自民党の杉田水脈みお総務政務官が、9日の参院倫理選挙特別委員会で答弁を控える場面が、確認できただけで5回もあった。誹謗ひぼう中傷ツイートへの「いいね」問題の裁判で、最高裁へ上告した理由を問われてのことだ。これまでも、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係も含めて答弁を「控える」事例が続く杉田氏。一方で政務官ポストを続投する姿勢は変わらない。(奥野斐)

 杉田氏は性暴力被害を公表したジャーナリスト伊藤詩織さんを中傷するツイッター投稿に「いいね」を押し、東京高裁判決で名誉毀損きそんと認定された。これを不服として今月2日に最高裁に上告。その理由などを9日の同委員会で立憲民主党の石川大我たいが氏に問われ「係争中なのでコメントは控えたい」「裁判に影響を与えるような発言は控えたい」などと繰り返し述べた。
 杉田氏は2018年、月刊誌「新潮45」8月号に同性カップルらを念頭に「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと寄稿。これに対し東京・永田町の自民党本部前では抗議デモが行われたが、杉田氏は当事者らの撤回・謝罪要求をいまだに受け入れていない。こうした背景から、今回の政務官起用には批判の声も上がっていた。
 自身をゲイ(同性愛者)と公表し、19年参院選で当選した石川氏はこの日、「生産性がない当事者の一人」だとして、寄稿の撤回・謝罪の意向を尋ねた。すると杉田氏は「不用意に『生産性』という表現を用いるなど拙い表現で不快に感じたり、傷つけられたりした方がいることは大変重く受け止めている」と反省の色を見せつつ「努力をもって社会に還元して参りたい」と謝罪や撤回には応じなかった。ちなみに「努力」という言葉は石川氏への答弁だけで7回も出てきた。
 石川氏は、杉田氏が同性愛を「一過性のもの」「不幸」などとした主張についてもただした。杉田氏は「配慮を欠いた表現をしたことは率直に反省している」と答え、有識者や当事者らとの交流を通じて悩みなどへの理解を深めたとして「差別のない暮らしやすい社会の実現のために努力してきた。今後も努力したい」と話した。石川氏は、政務官の辞任を求めたが「当初よりLGBTの方々を差別する意図は一切なかった」と強調、答弁を終えた。
 同委員会では、れいわ新選組の天畠てんばた大輔氏も「生産性」発言について撤回・謝罪を求めた。天畠氏は寄稿について「生産性のない者は行政の支援に値しないと断ずる発言に、重度障害の当事者として恐怖を覚えた」とし、当事者らを深く傷つけた認識があるかと質問。杉田氏は石川氏への答弁と同様に「重く受け止める」としつつ、障害者らについて「差別するような表現や言及は一切していない」と強調。再三の撤回・謝罪要求を受けても「障害者にしっかり寄り添っていきたい」などと述べた。

東京新聞
2022年11月9日 14時28分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/212933