい覚えてないわ。本当に私? 人違いとか……」

千歌「っ……」


千歌「あ、あはは……そうだよね。善子ちゃんは強かったもんね、私はそうでも無かったし……覚えてなくても無理ないよっ!」


千歌「……」

曜「……」

善子「あ、あの、なんかごめんなさい……」

千歌「ううん、全然!」
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2017/06/22(木) 17:28:51.33ID:i0UcVMUE
善子「で、あなたはどうして私のことを?」

ダイヤ「申し遅れましたわ。そこの黒澤ルビィの姉の、ダイヤと申します」


善子「……姉妹揃ってぶっとんだ名前ですね」

ダイヤ「っ」ピキ


ダイヤ「ま、まあ……それは置いておいて、あなたがまだ卓球をしていたとは、驚きですわ」

善子「……私のこと知ってるんですか?」


ダイヤ「ええ、わたくしもルビィと同様中学生までは卓球をしていましたの。この辺りで強い選手のことは多少なりとも頭に入っているつもりですわ」


ダイヤ「全日本卓球選手権。小学校五年生の時にホープスの部。静岡予選優勝、ホープス全国大会ベスト16。小学校六年生ではホープス静岡予選2位、ホープス全国大会ベスト8。」

ダイヤ「中学一年生にてカデットの部、静岡予選2位、カデット全国大会ベスト16。中学2年生にて、カデット静岡予選ベスト4。カデット全国大会ベスト4。同年、ジュニア予選ベスト4……ジュニア全国大会、ベスト8」

善子「……」

果南「それって、す……凄すぎるんじゃ」

梨子「かでっとほーぷす?」


ダイヤ「大会の階級のようなものです。あなたは中学2年生の時には、既に一流の高校生が出場する大会でも上位に入っていた」

善子「気持ちわる……私でもそんなに覚えてないですよ」

ダイヤ「中学二年生を最後に静岡大会で津島善子の名前を聞くことはなくなりましたわ」


善子「当たり前よ、辞めたんだもの。今はこうやって趣味でやるだけ、こっちの方が楽しいし、部活に入ってた訳じゃないし」コンッコンッ
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2017/06/22(木) 17:29:57.25ID:i0UcVMUE
千歌「カデット……志満姉と一緒……。勿体無いよ善子ちゃん! なんで辞めちゃったのー」

善子「だからさっき言った通りよ! それ以上言うと呪いで地獄へ幽閉するわよ!!」

千歌「う、うん……?」


梨子「と、とにかくすごい子なの?」

果南「うん、要は小学校5年生の時からずっと静岡ではトップクラス、階級目安を無視するくらい全国区の選手ってことだよ」

梨子「す、すごい……曜ちゃんは高飛びで強化指定されそうだし……なんか凄い人ばかり……」


千歌「あはは、本当だよねー!」

千歌「……」

曜「私の話必要だった……?」

梨子「凄い人繋がりで……」

花丸「善子ちゃんそ、そんなに強かったの……? 確かに強かった、けど……」


善子「自信あるって言ったでしょ!」


花丸「う、うん……。あ、果南さん善子ちゃんね、果南さん達と卓球がしたいんだって」

善子「ちょっ!」


千歌「――それ本当!?」グイッ


千歌「やろうよ善子ちゃんっ!! 一緒に卓球!」


善子「わ、私は……やめとく。一番いい時期に一年半もブランクがあるってことがどういうことか、わかるでしょう?」


千歌「大丈夫だよ! カデットとかそういう大会と違って、スクールアイドルの大会だからレベルも下がるから! 善子ちゃんなら絶対優勝候補になるよ!」
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2017/06/22(木) 17:31:18.64ID:i0UcVMUE
善子「スクール、アイドル……それは知ってるけど、卓球……?」

ルビィ「スクールアイドルにはね、一緒にスポーツの大会も開かれてるの。メジャー競技ならあるから、卓球大会も開かれてるんだよ」

ダイヤ「千歌さん達はそれに出場しようと?」

千歌「そうなんです!」

善子「そんなのがあるの……」

ルビィ「どっちかと言うと興行的な面が大きいんだけどね。可愛い子が真剣にスポーツするのを見たいっていうコンセプトだから……」


千歌「ね、ね!? スクールアイドルもやってもらわなきゃなんだけど……可愛いし、絶対出来るよっ!」

善子「か、可愛いのは認めるけど……ヨハネだし」

梨子(認めるんだ……可愛いけどさ)

善子「残念だけど、お断り。他を当たって下さい」

千歌「そう言わないで……お願い!」

善子「嫌よ」

千歌「うぅ、最近フラれてばっかり……千歌、結婚出来ないのかな……」

善子「意味がわからないんだけど……」

千歌「じゃあじゃあ今から千歌と……卓球、して下さい!」

善子「……」
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2017/06/22(木) 17:31:58.38ID:i0UcVMUE
◇――――◇

花丸「よ、よろしくお願いします……ずら」

花丸(うぅ、なんでマルが……)


善子『高貴な堕天使ヨハネと一戦交えたいだなんて……無謀もいいところね』クククッ


善子『その前に私のリトルデーモンを倒してからにしなさいっ! リトルデーモンっ、行って!』

花丸『え、え……?』

善子『自信持って! あなたは強いから!』


花丸(そんなこと言われたって……)

練習前ラリー

コツン…フワンッ

千歌「これ……」

千歌「花丸ちゃん粒高?」

花丸「はい、一応」


千歌「うわ……マジかぁ……」


果南「いやー、千歌勝てるかなぁ……」


ダイヤ「花丸さんはちょっと特殊ですからね」
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2017/06/22(木) 17:33:01.45ID:i0UcVMUE
梨子「特殊?」

果南「うん、マルのラケット……ペンの握りで両面にラバーがついてるの」

梨子「え、でもペンホルダーって……片面しかないんじゃ」

果南「厳密に言うと違うんだよね。片面しかないのは日本式ペンホルダー。シェイクハンドみたいなブレードの形をした両面にラバーがついてる、中国式ペンて言うのもあるんだよ」


梨子「中国式ペンホルダー……じゃあ花丸ちゃんのはそれ?」


ダイヤ「いえ、あれはそのどちらでも無くて……反転式ペンホルダー、ですわ」


ダイヤ「昔日本では中国式が一般的ではなく、しかし両面で打つために改良された、いわば中国式の亜種です。数も少なくあまり見ることはありませんわね」


曜「ていうか花丸ちゃんて、あれ、粒高ですよね?」

ダイヤ「ええ、そうですわね」


果南「正直、多少は慣れてないとストレートで負けちゃうだろうなあ」


梨子「あ、あのすみません……粒高って……」

善子「あなた初心者なの?」


梨子「う、うん……ごめんなさいっ」


善子「あ、謝らなくていいけど……」
0063名無しで叶える物語(おにぎり)@無断転載は禁止
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2017/06/22(木) 17:40:47.56ID:i0UcVMUE
善子「粒高っていうのは、ラバーの種類のこと。普段よく使われてるのは表面がツルツルしてて平らなものよね。それが"裏ソフトラバー"。実はアレ、裏返すとツブツブがついてるの、その形状によって色々とまた性能が変わるんだけど……。

善子「ほら私のラケット見て、よく見るとツブツブが透けてるでしょ」

梨子「本当だ……」

善子「これをひっくり返して表面がツブツブになってるラバーがあるの。その粒の高さによって、"表ソフトラバー"と"粒高ラバー"っていう二つのラバーに分類されるのよ」

善子「裏ソフトラバーは回転とか球の威力が強い、その分相手の回転の影響をもろに受けるの」

善子「表ソフトラバーっていうのは粒の高さが中ぐらいで、回転はあんまり掛けられないけど球離れが早くてスマッシュとか弾いたりミート技術がやりやすいから前陣向きね。最後に粒高ラバーなんだけど」


善子「あ、始まる。見ながら説明するわ、よく見てて」


「よろしくお願いします!」



高海 千歌

ラケット   サナリオンD
フォアラバー タキネスチョップ(薄)
バックラバ」 タキネスチョップ(薄)

VS

国木田 花丸

ラケット   ストリークR-H
フォアラバー カールP3(極薄)
バックラバー 狂豹2(薄)



※()の中はラバーのスポンジの厚さ。薄ければ薄いほど飛ばなく、厚ければ厚いほど反発力が強くなる
0065名無しで叶える物語(おにぎり)@無断転載は禁止
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2017/06/22(木) 17:43:47.82ID:i0UcVMUE
ごめんなさいまたド深夜に。前回落ちたところまではとりあえずすぐ投下します。
0068名無しで叶える物語(庭)@無断転載は禁止
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2017/06/22(木) 18:25:40.36ID:Kt1yn+lv
>>64
ビギナー同士だと粒高の性質がわかってないと返しにくいから勝ちやすい
粒高に頼ったプレイをしがちになって技術的に向上しにくくなるから向かない
という点でどっちも正しい
0071名無しで叶える物語(茸)@無断転載は禁止
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2017/06/22(木) 20:45:19.70ID:Eo/NY908
卓球でちかっちのボールが揺れるとかそんな感じのゆるいエロネタかと思ってたら詳しくて草
タキネスシリーズとか狂豹懐かしい
0075名無しで叶える物語(庭)@無断転載は禁止
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2017/06/23(金) 00:25:24.14ID:47EKZNVn
千歌(よし、サーブだ……。粒高とか久しぶりすぎて忘れちゃった……どうなるんだっけ……)


千歌(いいや、とりあえずバックに強めの下回転で……長さも中途半端でいいから様子見だね)

キュパッ


花丸(純粋な下回転……)パコンッ

千歌「短っ……」


千歌(でもツッツキだし、ツッツキで繋いで……)スッ…ポ-ンッ


千歌「えっ」

ルビィ「1-0」

花丸「ほ」


千歌(うぅ、やっぱやりにく……)


千歌(次はバック深くに、切れた下回転で……詰まれば浮いて帰ってくるはず、あわよくばエースも)

キュッ


花丸「くっ」


花丸(深いっ)ポ-ンッ


千歌(よしっ、打てるっ!)キュパッギュッイン
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2017/06/23(金) 00:26:40.86ID:47EKZNVn
花丸(バックにドライブ! 面合わせて……力抜いて……)カコン…フワン…


千歌「くっ!」


千歌(いやー、普通に返ってくるかぁ、流石粒高……でもちょっと高いっ、もう一発フォアクロスにっ)キュパッ…ストンッッ


シュルルルルッ……


千歌「え」

ルビィ「2-0」


善子「わかった?」

梨子「全然」


善子「そりゃそうよね。あれ、粒高っていうのはちょっと特殊なの。相手の回転の影響をあんまり受けないし、それどころか、相手の回転をそのまま逆にして返すのよ」


梨子「――回転を逆に……?」


善子「そ、千歌さんだっけ? あの人が下回転サーブを出したならそのまま返せば上回転になって、上回転を出されたら下回転になって返る。横回転だと色々ぐちゃぐちゃになってよく分からなくなることが多いわ」


善子「さっき千歌さんは下回転を二本出して、二本目はドライブで攻めたでしょ? ドライブは上回転、それを花丸が角度を合わせて返すと、出された上回転が反転して、そのまま下回転になって千歌さんの所へ返っていくわけ」


梨子「カットマン……みたいな?」
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2017/06/23(金) 00:28:12.88ID:47EKZNVn
善子「あー……まあ間違ってはないけど。カットマンは自分から回転を思いっきりかけるけど、粒高は相手の回転を利用するの。だからカットマンでもバックに粒高を貼る選手は多いわ」


千歌「っふ!!」キュパッギュインッ

花丸「っ」カコン…

千歌「っ!?」ギュインッッ

カコンッ


千歌(どんどん、回転がっ……)

ギュインッッッストン……シュルルルルッ


千歌(ぁ、またネットミス……)

ルビィ「6-2」

善子「カットマン相手だと強烈なドライブをかけ続ければなんとかなる、こともある。でもね、ペン粒相手だとドライブを強くかければかけるたび……自分の首を締めることになる」


ギュインッカコンッギュインッッ…ストンッ…


千歌「くっ……」


善子「強くかけたらかけた分だけ、自分の回転が反転されてそのまま強い下回転になる。どんどんボールの威力をあげても、それ以上に強い下回転が返ってくる。右に左にブロックで振り回されてやがて体制が苦しくなって、ネットやオーバーが連発」
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2017/06/23(金) 00:29:25.27ID:47EKZNVn
善子「花丸のプレースタイルのペン粒は、そうやって様々な回転を反転させて翻弄しながら戦う、"前陣異質型"なの。基本は台に張り付いてブロックを狙うから、ドライブを掛けるにしてもちゃんとコーナーを狙ってノータッチで抜くとかしないと、苦しいと思う」


千歌「よしっ!!」パコ-ンッ!!!!


果南「いいね、スマッシュみたいなミート系なら回転の影響とか無視して打ち抜ける。千歌は粒高慣れてないからなぁ」


曜「粒高ってそんなに慣れてないと難しいの?」

果南「うん、格上でも粒高に慣れてないとそのまま負けちゃうこともあるからね」


ルビィ「8-4です」


果南「でもペン粒はバックのブロックは強いけど、フォアはブロックしにくいし攻撃力もないから多少甘くなってでもフォアを狙うべきだね」

善子「ま、そうよね」


ダイヤ「でも花丸さんは……」

善子「?」


千歌「ふっ!!」ギュインッ!


千歌(多少甘くなってでもフォアに威力強めのドライブっ! フォアならバックみたいにしつこくブロックは出来ないはず、それに精度だって高くない。浮いたところを回転無しのスマッシュでっ)


花丸「――っ!!!」ガツンッッッ!!!!
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2017/06/23(金) 00:33:24.00ID:47EKZNVn
千歌「!?」


コツン……コツン……シュルルルッッ…


千歌「え……」

曜「!?」


梨子「――千歌ちゃんのコートでネットの方にに……戻っ、た?」


花丸「ほ……」

善子「ドライブに対して当てるだけじゃなくて、上り側を捉えて、上から下にガツンと振り下ろすと強烈な反転と合わさって、物凄い下回転になる」

善子「……フォアのカット性ショート……なにあれ、あんなの使えたの」




果南「マルの"カット性ショート"は威力抜群だからね、特に"フォアハンドは"」


果南「善子ちゃんの時にあれをやれなかったのは、多分善子ちゃんのコースが良かったからかもね」

善子「ヨハネよ。まあ確かに、甘いとこには出さないようにしてたけど」


果南「マルのあれはめちゃくちゃ切れるんだけど、コースが甘くないと出来ないから」


善子「なるほどね……バックのカット性ショートなら一般的だけど。花丸もしてきたし」


ダイヤ「そうですわね、バックハンドはブロック、フォアハンドは甘くなると強烈なカット性ショート……狙う場所はフォアの厳しいところ。そこを狙えば」


千歌「あっ……」オ-バ-…


ルビィ「10-4」
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2017/06/23(金) 00:36:28.83ID:47EKZNVn
梨子「オーバー……カット性ショートっていうのは……さっきの戻る球?」


善子「ええ、台上でツーバウンドだし、返すだけじゃないってことね」


果南「……善子ちゃんはさ、プッシュ受けたことある」

善子「いや、ないけど」

ダイヤ「やはりあなたは強いのね」


善子「?」


千歌「んぅっ!」


ギュインッガツンッッ


千歌「!?」

千歌(バックでもカット性ショート!? でもフォアの時より回転は反転されてないっ、落ち着いてツッツキで相手のバックサイドに……返ってくる球はナックルか上回転の緩い球……今度こそスマッシュで――)


花丸「っ!!!」パコ--ンッッッ!!!!!


梨子「きゃっ」


果南「おっ、と」パシ…


梨子「あ、ありがとうございます……」

千歌「……え」


千歌(サイドラインから外に、抜けてった……)


ルビィ「11-4、セットポイント花丸ちゃんです」
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2017/06/23(金) 00:37:36.75ID:47EKZNVn
曜「な、なに今の!? はやっ」

果南「ちょうどよく見れたね……」


善子「なるほど――バックハンドプッシュ、ね」

梨子「プッシュ……」

善子「相手の下回転や少し浮いた球に対して角度を合わせて押し込む技術よ。スマッシュほど攻撃的じゃないけど粒高使いの中ではかなり攻撃力のある技術」


善子「プッシュっていうのは回転がほとんどかかってないナックル性の球でね、普通に返すだけじゃあんまり飛ばないの。だからしっかり振り切って返さないといけないんだけど、軌道が回転がかかってる球とは全然違うからとにかくやりにくい」


善子「今のは決めにいくプッシュみたいだったけど……おそらく」


果南「今のは効いたんじゃないかなー」


ダイヤ「そうね……」



2セット目
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2017/06/23(金) 00:39:18.86ID:47EKZNVn
   、
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2017/06/23(金) 00:41:35.91ID:47EKZNVn
千歌「くっ……」

千歌(さっきよりは早くないけど、プッシュ返しづらい……なんか勢いはそうでもないのに、重い)

ルビィ「1-0」

千歌「……」コツコツ…

キュパッッ…パコンッ

千歌(下回転に対して止めるんじゃなくて、弱めのプッシュ……さっきと攻め方が違う……)

千歌(回転は少なめ……こっちも回転の少ない角度打ちで合わせて……)カコンッ


梨子(なんか……)


曜「千歌ちゃん、さっきより振り回されてない?」


善子「そうね……。1セット目と違ってプッシュとかフリックとか……そういう弾く系のナックルボールで攻めてるわね。1セット目がネット付近に出させて攻めてたのを、2セット目では台から離れさせて攻めてる」


善子「台から離れるとドライブ自体の攻撃力は上がるけど……時間の余裕が出来るから……」


花丸「ふっ……」ガツンッッッ…


千歌(短いっっ……!!!)バッッッ


コツコツ…シュルルルルッッ

千歌「くっ……」

千歌(届かなかった……)


善子「カット性ショートで反転されて急にネットギリギリに落とされる。そうすると今みたいに追いつけない」
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2017/06/23(金) 00:42:48.56ID:47EKZNVn
梨子「すごい……」


曜「千歌ちゃん……」


善子「強烈なプッシュがあるってことを頭に入れてると、前に出て攻めにくくなる。ああなると、なかなかやっかいね」


善子「前に出て攻めにくくなると……」


ガツンッッ

千歌「またっ……」ツッツキッッ


千歌(なんとか繋いだっ……回転もかけたし、プッシュは……)


パコ-ンッッッ


千歌「ぁ……」ポ-ンッッ

善子「カット性ショートへの反応が遅れて前のめりになる、前のめりになると遅めのプッシュでも差し込まれて、得点される」


ルビィ「5-1」


梨子「ど、どうすればいいの……?」


善子「簡単よ、回転を使わなきゃいいの。回転使わない球なら、回転反転もされないし」


果南「千歌思いっきり回転で攻めてるしね、あぁ……また横回転なんて出して……」

ルビィ「6-1」


千歌(どうしよう……負けちゃう)


千歌(サーブは全然効かないし……横出すと訳わからなくなっちゃうし……)


千歌(下……も出しすぎだし、あとは……)


千歌(うん? 粒高は回転を反転させて強くなる……自分からは上手く回転はかけられない)


千歌(てことは……ナックルで攻めたら、どうなるかな)
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2017/06/23(金) 00:44:53.51ID:47EKZNVn
千歌(……短いと、フォアならフリック……バックならプッシュで押し込まれる。なら長いサーブで勢いのあるナックルロングサーブなら?)


パコンッッカコンッ


花丸「はやっ」チョコンッ…ストンッ


ルビィ「6-2」


千歌(ネットミス……効いてる)


千歌(花丸ちゃんのサーブは……バックに曲がる横下回転と下回転だけ。サーブは単調……下回転を出してきたらバックのプッシュ狙い。だったら……)

キュパッカツカツッ


千歌(回転弱めの、長いツッツキでっ押し込むっ)バンッ


花丸「っなが!?」ポ-ンッ

千歌(落ち着いて、叩くっ!)

パコ-ンッッッ


千歌「ほ……」

ルビィ「6-3」


花丸(なんか嫌な予感がするずら……とりあえずミス待ちで守ろう)キュパッッ


千歌(横下回転のサーブ! 台からちょっと出る……バックでドライブじゃなくて、角度打ち、速さはいらない、花丸ちゃんの正面じゃないとこにっ)カコンッッ


花丸「っ」カコンッストンッ…


千歌「よしっ!」


ルビィ「6-4」
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2017/06/23(金) 00:47:50.59ID:47EKZNVn
善子「あら、さっきの3点はいいんじゃない?」

梨子「な、なにか変わったの?」

善子「ほとんど回転を使ってない。サーブはナックルでロングだし、レシーブも回転を弱めて速度を出して、相手の深いところに」

善子「ナックル回転の球は粒高にとって天敵でね、回転を利用出来ないから。自分からかけられることはかけられるんだけど、どうしても弱いし甘くなりやすい。打ちごろになるってことね」

善子「それに、粒高の場合は台から出るような球は攻めにくいからこれも有効」

果南「うん、いいね」



千歌「しゃっ!!」

ルビィ「6-8」

花丸(ほとんど長い球ばっかり……ドライブもあんまりして来ないし……もう慣れられちゃった……)


ダイヤ「案外慣れるまで早かったですわね」


善子「花丸は技術ひとつひとつはいいけど、基本的な対策をされちゃうと、なんとかなっちゃうパターンのプレイヤーなのね」

果南「そうなんだよね、カット性ショートもドライブ回転でしか威力は強くないし、プッシュも台から出ないくらいの下回転でしか上手く打てない」


果南「だからナックルで長く攻めればマルは対処出来ないんだよね」

ダイヤ「ナックルボールの処理を上手く出来るペン粒と当たるのが、一番やっかいですわね」

善子「でもあんまりいないわよ、そういう人。居てもある程度の実力がある人ならドライブの威力だけでぶち抜ける」

曜「上級者には通用しないってことか!」

善子「そ、だからトップ選手でペン粒なんてほとんどいないでしょ」

善子「言っちゃあれだけど、伸び代がない戦型なのよ」
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2017/06/23(金) 00:48:55.77ID:47EKZNVn
果南「善子ちゃんの場合も多分そうだよ。コースが厳しいのかドライブが凄いのかわからないけど、マルはフォアのカット性ショートもプッシュも見せなかった。多分見せられなかったんだよ、チャンスボールがなくって」


善子「あなた褒めるのが上手いわね、堕天使の宝珠をあげてもいいわ」


果南「う、うん……」

梨子(やっぱり変な子だ……)


ルビィ「9-11、セットポイント千歌さんです」


曜「取った! 2セット先取だよね?」


果南「うん、次取った方が勝ち」

千歌「ふー……」コツコツ…

千歌「よしっ」


梨子「すごい……千歌ちゃんがリードしてる」


善子「回転が少ない球を出し続けて花丸の返し方がかなり単調になってるのがわかる? 花丸は棒球で返すか、弱めのカット性ショートで返すことしか出来ない。で、浮いたら」

千歌「しゃっ!!」スマッシュッッ


花丸「くっ……」

ルビィ「1-4」


千歌「ふっ……!」カコンカコンッッ


花丸「ぁぅ」


千歌「よしっ!」

曜「わ……サービスエース……」
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2017/06/23(金) 00:52:48.45ID:47EKZNVn
  、
0089名無しで叶える物語(庭)@無断転載は禁止
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2017/06/23(金) 00:53:27.50ID:47EKZNVn
果南「それが出来れば中途半端に浮いた球を裏ソフトで強打することもできるからね。マルも挑戦してた時期はあったんだけどねー、やっぱり難しいみたい」

善子「まあ……それが出来たら完全に上級者のペン粒よね」

梨子「そっか……」

善子「それが出来ない以上……」


千歌「やったー!!!」

ルビィ「11-4、千歌さんの勝ちです」

花丸「負けちゃった……」

千歌「ありがとうございました! ほんと負けちゃうかと思った……」

花丸「えへへ、千歌さん強いですね」

千歌「えへへ、ありがと! 楽しかったよ!」キラキラ

ルビィ(なんか、かっこいい……!)


善子「実力自体は千歌さんの方がずっと上だと思うけど、ペン粒はそういう相手にも勝てちゃったりするから、怖いのよね」

梨子「すごいね……」

善子(千歌さん、結構小さい時からやってるらしいけど、確かにそういう感じはあったわね。やっぱり小さい時にやってたかやってないかだと――全然違うし)

善子(でもなんか……)

ダイヤ「うーん……」

果南「どうしたの?」

ダイヤ「いえ、千歌さんのプレーを見て合う用具を考えたのですが……あまりどれかに特化しているようにも思えないので、無難に性能の高いものがいいかと思って」
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2017/06/23(金) 01:02:52.60ID:47EKZNVn
千歌「――善子ちゃん!!」キラキラ


善子「な、なによ」

千歌「試合しよっ!」



曜(千歌ちゃん、楽しそう……強い人とするのは楽しいのかなやっぱり?)



ブブブブ


善子「あ……ごめん用事が」

千歌「え!?」

善子「ほんとよ、帰ってこいって」

千歌「そ、そんな」

千歌「試合したい!」

善子「そ、そんなこと言ったって仕方ないでしょ!」

千歌「うぅ……」

善子「わ、分かったわよ……あなた、私と同じ学校なんだから……暇な時体育館に行くから……」

千歌「本当!? 絶対だからね!」

善子「わ、わかったから」


善子「じゃあルビィ花丸、またね」

ルビィ「うん、ばいばい」

花丸「またね」


善子「あ、他の人も」ペコリ…


曜「ばいばーい」


スタスタ


曜「礼儀正しい時もあるよね」アハハ


梨子「不思議だね……」
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2017/06/23(金) 01:04:17.92ID:47EKZNVn
ダイヤ「じゃあ千歌さん、またショップへ行きましょうか」

千歌「え、打たないんですか?」


ダイヤ「もう十分打ったでしょう、ほら行きますわよ」

千歌「ふぁい……」

ダイヤ「じゃあルビィ、また家でね」

ルビィ「あ、うん……」

果南「じゃあね」

千歌「またねっ!」

スタスタ


ルビィ「なんか……卓球してる時の千歌さん、かっこよかったね。それに、楽しそうだった」

花丸「そうだったね……」

ルビィ「……」


花丸「ダイヤさんを説得してさ、やってみたら?」

ルビィ「え……」
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2017/06/23(金) 01:04:43.90ID:47EKZNVn
花丸「卓球も今まで通り楽しそう、スクールアイドルもずっとやってみたかった……。好きと好きが一緒に出来るなんて、これ以上ないと思うずら」

ルビィ「……でも」


ルビィ「私が色んな習い事から逃げ出したせいで……お姉ちゃんは好きだった卓球やめて……それなのにルビィがする、なんて……」

花丸「……そっか」


花丸「ダイヤさん……逃げたっていうルビィちゃんのこと、恨んでるのかな……マルは違うと思うけど」


花丸「逃げ出したなら逃げ出したなりに……好きなことを全力でやった方が、いいと思う」

ルビィ「っ……」


花丸「家ではあんまり話さないんだっけ?」


ルビィ「うん……忙しそうだし、話も合わないし……」

花丸「話してみたら? それがだめなら……」
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2017/06/23(金) 01:05:53.68ID:47EKZNVn
◇――――◇

卓球ショップ


ダイヤ「あなた、自分の得意な技術は?」

千歌「えっと……なんだろ」

果南「うーん……ドライブ?」

千歌「多分ドライブ!」

ダイヤ「まあそれなら攻撃用で……木材? 特殊素材?」

千歌「あんまり飛びすぎるのも困るし……木材、かな? 特殊素材も使ってみたいけど……」


梨子「これってこんなに種類あるのに……試し打ちとかも出来ないの?」


果南「できるところもあるんだろうけど、沼津じゃあね……」

果南「そもそもラケットにラバーを貼り付けなきゃだから、その時点で売り物にはならなくなるからね……」

梨子「そうなんだ……自分に合うのを見つけるのも大変そう」

果南「大体の人はラバーに合わせるみたいなものだからね」

千歌「いっぱいあって全然わかんない」


ダイヤ「これなんかいかが? 癖はないし、千歌さんのドライブの邪魔をすることはないはずよ」

千歌「うーん……?」


千歌「やっぱりもうちょい考えようかな……」
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2017/06/23(金) 01:06:42.03ID:47EKZNVn
ダイヤ「そうですか……」

ダイヤ「梨子さんには自信を持ってオススメできるラケットがありますのよ」

梨子「どれですか……?」

ダイヤ「これですわ。値段も安くて、木材でコントロールもしやすい昔からある定番の名品なのです。これなら上達の妨げにもならないでしょうし、上達してからでも十分使っていけますので、自信を持ってオススメできます」

千歌「あ、それ知ってる! いいやつ!」

梨子「へえ……これなら安いし……」

ダイヤ「インターネットでも調べてみるといいと思いますわ」

ダイヤ「次にラバーですが……これもオススメがありますの」

ダイヤ「考え方にもよりますが、初心者は扱いやすくコントロール性の高いラバーがオススメです」

梨子「そんなに違うんですか?」

ダイヤ「ええ、裏ソフトラバーにも種類があって大きく高弾性、粘着性、テンションラバーの三つです」

梨子「ま、また種類……」

曜「卓球の道具はよくわからなくなるよね、私もあんまりだし」アハハ

ダイヤ「高弾性、これは名の通りスピードが出るラバーですわ」

ダイヤ「粘着性ラバーは、中国のトップ選手が好んで使っていますの」
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2017/06/23(金) 01:07:35.34ID:47EKZNVn
曜「中国って卓球強いんだよね!」

ダイヤ「ええ、ここ何年も敵なしの状態が続いていますわね」

梨子「この粘着性ラバーはすごいってこと?」

ダイヤ「粘着性ラバーというのは、表面がペタペタしていてそれが回転を生み出すの。スポンジが硬くて食い込みにくいから、シートに擦ることで威力を出す」

ダイヤ「なのでちゃんと振り切れることが前提のラバーと言えますわね。使いこなせれば粘着独特のぐにゃりと曲がる球が出せたりしますの」

梨子「食い込ませる……擦る……」

ダイヤ「それはまた練習していくうちにわかるようになりますわ」

ダイヤ「次にテンションラバーというものですが……」

梨子「は、はっせんえん……」

ダイヤ「それはテンションラバーの代表的なラバーで、世界のトップ選手からアマチュア選手まで圧倒的な支持を得ているラバーなんですの」


梨子「やっぱりすごいの?」


ダイヤ「ええ、テンションラバーの特徴は、スピンと回転が高い次元で両立されているという点ですわね。世界の主流よ。粘着ラバーは振り切れないと棒球になりますが、テンションラバーだと勝手に前進回転がかかったりかなりサポートしてくれますの」
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2017/06/23(金) 01:10:00.68ID:47EKZNVn
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2017/06/23(金) 01:11:13.68ID:47EKZNVn
果南「でもそうしたら、このメーカー、日ペン単板置いてないってことに……」

果南「他のメーカーにするしかない、なるほど……うぅ、ラケット決めてたのに……廃盤なんてうそ……」

ダイヤ「日ペン?」

果南「もう廃盤なんだって……なにさ、売れないからって……日ペン使いはいるのにさ」ブツブツ

果南「おかしいよ、一番有名なメーカーのくせに……」ブツブツ

曜「凹んでる……」

千歌「果南ちゃんさ、ラケット持ってたよね? あれどうしたの?」

 

果南「壊した」


 

千歌「え?」


ダイヤ「……」


ダイヤ「日ペン単板は厚い木が一枚で構成されていて、合板と違って強度が低いんですの。台に強く当てたりすると、あっさり割れることも」


果南「同じの買おうか迷ったけど高いからさ……それまで適当な合板買って凌いでたんだけど……本格的にやるならって思って……」


果南「はぁ、いいよねシェイクのみんなは……」


梨子「あ、あはは……」
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2017/06/23(金) 01:11:57.37ID:47EKZNVn
◇――――◇

スタスタ


千歌「善子ちゃんっ! おはよう!」

善子「お、おはよう」


千歌「ラケット持ってきた!?」

善子「今日はやらないわよ」

千歌「え!?」

善子「え!? じゃないってば」

千歌「待ってるから、絶対きてね!!」

千歌「あ、善子ちゃんてどんなラケット使ってるの!?」

曜「ぐいぐい行くね……」

梨子「そうだね……」

善子「ど、どうしたのよいきなり」


千歌「強い人ってどんなの使ってるのかなーって!!」


善子「それも試合する時に見せてあげるから」


善子「でも、あなた……カットマン用の使ってたわよね? 早く替えた方がいいんじゃ……」
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2017/06/23(金) 01:12:35.10ID:47EKZNVn
千歌「そうなんだけどさあ……どれがいいのかなって」

善子「とにかく攻撃用にすれば大分変わると思うけど……それなら多分花丸の時もドライブだけで撃ち抜けたんじゃないですか?」

千歌「えへへ、そうかな。じゃあ早く替えないとだよねー」

千歌「じゃっ、また今度ね!」


◇――――◇


千歌「体験入部……?」

千歌「本当に!?」

花丸「はい、よろしくお願いします」

果南「おー……」

果南「ルビィちゃん、平気?」

ルビィ「が、頑張りますっ……」

千歌「やった!! ねね、これは強制じゃないんだけど……2人は卓球とかする気ない?」

ルビィ「あ、実はそっちもしてみたくて……」

花丸「マルも……」

千歌「ほ、本当に……っ」ウルウル

千歌「やったっ!!! これからよろしくっ!!」

曜「仮だからね」アハハ…
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2017/06/23(金) 01:13:34.39ID:47EKZNVn
善子「……た、体験入部?」コソコソ

善子「な、なによお……ふたりして、そんなこと私に一言も……」ウル

◇――――◇

ダイヤ「ふぅ……帰りましょうか」

ダイヤ「ルビィは先に帰ったかしら」

ガチャッ

ダイヤ「?」

ダイヤ「なっ!?」


「――久しぶりね!!」


ダイヤ「ま、鞠莉さん!?」

鞠莉「シャイニー! 身長、大きくなっちゃって!! どのくらい伸びた? 10cmは伸びてる?」ナデナデ


ダイヤ「べたべた触らないで」

ダイヤ「もうっ、一体どうして……」


鞠莉「向こう飽きちゃった!! 大学ではまた向こうに行くし、今くらいこっち戻ってきてもいいかなって!」


ダイヤ「……あ、相変わらず自由奔放ですのね」


鞠莉「ふふー、嬉しいでしょ?」


ダイヤ「あなたね……」



鞠莉「――それに、もう廃校になっちゃうなら、最後くらい戻って来てもいいでしょう?」
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2017/06/23(金) 01:20:07.47ID:47EKZNVn
ダイヤ「なるほど……」

ダイヤ「とりあえず座って」

鞠莉「んー、果南は元気?」

ダイヤ「ええ、特に問題なく」


ダイヤ「なんだかよくわからないことをしていますけれど」


鞠莉「?」


◇――――◇


ダイヤ「電話で話した通り、スクールアイドルの中でスポーツ競技をするらしいんですの」


ダイヤ「一応真剣らしいです。わたくしも映像を見たわけではありませんが」

鞠莉「卓球ねえ、いいじゃない。久しぶりにする?」

ダイヤ「わたくしはもう全然できませんわよ」

鞠莉「お家のこと? 忙しい?」


ダイヤ「それもありますけれど、受験もありますし」

鞠莉「あー、なるほど」


ダイヤ「今なら果南さんが体育館にいると思いますわ」


鞠莉「本当? じゃあ行こうよ!」
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2017/06/23(金) 01:22:26.42ID:47EKZNVn
◇――――◇
体育館


ルビィ「うゅ……お、お姉ちゃん」

ダイヤ「ルビィ……先に帰ったんじゃ、なにをしているの?」

ルビィ「え、えっと」

千歌「仮入部したいって!」

ダイヤ「仮入部……?」

ルビィ「……」

ダイヤ「ルビィ、どういうこと? 答えなさい」

ルビィ「……ぅ」

ダイヤ「答えなさい」

ルビィ「……」


花丸「……ルビィちゃん」


ダイヤ「あなた、わたくしは最初に言いましたわよね? 妹だけは巻き込まないでって」


千歌「で、でもルビィちゃんはしたいって」

ダイヤ「――家族の問題に口を出さないで」


千歌「っ……」

ダイヤ「全く、スクールアイドルなんていうわけのわからないものを……」

ダイヤ「ほら、ルビィ帰るわよ」


ルビィ「……はい」


果南「ち、ちょっとダイヤ……」
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2017/06/23(金) 01:25:39.25ID:47EKZNVn
鞠莉「――かなーんっ!! シャイニー!!!」

果南「へ」

鞠莉「久しぶりー!!!」ギュッギュッ

果南「ちょ、え、鞠莉!?」

梨子「……だれ?」


鞠莉「……あれ、出てくるタイミング間違った?」スリスリモミモミ…


果南「……揉むな」//

ダイヤ「……」


ダイヤ「向こうがつまらなかったから戻ってきたらしいですわよ」


果南「そんな理由で……」


鞠莉「そんなってなに!? 廃校が決まって、最後の思い出が欲しいって思うのってそんなに不自然?」


果南「そう言われると……」

鞠莉「どうせ卒業したら向こうに行くから」


鞠莉「果南たちもスクールアイドル? っていのも思い出作りでしょ?」

千歌「思い出作りじゃありませんっ!」

鞠莉「?」


千歌「あ、えーと高海千歌です。思い出作りといえば思い出作りかもしれないですけど……でも優勝することしか考えてないですから!」
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2017/06/23(金) 01:27:23.65ID:47EKZNVn
鞠莉「おぉ……いい心がけね!」


鞠莉「それに――果南、卓球続けてたんだ?」

果南「……一応ね」

ダイヤ「……」

千歌「?」

鞠莉「よかったねっ! 私も久しぶりにやりたくなってきちゃった」

千歌「卓球出来るんですか!? というかあなたは……」


鞠莉「小原鞠莉三年生よ。、一年生の夏前に海外に行って、明日から戻ってくるの!」


千歌「金髪、ハーフ……可愛い、スタイル抜群……」キラキラ

曜「ぁ……」

ガシッッ

千歌「――鞠莉さん! スクールアイドル、やりませんか!?」

曜「やっぱり」


鞠莉「わたし? 私はそういうの無理だって、柄じゃないっていうの?」


千歌「そんなことないです! 可愛いし、スタイルもいいし……絶対向いてます!」


鞠莉「あはは、そんなに褒めても何も出ないよ?」


ダイヤ「じゃあわたくし達は帰りますわ、また明日」

ルビィ「さようなら……」ペコリ

千歌「あ、うん、またね!」
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2017/06/23(金) 01:28:02.77ID:47EKZNVn
梨子「……なんかルビィちゃん大変そうだね」


花丸「……ダイヤさんのことを気にしすぎなんだと思います」


花丸「自分がしたいって、はっきり言えばダイヤさんも、きっと許してくれます。あの人は厳しいけれど、誰よりもルビィちゃんのことを考えてるはずなんです……」

鞠莉「……なんだか訳ありみたいねえ?」


鞠莉「ダイヤかぁ、昔からルビィちゃんのこと話してたよね」


果南「うん、ルビィちゃんには厳しくしてるみたいだけど……」


千歌「どうしたらルビィちゃんに正式に入って貰えるかな……」


梨子「家族の問題だし、ちゃんとルビィちゃんの口から言わないとだめだよね……」


千歌「はぁぁ、難しいなぁ……」
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2017/06/23(金) 01:29:31.28ID:47EKZNVn
◇――――◇





鞠莉「どう? 卓球楽しい?」

果南「うん……まあ、今回はおかげさまで」

鞠莉「じゃあ、私も果南達の練習観に行こうかなー?」

鞠莉「卓球ならまたちょっと私もしたいし! ね、果南久しぶりに打とうよ」

果南「それはいいけど」

鞠莉「楽しく卓球するのが、一番だものね。今度は、上手くいくといいね」

果南「……うん」


◇――――◇

千歌「……善子ちゃんも!?」


善子「だ、だってなによ! 私にも一言くらい言ってくれたっていいじゃないっ!」


花丸「よ、善子ちゃんこういうの興味なさそうだったから……」


善子「少なくとも花丸よりは知ってる自信あるんだから!」

千歌「善子ちゃんスクールアイドルの方に興味あるの!?」


善子「ち、ちょっとだけよ」


善子「どうせこの後卓球するんでしょ、それまで暇だし、様子見!!」
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2017/06/23(金) 01:31:11.91ID:47EKZNVn
◇――――◇


千歌「善子ちゃん本当に可愛かった」キラキラ

千歌「ねえ一緒にやらない?」

善子(意外と楽しかった……みんないい人だし)

善子「か、考えておくわ」

千歌「ほんと? えへへ、楽しみにしてるね」

千歌「よし、打とうよ善子ちゃん」

善子「ん……」


千歌「ラケット見せて善子ちゃん!」

善子「はい。あなたまだカットマン用なの?」

千歌「あはは……変えたいけど迷ってて」

千歌「あ、これ粘着?」



果南「運が良かったね、善子ちゃんが卓球してるところ見られるよ」


鞠莉「あの子強いの?」


果南「全国に何回も行ってるんだって」

鞠莉「うそ……果南は試合しないの?」

果南「私はいいってば」


鞠莉「それ今の果南のラケット?」


果南「うん、ラケットもラバーも安いやつだけどね」

鞠莉「あんなに派手に壊したんだものね」クス


果南「それは言わないで」
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2017/06/23(金) 01:31:49.88ID:47EKZNVn
鞠莉「本格的にプレーするつもりなら、また買ったら?」


果南「それがさあ、使ってたやつ廃盤になったらしくて」


鞠莉「あら……」

果南「千歌も攻撃型なのにカットマン用使ってるし……みんな道具には苦労してるよ」アハハ…

鞠莉「ふぅん……そうなのね」

鞠莉「じゃ、ちょっと打ちましょ果南♡」

千歌「あ、鞠莉さん打つんですか!? うぅ、みたい」

果南「千歌はそっちに集中しないとだよ」

千歌「はぁい」


曜「じゃあ私たちは3人で打とっか」


曜「私、粒高と打ったことないんだよね」

花丸「最初はなれないかもしれないですけど、慣れたら簡単ですよ」


梨子「ルビィちゃんは帰っちゃった?」


花丸「……はい」


梨子「そっか……」
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2017/06/23(金) 01:34:08.97ID:47EKZNVn
◇――――◇

曜「鞠莉さんは中国式ペン……」


鞠莉「そうなの、グローバルに行こうと思って」


曜(果南さんとの練習見てた感じだと、普通くらい?)


梨子「あ、あれ」ヒョイッ


梨子「球が来ない……へ、変な感じ」


花丸「だから粒高は慣れてないとそうなっちゃうんです」

梨子「む、難しいね……」


花丸「あの、曜さんて本当に粒高初めてですか?」

曜「初めてだけど……やっぱり難しいよねー」アハハ


花丸(全然初めてじゃない感じ……確かに最初は出来てなかったけど、すぐに軌道に慣れて……)

 
花丸(――運動神経がいいのかな……?)



千歌「よーしっ、善子ちゃんっ、試合!!」


善子(なんかこうやってると……卓球してた時のこと思い出すっていうか……)


曜「お、始まる……」

曜「善子ちゃんて何がすごいの?」


花丸「何が……えっと、全部……?」


曜「な、なるほど……強い人にはそう言いたくなる気持ちもわかるけど」

花丸「あ、でも……一つすごい技があるんです」


曜「すごい技……」
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2017/06/23(金) 01:35:08.56ID:47EKZNVn
果南「さっき見てた感じだと、やっぱり相当強そうだね……左利きだし」

梨子「左利き……」

果南「右と回転が逆になるからね、慣れてないからやりにくいし左特有の球って感じのもある」


鞠莉「こと卓球においては……左のほうが断然有利よね」ギュッ

果南「……くっつきながら見る必要はないと思う」

鞠莉「なんで?」

曜(仲良いなあ……)

花丸「あ、審判行ってきます!」

梨子「あ……わたしがいこっか?」

梨子「その、審判の練習もしたいし」

花丸「いいんですか?」

梨子「うん、まかせて!」

花丸「じゃあ、お願いしますずら」

タッタッ


千歌「うぅ、やっぱり左利きは緊張するなあ」

千歌「そういえば普段から左利きなの? 大変じゃない?」
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2017/06/23(金) 01:40:06.19ID:47EKZNVn
善子「普段は右よ、卓球とかスポーツするときは左だけど」

千歌「な、なんかかっこいいっ……!」

善子「ふ、ふふ……そうでしょ」シュビッ

千歌「善子ちゃん、本気出してね!! どれだけ離れても!」

善子「……はぁ、分かった」

善子「じゃ、サーブで」

善子「ふぅ……」

 

「よろしくお願いしますっ」

 

高海 千歌

ラケット   サナリオンD
フォアラバー タキネスチョップ(薄)
バックラバー タキネスチョップ(薄)

VS

津島 善子

ラケット   ティモボルALC
フォアラバー 紅双喜キョウヒョウneo3(特厚)
バックラバー ラクザXソフト(厚)
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2017/06/23(金) 02:06:22.87ID:47EKZNVn
 、
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2017/06/23(金) 02:06:58.48ID:47EKZNVn
千歌(左利き、左利き……てことはサーブとかドライブの回転も全部逆……横回転はフォアに曲がってきて、ドライブはバックに食い込んでくる……おっけー、楽しみ……)ワクワクッ…

善子「……」スッ…フワッ…

千歌(なかでも、フォアにぐにゃんて曲がる横回転サーブは左にしか出せない。当然そこを警戒して――)


千歌(横回転だっ!!)グッ

善子「ふっっ」カコンカコンッッ!!!

千歌「!?」


梨子「――え、えっと……1-0」

梨子(サーブ、はやい……あっという間に千歌ちゃんのバックの方に抜けていった……)

千歌「くー……」

千歌(バックのサイドラインギリギリ……しかも早い。ゆったりしたフォームだったのに……ていうか横回転のフォームだったでしょ……)



鞠莉「わお……いきなりノータッチ」

果南「いやー、いいサーブ……」


鞠莉「いまラケットの角度、ギリギリまで横回転のだったと思う。手首のインパクトだけでよくあそこにコントロール……」


曜(やっぱりすごいんだ……)
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2017/06/23(金) 02:08:19.56ID:47EKZNVn
果南「1球目からサイドラインギリギリのロングサーブ……しかもノータッチで抜かれたんだから、これは厳しいね」


果南「いつでもあそこに決められるって思うとチラついて横回転の対処が遅れる」


スッ…キュパッッ


千歌(今度こそ横回転!!)

千歌(速度は速くないっ、このままサイドから出たところをクロスに、ドライブ……!)ググッ


グニャンッッ…ググッッ


千歌「!?」ブンッッ……カツカツ…

梨子「……2-0」


千歌(――ぜ、全然伸びて来ない……あんなに、ぐにゃんって、曲がるなんて……)

千歌(くるってわかってたのに……フォアの短いところに沈みながら曲がっていった……)


千歌(やっぱり……すごいっ)キラキラ


善子(開幕からノータッチ二本でサービスエースされてなんで楽しそうなのよ……まあいいわ)


善子(この人のサーブはそんなに難しいものもないし……)

キュパッ


善子(下回転……)スッ…グッ


千歌(みじかっ、ストップ!?)グイッッチョコンッ



千歌(なんとか取ったっ、でもっ……)
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2017/06/23(金) 02:09:57.70ID:47EKZNVn
善子「……」グググッ

千歌(ドライブがくるっ……!!)

善子「鎮魂の魔宴、13式……っ」ブツブツ…ググッ

花丸「あれずら!!」

曜「え!」

千歌(!? い、いつまで待つの!? 身体沈み込ませて、そんなに打球点落として……一体)


善子「"失楽園"」ピョンッッ…ブンッッギュワンッッ


千歌(た、球が上に飛んだ!?)

千歌(ううん、違う……このままじゃ、すごい回転で、弧を描いて、私のコートに……突き刺さる!?)

 

千歌(――ループドライブっ……!!!)

 

ギュワンッ


千歌(深く来るとおもったのにっ、回転が多すぎて一気にネット前で落ちてきた!?)

千歌(大丈夫スピードは遅いっ! 落ちた瞬間ネット付近から加速してくる! 少し下がって……)


善子「……ふふ」


ズドンッギュルルッッッ…ギュオンッッ


千歌「う、うそっ!!」ブン……


コツコツコツ……シュルルルルルルルルルッ……
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2017/06/23(金) 02:12:14.35ID:47EKZNVn
梨子(す、すごい回転……フェンスのところでまだ回転してる)

梨子(ネット付近に落ちたボールが一気に加速して――沈んだ……?)


千歌「……ごく」ダラリ…



善子(や、やっぱりこれが決まると気持ちいい!!)ホワワ…


鞠莉「うーん……グレイトね」

曜「今の?」


花丸「うん……ループドライブ、善子ちゃんのあれ、回転がかかりすぎてて、深く入るとかオーバーするって思った球が急にネット前に落ちてくるの」


花丸「それでバウンドした瞬間、跳ねてくるんじゃなくって、ネット付近から一気に沈み込んでくるから、満足な体制で打てなくて」


鞠莉「打つ前に膝を落として思いっきり身体を沈み込ませてた。振りは大きいけれど、打った後に時間はあるし、立て直すのも難しくないように出来てる」


果南「うん、善子ちゃん中国の粘着ラバーって言ってたし……完全に擦る力だけで飛ばしてるから急に軌道がぐにゃって変化するんだろつね」


曜「ループドライブ……繋ぎとかの目的だよね、普通は」

鞠莉「それを必殺の武器にまで磨いたって感じかしら。あれを返したところでおそらく、強打に繋ぐかカウンターをカウンター返しってところまで組み立てられてそうね」


果南「これは……厄介どころじゃないね」

曜「あれが全国レベル……」

千歌「すごい……」


千歌(な、なに今の……すごすぎるよ!!)


千歌(他にどんなのがあるんだろう、もっと、もっと!)ワクワク

善子(なにこの人……気味悪い……)

 

梨子(千歌ちゃんすごい楽しそう……)
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2017/06/23(金) 02:14:21.36ID:47EKZNVn
◇――――◇

果南「普通のドライブも、威力っていうより回転重視。でもコースが常にサイドから切れていったり、とにかくいいコントロールだね」


鞠莉「ちかっちの場合は回転でそのまま決まることもあるけど、本来のスタイルは回転で崩してのスマッシュとかカウンターパンチャーって、感じかしら」


果南「多分そんな感じだね、台上もサーブも問題なくうまいし……フォアの範囲もシェイクにしては極端に広い」

果南「クラシックなスタイルって自分で言ってたけど、確かにそうかも」


梨子「――えっと……11-2 11-4 11-2……善子ちゃんの勝ち、です」


善子(こ、これで……いいのよね)


千歌「……」


善子「あ、あの」

千歌「――すごい!! 善子ちゃん、私善子ちゃんともっともっと卓球したくなっちゃった!!」


善子「え!?」

千歌「本当に強いんだねえ」エヘヘ


千歌「ねえ、Aqoursに入って欲しい!」

善子「だ、だから私は……」


千歌「スクールアイドルの方も興味あるんでしょ? 善子ちゃんのいうリトルデーモン……増やせるかも」


善子「!?」
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2017/06/23(金) 02:16:27.52ID:47EKZNVn
千歌「堕天使とかをコンセプトにした曲も作れちゃったり……するかも」


梨子(デタラメばっかり……そんなので)

善子「やる!!!」


梨子(……ええ?)


善子「全国にリトルデーモンを増やす!!」

千歌「本当に!?」ガシッ


善子「このヨハネと契約しようというのだから……それなりの覚悟はあるのよね」


千歌「う、うん!」

善子「……ほ、本当にいいの?」


千歌「いいけど……どうしたの?」

善子「う、ううん」

千歌「卓球もしてくれる!?」

善子「……それは」


千歌「せっかく強いのに勿体無いよっ」


善子「……大会には出なくてもいい? 練習だけなら、参加してもいいから」


千歌「……大会、嫌いなの?」

善子「……別にそういうことじゃないけど」

千歌「と、とにかく! 練習だけでも嬉しいよ! じゃあ善子ちゃん、今日からよろしくね!」

善子「……うん」

曜「善子ちゃん入ってくれるんだ!!」

善子「い、一応ね」

果南「よろしく」


鞠莉「んー、新メンバー誕生の瞬間に立ち会えてマリーは幸せだわ」

千歌「これを機に鞠莉さんもいかがですか?」


鞠莉「貪欲ねちかっちは」クスクス
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2017/06/23(金) 02:38:39.78ID:47EKZNVn
◇――――◇


ルビィ「……わ」パラパラ


ダイヤ「入るわよ」ガラッ


ルビィ「ぴぎっ……」


ダイヤ「……ルビィ、それは」

ルビィ「あ、あの」


ダイヤ「見せなさい」

ルビィ「ぅ……」

ダイヤ「スクールアイドルの雑誌……」

ダイヤ「こんなもの買って……そんなに好きなの?」

ルビィ「……うん」


パラパラ…


ルビィ「あの」

ダイヤ「ルビィ、これは?」


ルビィ「え……? スクールアイドルの卓球の特集ページ、だよ」


ダイヤ「卓球……ま、待ってこの人……見たことがあるわ」


ルビィ「え? ――Saint Snowの、鹿角聖良さんだよ」
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2017/06/23(金) 02:40:03.71ID:47EKZNVn
ダイヤ「鹿角……」

ルビィ「この前のスクールアイドル卓球の大会で聖良さんが個人優勝してね、その特集ページなんだ。個人が優勝したらグループのことも大きく取りあげてくれるの。ほら、インタビューとか写真とか五ページも特集されてる」

ルビィ「この大会をきっかけにスクールアイドルとしても注目されて、どんどん伸びてる二人組グループなんだよ」

ダイヤ「鹿角……思い出したわ。この人、普通の競技としての卓球で……全国トップクラスだったはず。確か妹の方も……」

ルビィ「そう、らしいよね。ルビィはあんまりわからないけど、ここに経歴載ってるよ」


ダイヤ「!!!」


ダイヤ「バンビ、ホープス、カデット……各世代で北海道優勝経験複数あり……全国でもカデット2回、ホープス3回……中学2、3年生時に、ジュニア、カデットの部……全国二連覇……全日本選手権一般の部、ベスト8……。加えて、全中連覇……」

ダイヤ「……ルックスもとても良いのでメディアに取り上げられていましたわね、そういえば」

ルビィ「……」


ダイヤ「まさか、こんな人がスクールアイドルをやっているだなんて。確かに、ここ二年ほど名前を聞かなくなったと思ったら」


ダイヤ「レベルは高いのですわね、侮っていましたわ……」
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2017/06/23(金) 02:41:38.74ID:47EKZNVn
ダイヤ「それでもルビィは、やりたいの?」


ルビィ「……う、うん」

ダイヤ「……どうして?」

ルビィ「す、スクールアイドルってね……凄いんだよ。みんな、キラキラ出来て、見てるだけで勇気とかやる気とか、貰えるの」

ルビィ「ルビィも、み、みんなにこの気持ち知って欲しいし、だから……そのためには、与えられるだけじゃなくて、自分でもやってみたいって、そう思って」


ダイヤ「……卓球も?」

ルビィ「うん……好きと好きが、一緒に出来る機会があるなんて、きっとルビィは運がいいんだと思う」


ルビィ「お、おねえちゃんに負担かけてばっかり、だけど……お願いします、やらせて、ください。高校卒業したらちゃんとお家のこともがんばるから、おねえちゃんの分まで取り戻して、見せるから……っ」


ダイヤ「ルビィ……」


ダイヤ「わかったわ、気が済むまでやってきていいわ」
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2017/06/23(金) 02:42:41.70ID:47EKZNVn
◇――――◇

二週間後


鞠莉「ルビィちゃんはどんな感じ?」

ダイヤ「楽しそうにしていますわ。まあ、あそこまではっきり言われたら……許すしかないですわ。自分の意思を言えるのは大切なことですから。それが出来ただけでも、嬉しいの」

鞠莉「うんうん」

鞠莉「でもさ、ダイヤの方がその点ではルビィちゃんに劣ってるね?」

ダイヤ「……え?」

鞠莉「だってさ、やりたいんじゃないの?」

鞠莉「さっき携帯で卓球の道具のこと調べてたの見たよ」

ダイヤ「な……あ、あれは……ルビィのラバーを」


鞠莉「カットマン用の見てたのに?」



ダイヤ「ぐ……ぷ、プライバシーの侵害ですわ」


鞠莉「ダイヤみたいなモチベーションが高い人が入れば、果南もしゃきっとすると思うんだけど」
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2017/06/23(金) 02:46:12.89ID:47EKZNVn
ダイヤ「一時期に比べれば良くなったと思います」


鞠莉「そうかな? ちょっと打ったけど、全然だったよ。あれなら私でも勝てちゃうかも」


鞠莉「ダイヤはどうしてやらないの?」


ダイヤ「言ったでしょう、忙しいの」


鞠莉「でもダイヤならお家のことも勉強も、全部両立出来る。違う?」

ダイヤ「買い被りすぎよ」


鞠莉「本当はやりたい、でも、そうやって言い訳する。ルビィちゃんより、ずっと自分の意思を出すのがへたっぴね」


ダイヤ「……」


ダイヤ「だ、第一……卓球をするにはスクールアイドルをしなければならないのでしょう? わ、わたくしにはあんなひらひらしたもの……似合わないわ。ルビィみたいに、可愛くないし……」


鞠莉「もー細かいことなんて気にするな! 行くよダイヤ!!」
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2017/06/23(金) 02:49:03.20ID:47EKZNVn
◇――――◇


千歌「くっ」

ルビィ「やったっ」

千歌(もうっ……ルビィちゃんも花丸ちゃんみたいな変な感じだ)

千歌「ルビィちゃんは――アンチラバー、か」


梨子「アンチラバーってなに……」

曜「回転が全くかからないラバーなんだって……どんなドライブでもナックル回転で返せるっていう……」

梨子「なにそれ……」

千歌(粒高は回転が反転して返ってきてた)

千歌(ルビィちゃんは前陣に張り付いてブロックを繰り返すタイプだから……花丸ちゃんと同じで、回転で攻めるのはよくない)

千歌(でもっ……)

ルビィ「ふっ!!」バチコ-ンッッ!!!!!

千歌「うっ……」

花丸「ナイスボールルビィちゃんー!」

善子「いいナックルプッシュね、あの子……」
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2017/06/23(金) 03:02:41.84ID:47EKZNVn
千歌(粒高は回転が反転して返ってきてた)

千歌(でも要領は同じルビィちゃんは前陣に張り付いてブロックを繰り返すタイプだから……花丸ちゃんと同じで、回転で攻めるのはよくない)

千歌(でもっ……)

ルビィ「ふっ!!」バチコ-ンッッ!!!!!

千歌「うっ……」


千歌(ナイスボール……花丸ちゃんのより速いし、弾むっ)


千歌(普通に当てただけじゃ、ナックルだから沈んでネットするし、少しでも遅れて、擦り上げるだけの推進力の無いドライブを打ったら――)


ルビィ「っ!」パンッッ

千歌「っ」


千歌(回転がほぼ効かないから、ブロックとかプッシュでどんどん振られる)


千歌(まあまあ、焦るな焦るな……。花丸ちゃんと一緒で回転で攻めなきゃいい、だけ)


ルビィ「?」
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2017/06/23(金) 03:04:22.30ID:47EKZNVn
  、
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2017/06/23(金) 03:04:44.21ID:47EKZNVn
千歌「どうかした?」

ルビィ「どうしたのお姉ちゃん」


千歌「?」


千歌「わ……ダイヤさん?」


鞠莉「ねえねえちかっち! 突然だけど、ダイヤもみんなと一緒に活動したいって!!!」

千歌「へ?」

ダイヤ「ち、ちがうのこれは///」

ダイヤ「ま、鞠莉さんに連れてこられた、だけで……」

千歌「善子ちゃんルビィちゃんも加入してくれて、それと一緒に花丸ちゃんも正式入部……ダイヤさんまで? き、奇跡だよぉ!!」


ダイヤ「だ、だから……わたくしは!」

千歌「まあまあゆっくりして言ってください♡」

鞠莉「そうよ、ねえ? 果南お茶!!」

果南「ないってば……」

ルビィ「おねえちゃん……」

ダイヤ「る、ルビィ誤解しないで!」



梨子「一気に賑やかに……」アハハ…
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2017/06/23(金) 03:05:44.96ID:47EKZNVn
◇――――◇


果南「11-4、か。いやー……強いね」

善子「……」

善子(この人……)



千歌「やっぱり強いね善子ちゃんは。梨子ちゃんはかなりラリー続くようになってきたね?」


梨子「そ、そうかな」


ダイヤ「ええ、この前までとは別人ですわ。特にバックハンド、綺麗なフォームで弾道もすばらしい。その調子です」


梨子「あ、ありがとうございます」


曜「梨子ちゃんと一番打ってる自信あるけど、いい感じだと思うよ!」


梨子「そんな……私なんて」

ダイヤ「自信を持って」


千歌「大会の予選が一ヶ月後くらいにあるんだよね。試合にも慣れておかないと」


鞠莉「そのことなんだけど……今週末にね、沼津で大きな大会があるの。刺激を受けるために見にいくことをオススメするんだけど、どう?」


千歌「大きな大会……いいね!!」


果南「実際の大会の雰囲気とか味わった方がいいかもしれないね」


千歌「よし、みんなでいこっ!!」
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2017/06/23(金) 03:07:21.10ID:47EKZNVn
◇――――◇

週末


善子「うぅ、なんかこの感じ久しぶりでやだ……」

梨子「す、すごい……こんなに人がいるんだ……卓球台多い……これ全部試合やってるの?」

鞠莉「そうよ、男子と女子一緒にやってるけど、どっちの応援もすごいでしょ」

千歌「ダイヤさん注目選手とかは?」

ダイヤ「ええとあそこの高校は強豪校ですわね。時間もいい時間なので、全体的に上位選手が多くなってると思います」

千歌「梨子ちゃん見に行こ!!」ガシ

梨子「う、うんっ」


曜「……」

鞠莉「あらあら、梨子ちゃんに取られちゃったね?」

曜「なっ……」

鞠莉「曜は大会出ないの? 見た感じ、センスは誰よりもあると思うんだけど」


曜「私は……」


曜「なんか、さ……私、昔ね千歌ちゃんに連続で勝ったことがあるんだ。その時の千歌ちゃん、すっごく悲しそうでさ……卓球してる時の千歌ちゃん、いつも楽しそうでしょ?」


曜「でも私とする時は違う。――なんでかわかんない、けどだから……私と卓球するのは、楽しくないんだなって……」


鞠莉「……そうなの」
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2017/06/23(金) 03:09:05.44ID:47EKZNVn
曜「まあ、私は今のままでもいいよ。楽しそうな千歌ちゃんを見るのが好きだからさ!」


鞠莉「ふぅん……そっか」

鞠莉「でもそれ、ちかっちのためにならないよね? ちかっちは本気でやろうとしてる、でも曜はちかっちのご機嫌取り……」

曜「そんなつもりはっ!」

鞠莉「真剣にする人のそばに、真剣でない人がいることはね……相手もそうだし、自分も辛くなると、思うよ」

鞠莉「あなたはスポーツ好きだし、よくわかってるでしょ?」


曜「っ……」


鞠莉「ごめんね、部外者がこんなこと言っちゃって……でも、考えてみて欲しいの」


曜「鞠莉さんも、何かあったんですか」


鞠莉「……私はそこまで深刻なことじゃないから」

曜「そう、ですか」
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2017/06/23(金) 03:10:48.32ID:47EKZNVn
◇――――◇


果南「なにしてるの」


善子「あの試合見てるの」


果南「そっかあ、強そうだね」


善子「あの人が優勝するのに一票」

善子「当たったらジュース奢って」

果南「いきなりすぎるよ、いいけどさ」


果南「善子ちゃんはああいう人達にも勝てる?」

善子「……どうかしら、昔ならまあいけたんじゃないのないかしら」


善子「――あなたは?」


果南「わ、わたし?」


善子「だってあなた――どうして手加減してるの?」

果南「……」


善子「それも結構……この前はあなたと3セットやってストレートで勝ったけど、私のループドライブ、思いっきりドライブでかけ返したのが何球かあった。あれ、まぐれじゃないでしょ」


果南「たまたま振ったらいい感じになっただけだよ」


善子「そう……別にいいけどね、実力隠すとかかっこいいし」


果南「あはは……」
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2017/06/23(金) 03:13:10.37ID:47EKZNVn
◇――――◇


千歌「いやー凄かったねえ」


千歌「なんか感動しちゃった!! 絶対、ぜーったい私もあれくらい強くなるんだから!」


曜「……」

曜(お互い傷つく、か……)


ダイヤ「そのためにはもっと練習しなくてはいけません」


千歌「そうだね……あ、朝練だ!!」


千歌「一時間くらい練習出来る!」


ダイヤ「朝練……いいと思いますわ!」


善子「お、起きるのつらい……」


千歌「でも、このままの練習量じゃ無理だよ! もっと増やさないと!」


ダイヤ「そうです! 千歌さんの言う通りですわ」

千歌「ダイヤさん……!」

鞠莉「ダイヤもすればいいのに♡」


千歌「そうですよ! 結局今日までなんだかんだ練習参加してたじゃないですか!」


ルビィ「そうだよ! おねえちゃんもしようよっ! わたし、せ、生徒会とか、家のお仕事も……手伝うからっ!」


ダイヤ「し、しかし……スクールアイドルの方は、わたくしは」
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2017/06/23(金) 03:34:56.47ID:afPSsPYg
団体戦は国内は6人まで国際大会は3人が一般的みたいだけど、この世界だとどうなるのかな
出ない子がいるのはかわいそうだけど、ダブルス多めにしても9人全員は大変そうだね
学年やユニットに分けて出場なら3人ずつだけど、それもそれで試合数がすごく増えそう
あまり展開予想とかはしない方がいいか。ごめんね
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2017/06/23(金) 05:54:08.32ID:xRq2WQHD
千歌「ダイヤさん、とっても可愛いし……絶対出来ますよ! あ、今度衣装着てみますか?」

ダイヤ「……」


千歌「じゃあ決定! えーと、卓球の方は今まで通り私達のこと、コーチングもお願いします!」

ダイヤ「……あ、あくまでもルビィの監視役ということで。妹を人質に取られていたら、日常生活にも支障が出ますから」

鞠莉「あらあら」

ダイヤ「こ、このわたくしが加わるということは今までのような緩い環境は打ちこわします、それでもいいんですね?」

千歌「はいっ!!」

善子「つらーい……」


曜(……真剣。わたし、結局千歌ちゃんに嫌われたくないだけ……)


曜「そういえば聞いてなかったんだけど、千歌ちゃんはどうして……急に卓球をしようって思ったの?」

千歌「うふふ、えっとねー! スクールアイドル卓球大会の、前回の動画をたまたま見たんだ! そこでね、鹿角聖良さんっていう……優勝した人がいるんだけど、それを見て!」


善子「――鹿角、聖良……?」


ルビィ「ルビィも知ってるよ! 前回前々回大会、圧倒的な強さで優勝した人!」


千歌「知ってるの!? かっこいいよねー! 可愛くて強くて……輝いてた!!」
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2017/06/23(金) 05:54:47.09ID:xRq2WQHD
ダイヤ「鹿角聖良さんは、競技としての卓球でも全国トップクラス……優勝するのは当然とも、言えますわね」


善子「ま、待ってよ! 鹿角聖良って……もしかして、左利き!? 北海道!? えっと、高校二年生!?」


ダイヤ「そ、そうですけれど……」

善子「そんな、まさか……」

千歌「知ってるの?」

善子「……一回全国大会で戦ったことある」

千歌「う、うそ!?」

善子「ほんとよ」

千歌「どうだった!?」

善子「……正直、あの人がいるなら優勝とかは諦めた方がいいと思うわ」


善子「魔法みたいな卓球をするの……私は何も出来なかったし、そのおかげで卓球やめたみたいな、ものだし」

千歌「どういう……」


善子「ぼろ負けだったってこと。私、勝つために卓球やってた、勝てば楽しいし、結構勝てたし」


善子「でもあの人とやってから、同い年くらいなのにこんなに差があるんだって、悲しくなった。これからどれだけやっても、あのレベルには達せないって、思ったの」

千歌「……だから、やめちゃったの? だから大会に出ないの?」


善子「ごめん……こんなこといきなり話して」
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2017/06/23(金) 05:55:46.42ID:xRq2WQHD
千歌「リベンジしようよ!」

善子「な、何言って」


千歌「勝てなくても、卓球は楽しいよ! 善子ちゃん、楽しそうだったもん! でも、勿論勝った方がいいに決まってる、だから次は勝とう? 絶対善子ちゃんなら出来るって!」

善子「そ、そんなに簡単なことじゃないってことくらいわかるでしょう!? 私は昔、今よりずっと強かった、それより、何倍も強いの! それがどういうことかくらいっ」


果南「……」


ダイヤ「……この前調べたのですが、鹿角聖良は、競技としての卓球からはしばらく離れているようです。なにやら、怪我があったとか」


ダイヤ「全中優勝、カデット、ジュニアの三冠を達成した次の年、高校一年生からはほとんど大会には出ていないようですわ」


鞠莉「つまり、チャンスはあるって、ことね」

善子「……私は」


千歌「善子ちゃん、卓球って楽しいんだよ! 強い人と対戦するだけでドキドキするし、善子ちゃんだってそうでしょ?」


千歌「私はクラブにいるとき、善子ちゃんのこと、強い人だなって遠くで見てるだけだったけど、善子ちゃん他の人やコーチと打ってる時、本当に真剣で、でも楽しそうだった!」


千歌「だからさ、私達と一緒にもう一回頑張ろう? それで、リベンジするの!」


善子「リベンジ……」


千歌「一生懸命なんて似合わないって言ってたけど、違うでしょ?」
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2017/06/23(金) 05:57:08.80ID:xRq2WQHD
善子「……」

千歌「試合で負ける度泣いてたって、コーチが。それくらいの気概を持てって毎回毎回善子ちゃんが泣く度――」

善子「わああああ!!!!!」

善子「そ、そんなわけないでしょ!?」

善子「何言ってくれてたのよ!?」


果南「へえ」

花丸「いいことずら」


善子「ちがう、ちがうってば!!」///

善子「……//」


千歌「聖良さんのこともリトルデーモンにしちゃおう!」

善子「……っ!!」


千歌「く……クク、いいのね? このヨハネと、最後の契約まで結ぶことがどういう――」

ギュッ


千歌「やったー!! 結ぶ結ぶ!!」

善子「ま、まだするなんてっ、は、離れなさいっ」


千歌「善子ちゃんが本格的に参加してくれるなんて百人力だよー!」

善子「……と、当然ね」//


千歌「えへへ、ダイヤさん、善子ちゃんこれからよろしくお願いします」

ダイヤ「ええ、こちらこそ」


曜「……」


鞠莉「……」
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2017/06/23(金) 05:59:16.86ID:xRq2WQHD
◇――――◇


鞠莉「どんどん本気の人が増えてるね」

果南「そうだね、いいことだよ」

鞠莉「果南は?」


果南「十分本気だよ」

鞠莉「善子ちゃんに見抜かれてたみたいだけど」

果南「盗み聞きが得意だね」


鞠莉「私はストーカーだもの」


果南「……」

鞠莉「きっとあの子達なら、一緒に走れるよ」

果南「考えとく……」
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2017/06/23(金) 06:01:14.21ID:xRq2WQHD
◇――――◇

次の日


曜「おはよ」

善子「ヨーソローは?」


曜「たまにはない日もあるよ」

善子「ふぅん」


善子「ねえ」


曜「?」

善子「あなたって、高飛び、オリンピック出れるかもしれないレベルなんでしょ?」


曜「さ、流石にそこまでは……」


善子「でもトップクラスには違いないってことでしょ?」


曜「ま、まあおかげさまで……?」アハハ

善子「……私ね、負けると、すっごく悔しかった。悔しくて悔しくて、絶対次は勝ってみせるって思って卓球してたの」


善子「だからあんまり周りとか見てなかったし、千歌さんのことも覚えてなかったんだと思う」
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2017/06/23(金) 06:02:45.70ID:xRq2WQHD
善子「それくらいハマってたはずなのに、鹿角聖良に負けてから、急につまんなくなった。練習すれば、するほど、遠くなるような気がして……近づけば近づくほど、あの人の高さを思い知った」


善子「絶対に勝てないって思ったから、悔しいとか、そういうのも感じなかった」


善子「今も正直、不安なところはあるっていうか……。昔と違って、勝ってやるって気持ちが薄いのに……力になれるかどうか。千歌さんは私が勝つことを期待して誘ってくれたわけだし……」


善子「なんか、なんていうのかしら。私は団体戦とかも無かったし、完全に自分のためだけに卓球してたから……」


曜「力になれなくたって、みんな気にしないと思うよ。勿論いい意味でね。特に千歌ちゃんは、勝つってことも大切だけど、基本的にみんなで何かしたいっていうことの方が強い人なんだと思うよ」

曜「だから善子ちゃんを誘ったのは勝つことを期待するのはそうかもしれないけど、それ以外に善子ちゃんと一緒にしたかったんだよ」

善子「……わ、わたしと」//


善子「じゃあ、尚更……勝たないとよね。みんなのためにも」

曜「今までとはちがう気持ちで再開するっていうのも、楽しいと思う」


善子「……そうかも」


善子「あなたはどうして高飛びしてるの?」


曜「い、いきなり難しいこときくね」
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2017/06/23(金) 06:06:50.05ID:xRq2WQHD
曜「私は……たまたま出来ちゃったから、かな?」

善子「?」

曜「ほら、努力するでしょ? なんか、それがすぐ結果に結びついてくれるっていうか……もちろん努力もしてる!!」

善子「――なにそれ、天才っていいたいの?」


曜「わ、わたしはそんなんじゃ! み、みんなそんなこと言うけどさ……あと、勝ってたらみんな応援もしてくれるし!」


善子「そう……」


善子「でもそうよね……高飛びは勿論、水泳部でもエースでスクールアイドルもして、卓球も結構出来て、絵もかけて衣装も作れる……確かにあなたみたいにやることなすこと全部出来たら、楽しいかも……」

善子「――そんなにたくさんのことしてるのに、あなたのを高飛びはいつでもトップクラス。血反吐吐きそうになるくらい必死でやってもあなたの高さに届かない人が聞いたら……卒倒するわね」


善子「まああなたみたいに色んなのを楽しめるって、いいことよね」


曜「……」



ガラララッ

千歌「おっはよー、おふたりさーん!」

善子「おはよ」


曜「――そうでもないって……」


 
善子「……?」
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2017/06/23(金) 06:09:09.64ID:xRq2WQHD
◇――――◇

練習

千歌「わ、梨子ちゃん良かった今の!」

梨子「そ、そう?」

千歌「うんっ、もうラリーも全然問題なく続くし……次はドライブとか回転も混ぜていこーね」

千歌「じゃあまずはドライブの打ち方から……」


曜「……」

曜(なんか、楽しそう……)

曜(私の方が、梨子ちゃんより卓球できるのに……ダンスだって……)

曜(なに考えてるんだろ、わたし……バカみたい)

曜(でもそっか。私が真剣にやってないからだ。真剣にやれば……千歌ちゃん、強い人とやるの楽しそうだったし。私も、強くなれば)


曜「あ、あの千歌ちゃん」


千歌「なあに?」


曜「あの、しばらく考えてたんだけどね……私も大会とか、出てみようかなって思う、んだけど……」

千歌「本当!?」

曜「う、うん」


千歌「いやったー!!! 本当だよね?」ギュッ


曜「ほ、本当だって」
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2017/06/23(金) 06:10:56.63ID:xRq2WQHD
鞠莉「あら、出ることにしたんだ? エクセレント♡」

曜「うん」


鞠莉「ちょうど良かった。ちかっち、近いうちにランキング戦……してみたら?」

千歌「ランキング戦……確かに試合の緊張感も持たないとだもんね」


ダイヤ「誰と誰の相性が良いのか悪いのか、それによって個人の対策も変わってきますからね。戦型も違えば対策も違う」

千歌「鞠莉さんは?」


鞠莉「ノンノン、私はそこまで強くないし、果南のこと見てるだけ♡」


果南「ほんとストーカー……」


鞠莉「ねえ果南、ランキング戦……」

 

鞠莉「がんばってよね」

 

果南「……」


千歌「とにかく、千歌達は東京でパフォーマンスしてくるから……もちろん今週はスクールアイドルの方優先で!!」


鞠莉「ダイヤも行くの?」


ダイヤ「いえ、わたくしは。パフォーマンスするわけではありませんし、都会も苦手なので」


鞠莉「そっか。みんな頑張ってねー♡」
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2017/06/23(金) 06:15:22.66ID:xRq2WQHD
ここまでが、前回スレが落ちたところまで。

ここからが、新しい部分です。
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2017/06/23(金) 06:16:01.43ID:xRq2WQHD
◇――――◇


善子「ん……東京楽しみ」ワクワクッ


善子「早めに寝ておきましょ」


ブルルルッッ

善子「? 誰かしら」

善子「え……」

善子「――鹿角聖良……」

善子「……」

善子「ちょ、ちょっと待って……。あ、そうだ……なんでか知らないけどメールアドレスだけ交換したたんだった……」


善子「結局1回も連絡取ってないからすっかり忘れてたわ」


善子「な、なんでこの時期に……いきなり。えと、内容は」
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2017/06/23(金) 06:17:12.21ID:xRq2WQHD
◇――――◇


千歌「どーしたの?」

善子『いや、えっとね……』

千歌「東京が楽しみすぎて眠れなかった?」


善子『それもあるけど、って、ないから!!』


善子『あの、ね。さっき鹿角聖良からメールがあって』


千歌「……は?」


善子『い、いや。全国で試合した時にね、なんか声かけられて……そういえばアドレスだけ交換してて……私もメールアドレスなんて変えてなくて』


千歌「な、なんだって!?」


善子『明日の東京のイベント……出るんだって。参加者にAqoursがいるのを見てチェックしてたら、私のこと覚えてて……見つけたらしくて』


千歌「ほえ……じゃあ明日会えるかもしれないんだ……」


善子『えっと、それなんだけど……卓球続けてるのかって話になって……スクールアイドルのやつで続けてるって言ったら――パフォーマンス終わったら、打たないかって……』



千歌「へ、ほんと!? いいなっ善子ちゃんずるいっ!!」
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2017/06/23(金) 06:17:55.97ID:xRq2WQHD
善子『そ、そう言うと思ったから打ってあげて欲しい人がいるって言っておいたんだけど……』

千歌「う、うそ!!

善子『ちゃんとラケット持ってきなさいよ!』

千歌「う、うんっ! ありがとうっ! 大好きっ!!」

千歌「おやすみっ!!」


千歌「うーっ……梨子ちゃーん!」ガララッッ

千歌「梨子ちゃん梨子ちゃん!! りーこちゃーん!!」

ガララ
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2017/06/23(金) 06:18:23.18ID:xRq2WQHD
梨子「ど、どうしたのいきなりっ。夜だよ!?」

千歌「聞いてよ! 善子ちゃんと鹿角聖良さんがね、メル友? でね! 明日パフォーマンスが終わったら打ってくれるんだって!!」キラキラ


梨子「え、え? と、突然すぎて……」


千歌「凄くない!? 夢みたいっ!」

梨子「ふふっ良かったね」

梨子「早く寝ないとね! 梨子ちゃんももう寝なさいっ」

梨子「もう、眠ろうと思ってたのに」


千歌「そ、それは失礼しました……」


千歌「おやすみっ!! 楽しみだね!」

梨子「うん……おやすみ」
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2017/06/23(金) 06:19:35.26ID:xRq2WQHD
◇――――◇
東京 神田明神


〜〜♪♪


千歌「……?」

千歌「……!」

聖良「……こんにちは」

千歌「あ……か、鹿角聖良さんですか!?」

千歌「と、理亞さん!!」


聖良「ん……もしかして、Aqoursの皆さんですか?」

善子「……」


聖良「ああ、津島さん。奇遇ですね。ということはAqoursの皆さんで間違いありませんね」


曜(この人が、全国トップ……可愛い……)


聖良「PV、拝見させて頂きました。素晴らしかったです」

千歌「あ、ありがとうございます!!」

聖良「明日のイベント、頑張りましょうね」


千歌「は、はいっ!!」


千歌(や、優しくていい人……)キラキラ


聖良「津島さん、あなたがスクールアイドルをされているだなんて思いませんでした」


善子「こっちのセリフです」
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2017/06/23(金) 06:21:49.87ID:xRq2WQHD
聖良「あなたなら、あのまま卓球を続けていれば日本を背負えたかもしれなかったのに」

善子「馬鹿言わないで。私じゃ無理よ、あなたが一番よく分かってるはず」

善子「……あなたこそ、どうしてスクールアイドルなんか」

聖良「きっかけなんて、些細なものですよ」

聖良「それでもAqoursの皆さんは全員がスクールアイドルに卓球をやられているそうで……」

千歌「は、はい一応!」

聖良「お互い対戦出来るように、頑張りましょう。まあ津島さんならば、問題なく全国へ来てくれると思いますが」

善子「と、とーぜんよ!」

聖良「ふふっ、楽しみにしています。明日、打って頂けるんですよね?」

聖良「津島さんと……あと1人と聞いていますが、どなたですか?」

千歌「わ、私です!!」


聖良「高海さん、ですよね。わかりました、明日はよろしくお願いします」ペコリ

千歌「はいっ!!」

千歌(ふああっ)


スタスタ


理亞「……姉様、津島善子だけならともかく、なんであんな人なんかと」


聖良「頼まれたんだから仕方がないでしょう? 津島さんがこのままスクールアイドルの卓球大会に出続けるというなら、あの人の実力なら全国で顔を合わせることになるわ。良い関係を築くのも大切よ。それに、もし本格復帰でもしたら」
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2017/06/23(金) 06:22:50.10ID:xRq2WQHD
理亞「……まあそうかもしれないけど」

聖良「それに……相手のことは少しでも知っておいた方がいいから」

聖良「理亞も、明日は誰かと打ったら」


理亞「嫌よ、姉様。姉様だって……ほどほどにしておいた方が……」


聖良「心配してくれてる?」


理亞「当たり前」


聖良「……」


聖良「ええ……そうね」
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2017/06/23(金) 06:25:45.20ID:xRq2WQHD
◇――――◇
ホテル


千歌「んーっ」


梨子「まだ起きてるの」

千歌「うん」



千歌「梨子ちゃんはさ、ピアノで全国大会まで、行ったんだよね」

梨子「?」


梨子「うん……そのおかげで練習しかしてなかったんだけど」


千歌「そっか……」

千歌「――みんなさ……すごいよね、本当に」


梨子「?」

千歌「ううん……なんでもない」

千歌「寝よっか! 明日のためにっ!」

梨子「うん……」
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2017/06/23(金) 06:26:55.73ID:xRq2WQHD
◇――――◇

卓球場


聖良「昨日のパフォーマンス、お疲れ様でした」

千歌「そ、そちらも! すごかったです!」

聖良「私達なんか全然」


聖良「じゃあ早速、始めましょうか」

聖良「そちらの方々は……」


果南「見学でお願いしますー」

聖良「わかりました」


聖良「では高海さん、少し私と練習しましょうか」

千歌「へ、せ、聖良さんと!?」


聖良「津島さんは、妹と練習した後、ゲームをして貰おうかと」

善子「……よ、よろしく」


理亞「姉様から話は聞いてる、あなたのプレーが変わってないなら良い経験になると思って」

千歌「えっと、聖良さんに憧れて、卓球始めましたっ! よろしくお願いしますっ!」

聖良「私に、ですか?」
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2017/06/23(金) 06:28:24.35ID:xRq2WQHD
千歌「前回大会……すっごくかっこよくて爽やかで可愛いくて……私もこんな風にやってみたいって! だ、だから今日は本当に楽しみです!」


聖良「そう、なんですか……嬉しいです」


聖良「じゃあ、始めましょうか」

カコンカコンッ


千歌(緊張する……)

千歌(ラリー、大丈夫、出来てるよね……)

聖良「どれくらい卓球を?」

千歌「えと、小さい頃からクラブで、8年くらい、かな……あとは家で家族と……お姉ちゃんが結構強くて」


聖良「なるほど、小さい頃から」

千歌「聖良さんは?」


聖良「私は……4歳か5歳くらいですね。高海さんと同じくらいですね」

千歌(始めた時期は似たような感じ……)



曜「おお、ラリー出来てる」

梨子「あっちの妹さんも強い、んだよね?」
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2017/06/23(金) 06:29:36.51ID:xRq2WQHD
果南「ちょうど今検索してる……お、名前出て来たよ」

果南「……今年の全日本一般の部、ベスト64……」

曜「つ、つよ……」

ルビィ「姉妹揃って、トップクラス……」


善子(な、なんか気まずい……)カコンカコン


理亞「――ドライブ打って」

善子「わ、わかった」

ギュインッッ…カコンッ…


善子「ふっ……」ギュインッッ

善子(表ソフト……)

理亞(ほんとに擦りだけのドライブ……。すごいボールタッチ……いつの時代の人よ)

理亞(普通のドライブがこれなら、姉様が言ってた、ループドライブは……)

ギュインッッッ


理亞(これだっ!! 勢いはほぼない、回転オンリー)スッ…バコンッッ
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2017/06/23(金) 06:30:38.61ID:xRq2WQHD
善子「くっ」


善子(表ソフトで押し込まれたっ……)ギュインッ


理亞(カウンターブロックをされた後の戻りも早い、良いプレイヤーね)


花丸「すごい……善子ちゃんのドライブを普通に返してる」


果南「バックに貼ってるの、表ソフトラバーだね。回転の影響を受けにくいラバーだから、回転重視の善子ちゃんとは相性が悪い」


果南「それでも……さっきから難易度の高いこと普通にやってるから……すごいね2人とも」


聖良「カットはしないんですか?」

千歌「へ?」


聖良「だって、カットマン用のラケットですよね?」
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2017/06/23(金) 06:41:26.38ID:xRq2WQHD
千歌「あ、これは……変えようと思ってたんですけど、迷ってて……」

聖良「……」


聖良「そうですか」

聖良「ではそろそろ始めましょうか、理亞そっちも」

理亞「わかった」


千歌「ごく……」


千歌(全国を制した人……そんな人と打てることが、どれだけ幸せか……)


善子「……よろしくお願いします」


理亞「よろしくお願いします」


千歌「ふっ……よろしくお願いしますっ!」


津島 善子
ラケット   ティモボルALC
フォアラバー 紅双喜キョウヒョウneo3(特厚)
バックラバー ラクザxソフト(厚)

VS

鹿角 理亞
ラケット   ヒノカーボンパワー
フォアラバー テナジー25(厚)
バックラバー フレアストーム2(特厚)


高海 千歌
ラケット   サナリオンD
フォアラバー タキネスチョップ(薄)
バックラバー タキネスチョップ(薄)

VS

鹿角 聖良
ラケット   インナーフォースレイヤーALC
フォアラバー テナジー05(特厚)
バックラバー テナジー80(特厚)
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2017/06/23(金) 06:45:12.96ID:xRq2WQHD
カツカツ

千歌(どんなサーブだろう……左利きだから、横回転にだけは注意して)

聖良「ふっ……」キュパッキュルルルッ


千歌(下回転っ)チョコンッ

グググッギュインッッ


千歌(ドライブ……大丈夫、返せるっ!!)ギュインッ


聖良(ブロックじゃなくてドライブの大きなラリーに持ち込んできた、大胆な姿勢は悪くないですね)ギュウウンッッ


キュハパッギュインッ…ポ-ンッ


千歌「くっ……0-1です」


千歌(打ち上げちゃった。でも、まともに打ちあえた! 善子ちゃんみたいに物凄い回転て訳でもない……なんとか、なるかも? て、ていうか手加減してるだけ、かな?)

曜「案外普通にドライブで打ち合ったね」

果南「形としては良かったね」


花丸「がんばれっ、あ、そこっ」


善子「くっ……」ポ-ンッッ…

理亞「4-1よ」


善子「ふぅ……」
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2017/06/23(金) 06:46:48.90ID:xRq2WQHD
  、
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2017/06/23(金) 06:47:26.78ID:xRq2WQHD
善子(バックに打ったら、いや……どこに打っても回転が効きにくい。くるくるラケット反転させて、前で攻めてくる……)

善子(もうちょい深めで、インパクト強く……もっと回転かけて)フッ…キュパッッグググッ

理亞(っ、すごい横回転……沈むっ……)ギュインッッ


善子「……っ」グググッッ


理亞(も、もう、バックに回り込んで――)


バコンッギュルルルルッ

理亞「くっ……」

理亞(ドライブ、さっきより回転も強くて深い……)

善子「4-2」


理亞(サーブの回転が強烈すぎて、打たされた……コースも限定されたし、だから回り込まれて思いっきりドライブでぶち抜かれた。……今のは最悪のパターンね)
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2017/06/23(金) 06:50:10.17ID:xRq2WQHD
理亞(でもこっちだって、一回前線から離れたような人に、負けるわけにはいかないんだから)


理亞(姉様に言われるくらい、あなたの才能がどれだけあったって――その才能にあぐらかいてる人なんかにっ!!!)フッ…キュパッッカコンッカコンッ



善子(フォアに長くて速い横回転っ! で威力もあるけど。でも、ある程度の経験者にこんな長い球出すなんて……これじゃ格好のドライブチャンスボールよ)

善子(まあいいわ。フォアは基本的には裏ソフトだし、そっちに思いっきり)ブンッギュインッッ


理亞「っ!!」バチンッッスパ-ンッッ


善子「くっ……」


善子(裏ソフトだったはずなのに……全然回転が効かない……それどころか上から叩かれた)


曜「……」ユサユサ…



曜(なるほど、ああいう風に前に出て打てば相手の打球ペースに合わせないで自分からガンガン攻めて行けるんだ。わざわざ後ろで大きいラリーに付き合う必要がない……よく出来てるなあ)

 

曜(――練習の時やってみようかな)
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2017/06/23(金) 06:51:44.74ID:xRq2WQHD
梨子(あんなに強かった善子ちゃんが押されてる……)

曜(あのフットワーク……たん……ばしん)ジッ…

曜(たんっ、ばしんっ)

果南「……?」ユサ…ユサ

果南(なんのリズム取ってるんだろ……?)


曜(善子ちゃんは……とんとん、ばしんっ)


曜(なるほど……)


梨子(千歌ちゃんも……)


カコンッギュインッッ


千歌「くっ」スカッッ…

千歌(打ててる、打ちあえてるのに……なんで点が取れないの……)


聖良「8-0です」


千歌「……っ」
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2017/06/23(金) 06:55:13.27ID:xRq2WQHD
◇――――◇
聖良「ふっ」キュパッッ


千歌(横回転サーブっ!!)

ググググッッッッッ…


千歌「えっ」

千歌(さっきよりもっともっと深くっ、沈み込んでっっ)ブン

コツコツ……

聖良「……」

千歌(なにこの、回転……っ、いつもの横回転じゃ、ない?)


ダイヤ「今のはジャイロ回転のサーブ……」

曜「ジャイロ回転……?」


ダイヤ「ええ、軌道は横回転のように曲がりますが……回転はドリルのような回転。その曲がりながら沈み込む幅は驚異的で、特に左利きのジャイロサーブは、右利きのフォアハンドが届かないくらい短く、沈み込む特有のサーブになる……」


曜「……」

ダイヤ「善子さんが時々出しています。バウンドが高くなりやすくて甘いと打ち込まれるので、出す側にも注意が必要なんですよ」


曜「……」ユサユサ…

曜(ああ、違うよっ。右に来る! 今度は左、次はミドル……次は右! ああもうなんで……千歌ちゃんそっちじゃないってば!!)
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2017/06/23(金) 06:56:46.75ID:xRq2WQHD
千歌「くっ……」

聖良「……11-2、11-1、11-3です。ありがとうございました」


千歌「あ、ありがとうございました!」

千歌(強い……)


千歌(でも、なんで負けたんだろう……こんなに離れてるのに、圧倒的だっていう、何かがわからなかった……ちゃんと打ちあえてたはず、それでこっちがミスして……それが原因かな)


聖良(高海千歌さん……県大会レベル、と言った感じですか)


聖良(中高で部活もクラブもしていないでこれなら、十分な強さ。やはり小さい時に経験があると違うということね)


千歌「す、すごいですね! やっぱり!」


聖良「いえ、そんなこと……」


千歌「あ、あのっ! 良かったら、れ、連絡先教えてくださいっ!!」

聖良「わ、私の、ですか?」


千歌「は、はいっ……」


聖良「私のものでよければ……」
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2017/06/23(金) 06:57:58.17ID:xRq2WQHD
聖良「私のものでよければ……」

千歌「あ、じゃあえと……読み込みたいですか? 読み込まれたいですか!?」

聖良「え?」


千歌「あ、えと……よ、読み込むんでQRお願いします……」///



理亞「――しゃっ!!」


聖良「……」

千歌「あ、ありがとうございます!」

聖良「いえ」

コツコツ…

善子「く……」


理亞「11-7、11-6、7-11、11-8で、セットカウント3-1。よ。ありがとうございました」


善子「……ありがとうございました」


聖良「終わったみたいですね」

千歌「善子ちゃんが……」


聖良「妹とはあまり相性も良くないようでしたね」


聖良「では、津島さん……次は私とお願いできますか?」
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2017/06/23(金) 06:59:50.66ID:xRq2WQHD
善子「……わかった」

善子(負けた)

善子(ああっ!! 負けた負けた負けた負けたっ……!! ああ、悔しいっ……。速いピッチについていけなかった、いやだったらペース変えて違う配球にするとか色々やりようはあったはず、それが全然できなかった。さいっあく)ギリリリッッ

曜(善子ちゃん……)


理亞「……」ラバ-フキフキ

善子(同い歳なのに、同い歳なのにっ。こんなっ!!)


聖良「ラケットどうぞ」


善子「ん……」


善子(ふぅ冷静になりなさい……これじゃまた前とおんなじ結果になる。相手は鹿角聖良よ)


善子(なんとか、"アレ"を防がなきゃ)


聖良(粘着ラバー……まだ拘っているんですね。バックは……進歩したようだけど)


果南「お疲れ千歌」

千歌「ありがと」


千歌「いやー……強かった」アハハ…

曜「……」

曜(くやしく、ないの……?)


曜(――あんなに一方的だった、のに)
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2017/06/23(金) 07:04:34.24ID:xRq2WQHD
 、
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2017/06/23(金) 07:04:52.11ID:xRq2WQHD
千歌「?」

曜「ううん……」

果南「強かったね、あの子」

千歌「うん……」

千歌「でも、何が強いのか、わかんなかった」

千歌「気がついたら、点取られてて……」

曜「それって……」


曜(遠すぎて、何が強いかも、わからないっていう……ことじゃ)

千歌「あはは、だめだねえ」



善子「怪我したって聞いたけど……」


聖良「ああ……もう少しで本格的に復帰しようかと思っているところです。この一年はスクールアイドルをしながら、理亞のサポートをしていたんです」

善子「そうなの……どうしてあなたがスクールアイドルなんて」

聖良「……まあ、色々あったので。あなたこそ」

善子「わ、私は」

善子(リトルデーモン……だなんて、言えない……)

善子「怪我してるのにスポーツ大会の卓球には出てたんですね」


聖良「ええ、無理をしない程度に」



プルルルッ
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2017/06/23(金) 07:06:35.48ID:xRq2WQHD
聖良「ん……失礼」

聖良「はい、はい」

聖良「わかりました、はい、失礼します」

聖良「すみません」ペコリ

善子「え」

聖良「急用が出来てしまって、続けることが出来なくなってしまいました」

善子「そ、そうなの」

聖良「こちらから誘っておいて……本当に申し訳ありません、今日は失礼させてもらいますね。本当に申し訳ないです」

善子「べ、べつに」


聖良「――全国で、待っていますよ」


善子「!!」

千歌「……」


千歌(全国……)


理亞「メーカーの撮影早まったの?」

聖良「ええ」


聖良「行こう、理亞」
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2017/06/23(金) 07:07:34.08ID:xRq2WQHD
理亞「うん」

聖良「ああ、高海さん。運営の方から渡して欲しいと預かってるものがあるんです」

千歌「?」

千歌(封筒……)

千歌「なんだろ」ヒラ

聖良「……見てくださった方が、どのスクールアイドルが一番良かったか、投票したものです」

ルビィ「投票……」

千歌「え、Aqours……Aqours……あれ?」


千歌「――ゼロ……?」


聖良「パフォーマンスは素晴らしかったと思います。ただ――ラブライブ決勝大会に出たいというのなら……」


聖良「諦めた方がいいかも、しれません」

千歌「っ……」


聖良「卓球も……津島さんは良いとして、高海さんはおそらく県大会レベル……。趣味でするのなら、これ以上ないほどのレベルだと思います」


聖良「ただ……」
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2017/06/23(金) 07:09:32.21ID:xRq2WQHD
聖良「……」フルフル

千歌「っっ……」


理亞「――遊びじゃないの。 津島善子……あなただって、才能がありながら……結局遊んでるだけ……私は、あなたみたいな人には絶対負けない」


善子「っ……」

果南「……」


聖良「すみません、厳しいことを言ってしまって。私たちも……悔しいので」



聖良「お互い、全国大会で顔を合わせられるといいですね。それを、願っています」

千歌「が、がんばります!」


聖良「少なくとも、攻撃型なのにカットマン用のラケットを使っているだなんて……馬鹿にしているようにしか思えません」

千歌「っ……」


聖良「重ね重ね、すみません……」


千歌「い、いえ!! そう……ですよね。でも、今日は本当に楽しかったです! ありがとうございました!!」


聖良「ええ……また、会いましょう」


千歌「はいっ!!」
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2017/06/23(金) 07:14:14.55ID:xRq2WQHD
◇――――◇

ガタンゴトンッ

千歌「……」

千歌(諦めた方がいい、か)


ルビィ「泣いてたね……あの子」


善子「でもあんな風にいう必要ないでしょ!」

千歌「でも頑張ったよ! みんな凄いグループばかりだったし! あそこまで出来たんだから、胸張って帰ろ?」

千歌「聖良さんと打ったのもいい経験になったし……幸せだったと思う!」


曜「……くやしく、ないの?」

果南「……」


曜「スクールアイドルもそうだけど、卓球も……」


千歌「そりゃ、少しは悔しいけどさ……まあ、でもみんなでステージに立てて、聖良さんとも結構まともに打ちあえて……幸せだったと思う! だって全国トップレベルの選手なんだよ?」


千歌「私はそれでいいかなって」


曜「……」

善子「……」

果南「……」


曜「そっ、か」
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2017/06/23(金) 07:14:42.77ID:xRq2WQHD
◇――――◇

ダイヤ「……そうですか。0人……」

鞠莉「スクールアイドルっていうのは厳しい世界なのね」

千歌「うん……」


千歌「でもでも、みんなでまた、頑張ろうって決めました! 大丈夫です!」


ダイヤ「そうですか……わかりましたわ」


千歌「とりあえず明日からは卓球の練習時間、増やそうと思います!」


千歌「予選ももう少しだしね!」

千歌「頑張ろうね!」
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2017/06/23(金) 07:17:05.04ID:xRq2WQHD
◇――――◇

ギュッカコンカコンッッ


千歌「長い長い……もっと短く」

美渡「またなんかやってるよ」

志満「サーブ練習?」

千歌「あ、ふたりとも」」

千歌「……東京でね、カデットとかジュニアで全国優勝した人と打ったんだ」

志満「本当に?」

千歌「うん。でも……全然ダメだった。県大会レベルだって、言われて」

志満「……そう。でも県大会って、結構レベルは高い方よ? 十分頑張ってるんじゃない?」

美渡「十分でしょ」


千歌「……だめだよ、全然」

千歌「なにが足りなかったかな……そりゃ全部だと思うけど」

美渡「何って……そんなの簡単だよ」


千歌「?」

 

美渡「――才能でしょ」

 

千歌「っっ」
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2017/06/23(金) 07:23:53.97ID:xRq2WQHD
美渡「うるさい姉だなっていつもみたいに思ってもいいけどさ」

美渡「結局やっぱり、重要だよそういうのは」


千歌「っ……ひどい」


美渡「今はまあこんなんだけどさ……私だってずっと努力してたんだから、そんな簡単なことくらいわかる」

美渡「あんたが精一杯死ぬだけの努力して初めて気がつくこと、教えてあげてるんだよ」

美渡「色んな時間犠牲にしてからやっとね。ボロボロになって走って走って走った到達点がそこだなんて、だったら見ない方がいい」

志満「美渡ちゃん、ちょっと……」

千歌「っ……」ギリリ

美渡「……もう寝るよ、おやすみ」スタスタ


千歌「……」ウルッ…


志満「……美渡ちゃんだって色々あったの、わかるでしょ? 言い方は酷かったけど、千歌ちゃんのこと考えてるの。悪気はないから……責めないであげて」


千歌「わかっ、てるよ」

千歌「わかってる、けどっ……っ」

千歌「っ……」フルフルフルッ…

千歌「わたしも、寝るっっ」タッタッッ


志満「あ……」


志満「……」
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2017/06/23(金) 07:25:00.79ID:xRq2WQHD
また、おそらく昼頃に。
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2017/06/23(金) 07:34:26.20ID:+wUgWhvV

卓球じゃ試合の描写難しそうだな
0182名無しで叶える物語(たこやき)@無断転載は禁止
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2017/06/23(金) 08:31:51.15ID:0/rPtT7n
卓球のとこは面白いんだけど
話の流れ結局同じなんかーって思うとそこはガッカリ
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2017/06/23(金) 09:13:52.80ID:0OPMIiLE
曜ちゃんと果南ちゃんの本気の強さが気になる
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2017/06/23(金) 12:19:30.61ID:47EKZNVn
◇――――◇

朝、海

バシャッバシャッ


千歌(なーんにも……見えない)


千歌(なにやってたんだろう、私……)


梨子「――ちゃんっ、千歌ちゃん!!」

バシャ


千歌「梨子ちゃん?」


梨子「ああ千歌ちゃん、良かった……わたしてっきり」

千歌「?」


梨子「もう……いきなり海に行くなんて……心臓に悪いことしないでよ……どうかしたの?」


千歌「ごめんごめん。んっとね……なんていえば、いいのかな」

千歌「私、今までなにしてたのかなって」


千歌「――私は空を飛べないからさ」

千歌「海に潜って違う世界を見てみれば何か見えるかなって。私は他の人みたいに高いところから何かを見るってこと、したことないから」


梨子「……何か、見えた?」


千歌「ぜんぜんっ!」


千歌「やっぱりこんな風に楽して何か違う世界を見ようだなんて、甘えてるんだよね。みんな、練習して練習して……私たちは、私は、それが足りてなかっただけ。いつも、そう」
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2017/06/23(金) 12:24:52.74ID:47EKZNVn
千歌「知ってる……わかってた。周りはみんな何かを続けて、何かを知って、私はなにも続かなくて、すぐ辞めちゃって……なんにも見えない」

千歌「聖良さんと打ってね、気がついたんだ。私は何も見えてない。聖良さんがどれくらい強かったのかも、いまいちわからなかった。離れすぎてる相手だと、何が強いかもよくわからない」

千歌「だって結構打ちあえてるって思ったのにあんなボロボロの点数。きっと全部打たされてただけ、全部サーブも手加減してた」


千歌「私だって、結構やってるつもりだった。相手が全国トップクラスだとか、周りのスクールアイドルのレベルが高いとか昔と違うとか……そんなの、関係ない」


千歌「悔しいよっ……何も出来なかったの、全然そんなレベルにも達してなかったっていうの。だって、トップに立ってる人がいるんだもん、言い訳なんて、なんにも出来ない」

千歌「――だって私たちは過去の人たちと競ってるわけじゃない! 環境が、時代が変わったって、争ってる人もみんなみんな、おんなじなんだもん!!」


千歌「ここで辞めたら……いままでとおんなじ。もう、そんなの嫌だ。スクールアイドルっていう新しい世界に行けば、高く飛べるって思ってたそれだけで輝けるって思ってた……でも、違う。なんにも、なんにも進歩してない!!」


千歌「諦めた方がいいって言われたけど、ぐす……諦めたく、ないよ」


千歌「諦めたくない!!」バシャ-ンッッ


千歌「だから、続けるよ。スクールアイドルも、卓球も」

千歌「生まれた時から決まってるなんて、そんなの嫌だもん」

梨子「千歌ちゃん……」


千歌「ごめん……わたしっ」


梨子「それが本当の気持ち?」
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2017/06/23(金) 12:28:17.89ID:47EKZNVn
千歌「うん……」

梨子「ありがとう、聞かせてくれて」ギュッ


千歌「言い出しっぺの私が、聖良さんにボロボロに負けて、投票数もゼロで……だからって、泣くわけに行かないし……ひっぐ……みんな、無理なお願い聞いてくれて……やってくれたのに。こんな私がこんなにしてたら……だめだもん」


梨子「……千歌ちゃんは素直になっていいんだよ、みんな自分のためにしてるんだもん……ね?」


梨子「だからこれからは……感じたことを、ちゃんと声に出そう? みんなで一緒に……違う景色を見るために頑張ろう?」

千歌「う、ん……うん……ぐす、ううっぅぅ」ギュッ

千歌「ごめんね梨子ちゃん……私、いつも梨子ちゃんにばっかり、変なこと言っちゃってる」

梨子「ううん、嬉しい。変に隠されるより、ずっと」

千歌「ありがと……」ギュッ…

梨子「……」ナデナデ

梨子「もどろっか」

千歌「うん……」

梨子「って……し、白いシャツで飛び込むなんて///」

千歌「どしたの?」

梨子(す、す、透けてる……)

梨子「も、もうっ、女の子なんだよ!? ちょっとくらい気を使わないと……」

千歌「あ、これ? えへへ、千歌のなんて誰も見ないよ」

梨子「い、いいから戻るのっ!」///

千歌「えー、ちょ」
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2017/06/23(金) 12:29:16.55ID:47EKZNVn
◇――――◇

プルルルルルッッッ

曜「……」

曜「でない」

曜「……千歌ちゃん」



◇――――◇
バス


善子「最悪の気分よ、当たり前でしょ?」

善子「やっぱり訛ってる……それ関係なくしても、あの子強かった、だから最高に悔しい」

曜「そうだよね……」

善子「次は勝つ」

曜「私も絶対そう思うと、思う」

善子「とーぜんでしょ」

曜「気があうね」

善子「そこは知らない」


曜「なんで……」


曜「でもさ……だから私、わからないんだよね。千歌ちゃんのことが」

善子「?」


曜「悔しく、ないのかな」

善子「……」



曜「だって、あんな風に聖良さんに負けて、それで0票で……私は悔しい」

善子「本人に聞いてみたら?」


曜「……そうだよね」


曜「あ、今日卓球の練習付き合ってよ、試したいことがたくさんあるの。鹿角理亞ちゃんの卓球見てたら……なんか似たようなことが出来そうな気がして!!」


善子「……え?」
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2017/06/23(金) 12:30:00.88ID:47EKZNVn
◇――――◇


千歌「えっと、みなさんにお話があります」

曜「?」


千歌「東京でのイベント、そして聖良さんと試合したこと……それが終わって、やっぱり悔しかった!」

千歌「ほんとにほんとに悔しかったの。だから……まだ続けたい」

曜「千歌ちゃん……」


千歌「私と、梨子ちゃんは昨日話し合って……続けることにしたの」


曜(え……)


曜(また、梨子ちゃんとふたりで、完結して……)

曜(なんで、私には……そういう話、個人的にしてくれないんだろう……)

 

曜(なんで、なんで――梨子ちゃんなんだろう)ギリ…


鞠莉「……」
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2017/06/23(金) 12:31:06.07ID:47EKZNVn
◇――――◇

曜「ふっ……ふっ」カコンカコンッッ


善子「くっ……あっ」スパン

曜「よしっ、いい球!」


善子「ふー……ピッチはやいってば。あなた、急に強くなった気がする」


曜「そ、そう?」


曜「まあ今まで他の人の練習に付き合うって感じだったからさ」

善子「真剣に練習し始めたらもうこれ……末恐ろしいわ」

善子(本当に鹿角理亞みたいな球と打球点が、何回かあった……うそでしょ。なんなのこのヨーソロー魔……)

曜「あ、あはは」


善子「まあ、ヨハネがいる限り好き勝手はさせないけどね」シュピッッ


善子「明後日からのランキング戦……楽しみ!」


曜「私も! どれくらい出来るようになったかなー」


善子「結構いいところまで行くと思うわ!」

曜「えへへ、そうかな」

善子「さー着替えましょ」


スタスタ


 
千歌「――果南ちゃん、これどういうこと!?」
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2017/06/23(金) 12:32:40.76ID:47EKZNVn
善子「……?」


果南「……そ、それはなんで」


曜「何かあったの?」

ダイヤ「……」


ルビィ「部室にこんなものが」

善子「賞状……」


曜「全国高校生卓球大会……静岡県予選、準優勝……浦の星女学院――松浦、果南……」


梨子「静岡県で、二番目に強い……?」

千歌「説明してよ果南ちゃん!!」


果南「誰がこんな、もの……確かに捨てたはず、なのに」


鞠莉「――ストーカーっていうのは、今に始まった話じゃないって、言ったはずよ」


果南「……鞠莉」

鞠莉「せっかくの賞状なのに、ぐしゃぐしゃにして捨てちゃうんだもの」


鞠莉「ねえダイヤ、あの時の果南凄かったわよね。今となんか――比べ物にならないくらい」


ダイヤ「……」

千歌「……ダイヤさんも何か知ってるんですか?」
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2017/06/23(金) 12:35:06.91ID:47EKZNVn
  、
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2017/06/23(金) 12:38:09.48ID:47EKZNVn
◇――――◇


鞠莉『どう、楽しい?』


果南『うーんそうだねー、同学年私しかいないし、先輩しかいないけど……まあ誘われたし」

――

鞠莉『県予選準優勝おめでと!』

果南『あはは……ありがと。鞠莉が練習付き合ってくれたおかげだって』


果南『でも、先輩達あんまりやる気ないっていうかさ』

果南『勝ちたくないのかな』


鞠莉『どうなのかしら……』


果南『口だけうるさい後輩じゃなくて、大会でも結果残したし、先輩達もさ……少しはやる気出してくれるかと思ったんだけどな……』


果南『鞠莉は留学の準備で忙しいし、ダイヤと打つしかないかー……」

鞠莉『……』


果南『じゃ、行ってくる!』

鞠莉『うんっ!』


鞠莉『前まですごく楽しそうだったのに』
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2017/06/23(金) 12:39:13.74ID:47EKZNVn
◇――――◇


果南『あの、練習しないんですか?』

果南『いえ……だってしないと勝てないですし』

果南『い、嫌味じゃなくて……っ!!』

果南『ダイヤと鞠莉と打ってるのは、先輩達が部活に来ないから……」



果南『か、勝ちたくないんですか!? 悔しくないんですか!?』

果南『そ、そういう、意味じゃ……』

果南『え、帰る? ちょ、練習……1人じゃサーブ練習しか……』

果南『ちょっと待ってください!!』

果南『っ……』
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2017/06/23(金) 12:42:37.74ID:47EKZNVn
◇――――◇

ダイヤ『あら、他の方は?』

果南『帰ったよ』

ダイヤ『?』

果南『別に勝たなくてもいいって。楽しく打てればそれで、いいんだって』

果南『また付き合ってよ、練習。私と誰もしてくれないからさ』

ダイヤ『あ、あのそのことなんですけど。わたくし、生徒会に入ることになって、果南さんの練習に付き合うことはもう……』

果南『っ、そ、そっか……あはは、それなら仕方ないね』

◇――――◇

鞠莉『やめた……?』

果南『うん』

鞠莉『ちょっと待ってよ、東海大会は……?』

果南『出ない。練習相手もいないし勝てるわけないし』

果南『それに、もう……みんなから煙たがられてるからさ、いない方がいいんだって』

鞠莉『……果南』


果南『確かにバカだったよ。新入部員のくせにさ、練習増やそうとか色々言って。弱小校だもん、楽しく卓球するのが一番に決まってた。郷に入れば郷に従えってね……それができなかったんだから追い出されるのも仕方ない』

ダイヤ『本当にそれでいいんですの……?』


果南『私、世渡り上手じゃないみたいだし……そうするしかなかった』


鞠莉『今の果南……辛そうよ。ね、部活の人達と話し合って――』


バンッッバキッッ


鞠莉『ら、ラケット……!!!』


果南『……もうやめるから、いいのこれで。練習付き合ってくれてありがとね、鞠莉もダイヤも。2人のおかげで県大会いい成績残せたし……もう十分』


果南『応援に来てくれたの、顧問の先生と、2人だけだったけど……楽しかったよ』


果南『本当にありがとう』


鞠莉『っ……』
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2017/06/23(金) 12:43:42.28ID:47EKZNVn
◇――――◇


果南「先輩達は悪くないし、私が悪かったんだと思う。何事もする環境っていうのがあるし……それを無理やり変えるのはダメなんだと思う」

千歌「だから……千歌達の時も?」

果南「……うん。程よくやろうって決めてた。また、あんな風に、なるのが……嫌でさ」

千歌「逃げないよ!! 千歌達は逃げないっ!!」


果南「……」

千歌「えと、真剣にやるよ! 果南ちゃん、それで自分を抑えるなんて絶対良くない! 練習いっぱいしたいならいっぱいしよっ!! 今の二倍……三倍は辛い、かもしれないけど……少なくとも私は精一杯やるっ!!」


果南「千歌……」


ルビィ「そ、そうですよ果南さん……る、ルビィも下手だけど……頑張ります!」


花丸「確かに思えば、果南さんは公民館でやってる時ももっと強かったずら……」


梨子「私も初心者だけど……みんなについて行こうって思ってます」

善子「どーでもいいけど、私は強いあなたと戦いたいの! いいから次のランキング戦、本気出しなさいよ」


果南「……みんな」
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2017/06/23(金) 12:44:50.08ID:47EKZNVn
鞠莉「ほら、みんな真剣だって。果南だけよ、ね、今度は果南がみんなの期待に応えてあげる番じゃない? 今のあなたは、昔あなたが嫌いだった……練習しない先輩と、あんまり変わらないわ」

果南「っ……そう、だね」

果南(確かに、千歌は真剣だった……私は)


果南「……みんな、ごめんなさい。今まで、手抜いてて……私、私……みんなと卓球がしたいっ……」

千歌「うんっ!!」


果南「……ありがとう、鞠莉。鞠莉がこの賞状を持ってなかったら……このまま適当にやってたかもしれない」

鞠莉「ううん。なんて言ったって、私はこのために戻ってきたみたいなものだもの♡」


果南「え……?」


鞠莉「ダイヤがメールと電話で、近況を伝えてくれたからね♡」

ダイヤ「あ、あなた……わたくしとのただの雑談で……戻ってきたの?」

鞠莉「私にとっては、ダイヤも果南も、ただの雑談じゃないの」

果南「鞠莉……」


鞠莉「応援してるわ。また、楽しそうな果南が見れそうで、楽しみよ」

 

鞠莉「はい、これ。――プレゼント」

 


果南「え……これ」


 
果南「――ラケット……」
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2017/06/23(金) 12:47:31.50ID:47EKZNVn
鞠莉「果南が使ってたやつよね。廃盤になってたみたいだけど……まあ手に入ったから! ラバーも昔果南が使っていたものよ?」

果南「こ、こんなの貰えないよ……」

鞠莉「だーめ、貰いなさい。それ使って、頑張って」

果南「もう……鞠莉」

鞠莉「道具大切にしないのは最低なんだから、次折ったら怒るから」

果南「ん……」


鞠莉「ふふん、マリーこと好きになった?」

果南「元から好きだってば……ばか」ギュッ


鞠莉「っ、そ、そうよね///」


鞠莉「……////」


果南「ねえ、みんな……鞠莉も一緒にやるっていうの、だめかな?」

千歌「え、大賛成! というか千歌が最初から言ってた!!」

果南「あはは、そうだったね」

果南「どう、鞠莉?」


鞠莉「わ、私は果南が本気になってくれたならそれでいいし……別に私がやるっていうのは」


果南「鞠莉が一緒に練習してくれると楽しいんだけどな」


果南「ね? 一緒にしよう?」

鞠莉「う、うん//」


曜(えー……即落ち……)
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2017/06/23(金) 12:48:30.29ID:47EKZNVn
梨子(千歌ちゃんに強引に勧誘するのやめてって散々言ってたのに)


千歌「ちょっと強引じゃない?」

果南「そ、そうだったかな」


ダイヤ「鞠莉さんが加わってくれるのなら、わたくしも嬉しい限りですわ」

鞠莉「スクールアイドルもやるんだよね? 似合うかなヒラヒラしたの。ヘッドバンギングはしちゃだめなのよね」

千歌「似合いますよ! ヘッドバンギングはだめ!」

鞠莉「ジョークジョーク♡」


鞠莉「――あ、そろそろ来たかしら」


善子「え……リムジン?」

鞠莉「こっちこっちー!」

鞠莉「ありがとー! じゃ、部室に運び出して」


曜「わわ、黒服の人達……」


花丸「み、未来ずら」


ダイヤ「ま、鞠莉さんここのダンボール達は……」
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2017/06/23(金) 12:52:35.87ID:47EKZNVn
 、
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2017/06/23(金) 12:55:02.08ID:47EKZNVn
鞠莉「開けていっていいよ♡みんなへの、プレゼント♡」

善子「……?」バリッバリッ

善子「――こ、これ!?」

千歌「ら、ラバー!?」

曜「こっちはラバークリーナーとか、タオルも……」

ダイヤ「ま、鞠莉さん!?」

鞠莉「ふふー、ラバーとかラケットとかボールとか、各種道具のプレゼントデース♡」

果南「ど、どういう……わ、テナジーがこんなに」
0210名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止
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2017/06/23(金) 16:14:20.58ID:afPSsPYg
聖良さんや美渡姉さんは厳しいことを言ってるけど、低いレベルのうちはともかく、
高いレベルなればなるほど、才能のある人に勝てなくなるのは事実だしね
スポーツにはまぐれがあるから、他ジャンルよりはマシかもだけど
0212名無しで叶える物語(おにぎり)@無断転載は禁止
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2017/06/23(金) 16:32:41.16ID:Qy3SwdVb
善子「他にも、たくさんラバーがある。厚さも大量に……」

ルビィ「これ、ラケットにラバーが貼ってある……」


鞠莉「試打用よ? メーカーの代表的なラケットに代表的なラバーを貼ったものが入ってるの。組み合わせはたくさん用意したから、それで感覚掴んでね」

鞠莉「いっぱいラケットも用意してあるから……試打用でいけそうなの使ってみて、ラバーを選んで貼ってみてね」

千歌「こ、これ……どうするの?」

鞠莉「だからプレゼントよ」

果南「これ、いくらぶん……?」

鞠莉「うーん……」


善子「このラバーの数……ね、値段、3桁は軽く行ってるわよこれ……あ! こっちはキョウヒョウ……しかも」


善子(これ……中国のナショナルチーム用の、ブルースポンジ……)


ダイヤ「スリースターの試合球……こんなに何ダースありますの……」



鞠莉「えっと、500万円くらいかなあ? もしかしたらもっとかも……」



ダイヤ「こ、こんなの頂くわけにはいきませんわ!!」
0213ホスト規制とかされたら音沙汰無くなります。(おにぎり)@無断転載は禁止
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2017/06/23(金) 16:33:46.80ID:Qy3SwdVb
曜「そ、そうだよ。流石に……」


鞠莉「うーん、それなら捨てるしかないんだけど……それでも? ジャパンは勿体無い精神がすごいのに」

果南「……これだから金持ちは」


千歌「ち、ちょうど今日スポーツショップ行ってラケット買おうとしてたところに……」


鞠莉「ナイスなタイミングだったわけね♡」

鞠莉「みんなも自分に合いそうなの選んでみてね。あ、もちろん無駄遣いは禁止よ? ダイヤに用具のことは聞いてみてね」


ダイヤ「こ、これらはきちんと管理しないといけませんわね……」

千歌「ほ、本当にありがとうございます……っ!」


鞠莉「気にしない気にしない♡オモテナシの精神なんだから」


千歌「うぅ、どのラケットにしようかなあ……ラバーも……」キラキラ


梨子「千歌ちゃん、今日は遅いからそろそろ……」

千歌「うぅ、そうだね」


曜「明日は用具決めになりそうだね……」アハハ…


千歌「そうかも。えっと、みなさんこれからも、Aqoursとして、頑張ろう!!」
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2017/06/23(金) 16:35:07.00ID:Qy3SwdVb
◇――――◇


鞠莉「また果南が獣みたいに、コートを支配するのが見たいだけ」

果南「獣みたいって……」


鞠莉「だってそうだったよ、荒々しくてでも楽しそうで……蝶々みたいに舞う綺麗な善子ちゃんとは真逆ね」

鞠莉「また、見せてよね」


果南「精一杯やるつもりだよ、ラケットまで貰っちゃったんだし」


鞠莉「ラバーの厚さも合ってるよね?」

果南「ばっちり、流石ストーカー」


千歌「――かなんちゃーん!!」


果南「ん……千歌」


千歌「はぁ、はぁ……果南ちゃんっ、わたし……果南ちゃんと本気で卓球したい! だから」

果南「……わかってる。もう手加減しないよ、ランキング戦……がんばろうね」


千歌「うんっ!!」


千歌「ばいばい! 梨子ちゃんかえろー!!」
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2017/06/23(金) 16:36:10.32ID:Qy3SwdVb
◇――――◇

次の日


ダイヤ「こ、これはっ!」

ダイヤ「改めてみるとすごいラインナップですわ……最早お店が開けます」キラキラ…

梨子(輝いてる……)

鞠莉「ダイヤも色々試したら? 用具マニアでしょ?」

ダイヤ「用具は好きですけれど、わたくしの用具は基本的に固定ですの」

鞠莉「えーじゃあ道具の知識そんなに持ってても」

ダイヤ「そういうわけではありませんっ! 鞠莉さんだけではなくて、皆さんも道具のことはもっと知識を深める必要があるの!」


ダイヤ「この中では果南さんと善子さんは問題なさそうですが、千歌さん、強くなりたいならば道具の知識は不可欠ですわ!」

千歌「は、はい」


梨子「あの、自分の道具以外に知る必要があるんですか?」

ダイヤ「そうですわね、梨子さんにも説明しておきますわ」

ダイヤ「自分が使う道具を知ることはとても重要です。しかし卓球は相手と球を打ち合うスポーツですわ。すなわち相手の道具を知ることである程度のプレースタイルや弱点がわかってくる」
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2017/06/23(金) 16:38:21.13ID:Qy3SwdVb
ダイヤ「善子さんなら粘着ラバーを活かした回転でつき崩すカウンターパンチャー、わたくしならカット用の用具、果南さんなら……テンションラバーを活かした高スピン高反発の速攻型……」

ダイヤ「組み合わせは無限大といってもいい卓球の用具を知ると知らないでは、それだけで勝敗が変わるのですわ!!!」


梨子「な、なるほど」

鞠莉「鼻息鼻息」

ダイヤ「っ///」


ダイヤ「とにかく、鞠莉さんが提供してくれたこの道具を説明しながら、皆さんに合う用具を探していこうと思います」

千歌「私に合うものかあ……」

ダイヤ「鞠莉さん、ここにある試打用のラケットの組み合わせは誰が決めたの?」


鞠莉「私が良さそうって思うものと、もっともっと卓球詳しい人に頼んだ!」


ダイヤ「なるほど、確かに理にかなっている組み合わせが多いですわね」


花丸「マルは道具は今のままがいいんだけど……」


ダイヤ「確かにそうかもしれませんわね。とりあえず今道具を交換しなければならないのは……二年生だけ?」


千歌「そう、かも?」

善子「私も色々試す」

ダイヤ「わかりました、では梨子さんから」
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2017/06/23(金) 16:41:26.35ID:Qy3SwdVb
◇――――◇

パコンッ


梨子「あ……すごい」

梨子「全然違う、球が伸びる……」

ダイヤ「これが競技用のしっかりとしたラケットです、全然違うでしょう?」

梨子「うん……これなら……」

ダイヤ「今使って貰ったのが木材ラケットに高弾性ラバーを貼った使いやすいもの。ではこの特殊素材ラケットにテンションラバーを貼ったものを使ってみて?」

梨子「特殊素材ラケットは飛ぶラケット、テンションラバーも飛ぶラバー……だよね」

ダイヤ「そう」

梨子「どんな感じなのかな……」

――――

梨子「ツッツキも普段はそこそこ出来てたはずなのにすぐ高くなっちゃうし……オーバーミスが多くなっちゃう……それになんかネットミスも……どうして?」


ダイヤ「テンションラバーは飛ぶラケットです。高い弧線を描きやすく、使い手によってはオーバーミスが多くなりますの。ツッツキなどの台上技術もより繊細なタッチが必要になる」


ダイヤ「ネットに突き刺さる様な軌道が時々出たのは、特殊素材ラケットゆえの硬い打球感、つまりラケットに当てたぢけだと球離れの速さのせいで弧線があがりきらないことも増える、こんな感じね」


梨子「確かに、私には使えなそう……上級者用だね……」



ダイヤ「トッププロは反発力の高いものに回転性能が高いものを使いますが、それはあの人達の技術あってのもの」

ダイヤ「反発力が高い、ということはオーバーミスしやすい、台上の技術が甘くなるということに繋がります」


ダイヤ「回転性能が高いということは、相手の回転の影響もモロに受けるということ」


ダイヤ「それぞれの性能が高ければいいというわけではないのよ」
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2017/06/23(金) 16:42:59.90ID:Qy3SwdVb
梨子「最初に使ったラケットとラバーの組み合わせ、私に合ってるのかな?」

ダイヤ「そうですわね、これからの上達の手助けになるでしょう。でも梨子さん、バックハンドの技術の上達がとても早いので、バックハンドは少し上のモデルのラバーを貼るのがいいと思います」

梨子「な、なるほど……よろしくお願いしますっ」

ダイヤ「では部室に戻ったら、張替えをしましょう」

ダイヤ「――ふたりはどうですの?」


千歌「っふっ、あぁっ、もうっ」

千歌「あ、ダイヤさん」

ダイヤ「どう?」

千歌「うーん……ラバーはテンションラバーすっごくいい感じ!」


ダイヤ「千歌さんくらいならば十分テンションラバーでも大丈夫ですわね、ちなみにそのラバー、一枚約8000円……両面で16000円……」

千歌「ぅ……そう聞くと重みが」


千歌「ラバーはいい感じだけどラケットは……木材がいいかも千歌は……なんか特殊素材は打ってる感じがしない」


千歌「ほら、なんていうのかな。――みんなそれぞれ卓球の球にも想いが乗ってると思うんだよね……それを受け止めながら、卓球したいっていうのかな……ごめん何言ってるかわからないかもしれないけれど」


ダイヤ「いえ、なんとなくわかりましたわ。強い人ほど球に信念が乗っているというのには同意です。……そうですね、それならば……」
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2017/06/23(金) 16:44:40.92ID:Qy3SwdVb
 、
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2017/06/23(金) 16:45:22.91ID:Qy3SwdVb
ダイヤ「これなんかいいと思いますわ」


千歌「これは……」


ダイヤ「初心者から上級者まで使える、木材ラケットの最高峰のものですわ」


ダイヤ「楽器を作る技術を応用して心地よい打球音が特徴ですの」


千歌「ラバーはテンション……よし、打ってみよ!」

曜「あの、私は……」


ダイヤ「曜さんはどんな卓球がしたいんですの?」

曜「……わたしは」


曜(鹿角理亞ちゃんみたいな……超高速の卓球……とにかく前で、早く、早く……)


曜「誰よりも早く、前で、相手の球を強く返したい!」

曜「あとはなんとかするから」



ダイヤ「――前陣速攻。曜さんならば、まあそうでしょうね。それならば……」
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2017/06/23(金) 16:46:42.47ID:Qy3SwdVb
◇――――◇

千歌「おおっ! このラケットいい! これにするっ!!」

千歌「音も気持ちいいし、球が手に伝わってくる感じ……うん、これだ」

ダイヤ「良かった」

千歌「曜ちゃん、なんかすっごく球速かった!! そのラケットすごい!! 今までと全然違うよっ!!」

曜「そ、そうだよね!」

曜(このラケットなら……)

 

曜(――強くなれる)

 

ダイヤ「ラバーはどうしますか?」

千歌「もうちょっと違うの打ってみようかなあ」

曜「私もっ、もっと、もっと……速いやつ。それ以外はこっちで補うから、だからとにかく! 一番速いやつ!!」


ダイヤ「わ、わかりましたわ」


ダイヤ(曜さん……なんだか変ですわ)
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2017/06/23(金) 16:48:43.04ID:Qy3SwdVb
◇――――◇


千歌「うーん……とりあえずこのラバーにしとく」

ダイヤ「しっくり来ませんか?」

千歌「何が欲しいのかもよくわからなくね」


ダイヤ「まあそうですわよね。このラケットでプレーしていくうちに何が欲しいのかわかるようになってくると思いますわ」


ダイヤ「だからと言って、すぐにラバーを張り替えたり無駄なことはしないように」

千歌「はーい」


ダイヤ「曜さんはこの組み合わせでいいのね?」

曜「うん」


ダイヤ「では、これからラバーの張り替えをしていきますわ」

ダイヤ「梨子さん千歌さん曜さん、真似しながら自分で出来るようになってくださいね」

梨子「張り替え……」


ダイヤ「まずは……ラバーを剥がす」ベリベリッッ

梨子「ああっっ」


千歌「だいたん……」
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2017/06/23(金) 16:50:04.20ID:Qy3SwdVb
ダイヤ「剥がしてしまったラバーは使えないので捨ててくださいね。こうしてラケットを木だけの状態にしたら……ほら、接着剤が表面にこびりついていますの。これを手で丁寧に撫でて取っていくの」コスコス


梨子「それをするとなにが?」


ダイヤ「凹凸が無くなって、ラバーの力を最大限引き出せますの」


千歌「ほえー……千歌たちのラケットは新品だからしなくていいんだよね?」

ダイヤ「ええ、少し待っていてね」コスコス

ダイヤ「で、皆さん準備はよろしくて? この接着剤をラケットに塗っていきます。出来るだけ均等にスポンジで伸ばして……」

千歌「こ、こんな感じ?」

ダイヤ「もう少し」

千歌「ふぁい」

ダイヤ「そしてラバーを開けます」ベリッ

梨子「わ……ラバーって四角いの!? なんで!?」

ダイヤ「ラケットの大きさはものによって違いますから、自分達でカットするのよ」

梨子「そ、そーなんだ」


ダイヤ「丁寧にラケットにも接着剤を貼り付けて……吸着するまでしばらく起きます」
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2017/06/23(金) 16:51:12.62ID:Qy3SwdVb
――――


ダイヤ「丁寧に切りなさい丁寧に!」

千歌「ぅ……切りにくい」

曜「出来た!」

曜「おお……すごい……新品ラケットだぁ……」

ダイヤ「サイドテープを巻いたら終わりですわ。自分の分身と同じです、鞠莉さんに感謝しましょうね」

千歌「うんっ!!」

梨子「自分のラケット……」

千歌「あれ、鞠莉ちゃんは?」


鞠莉「――お待たせーっ、て、あれ?」

鞠莉「もうラバー貼り終わっちゃったの?」


千歌「うんっ!」

鞠莉「なんだ、ラバー選びに苦労するだろうから今年の分の各メーカーのカタログも持ってきて貰ったのに……」


千歌「ぬ、抜かりない……一応見せて!」

パラパラ


曜「カタログってなんかかっこいいね……これほとんどこの部室にあるんだよね……」ゴクッ

千歌「確かにそう考えると……」ゴクッ


善子「ほんとよ、あんな超レアラバーまで用意して」

鞠莉「どれのこと?」


善子「あのブルースポンジのやつよ!」
0225名無しで叶える物語(おにぎり)@無断転載は禁止
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2017/06/23(金) 16:52:45.14ID:Qy3SwdVb
鞠莉「ああ、結構手に入れるの大変だったみたいだし、使ってあげてね♡」

千歌「――ああっ!!!」

曜「あれ、これって!!」

ダイヤ「ど、どうしましたの!?」

千歌「こ、このカタログに載ってるの――聖良さんだよ!!」

梨子「ほ、ほんとだ……」


千歌「ど、どういうこと!?」


ダイヤ「これは……聖良さんがメーカーの、契約選手ということですわ」

千歌「けーやくせんしゅ?」


ダイヤ「メーカー側がスポンサーになって用具を提供することです、活躍すればするほどメーカーの宣伝になりますから」


千歌「確かにここに書いてある用具、使ってたかも……」


ダイヤ「このような方々はメーカー特注で専用のラケットやラバーを提供していることもありますの。ラバーの名前が同じでも、性能はさらに上のものになっていたり、ね」


千歌「なにそれずるい!!」
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2017/06/23(金) 16:54:54.19ID:Qy3SwdVb
ダイヤ「トップ選手に対するサポート、ですから。大量生産が困難なデリケートな品質のプロストック品」

千歌「むむむ……じゃあ聖良さんは最高の道具を使ってるってこと?」

ダイヤ「おそらく」

千歌「ただでさえ強いのに、市販のよりすごい性能の道具を使うなんて……」

ダイヤ「このカタログを見てもわかるようにあなたは、いえ、私達は次元の違う人に挑もうとしている……わかってる?」

千歌「……わかってる。絶対、絶対勝つもん!」


千歌(用はプロってこと、か……)

千歌(他の人に比べても、ダントツに可愛いし、きれーな顔……スタイルもいいし……すごいな……)

 

ルビィ「みんな!」

千歌「?」


ルビィ「ラブライブ、スクールアイドルスポーツ大会の詳細が発表されたよ!!」

千歌「うそ!!」


花丸「おお……これが」

千歌「エントリーは!?」


ルビィ「うん……ここから。えと、大会までは……約一カ月、ですね」

花丸「夏休み前……ラブライブ本戦はいつなの?」


ルビィ「えっとまだ詳細が出てないけど、多分予選は夏休み入ってから少し経ってから、くらいかな?」
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2017/06/23(金) 16:59:36.83ID:Qy3SwdVb
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2017/06/23(金) 17:00:58.94ID:Qy3SwdVb
千歌「じゃあじゃあ、千歌達も個人戦に出た方がいいのかな?」


ダイヤ「ただ、個人戦の方がセイントスノーの方々も出ますし、結果も残し辛いのではなくて?」


ルビィ「そうだと思う、個人戦の方がレベルは高いってどこ見ても書いてあるし」


花丸「じゃあ団体戦に出た方が取り上げてもらいやすいってことだよね」

ルビィ「でも、取り上げられる大きさは個人戦の方が大きいよ、雑誌でもそうだし、ネットでも」

ルビィ「セイントスノーの人達も聖良さんが優勝してから一気に注目されたって感じだし、当時は妹さんじゃなくて違う人とやってたみたいだけど」


鞠莉「ハイリスクハイリターンか、ローリスクローリターンか……どうしよっか?」


千歌「……どうしよう」


善子「……あの人に、全国で待ってるって、言われた」

善子「セイントスノーは二人組だから、団体戦には出てこないんでしょ? ……だから、私は個人戦がいい」



千歌「……私も、個人戦がいい……」
0229名無しで叶える物語(おにぎり)@無断転載は禁止
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2017/06/23(金) 17:02:05.61ID:Qy3SwdVb
千歌「聖良さんともう一回戦って……本気だってこと、伝えたい」

鞠莉「ハイリスクハイリターンの方がいいって、ことね?」

千歌「……うんっ」


果南「団体戦の方がレベルは低いんでしょ? ならさ、Aqoursは9人もいるんだから上位が個人戦で下位の何人かが団体に出ればいいんじゃない?」


果南「個人戦でAqoursの矛をぶつけるんだから……かなり挑戦的だけど、ね」


ダイヤ「仮に団体戦で善子さんと果南さんを始め、Aqoursの上位の人を中心に組めばかなり良いところまで、いけるかもしれませんわね」

善子「……」

千歌「やっぱり……個人戦がいい」


千歌「もし、もしね……団体戦で良いところまでいけても……後悔すると思う。個人戦に出ればよかったかなとか。だって、個人戦の方が精一杯本気でやってる人が多いんだよね、なら……そういう人達と本気でぶつかって、勝ちたい!!」


善子「いいこと言うじゃない! 私も鹿角聖良ともう一回戦うために出るようなものなんだから!」

ダイヤ「わかりました……」
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2017/06/23(金) 17:03:21.10ID:Qy3SwdVb
ダイヤ「調べたところ、準決勝以上では……同じスクールアイドルグループならば、団体戦のように近くで応援することが可能らしいですわね」

千歌「つまり?」

ダイヤ「準決勝以上では実質団体戦……これ以上ない盛り上がりと、注目の中、プレーすることになりますわ」

千歌「ごく……」

曜「次のランキング戦で決めるってこと?」

ダイヤ「そうなりますね、ルビィ、静岡県の枠は?」

ルビィ「えっと……静岡県は4つ、だね」



善子「準決勝まで行けばいいのね」


曜「静岡県予選の次は東海予選?」


ルビィ「ううん、静岡県予選の次はいきなり全国だよ。競技卓球よりは人数も少ないしね……」


善子「県予選から全国なら……全国大会は200人くらいになるのかしら」
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2017/06/23(金) 17:04:00.86ID:Qy3SwdVb
千歌「に、200人……」

善子「まあでもそんなものだと思う」


ルビィ「善子ちゃんはシードになれるかも」

善子「そうなの?」


ルビィ「エントリーするときに過去に実績ある人だとそうなるみたい」


善子「ふぅん」

千歌「よし、とりあえず部内ランキング戦だ!」

果南「いつからにする?」


ダイヤ「みなさん新しい用具にしたばかりだし……三日後くらいでいいのでは?」


鞠莉「そのくらいがいいかもね」


千歌「緊張してきたー!」
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2017/06/23(金) 17:05:21.56ID:Qy3SwdVb
◇――――◇


曜「ふっ……」カコンッ

善子「っ!」ギュインッッ

善子(フォアゾーンギリギリ、このコースのドライブなら)

バッッ…

善子(なっ……追いつい――)

カコンッッ!!!!

曜「ぁあ……」

善子「11-8……ありがと」

曜「だめだー何度やっても勝てないなぁ……」

善子(追いつかないと思った球に追いついて……とにかく前で前で叩いてくる)

善子(打球点も馬鹿みたいに早いし、それをやってのけることも多い……なんなのよ、この人……)

善子(ピッチが早すぎて……ラリーになると――負けることだって。ラケットもラバーもとにかく速くて直線的なもの、あんなの扱えないわよ普通。一体……)


曜「千歌ちゃーん!」


鞠莉「uhh……すごいわねえ曜は」


善子「なに勝ったのは私よっ」
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2017/06/23(金) 17:07:27.15ID:Qy3SwdVb
鞠莉「もう、自分もわかってるくせに」

善子「……」

鞠莉「善子ちゃんの回転をかけるボールタッチも天性の才能だけど……あの子の才能も……天性のもの、ね」

善子「……ま。負けないけど」

鞠莉「でしょうね」

鞠莉「ランキング戦はどう? 警戒する相手はずばり!」


善子「そんなの……果南さんに決まってるでしょ」チラッ


果南「――しゃっ!!」


千歌「くっ……」

千歌「強い……」


千歌(なにこのドライブの威力……返せるわけない……)

梨子「すごい……」


鞠莉「さっすが果南!」ギュッ

鞠莉「ラケットいい感じ?」

果南「そう、だね……大分いい感じ」
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2017/06/23(金) 17:08:51.93ID:Qy3SwdVb
千歌「果南ちゃん今までどれだけ手加減してたの……ひどい」ジト…

果南「ご、ごめんて……」


善子「ぜ、絶対負けないんだから!!」


果南「……私もいくら善子ちゃんでも、無抵抗では、負けたくないな」

善子「……っ」


バチバチ…


千歌「ごく……」


千歌(千歌も、千歌も絶対負けたくない……今は勝てなくても、絶対……っ)


曜「……」


曜(ランキング戦……誰よりも強ければ、千歌ちゃんも少しは頼ってくれる、かな)


曜(勝ちたい……果南ちゃんと善子ちゃんは無理だと思うけど、他の人には絶対……)
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2017/06/23(金) 17:10:57.19ID:Qy3SwdVb
 、
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2017/06/23(金) 17:11:21.08ID:Qy3SwdVb
ランキング戦



善子「ふぅ……」カツカツ…

キュパッ

ギュウッ


善子(強引に台上からドライブばっかりっ……だからって)グググッッ


善子(これ以上好きにさせないってば!)ギュウウウッッン


果南(ループドライブ……多量の回転がかかった善子ちゃんのこれはバウンドしてから大きく沈み込む……満足な体制じゃ打ちづらい、けど……)


果南「ふっ!!」ズバンッッ


善子(バックサイドにスピードドライブっ……それは、知ってる!!!)パコンッッ


果南「!?」


果南(回り込んでオープンコートに弾くカウンター……速いっ、追いつけ……っ)バッッ…ギュウンッッ…スパンッッ


善子(なっ、そこまで……っっ)


善子「はぁ……はぁ……」


果南「ほ……入った」
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2017/06/23(金) 17:13:04.90ID:Qy3SwdVb
善子「くっ……」

善子(フルセット、8-6で勝ってるけど……今決めておけば……かなり有利になったのに)

善子(落ち着け……果南さんのスピードドライブはとにかく速くて回転もすごいけど……コースはそうでもない)

善子(球の威力は強いけどさわれないこともない、だからとにかく……回転で崩して……)


千歌「すごい……」

梨子「ど、どっちが勝つんだろ……」


ダイヤ「ラバーのシートにだけ擦らせて、天才的なボールタッチ能力だけで飛ばす善子さんのドライブ。その中でもループドライブを軸に回転プレーとカウンターで相手を突き崩す善子さん」

ダイヤ「擦るのではなくてラバーの下のスポンジに球を食い込ませて回転と威力を生み出すパワー重視の果南さん……真逆の戦型が故……予想も出来ませんわね。……正直、果南さんがここまで善戦するとは……」


千歌「って……ダイヤさん試合してたんじゃ」
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2017/06/23(金) 17:15:00.83ID:Qy3SwdVb
ダイヤ「あなた方だって早く試合をしてください、進行が遅れますわ」

千歌「だってえ、面白いんだもん……」

千歌(果南ちゃんも善子ちゃんも、全然違う世界にいる人たちだ……いいな、かっこいいな……)

曜「どんな感じー? わ、フルセット……」

千歌「あ、曜ちゃんどうだった?」

曜「ばっちり!」


千歌「ダイヤさんに勝ったの!? すごいすごい!」ピョンピョン

曜「えへへ」


ダイヤ「正直……曜さんの成長速度の速さには驚きましたわ」

千歌「え?」

曜「い、いやーそれほどでも」


ダイヤ「一ヶ月前とは別人のようでした」

千歌「ほえー……」

曜「あはは……」


善子「――しゃあ!!!」

果南「あー……」
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2017/06/23(金) 17:15:52.22ID:Qy3SwdVb
善子「やっ、たぁ……はぁ……はぁ」

千歌「あ、善子ちゃん勝った……」


千歌「フルセットで、11-9……」


善子(あ、危なかった……こ、この人どんだけ手加減、してたのよ……今回はなんとか、勝てたけど……でも、次3セット先取でやって――勝てる保証なんて、全然ない……)

果南「ありがと、楽しかった」


善子「……私も、本気でやるのはやっぱり楽しい」

果南「ふふ、私も。次は負けないからね」

善子「私だって」


千歌(すごいな……すごいな……わたし、だって……)ギリリッ…


ダイヤ「ほら千歌さん、試合をする」
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2017/06/23(金) 17:22:07.27ID:Qy3SwdVb
◇――――◇

千歌「くっ……」キュパッッ

曜「……」

曜(とーん……)

曜(どんっ)スパンッッ!!!!

千歌「っ」

ダイヤ「3-7」

曜(とんとんっ、どんっ)バチンッッ!!!

ダイヤ「3-8」

千歌「はっ、はっ……」

千歌(どこに出しても、何を出しても、前で前で叩いて、きて)

千歌(――なんで、なんで曜ちゃん、こんなに強いの……?)

千歌(道具なら、私だって変えた……それなのにっ)カコンッ

キュッキュッ


曜「っ……」


曜(フォア、そのコースからじゃ次はストレートはない)パコ-ンッッッ



曜(バック……ミドル、短い……次はロング……!!)

スパ-ンッッ!!!!


千歌「ぅ……」


ダイヤ「3-9」

曜「……」

曜(千歌ちゃん……なんで、そんなに単調な攻撃しかしないの? ……そんなの、コースわかっちゃうよ、サーブもドライブも、全然……だめ)
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2017/06/23(金) 17:25:00.14ID:Qy3SwdVb
曜(なんで、回転見て、打てばいいだけじゃんっ!!!)


ダイヤ「3-10」


千歌「くっ……」ウル…


千歌(曜ちゃん……すごいや、なんでも、千歌より、できて……)


曜「っ……」フルフル


曜(やめて……やめてよ、これじゃあ)

 
 


曜(――勝っちゃう、よ……)


 
 

曜「あ……」カコンカコン…

ダイヤ「4-10」


曜(またあの悲しそうな顔だ……どうして、どうして私に負けそうになるとそんな顔をするの?)

ダイヤ「6-10」


曜(果南ちゃんや善子ちゃん、強い人に負けても清々しそうな顔するのに……どうして)


曜(私が誰よりも強ければ、認めてくれるんじゃないの? 私は、どうしたら、千歌ちゃんの近くにいけるの……? どうしたら、楽しく、できる、の?)


ダイヤ「9-10……」


千歌「――やめる」

ダイヤ「は?」


千歌「試合、やめる」
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2017/06/23(金) 17:25:54.94ID:Qy3SwdVb
曜「千歌ちゃん!?」


千歌「だって……だって、曜ちゃん――手加減してる、もん」

曜「っ!?」

ダイヤ「……」

鞠莉「あらあら……」

千歌「もう一回、本気でやって……じゃなかったら……このセット取られたことにして、負けでいい」

曜「……」

ダイヤ「ちょっと、いきな――」


鞠莉「まあまあ……じゃあ、曜とちかっちの試合は後日に回そ? お互いちょっと話し合って、ね?」

曜「わかった……また今度に、しよ」


ダイヤ「では……本日の部活はおわりですわ」

千歌「……曜ちゃん、久しぶりにさ……泊まりに来ない?」

曜「え……」

千歌「だめ?」

曜「う、ううん……いいけど」
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2017/06/23(金) 17:30:25.01ID:Qy3SwdVb
 、
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2017/06/23(金) 17:30:58.77ID:Qy3SwdVb
◇――――◇


カコンカコン


曜「いいの、夜なのに卓球して」


千歌「へーきだよ、客室までは聞こえない。私たちが叫んだりしなきゃね」

曜「そっか」

千歌「……」

千歌「ね……どうして手加減したの?」


曜「それは……」


曜(なんて、言えば)


千歌「私に気を使うなら……やめてほしいな。曜ちゃんは凄いんだから……私なんかのこと、考えなくて、いいんだよ?」アハハ…

曜「……」


千歌「ほんと、曜ちゃんてば凄いね!」ニッ


曜「そんなこと、ないよ」


千歌「だって、クラブも部活もしてない……小さい頃私とかお姉ちゃん達と打ってただけなのにこんなに強いんだよ? それって凄いことだ、よ!」カコ-ンッッ


曜「ナイスボール」
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2017/06/23(金) 17:32:16.32ID:Qy3SwdVb
千歌「でもこんなんじゃ、取られちゃう。――そうでしょ?」


曜「……うん」


千歌「……」


千歌「えへへ、だからね、曜ちゃんはこの調子でがんばって欲しいな」


千歌「次手加減したら本気で怒るんだからね? わかるんだよ、このラケットにしてから……球に乗ってる、人の気持ちって、いうのかな」


曜「私は……」


曜「ううん、なんでもない。じゃあ今度、本気で試合……しようね」

千歌「うん!!」


♪♪♪

千歌「あ、梨子ちゃんからだ!」

曜「!!」

千歌「もしもし、うん、うん! え、泊まりに来るって話じゃないの? なんだー、あはは」

曜「……」

 
 

曜(どうしてだろう……どうしたらこんなに……遠いんだろう)
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2017/06/23(金) 17:36:33.65ID:Qy3SwdVb
◇――――◇

曜「っ!!」スパ-ンッッ!!!!

千歌「くっ……ぁ」


ダイヤ「……3-11、マッチトゥ曜さん」


千歌「っはー……負けた」

千歌「こんなに、離れてるなんて……」



曜「……あ、ありがとうございました」

千歌「はーっ……うん! さっすが曜ちゃん、だね!」

ダイヤ「――では、ランキングは……こんな感じになりましたわ」


 

1年生 ランキング戦 結果
http://i.imgur.com/sjfDz2L.jpg

2年生 ランキング戦 結果
http://i.imgur.com/m0Z8nj0.jpg

3年生 ランキング戦 結果
http://i.imgur.com/1xgcfS6.jpg
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2017/06/23(金) 17:37:56.82ID:Qy3SwdVb
ダイヤ「団体戦はどうしましょう……」


果南「正直、でなくてもいいかもしれないよ」


果南「梨子ちゃんは初心者だし、ルビィちゃんもちょっといきなり大会はきついだろうし……」

鞠莉「私もそう思う、ダブルスだって何もやってないわけだし」

ダイヤ「確かに……」


果南「私たちがいるうちに団体戦は出る、だから団体戦出場は冬のラブライブで、最初で最後にした方がいいと思う」


果南「下手にめちゃくちゃにやられてトラウマみたいになるよりは、ね」


ダイヤ「どうですか、千歌さん」


千歌「……そうかも」

千歌「でも、絶対に冬は出よう! 今回の夏も本気だけど……やっぱり優勝するには、みんな力が足りてないと思う」


千歌「私達の本番は冬のラブライブ! そこに照準を合わせよう!!」

果南「おっけー、じゃ、冬は確実にでるんだから、梨子ちゃんも上手くならないと、ね?」


梨子「は、はいっ!」


ダイヤ「とりあえず、個人戦に出る四人は今回も優勝するつもりで。みんな力はあるんだから、自信を持って」

千歌「うんっ! がんばろーね、曜ちゃん!」


曜「う、うん!」
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2017/06/23(金) 17:39:42.97ID:Qy3SwdVb
また夜に。
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2017/06/23(金) 17:50:41.71ID:y1CGt3LD
善子以下のメンバーで善子より遥かに格上の相手に勝てるのかね
静岡は余裕だろうが
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2017/06/23(金) 18:00:34.77ID:a/ug65KD
千歌にストレートなダイヤが果南にセット取ってたりすんのは相性なのかな
つか11-8とかならそんな離れてないような気すんだけど案外それくらい取れちゃうもん?
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2017/06/23(金) 18:36:00.60ID:afPSsPYg
スクールアイドルの(言い方悪いけど)片手間で出る人達も多そうだから、とりあえず全員出場かと思ったら、
夏は全員出場はしないっぽいんだね。ダブルスとか描写がわけわからんことになりそうだしなw
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2017/06/23(金) 18:49:34.57ID:oGroykXF
卓球分かんないけどおもしれー
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2017/06/24(土) 00:46:47.15ID:DMV9Cz8E
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2017/06/24(土) 02:16:34.17ID:94qnMEwd
◇――――◇


数日後


鞠莉「ふっ……」キュパッキュュッ

千歌(フォア側に曲がってくる逆横回転系っ――YGサーブっ……)


ポ-ン

千歌「あれ、下回転じゃないの……」


鞠莉「残念、横上よ」


千歌「んん……鞠莉ちゃんのサーブ全然わかんないよ」

ダイヤ「鞠莉さんは中ぺンで手首の可動範囲が大きくもてて、強烈な回転を出せますからね」

ダイヤ「さっきのサーブも、逆モーションサーブと言われる難易度の高いもの」


ダイヤ「今の千歌さんに足りないのは、台上技術だと思いますの。台上技術に関しては、鞠莉さんのタッチは非常に参考になると思いますわ」

千歌「なんでストップとかあんなに止まるの?」


鞠莉「ストップはツッツキを短くしたような、相手に攻撃させないための技。だから長くなったらおしまい」

鞠莉「ちゃんとあがりぎわを捉えてあげることが重要よ、台上は本人のレベルがそのまま出るから、台上技術が出来ないと勝ち上がることは出来ないわ」


鞠莉「まあ私はサーブと台上以外がダメだから、そんなに強くなれないんだけどね♡」
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2017/06/24(土) 02:17:39.19ID:94qnMEwd
千歌「というか、鞠莉ちゃんてなんで卓球出来るの?」

鞠莉「私色んなスポーツできるのよ? テニスとかバドミントンとかも! その中の一つで、まあ果南が楽しそうにしてたから、私も集中的にやってたことがあるの」


千歌「ほえー……みんな凄いなあちょっとやっただけで」

千歌「というかさ、曜ちゃん凄くない?」


曜「っしゃぁ!!!」

善子「あーもう!!」


鞠莉「最近は善子ちゃんから一セット取ることも増えてきたわね」

ダイヤ「わたくしからみても、あの成長速度は異常ですわね」

果南「ねー、ほんとだよ」

千歌「果南ちゃん」


果南「昔っからそうなんだよね、ちょっと教えて……見ただけで出来るようになるんだよ。たまったもんじゃないよね、今の曜の超前陣速攻型も、この前見てた鹿角理亞のものだよ、おそらくね」


果南「……多分、本気で卓球してたら……今の日本のランキングも、脅かしてたかも、ね?」
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2017/06/24(土) 02:19:20.00ID:94qnMEwd
果南「天才だねー、天才」

千歌「天才……」


千歌「すごいな……やっぱ、曜ちゃんは……」

鞠莉「ちかっち……?」

千歌「ううん、なんでも」

果南「千歌も、自分のペースでがんばろ。付き合うからさ」

千歌「うんっ!」

果南「今なんの練習?」

鞠莉「台上処理よ」

果南「あー」

果南「ちょっと千歌苦手だよねー」

千歌「そうなんだよね……」

果南「強引に打てば?」


ダイヤ「果南さんじゃないんですのよ」

果南「あはは……」


ダイヤ「じゃあ千歌さん、サーブ練習から、ツッツキストップフリック……この辺りを今日は見ていきましょう」


千歌「はーいっ!」
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2017/06/24(土) 02:19:49.97ID:94qnMEwd
◇――――◇

大会前日


千歌「ふぅ……明日かあ」

曜「いよいよだね」

梨子「ふたりとも、がんばってね! わたし応援してるからっ」

曜「うんっ、ありがとう!」

千歌「今から緊張してきたぁ……」

曜「はやいって」

千歌「でもー!」

曜「大丈夫……練習してきたことを出すの、それだけ!」

千歌「うん……っ」
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2017/06/24(土) 02:21:01.34ID:94qnMEwd
◇――――◇

大会当日


果南「え、うそっ!!」

ダイヤ「果南さん?」

果南「あ、あの、おじいが倒れたって」

千歌「え」

果南「ごめん……わたしっ」

ダイヤ「……行ってあげて」

果南「ごめんなさいっ……大会……せっかくエントリーしたのに、みんなの力になれるかもしれなかったのに」

千歌「そんなこと気にしないでっ! それよりおじいさんとのことが大切だよ……果南ちゃんの分まで……私達勝ってみせるからっ!!」


鞠莉「ええ、その通りよ」

果南「ごめん……っ、あのそこの荷物取って」


――――


千歌「果南ちゃんは残念だったけど、私たちのやることは変わらないよ! 絶対勝とう!」

曜「うんっ」

善子「ええっ!」

曜「なんかさ、やっぱり普通の大会とは違うね」
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2017/06/24(土) 02:22:22.34ID:94qnMEwd
ルビィ「そうだね……大体みんな可愛いし……それに、衣装も」

千歌「うぅ、千歌達ちょっとだけワッペンとか付けただけだよお……」

ダイヤ「なるほど、スクールアイドルのスポーツの祭典だけあって……衣装も改造して良いということなのですね」

曜「時間なかったしね……」


梨子「写真撮っておこ、3人の」

千歌「うんっ!」

梨子「ちーず」

梨子「はい、おっけー。3人とも、がんばってね」


花丸「一回戦がそろそろ始まるって」

善子「私はシードだから、審判よね?」


ダイヤ「そうですわね、曜さんと千歌さん準備はよろしくて?」


千歌「タオル忘れた!」


ダイヤ「もう……」
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2017/06/24(土) 02:25:06.82ID:94qnMEwd
――――


ダイヤ「お疲れ様です、いい内容でしたわね」

鞠莉「うん、ばっちりね」

千歌「えへへ、このまま勝ちたい!」

千歌「あと何回勝てばいいの?」

ダイヤ「あと二回勝てば……」

千歌「ひゃー……でも、あと二回、か」

ダイヤ「全国に行っても試合数はそこまで変わらないはずですわ、なのでここで慣れておくのがいいわね」

千歌「よしっ、次も勝つぞ……」

千歌「善子ちゃんは?」

鞠莉「聞かなくてもわかるでしょ?」

千歌「わ、あれ?」

花丸「圧倒的ずら……善子ちゃんの名前知ってる人とか居て。いきなり優勝候補だって、他校の人が話してるの聞こえたよ」

千歌「まあ、そりゃそうだよねえ……知らない人にとっては完全にダークホース。かっこいいかも……」

ダイヤ「そろそろ千歌さんは呼ばれると思うから、準備して」
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2017/06/24(土) 02:27:02.41ID:94qnMEwd
千歌「インターバル短くなってきたなぁ……」

ダイヤ「トーナメントとはそういうものよ」


鞠莉「ねえダイヤ、レベル高くなってない?」

ダイヤ「ええ……想像してたようなお遊戯卓球では、まるでありませんわね」

ダイヤ「県大会より少し下がるくらいで」

鞠莉「全く……想像違いもいいところよ、地方大会の映像とかなかなかないからねえ、推測するしかなかったんだけど」

ダイヤ「想定よりは上のレベルですわね」

梨子「あの、そんなにレベル高いんですか?」


ダイヤ「……こんなことを言いたくはありませんが、千歌さんは競技卓球ではおそらく県大会レベル。地方大会まで進む力はないでしょう」


梨子「それって」

ダイヤ「今日は似たような規模の卓球……千歌さんを信じるしかありません」


千歌「あのねあのね、ドライブがぱーんって! かっこよくない!?」


曜「すごいっ!」



梨子「……がんばって」
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2017/06/24(土) 02:28:24.83ID:94qnMEwd
◇――――◇


「7-11」

千歌「くっ……」


梨子「あぁ……」

「9-11」

曜「……かー……」


ダイヤ「――残念、でしたわね」


鞠莉「ちかっちは4回戦負け、曜は5回戦負け……曜はあと一個勝てば全国だったのに……惜しい」


梨子「ふたりとも……」


ルビィ「……あとは善子ちゃんだけ」


鞠莉「よっちゃんは平気だろうけれど、精一杯応援しましょう」


花丸「うん」

善子「優勝するから、安心して」

花丸「頼もしいずら……」


ダイヤ「負けたら審判をしなくてはいけないので……あそこで振り返る時間もあるでしょう」

千歌「……」ウルッ…


梨子(そっか、すぐに側にいって、声かけてあげることもできないんだ……コートに入ったら、一人……孤独な戦い、なんだ)


 
梨子「千歌ちゃーん!! お疲れ様ー!!」
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2017/06/24(土) 02:30:00.07ID:94qnMEwd
千歌「……梨子ちゃん」

千歌「……」ウルッ…

梨子「………」ズキッ

梨子「曜ちゃんも、お疲れ様っ!!」


曜「……」

梨子「あれ?」

梨子(なんか、すごい顔……そっか、曜ちゃん試合になるとすごく集中して別人みたいになるし……今もまだ、そのモードなのかな。なに、考えてるんだろう……)


曜(負けた、負けた……負けた負けた負けたっ!!!)


曜(勝たなきゃ、いけなかった、のに!!)

善子「……」
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2017/06/24(土) 02:30:43.70ID:94qnMEwd
ダイヤ「善子さん、そろそろ……」

善子「ええ……」

善子「じゃあ行ってくるわ、準決勝以降は団体戦みたいにして、あなたたちが下まで応援に来てくれるんでしょ?」

ダイヤ「ええ」


鞠莉「卓球台を二台まで片付けて、体育館の中心で試合するのよー?」

梨子「こ、この卓球台片付けるの!?」


鞠莉「ええ、勝てば勝つたび観客の視線を否応なく浴びるの。今はかなり分散してるけれどね。それが卓球の大会よ、上になれば大観衆の中の試合を余儀なくされる」

 

鞠莉「ま、とりあえず楽しみにしましょ♡善子ちゃんが私たちをそのすぐそばまで連れて行ってくれるみたいだから♡」
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2017/06/24(土) 02:31:38.14ID:94qnMEwd
◇――――◇

梨子「お疲れ様……」

千歌「うん……」

千歌「ぁぁ……はは」

ダイヤ「……」

千歌「だめだった……ごめん」

ダイヤ「いえ……精一杯やりきったのなら、それで……」

ルビィ「あ、曜ちゃんも……」

曜「かー……ほんとに、ごめん」

千歌「お疲れ様……」

曜「千歌ちゃんも」

千歌「……えへへ、だめだったね」

曜「うん……」

千歌「でも曜ちゃんは私より一個多く勝ってるし、凄いよ!」

曜「上までいかなかったら、同じだよ……」

千歌「……そっか、確かに」
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2017/06/24(土) 02:34:23.57ID:94qnMEwd
千歌「よし、辛気臭い顔しててもしょうがないし……善子ちゃんのこと応援しよ!!」

曜「うんっ」

千歌「あれ、善子ちゃんは?」


善子「――もう終わったって」


曜「え」

善子「次準決勝でしょ?」

ダイヤ「ええ、お疲れ様でした!」

ルビィ「すごいよ善子ちゃん!」


千歌「てことは善子ちゃん……全国に!」

曜「やったね!!!」

鞠莉「ここに来ても一方的……ナイスゲームね」

花丸「段々善子ちゃんのこと、周りが注目し始めてるずら……」


ザワザワ…


千歌「……」

梨子「あ、卓球台が片付けられてく」

鞠莉「試合まで十五分も無いと思うわ、今は休んで」

善子「ええ」

千歌(クールでかっこいいなぁ……)


善子「ふぅ……」


曜(集中してるね、善子ちゃん……)


ダイヤ「次の選手はデータがありましたわ、この前の大会で準優勝だった……今回の優勝候補筆頭です」

善子「じゃあその人倒せば優勝?」


ダイヤ「かなり近くなります、わね」


善子「わかったわ」
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2017/06/24(土) 02:36:49.82ID:94qnMEwd
◇――――◇


善子「しゃあ!!!」

 

 善子ちゃんの放つ一球一球に、会場が震えた。

善子「ふふっ」

 私達Aqoursが応援しているフェンスを挟んで、堕天使が人を弄ぶようにして、コートを支配している。

 フットワークは軽い、ドライブのタッチもほとんど乱れない。 相手のドライブ攻撃も、ふわりと包み込んでオープンコートへと叩き込む。その背には、善子ちゃんの言う漆黒の翼が見えるようだった。

 ――その翼で高く、高く、飛んでいる。

 常人では、いつまで経っても届かない空の向こうまで。

 


 準決勝にて、今回の大会での優勝候補をいとも簡単に破って見せた善子ちゃんは、迎えた決勝戦も……何も変わらなかった。

 優勝候補を破ったダークホースとして、会場を味方につけ、舞い踊る。会場が善子ちゃんの球の行方を見守っている。

 そこには紛れもなく……人を魅了し、私が……なりたかった、憧れていた世界の人がいた。


 善子ちゃんは、ここにいる誰よりも輝いている。やがて、浮き上がった球を、フォアハンドで強打。一瞬の静寂の後、両の手を大きく天へと突き上げ……呼応するように、会場にいる人々も立ち上がっては、賛辞の拍手を送っていた。

 

曜「よしっ!!」
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2017/06/24(土) 02:38:17.79ID:94qnMEwd
 そばにいた曜ちゃんが、鞠莉ちゃんが、そしてみんなが、この会場の主役になった善子ちゃんに駆け寄っていく。

 私もたまらず善子ちゃんに駆け寄る。


千歌「やったね! 善子ちゃん!!」

善子「うんっ!!」


 何かをやりきった笑顔。

 私が欲しくて欲しくて……でも今まで手に入らなかったもの。

 そう、それを手にした人はこんなにも、美しく輝く。私はその輝きに心からの祝福を送ると同時に……自分の不甲斐なさに、心底、呆れてしまった。


ダイヤ「ほら善子さん、優勝インタビューがありますから」

善子「へ?」


ダイヤ「へ? じゃありません、このスポーツ大会は優勝や準優勝の人にはインタビュータイムが与えられて、Aqoursのことを宣伝する大大チャンスなんですわよ!?」


善子「な、なんにも考えてない!! ど、どうしよ。こ、こんな大勢の前でなんて……」


鞠莉「大丈夫よ、今思ってること言えばいいだけ」
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2017/06/24(土) 02:40:45.99ID:94qnMEwd
善子「今思ってること……」

千歌「そうだよ! 善子ちゃんは主役なんだから、気楽にね?」

善子「え、ええ……」

 一台になった卓球台が片付けられ、足早にフェンスの撤去が行われている。

 予想以上の参加者数に、時間が押してしまっているらしかった。私たちは体育館に整列するために、その場で待機することになった。善子ちゃんだけは大会の運営の人に連れて行かれて、色々な準備をするらしかった。

 私が負けたあと、ダイヤさんに言われたこと。


「今回はレベルが高かった」


 それを聞いた瞬間、ああ、またかって。思った。また私はそれを理由に、慰められるんだって。

 でも私は誓ったんだ、みんなに、梨子ちゃんに。そういうの、関係ないって。

 フェンスの撤去が終わると、表彰にうつっていった。

 偉い人が話をして、準優勝の人が善子ちゃんや運営に対する賛辞を送って拍手が巻き起こり、続けて善子ちゃんの番だった。


 準優勝の人からマイクを受け取る前からガチガチに緊張してしまっている様子で、津島善子さんと名前を呼ばれた返事も変な風に裏返ってしまったのか、少しだけ笑いが巻き起こる。


 でも善子ちゃんは可愛いから、観客の人たちの可愛いっていう声が、そこかしこから聞こえていた。
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2017/06/24(土) 02:43:44.98ID:94qnMEwd
善子「ほ、ほほほ本日は……ありがとうございました!!」

善子「えと、津島ヨハ……善子です」

千歌「くす……」

梨子「ヨハネじゃないんだ」

千歌「ね」

善子「あの……まずは、対戦してくださった人たちに感謝します……ありがとうございました。この大会を開催してくれた皆さんにも、ほんとにありがとうございました」

善子「そして……応援してくださった観客のみなさん、ほんとにありがとうございました!!」

パチパチパチッッ

 善子ちゃんを拍手が包み込む。少しだけ照れながら笑う善子ちゃんに、善子ー!! と野太い声が聞こえた気がした。うん……ファン増えたね。


善子「あ、まだ結構時間あるんですか? えとじゃあ……なに話そう、かな」

善子「…………。実は私、ずっと競技の卓球本気で、してて……でも挫折して」


善子「……何をしたいかわからなかったけど、またこうして卓球が出来てるのは、あの、そこに座ってる仲間達のおかげなんです!」


善子「ほんとに、Aqoursの人達はみんな真剣で……私も、その……がんばろうって思えるんです」


千歌「……」
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2017/06/24(土) 02:46:08.81ID:94qnMEwd
 、
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2017/06/24(土) 02:46:34.19ID:94qnMEwd
善子「こ、これからもAqoursはたくさんスクールアイドル活動をしていきます! 良かったら、ちぇ、チェックしてくれると、嬉しいです!」


善子「全国でも、静岡県の代表として頑張ります! ほ、ほんとにありがとうございました!!!」

「善子ー!!!!!!!」


善子「ヨハ……っ。ぅ」


「善子ー!!!!」


善子「……」フルフルッッ

千歌「くすっ」



 最高に、輝いてるなあ。

 
◇――――◇


ダイヤ「本番は東京で……ラブライブの正式発表が行われる、次の日です」

善子「ごく……」

ダイヤ「本当に今日はお疲れ様でした、果南さんもきっと喜んでいますわ」

善子「ほんとに緊張したー……インタビューよかったかな」

千歌「ばっちりだったよ! 善子ー! って声、最終的には結構な人が叫んでたよね」

曜「わかる、ファン増えてたよね」

善子「り、リトルデーモンが増えるのはいいことね!」


ルビィ「バス来たよ!」

曜「おっけ!」

善子「あ、あの、千歌さん」

千歌「ん?」

 

善子「ありがと、ね……私、あなたに誘われて、よかった……」
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2017/06/24(土) 02:49:11.87ID:94qnMEwd
千歌「……」

千歌「うんっ、こっちこそ……善子ちゃんと一緒にやれて、嬉しいよ」

千歌「ありがとね、私に、見たことない景色を見せてくれて」

善子「これからも、ま、任せなさいっ!」

千歌「ふふっ」

善子「……ふふ」


千歌(今度は、私も……)
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2017/06/24(土) 02:50:20.52ID:94qnMEwd
◇――――◇

バスの中


曜「はー……」

善子「どしたの?」

曜「悔しい」

善子「……いいことね」


曜「――勝たなきゃいけなかったんだけどな」


善子「どうして?」

曜「うーん、えっと……なんて言っていいかわからないけど」

曜「勝ちたかった」

善子「相手はどんな人?」

曜「前衛のブロックマン」

善子「押しきれなかった?」

曜「うん……イライラしちゃって、ミスばっかり。だめだな、ほんとに」

曜「練習、これからも付き合ってよ」

善子「ローテーションでしょ」

曜「練習時間外も」

善子「なるほどね」

曜「強くなりたい」


 
善子「あなたなら――そう思えばなれるわよ」

 


曜「……そうかな」

善子「ええ」
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2017/06/24(土) 02:53:51.78ID:94qnMEwd
善子「多分……あなたが本格的に練習はじめたら、私、負けると思う。わかんないけどね」

曜「な、なに言ってるの! 勝てるわけ……」

善子「……嘘だってば」

曜「で、ですよね」

善子「でもあなたのこと、羨ましいって思う人、たくさんいると思うわ、あなた――才能あるもの」


善子「"そう思っても"、なれない人の方が多いんだから」

曜「……っ」


曜「あはは……」

曜(才能か……)

千歌「あ、ふたりともおはよー!」

善子「おはよ」


千歌「昨日はお疲れ様! すごかったね!」ギュッ


善子「ち、ちょっと」


曜「……」
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2017/06/24(土) 02:57:41.36ID:94qnMEwd
◇――――◇

夏休み 合宿

千歌「あはは、ごめんね夏休み初日から海の家での手伝いなんて」

梨子「ううん、平気だよ」

梨子「みんなといると、楽しいから。夏休み、きっと練習ばかりだろうけど……それでも充実するだろうなって」

千歌「えへへ……そうだよね!」

梨子「でも……ほんと、千歌ちゃんにはなんでもバレちゃうね」

千歌「……」

梨子「安心して。ラブライブには出るから」

千歌「え」

梨子「みんながくれた居場所、千歌ちゃんがくれた居場所……今はね、ピアノよりそっちの方が大切なんだって」

千歌「梨子ちゃん……」

梨子「だから、早く歌詞ください」

千歌「えーー!!」


 


曜「……」

曜「そんなことが……」

曜「なんで、ふたりだけで、決めちゃうのかな……なんで、なんで」

曜「少しくらい、私にも、相談、してくれたって」


曜「っ……」
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2017/06/24(土) 02:59:23.33ID:94qnMEwd
◇――――◇


カコンカコンッ

曜「……」

 

梨子「ほんとに卓球なんかして、大丈夫?」

千歌「大丈夫大丈夫」

千歌「ラリー、続くようになったね」

梨子「千歌ちゃんのおかげだよ」

千歌「ううん、やらなくてもいいことなのに……やってくれた、梨子ちゃんのおかげ」

千歌「ほんとに、ありがとね……私すっごく嬉しいんだ」

梨子「うん……」

千歌「みんなとこうして一緒にやれて、さ。私、全然強くないのに」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「……言い出しっぺが、大会、勝てなくて……頼って、ばかりで……」

千歌「ほんと、ほんとにありがと……ぐす」


曜(千歌ちゃん、泣いて……)


曜(私の前で、泣いたことなんて、ほとんどなかった、のに……)


曜(梨子ちゃんの前では……)ギリリ…
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2017/06/24(土) 03:01:44.52ID:94qnMEwd
梨子「ううん、気にしないでいいの……辛くなったら言っていいんだよ?」

千歌「ごめん、ごめんね……私、なにやっても中途半端で、周りに凄い人、いて」


千歌「――曜ちゃんとか、なにやっても、私より出来るしっ……すごくてかっこよくて。でも、なんかさ」


曜「っ……」

曜(ぁぁ……)


千歌「――それが、ちょっとだけど、辛くて……」


曜(やっぱり、そう、なんだね……)

曜(わたしじゃ、だめ、なんだ……)

梨子「うん……」ナデナデ


千歌「この前の大会も、善子ちゃんすごくて輝いてて……私も、あんな風になり、たくて……」

梨子「うん……」

千歌「でも、でも……わたし、がんばるから……梨子ちゃん、これからも一緒にいてくれる……?」


梨子「当たり前だよ……千歌ちゃんが頑張ってるの、私、知ってるもん……これからも、近くで見ていたいから」


千歌「梨子ちゃん……うぅ……」


千歌「ごめん、こんな話して……あのね、今日起こしたのはね……ピアノのこと、なんだ」
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2017/06/24(土) 03:05:36.37ID:94qnMEwd
◇――――◇

 

梨子「――大好きだよ」


 太平洋に、陽光が降り注ぎ初めている。ゆらゆらと波打つ水面。ふっと髪の毛を持ち上げる潮風に乗って……梨子ちゃんの声が聞こえてきた。


 続けて千歌ちゃんが小さく啜り泣く声が、さざなみの間に響く。


 梨子ちゃんは、千歌ちゃんを抱きしめたまま、離さない。お互いの心のうちを存分にひけらかして、私が本来見ていないであろうところで、心の結びつきを強固なものにしていた。


 それは、今回だけだったんだろうか?


 私が知らない間に、仲の良いお隣さんとしてたくさん話をして、ずっと一緒にいたはずの私なんかよりも、今の千歌ちゃんのことを知っている。千歌ちゃんの心が悲鳴をあげているのを、受け止めてあげるのは、私ではないようだった。私は千歌ちゃんの悲鳴に気がつけなかった。

 でも、それも納得だ。


 だって、千歌ちゃんは……私と一緒じゃ、嫌なんだから。


 ずっと一緒になにかやりたくて、でも何かやりだすと千歌ちゃんは辞めちゃって……裁縫もそうだった、水泳もそうだった、サッカーだってそうだった、他のこともそうだったかもしれない。
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2017/06/24(土) 03:08:16.16ID:94qnMEwd
 確かに私は、先に取り組んでいた千歌ちゃんより、上手くなることが多かった。ううん、ほとんどが、そうだった。


 その度千歌ちゃんは、嫌な気持ちになっていたんだなって、思い知らされた。そりゃ、そんな心の内を、本人に言えるはずがない。


 スクールアイドルだって、私から入りたいって言ったんだし……誘われて、ないんだし。


 私なんか、いなくたって……ううん、いない方がよかったの、かな。


曜「ぅ……うっ……」

 ずっと、一番仲が良いって、思ってた。

 ずっと、続くんだろうなって、思ってた。

 でも、そんなこと、なかったんだね。

 私が一方的に、思ってた、だけだったんだね。

 ごめんね千歌ちゃん……私なんかが、一緒に、やっちゃって。

 隣で歩けることは、無いのかもしれないね。


 だから、卓球で私に負けた時も、あんな悲しそうな顔をしてたんだね。ああ、またかって、思ったのかな。またこの人はって。


曜「だめだな……わたしって」


 だったら"こんなの"ない方が良かった、持ってない方が、良かった。


 水平線の向こうから出てき始めた太陽に、背を向ける。

 未だに千歌ちゃんの啜り泣く声は聞こえていた。そう、私には、聞いてはならないことだったんだ。私なんかが聞いたって、千歌ちゃんに――なにもしてあげられない。


 そうして、背に朝の光の温もりを感じながら、私は寝床へと歩みを進めた。登り始めた陽とは裏腹に、私の中の何かが、沈んでいくのが、分かった。
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2017/06/24(土) 03:10:45.91ID:94qnMEwd
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2017/06/24(土) 03:11:41.79ID:94qnMEwd
◇――――◇

七月後半


鞠莉「この前から思ってたんだけどね」

果南「うん」

鞠莉「曜の様子がおかしい気がするの」

果南「……だよね」

鞠莉「なんかね、ちかっちと最近全然話してないと思わない?」

鞠莉「今回のダンスも、梨子の代わりをしてるけど……合わないみたいだし」

果南「でもさっきは合ってたよ」

鞠莉「あれ、梨子の間合いをマネしたんでしょ曜が。あの子すごいからそういうことも出来るのね」

鞠莉「でも曜と千歌のダンスなのに……梨子のマネをするっていうのも……なんかね」

鞠莉「それまでも、何回かおかしいなって思ったことはあったのよ。でもね、合宿の時くらいからかな……明確に、隔たりというか曜が壁を作った気がして」

果南「……」

果南「曜は多分、何か思ってるんだと思う」

鞠莉「あの子、溜め込むタイプ?」

果南「そうかも……」

鞠莉「じゃあ……マリーが、人肌ぬいじゃおうかしら」

果南「なにするの?」

鞠莉「多分曜は嫉妬してるんだと思うわ! ちかっちが梨子に、取られたって」

果南「そんな」


鞠莉「明確に意識してなくても、きっと似たようなことを思ってるはず。予選に向けて、ちょっとこの辺りも消化しておかないと」


鞠莉「果南は千歌に話して見てくれる? 上手い感じに……曜とちかっちが一度本気で話し合えるように」

鞠莉(最初から翼を持っている者と、持って無い者……。それでも分かり合えるって、私は)
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2017/06/24(土) 03:12:40.10ID:94qnMEwd
◇――――◇

曜の家


曜「私なんかより、梨子ちゃんの方が……」

梨子『……そんなことないよ?』

曜「そんなことあるんだよ!!」

梨子『……っ』

曜「ごめん、わたし……ほんとに……」

梨子『ううん……ねえ、今度さ、二人で合って話さない?』

曜「え……」

梨子『お願い、だめかな』

曜(なん、で)

曜「わかっ、た」

梨子『うん、じゃあおやすみ。またね』


曜「おやすみ……」

ブツッ

曜「一体、どういうことなのさ……。鞠莉ちゃんは千歌ちゃんと話せっていうし」

曜「嫉妬、か。そうだね……私、嫉妬してるんだね、梨子ちゃんに」

曜「はは……情けなすぎる、よ」

曜「なんて、話せばいい、のさ……」

千歌「よーちゃーんっ!!!」

曜「ん……え?」

千歌「曜ちゃん!!」

曜「な、なにしに来たの!?」

千歌「話があって、来ましたー!!」

曜「は、話!?」

千歌「うん!」

曜(自転車で……あの距離を!?)


ダッッ
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2017/06/24(土) 03:13:54.44ID:94qnMEwd
◇――――◇

千歌『曜ちゃんが?』

果南『うん……色々ね悩んでるみたい』

千歌『……』

果南『千歌はどう思うの? 曜が自分を押し殺して、梨子のマネをして大会に挑む、そんなの嫌でしょ?』

果南『卓球だってそう、千歌は曜に精一杯やってほしい、違う?』

千歌『違くない……』

果南『千歌がさ、急に梨子ちゃんとか仲良くなって、不安だったんだと思う』

千歌『……』

果南『曜のこと、どう思ってる? 悪口でもいいよ』

千歌『わ、悪口なんてないよ!! で、でも……なんか、私にもっと、相談とか……してほしいなって』


果南『?』


千歌『ほら、曜ちゃんなんでも出来るしすごいでしょ? だからね……おっきなこととかは、なんにも千歌に相談とかしてくれなくて』


果南『……』


千歌『きっと、辛いこととかも一人で解決しちゃうのかなって。それか、私じゃ、聞いてあげられない、のかなって』
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2017/06/24(土) 03:14:46.08ID:94qnMEwd
千歌『ちょっと、寂しい、なって』

果南(なるほどね……さっき、曜から話を聞いた鞠莉が言ってたことと、おんなじなわけ……)

千歌『ほんと、ヒーローみたいで、さ……。みんなのヒーロー、千歌だけのために、なんてワガママだし。だから私も曜ちゃんに悩みとかあんまり、相談できなくて』

果南『……みんなのヒーロー、か』


千歌『うん……』


千歌『だからって、わけじゃないんだけどね……私は一番、大切なんだよ、曜ちゃんのこと』


千歌『なんにも言わなくても助けてくれるし、頼りになるし……ずーっと、助けられてきた』


千歌『だからね、悪口なんか、ないもん』


果南『ヒーローっていうけど、曜も同い年の女子高生……。もし、今千歌が思ってること、そのまんまに思ってたら、どうかな?』
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2017/06/24(土) 03:15:23.11ID:94qnMEwd
千歌『?』

果南『千歌が曜に話さないから、曜も千歌に……本当に弱いところ、見せてくれないんじゃない?』

千歌『っ……!!』


千歌(そう、なのかな。確かに、私は最初梨子ちゃんに二度と合わないって思ったから、自分のこと話しやすくて……)

果南『長く積もった関係は素敵だけど、新しい風が吹かなくなっちゃっうことが多いよね。そして――大切なものが、見えなくなる』


果南『灯台下暮らし、近づけば近づくほど、わからなくなる』

千歌『……』


果南『一回、話し合ってみるのがいいと思うな』


千歌『灯台、下暮らし……』
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2017/06/24(土) 03:18:09.27ID:94qnMEwd
◇――――◇

曜の部屋

曜「果南ちゃんが、そんなこと」

千歌「うん……」

千歌「あ、この写真、運動会の時だ。凄かったよね、曜ちゃんは一位で」

千歌「ほんとに、すごい」

曜「……」

千歌「……聞かせて、欲しいな。どう思ってるのか」

千歌「ごめん、私から話した方がいいよね!」

千歌「まずね、曜ちゃんは梨子ちゃんのステップのマネをするのやめよ?」

曜「でも」

千歌「ふたりで、また作ろう? 私と曜ちゃんの、二人のダンスを」

曜「私とじゃ……嫌でしょ?」

千歌「え……」

曜「私ね、聞いちゃった、んだよ。合宿の日、梨子ちゃんと卓球台のところで話し合ってること」
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2017/06/24(土) 03:20:02.39ID:94qnMEwd
千歌「!!」

曜「私さ……確かに、なにかやればやるたび……上手くなるの、早かったかもしれない……そうだよね、こんな人……近くで一緒にやられたく、ない、よね……」

千歌「聞いてたんだ……でも、違うよ、」

曜「何が違うの!? 私、千歌ちゃんと、本気で何かやってみたかった、スクールアイドル初めて、卓球も一緒に始めて……でも、なんでか、近づいた気がしなくてっ」

曜「私が卓球で勝っちゃうから……? 千歌ちゃんのことなんにも考えずに、強くなろうとしたから!?」

曜「千歌ちゃんは、梨子ちゃんとどんどん仲良くなって……どんどん千歌ちゃんが離れて行く気がして、それが、なんか、ちょっと、悲しくて……ぐす……」


千歌「曜、ちゃん……」


千歌(私の前で、泣く、なんて……)

 

曜「強くなろうと、したのもっ――私は千歌ちゃんと、隣で歩きたくて」

 


曜「だからわたし、がんばって……。でも、それが嫌だったん、だもんね……私、全然、千歌ちゃんのことわかってなかった、ね。ただの、独りよがり、だったね」


千歌「違うっ、違うよ!!」ギュッ
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2017/06/24(土) 03:21:22.17ID:94qnMEwd
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2017/06/24(土) 03:22:14.22ID:94qnMEwd
曜「……」

千歌「わたし、曜ちゃんがスクールアイドルやるって言ってくれて、本当に嬉しかったんだよ!? やる必要のない卓球までやってくれて、わたし、本当に本当に嬉しかった! 曜ちゃんと一緒に、こんなに色んなことできるんだって」

千歌「だから私のことなんて気にしなくていいんだよ……? 話してくれてありがとう……」

千歌「曜ちゃんが本気でやってくれてるの見て、嬉しかった。それと一緒に悔しかったのもほんと。なんでわたしはこんなに出来ないのかなって。でもね……今回は絶対やめない。絶対やり抜いてみせる」

千歌「悔しくないのって、曜ちゃんの励ましの言葉だったのってこと……ちゃんと、伝わってる」

千歌「ごめんね曜ちゃん……もっと早く、話すべきだった、よね」

千歌「今でも曜ちゃんは、世界で一番……大切な友達だよ。こんなこと、言うの……恥ずかしい、けどね」エヘヘ…

曜「千歌、ちゃん……わた、しもっ……」

千歌「話してくれてありがとう……曜ちゃんがこんな風に話してくれた、本当に嬉しい」

千歌「今までね、曜ちゃんは本当に強くてすごい人なんだろうなって思ってた……でも、違ったんだね。私とおんなじで、色んなことに悩んでるんだって……それに気がつけてなかった」

千歌「ずーっと一緒にいたのに、無意識のうちに、お互いをさらけ出すの、避けちゃってた」
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2017/06/24(土) 03:23:07.28ID:94qnMEwd
千歌「でもね、今は違うよ。こーやって曜ちゃんのこと、もっと知れた。私のこと、知ってもらえた……本当に、幸せだなって。曜ちゃんが居てくれて、よかったなって」

曜「うぅ……ひっぐ」


千歌「もー、泣かないでよ……私まで、泣いちゃう、じゃん……ひっぐ」

曜「ぐす……ごめん」

千歌「じゃあね、改めて……」

 

千歌「これからも――私と一緒に、走ってくれますか? 頼りないけど、精一杯、がんばるから」

 

曜「うんっ……うんっ」

千歌「えへへ……」

千歌「お泊まりしてっていいよね?」

曜「うん……」

曜「なんか、久しぶりだね……こうするの」


千歌「そうだよねえ……」


曜「これからも、こんな風に出来るといいな」
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2017/06/24(土) 03:23:42.53ID:94qnMEwd
千歌「私もそう思ってるよ」

千歌「ずーっと、ね?」

曜「千歌ちゃん……」


ギュッ…


千歌「もー、熱いよ」

曜「ぐす……いいでしょ」

千歌「また泣いてる」

曜「仕方ないじゃん」

千歌「どーして?」

曜「言わない」

千歌「だーめ」

曜「千歌ちゃんが優しいからだよ……」


千歌「曜ちゃんの方が優しいよ、誰よりも、人のこと考えてくれてる……自分のことは二の次だもん」


千歌「ほんとに、ありがとう」

曜「……こちらこそっ」
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2017/06/24(土) 03:24:31.35ID:94qnMEwd
◇――――◇

梨子の家


曜「……美味しい」

曜「すごいね」

梨子「ううん、曜ちゃんの方が……料理上手だよ」

曜「私のはなんか……男っぽいし」

曜「こんなオシャレに作れないよ!」

梨子「お父さんに教えて貰ったの?」

曜「そうなんだ、パパ、結構料理好きでさ」


梨子「そうなんだ……大変だね、船長さんて。なかなか帰ってこないんでしょ?」


曜「あはは……そうなんだよねえ、まあ慣れてるからさ」


梨子「……」
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2017/06/24(土) 03:25:34.66ID:94qnMEwd
梨子「ほんとに、ごめんね……」

曜「え……」

梨子「お父さんと一緒に居たいよね、でも……私のせいで、ダンスの穴埋めで練習時間、増えて……」

曜「そ、そんなこと」

梨子「曜ちゃん……凄いよ。色々、頑張りすぎだよ」

曜「……」

梨子「だから、だよね? 私も含め、みんな……曜ちゃんに頼っちゃってた、ね」


梨子「――この前の電話のこと、なんだけど……」


曜「っ……」

梨子「曜ちゃんは、私のこと――嫌い、かな」

曜「え……」

梨子「言い辛い、よね。ごめん」

曜「なんでいきなりそんな、こと……」


梨子「だって……私、曜ちゃんと千歌ちゃんの間に、割り込むようにして、入っていっちゃったのかなって……。ずっと一緒にいた二人の中に、何も考えずに、余所者が」

曜「っ……」


梨子「千歌ちゃんには沢山誘われたから大丈夫かなって思ってるけど、曜ちゃんはさ……その、流れで一緒に居たって、いうか」
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2017/06/24(土) 03:27:40.14ID:94qnMEwd
梨子「だから……どう、思われてるのかなって……不安で」

曜「……正直に、言っていい?」

梨子「……」コク…

曜「なんで梨子ちゃんなんだろーなーって考えてた。私が知らないうちにどんどん二人は仲良くなって、私が知らないことも、どんどん梨子ちゃんに話して……どうして、私には話してくれないんだろうって」

曜「――私の方が、千歌ちゃんのこと知ってるのにって……思ってた」

梨子「っ」

曜「でも多分……全然知らなかった。この前ふたりで話してさ……知ってると思ってただけだった。梨子ちゃんの方が、きっと深いところを知ってる。私は浅いところをずっと、彷徨ってたんだなって。昔の憶測だけ。いつだって人は、成長してるのにさ」


曜「話しやすかったん、だろうね。梨子ちゃんの方が。私さ……なにかやろう! って取り組むと、なんでかわかんないけど、そこそこ、できちゃって……そんな人が近くにいると嫌なんだろうなって、思ってて」

曜「確かにそんな人に相談なんてしたくないって気持ちも、わかる。そう思ってたんだけど……色々話し合って、私が悪かったんだなって」


曜「だから、梨子ちゃんが悪いとかじゃ、ないの……千歌ちゃんが今、やりたいことをやれてるのは……梨子ちゃんのおかげ……本当に、感謝してるんだよ」
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2017/06/24(土) 03:28:40.94ID:94qnMEwd
梨子「そっか……」

梨子「千歌ちゃんね、いつも話してたよ」

梨子「曜ちゃんは凄い人だって。なんでも出来ていつも助けてくれて、今でも助けて貰いっぱなしなのに……これ以上迷惑かけられないって」


梨子「――私のヒーローなんだって、教えてくれた」


曜「っ……」

梨子「私はふたりが羨ましかった……。私はそんなに親しい人もいなかったから」

梨子「千歌ちゃんから聞かされてた通り、曜ちゃんは凄い人なんだなって……ずっと思ってた」

ギュッ…

曜「……っ」


梨子「ごめんね……負担、かけてたね。色々悩むことも、あるよね」


梨子「だからね、これからは私にも話して欲しいな……全部一人でやる必要、ないんだから……ね?」

曜「っ……」

曜「ごめん、なさい……」


 
梨子「ううん……私こそ、ごめんね? また一緒に、がんばろう?」


曜「うんっ……うん」
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2017/06/24(土) 03:30:28.60ID:94qnMEwd
 、
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2017/06/24(土) 03:30:55.96ID:94qnMEwd
◇――――◇

曜「ふぅん……ピアノってそうやるんだ……」

曜「音が出なくても練習になるんだ?」

梨子「そうだね、スポーツの素振りみたいなもの、だよ」

曜「へえ!」

曜「コンクール、頑張ってね?」

梨子「うんっ」

曜「ちょっと私もピアノ触ってみたいんだけど……いい?」

梨子「うん」

曜「隣座って! ちょっと教えてよ」

梨子「教えるって言っても……」


曜「あ、私ね……Aqoursの曲、ワンフレーズくらいなら弾けるかも」

梨子「?」


曜「梨子ちゃんが音楽室で弾いてるとこ見てて……ちょっとだけ!」


梨子「え……」


〜〜♪
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2017/06/24(土) 03:32:17.20ID:94qnMEwd
曜「結構いい感じじゃない? 音が出てたら、だけど!」

梨子「すごい……」

梨子(ほとんど出来てる……)

曜「にしし」


梨子(ほんとに、ヒーローだね……)


梨子(でも、実はとっても繊細……みんなのこと、考えて、自分のことは後回しにしすぎちゃうんだね。だから自分の中に溜め込んじゃう……それに気がつけて、良かったな)

曜「?」


梨子「ううん、なんでもない」

曜「そっか……。ぅうん、眠くなってきちゃったなー」

梨子「明日も練習だし、早く寝ようか」

曜「そうだね、一緒よベッドでいい?」

梨子「な、なんか恥ずかしいよ……」

曜「いいでしょ、ね?」

梨子「うぅ……わかった」

曜「えへへ、やった!」


曜「じゃあお先に失礼しますっ」

梨子「私も……」モゾモゾ

梨子「や、やっぱり恥ずかしい……」

曜「なんでー? 梨子ちゃんの髪きれー……」


曜「私もこんな風にストレートが良かったな」


曜「あ、いい匂い……」


梨子「わざとやってる!?」///

曜「なにが?」

梨子「もう……」

曜「新鮮だねえ、なんか」
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2017/06/24(土) 03:33:12.52ID:94qnMEwd
梨子「そうだね……」

曜「ふぁ……ん。ねむ……」

梨子「なんか赤ちゃんみたい」

曜「なにそれ!」

梨子「眠いのに全く抵抗しない感じが」

曜「抵抗しようかな……」

梨子「やめておこ」

曜「ん……そうする」

曜「おやすみ……」

梨子「うん……」

ピピピッ


曜「?」

梨子「千歌ちゃんからだ……窓開けてって」

梨子「どうしたんだろ……」
 


千歌「あ、梨子ちゃん――な、なんで曜ちゃんいるの!?」


曜「えへへ」

千歌「ち、千歌に内緒でお泊まり!? ずるいずるい!!」
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2017/06/24(土) 03:34:35.92ID:94qnMEwd
曜「内緒にしておくつもりはなかったんだけど……ね?」


梨子「ね?」

千歌「むむむむ……っ」


梨子「で、どうしたの?」


千歌「ううん……ほら、夏休み始まって……予備予選のために、大事な時期でしょ? だからちょっと話したいなって」

千歌「私たちはµ’sみたいに学校を救うことは出来ない、だってもう廃校、しちゃうしね」


曜「……そうだね」

 

千歌「でもさ……やっぱり、悲しいよね。それって。だから……私たちがここで生きてたんだって、浦の星で精一杯、輝いた人たちがいたんだって……知ってほしい」


 

梨子「うん……」


千歌「だから、がんばろーね。絶対、この一年で……精一杯、やってみせよ。今の私たちはゼロだけど、きっと……1に、してみせよ……っ」

曜「うんっ!!」

梨子「っ!?」

 

千歌「?」


曜「お、お久しぶりです!!」
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2017/06/24(土) 03:35:59.15ID:94qnMEwd
千歌「あ、お母さん!?」

千歌ママ「曜ちゃん、久しぶり。相変わらず可愛いね」

曜「ほ、ほんとですか?」///

千歌ママ「うんっ。あなたが梨子ちゃん? 美人だねぇ……」

梨子「そ、そそそそそんなことないです、ほんとっ!」/////ブンブンッ


千歌ママ「可愛い」クスクス

千歌ママ「いつも娘がお世話になってます」

梨子「いえ……」

千歌「もー、なんで戻ってきたの!?」

千歌ママ「んー、なんかスクールアイドルっての始めたって志満達が言ってて……」

千歌「また余計なこと……」


 

千歌ママ「それに……千歌――また卓球してるんだって?」


 
千歌「っ……うん」

梨子「?」

千歌ママ「どうなりたいの?」

千歌ママ「スクールアイドルのスポーツ大会で優勝したいって、聞いたけど」

千歌「そう、だよ」


千歌ママ「……レベルが上がってるって聞いた。優勝するなら、少なくとも競技の地方大会を勝ち上がる力がないと無理とも、聞いた」
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2017/06/24(土) 03:37:10.05ID:94qnMEwd
千歌「っ」


千歌ママ「つまり。志満や美渡は軽くいなせるくらいにならないとってこと……今度は、やめない?」


千歌「や、やめないっ!!」

千歌「絶対、絶対!!」

千歌ママ「……わかった」


千歌「それより――コーチ業はいいの!?」



千歌ママ「ん、選手がさ、故障しちゃって。ついててもいいんだけど、リハビリが長引きそうだから、お休みもらっちゃった」


千歌「えっ」

梨子「コーチ?」


曜「千歌ちゃんのお母さん、昔卓球選手でさ、今もコーチ業してるんだよ」

梨子「えっ、卓球選手……」

千歌ママ「今はこんなだけど……一応ね」

曜「一応ってレベルじゃないから……検索してみなよ……」

梨子「ん、名前は……はい。えっ……」

 


 

梨子「ぜ、全日本女子シングルス、ゆ、優勝……しかも、二回……え、うそでしょ!?」
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2017/06/24(土) 03:39:55.95ID:94qnMEwd
千歌ママ「あはは……よく言われる……」

梨子(卓球一家……っ)


千歌「ねえお母さん……今、暇なんでしょ?」

千歌ママ「一応ここの手伝いするつもりだけど」

千歌「でも、さ……時間あるよね」

千歌ママ「なにがいいたいの?」


千歌「――わ、私達のコーチ……してくださいっ!」

曜「……!」


千歌「お願いっ! わたし、強くなりたいの、昔みたいにすぐやめたりしないからっ!」


千歌ママ「なるほどねえ……」


千歌ママ「――言っておくけど、死ぬほど厳しいよ」

千歌ママ「あなたがスクールアイドルの方の練習と絶対両立してみせるっていうの、誓える?」


千歌ママ「ううん、あなただけじゃない……グループなんでしょ? グループのみんなにも、ちゃんと、話して。死ぬほどキツイって、みんなで納得したなら……また私に話して」


千歌「……っ、そ、したらコーチしてくれる!?」


千歌ママ「考えておくね」スタスタ…


千歌「……どう、かな。二人とも」


曜「千歌ちゃんがやりたいなら……私は、ついてくよ。元全日本選手の、本業コーチの人が見てくれるなんて……これ以上ない、でしょ」
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2017/06/24(土) 03:40:54.88ID:94qnMEwd
 、
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2017/06/24(土) 03:41:26.00ID:94qnMEwd
曜「隣で走るって、決めたから!!」


千歌「曜ちゃん……」ウル…


梨子「わ、わたしも……初心者だけど、団体戦、出るんだもん。上手く、ならなきゃ!!」

梨子「体力ないけど……耐えてみせる」


千歌「ふたりとも……ごめんね、千歌のワガママ、に」

梨子「だから、違うでしょ? 千歌ちゃんのためじゃないって」

千歌「うんっ……うん」

千歌「ねえ、千歌も梨子ちゃんち行っていい?」

梨子「うん」

千歌「三人でベッドで眠れる?」

曜「な、なんとかなる?」

梨子「が、がんばろ……」


千歌「よーし、待っててね!」


千歌ママ「……」
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2017/06/24(土) 03:43:20.27ID:94qnMEwd
◇――――◇

千歌ママ「まあ、千歌に競技の県大会勝ち上がる力はないしね」

美渡「うーん、次の大会は冬でしょ、それまで少なくとも東海大会レベルまで、そこまで持っていけるかな」

志満「そうねえ……」


千歌ママ「もしコーチするってなったら、あなた達も付き合ってよ」

美渡「えぇ……」

千歌ママ「まあ学校が夜も使えればだけどね」

千歌ママ「可愛い妹のために人肌脱ごうって気概はないの?」

美渡「でもさぁ……」


志満「大丈夫だよ、美渡ちゃん、最近彼氏にフラれて暇だから」


千歌ママ「あーあ、もう結婚無理だね」

美渡「な、なに言ってくれてんの!! うぅ……」


千歌ママ「そういうこともあるよ、元気だして」


美渡「はぁぁ……」
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2017/06/24(土) 03:47:16.69ID:94qnMEwd
◇――――◇


曜「ダイヤさん興奮してたね」クスッ…

千歌「ダイヤさん気づいてると思ってたんだけどなあ、私のお母さんのこと」

千歌「果南ちゃんが言ってるとばかり」

梨子「良かったね……みんな、賛成してくれて」

千歌「うん……」

曜「遊んでる暇、全然ないだろうね」

千歌「うん……でも」

曜「楽しそう、そう思ってる」

千歌「うんっ!」


千歌「はーっ!!」


千歌「夏だね」


 

千歌「――夏が来る」
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2017/06/24(土) 03:47:56.20ID:94qnMEwd
また今度。
何かあったら速報行きます。それでも何かあればしたらばいきます。
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2017/06/24(土) 03:53:46.36ID:4a6IkQOF
梨子ちゃんをステーキにして食べたい
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2017/06/24(土) 04:06:24.89ID:4a6IkQOF
梨子ちゃんをロースト梨子にして食べたい
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2017/06/24(土) 09:03:18.13ID:syz9Ytk3
梨子ちゃんもマリーも勝ち負けじゃない所で支えてくれるええ女や...
改めてストーリー見ると曜ちゃんヤバいわ
飛び込みもアイドルも衣装作りも卓球もやって過労死しそう
千歌ちゃんはみんなに支えてもらえるけど曜ちゃんはほぼ孤軍奮闘な所が尚更ヤバい
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2017/06/24(土) 15:19:43.27ID:94qnMEwd
◇――――◇

体育館


千歌ママ「こんばんは、千歌の母です」

ダイヤ「ほ、本物ですわ……あの」


千歌ママ「私のこと、知ってくれてるんだ、嬉しい」

ダイヤ「うぅ……」

千歌ママ「早速だけどとっても厳しいよ、覚悟してください」

ルビィ「ごく……」


千歌ママ「ああ、あなたのことは知ってるよ津島善子ちゃん」

善子「え」


千歌ママ「千歌と同じクラブで、静岡県の世代有望株だったんだもの、当然よ」


善子「あ、ありがとうございます」
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2017/06/24(土) 15:21:21.36ID:94qnMEwd
千歌ママ「果南ちゃんも」

果南「あはは……」


千歌ママ「みんなのことを見るのは当たり前だけど……とりあえず善子ちゃんが全国大会、近いんだよね。集中的に善子ちゃんを見ようと思ってる」


善子「ごくっ……」


千歌ママ「まあ、後はこっちの千歌の姉達も付き合ってくれるって言ったから……」

美渡「よろしく」


志満「よろしくね」


千歌「なんでお姉ちゃん達まで……」


善子「卓球できるの?」

千歌ママ「善子ちゃんには勝てないかもだけど、ふたりとも東海大会には毎回出てたし、志満は全国にも出てる。見てあげることは問題ないはずだよ」

ダイヤ「す、すごい……」


ダイヤ「千歌さんの家は卓球一家だったんですね……」
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2017/06/24(土) 15:22:41.59ID:94qnMEwd
千歌「あはは……ドロップアウトしたの、私だけなんだよね……」


千歌ママ「じゃあみんなの戦型とかプレーを見たいから、いつもみたいに練習、してみて?」


千歌ママ「あ、の体育館は何時まで使えるの?」


鞠莉「うーん、21時くらいまでなら。最悪もっと大丈夫です」

善子「で、でもバスが」


千歌ママ「私たちが車で送ってあげる、練習時間、伸びるけど……平気?」

善子「そ、そのつもりです」


千歌「よし、じゃあはじめよう!!」
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2017/06/24(土) 15:24:47.86ID:94qnMEwd
◇――――◇


志満「へえ、ダイヤちゃんはカットマンなんだ」

ダイヤ「は、はい!」

志満「私もなの、なんか嬉しい」

ダイヤ「そ、そうなんですねか

志満「これは教え甲斐がありそうね……♡」

ダイヤ「///」

 

美渡「金髪のあなた……中ペンなのね」


鞠莉「はい♡お姉さんも?」

美渡「一応ね」


美渡(てか……スクールアイドルやってるくらいだから少しくらいはって思ったけど、実際見るとみんなめちゃくちゃ可愛い……もちろん千歌以外ね)

美渡(なにこの金髪の子……胸おっき……練習着歪んでるし)


美渡「……身長もそこそこあって手足も長そうなのに、でも下がらないんだ、勿体ないね」

鞠莉「下がるの苦手で……」


美渡「前陣の台上処理は文句ないみたいだけど……上へ進むとそれだけじゃどうしても押し込まれるから……」


美渡「まあ私もそうだったから、似てるね」


鞠莉「おお」
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2017/06/24(土) 15:26:19.87ID:94qnMEwd
千歌ママ「花丸ちゃんは粒高……ルビィちゃんはアンチラバーの異質かぁ、なんでもいるねこのグループは……」

花丸「あはは……」


千歌ママ「私一応異質も教えられるから……安心してね」

ルビィ「は、はいっ!」

千歌ママ「そうねえ……次は……」


千歌ママ「――曜ちゃんか」

曜「……」カコンカコン


千歌ママ「……天はいくつまで一人に、与えるんだろうね」


千歌ママ「梨子ちゃんは素人か………あのがちがちのフォアはなんとかしないとだろうけど」


千歌ママ「あ、みんな聞いて」


千歌「?」


千歌ママ「一通りみんなのプレースタイルとか、どんな感じなのか見させて貰いましたもちろん詳細なところはまだわからないけど」

千歌ママ「とりあえずみんなに言えることは、足が全然動いてないってこと」


千歌ママ「だからね、いや、だからってわけじゃないんだけど……あなた達にこれから約一ヶ月でいいから、実施してもらいたいことがあります」


ダイヤ「……」
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2017/06/24(土) 15:27:22.52ID:94qnMEwd
千歌ママ「――練習の八割はフォアハンドオンリーでやるの、バックハンドはバックハンドで時間作るから、それ以外はバック禁止!」


鞠莉「バック禁止……」

千歌ママ「本来ならこれは一年計画。強豪校なんかでよくやられてるんだけれど、入ってきた新入生にまずフォアハンドを半年間メインにさせて、とにかく足を動かす癖をつけなきゃいけない。その土台があるうえでの、バックハンドを振れる両ハンド卓球が成り立つの」


千歌ママ「追いつけないから、足が動かないからバックを使うんじゃない、その場面場面で最適な手段がバックハンドっていうだけ。相手から時間を奪う方法がバックハンドってだけ。オールフォアで振れる力がありながらバックも振るそれが現代卓球の雄、両ハンドドライブ型」


千歌ママ「ドライブ型だけじゃない。あらゆる戦型で足を動かして最適な位置に身体を動かすのがなによりも大切なこと」


千歌ママ「あなた達には短期間だけれど、かなり意識的に足を動かしてもらって、夏休み中に、今より何段階も上の基礎を作り上げる。そこから各々のプレースタイルに合わせて練習をしていきます」
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2017/06/24(土) 15:29:14.28ID:94qnMEwd
◇――――◇

善子「はぁっ、はぁっ」

千歌ママ「だめ、もっと擦って。球の勢いに負けてスポンジに食い込んで棒球になってる! ぶっ叩かれるよそれじゃ!」

善子「くっ……」


善子(現役なんてとっくに引退してるはずなのに……なんて重い球……押される)


千歌ママ「今のあなたのボールタッチのまま挑むとするなら、貧弱な食い込ませるドライブよりとにかく擦って回転で勝負したほうがいいよ」


千歌ママ「鹿角聖良ちゃんは、強いからね」


善子「鹿角聖良のこと、知って、るんですか」


千歌ママ「うん、何回か会ったこともある。なんたって文句なしの世代最高プレーヤーだもの」

善子「……」


千歌ママ「全国までのこの期間じゃあなたの擦りあげるだけのボールタッチはそう簡単には変わらない。回転をかける才能はほんとにすごいけど、それだけじゃ勝てないってこともよくわかってるでしょ?」


善子「……」コクッ


千歌ママ「だからね今は長所を伸ばすしかない、でもその長所はほんとに凄いから自信持って」

善子「はい……」

 


美渡「ほら動け千歌!!」


千歌「は、はひ……」ヨロヨロ…
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2017/06/24(土) 15:30:52.68ID:94qnMEwd
曜「はぁ、はぁ……」

曜(さっきからずっと多球練習だ……休む間もなく、きっつ……)

曜(スクールアイドルの練習も今までより俄然きつくなってるのに……これは死ぬぞ……大丈夫かな)

果南「さすがに、きつい、ね……これ」

美渡「お、果南ちゃん流石。まだまだ余裕そうだね♡」

果南「ぅ……」

美渡「さあいくよ、じゃあ次は私のフォア側にずっとドライブで」



志満「うーん、そうねえ」

志満「こっちは異質の子が多いし……」

志満「でもフットワークは重要よ♡」

志満「花丸ちゃんやルビィちゃんのブロック主体もちゃんと打球点に身体を動かさなくちゃだし、ダイヤちゃんはカットマンだけれど……」

ダイヤ「……?」

志満「――後陣でも全部フォアで取るように頑張ってね♡」

ダイヤ「こ、後陣でも?」

志満「ええ。ダイヤちゃん、バックは粒高でしょ」

ダイヤ「はい」

志満「バックはフォアに比べて振り切れないから、カットマンは飛ばない粒高を貼る人が多いの。そっちの方が相手の攻撃の衝撃を吸収して守りやすいからね」


志満「でも、最初はとにかく振り切れるフォアで取るように意識して。バックも勿論重要だけど、カットといえば下回転だから、ね?」


ダイヤ「は、はいっ!」
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2017/06/24(土) 15:31:48.76ID:94qnMEwd
◇――――◇


車の中

千歌ママ「どうだった? 続けられそう?」

善子「死にそうです」

千歌ママ「まあまあ、善子ちゃんのこと一番厳しく見てるしね」

曜「一対一だもんねー」

千歌ママ「それにしても曜ちゃん、ほんとに強くなったね」

曜「そ、そうですか?」

千歌ママ「うん、絶対全国まで行かせてあげる」

曜「あ、ありがとうございます!」

千歌ママ「ここだよね?」

曜「はいっ! また明日!」

善子「千歌、大丈夫?」

千歌「大丈夫……」

千歌ママ「自分がしたいって言ったんだもの、平気だよね」

千歌「う、うん!」


善子「あ、ここです」

千歌ママ「ねえ善子ちゃん」

善子「?」


千歌ママ「本当にこのまま、練習続けたい?」
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2017/06/24(土) 15:32:25.56ID:94qnMEwd
善子「え」

千歌ママ「……やりたいか聞いてるの」

善子「えっと……強くなれるなら」

千歌ママ「そう、わかった。お疲れ様ー」

善子「……」ペコリ…

千歌「ばいばい!」

千歌ママ「また明日ね」

善子「はい!」


千歌「はあ……」

千歌ママ「どう、耐えられそう」

千歌「うん……」

千歌「ねえ、はっきり言って欲しいんだけど……」

千歌ママ「うん?」


千歌「――やっぱり、千歌って才能ない?」

千歌ママ「……」


千歌ママ「――そうね……至って普通だね」

千歌「っ……だ、よね」


千歌ママ「これだけは言えるけど……曜ちゃんは天才だよ、あの子、小さな頃から本気でやってたら今の卓球界は変わってたかもしれない」


千歌「あはは……すご」
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2017/06/24(土) 15:34:55.56ID:94qnMEwd
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2017/06/24(土) 15:35:27.62ID:94qnMEwd
千歌ママ「だからね、曜ちゃんを見て自分と比較するのはやめなさい」


千歌ママ「才能がなくたって強くなった人を私は何人も見てきた。全国に行ってる人はもちろん、美渡や志満だって才能は全然ない」


千歌ママ「でも、東海大会で上位になれるまでになった」


千歌ママ「卓球はさ、すっごく残酷なスポーツなの、よく知ってるでしょ?」

千歌「……」

千歌ママ「小さい頃からやっていないと強くなれない、才能がないと強くなれない、努力しないと、強くなれない」

千歌ママ「三つが必要って言われてる、この三つの掛け算って言われてる」


千歌ママ「才能っていう部分がほんとに、とってもおっきいスポーツだっていうのは否定しない。でも、それを覆す人がいるってことも事実」


千歌ママ「そういう人はね、とにかく努力したんだよ」


千歌ママ「才能なんて、ギャンブルだから。最初から開いてるかもしれないし、後から開くかもしれない。みんな花開くのを願って……人生かけるの。賭けなんだよ、才能なんて」


千歌ママ「それに勝つ人は……少ないけど。破れた人は違う競技なら花開いてたかもしれないし、運が無かったと、思うしかない」


千歌ママ「人生賭けて求める人ががそれを持ってることなんて、本当に稀だしね。でも、それだけじゃ納得できない人の方が多い」


千歌ママ「――嫌でしょ。持って生まれたものだけで、全部決まるなんて」
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2017/06/24(土) 15:36:07.22ID:94qnMEwd
千歌「……」


千歌ママ「残酷だね、本当に」

千歌「……」

千歌ママ「……自分の実力がまざまざとスコアに出て、突きつけられる。でもさ、それって自分の実力がわかる機会が与えられてるだけ」


千歌ママ「今までみたいに腐る? 腐らずに頑張るなら……支えてあげる」

千歌「やる……絶対やる」

千歌ママ「なら平気、お母さんを信じなさい」

千歌「強く、なれるかな」

千歌ママ「大丈夫、あなたが強くなりたいって思い続けるなら……絶対なれる。あなたは小さい頃からやってたってのは、満たしてるんだから」

千歌「うん……うん……ぐす……」


千歌ママ「……」
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2017/06/24(土) 15:37:21.16ID:94qnMEwd
◇――――◇

大会前 夏休み終盤


千歌「はぁ、死にそ……」

千歌「毎日全身筋肉痛だ……」

千歌「善子ちゃん、大丈夫かな……」


千歌「そういえば、聖良さんて……どうなったのかな」カタカタ…

千歌「……あ、やっぱり、予選突破してる、んだ。スクールアイドルの方も、北海道トップ……」

千歌「……せっかく、連絡先持ってるんだし」

千歌「……えいっ」


プルルルルルッッ


聖良『はい、鹿角です』

千歌「あ、もしもしっ、鹿角聖良さんですか? えっと、Aqoursの高海千歌です」


聖良『あぁ、高海さん。まさか連絡が来るだなんて』


千歌「あはは、ですよね……」


千歌「あ……あの、卓球もスクールアイドルも……突破、おめでとうございます」

聖良『ああ、ありがとうございます。でも、あなた方の方が再生数は多かった……素晴らしいパフォーマンスでした』


千歌「い、いえ」


千歌「でも、卓球は、負けちゃって」


聖良『……津島さんが突破、したんですよね』


千歌「はい、だから応援には行くんですけど……」
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2017/06/24(土) 15:37:58.60ID:94qnMEwd
千歌「……聖良さんは、どうしてスクールアイドルをやってるんですか?」

聖良『……』

聖良『面白いことを聞きますね』


千歌「あはは……すみません」

聖良『そうですね……あの、良かったら大会の前日、会って話しませんか?』

千歌「え?」


聖良『大会の前日に、ラブライブ決勝トーナメントの詳細が秋葉原にて発表されます』


千歌「わかりました!」

千歌「私たちも前日入りしようと思ってたんで……」

聖良『ふふ、良かった。では、神田明神で、いかがですか?』

千歌「はい!」
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2017/06/24(土) 15:39:36.41ID:94qnMEwd
◇――――◇

UTX


聖良「まさか、こんなに早く津島さんと対戦することになるとは思いませんでした」

善子「……私も」

聖良「三回戦、楽しみです」

善子「……」

聖良「高海さん、あなたは私達にどうしてスクールアイドルをするのか、と聞きましたね」

千歌「はい……ずっと気になっていたんです。競技の卓球を、そこまで極めていながら、どうして……」

聖良「……そうですね」

聖良「あなた達は、勝利した人が見せる笑顔を……よく見たことがありますか?」

千歌「……」

聖良「私は中学生の後半からしばらく怪我をしていて、満足に練習も出来ませんでした。人生をかけて取り組んできたものが、急に奪われたようにも、感じました」

聖良「そんな時に出会ったのが、ここUTXのスクールアイドル、アライズでした」

聖良「彼女達は強かった、その輝きは……暗く沈みこんでいた私を照らしてくれました」

聖良「とっても、綺麗でした……見ているだけで希望が湧いてくるような」

聖良「次の日には……友達を誘っていました。結果として今は、妹とすることになりましたが」


聖良「これが、理由です」


千歌「そっ、か……アライズ……」
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2017/06/24(土) 15:40:36.61ID:94qnMEwd
聖良「あなた達は?」

千歌「私達は……」


理亞「そろそろラブライブが発表される時間なんだけど」

聖良「あ、ほんとだ」

聖良「すみません、その話はまた後日……」

千歌「あ、はい」

聖良「みなさんも、良かったら見に行きませんか!」


◇――――◇

ホテル


千歌「寝ないの?」

善子「ん、もう寝る」

千歌「そっか」

善子「……ラブライブも、始まるのね」

千歌「うん……でも、善子ちゃんは目の前のことに集中して?」

善子「ええ」


善子「ねえ……こんなこと、言いたくないけど」

千歌「うん?」


善子「――負けたら、ごめん」


千歌「……」

千歌「気にしなくていいんだよ? 善子ちゃんは精一杯やってくれればいいの」


千歌「だってもう、私達じゃ来れなかった場所に連れてきて貰ったんだもん」

善子「うん……」


千歌「もう寝よ? 明日、何回も試合しなきゃなんだから」


善子「ええ……」
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2017/06/24(土) 15:41:35.53ID:94qnMEwd
◇――――◇

ラブライブ、スポーツ大会、卓球会場


千歌「ふぁぁ……おっきい会場……」

梨子「すごい……」

善子「そんなに驚かなくても……」

ルビィ「こんな会場で試合するんだ……」

花丸「うぅ、緊張してきたずらぁ……」

果南「確かにこっちまで……」

善子「も、もうそんなこと言わないでよ」

曜「そうだよ、私達がこんなだったら善子ちゃんが緊張しちゃう」


千歌「あ、聖良さん達も練習してる」


善子「じゃあ……私もそろそろ練習行ってくる」
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2017/06/24(土) 15:42:50.25ID:94qnMEwd
 、
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2017/06/24(土) 15:45:35.20ID:94qnMEwd
◇――――◇

ダイヤ「お疲れ様でした」

善子「ええ……はーっ」

千歌「二回戦突破おめでとー!」

ルビィ「すごいよ!」

果南「十分通用してるね」


千歌ママ「――お疲れ様ー善子ちゃん」


善子「あ……」

千歌「お母さんやっと来たの」

千歌ママ「ごめんねー遅くなって、でも二回戦は見れたから」

善子「ど、どうでしたか?」

千歌ママ「うん、その調子だねー」

善子「……はい」

 

聖良「――こんにちは、高海さんお久しぶりです」


千歌ママ「あ、こんにちは聖良ちゃん、久しぶりだね」


千歌(ほんとに知り合いなんだあ……)

鞠莉「知り合い?」


聖良「ええ、何度か指導を受けたことも」


鞠莉「へえ………」
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2017/06/24(土) 15:46:10.74ID:94qnMEwd
聖良「私も、まさかあなたの母親だなんて思いませんでした。初対面の時からもしかして、とは思っていたけれど」

千歌「あはは……」


千歌ママ「"調子"はどう?」


聖良「……心配ありませんよ」

千歌ママ「そう、よかった」

聖良「では津島さん、よろしくお願いしますね」


善子「う、うん……」


聖良「では」

善子「はぁ……」

ルビィ「大丈夫?」


鞠莉「ナーバスはダメよ」


善子「わかってる……せっかくここまで来たんだから」


善子(私は、ヨハネ……ヨハネよ)


千歌「そうだよ! 頑張ってね!」


ダイヤ「善子さん、そろそろ……」
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2017/06/24(土) 15:47:45.01ID:94qnMEwd
◇――――◇


善子(考えろ……考えろ……どこに打てば……なにを打てば……)

聖良「……」


聖良(もっと、踊りましょう?)


 自分とそう体格の変わらない相手だと言うのに、言いようのないプレッシャーに包み込まれている。観客だとか場の空気とか、そういうのじゃない。ただ、純粋に、鹿角聖良の存在感。


 サーブは一撃目から台上ドライブやチキータで、素直にレシーブなんかしてくれない。少しでも押された瞬間怒涛の攻めでポイントを失う。まるで踊るようなフットワーク。


 かといって、こっちが攻めたところで……ブロックや引き合いを丁寧に繋げて……甘くなったところを持っていかれる。

 私が一番得意なはずの、回転も……強いインパクトで上書きされてぶち抜かれる。

 ついついループドライブで攻めてしまうけれど……それをことごとく、破られている。

 どうして、なんで?


 調子はいいはず、回転だって……今までにないくらいかかっているはず、それなのに、どうして……。


 得意な形がまるで決まらず、どうしていいかわからなくなってくる。そう、同じだ――昔と、同じ。


 なんとなくわかっていた、この鹿角聖良って人は相手の一番得意な球を打たせているんだ。あからまさじゃなくて、こっちがさも攻めているかのように錯覚する絶妙な長さコースに出して、それを正面から――叩き潰す。
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2017/06/24(土) 15:50:32.26ID:94qnMEwd
 なんとなくわかっていた、この鹿角聖良って人は相手の一番得意な球を打たせているんだ。あからまさじゃなくて、こっちがさも攻めているかのように錯覚する絶妙な長さコースに出して、それを正面から――叩き潰す。

 それを続けられた相手は、次第にメンタル面から崩れて……なすすべなく地に伏する。


 それが彼女の卓球だった。


 観客の声が、どこか遠くに聞こえた。

 中学生のあの日、私は私じゃなくなった。全てが否定されたような気がして、こんな私は私じゃないと。

 翼を、求めた。
 


 二セットを既にとられ、しかもマッチポイントを握られてしまっている。跡がないのはわかっている、わかっているからこそ……大胆に攻めていかなければ勝ち目などあるはずがない。
 

 息が浅い、サーブの球を持つ手が震える……。


 翼が欲しい。


 どこまででも飛んでいけるような翼が。


 私はヨハネ。堕天使、ヨハネ。


 この、翼で。
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2017/06/24(土) 15:53:00.75ID:94qnMEwd
善子「ふっ……」

 鹿角聖良は私と同じく左利き、結局大きく曲がりながら沈む下横回転で相手が強打できないようにするしかない。コースを限りなく間違えなければ、チキータやフリックなんかも流石に振ってこない。

 どうでる……。

善子「!!」


 無理やりチキータ!


善子(くっ……下回転が甘かった……)


 ぐにゃりとバナナみたいに曲がる軌道で、私のバックハンド側に切れ込んでくる。バックハンドで振っていたら、またすぐに主導権が握られてしまう。


 もつれそうになる足を動かして、態勢を少し崩しながらも、強烈な横回転にラバーに引き攣れが起こるのを感じながらも、フォアで振り切った。

聖良「っ……」


 ループとは弾道の変わる少し早い球、私の普通のドライブは回転が自慢だから少し勢いがあってもループ同様ぐっと手元で沈み込む。


 想定通り、攻撃に備えて下がっていた鹿角聖良。しかしバックに打ち込んだ球は沈み込むことで、打球点を少しだけずらして、鹿角聖良に擦り上げるだけの球を打たせることに成功した。
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2017/06/24(土) 15:54:15.56ID:94qnMEwd
 それでも一瞬の隙。食い込ませて勢いのある球が来なかっただけいいけれど、この擦り上げるループ気味のバックドライブでも十分な脅威。

 油断して打ち込んだら、途端にオーバーミスが起こってしまう。今回も、フォアハンド側にコントロールされたその打球は、サイドスピンが緩くかかっていて、台にバウンドしたら、外へ逃げていく球になっていた。


 私が回り込んでドライブをして、その返球としてはこの上ないコース。


 遠い、横を向きながら……地面を蹴りつける。


 飛べ、飛べ!!!


 私はヨハネ。


 堕天使、ヨハネ。


 空を飛べるはず。


 ――だって、私は、私は。


善子(相手は下がってる……このままスマッシュで押せば……押し切れるっ)


 ポイントでは、追いつくには遠い。それでも私は――。


善子「っふぅ!!」パコンッッッ!!!!


 飛びつきながら打ったミート系のボール、鹿角聖良がいる反対側、フォアサイドのギリギリのところに着弾して伸びていく。


善子(よし、一点……)
 
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2017/06/24(土) 15:55:55.82ID:94qnMEwd
 そう思った時、サイドテールが、揺れた。

 さっきの私と同様に、飛びつきながらフォアで打球した鹿角聖良。中陣での広大な守備範囲、打ち合いが本来のスタイルの鹿角聖良を……侮っていた。

 でも大丈夫、完全に態勢は崩れてる……今度こそっ。


善子「!!」


グニョンッッ…ギュルルルッッ


善子「なっ……」


 その打球は――右真横に跳ね上がった。


 反応した瞬間には、私のラケットの捉えることのできる範囲をするりと逃げるように、台のサイドから飛び出していった。


聖良「ふぅ……」

 

善子(――シュート、ドライブ……っ)

 

聖良「――ありがとうございました」

善子「ありがとう、ございました」


 3-0。


 望んでいたリベンジ戦は、またしても私の惨敗に終わった。


 私は空を、飛べない。
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2017/06/24(土) 15:58:19.32ID:94qnMEwd
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2017/06/24(土) 15:58:34.32ID:94qnMEwd
◇――――◇


千歌「最後のあれ……」


ダイヤ「あれはシュートドライブですわね……あんな体勢から撃ち抜くとは……」

梨子「?」

ダイヤ「鹿角聖良の代名詞の一つです。普通のドライブならば真っ直ぐか少し相手のフォアハンド側に逃げていく軌道になります」


ダイヤ「ただ、シュートドライブはその逆で利き腕が同じ同士で受けた場合、バックハンド側に逃げる軌道になります」


果南「……普通はなかなか打たないんだよ。球の内側を擦るから安定感は全然ないしかなり不自然なフォームになる」

果南「バックハンドに来た球を回り込んで打つならまだわかるけど、フォアに飛び込んで打つなんてね……わけわからない」


ダイヤ「全日本やジュニア大会の際は多様していたようなので、今回もそうかと思ったのですが……一球だけ、でしたね」


鞠莉「つまりどういうこと?」


鞠莉「……ああ、なるほど」
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2017/06/24(土) 15:59:33.54ID:94qnMEwd
梨子「――ほ、本気じゃないって……こと?」


千歌ママ「ご名答よ梨子ちゃん」


梨子「あ、そうなんですか……あれで、まだ……」


千歌ママ「鹿角聖良ちゃん……絶対的な武器は常人とはかけ離れた曲がりと勢いを高次元で両立している前中陣からのシュートドライブとカーブドライブ」


千歌ママ「この二つは回転を増やそうとすると、どうしても球速が落ちるんだけど……」


千歌ママ「あの子関節とかがぐにゃぐにゃでね、肘なんかすごいのよ。だから私達から不自然な体勢に見えても力がちゃんと伝わる。まあ……だけど多用したせいで肘の怪我があってね……」


果南「……だからあんまり使わないんですね」


千歌ママ「そ、怪我明けってのもあるし。まあその二つのドライブを使わなくても勿論強いんだけど」


千歌「……」

千歌ママ「ちゃんと見た?」

千歌「見た……」


千歌ママ「自分の最大の武器が封印されても関係ない、そういう基礎が向こうにはある。小さい頃から全て卓球に捧げて来た結果があれ」


千歌ママ「その努力に立ち向かおうっていうの……それをもう一度考えてみて」


千歌「……うん」
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2017/06/24(土) 16:00:32.15ID:94qnMEwd
◇――――◇

善子「っ……あのっ」

聖良「?」

善子「……」

善子「――なんであなたは、そんなに強いの」

聖良「どうしたんですか、いきなり」

聖良「……でも、そうですね」


聖良「――練習しましたから。それだけです」


善子「……っ」

聖良「他になにか、あるとでも?」

善子「い、いや」

善子「……」

 

聖良「――才能、とでも。言って欲しかったですか?」


 
善子「っっ」
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2017/06/24(土) 16:01:25.50ID:94qnMEwd
聖良「生憎ながら、あなたはそれを――持ってると思いますよ。私の目からみたら」

善子「……」

聖良「全部をかけてみてようやく見えてくるものが才能だと、思っています」

聖良「あなたは一時期全てを賭けた経験があるから、それが顔を出している」

聖良「……あなたももう一度全て、かけてみたら、どうですか」

善子「っ」

聖良「……」


聖良「――死んでしまうくらい欲しくて欲しくて何を賭けてでも欲しくて、今も血を吐くような思いの人が世の中にはいるでしょう」

 
聖良「それを持ち合わせているあなたが、どれだけ、幸せか」


聖良「どれだけ手を伸ばそうと空を飛ぼうとしようと、届かない人に、失礼ですから」


善子「わたしはっ……」

 

聖良「――また会いましょう」スタスタ
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2017/06/24(土) 16:03:38.82ID:94qnMEwd
◇――――◇

体育館 ロビー


千歌「はぁ……」


千歌「努力か……そりゃそうだよね……」

千歌「今千歌達がやってるようなことを……十年以上も……やってきたんだもんね……」


理亞「……」ズズズ…


千歌「ん……理亞ちゃん?」

理亞「……年下だからっていきなりちゃん付け?」


千歌「ご、ごめんなさい」

千歌「メロンミルク……美味しいの?」


理亞「……別に」ズズズ…


千歌「そ、そっか……」


千歌(うぅ、お姉さんと違って愛想悪いなぁ……)


理亞「――津島善子さん、負けたみたいね」
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2017/06/24(土) 16:04:39.35ID:94qnMEwd
千歌「うん……」

理亞「まあ……だと思ったけど」

千歌「……。強いねあなたのお姉さん」

理亞「そうね」

理亞「ずっとずっと馬鹿みたいに卓球、してたからね」

千歌「そうなんだ……」

理亞「あなた冬も大会に出るの?」

千歌「うん、冬こそ絶対――」

理亞「やめたほうが、いいと思う」

千歌「え……」

理亞「あなた達にはスクールアイドルの才能は無くはない、でも卓球の才能は多分、ない」

理亞「……姉様に勝とうとしたって、無駄だと思う。時間の無駄」

千歌「そ、そんな!!」

千歌「……ひどい」

理亞「……」

理亞「私だってあなたのことを思って言ってるの。じゃあ考えて見てよ、あなた達のエースの津島善子さんはどうだった? きっと地元じゃ天才扱いのはずよ」


理亞「でも、それがどう? 本物の才能とぶつかったら、何も出来ない」
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2017/06/24(土) 16:05:54.29ID:94qnMEwd
千歌「……」


理亞「津島善子さん、才能はかなりある方だと思う。あなたは、その人がどうやっても勝てない相手に勝とうとしてる……無駄な時間を過ごそうとしてる」


千歌「無駄なんかじゃない!」

理亞「……」

千歌「無駄なんかじゃ、ないもん……」


理亞「――才能が全てよ、それ以外なんて、ないんだから」

千歌「……」


理亞「才能もなくて死ぬほど努力して努力して努力して努力してっ……それでも中途半端だなんて――泣きたくなるでしょ? 泣いたって、どうにもならないのよ? そこにあるのは、才能が無いって、現実だけ。簡単ね」


千歌「そんなこと」


理亞「……」

 
 

理亞「誰しもが空に羽ばたけるだなんて思わないことね。一生――地を這い蹲る蛇だっている」
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2017/06/24(土) 16:09:04.20ID:94qnMEwd
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2017/06/24(土) 16:09:54.74ID:94qnMEwd
千歌「なんでそんな言い方っ――」


理亞「だから、スポーツは成り立つ」

千歌「っっ」


理亞「空にいる存在は見やすいから、目立っているだけ。その実、下に目を向けたら、おびただしい数の蛇が見えただなんて、ありがちな話ね」


千歌「……」



理亞「それなら――最初からしないほうがマシ」


千歌「そ、そんな言い方っ!!!」


理亞「とにかく……姉様に勝つのは私、誰にも邪魔させないんだから」


千歌「え……」


スタスタ…


千歌「どういう……」
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2017/06/24(土) 16:12:08.27ID:94qnMEwd
◇――――◇


聖良「高海さん」


千歌ママ「ん、聖良ちゃん」

千歌ママ「準決勝進出おめでとー」

聖良「ありがとうございます」

千歌ママ「決勝は姉妹対決かな」


聖良「そうなるように頑張るつもりです」


聖良「あなたに聞きたいことがあります。あなたの昔の映像を見ていて、感じたんです」


千歌ママ「今より若かったでしょー」


聖良「ええ、当時最年少優勝でしたからね」


聖良「どうしてあれだけのものを持ちながら第一線から退いたのですか」


千歌ママ「んー……」


千歌ママ「苦しくなっちゃったから、それだけだよ」
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2017/06/24(土) 16:13:03.94ID:94qnMEwd
聖良「……?」

聖良「苦しくなった、それだけですか」

千歌ママ「そ」

聖良「……それが本心なら、酷いですね」

千歌ママ「そんなこと言わないでよ」


聖良「あなたの卓球は、色んなものを背負っていたはずです。あのままいけば国だって背負ったでしょう。あなた一人の問題じゃなかったはず、それなのにっ!!」


千歌ママ「……」


千歌ママ「聖良ちゃんは、とっても優しい子だね」

聖良「……」


千歌ママ「私には無理だったの。あなたは優しいから、そうはならないで欲しいな」


千歌ママ「でも……そういう強さだって、ある」


千歌ママ「変わらず応援してるからね、頑張って」
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2017/06/24(土) 16:16:23.88ID:94qnMEwd
◇――――◇

ダイヤ「思い残したことはありませんか?」

千歌「欲を言えば準決勝以降も見たかった……」

千歌「準決勝以降は次の日なんて……すごいなぁ」

果南「ネットでは配信するみたいだし、それで見てるしかないね」

鞠莉「散々見てたでしょ、鹿角聖良ちゃんのこと」

千歌「まあね……でも、やっぱり決勝とかは全然違うし……それに、姉妹対決になりそうだし」

千歌「まあでも見てるだけじゃどうにもならないし……」

千歌「練習しなきゃ!!」

千歌「……練習したのがさ、無駄じゃないんだって……証明したい」

果南「……よかった」

千歌「?」

果南「強い人達をたくさん見て、やる気失わなくて」

千歌「あはは……多分ちょっと前までならそうだったかも……」


千歌「でも、そうも言ってられないし」

千歌「善子ちゃんが連れてきてくれたけど、今度は自分の力で来れるようにしたいな」

果南「そっか」

善子「……ごめんなさい、ほんと」

果南「謝らない謝らない」

曜「そうだよ、この大会でも十分通用するってことがわかったわけだし!」

善子「……そ、そうよね」

ダイヤ「では、胸を張って帰りましょう」
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2017/06/24(土) 16:17:20.09ID:94qnMEwd
◇――――◇

後日


果南「3-1やっぱり、お姉さんの勝ちかー」

鞠莉「そうねえ……いいところまで行ったかなと思ったけど」

鞠莉「姉妹対決ってどんな感じなのかしらね?」

果南「うーん……どんな感じ?」

千歌「え、うーん……負けたくない!」

果南「そりゃそうか……どう?」

ルビィ「お、お姉ちゃんに勝てるわけ……」

ダイヤ「そんなことを言ってるから上手くならないのですわ」

ルビィ「ぅ……」

果南「まあでもそう思う人がいるのもほんとだよね」

花丸「理亞ちゃんは?」


千歌「試合中……すごい顔してるもん……こんな鬼気迫った感じで……試合するかな、普通」


鞠莉「真剣な時の曜みたい!」

曜「え、わたしこんな怖い顔?」


鞠莉「似たようなものよ♡」

ダイヤ「まあ集中すると致し方ありませんが……パフォーマンスとしては確かに」


千歌(理亞ちゃん、ほんとに真剣なんだ……当たり前だけど、一体どういう……)
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2017/06/24(土) 16:18:08.47ID:94qnMEwd
◇――――◇


千歌ママ「わかったでしょ? 今の回転だけじゃ勝てないってことが」

善子「……」コクッ

千歌ママ「でもあなたの武器は回転、それを変える必要はない」

善子「……」

千歌ママ「あなたのラバーは粘着ラバー。粘着ラバーっていうのはあなたも知る通り、回転に特化したラバーね」

千歌ママ「粘着ラバーは粘着ラバーにしか出せない独特な変化がある、日本では主流とは言えないから格上の選手に対抗するにはベストな選択ともいえる」

千歌ママ「はっきり言うと――あなたは粘着ラバーの性能を全然引き出せてない」

善子「え……」

千歌ママ「だから、それを引き出せるなら……あなたはまだまだ伸びることが出来る」


千歌ママ「粘着ラバーは他のラバーと違って不規則な変化になりやすい。それを利用すれば、相手は試合終盤でもあなたの回転を読むことは限りなく難しくなる。トップスピンの回転力は今と変わらなくても、決定力は今の何倍にも膨れ上がる」


善子「……」

千歌ママ「どう? ちょっと楽しみにならない? 一泡吹かせる可能性がもっと増えるかもしれない」


善子「……勝てますか、私」
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2017/06/24(土) 16:18:47.97ID:94qnMEwd
善子「あの人、本気じゃなかった。昔はシュートドライブもカーブドライブも結構使ってきた。魔法みたいだって、思った。でも今回は一球だけ……私が弱くなって、相手が強くなった」


千歌ママ「でも、今大会で使ったのは――その一本だけ」

善子「え……」


千歌ママ「あなたは今大会中唯一鹿角聖良に本気を出させたってことだよ」

善子「……」ゴクッ…


千歌ママ「みんなも、粘着ラバーは使いこなされるとほんとに厄介だからちゃんと善子ちゃんで対策してね、まあなかなかいないけどね、特に女の子だと」

千歌ママ「――それに、多分冬は聖良ちゃんに対して、みんなチャンスはある」


善子「?」



千歌ママ「じゃあ今日からみんなのこと本格的に見ていくから、よろしくね」
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2017/06/24(土) 16:21:04.55ID:94qnMEwd
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2017/06/24(土) 16:21:21.78ID:94qnMEwd
◇――――◇

バス


善子「……ねえ」

曜「ん?」

善子「そのゲーム面白いの」

曜「うーん、微妙かな」ポチポチ…

善子「ふぅん」

善子「……」

善子「ねえ」

曜「うん?」

善子「才能ってなんだと思う」

曜「……どうしたのいきなり。哲学?」

善子「違うわよ」

曜「才能ねえ……」


曜「少なくとも私は――そんなの無ければいいのにって、思うけど」
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2017/06/24(土) 16:22:08.55ID:94qnMEwd
善子「何言ってるの?」

曜「みんな平等の才能なら、人は頑張った分だけ成長できるでしょ」

曜「こんなスポーツがしたいなって思っても運動神経無いしなとか、そんな理由で躊躇するの嫌でしょ。それに、何か成し遂げた人は――必ずすごい努力をしたんだなって、有無を言わずに、みんなが納得する。仮にそれで私が損するとしても、そっちの方がいいよ」


善子「……」


善子「あなたが言うと、嫌味臭いわ」


曜「ひど……」


曜「でも、多分そうなんだろうね」


曜「だから人前じゃ言わないし、才能あるやつだから言えるんだなんて、言われそうだし」

曜「私、才能無いと思うけど」


善子「……堂々巡りになるからやめて」


曜「じゃあ質問、なんでこんなこと聞いたの」

善子「別に」


曜「聖良さんに負けたから」

曜「違う?」


善子「……」
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2017/06/24(土) 16:23:11.98ID:94qnMEwd
◇――――◇


曜「そんなこと言われたんだ」


善子「……才能無いって言われた方がよっぽど楽だったわよ」


曜「逃げるなってことだね、才能に」

善子「は……」


曜「やっぱり私は才能なんて嫌いだよ」


曜「同じなだけ努力して差がつくなんておかしいし、それ以上努力してる人がちょっとやっただけの人に負けるなんて、もっとおかしい」

 

善子「でも、だから面白いんでしょ」

 

曜「……だからさ。悲しいよ、色々さ」
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2017/06/24(土) 16:24:08.11ID:94qnMEwd
また夜。
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2017/06/24(土) 16:46:24.40ID:1KD8/m7Q
聖良姉様かっこいい
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2017/06/24(土) 17:00:35.53ID:94qnMEwd
https://twitter.com/takkyuugeinin/status/869484356141633536


今後今以上に色んなショットが出てきます。卓球はスポーツの中でもとにかく色んなショットがあって、文字だけではしんどいので、参考動画を置いておきます。

Twitterの卓球芸人さんの動画で、二分くらいでほぼ全ショットがどんな感じか掴めるのでよくわからない方には是非おすすめしたいです。
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2017/06/24(土) 17:56:48.04ID:tCL89cwG
聖闘士姉も応援したくなるな
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2017/06/24(土) 21:03:46.79ID:ShvuiVMj
すっごい
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2017/06/25(日) 01:22:35.29ID:nZBBiPFZ
◇――――◇


千歌「はぁっ……はぁっ……」

千歌ママ「まだまだ」

千歌「ん、ぐ……」

千歌ママ「……ここであなたのビジョンを話しておく」

千歌ママ「そうね……梨子ちゃんみたいな、練習の時でも球がばらけるひとはいい練習相手になるの」

千歌「?」

千歌ママ「ばらける球を全部おんなじところに返すことだけ考えて。回転もコースもバラバラだろうから、容易なことじゃない。ちゃんと足を動かして」

千歌ママ「千歌には果南ちゃんみたいなぶち抜く力も曜ちゃんみたいな反射神経も善子ちゃんみたいな回転力もない」

千歌「ぅ……」

千歌ママ「それらを求めてもいい。でもあなたは球の回転を操ること、微妙な変化とコースの変化……それで揺さぶるようなプレースタイルになって欲しいの」

千歌ママ「結局球の威力をあげるのは、コントロールだから、それさえ強くなれば、打つ球全てが必殺の一撃になり得る。一球たりともおんなじような球を出さないように」

千歌「か、仮にそれが出来るようになって……勝てる確率は、どれくらい、だと思う?」

千歌ママ「そうね……」

千歌ママ「――限りなくゼロね」


千歌「……っ」

千歌ママ「相手は人生を卓球に捧げてきた人、その努力を短期間で越えようなんて傲慢もいいところだけど……私はゼロではないって信じてる」

千歌「ゼロじゃ、ない……」

千歌「それなら、やるよ……少しでも可能性があるなら!!!」

千歌ママ「よし、よく言ったね」
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2017/06/25(日) 01:23:24.98ID:nZBBiPFZ
>>368

最初の果南のセリフの3-1のところ、4-1の間違いです。
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2017/06/25(日) 01:24:10.36ID:nZBBiPFZ
◇――――◇


千歌「あ、もしもし!!」

聖良『高海さんですか、こんばんは』

千歌「こ、こんばんは! あの、優勝おめでとうございます!」

千歌「現地では見れなかったんですけど、ネットで見てました!」

聖良『それは……ありがとうございます』

千歌「ほんとに……あの、すごかったです」

聖良『いえそんなこと。次はラブライブの決勝トーナメントですね、お互い良い成績になれるよう、頑張りましょうね』

千歌「は、はいっ!」


千歌「あの……信じられないという思うし、バカみたいって思うと思うんですけど……冬の大会は絶対! 私も全国に行きますから!!!」

聖良『……』

聖良『真っ直ぐすぎる言葉は、嫌いじゃありません』

聖良『……わかりました』

聖良『その言葉、ちゃんと覚えておきます』

千歌「うん……」

千歌「じゃあ、また……」

聖良『ええ、また』

プツッ

千歌「はー……」

千歌「やらなきゃなぁ……」

千歌「いよっし! 寝る前にサーブ練習しよ!!」
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2017/06/25(日) 01:24:56.16ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

美渡「はぁ……まだやってんの?」

千歌「ん……いいでしょ別に」

美渡「まあいいけどさ」

美渡「あんた、ほんとに勝てると思ってるの?」

美渡「あんたが勝とうとしてる人の……映像見たけどさ」

千歌「思ってるよ、思ってなきゃこんなことやってない」

千歌「そりゃ……確率で考えたらかなり低いだろうけどさ……」

千歌「静岡大会でね……善子ちゃんが優勝したんだ」

千歌「すごかった、強いのは勿論だけどさ……あんなに人を惹きつける笑顔になるんだって。あれはね……何か成し遂げた時じゃないと、ああはならない」

千歌「キラキラしてて……すごいなって……」

美渡「……あんたもそれが欲しいってわけ」

千歌「うん……そうすれば、誰かが、私たちのこと、覚えててくれるかなって」

美渡「ふぅん……」

千歌「だからやめない! 私だって、やってみせる!」

美渡「……サーブ出しなよ、受けてあげる」


千歌「……うんっ」

 

志満「……うんうん」
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2017/06/25(日) 01:26:09.24ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

冬 ランキング戦


ダイヤ「では……個人戦に出場するのは、善子さん曜さん果南さん、千歌さんです」

ダイヤ「団体戦はシングルス1は鞠莉さん、シングルス2はルビィ、ダブルスはわたくしと鞠莉さん、シングルス4は花丸さん、シングルス5は梨子さん」

ダイヤ「基本的にはこのオーダーでいきますわ」

ダイヤ「本番まであと二週間……心を引き締めて参りましょう」


◇――――◇


千歌「ふぅ……良かった」

果南「個人戦に出れて?」

千歌「うん、聖良さん達に宣言しちゃってたし」

果南「そっかそっか」

果南「面目保てたね」

千歌「ほんとね」

千歌「でもさあ……思うんだ」

果南「?」

千歌「千歌達すっごい練習してきたでしょ? 毎日毎日夜遅くまで……」

千歌「他の高校に練習試合に行ったりしたよね、でもさ……」


千歌「――千歌、本当に強くなってるのかなあって……」


果南「……なるほどね」

千歌「だって結局果南ちゃん善子ちゃん曜ちゃんには勝ててないし、これで本当に大丈夫なのかなって……怖くなるんだ」
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2017/06/25(日) 01:28:52.05ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

冬 ランキング戦


ダイヤ「では……個人戦に出場するのは、善子さん曜さん果南さん、千歌さんです」

ダイヤ「団体戦はシングルス1は鞠莉さん、シングルス2はわたくし、ダブルスはわたくしとルビィ、シングルス4は花丸さん、シングルス5は梨子さん」

ダイヤ「基本的にはこのオーダーでいきますわ」

ダイヤ「本番まであと二週間……心を引き締めて参りましょう」


◇――――◇


千歌「ふぅ……良かった」

果南「個人戦に出れて?」

千歌「うん、聖良さん達に宣言しちゃってたし」

果南「そっかそっか」

果南「面目保てたね」

千歌「ほんとね」

千歌「でもさあ……思うんだ」

果南「?」

千歌「千歌達すっごい練習してきたでしょ? 毎日毎日夜遅くまで……」

千歌「他の高校に練習試合に行ったりしたよね、でもさ……」


千歌「――千歌、本当に強くなってるのかなあって……」


果南「……なるほどね」

千歌「だって結局果南ちゃん善子ちゃん曜ちゃんには勝ててないし、これで本当に大丈夫なのかなって……怖くなるんだ」
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2017/06/25(日) 01:29:36.04ID:nZBBiPFZ
果南「……」

千歌「鹿角理亞ちゃんに、前言われたの」


千歌「――才能ない人がやっても無駄だって」


千歌「でもだからって……何もしないなんて悲しいじゃん……」

千歌「鹿角聖良さんを見て昔好きだった卓球を再開して、努力して……この時間は無駄じゃなかったんだってこと……証明したい。証明したいからこそ……負けたら、どうしようって……」

千歌「だって、今回は最後なんだもん……新入生は入ってこないし……これが、私が想い描く理想を実現できる、最後のチャンスなの」


千歌「九人みんなで、叶えたいの」


果南「……大丈夫、千歌は強くなってる。千歌だけじゃない、みんな強くなってる」

果南「だから自分を信じて、練習してきたことを信じて……なんでも出来るくらい思った方がいいかもよ」

千歌「……」

果南「卓球はメンタルが重要だからね……。そうだ、美渡姉さん達と本気で試合したことはあるの?」

千歌「……しばらくは、ないかも」


果南「前までは全然勝ててなかったんだよね、ならこれを機会に自分の実力をはかるいいチャンス、なんじゃない?」


千歌「そっか、お姉ちゃん達に勝てたら……」

果南「無駄じゃなかったって、言える」

千歌「よし、やるよ!!」
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2017/06/25(日) 01:30:16.44ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

体育館


千歌「はっ……はっ、勝った……」


志満「……強くなったね、千歌ちゃん」

美渡「いっちょまえになっちゃってさ」

ダイヤ(全盛期から落ちるとはとはいえ……東海地方二位の志満さんのカットに正面から打ち勝った……)

果南「わかったでしょ、千歌」

千歌「うん……」

千歌ママ「何回も吐いてた甲斐があったってものだね」

千歌ママ「今日の練習はここまで。軽くゲーム形式でやっただけだけど……明日はついに予選の日だよ、よく眠ってね」

千歌ママ「多分私がコーチとしてみんなのことを見られるのはこの大会が終わるまで。最初はどうしようかと思ったけれど……ほとんどオーバーワークに近い練習に、みんな、本当によく耐えて、頑張ってくれたね」

果南「あの、本当にありがとうございました!!」


ダイヤ「志満さん達も、お仕事があるのに、毎日毎日……本当に、本当に感謝しています」


志満「あなた達を見ていると、なんだか昔に戻ったみたいに思えて、楽しかったわ。青春を取り戻したみたいな、そんな感覚ね」


美渡「せっかくここまでしてあげたんだから、感謝してるってことは……結果で見せてよね、あんた達」


鞠莉「おっけー!!」


千歌ママ「あなた達を信じてるから……思いっきり、楽しんで、勝って、この学校のことを思い知らせてやりなさい!」


「――はい!!!」
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2017/06/25(日) 01:30:57.60ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

スクールアイドルスポーツ大会。静岡県卓球予選会場――団体戦――。



ダイヤ「本日は団体戦ですわ!!」

ダイヤ「つまり、わたくしと、鞠莉さん、ルビィ、花丸さん、梨子さんの五人です」

ルビィ「ぅゆ……」

ダイヤ「わたくしたち浦の星の戦力は全て個人戦に集中しているのは事実」

ダイヤ「しかしだからといって! 負けて良いことなどあるはずがありませんわ!」

ダイヤ「今日勝って、全国へ行きます! 絶対に!!」

鞠莉「おー!!!」

梨子「うぅ……」ドキドキ…

千歌「大丈夫! みんななら絶対やれるよ!!! 一番の応援するから!!」

曜「そうだよ、自信持って」

善子「……リリー、もう緊張してるの?」

梨子「ぅ」

善子「あなたも」

ルビィ「ぅゆ……」

善子「あなたは……平気そうね」


花丸「?」モグモグ


花丸「このバナナ高いやつずら。栄養もきっと高いよ」

善子「そ、そう」

善子(ずぶとい……)

ダイヤ「高校ごとに練習台が割り当てられていますわ、練習にいきましょう」
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2017/06/25(日) 01:32:35.85ID:nZBBiPFZ
 、
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2017/06/25(日) 01:33:13.57ID:nZBBiPFZ
◇――――◇


一回戦


シングルス1 小原鞠莉

シングルス2 黒澤ダイヤ

試合開始

鞠莉「じゃあ、やっちゃいますかー」


ダイヤ「ふぅ……」

鞠莉「私が勝つ前に負けたら許さないよ?」

ダイヤ「こっちのセリフです」


梨子「シングルス1と2は同時に開始……ここ二つとれば一気に……」

梨子「がんばって……ふたりとも」


千歌「――がんばれー!!!」

ダイヤ「よく響く声、ですわね」


千歌ママ「鞠莉ちゃんの相手は問題ないと思うけれどダイヤちゃんの相手は前回大会、個人戦ベスト8……私たちが勝つには、シングルスを二つ取るのが最低条件ともいえる……」

梨子「だ、大丈夫かな……」


ダイヤ「ふぅ……」

ダイヤ(落ち着くのですわ……いくら相手が前回の成績が良いとはいえ……わたくしだってたくさんの練習を積んできた……)


ダイヤ(相手が個人戦に出場しなかったのはおそらく……勝ち上がる力がないと、自分を知ったから。だから、仲間とともに闘う団体戦を選んだ……そんなところ、でしょうか。あくまで推察でしかありませんが)


鞠莉「いえーすっ!!」
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2017/06/25(日) 01:34:06.38ID:nZBBiPFZ
ダイヤ(さっそく鞠莉さんはサーブで二本先制……流石ですわね)

ダイヤ(わたくしはサーブに関しては不器用……とにかく相手に緩く打たせてカットに繋いで、様子見するようなバックサーブで……)

キュパツッッ

キュインツッッ

ダイヤ(ループドライブっ……カットマンに対しては時間も作れて次への攻撃チャンスを作り出すことが出来る有効打。どうしても浮いたカットに、なりやすい)

ダイヤ(でもっ)

バツンッッッ…スゥゥ-

千歌ママ「……」

パァァンッッ!!!!


千歌「わ、相手が打ち上げた……ホームラン」

梨子「ナイスボール!!」

梨子「今の……すべるみたいな軌道で……ナックルカット、ですか?」

千歌ママ「うん。バック面を粒高ラバーに張り替えたから、擦る量をおんなじフォームで減らせば不規則な変化をしながら無回転で相手に飛んでいく。制御は難しいけれど……一発目からナックルカットだなんて、いい根性してるよ」

千歌ママ「あれだけ打ち上げたんだから……次はいよいよ本領発揮」

バツンッッッ…ストンッ

「くっ……」

曜「ナイスカットー!!!」

曜「今のはブチ切れの下回転カット……ダイヤさんの一番得意なやつ!!」

果南「フォームが変わらないから十分引きつけて軌道で判断するしかない……ほんと、防御に関してはやっかいすぎだね」

果南「これは……大丈夫だね」
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2017/06/25(日) 01:34:49.14ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

(なんだ、なん、なのこの子っ……)

(浦の星なんて、廃校するっていう極小の高校のはずっ!!)

(その中でも去年優勝した津島善子さん以外そこまで警戒する選手はいなかったはずっ!!)

(団体戦なら、勝てると思った! それだけの力は、あるはずなのに、それなのにっ!!)

(何度も何度も、おんなじように、返してきてっ!!)パコンッ!!!!


(次は下回転っ!? ナックル!? コースは? 速さは!?)

ダイヤ「ふっ」バツンッッ


(まだ終われないっ、みんなの為にも、私の為にも!!)

シュルルルルッ


(下回て――)

スルルッ…

「え」ブンッッ


(――サイドスピン……カット)
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2017/06/25(日) 01:35:30.20ID:nZBBiPFZ
千歌「やったー!!!」

(こんなの、隠してたんだ……)

ダイヤ「ありがとうございました」

「ありがとうございました……」

「あの」

ダイヤ「?」

「いえ……」

(才能……? いえ、一体、なんなんだろう)

鞠莉「お疲れダイヤ、遅いよ」

ダイヤ「仕方ないでしょう。あなたと違ってサーブで点は取れません」
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2017/06/25(日) 01:38:48.18ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

ダイヤ「ナイスゲームでしたわよ、ルビィ」

ルビィ「う、うん!」

千歌「さいっこうだったよみんな!!!」

果南「シングルス1、2ダブルス勝って、ストレート……立ち上がりとしては間違いなく最高だね」

善子「花丸とリリーも、いつ出番が来るかわからないんだから、ちゃんと、覚悟してね」

梨子「う、うん」

花丸「もぐもぐ」

善子「たべるな!」

千歌ママ「ストレートで勝っちゃった場合……シングルス3と4の出番がなくなっちゃう……。だからこのまま勝ち進んだ場合梨子ちゃん達にプレッシャーがかかっちゃう」

千歌ママ「理想を言うならば……全国進出出来る準決勝までは、ストレートで勝つのが絶対条件て言ってもいい」

果南「そこまで言ったなら、最悪わざと負けてでも梨子ちゃんに大会経験を積ませないと……全国を見据えたら、ね」

梨子「ご、く……」


千歌「そんな! 優勝が全てだよ!!」


千歌ママ「わかってる。初心者の梨子ちゃんには酷だけど……そんな状況でも勝ってもらうのが一番だね」


梨子「……」

千歌ママ「あとごめん、一つ言うことが出来たの」

ダイヤ「?」

千歌ママ「準決勝へ進出するためには、この高校を倒さなくちゃならない」

鞠莉「……何かすごいの?」

千歌ママ「……さっき試合してるところ見たんだけど」

千歌ママ「前回大会、善子ちゃんと決勝で戦った子、加えてベスト4に残った子……つまり全国大会に進出したその二人が、個人戦には出場せず、団体戦に出てきてる
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2017/06/25(日) 01:40:08.65ID:nZBBiPFZ
梨子「……え」


ダイヤ「そ、そんな!」


鞠莉「その二人以外は大したことないってことでしょ? でも、そのふたりだけで勝ちを狙いにくるってことですよね?」


千歌ママ「ええ、おそらくシングルス12、ダブルス……この三つをその二人で固めて……そこで決めようとしてくるはずだよ」


果南「てことは……全国区の選手をどこか一つ破らないと……負ける」


千歌ママ「この二人は全国でもいいところまで行ってる、競技卓球の方でも、一人は東海大会にまで出てるしね」


千歌「……」


鞠莉「ノープロブレムよ!! ……勝つからさ」

ダイヤ「鞠莉さん……」


ダイヤ「そうですわね、全国区の選手をわたくし達がストレートで下せば……。張り合いがあるというものです」
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2017/06/25(日) 01:41:18.19ID:nZBBiPFZ
鞠莉「言うね」

ダイヤ「誰かさんに似たのかしら」


千歌ママ「そのどこか一つを下せば……あとはそこまで強い選手はいない。花丸ちゃんと梨子ちゃんがシングルスで勝つチャンスは十分ある」


千歌ママ「――出番がくるって、覚悟しておいて」

梨子「ご、く……」

梨子(わたしが、こんな大勢の中で……?)


善子「……というか、さっきから思ってるんだけど団体戦と個人戦は一緒に出れないじゃない? それなのに個人戦の有望株が団体戦に流れてるってことは」


千歌「千歌達が……勝ちあがれるチャンスが増えてる!?」

ダイヤ「なるほど……」


果南「まあ、明日のことは明日考えるしかないよ。今はダイヤ達の応援に集中」


千歌「うんっ!!」

善子「さ、二回戦が始まるみたいよ」
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2017/06/25(日) 01:42:42.08ID:nZBBiPFZ
◇――――◇


鞠莉「んー……燃えてきた」

ダイヤ「試合に勝てば……全国に」

鞠莉「恐らく私たちのうちどっちかが負けちゃったら……」

ダイヤ「……」

ダイヤ「相手は二人だけ、どっちかでも取れれば……なんとかなるはずですわ。梨子さんだって花丸さんだって、練習してきたんですから」


鞠莉「そうね……信じなくちゃいけないわよね」


ダイヤ「いつもと同じように、とりあえず二つ、とりましょう」


鞠莉「もちろん」


鞠莉「んっと……じゃ、行きましょ」
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2017/06/25(日) 01:43:33.38ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

鞠莉「ふぅ……」コツコツコツ…

梨子(うぅ、審判の私も緊張してきた…………頑張って鞠莉さん)

鞠莉(さあてどうしようかしら……置きにいくのもいいけど、でも……)スッ…

鞠莉(やっぱり攻めなきゃよね♡)キュッパッッ

コツッギュイッッ

梨子(YGサーブ……普通のサーブとは逆の振りで擦るから……利き手の反対方向に曲がって……利き腕が同じならフォアハンド側に鋭く曲がるサーブ)

梨子(鞠莉さんの、横から見ててもなんの回転か全然わからない……1球目だし、横下、かな?)

ポ-ンッッ

鞠莉「イエス!!」

梨子(横上、か……今の軌道、下回転ぽかったけど……)

鞠莉(ナイスサーブ……じゃ……次は横を減らして、もっと上を強くして……)キュパツッッ

「っ!」ポ-ンッッ

「くっ……」

鞠莉「ナイスサーブ♡」

千歌「ナイスサーブだー!!」

曜「いい感じ!」


果南「私たちは毎回鞠莉と練習してるから大分サーブにも慣れたけど……初見であれは取れないと思うなあ……」
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2017/06/25(日) 01:44:37.97ID:nZBBiPFZ
善子「今の全然勢いなかったけど上?」

果南「あのぶっ飛び方はそうでしょ」

曜「上回転てばれないように勢いを変えてばれにくいようにしてるんだね。これなら回転量を強めなくても相手は下回転のレシーブしようとするから……」

千歌ママ「ほんと鞠莉ちゃんて、いいサーブだすよねえ……」

千歌ママ「YGサーブはもともとかなり難易度の高いサーブだからマスターすれば強烈だけど……鞠莉ちゃんの場合、インパクトの瞬間がほとんど見えないフォームだからインパクト後の微妙なラケットの動きを見るしかない……」

千歌ママ「サーブはフォーム×回転×軌道×高さ×コースの掛け算だけど……あんな完成度の高いサーブ打つ高校生、なかなかいないよ。サーブに関しては教えることなかったもん。サーブだけならインターハイでても、そのまま使える」


善子「相手の人、本格的なドライブ系だけど……」

鞠莉「しゃっ!!」

梨子(6-1……完全に鞠莉さんペース……)


梨子(相手の人、さっきの試合だとガンガン攻める本格的な感じだったのに……今はドライブを試みたのも一回だけ……)


梨子(すごい台上技術……相手にほとんど攻めさせてない)


鞠莉(打ち合いになったら多分負ける……だったら打ち合いは捨てて……前でブロックで振り回す……そもそも打たせなければいい話)
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2017/06/25(日) 01:46:20.01ID:nZBBiPFZ
鞠莉(運がいいわね、相手は台上苦手みたいだし……)

善子「相手より攻める時間を作れれば、負けない。あの人の場合基本的に前陣の台上技術自体が攻めになるわけだけど……相手は台上が苦手みたいね」

善子「台上処理は他の技術に比べて自分のレベルがそのまま出るけど……あそこまで台上に特化するっていうのも、珍しいと思うけど」

千歌ママ「時間なかったからね、あの台上に大きな攻撃がつけば最高なんだけど」

鞠莉「っ……」フワン


 

千歌「――ハイトスサーブっ……!!」
 




千歌(高い……球を投げあげて、落下のエネルギーを利用した必殺サーブっ……!)


キュパッッギュルルルルルルッッッ


鞠莉「いえすっ♡♡」

果南「完璧……」

善子「あとは、中盤以降、サーブを取られだしてからね。そうなるとマリーは急に崩れるから」

善子「自信のあるサーブを取られるっていう不安がメンタルに影響するんでしょうけど」


善子「問題は……」
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2017/06/25(日) 01:48:59.00ID:nZBBiPFZ
 、
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2017/06/25(日) 01:49:32.23ID:nZBBiPFZ
ルビィ「お、おねえちゃ……」

ダイヤ「くっ……」

ダイヤ(4-11……)


ダイヤ(表ソフト……一番当たりたくなかった相手ですわ……。普段はセオリー通りバック表なのに……カット戦型の私相手だからか、少し浮いた返球をすると反転してフォア表で強打してくる……)


ダイヤ(しかも相手の表ソフトはスピード特化や球が揺れるようなナックルが出るというものより、回転もかけやすいタイプの回転系表ソフトラバー……)


ダイヤ(カットにサイドスピンを加えると、打点はずらせても下回転が弱くなるから、表ソフトでも容易に持ち上げられてしまう)


ダイヤ(このままじゃまずい……)


善子「相性最悪みたいね」


千歌ママ「表ソフトうちにいないからなあ……」


果南「軽く浮いた球に対してドライブじゃなくてスマッシュ系で攻撃してくるタイプ……」


果南「守ってるだけじゃ勝てそうもないけど……かといってダイヤ、攻めは……」

千歌「うぅ……がんばってー!!!」

ダイヤ(鞠莉さんはもう2セット取ってる……全国区の相手に)


ダイヤ(わたくしだって……)

ルビィ「お、おねえちゃ……」

ダイヤ「……大丈夫、勝ってみせます……」


ダイヤ「ふーっ……」

鞠莉「……」チラッ…

鞠莉(ダイヤ……)

ダイヤ「……」
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2017/06/25(日) 01:52:22.57ID:nZBBiPFZ
ダイヤ(スマッシュを打たせたらだめ、そのためには強い下回転、オーソドックスなカットを繰り返す必要がある)

ダイヤ(でもそれだけじゃ……っ)ガツンッ

フワンッ…

ダイヤ(今度は裏ソフトで、ループドライブっ……)ガツンッッ

パコンッッ!!!!!

ダイヤ「くっ……」

ダイヤ(裏ソフトの回転重視の遅い球のあとに表ソフトに反転してスマッシュ……こんなことまで)


善子「相手……カット打ち得意ね?」

果南「得意そうだね……」

千歌「なんかダイヤさんさっきに比べてかなりネットミス増えてる……どうして?」

果南「多分裏ソフトで攻撃の起点を作るためのループドライブあるでしょ? あれの回転量を調節してるんだよ」

善子「弱い回転のループ系の遅い球だと球が回転によって自然に上に持ち上がらなくて、ネットミスしやすいのよ」

善子「油断したら強い回転で浮き上がるしね」

千歌ママ「千歌のメイン戦術でしょ……」


千歌「……あ、あはは」

千歌ママ「……私は好きだよ、ああいうダイヤちゃんみたいな古風な守備型カットマン戦型」

千歌ママ「カットマンは攻めも取り入れる攻守型と完全守備型に分けられるけど、昔は完全守備型が主流だった。道具の進化に伴って男子では消え、女子でもほとんどいなくなっていった」

千歌ママ「やがて男子で攻守型のスターがオリンピックで銀メダルをとったのが決め手になって……教える方も完全守備型を進めることはなくなった」
0411名無しで叶える物語(おにぎり)@無断転載は禁止
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2017/06/25(日) 01:53:40.62ID:nZBBiPFZ
千歌ママ「私はカットマンをうまく教えられないっていうのもあるけど……ダイヤちゃんの性格を無視してでも、攻守型で教えるべきだったのかも、しれない」


千歌ママ「そう考えると……申し訳なくなる」

善子「……」

0-3

黒澤ダイヤ敗北

3-0
小原鞠莉勝利

果南「なんとか逃げ切ったね、鞠莉……」

善子「あの人、サーブ取られだすと急に崩れ始めるから……よかったわね」


ダイヤ「申し訳ありません……」

鞠莉「お疲れ様」

鞠莉「次のダブルス、がんばって!」

ダイヤ「……」

善子「ダブルスは厳しいわね……一人は東海大会、もう一人も県れへ」

曜「鞠莉ちゃんの相手は台上から解放されればガンガンドライブ振ってくるだろうし、ダイヤさんの相手はカットを無力化できる……」

千歌「そ、そんなこと言わないでよ!! な、なんとか、なるもん……」

果南「応援しよう」


曜「えっと次はダイヤさんとルビィちゃんのダブルスと、花丸ちゃんのシングルス4の同時進行……」


善子「ずらまるが勝てばリリーに繋げる!」


善子「がんばるのよー!!!」


花丸「っ」コクコクッッ…
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2017/06/25(日) 01:55:15.31ID:nZBBiPFZ
◇――――◇


梨子「……」ドキドキッッッ…

ダイヤ「梨子さん……あなたに回すことに、なってしまって」

梨子「い、いえ」

梨子「花丸ちゃんが繋いでくれたんです……わ、わたしがそれを無駄にするわけには」

鞠莉「気負いすぎたらだめよ、大丈夫……あなただって練習してきたんだから」

梨子「は、はひっ……」

鞠莉「さいっこうの舞台なんだから、楽しんできて!」

梨子(追い込まれてるだけだよぉ……うぅ、ううん、これもいいプレッシャーになるって信じて……)トコトコ…

鞠莉「そ、そっちは相手のコートよー!」

梨子「!!」

梨子「ごめんなさいごめんなさいっ!!」////

梨子「はぁぁ……」

梨子(よし、試合前の練習……相手のひと可愛い……強そう……)

梨子(勝てるのかなあ……ううん、勝たなきゃ……)


カツンカツン


梨子(よしラリーは出来てる……出来なきゃだめなんだけど……)

梨子(これに勝てば……)
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2017/06/25(日) 01:56:23.12ID:nZBBiPFZ
梨子(ラバーは……えっとこれは確か……クセのないオーソドックスなテンションラバー、両面とも。ラケットは……よっちゃんのと一緒。てことは球離れは早め……棒球が出てくるかも)

梨子(ダイヤさんが言ってた! 道具見るところから試合は始まってるって!)

梨子「よろしくお願いします。よろしくお願いします」

梨子「ふう……」

梨子(サーブ、どうしよ……私は他の人みたいに色んなサーブは出せないし……)


梨子(下回転、上回転、ナックル……あとあんまりかからない長い横回転くらい……)


梨子(ううん、シンプルに考えるなきゃだめ! 一発目、リスクを下げてバック側中距離の下回転で)キュパッストンッ


千歌「あちゃー、いきなりサーブミス」

梨子「ぅ……」

梨子(な、ななににやってるの私っ!)ガチガチッ

梨子(落ち着いて落ち着いて)グルグル…


キュパッッ


梨子(入った!)


 相手のバックサイド、台から少し出るくらいの長さで出したサーブ。これは相手の出方を見るためのもので、実力が高い人ならば台から出た瞬間撃ち抜いてくる。それはAqoursの中でよくやられてるからわかっていること。
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2017/06/25(日) 01:57:28.04ID:nZBBiPFZ
 でも対外試合とかをすると意外と打ってくる人って少なくて、ツッツキで繋いでくる人の方が多い。台から出るボールを思いっきりドライブしてこないならまだこっちにもチャンスがあるってこと!

梨子(よしっ)

 相手は私の望んだ通り、打ってくる気配を見せず、ふんわりと浮き上がった絶好球がバックハンド側に着弾する。

 千歌ちゃんのお母さんが口酸っぱい程に言っていたことがある。

 ダイヤさんやルビィちゃん花丸ちゃんみたいな守備型の戦型の人に主に言っていたことなんだけれど――チャンスボールだけは確実に決めること。

 何度も何度も、私も言われた。


 ふんわりと浮き上がった球を思いっきり叩くことが出来るだけで相手はとりあえず返すという方法が封じられる。相手はリスクを上げてレシーブをしなくてはならなくなる。

 反対に絶好球を決めきれないことが何回かあるだけで、とりあえず返しておくという戦法が使えるから、相手の選択肢が広がってしまう。選択肢の増加は心の余裕を生み出して冷静にプレーに集中出来て、勝ちに繋がっていく。


 今回の絶好級は私の得意なバックハンド! 絶対、決める!!


梨子「っふ!!」

梨子「ぁ……」


 オーバーミス……うぅ、なんで。


千歌「ぁあ……もったいない……」
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2017/06/25(日) 01:58:20.94ID:nZBBiPFZ
 力入ってたかな……、ああって声が観客席から聞こえる……。

 私の試合、見られてる……?


 Aqoursは前回のラブライブで決勝トーナメントに出場してるから……注目が集まってる、のかな……。

 ということはここで勝てばまた注目される……責任重大……。

梨子「……」ガチゴチ…


千歌ママ「まずいなあこれ……」


果南「なんで梨子ちゃんあんなにミスしてるの? 相手のレベルは正直全然高くないはずなのに……梨子ちゃんでも十分勝機はあるはず……」

曜「……この空気感かな」


千歌「だいぶ上まで来たから試合してるところが少ないんだね、だからこの体育館にいる色んな人が梨子ちゃんの試合見てる」


曜「ああ、取られちゃった……」

梨子「はぁっ……はあ……」

 
 5-11……なんで、なんで。


 多分相手の実力はそこまで高くない、私でも十分やれるくらいの相手だと思うのに……。

 千歌ちゃんが言ってたみたいに、実力が離れすぎると強さを認識出来ないとか、そういうこと? いや、そういうことじゃないはず……。

ダイヤ「落ち着いて、梨子さん」

梨子「……っ」

ダイヤ「今のあなたは極端に冷静さを欠いていますわ」

梨子「え、あ……」

鞠莉「大丈夫、緊張しちゃうなら今がどういう場面なのか考えなくてもいいから。自分がどういうプレーをしたいのか、それだけ考えて次のセット、やってみて」


梨子「……は、い」
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2017/06/25(日) 01:59:19.99ID:nZBBiPFZ
ルビィ「だ、大丈夫勝てるよ!」

ダイヤ「さ、行ってらっしゃい」


 ダイヤさんと鞠莉さんが技術的なアドバイスをくれなかったってことは……今の私の技術だけで十分勝算があるってこと、だよね?

 反対にアドバイスされたのは、今まで受けたことがあんまりないメンタル面のこと……。

 どうしよう、てことは私はこの会場の空気に呑まれそうになってるってこと?

「0-3」

 だめだ……。全然打てない、相手はどっちかと言うと守備的な選手。ツッツキで繋いでくるミス待ち卓球だけれど、そのツッツキもAqoursのみんなに比べたら全然精度は高くないし……それなのに。

 身体が重い……。

 足が動かない。

 どんなプレーが、したいか……?

 わかんない……でも勝ちたい……勝ちたい。

「3-9」


 スコアは酷い……正直もうこのセットは無理。だったら……自分がしたいこと、練習でしてきたことだけやってみよう……。


 今日の状況とかを考えて柔軟に対応するなんて私には出来ない。今日の私はバックもそうだけど、フォアのミスが酷すぎる。


 相手もそれをわかってるからフォアにツッツキを集めてくる。それを全然決めきれてないから沼にはまったみたいにもがいてる。


 入らないくらいだったら、得意なバックを振った方がまだ精神的にも余裕が持てるはず……。


梨子(私はフォアはからっきしだけどバックは何回も褒められた……だったらそれをやりきったほうがいい!!)
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2017/06/25(日) 02:00:01.95ID:nZBBiPFZ
 ――私のフォア前に短めのサーブ! 軌道は下回転、回転はそんなに強くない。だったらここは……ツッツキで繋がないで……。

梨子「っ!!」ギュインッッッ!!!!

 フォア前に来た場所、そこに身体の正面を持っていく。球の左横を、思いっきりバックハンドで弾き擦る!

 鞠莉さんから教えて貰ったチキータ!

 バナナのような軌道で上手く横回転が乗ったボールは相手のミドルを抉りながら、そのままエースになる。

梨子「よしっ!!」

 思わず胸の前で拳を握り締める。腹の奥底から歓喜の声が溢れる。たった一点。

 初めて納得出来る攻めが出来た。

 それでもこの一点の積み重ね、だから。


千歌「ナイスボール!!」

千歌「今のチキータよかった!!」

善子「リリーの場合、もう全部バックで行った方がいいかも……」

「4-9」

梨子「ふー……」

 相手のサーブを上手く2球目攻撃出来た。次も相手のサーブ、次は一体……。


 ――速い上回転!


梨子「くっ」ポ-ン

「4-10」


 下回転系の意識が強すぎたかな……。今のは反省……。

梨子(私のサーブ……帰ってきた球は全部バックで打つ……フォアでも動いてバックで打つ……)
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2017/06/25(日) 02:01:05.03ID:nZBBiPFZ
 少しでもバック側に来やすいように、横回転のサーブでっ!

キュパッッ

カツンッ

梨子「ぅっ」

 フォア側に帰ってきた! やっぱり私の貧弱な横回転じゃコースを限定させるまでは出来ない……っ。

ググッ


千歌「お……」

 追いつけるっ、フォアのところでも、バックで!!!

ギュインッッッッシュルルルルルルルルッッッ

梨子「くっ……」

「4-11」

鞠莉(すごい回転……)


千歌「うーん……むむむ」

果南「最後の方は悪くなかったと思うけど……」

千歌ママ「うう、アドバイスに行きたい……」

千歌ママ「最後の方は多分全部バックで取ろうとしてた……その意識で次も行けば……取れると思う」

 

曜「――オールバックハンド……」

 

千歌ママ「梨子ちゃんの場合フォアとバックで習熟度にかなり違いがあるから……」

千歌ママ「でもバックって便利だからさフォア前でもチキータとかを使えばバックで拾える。でも追いつけなくちゃ意味ない、そのためにフットーワークばっっかりしたんだから……」


千歌ママ「今の時代、ある程度のレベルにいかない限り、オールフォアよりもオールバックの方がやりやすいし、よっぽど勝ちやすいはず」
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2017/06/25(日) 02:04:09.46ID:nZBBiPFZ
 、
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2017/06/25(日) 02:05:21.36ID:nZBBiPFZ
千歌「がんばって……っっ」


鞠莉「梨子、意識は悪くないわ。その調子でバックで思いっきり振った方がいい」

梨子「はい……」

鞠莉「フォア前をチキータで攻めるなら、相手のクロス狙ってね。そっちの方が距離があるから安定する。高さを少しだしても横回転の影響で沈み込んでくれるから」

梨子「うん……」

鞠莉「攻めたい時は弾道低めを意識してそのままバックにストレート、オーバーしやすくなるから気をつけて」

鞠莉「肘をちゃんとあげて、手首をちゃんと返してあげて」

鞠莉「大丈夫、あなたはバックハンドなら相手よりかなり上手いから!」

梨子「……」コク…


梨子「ふー……」トコトコ

梨子(サーブ……下手に横回転なんか出さない方がいいかな。下とナックルだけでいい)

梨子(元々打ってくる相手じゃないけど、確実にツッツかせるためにも)キュパッッ

カツンッ

梨子(よしツッツキ……っ!)ギュイン

梨子「よしっ!!」

千歌「ナイスボール!!!」

果南「いいバックドライブだったね、ノータッチ」


梨子(感触はいい感じ……よし)

 続けて私のサーブ、同じコース同じ回転で出してみる。相手は思った通り、ミドル側にツッツキ。

 このコースなら……っ。


ギュッパコンツッッ


梨子「っ!!!」グッッ
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2017/06/25(日) 02:06:21.94ID:nZBBiPFZ
 

ダイヤ「――逆チキータ……!」

 

花丸「連続ノータッチ!!」

ダイヤ(チキータとは逆の回転をかけて相手のフォアゾーンに切れていく、ドライブともチキータとも違う高等技術……近年卓球界に導入されましたが、トッププロでも未だ使用者は少ない)


鞠莉「あんまり完成はしてなかったみたいだけど……よく決めたわね」


鞠莉「いい感じね……ミドル側なら逆チキータでも普通のチキータでも攻められる、バック側に来たら台上でもロングでもバックドライブを振りにいける」


ダイヤ「ええ……戦型も相手は守備型なので自分から攻めていける。このまま押し切れればいいのですが……」
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2017/06/25(日) 02:07:54.96ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

千歌「やったー!!」ピョンピョン

善子「下に落ちるってば」

千歌「二セット目取った!! あと1セット!! いけるよ!!」

曜「うんっ!!!」


梨子「ふー……はー」

ダイヤ「大丈夫? 疲れてない?」

梨子「あんまり……」

鞠莉「この調子よ。次のセットはフォアに振られることがもっと多くなると思うから、気をつけて」


ワ-ワ-

ルビィ「うゅ……すごい歓声……」

鞠莉(やっぱり注目されてるわね)

鞠莉(かなりいい感じだから……最後まで……っ)

梨子「なんか、すっごく調子が良くなってきて……バックで打てば全部入る気がして」

ダイヤ「いい状態ですわね……さ、練習の成果を見せてあげて!」

梨子「はいっ!!」

梨子「ふー……」スタスタ…

千歌「梨子ちゃんがんばれー!!! いけるぞー!!!」ピョンピョンッ

梨子(下に落ちちゃうってば)クス

梨子(いける……このままいけば勝てるっ……)
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2017/06/25(日) 02:08:48.18ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

梨子「はぁ……はぁ」

梨子(6-4……私のサーブ……)


梨子(勝てる……勝てる)

梨子(勝つんだ……勝たなきゃ……)

ワ-ワ-!!!!

梨子(みんなに見られてる。ここで勝つんだ)

梨子(みんなで全国行くんだから!!)キュパッッ

 セオリー通り、一番浅いところの下回転。
 これならストップするかツッツキだけ、でも相手にそこまでのストップ技術はない。

梨子(フォア側っ……)

梨子(チキータ!)ギュワンツツッ

梨子「!?」

 甘かったっ。

 バック側に決めに行ったチキータに上手く当てられ、バック側にブロックされたボールが着弾する。


梨子(おい、つけ!!)キュパッ


 フォアサイドから地面を蹴る、フットワーク。短い期間だったけれど、散々やってきたんだ。
 追いつく、追いついた!

 もう一回、撃ち抜くっ!!


梨子「ふっっ!!」ギユインッッツ

梨子「なっ」


梨子(読まれ……)


6-5


千歌「ああ……追いついたのに」
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2017/06/25(日) 02:09:46.25ID:nZBBiPFZ
善子「フォア前に落ちた球をチキータで打ったけどがら空きのバックに返球されて、なんとか追いついてバックドライブ打つけどがら空きのフォアにブロックされる……」

善子「なかなか辛いわね」

千歌「ああっ、同点……だよお」

善子「……」

果南「私は日ペンだからオールフォアが基本だけど……がら空きのとこに打たれるのって割り切れる部分もあるけど、こういうギリギリの時は……堪えるよ」

曜「梨子ちゃんもうフォアで打つ気ないもんね……ミドルに来た速めの球にバックが変なふうに出ちゃってる」

善子「バックハンド偏重型にありがちね、気がついたらバックが出ちゃってフォアが出ないっていうのは」

千歌「でも、でも……それでここまで来たんだから!! 信じるしかないの!!」

善子「ええ……」


梨子「はぁ……はぁ」

6-9

 勝たなきゃ……。

 勝たなきゃ……。

 私が勝たなくちゃいけないのに……。


千歌ママ「技術云々てより……やっぱりメンタルかな……」


千歌ママ「いくら技術を鍛えてもメンタルは初心者とほとんど変わらないから」


ワ-ワ-!!!!


果南「……この状況は酷だね」
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2017/06/25(日) 02:13:41.90ID:nZBBiPFZ
善子「っ……リリー!! まだ終わってないわよ!! しゃきっとしなさいよ!!!」


梨子(よっちゃん……)

 6-10。

 相手のマッチポイント。もう、何連続でポイントを取られたかも、わからない。

 足が重い。

 なんでか息も浅い。そんなに疲れてるんけじゃないのに。入ってた攻撃も入る気がしない……でも、私は、まだ――。


◇――――◇

梨子「ぅ……う、ぅ……」

梨子「ぅ……ぅ……ごめんなさい……ごめんなさい……っ」

梨子「はっ……はっ……わ、私の、せいで……! 私のせいでっ!! みんなが、っ……ぅ、ごめんなさいっ!!!」

千歌「梨子ちゃんのせいじゃないよ……ね、大丈夫だから」ポンポン

梨子「はっ……はっはっ」


果南「――梨子ちゃん落ち着いて、大丈夫だから、ね?」

果南「過呼吸になっちゃうから。深呼吸……深呼吸して……」

梨子「!!」コクコク…

梨子「はー……はー……」

梨子「……ぅう」

ダイヤ「梨子さんのせいじゃありませんわ」


ダイヤ「私たちは団体戦で負けたの。私達全員の力が足りなかっただけ」

ダイヤ「気に病まないで」
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2017/06/25(日) 02:15:46.76ID:nZBBiPFZ
梨子「ぐす……ごめん、わたし……負けたくせに、こんな、泣いて……迷惑かけて」

千歌「いいじゃん、本当に悔しいから泣くんでしょ。そんなふうに思えるのって、すっごく大切だと思うんだ」

鞠莉「そうよ梨子、今回は力が及ばなかったとしても……ここまで来れたこと、誇りに思いましょう?」

梨子「……う、ん」

曜「善子ちゃんだって負けると泣くんだから、梨子ちゃんも――」

善子「わ、私は関係ないでしょ!!」

ルビィ「ふふふっ」

梨子「……みんな、ありがとね」

梨子「私、楽しかったよ。こんなふうにみんなと闘えた気がして」

梨子「次は千歌ちゃん達の応援、精一杯すはから……一緒にがんばろうね」

千歌「うんっ!!」


千歌ママ「……」

千歌ママ「ミーティングをしますー」

千歌「はーい」


千歌ママ「――まず初めにダイヤちゃん鞠莉ちゃんルビィちゃん花丸ちゃん梨子ちゃん、本当にお疲れ様」


千歌ママ「結果としてはここで団体戦は終わりになっちゃうけど……どうだった? 見ている私からしたら、すっごく楽しかった」


千歌ママ「本当に短い期間で、碌に大会も出れずにぶっつけ本番状態。そんな中で、みんなは本当にがんばってくれた。ありがとう」

梨子「……」
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2017/06/25(日) 02:17:30.80ID:nZBBiPFZ
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2017/06/25(日) 02:19:20.61ID:nZBBiPFZ
千歌ママ「今日試合に出た人達が今後卓球をやるかはわからないけど、それでも……いい思い出には、なったんじゃないかな」

ダイヤ「ええ……」

鞠莉「リベンジしないの?」

ダイヤ「それはまた……別の時に話しましょう」

鞠莉「そっかあ……」

果南「ていうか卒業じゃん」

鞠莉「あ」


千歌ママ「あはは、文字通り……このメンバーでやれるのは最後だったわけ。卓球ってスポーツは……水平な板の上にビー玉を置いて、それを転がし合うゲーム。簡単に相手の方に流れは行くし、逆もまた然り」

千歌ママ「厳しいことだけれど、それが面白いの。今回は悔しい結果として見に染みたかもしれないけど……どうなってたかなんてギリギリまでわからなかった」

千歌ママ「梨子ちゃん、技術的には勝ってた。間違いない。自信をもって!」

梨子「……ありがとうございます」

千歌ママ「初心者のあなたが本当によくここまでがんばってくれた、千歌のワガママに付き合ってくれた……」

千歌「わ、ワガママじゃないもん!」

果南「最初は完全にワガママだったって」

千歌「そんなことないー!」

千歌ママ「もちろんみんなを勝たせてあげららなかったのは、私の指導方法が間違ってたってこともある。勝たせるって言ったのに、本当にごめんなさい」

千歌ママ「明日は個人戦、あなた達にとっては本命なはずだね。今日悔しい思いをした分も全部、千歌達に晴らしてもらうことにしよっ」
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2017/06/25(日) 02:20:32.47ID:nZBBiPFZ
千歌「丸投げー……」

梨子「ふふ……でも、明日は本気で応援するね」

鞠莉「ええ、メガホンでも持っていくから」

ダイヤ「それだけはやめて」

善子「――勝つから、絶対」

梨子「……うん」

ルビィ「かっこいい……」

善子「な、なによ……当然だから」

千歌「ディフェンディングチャンピオンだもんねー? 千歌だって負けない! 絶対絶対絶対っ、勝つ!!!」

千歌ママ「うん、これでミーティングは終わり。今日の試合はもう見なくていいから、帰ってゆっくり休んでね」


◇――――◇


梨子の家


梨子「……」ムク…

梨子「……変な時間に起きちゃった。というか、いつ寝ちゃったんだろう」

梨子「……」

梨子「はぁ……」


 気怠さが全身を包んでいる。帰ってきてすぐに寝てしまったことで、変な時間に起きたし、リズムも狂った。


 明日は私が試合するわけじゃないのが、救いだった。

梨子「……」トコトコ…
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2017/06/25(日) 02:23:00.72ID:nZBBiPFZ
 カーテンの隙間から差し込む月明かりに導かれるようにして、ベランダの方へ。
 カーテンを開け、冬の気温で凍えるような冷たさになっている鍵を開けた。

 ふっ、と。

 窓を開けたら瞬間に肌を刺すような冷気に、思わず声が漏れる。ベランダに出ると、穏やかな風が吹いていた。暴れる髪の毛を抑えながら、千歌ちゃんがいることもある窓を見つめた。

 なんだか、こうやって眺めていると落ち着くんだ。あるのは、ただの家の窓だけれど、私にはそれがただの窓ではないから。

 文字通り、運命が変わった。

 ここのベランダで、あの日、あの時、手を繋いだ日……私はまるで命を与えられたみたいだった。全力を注いでいたピアノを諦めようとして、世界全てにモヤがかかって見えていた私の視界を、晴らしてくれたのは間違いなく千歌ちゃんだった。

 太陽みたいな人だって、思った。

 ありきたりかも、しれないけれど。思ってしまったものは、仕方がない。

 その結果として……やったこともないようなことばかりしてきて……まさか昨日みたいに大会に出ることになるだなんて。

 夏休みなんか毎日毎日死にそうになりながら練習して、全身筋肉痛で、お母さんに死にそうな顔してるって本気で心配されてたこともあったっけ。

 私の中で一区切りついた今だからこそ、振り返れる。寒さにも慣れてきて、少しだけ心地良い。

 ベランダによりかかって、手にした携帯電話を起動させると。
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2017/06/25(日) 02:25:36.41ID:nZBBiPFZ
梨子「……!」


 メール通知で、いっぱいになっていた。

 Aqoursのグループでの会話は、明日もがんばろうってことで、終わったはずだ。でも、みんなから……メッセージが、届いていた。
 
 私へ向けて。


ダイヤ:今日は本当にお疲れ様でした。初めての大会、どうてしたか? きっと、色々思うことはあったと思います。でも、それも全て、あなたが経験したかけがえのないことです。初心者でありながら厳しい練習についてきたあなたに敬意を。
私はあなたと一緒に戦えてよかった。明日は私たちにとっても、勝負所です。千歌さん達と共に、戦いましょう。おやすみなさい。


果南:今日はお疲れ様ー。応援席でずっと見てたけど、凄かったね。私感動したよ。周りの人達もそうだったんじゃないかな。梨子ちゃんがあんなに頑張ってくれたんだから……私も明日、頑張るから。応援、よろしくね。みんなで全国行こうね

鞠莉:梨子、ナイスファイトだったわよ! あなたがどれだけ苦労してたか、どれだけみんなについて行こうと頑張ってたか……多少かもしれないけれど見ていたつもり。あなたに私が教える機会は多かったから分かるけど、ここまでやってくれるとは思わなかった。
ごめんね、嫌味じゃないの。本当に凄いって思ってる。あんな頑張り見せられたから、後ろで泣きそうになってたのよ? ていうのは冗談。……あなたが居てくれて、よかった。good night梨子、また明日。
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2017/06/25(日) 02:27:07.26ID:nZBBiPFZ
花丸:試合お疲れさまでした! 梨子ちゃん、途中から本当に強くなって……勝ちたいって気持ち、伝わってきたよ。一緒に団体を組んで、いっぱい練習したね。
私たちは私たちなりに、あの結果が答えだったと思う。結果は悔しいけれど、でも、本当に楽しかったよ、私は。梨子ちゃんはどうだったかな? 今度聞かせてね。また明日!

善子:お疲れ、リリー。えっとなんていうか……リリーは本当に頑張ってたわ。誰が見ても、そう思うわよ。結果はああだったけど、でも、あなたが頑張ったことは変わらないでしょ。
勝ちたいって本気で思うこと、大切なんだから。そう思えるくらい真剣だったこと……かっこいいと思うし。だから明日は、応援お願い。私、あなたのためにも、絶対また優勝するから。見ててよね……おやすみ。

曜:不在通知

曜:ごめん!メールじゃ長くなるかなって思って今日のことで色々話したかったんだけど……明日に備えて寝るね!とりあえずお疲れ様。本当に、凄かったよ!おやすみー!

 画面をフリックする手が、震えた。ポタポタと、画面に涙が零れおちる。

 みんな、みんなの気持ちが、嬉しかった。と、同時に辛くもあった。
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2017/06/25(日) 02:30:25.94ID:nZBBiPFZ
 暖かすぎて、勝てなかったことに対して、みんなは優しすぎる。これがみんななのだと言ってしまえばそれまでだけど、私は、一人じゃなかったんだね。あの場でも、みんながみんな……私と一緒に戦ってくれてた。

梨子「ぅ……」

 肩が震えているのは寒さのせいではない。むしろ込み上げてくる感情に、身体は火照りに火照っている。

 今日は泣きすぎた。会場で過呼吸寸前まで泣き腫らして、今だって、馬鹿みたいに身体を震わせている。ああ……でも、悪くない気分。これがやりきったあとにだけ、流せる涙なのかも、しれない。

 私は、幸せなんだと思う。


 ――携帯電話から視線をあげると、向かいのベランダから千歌ちゃんが顔を出していた。


梨子「へ」

千歌「だ、大丈夫?」

梨子「え、あ、これは!!」

梨子「ぅ……」

梨子「その、みんなからメッセージ貰って……読んでたらつい」

千歌「そっか……」

千歌「ち、千歌だって! メールしようときたんだけど、なんか、詰まっちゃって……」

梨子「そういえば来てない……」

千歌「ねえ、こっちに来てよ」

梨子「え?」

千歌「一緒に寝よ! で、ちょっと話そ!」
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2017/06/25(日) 02:31:42.27ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

千歌「ほらほらいつもみたいにベッドにどーぞ!」

梨子「あした大会なのに……」

梨子「失礼します」モゾモゾ

千歌「消灯ー!」

梨子「……眠れなかったの?」

モゾモゾ

千歌「ん……ちょっと考えてただけだよ。明日はどうしよっかなって」

千歌「これが眠れないってことなら、そう、なのかな」

千歌「一回負けただけで、だめなんだもん……。私は全国に行って、聖良ちゃんを倒すって決めたんだから」

梨子「……」

千歌「今日、凄かったね、えへへ……感動したよ?」

梨子「そんな……」

梨子「結局、負けちゃったし」

千歌「でも凄かった!! 梨子ちゃんの今までの頑張りが、伝わった」

千歌「千歌のワガママに付き合ってくれて、ありがとう。梨子ちゃんが居てくれたから、私はこうやって……みんなで楽しくやれてるんだよ」

千歌「えへへ……」

梨子「ワガママなんかじゃないって、言ったでしょ? ……やってきて良かったって、本気で思ってる」

梨子「ありがとう千歌ちゃん……本当にありがとう」

千歌「うん……っ」

梨子「でも、やっぱりさ」

千歌「うん……」


梨子「――勝ちたかった、なあ……」
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2017/06/25(日) 02:35:20.79ID:nZBBiPFZ
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2017/06/25(日) 02:35:52.39ID:nZBBiPFZ
梨子「ぐす……みんなでもっと、上まで行きたかった、勝ちたかった!!」

千歌「うん……」ギュッ…ナデナデ

千歌「梨子ちゃん達の分まで、絶対勝つから……。わたし、明日は死ぬ気でがんばる」

梨子「うんっ……」

千歌「あんなに必死でやってるところ見せられたらさ……私も頑張らなきゃって」

千歌「だから……がんばろうね、一緒に!」

梨子「うん……っ」

梨子「――はい、十分経ちましたよ?」

千歌「へ」

梨子「眠ろ?」

千歌「んぅ、もうちょっと話そうよお……」

梨子「だめ、明日は大事な日なんだから、ね?」ナデナデ

千歌「わかった……」ギュッ…

千歌「こうするとあったかいから、このまま寝る」

梨子「仕方ないなあ……」

千歌「起こしてね、起こしてくれないと起きないから」

梨子「はいはい」ナデナデ


梨子「おやすみ」
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2017/06/25(日) 02:37:27.83ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

個人戦会場

千歌ママ「いよいよ今日がやってきたわけだけど……個人戦組、準備はオッケー?」

千歌「オッケー!!」

曜「うんっ」

千歌ママ「うまくすればAqoursだけでベスト4占めることも出来るドローだから、そう出来るように」

善子「いいわねそれ」

善子「準決勝で……曜、決勝で果南さんか千歌さんか……」

曜「今日は勝つよー!」

善子「望むところよ!」

千歌「ベスト4までいけばいいんだ……そしたら果南ちゃんと……」

果南「負けないからね?」

千歌「私だって!」

善子「私はシードだから、審判行ってくるわ」

善子「みんな、一回戦から躓くなんてやめてよね!!」

千歌「当たり前だよ!」

千歌「よしっ、行こう!!!」
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2017/06/25(日) 02:39:32.21ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

梨子「千歌ちゃんナイスボール!!!!」

梨子「勝った勝った!!」

ダイヤ「4回戦……角シードも破って、余裕でしたわね……角シード相手にこれなので、次の試合はもっと楽なはずですわ」

鞠莉「果南も角シード余裕撃破、これは……あるんじゃないの?」

ルビィ「すごい、みんな」ウキウキ…

花丸「5回戦勝てば、ベスト4……」

ダイヤ「わたくしまでドキドキしてきました……もうっ」

鞠莉「くすっ」


◇――――◇

千歌(あれ)


 見える。

 相手の球遅い。動きも遅い。止まって見える。

 簡単に打てる、追いつける。

 ドライブされてもカウンターで撃ち抜ける。

 前はこんなんじゃなかった、ギリギリで打ち合って、なんとか勝ってた。4回戦で負けて、今回は簡単にその目標を突破出来て。

 5回戦、ベスト4、つまり全国へ行くための戦いだ。なんだかそれも、順調すぎるほど順調だ。
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2017/06/25(日) 02:40:14.05ID:nZBBiPFZ
 サーブ、ドライブ、台上、ブロック。冷静に考えても……負けてるところは、一つもない。

 私は強くなった。確かにそう、実感出来る!!

 少し前、果南ちゃんと曜ちゃんはベスト4をかけ試合をしていた。応援席で見ていたけれど、二人とも圧勝。善子ちゃんはすでにベスト4が確定していて、ついにAqoursが三人全国への切符を手に入れていることになる。

 残るは私だけ。

 プレッシャーもあった。

 でも、心地良いプレッシャーだった。みんなに負けたくない、私だって、違う世界にいる人達に食らいついていくんだから!!

 ドライブを振り抜く、相手のいないコースがよく見えた。まるで時間が止まったみたいに、相手はその場から動かず私の球筋を見ていた。

千歌「しゃっ!!!」

 手を高くあげる。

 みんなの歓声が聞こえた。


 この日。静岡県からの全国への切符は、Aqoursが独占することになった。
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2017/06/25(日) 02:41:31.36ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

千歌「やったー!!!!」

曜「やったねっ、やったねっ千歌ちゃんっ!!」

千歌「うんっ、うんっ!!!」ピョンピョンッッ

梨子「おめでとう……っ」

千歌「ありがとう……わたし、わたし……」

善子「あなたは強いんもの、当然よ。おめでとう」

千歌「あ、ありがと……」

鞠莉「まさかほんとーにAqoursだけで独占できるなんて……」

鞠莉「ちょっと白けちゃったかしら?」

果南「あはは……競技卓球でもあるよね、強豪校が強くて上にあがると部内戦みたいになること」

千歌ママ「みんな、ひとまずおめでとう。これで次に繋がったね」

千歌ママ「あとはここ、誰が優勝するかだけど……」

ダイヤ「部内戦で勝つのとプレッシャーたまらけの公式戦で勝つのはわけが違います、ここで勝った人が、Aqoursで一番強いと言ってもいいでしょう」

千歌「ごく……」

曜「一番強い……」


ダイヤ「がんばってください、みんな」

果南「よろしく、千歌」

千歌「う、うん」

善子「…………」

曜(うわ敵意丸出し……うぅ、そうだよね)


曜(勝てるようにがんばろう……善子ちゃんが本気で敵意を向けるくらい私は強くなれたってことなんだから……)
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2017/06/25(日) 02:42:52.96ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

会場前


千歌「んー……おわったあ!!」

花丸「決勝戦、凄かったね」


果南「だめだめ……善子ちゃんやっぱり強いよ」

善子「疲れた……」


ダイヤ「優勝インタビューも、前より良かったわよ。ディフェンド、おめでとう」


善子「ありがと」

善子「り、リリー有言実行よ!!」

梨子「うん、かっこよかったよ」


善子「ふふん!」


千歌「よし、今日は帰ろう! また今度、打ち上げしよーね!」

鞠莉「盛大にね!!」


千歌「ばいばいっ!!」
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2017/06/25(日) 02:44:26.60ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

車の中

千歌ママ「やっぱりメンタルの差だったかな……」

志満「一番競ったのは曜ちゃんと善子ちゃんの準決勝だったね」

千歌「凄かったんでしょ? 私は果南ちゃんに普通に負けたからあれだけど……」

梨子「凄かったよ、本当に……善子ちゃんも曜ちゃんも……貫くみたいな眼光で」

千歌ママ「今回は善子ちゃんが勝ったけど、やっぱり大舞台慣れしてるからだね」

志満「曜ちゃん……今回かなり良い経験になったんじゃないかな」

千歌ママ「次はどっちが勝つと思う?」

志満「……多分、曜ちゃんかなって」

梨子「そんなに、なんですか?」

志満「序盤2ゲーム先行したのは善子ちゃんで、このまま行くかなって思ったところに……曜ちゃんの雰囲気が一気に変わったから……」

志満「そこから結局フルセットになって善子ちゃんは逃げ切ったけど……多分もう少し早く曜ちゃんがあの状態になってたら」


千歌「ごく……」


千歌ママ「……やっぱり天才だよ、あの子」

千歌ママ「今回また進化したとしたら、全国……凄いことになるかもね」

梨子「……」

千歌ママ「はいどーぞ梨子ちゃん」

梨子「ありがとうございました!」

千歌「じゃあね!」

梨子「うんっ、ゆっくり休んでね」バタン
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2017/06/25(日) 02:45:59.67ID:nZBBiPFZ
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2017/06/25(日) 02:46:19.96ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

美渡「果南ちゃんに負けたんだって?」

千歌「なんでそこだけ言うのっ! ベスト4だよベスト4!!」

美渡「あーはいはい」

美渡「ま……がんばったじゃん」

千歌「……」

美渡「今度なんか買ってきてあげるよ」

千歌「ほんと! 服!」

美渡「安めの食べ物に決まってるでしょうが」

千歌「ケチだなー」

美渡「黙れ」

志満「でも、本当に頑張ってたよ。よかったね勝てて」

千歌「うん……!」

千歌ママ「全国大会までは約1ヶ月あるから……そこでみっちりやるんだよ。私はもう仕事、戻らないとだけど」

千歌ママ「美渡と志満、引き続きお願いね」

志満「わかった」



千歌「よしっ、ごちそうさま!」タッタッタッ


美渡「あの子がねえ」

志満「ね」

美渡「まあ……いいけどさ」

志満「見に来れば良かったのに」

美渡「仕事だってば」

志満「全国は?」

美渡「土日でしょ? 土曜仕事だしなあ」


美渡「……有給、とるよ」


志満「ふふっ、それがいいね」
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2017/06/25(日) 02:47:54.28ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

プルルルルルルッッッ…


千歌「ごく……」

聖良『もしもし』

千歌「あ、あのっ聖良さん!」

聖良『――全国大会出場、おめでとうございます』

千歌「へ、知ってるんですか」

聖良『ええ、SNSで調べたら出てきたので』

千歌「な、なんだあ」

聖良「有言実行、ですね」

千歌「うん……」

聖良『Aqoursの皆さんで全国を独占したとか……少し話題になってるわ』

千歌「あはは……それはちょっと……」

聖良『何より……あの時の宣言をちゃんと形として実現したことを、尊敬する』

千歌「あ、ありがとう」


聖良『東京で会いましょう、そして対戦出来るのを楽しみにしてる』

千歌「うんっ!』

聖良『おやすみなさい』

プツッッ

千歌「あ……聖良さんに、北海道大会優勝おめでとうって言うの、忘れてた……」

千歌「ま、まあいっか……」


千歌「でも……ついにここまで来た。あの日無理だって言われてたこと、成し遂げた……ここからは、また……」
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2017/06/25(日) 02:48:54.82ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

曜「おっはよー善子ちゃん!」

善子「ん……おはよ」

曜「いやー昨日は凄かったねー」

善子「私としてはなんか……」

曜「ん? 優勝したのになにかあるの?」

善子「いや……あなた、本当強いなって」

善子「……認めたくないけど」

曜「へ//」

曜「いやでも普通に善子ちゃんに負けたし」

善子「――対戦した私が一番分かるわよ」

曜「……?」

善子「ま……もし全国でも当たるなんてことになったら、よろしくって感じね」

曜「次は負けない!」

善子「私だってただでやられる気はないってば」

善子「でも……あなた、分かってるの?」

曜「?」

 

善子「――千歌さんとも当たる可能性があるわけだけど」

 

曜「……!!」

善子「なんか……一時期そんな感じのことで揉めてなかった?」

曜「あはは……確かにそんなことあったかも」

曜「でも、大丈夫だよ。相手が誰だって」

曜「……大丈夫」

善子「……それならいいんだけど」
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2017/06/25(日) 02:50:09.32ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

二週間後


善子「ちょっとずら丸、なんであなたが前で見てるのよっ、見せて見せて」

善子「んん?」

ダイヤ「A〜Dブロックに分かれたトーナメント戦、です」

ダイヤ「大会は二日に別れて行われ、一日目はブロック代表者決め。二日目は各ブロックを勝ち上がった四人の選手が準決勝から決勝戦として、行われるようです」

ダイヤ「合計で8回勝てば優勝ですわ」

千歌「は、8回も勝たなくちゃいけないの……ひやー……」

善子「私は? 私はどこにいるの?」

曜「善子ちゃんは……あ、ここ。Bブロックの、中シードだよ」

善子「え、シード?」

鞠莉「実績残してたからね」

善子「そっか……」

ダイヤ「果南さんはAブロック、ですわね」

果南「ん、待って……Aブロックって」


ダイヤ「――鹿角聖良さんが、第一シードとして組み込まれています」


果南「うわ、運悪いね」
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2017/06/25(日) 02:50:56.36ID:nZBBiPFZ
花丸「果南さんがAブロックを勝つには、聖良さんを倒さなくちゃいけない、ってことだよね……」

果南「ま……どうせいつかは闘うんだしさ、仕方ない仕方ない」

ダイヤ「曜さんは……Dブロック、ですね。ここにも……」

曜「――鹿角理亞ちゃん……か」

ダイヤ「ええ」

曜「かー……まあ、やるしかないよね……理亞ちゃんなら散々映像見てるからまだマシかも」


千歌「ねえ千歌は千歌は?」


ルビィ「あ、ここ、Cブロックにいるよ」


千歌「なるほど……」


ダイヤ「千歌さんはパッとみた感じでは、なかなか良いドローを引けたのでは?」


千歌「ほんとー? ラッキ!」
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2017/06/25(日) 02:51:57.75ID:nZBBiPFZ
果南「私がAブロック、善子ちゃんがBブロック、千歌がCブロック、曜がDブロック……」

鞠莉「同士討ちは一日目は無し」

梨子「すごい、いい感じにバラけたね」

ダイヤ「二日目の準決勝はA×Bブロックの勝者、C×Dブロックの勝者なので、仮に全員勝ち上がれたならば、果南さん×善子さん。曜さん×千歌さん。になりますわね」

 


曜(――勝ち上がれたら、千歌ちゃんと、か)

 


鞠莉「全国でもAqoursで占めちゃったらどうなるのかしら」クス…

千歌「そしたらすーごいっ話題になるかも!」

千歌「えへへ……なんか楽しみになってきた」

千歌「よし、練習しよ!」


ダイヤ「後でみなさんが当たりそうな有力選手を調べておきますわ」


千歌「うんっ、お願いっ!!」
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2017/06/25(日) 02:55:29.71ID:nZBBiPFZ
また。次から鹿角姉妹のいる全国。

最後まで付き合ってくださったなら、各キャラの詳細データを用意してます。それまでどうぞご贔屓に。
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2017/06/25(日) 12:19:25.98ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

全国大会、初日


千歌「ついに!! この日が来たー!!」

千歌「6時の電車に乗って……はるばる東京まで……!!」

善子「あ、あんまり騒がないでよっ」

千歌「でもでもっ、今回は私もこの体育館で出来るんだよ!」

千歌「見てるだけじゃなくて!!」

梨子「うん……そうだね」

聖良「――お久しぶりです、Aqoursのみなさん」

千歌「え、あ……聖良さん!」

聖良「久しぶり」


聖良「今回はAqoursの皆さんは四人も出場されるそうで……」

善子「おかげさまでね」

聖良「お互い頑張りましょう、皆さんと対戦出来るのを楽しみにしています」

理亞「姉さん、早く入ろ」

聖良「そうね、ではお先に」


スタスタ

善子「なによスカしちゃって」

曜「まあまあ」

千歌「私たちも入ろ!」

スタスタ

千歌「うわーやっぱりロビーもおっきいなあ」

千歌「みんな可愛い……」

千歌「お化粧大丈夫かなあ……」

果南「大丈夫大丈夫可愛いよ」

千歌「そ、そう?」

花丸「もう練習してる人もいるみたい……行った方がいいかも」

千歌「そうだね! よし、練習行こ!」
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2017/06/25(日) 12:20:09.79ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

千歌「開会式長くなかった?」


ダイヤ「当たり前ですわ! これから歴史を続けて行こうとする大会なんです、さくっと終わってしまったら今後に対する――」


千歌「あー、わ、わかりましたぁ!」

曜「みんなレベル高かったなあ……」

果南「そうだね……でも私たちだって負けてなかったはず」

千歌「うんっ……」

善子「そろそろ一回戦が始まるわね」

千歌「よし、みんな集合ー」


千歌「今日まで私たちは本当に頑張って来たと思う! 辛いこともたくさんあったけど、楽しかったからここまで来れたよね!」


千歌「だから今日は、みんなに知って貰おう!! 私たちAqoursがしてきたことを!」


千歌「明日もまたこうやって、円陣が組めるように!」
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2017/06/25(日) 12:22:03.50ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

鞠莉「ナイスボールちかっちー!!」

善子「最高ね! 楽勝じゃない!」

ダイヤ「ええ、全国大会一回戦……初戦なので厳しいものになるかと思っていましたが……見事ですわ」


花丸「果南ちゃんも絶好調! みんなみんな一回戦突破ずら!」

ルビィ「すごいすごい!」

鞠莉「曜の試合見てなかったけど、フルセットまで行ったの? 大丈夫?」

曜「うーん、あははそうなんだよね。なんか、よくわかんないけど」

曜「でも段々調子出てきたから平気だよ!」


梨子「みんな……凄いね!」


美渡「ねえねえ、千歌は!?」


梨子「え、美渡さん……志満さんも来てくれたんですね」


志満「うん」

鞠莉「ちかっちはストレート勝ちです♡」

美渡「うそ……ほんとだ」

志満「まずは第一関門突破……うんうん」

志満「お母さんも少し遅れて来るけど、その間には負けなそうでよかった」
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2017/06/25(日) 12:23:05.57ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

曜「しゃあ!!!」

曜「ありがとうございました!!」

聖良「……」

聖良「……あの人は確か、Aqoursにいた、渡辺曜さん、だったかな」

聖良「高飛び込みだか水泳だったかで凄い成績を残してるとか……」

聖良「……ふぅん」

聖良「――天は二物を与えないだなんて、誰が言ったのか」

理亞「……姉様誰を見てたの?」

聖良「渡辺曜さんよ」

理亞「なんであんな人?」

聖良「強いなって、思って」

理亞「はあ? あんな人が? Aqoursでも一番じゃないんでしょ、だったら津島善子でも見てた方がいいわ」

聖良「とにかく次の試合は見ておいた方がいいかもしれない」

理亞「……まあ、姉様がそう言うなら。分かった」

理亞「でも、津島善子……かなり強くなってると思う」


聖良「本当に? 勝ち上がると思ってまだ見てないんだけど」


理亞「今試合やってるから見に行こ」グイッ
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2017/06/25(日) 12:23:48.44ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

千歌「えへへ……勝っちゃった……三回戦まで!!」

千歌「凄くない!? 千歌、全国でも闘えてる!」

ダイヤ「ええ、素晴らしいですわ」

ダイヤ「ここまで四人とも、素晴らしい試合を見せてくれています、ただ、次の4回戦からは」

鞠莉「――シード選手と、よ」

鞠莉「4、5、6回戦はほとんどがシード選手……簡単に言えばボスラッシュね!」

千歌「ボスラッシュ……」クス


ダイヤ「ただ、千歌さんの場合はシード選手が負けているので……どうなるかはわかりません、良い方向に進んでくれるといいのですが」


千歌「楽な相手だと良いんだけど……」


善子「曜と果南さんはどこ言ったの?」


花丸「なんかロビーの方に行ったよ?」

千歌「?」


千歌「私の4回戦遅れてるんだよね? ちょっと見てくるー!」
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2017/06/25(日) 12:25:19.87ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

曜「ふぅ……」

果南「ん、曜……平気?」

曜「え?」

果南「凄い顔、してたよ」

曜「あはは……気にしないで」

果南「ごめん、邪魔しちゃったね……」


果南(曜は集中力高める時、人を殺すみたいな目しながらぼーっとしてるからなあ……)


果南(まあ、それが出てるってことはいい傾向なんだろうけど)

曜「いやあ……理亞ちゃんとだからさ、頑張らなきゃって」

曜「果南ちゃんも聖良さんとなんだから……多少は緊張しない?」

果南「うーん、まあ楽しみの方が大きいかな。そんな強い人とやれるんだから」

果南「緊張してるの?」

曜「ううん、全然……すっごくいい感じ、いいプレッシャーって言うのかな」

曜「わたしも、楽しみ」


果南「そっか」


聖良「――あ……こんにちは」


曜「聖良さん、理亞ちゃんも」


理亞(こいつもいきなりちゃん付け……どいつもこいつも)イラ
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2017/06/25(日) 12:26:00.38ID:nZBBiPFZ
聖良「次の試合、よろしくお願いします。松浦さんとですよね」

果南「ええ、よろしくね」

聖良「よろしく」

曜「理亞ちゃんも、よろしくね」

理亞「……」


曜「私ね、すっごく理亞ちゃんのプレーが好きで、参考にさせて貰ったの! だから、楽しみ!」

理亞「そ……負けないから」

曜「私も!」

聖良「……」


千歌「あ、曜ちゃん達こんなところにいた! あり? 聖良さん達も」

聖良「たまたまです。次、対戦するということなので」

聖良「理亞と渡辺さんが先に試合をするようなので……私も楽しみ」


聖良「では私たちはこれで、お互い、いい試合にしましょうね」


理亞「……」スタスタ

曜「ふぅぅ……」


曜「よしっ!! 行こう! 絶対勝つぞ!!」
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2017/06/25(日) 12:30:31.78ID:nZBBiPFZ
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2017/06/25(日) 12:31:12.72ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

曜(理亞ちゃんと練習してる、本当に試合するんだ……勝つ、勝つんだ)カコンカコン

理亞「ラストで」

曜「うん」

曜「ふぅぅ……」

曜(ラケット交換……)

曜(情報と変わりなし……前人向けのラバーとラケット、スピード重視のハイテンション表ソフトラバー……表ソフトの経験は千歌ちゃんのママに仮想敵として対策しただけだけど……)

曜(前評判通り、多分問題ない)

理亞(――はあ? なに、このラケットとラバーの組み合わせ)

理亞(馬鹿みたいにぶっとぶラケットに、馬鹿みたいにぶっとぶ超スピード重視のラバー……ぶっとび同士を掛け合わせるなんて、この人、頭おかしいんじゃないの?)

理亞(こんなの……普通扱えるわけない……。いくらここまで来たからって)


理亞(舐めてるのかしら……とりあえず暴発のミス狙いね)


渡辺 曜

ラケット   ガレイディアT5000
フォアラバー ブライスハイスピード(特厚)
バックラバー ブライスハイスピード(特厚)

VS

鹿角 理亞

ラケット   ヒノカーボンパワー
フォアラバー テナジー25(厚)
バックラバー フレアストーム2(特厚)
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2017/06/25(日) 12:33:16.29ID:nZBBiPFZ
千歌「はぁぁ、緊張するよぉ」

果南「わかる……」

鞠莉「もうこっちが緊張しちゃだめでしょ!」

梨子「善子ちゃんの試合はどうなってるかな、見えない……」

鞠莉「押してるみたいよ、善子ちゃんはシードだから順当にいけば大丈夫なはずだけど」

鞠莉「あっちはダイヤとマルちゃんとルビィちゃんに任せて……応援しましょ」

梨子「うん……」

千歌(聖良さんも少し離れて応援してる……まあ当然か……)


千歌「曜ちゃんがんばれー!!」


曜(……まずは)カコンカコンッッ

理亞「!!」


理亞(いきなりロングサーブ、それも小細工もへったくりもない! 舐め、ないで!!!)カコンツッ!!

曜(ライジングのスピードドライブ!! ――知って、る!!!)バコンッッ!!!


理亞「なっ……」


1-0

曜「よしっ」
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2017/06/25(日) 12:34:33.13ID:nZBBiPFZ
理亞(……ライジングで叩いたのに、ライジングで叩き返してくるなんて)

理亞(……むかつく)


千歌「曜ちゃんナイスボール!」

鞠莉「ナイスライジング返球ね……」

果南「うん……早すぎ」

梨子「ライジングって……」

果南「梨子ちゃんはほとんど練習してないからあんまりわからないかもしれないけど、球がバウンドしてすぐに打つ技術だよ」

果南「普通に打つタイミングよりも早く打球すると、相手の回転の変化を受けにくいし……なにより相手の時間を極端に奪える」

梨子「球の上り側……確かに曜ちゃんと打つととにかくペースが早くなって、すぐついていけなくなってたけど……それが――ライジング打法」

鞠莉「そう……曜はこれまでそのライジングに拘ってずっとやってきた」

鞠莉「ライジング打法は反射神経と繊細なタッチがとても重要で、常時打ち続けるだなんてほぼ不可能だけど」

 

鞠莉「曜はその才能が――神掛かっていた」

 

鞠莉「その才能は、きっと」

鞠莉「……」
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2017/06/25(日) 12:35:52.59ID:nZBBiPFZ
鞠莉「そして相手の理亞ちゃんも、ライジング使いの前陣速攻型」

鞠莉「フルセットになったとしても、試合は早く早く終わるわよ」


鞠莉「前陣速攻vs前陣速攻はね」


理亞(こい、つっ!!)パコンッパコンッッ

ギュッ

曜「ふっぅ」スパ-ンッッ

理亞「くっ……」

理亞(速い……球も、動きも……なんなんだ)

理亞(私がラリーで負けてる……? そんなわけ……)


曜(相手のライジングショットは確かに速いけど……なんとかなる……ラリーでなんとかなるなら……勝てる!!)

曜(もっと速く、もっと強く、もっともっと!!)


カコンカコンッギュッインッギキュパッッ


理亞(お、押され……)

スパ-ンッッ!!!!


理亞「な……くっ」


11-6


曜「よしっ!!」

理亞「もうっっ!!」


千歌「1セット取ったあ!!!」


千歌「あの理亞ちゃんから! 全日本ベスト32から!!」


果南「すごい……完全にラリーで打ち勝った……」
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2017/06/25(日) 12:37:02.92ID:nZBBiPFZ
鞠莉「相手はほとんど考える時間が無かったみたいね……なんとかしようとしてるうちに」

梨子「すごい……」

聖良「……」スタスタ

千歌(聖良さん、どこ行くんだろう……?)


理亞(落ち着け私……さっきのセットは最悪だった。サーブもレシーブも全部長いのを打たれて、ラリー戦にしようとしてる)

理亞(前陣でのラリーで負けてる……そんな、わけ。前陣速攻っていうのはミスがつきもので、どれだけミスよりウィナーを増やせるかの勝負)

理亞(ずっと厳しいコース、しかもライジングで打ち続けるなんて出来るわけない……出来てたまるか。冷静になって、タイミングをずらすのが良いわね)

理亞(2セット目)


理亞(ほとんど見れなかった、台上はどう、かしら!!)キュパッ

曜(フォア前下回転! 回転は強烈、打つのは無理)ツッツキ

曜(理亞ちゃんのフォア前にツッツキをすれば……)


理亞(甘いっ!!)フリックッッガツンッ!!!!


曜(それも知ってる!)パチコ-ンツッ!!!!
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2017/06/25(日) 12:38:08.25ID:nZBBiPFZ
理亞「くっ……」

理亞(うそ……)

曜「しゃっ!!」

果南「台上でミート気味にはたきつける打法の、理亞ちゃんのフリック。かなり攻撃力があって成功したら一気に優位になるレシーブだけど」

鞠莉「あんな風にライジングでぶっ叩くなんて、ね……」

果南「曜は言ってたんだよね。あんな風なフリック打ちたいって、きっとあの超高速フリックは理亞ちゃんの生命線のはず」

果南「それを延々とビデオで見てた。フォア前に少し甘いのを出したらクロスにフリックっていう定石があるのを、分かってたんだと思う」

千歌「すごい、曜ちゃん……」


曜(理亞ちゃんの生フリック、ほんとに速いな……今のはギリギリだった……)

曜(でもコースが分かってたからついていけた……問題はコースが分かってない時)キュパッッ

曜(バックの短いところ、表ソフトなら台上ドライブもチキータもほとんど出来ないはず――)


理亞「っ!!!」スパ-ンッッ!!!

曜「なっ……」

1-1


曜(ライジングのタイミングで、バック側、表ソフトの超超高速フリック……速い)


曜(裏ソフトのフォアより、圧倒的に速い……)
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2017/06/25(日) 12:39:52.32ID:nZBBiPFZ
理亞(舐めんなってこと……もう怒った、ぶっ潰す)

理亞(全速で……)スッッ

曜(!!)


曜(バック! ミドルっ、速い……さっきより、全然!)カコンッカコンッッ

曜「くっ……」


1-2


千歌「早すぎ、だよ……なにあれ」


果南「本領発揮って感じかな……ちょっと速すぎる」


鞠莉「球離れが早くでさらに回転の影響も受けにくい表ソフトを貼ってるバック側でのラリーが主戦力、みたいね」
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2017/06/25(日) 12:40:48.71ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

理亞「しゃあ!!!」

6-11

曜「……ふう、だめか」

曜(速い、とにかく速いけど……)


曜(なんか――見えてきたかも)


曜(次はいけそう……)

曜(なんだろう……私、理亞ちゃんとまともにやりあえてる……嬉しいな)

曜(理亞ちゃんも答えてくれてる。理亞ちゃんのラリーのスピードはおそらくもうほとんど最速に近いはず)

曜(私もそれに喰らい付かなきゃ……次のセットは――最初から全開だ)

曜(――ん……善子ちゃんが勝った、みたい? なんか喜んでる)

曜(さすが善子ちゃん……私も、いっちょやりますか!!)スッ…

理亞「……」

曜「……」ギロッ…


理亞(雰囲気が変わった……なに、この人……本気って、わけ? いかんせんアイドルがする顔じゃないけど……まあいいわ)


理亞(卓球歴が浅いとか実績がないとか思ってたけど……どうでもいい。最速で、打ち勝つだけ)


理亞(決勝で、姉様を倒すのは――私なんだから!!!)
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2017/06/25(日) 12:42:13.86ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

曜「よしっ!!!」


 相手が、握りこぶしを突き上げ手を吠える。それに呼応するようにして、会場が沸き立つ。

 どういうこと。

 どうして私は今、こんなにも、劣勢なの?

理亞(2セット取られて……6-9で負けてる)


 嘘、だ。

 私はこんなところで、負けられない。

 それなのに、なんなんだこの人は!

 ラリーが速い、どれだけ早く打ってもタイミングをずらそうとしても……前で前で打ち込んでくる。深いところに送った球は普通ドライブで薄く擦るように返球するくらいしか出来ないのに。

 この人はライジングよりもさらに前……馬鹿みたいにシビアなタイミングでぶっ叩いてくる。

 なんて反射神経。どこへ打っても、反応して飛びついてくる。

 それを、何本も何本も。

 あのぶっ飛び道具をまともに扱って、私は少し下げられて結局ラリーで打ち負ける。

 それにこいつ――私のラケット面なんてほとんど見てないっ。来た球だけを見てる。


 そんなので、正確な回転が、分かるわけっ!!! わかられて、たまるかっ……。
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2017/06/25(日) 12:43:38.60ID:nZBBiPFZ
曜「っ」ジッ…スパンッッ


 なんで、こんなに。

 まるで――自分と打っているみたいだった。最高に良い時の自分と。サーブもフットワークも台上も……私のいいところをとって、さらにプラスした、みたいな。不自然な感覚。


 相手の打った球が、ラケットより向こうへすり抜けていく。

 試合終了のコールがされる。会場は、馬鹿みたいに沸いていた。

 ああ……負けた。

 少しの間、理解出来なかった事実だったけれど……相手側の応援の声が聞こえて、そのあと、嬉しそうな相手と握手をする。

 途端に、現実が襲ってきた。


 ――才能、か。

 

 押し潰さんとばかりに大きくなったそれは……私の眼前を、埋め尽くしていた。
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2017/06/25(日) 12:44:56.36ID:nZBBiPFZ
◇――――◇


千歌ママ「模倣がオリジナルを超える、か」

千歌ママ「ありえるような話だけど」


千歌ママ「残酷、だね」


千歌ママ「曜ちゃんは死ぬほどあの子を見てたから勝てた」


千歌ママ「千歌や果南ちゃん、善子ちゃんでも負けてたかもしれない」

千歌ママ「理亞ちゃんは、努力の極み、それでも……才能の壁は」
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2017/06/25(日) 12:45:37.73ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

千歌「すごい、すごいすごい!!!」

千歌「理亞ちゃんに勝っちゃったよ、おめでとう!!!」

善子「まさか本当に勝つなんて……」

曜「いやー、私もこんなにって思ったんだけど! なんか出来がすっごく良くて!」

曜「相手の動きも映像で散々見てたから、次何をしてくるかなんとなく分かって……」


千歌ママ(ほんと、恐ろしい子ね……遅れて来てみたらかなり優位だったんだもの)


曜「あ、千歌ちゃんのお母さん!」

千歌ママ「こんにちはー、おめでとう」

曜「ありがとうございます! 映像たくさん用意してくれたおかげです!」

果南「見ただけでなんとかなるような相手じゃないと思うけどなあ……すごいよ本当に」

千歌「大金星!! みんな曜ちゃんのこと話してるよ!!」

曜「えへへ……良かったあ」//


千歌(そういえば聖良さん……どこ行ったんだろう)


曜(理亞ちゃん……最後……なんか、大丈夫だったかな……様子変だったけど)
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2017/06/25(日) 12:46:41.75ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

ロビー

聖良「……」モグモグ…

千歌「……ん?」

千歌(いや……え?)

千歌(な、なに食べてるの? いやいや嘘だよね)

千歌(――お寿司……?)

聖良「……?」

千歌「こ、こんにちは……」

聖良「ん……理亞が、負けたようですね」

千歌「あ、はい……」

聖良「渡辺曜さん……素晴らしいですね」

千歌「あの、どうして途中でいなくなったんですか? 戻ってきて、なかったよね?」

聖良「ああ……見てたんだ」

聖良「そうですね……なんて言えばいいのか」


聖良「――理亞は……努力していましたよ。私なんかより、きっとどこの誰よりも。理亞を一言で表すならば……努力の粋」


 

聖良「届くはずのない空へと手を伸ばし続けている――蛇です」
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2017/06/25(日) 12:48:07.15ID:nZBBiPFZ
千歌「……」

聖良「そうですね。簡単に言うなら……あれ以上見ていたく、無かった……それだけです」

千歌「え……」


聖良「――妹がやられるって分かってて……。いえ、だったら妹の頑張りを最後まで見ていなければいけないんですけど」


千歌(わかっ、てた?)

聖良「……でも」ウツムキ

 

 
聖良「――理性だけでどうにもならないことも、あるじゃないですか。目を背けたくなることだって、あっても……いいじゃないですか」ギリリ…

 
 

千歌「っっ」

聖良「……私は理亞が必死に頑張って来ていたのを私は知っています。私が一番近くで見ていましたから」


聖良「悲しいですね。"それ"を持っているだけで、人は人を無容赦に傷つける。持たざる者にとって一番――残酷ですよ」


千歌(曜ちゃん……)


聖良「……では、これから試合なので。松浦さんですよね、私も理亞の分まで、頑張ります」
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2017/06/25(日) 12:50:42.14ID:nZBBiPFZ
千歌「あ、そっか果南ちゃんの!」

千歌「あ、ちょっと待って!」

聖良「?」

千歌「あのー……どうしてお寿司を……」

聖良「ああ……栄養補給になかなかいいんですよ」

千歌「そ、そうなの?」

聖良「本当は加熱したりした方がいいんだけど」

聖良「……まあ単純にモチベーションの一種というか、好きだからなんです」

千歌「ほえー……リッチ」

千歌(だからクーラーボックス持ってるの……?)

聖良「ふふ、安物ですよ」


聖良「ただ……やっぱり東京のものはあまり美味しくない、かな」


千歌「流石北海道……」

聖良「よかったら来てくださいね」


聖良「よし……行ってきます」

千歌「うんっ」


千歌(果南ちゃん……がんばって……!)
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2017/06/25(日) 12:51:23.13ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

曜「……」キョロキョロ

コソコソ


「あれ、渡辺曜だよ」

「前回準優勝の……ほら、鹿角の片割れをやったっていう」

「えー、鹿角の妹もかなり強いはずじゃ」

「強いも強い、全日本でも結構な成績残してる化け物だよ」


曜(なんかさっきから見られてる気が……うぅ、お化粧崩れてないかな……)


曜(理亞ちゃんは……)キョロキョロ…

曜「あ……」


理亞「……」ズズズ


曜(メロンミルク……)


理亞「……? なに」

曜「あ、いや……えっと」


曜「なんか、変な感じだったから大丈夫かなって! 余計なお世話かもしれないけど……」
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2017/06/25(日) 12:52:35.28ID:nZBBiPFZ
曜(勝った人が敗者に向ける言葉は……全部ナイフみたいになるって……今までの経験で、わかってるはずなのに)

曜(睨まれて拒絶されて、才能があっていいねなんて、言葉をぶつけられて。そんなこと――今までの経験でわかってるのに)

理亞「そうね、余計なお世話」

曜「ぅ……」

理亞「……」

理亞「座れば」

曜「え、大丈夫?」

理亞「うん」ズズズ…

理亞「……」

曜「……」

理亞「あなた、強いのね」

曜「え……あ、いやたまたまだよ……。たまたま理亞ちゃんのプレーがいいなって思って、いろんな映像見てただけで」


理亞「そう思う機会なんてあった?」

曜「ほら、夏辺りに卓球場で善子ちゃんとやってたでしょ? あれを見て」


理亞「……なるほど。映像見て練習してたらあんな風になったと」

理亞「それだけで……」ボソ…


理亞「……最高に気持ち悪かった、私がしたいプレーをそのままやり返されてる気がして」
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2017/06/25(日) 12:53:53.31ID:nZBBiPFZ
曜「あはは……」

理亞「私に勝ったんだから……少なくとも決勝まで行って……姉さんに勝ってよね」

曜「聖良さんの応援しないの?」


理亞「する、けど……姉さんには負けて欲しいから」

曜「負けて欲しい?」


理亞「本当なら私が姉さんに勝つのが一番良かったんだけど……それも出来ないから」


曜「どういう、こと」

理亞「……」


曜「聞いちゃ、まずかったかな」


理亞「それで気合い入るなら、話す」
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2017/06/25(日) 12:54:32.30ID:nZBBiPFZ
姉さん→姉様で。
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2017/06/25(日) 12:56:13.84ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

果南「くっ……」

果南「はぁぁ……」


4-11

果南「たく……ほんと、強すぎだって」

聖良「……」

果南「まさかここまでなんてね、どうしようかな」


千歌「うぅ、強いな聖良さん……」

鞠莉「果南もフォア同士のラリーなら負けてないと思うんだけど……どうしても、バックが」

ダイヤ「果南さんがバック苦手というよりも……最早日ペンの弱点を突いてきているとしか」

千歌「がんばれ、がんばれっ……果南ちゃん」


聖良(松浦果南さん……日本式ペンのレンジ関係ないオールラウンドドライブ型。そのドライブの回転とスピードの威力は私よりも上かもしれない)

聖良(ただまあ、それが正確なところに入るかと言われたらそうではないし打ち合いになったらバックバンド側に振ればやっぱり対応が遅れている)

聖良(ラリー中のバックハンドの切り返しにはやはり弱点が残っている)

聖良(格下相手ならばオールフォアでのドライブで決してしまうでしょうけど、私はそうは行きませんよ)
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2017/06/25(日) 12:57:14.71ID:nZBBiPFZ
聖良(バックに深いツッツキ……っ、これで松浦さんは)

果南「ふっっ!!!」


スッッギュイッンッッ!!!!

聖良(! バック側も回り込んで逆クロスに必殺のスピードドライブを仕掛けてくる!!)

聖良(でもっ)ブンッスパンッッ

果南「くっっ」

果南(このカウンタードライブはオープンコートに打たれたらまず取れない……まずいなあ)

聖良(そのドライブを打っているんじゃなくて、打たせている間、私は負けません)

果南「はぁ……ほんと、やっかいだな」

果南(サーブも、全然わかんないしな……次はなんだろ)

果南(鞠莉が出すYGサーブ! 回転の精度は似たようなもの、だけど)


キュパッッポ-ンッッ

0-6


果南「ふぅ……」


果南(フェイントの精度が桁違いだ……しかも左利きのYGはほとんど受けたことないしなあ……)
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2017/06/25(日) 12:58:43.10ID:nZBBiPFZ
鞠莉「んん……」

千歌ママ「……」

千歌「強い……」

千歌(夏前に私と打った時はどれだけ手加減を)

善子「……」

千歌「果南ちゃんまだまだいけるからガンバッテー!!!!」

2-11

果南「ふぅ……」

聖良(今の所は問題なし)


聖良(長い手足を生かしたレンジ関係ない超強力な日ペン特有のフォアドライブ、攻撃に繋げるための積極的な台上プレー)


聖良(バックハンドの強烈なプッシュ攻撃に、繋ぎのブロックと……バッグも鍛えては来ている)

聖良(なにより、広大な範囲を動き回る……縦横無尽で強靭なフットワーク)


聖良(一つ一つは素晴らしい……でも)


聖良(――一つの技術が一つで終わっている)


聖良(卓球は一つの技術で勝てるスポーツじゃない、技術と技術の親和性がなによりも大切なこと。松浦さんは、どこかそれを見失っている、のかもしれませんね)

聖良(私には関係ないけど。このまま、倒すだけ)
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2017/06/25(日) 13:00:16.62ID:nZBBiPFZ
果南(全然だめだ……強すぎ)

果南(バックが悪いのかな……)

果南(いやでも……打ち合いになっても負けてる気が)

果南(それもこれもバックへの返球がチラついてるせいでもっとバックに安定感を)

果南(あ、いや違うな……そもそも、もっと満足な体制で打てるように時間を作って)モヤモヤ


鞠莉「んもう!」


鞠莉「――果南!!! なにごちゃごちゃ考えてるのよ!! やりたいようにやればいいでしょ!!」

鞠莉「私たちはこれで最後なんだから!! 悔いなんて残さないで!!」


ダイヤ「ち、ちょっと鞠莉さん……アドバイス扱いになってしまいます」


鞠莉「あ、ごめん……」

ダイヤ「でも……その通りです」

ダイヤ「果南さんはごちゃごちゃ考えるタイプではない、だったらもう、感覚のままやってしまう方がらしいプレーに繋がるかもしれない」

千歌ママ(前に比べて確かにバック系技術はかなり上手くなったけど……時々こういう風に詰まっちゃうことがあったしね)
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2017/06/25(日) 13:01:07.17ID:nZBBiPFZ
果南「そっかあ……」

果南「そうだよね」

果南「何の為にここまで来たんだ」ペシペシ

果南(一度は諦めたことだけど、みんなのおかげで……私は今ここに立ってる)

果南(こんな、こんな何も出来ないまま終わるわけにはいかない)

果南(最後だもん……全力で行こう)

果南「ふぅ……」

聖良「……」

聖良(折れない、か)


果南(鹿角聖良さん、あなたはとっても強いけど……でも、夢、見させて貰うよ)

果南(みんなとずっと、語り合ってきた夢をさ!)キュパッッ

聖良(ナック……いや、上回転っ)ギュインッッ

果南(いいね、打ち合おうよ。負けない、から!!!)ギュインッッ!!!

聖良(はやっ……)ギュインッッ


ギュインッギュインッッッ!!!!!


千歌「すごい……」

鞠莉「バックに振られても……上手く繋ぐし……」

鞠莉「なにより、打ち合いでも全然、負けてない……」
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2017/06/25(日) 13:03:19.22ID:nZBBiPFZ
ダイヤ「いや、むしろ……」

果南「っ……」ググッッバコンッッ!!!!!!

聖良「くっ」ポ-ンッッ…


果南「しゃっ!!!」

聖良「くっ……」

聖良(スポンジに極めて厚くあてることで、ループドライブのような回転量とスピードドライブような速度を極めて高い次元で両立している――パワードライブ)

聖良(今までは当てればなんとかなったけど、あてるだけじゃラケットが弾き飛ばされるような感覚)

聖良「ふぅ……」

聖良(急に技術全体が、繋がった……)

聖良(弱点のバックハンドの繋ぎも、荒々しいけど思いっきり攻められるボールじゃない)

聖良(なにより、フォアが……っ)ギュインッツ

果南(バックサイドが弱点だからって、さ)

聖良(フォアに振った後の、バックへのドライブよ……そこから、追いつける、わけ……)

シュッッ……
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2017/06/25(日) 13:04:33.52ID:nZBBiPFZ
果南「ふっ!!!」バコ-ンッッ!!!!

聖良「なっ……」

聖良(あの体制から回り込んで逆クロスに、スピードドライブ……)

 

果南「――ま、結局私にはこれしかないからさ」


 


ワ-ッッ!!!!!!!

11-7


聖良(全く反応出来なかった……つくづく、面白い人達です。Aqoursのみなさん)


鞠莉「やったー!!!!」

鞠莉「完全にノータッチ! 打ち勝った!!」

千歌「果南ちゃんの決め技!!!」

千歌「……すごい、すごいよ果南ちゃん」


梨子「ひょっとして、ひょっとするんじゃ」

善子「……」


果南「ふー……いける、このまま頭の中空っぽにして……」
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2017/06/25(日) 13:06:18.72ID:nZBBiPFZ
果南「相手のサーブはわからないけど、なんとかコートに入れて、あとはドライブで打ち合うだけ」


果南(打ちにくいボールばかりだけど、なんとかしてみせる……)


鞠莉「果南……がんばって……」


聖良(いいでしょう、付き合いますよ。ドライブの"打ち合い"……私も、大好きですから)

果南(さあ何がくるかな)


聖良(――ただ)キュパッッ


果南(ここに来てロングサーブ!! 貰ったっ!!)バコ-ンッッ!!

聖良「!!」スッ…


果南(!? ――なんだ、あの……フォーム)


善子「来た……」


千歌ママ「!!」


聖良「――ふっぅ!!!!」ギュワンッッッゥ!!!!!.
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2017/06/25(日) 13:08:00.66ID:nZBBiPFZ
果南「!?」

果南(ドライブ、これは……)

ギュルルルルッッポ-ンッッ

果南(真横に、跳ねた……!?)スカッ…

果南(あの軌道で真横に跳ねるなんて……)

果南(そっか、これが噂の)

果南「ごく……」

果南(ちょっと……想像以上すぎる、かな)ダラリ…

 

聖良(――打ち"合い"になるかは、わかりませんけどね)
 


善子「シュートドライブ……」


聖良(沢山動いて動いて……最高の踊りにしましょう?)フフ…
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2017/06/25(日) 13:10:22.15ID:nZBBiPFZ
◇――――◇


理亞「姉様は天才」

理亞「誰が見てもわかると思うけど」

曜「うん……」

理亞「理想的なフォームに繊細なボールタッチ、力強さと荒々しさの中に繊細さが絶妙なレベルで絡み合ってる」


理亞「……小さな頃からそうだった。私は姉様が凄かったから、つられて卓球を始めた」

理亞「姉様は日に日に、どんどん強くなったけれど、私はそうじゃなかった。単なる一般人、初めた時期が早いってだけ」

理亞「嫉妬とかは、しなかった。姉様が凄いのは、私の中じゃ当たり前だったしね」

理亞「でも、練習した。姉様よりも誰よりも。才能なんかで決まるだなんて……嫌だったから、私に才能がないだなんて言ってきた大人達を見返したかったから」


理亞「姉様と比べて才能がないのは、認めるけど」


曜「……」
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2017/06/25(日) 13:11:33.74ID:nZBBiPFZ
理亞「……私も段々強くなった。練習が身を結んだんだって、思った。北海道じゃ無敵の鹿角姉妹だなんて言われて、次第に全国に出ても言われるようになっていった。まあ、結局姉様には勝てなかったけど」

曜「どうして、そんなに勝ちたかったの……お姉さんはやっぱり、特別?」

理亞「姉様に勝つって決めたのは最近なの。姉さんは、負けなくちゃいけなかったから」

曜「?」

理亞「姉様は怪我、してるの……」

曜「それって、肘……?」


理亞「……知ってるのね、利き腕の、左肘よ。姉様が姉さんたる所以のショットを打つために小さい頃から酷使してきたから。あれだけはどう見ても不自然なフォームだしね」


理亞「怪我をしたのは中学三年生の最後の時、そのせいで高校一年間をほとんど棒に振った」


理亞「……でも、まだ治ってないの」


曜「……」
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2017/06/25(日) 13:13:43.33ID:nZBBiPFZ
理亞「姉様は天才で、それでも勝ててしまうから……完全治癒していないのに、卓球を再開したからよ。どうしてかわからない、やめたほうがいいって再三言ってるのに、ぶり返しては治療しを繰り返してる」

理亞「普通のプレーならきっと問題ない、でもシュートドライブだったりチキータだったり肘を酷使する技術を使うと……いつぶり返しだっておかしくない」

曜「……だから、聖良さんを倒す、の」

理亞「一度も負けなかった私に負けたら、少しは自分の状況がわかると思って。私の言葉に――耳を傾けてくれるって、思って」



 

理亞「地に這いつくばってたら――空に声は届かないの」

 

 

理亞「……」


理亞「姉様はこんなところで人生を台無しにしていい人じゃないの! 私は、私は……姉様のために、姉様に勝たなくちゃいけなかったの!!!」

曜「……っ」


理亞「――でも、あんたに負けた」
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2017/06/25(日) 13:15:36.41ID:nZBBiPFZ
 、
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2017/06/25(日) 13:16:20.40ID:nZBBiPFZ
理亞「どうして……わたしは、誰よりも練習したはずなのに。どうして映像だけ見て私をコピーした人に、ちょっと本気でやっただけの人に負ける、どうして、どうしてどうしてっっ!!!」

曜「っ……」

理亞「っ……」フルフル…


理亞「――どうしてあんたなんだ!!」


理亞「なんで、そんなに馬鹿げたモノを……対して欲しくもないあんたが持ってるんだ!!! 私はずっとずっと!! ……なんでそんな才能を持ってて……なんで、なんで!!!」ウル……


理亞「――なんで私は……っ」


理亞「馬鹿、みたいじゃないか……っ」フルフル…

曜「理亞ちゃん……」

曜(私は……)

理亞「あんた……水泳とか、高飛びとかも凄いんでしょ……なんで、なんでそんなに……色んなものを持って、奪う、んだ」

理亞「ぅ……ぅ」グス…

曜(うば、う……)

曜「っ……」


曜(……才能、か)
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2017/06/25(日) 13:18:36.78ID:nZBBiPFZ
理亞「……ごめん。みっともなさすぎた」

曜「ううん……」

曜「理亞ちゃんは、凄いと思うよ」

曜「胸張って努力したっていえること、それだけ一つのことに打ち込めたこと……必死になれたこと……すごいことだよ」

理亞「は……」

理亞「結局負けたら、意味ないって」

曜「その気持ちもわかるけど、でも……きっとそれだけじゃないって思う」

理亞「なにそれ……」

曜「多分……きっと理亞ちゃんだって、感じてたこと、あると思うから、言わない」

理亞「わけわかんない……」

曜「そっか……。ともかく、さ。勝つよ聖良さんに。私が勝つ」

曜「聖良さんにだって、勝ってみせる」


理亞「……無理、とは言わないわ。もう」


理亞「あなたがそう言ってくれるなら、私も少しは救われる。姉様は肘を怪我してるから……痛みが出てきたらチャンスくらいなら、あると思う」
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2017/06/25(日) 13:19:17.24ID:nZBBiPFZ
理亞「もしずっと万全なら、誰も勝てるわけない」

曜「……うん」

曜「理亞ちゃんのプレーを間近で見ることが出来たから私は今ここにいるの! だから、本当に感謝してるよ」

曜「後は理亞ちゃんの分まで……私もがんばる!」

理亞「ええ……」

理亞「……」

理亞「……姉さんと松浦って人の試合、もうとっくの前に始まってるけどいいの」

曜「へ……あ、やばいっ!!!」

理亞「早く行って、ちょっと一人にさせてよ」

曜「……うん」

曜「じゃあ、また!」タッタッタッ

理亞「……はぁ」

理亞「みっともないにも、ほどがある」

理亞「才能がないだなんて……そんな誰でもわかるような、簡単なことで、当たって……」

理亞「でもなんだか……いい気分」

理亞「あの人に負けたのだけが……幸せなことかも」

理亞「ぅ………うぅ……」
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2017/06/25(日) 13:19:48.13ID:nZBBiPFZ
ごめんなさいマジで姉様と姉さん間違ってる所多くて。
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2017/06/25(日) 13:20:38.65ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

曜「ハッ……ハッ……どうなってる!?」

千歌「あ、曜ちゃんどこ行ってたのさ!!!」

曜「ごめん!」

曜「っ……!!」

5-11


曜「セット数は……1-3……」

曜「そっ、か……終わっちゃった、か」


果南「ありがとうございました」ギュ

聖良「ありがとうございました」

果南「強いね、やっぱり」

聖良「いえ、そんなこと」

果南「楽しかったよ」

聖良「私もです」

聖良「あなた達の努力が、伝わってきたみたいでした」

果南「あはは……そう思ってくれたなら嬉しいけど」

聖良「松浦さんは三年生でしたよね」

果南「うん」


ペコリ


聖良「お疲れ様でした。今後の人生であなたが卓球に携わるかはわかりませんが……私としては、辞めないで趣味としてでも続けて欲しいと思います」
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2017/06/25(日) 13:21:42.89ID:nZBBiPFZ
果南「あ、頭下げないでよ」

聖良「すみません、あなたの最後の相手を勤めさせて頂いたので……。今日はありがとうございました」スタスタ…


果南「もう……卑怯なことするよね全く」ウル…

果南「強さに人格まで備わってるとか……隙なしにも程があるって」

果南「あー、負けちゃったなあ……」クル…


千歌「果南ちゃんお疲れ様ー!!!」

鞠莉「かっこよかったわよー!!」

ダイヤ「ナイスプレーでしたわ!!」


ワ-ワ-!!


果南(会場が……こんなに)


果南「はは、まだ4回戦だってば。ただ一般の選手が、第一シード選手に負けただけでしょ」


果南「全く……大袈裟……なん、だから」ウル……ギリリ…


果南(本当……幸せ者だ)
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2017/06/25(日) 13:22:37.03ID:nZBBiPFZ
◇――――◇


善子「おめでと」

曜「ん」

善子「果南さんが負けたからあんまりはしゃげないけど」

曜「あはは……」

善子「私たちだっていつ負けてもおかしくない」

善子「あなたはそれを跳ね飛ばしたけど」

曜「運が良かったね」

善子「運なんかじゃないでしょ」

曜「そうかな」

善子「ええ」

善子「今後何回やったって結果は同じ」

曜「……」

善子「あれがあの人の限界」

善子「そしてあなたはまだ」

曜「……だから、私はそんなんじゃないって」
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2017/06/25(日) 13:23:48.70ID:nZBBiPFZ
善子「そう……」

曜「さっき理亞ちゃんと話してきた」

善子「え?」

善子「最低ね」

曜「やっぱりそう思う?」

善子「当たり前」

曜「でも良かったよ。私は色んな人の想いを砕いて、ここにいる。色んなものを奪ってここにいる。それが改めて認識出来た」

曜「わかってたけどね。高飛びでもそうだし」

善子「……」


曜「――だから勝つよ」


曜「私が砕いた想いは、そうすることでしか、報われないでしょ。飛べない人の分まで、飛べる人が精一杯高く飛ぶんだ」


 

曜「――それがスポーツだから」


  


善子「ええ……その通りね」
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2017/06/25(日) 13:25:50.62ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

千歌「ふー……っ」


 ついに6回戦。


 シードを破ってきたという4回戦の相手は、ほとんど苦労することなく勝利していた。同様に5回戦、1セットは落としたけれど、冷静にプレーしたら勝利はついてきていた。

 確信を、持った。

 私は通用している。十分すぎるほどに。

千歌(ここを勝てば、一日目は終わり……っ)
 
 6回戦も、佳境に差し掛かっている。

 フルセットで迎えた10-6。

 相手はダイヤさんの守備力に、より攻撃的なプレーを加えたようなスタイルだった。

 ここに来てカットマンか……と戦型がガラリと変わることに少し沈んだけれど……思い返して見れば、散々ダイヤさんや志満姉と打ってきたんだ。カットだって苦手じゃない。


 チャンスボールをあげたら撃ち抜かれることも多かったから、フルセットまでもつれちゃったけど。現在の状況はかなり良い。
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2017/06/25(日) 13:27:09.02ID:aa5G2TqV
ヨーソローイケメンやな
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2017/06/25(日) 13:27:33.38ID:nZBBiPFZ
千歌(ラスト……!!!)

 バック前に、短いナックルサーブを出す。

 相手はバック面に貼った粒高でそれを短く処理。強く打てない、手首のスナップを効かせてシートだけで持ち上げる。

 きゅぅっと、ラバーに吸い付いて回転がかかる前に前へ運び出す。

 弧線を描ききらない深く入るドライブを、相手はバック面でカット。

 粒高のカット……私はさっきのドライブであんまり回転は掛けていない。

 粒高ラバーはカットマンと言えども裏ソフトみたいに自分から強烈な回転をかけるのは難しい。

 そう、だから私は深くゆっくりなボールを運び込むようにして送ったんだ。

 それを粒高面でカットさせて、返ってくるのは――。

千歌(回転の弱いチャンスボール!!!!)
 

 ラケットに伝わる衝撃。かこーんっっ、と心地よい音が響いた。

 
 

 それが二日目への船出合図だった。
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2017/06/25(日) 13:34:35.21ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

ホテル


千歌「んー……!」ノビ-


千歌「千歌もこっちで寝ようかなあ」

曜「部屋取ったの勿体無くない?」

千歌「でも一人は寂しいって」

曜「確かに」


千歌「じゃんけんで負けたから文句言えないけどさあ」

千歌「それにしても1人は寂しいー!」バタバタ

曜「変わろうか……?」

千歌「んーん、いい」

千歌「1人部屋だと色々考えられるから」

曜「……」

曜「明日だね」

千歌「うん……」

千歌「まさかなあ……よりによって曜ちゃんと試合しなくちゃいけないだなんて。」


曜「だね」


千歌「同じ大会に出てれば仕方ないけどさ……なんか、凄いよね」

曜「うん……凄い」

曜「……勝つよ」

千歌「私だって……負けない」

千歌「楽しみ」
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2017/06/25(日) 13:36:09.98ID:nZBBiPFZ
曜「私も」ニシシ…

曜「……私さ、果南ちゃんが試合してる時ね……理亞ちゃんと話してたんだ」

千歌「理亞ちゃんと……?」

曜「うん」


◇――――◇


千歌「そんなことが……」


曜「うん……」

曜「だから……私は負けられないよ」

曜「今話したのは、もし私が千歌ちゃんに負けちゃったら……理亞ちゃんの分まで頑張って欲しいから」

千歌(才能……)

 

理亞『――一生地に這いつくばるへビだっている』

 

千歌「理亞ちゃん……」


千歌「そっか、だから聖良さんは」


千歌(……みんな、みんな何かを抱えて)


千歌「……さいっこうの試合にしよ!」


千歌「見てる人たちが、何かを感じて貰えるような!」

曜「もちろん!」
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2017/06/25(日) 13:37:08.55ID:nZBBiPFZ
千歌「よーし……部屋に戻ろうかな!」


シャアアアアアア…

千歌「……ねえねえ、梨子ちゃんシャワー浴びてるでしょ?」

曜「うん」

千歌「ちょっと……覗いてみよ」

曜「え……」

曜「賛成」

千歌「流石」

ソ-…

梨子「ふー……」


梨子「――え、な、なんでふたりとも!?」バサッ


千歌「にしし」

梨子「んもうっ!! 馬鹿!!」バタンッ

曜「あはははっっ」

千歌「よーし怒られるの怖いから戻ろーっ」

千歌「あとはよろしくねっ」

曜「え、あ……」


梨子「曜ちゃんあとで説明してよね!!」

曜「なるほどぉ……」シュン…


千歌「きししっ」
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2017/06/25(日) 13:39:05.62ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

果南「……」

鞠莉「寝た?」

果南「寝てないよ」

鞠莉「疲れたかなあって」

果南「まあ多少疲れたくらいだって」

鞠莉「そっかそっか」

鞠莉「……ね、ダイヤのこと呼んで来ていい?」

果南「え、いいけど……なんで」

◇――――◇


ダイヤ「果南さんの聖良さんとの経験は、みんなにも役に立つと思います」

ダイヤ「知識として入れておいた方がいいのは間違いありませんから」

ダイヤ「あとは、三人を信じましょう」

果南「うん……」

果南「いやあほんと……終わっちゃったね」
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2017/06/25(日) 13:42:19.02ID:nZBBiPFZ
鞠莉「……でも、楽しかったでしょ」

果南「うん……最後はあの人に負けたのは、よかった」

果南「でもやっぱりさ……悔しかった……」ウル…

果南「ああ……ごめん、私ったら」

鞠莉「うん……そう思えるのはすっごく、貴重なこと……果南が本気でやってきた証拠」

鞠莉「静岡の県大会の決勝で負けた時どうだった? 私と顧問の先生1人だけ応援してて、相手はたくさんの部員の応援に押されてた」

ダイヤ「……」

鞠莉「負けた時、果南は泣かなかった。悔しそうでもなかった。やっと解放されたみたいな……」

果南「ぅ……」

鞠莉「でも今回は違った……ね」ギュッ

果南「ぅ……うぅ……」

ダイヤ「お疲れ様……果南さん」ギュッ

ダイヤ「その涙が、あなたの証明よ」
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2017/06/25(日) 13:44:36.18ID:nZBBiPFZ
果南「鞠莉達が、みんなが、あんな風に私のこと……救ってくれた、から」

鞠莉「――だって私はあなたのストーカー、なんでもお見通しなのよ」

果南「もう……迷惑だなあ……はは」

鞠莉「知ってる。でもこれが私の幸せだから」

果南「//」

ダイヤ「……明日は精一杯、応援しましょう。みんなで笑えるように」

果南「うん」

ダイヤ「では、部屋に戻ります」

果南「おやすみ」

ダイヤ「おやすみなさい」バタン


果南「私も……ちょっと歩いてくるね」

鞠莉「おっけー、ベッド暖かくしてるね♡」

果南「ベッド二つあるんだから意味ないでしょ」

鞠莉「明日は応援だけなんだから、一緒のベッドに決まってるでしょ♡」

果南「あーはいはい」
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2017/06/25(日) 13:46:38.75ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

バタンッ


千歌「これで明日の試合は有利になること間違いなしなのだーっ」ニシシ

スタスタ


果南「――ん、千歌」


千歌「あ、どうしたの?」

果南「いや、ちょっと外出てて」

千歌「?」


千歌(目……赤い)

千歌「……大丈夫?」


果南「あ、ああこれ……」


果南「……ちょっとさ。なんていうか……三年生で話してたんだけど」

千歌「……」


果南「なーんか、辛気臭くなっちゃったっていうかさ」
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2017/06/25(日) 13:47:14.31ID:nZBBiPFZ
果南「……まあ、最後だからだけど、ありがとね。千歌が私にまた……夢を見れる場所をくれたから」


千歌「そんな……」


果南「声かけてくれて……嬉しかったよ」

千歌「うん……」

千歌「あの、果南ちゃん……!」


千歌「お疲れ様!!」


千歌「果南ちゃんがね、居てくれたから私達はまとまったんだと思うし……果南ちゃんのプレーかっこいいなって思って……あんな風になりたいとか、モチベーションも上がったし」


千歌「だから、果南ちゃんが頑張ってくれた分まで……ここまで負けちゃったみんなの分まで、わたし、頑張るからっ!!」


千歌「だから……」

ギュッ
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2017/06/25(日) 13:47:49.75ID:nZBBiPFZ
果南「……」ウル…

果南「もう、成長しちゃってさ」ワシャワシャ

千歌「当たり前だよ……」

果南「応援してるから……全力で戦って来なよ。絶対……悔いだけは残らないように」

果南「千歌が言う輝きっていうのを、私たちに見せて」

千歌「うんっ……」

果南「よしっ、早めに寝るんだよ。1人部屋寂しいならこっちくる?」

千歌「ううん、へーきだよ。成長したもん!」

果南「ふふ、そうだったね」


果南「じゃあ、おやすみ。また明日」


千歌「おやすみっ」
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2017/06/25(日) 13:49:11.33ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

善子「あーもう赤ちゃんじゃないんだから私は……もうダイヤさんてば、ほんと過保護ね……」

善子「飲み物くらい開けられるってば」

善子「怪我するといけないからって……プルトップくらいで手なんか切らないわよ」

善子「あんなお姉さんと一緒にいるのは中々大変そうね……」

善子「まあそれだけ期待されてるってことかしら」


スタスタ

善子「ふぁ……水買って寝ましょ」

ピタッ

善子「……え」

聖良「……え」

善子「か、鹿角聖良!」

聖良「津島さん」

聖良「ここのホテルだったんですね、他の皆さんも?」

善子「そ、そうですよ一応」
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2017/06/25(日) 13:50:03.74ID:nZBBiPFZ
聖良「なるほど、偶然が重なりますね」

聖良「あなたと私が明日、準決勝で試合出来るのも……偶然だと思いますか?」

善子「……」

聖良「そんなに警戒しないでください」

聖良「全部あなたが努力してきたから、必然です」

聖良「だから私は楽しみですよ」

善子「そ、そんな余裕なんて見せられないくらい……圧勝してみせる」

善子「会場の空気とか関係ないから」


 

聖良「余裕そうに見えましたか? ――そうでもないんですけど……」

 
 

善子「……」チャリンチャリン…ガタンッ


善子「とにかく、あなたがすっごく強いから私だって頑張ったし……明日、見せつけます、から」
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2017/06/25(日) 13:52:00.06ID:nZBBiPFZ
 、
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2017/06/25(日) 13:52:24.96ID:nZBBiPFZ
聖良「ええ……」

善子「……じゃ」スタスタ

善子(うぅ、なんで鹿角聖良がいるのよぉ。運が悪いというかなんというか)

善子(でも……私はあの人を倒すためにやってきた……今度こそ、リベンジだ……)

善子(早く寝よ……)


聖良「ふぅ……」


聖良(気合い……入れないとね)スタ

ドシンッ

聖良「きゃ……す、すみませ――」

千歌「あ……え!?」


聖良「あはは……」
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2017/06/25(日) 13:54:02.63ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

梨子「渡辺さん。どうして覗こうとしたんですか」

曜「単なる出来心で!」

曜「ほら! 梨子ちゃん着替えの時も時々恥ずかしそうにしてるし……ほら、あ! なんか新しい下着着てるなーって時とか! 今回は赤かあ、なんて……」

梨子「いちいち言わなくていいから//」


曜「だからお風呂覗いたらどんな反応かな! って、ほら! 至極当然というか!!」


梨子「おかしいから……」


曜「なんで隠すの? ほんとスタイルいいのに」

梨子「も、もう……この話はやめる///」


曜「えー?」ニヤニヤ


曜(ふふ、恥ずかしがり屋の梨子ちゃんじゃ渡辺さんには敵わないのだー)


梨子「そろそろ寝よ、時間もいい感じだし……疲れたでしょ?」
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2017/06/25(日) 13:55:04.57ID:nZBBiPFZ
曜「あー……疲れたけどなんか、興奮してた方が多いから」

梨子「興奮……」

曜「試合中はさ、考えるってより感覚でぱーんって感じだから結構興奮してるんだよね」

梨子「へえ……」

梨子「あの試合前とか試合中……人を殺しそうな目してる時も?」


曜「ひ、人を殺しそうって……」


梨子「あれ、相手を睨んでるんじゃないよね……?」

曜「ち、違うよ! 集中すると……」

曜「よく大丈夫? って聞かれる……」


梨子「そういう顔してるもん……」


梨子「明日――千歌ちゃんと、だね」

曜「うん」


曜「なんていうか、神様はいるんだなって……」
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2017/06/25(日) 13:56:12.37ID:nZBBiPFZ
◇――――◇

ホテル 千歌の部屋


千歌「いやー偶然偶然!」

聖良「さっき津島さんにも会ったの」

千歌「そうなんだ、まさか同じだなんてねー」


聖良「私が津島さんに勝つと仮定して、あなたが言ったことの有言実行まで……あと一勝ですね」

千歌「うん……」

聖良「想像を超える努力だったはずです」

聖良「あなたや他の方の成長速度は普通じゃない。驚異的です」

聖良「あなたに聞きたいの。何が……そこまであなたを動かすんですか?」


聖良「――どうして……スクールアイドルを、卓球をしているんですか」


千歌「……」

千歌「どうして、か。どうしてかな」
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2017/06/25(日) 13:57:57.54ID:nZBBiPFZ
千歌「負けて悔しかったから。勝つと楽しいから……これもすっごく重要なんだってことに、気がつきました」

千歌「でも結局は、みんなで何か一つになって……夢中になれたから、ここまで来れたんだと思う。一言で言ったら、楽しいからやってるって言うのかな。あ、でもこれ、楽しいって言うのかな、わかんないけど」


千歌「楽しいにも種類があって……何も考えずにただ遊び同然の楽しいと……心地良いプレッシャーの中で必死に必死に目標に向かってがんばる楽しさ……私は二つ目に支えられてここにいるんだと思う」


聖良「……なるほど」


千歌「必死になってる姿って、かっこいいから! とってもかっこよくて綺麗で……人が頑張ってるところって、素敵だなって、思うんです」
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2017/06/25(日) 13:59:23.60ID:nZBBiPFZ
千歌「私は……とっても恵まれてるんだなって。色んなことに、感謝してるの」

千歌「前に聖良さん、言ってたよね。勝利を手にした人が見せる笑顔が最高なんだって。私もそう思うけど……私はね、必死になって何かをしてきた人が見せる笑顔が最高なんだって思うの。勝ち負けは決まっちゃうけど……そこに差はないって思ってる」

聖良「……勝ちは目的では、ないと」

千歌「そこまでは言わないし、言えないよ」

千歌「勝つことが重要だってのも、わかる」


千歌「私はみんなに見せたいの、私達はこんなに頑張ってきたんだよって。私達が、浦の星女学院の生徒が、ここで精一杯輝いているんだってこと!」
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2017/06/25(日) 14:00:37.68ID:nZBBiPFZ
千歌「きっとそうやって見せた笑顔は……誰かに伝わってくれると思うし。浦の星女学院のこと……どこかで覚えていてくれるかもしれないから!」

聖良「廃校、してしまうんですよね」

千歌「うん」

聖良「悲しくはないの?」

千歌「まあ、悲しいかも。でも、おっきなところで決まったことを私たちがなんとか出来るわけじゃないし」

千歌「だから……私たちなりの、理由かな。みんなに、浦の星女学院のこと……知ってもらいたくて」


聖良「いい目的ですね……尊敬します」


千歌「えへへ、でも実を言うと……自信が欲しいだけなんだ。だから……自分勝手だよ?」


聖良「自分のため、と?」

千歌「それも、おっきいよ」

聖良(自分のため……)
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2017/06/25(日) 14:01:30.39ID:nZBBiPFZ
聖良(負けられないのは、同じね)


千歌「――聖良さんは? 聖良さんは……どうして卓球をしているの?」


聖良「え?」

千歌「スクールアイドルを始めた理由はアライズの影響で、楽しいし、アライズみたいに勝つためでしょ? ……卓球はなんのためにしているの?」

千歌「小さい頃から勝ててれば続けるのが普通なのかな?」

聖良「そう……ですね。ええと」


聖良「――みんなのため、かな」


千歌「?」

聖良「ああ、みんなっていうのは……私を支えてくれたり期待をしてくれている人のためで」

千歌「へえ……すごい!」

千歌「ねえねえ……もっと話聞いてもいい?」

聖良「え、わ、私の?」


千歌「うんっ!!」
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2017/06/25(日) 14:03:48.87ID:nZBBiPFZ
 、
0541名無しで叶える物語(おにぎり)@無断転載は禁止
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2017/06/25(日) 14:04:04.58ID:nZBBiPFZ
◇――――◇


千歌「……あー、なんか色々聞けて楽しかった」

千歌「みんな色々なもの、抱えながらコートに立つんだなって」

聖良「私の話なんか、面白かった?」

千歌「当たり前だよ!」

聖良「そっか……」

千歌「ええと、大声では言えないけど……もし、もし私が聖良ちゃんと対戦することになったら……その時はよろしく!」

聖良「うん」

聖良「ではまた明日。流石にそろそろ眠らないと」

千歌「あ、そうだったね」

千歌「ごめんね付き合わせて!」

聖良「ううん、いい刺激になった」

聖良「おやすみなさい」ペコリ
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2017/06/25(日) 14:08:01.65ID:nZBBiPFZ
また夜か、ど深夜に。

次から聖良vs善子 千歌vs曜に入ります。
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2017/06/25(日) 14:08:33.29ID:E7ttgVXG
おつつ
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2017/06/26(月) 02:47:11.71ID:QDhp+UwH
あの。

このスレの容量が少なくなってきているみたいで>>537くらいで一レスに込められる文字数限界に達しているみたいです。みるみる減少しているので、このままではとてもではありませんがアレなので、次のスレに移転します。


前例があるかはわかりませんが、どうかご了承を。


今は無理なので、朝に次スレ建てて、続きを投下しようと考えています。
0557名無しで叶える物語(家)@無断転載は禁止
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2017/06/26(月) 02:48:47.96ID:KBZU7p0P
>>556
了解!
0559名無しで叶える物語(りんご)@無断転載は禁止
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2017/06/26(月) 03:20:59.72ID:zIsm2aGa
りょ
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