月刊「文藝春秋」3月号で明らかになった自民党京都府支部連合会(以下、府連)による“マネロン選挙買収”疑惑。同様の“選挙買収”が今度の参院選(7月10日投開票)でも行われていることがジャーナリスト・赤石晋一郎氏の取材で新たに分かった。

 現在府連の会長をつとめる西田昌司氏が考案したとされるスキームは、国政選挙の前に候補者がまとまった金を用意し、選挙区内の府議・市議に府連を通じて各50万円を配る仕組みだった。金の流れを図式化すると、次のようになる。

【選挙区支部(国会議員)】→【自民党・府連】→【府議・市議】

 府連の元事務局長が作成した《引継書》も、こうした「選挙買収」の実態を生々しく物語っている。

〈活動費は、議員1人につき50万円です。候補者が京都府連に寄附し、それを原資として府連が各議員に交付するのです。本当に回りくどいシステムなのですが、候補者がダイレクトに議員に交付すれば、公職選挙法上は買収と言うことになりますので、京都府連から交付することとし、いわばマネーロンダリングをするのです〉

 そして今回赤石氏と「文藝春秋」特別取材班の取材によって、今年2月と5月にそれぞれ20万円、30万円の計50万円が、府連から自民党所属の地方議員(府議・市議)に配られていたことが分かった。

お金の流れは一目瞭然

 ある地方議員が保有する政治団体の預金通帳には、次のように記されており、お金の流れは一目瞭然である。

〈0402** ジユウミンシユトウキョウト 200000

 04520 ジユウミンシユトウキョウト 300000〉

さらに30万円が振り込まれた5月20日には、府連から府議・市議あてに1枚の文書がFAXで送信されている。表題は〈党勢拡大に向けた活動費の支給について〉。会長である西田氏の名前で送られた文書には次のような文面が並ぶ。

〈さて、4月10日に執行された京都府知事選挙では、わが党が推薦する西脇隆俊候補が勝利を収め、今後は、参議院通常選挙、統一地方選挙等が予定されています。

 そこで、府連においては、平素からの党勢拡大が極めて重要との認識の下、府議会議員、市会議員の皆様に活動費を支給することとしました。

〇 支給額 30万円

〇 支給日 5月20日(金)〉

〈平素からの党勢拡大〉を強調するが、文書の末尾の連絡先には、参院選に出馬している新人候補・𠮷井章氏の事務所の電話番号が記されている。

府連関係者が語る。

「マネロン疑惑で批判が集まったせいか、表向きは『党勢拡大』という目的を強調しています。ただ、はっきりと参議院選挙に言及していますし、その選挙直前に30万を配ると言っているわけですから、当然、地方議員はそれを選挙のためのカネだと捉えています。𠮷井候補の電話番号が記されており、配布した金が選挙用だと自ら打ち明けているようなものです」

候補者を当選させる目的で…

 上脇博之・神戸学院大学教授が問題点を指摘する。

「過去の参議院選挙のケースを見ると、毎年ではなく選挙前のタイミングで金銭配布が行われています。府連が候補者を当選させる目的でお金を渡していることは明らかで、公選法221条の買収罪に該当し、買収の罰則は『3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する』です」

京都府連は取材に対し、次のように答えた。

「京都府連は党の政策広報・党勢拡大のための活動をしています。地域に密着した政治活動を行っている地方議員は、地域の隅々まで諸事情に精通していることから、政策広報等の経費に充ててもらうための交付金を支給しています。また交付金を支給する際には、この交付金の趣旨を明記した文書を交付しています。よって、選挙買収のための資金であるとの貴誌の見解は事実に反します」

 7月8日発売の「文藝春秋」8月号では、京都府連の選挙買収問題を8ページにわたって特集している。参院選における新疑惑に加え、昨年の衆院選における「事後買収疑惑」、西田氏との一問一答などを報じる。

文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/55655