東京の明治神宮外苑の再開発に伴い樹木が大量に伐採される問題が、いよいよ国会にも本格的に“飛び火”し始めた。

 先月28日に亡くなった世界的音楽家の坂本龍一さんは、生前「再開発計画を見直すべきだ」とする手紙を5人に送っていた。そのうちの一人、小池都知事は「事業者の明治神宮にも送られた方がいいのではないか」と冷たく言い放って批判されているが、もう一人の手紙の受取人である永岡文科相も、「世界のサカモト」の“遺言”をスルーし、批判を浴びている。

 5日の衆院文部科学委員会で、立憲民主党の柚木道義議員が、坂本さんの手紙を取り上げながら、「計画の見直し、中断について、大臣は権限を持っている。やってほしい」と求めても、永岡氏は「今のところ考えていない」と切り捨てた。

 さすがにSNSでは〈大臣は坂本龍一の声は黙殺〉〈永岡文科大臣が見直ししないのか?〉と批判が殺到している。

 再開発を巡っては、外苑の名所であるイチョウ並木を「名勝」として指定して保全するよう求める声が強い。東京都が「名勝」指定すれば工事は止まるからだ。文科省は都に対し「名勝」指定するよう求めることができる立場だ。柚木氏が「大臣は権限を持っている」と指摘したのも、そのためだ。しかし、永岡氏は「どのような対応をするかは都で主体的に判断される」と最後まで他人事だった。

 さらに、再開発を進める4事業者のうちの一つは、文科省が所管する「独立行政法人日本スポーツ振興センター」で、こちらも永岡氏には事業の見直しを求める権限がある。

森元首相の案件には手を突っ込めない

 なぜ、永岡氏はここまでかたくなに再開発の見直しを拒否するのか。「外苑の再開発が森元首相の“案件”だからでしょう」と言うのは、ある永田町関係者だ。

「再開発計画を巡っては、森さんの名前が何度も取りざたされていました。2012年、森さんが主導する形で神宮地区にある新国立競技場の建設が決定。それに伴い、翌年には、東京都が神宮地区の建物の高さ制限を15メートルから最大80メートルに緩和した。恩恵にあずかった関係者は大勢いると指摘されています。この案件に手を突っ込めば、岸田政権は突き上げを食らいかねません。岸田首相はとても手を出せないでしょう」

 岸田政権はこのまま「世界のサカモト」のメッセージを無視し続けるつもりなのか。

日刊ゲンダイ
4/6(木) 14:50
https://news.yahoo.co.jp/articles/c9c7242fb72919d13fdd6789eadfb79f9ac72401