昨年10月の衆院選で初当選した97人の議員の中で、注目の新人がいる。れいわ新選組の大石晃子議員(44)だ。国会議員に月額100万円が支給される文書通信交通滞在費(文通費)の問題を巡り、日本維新の会の吉村洋文副代表(大阪府知事)が強烈な“ブーメラン”を受けるきっかけを作った。大阪府職員時代には、後に維新の創設者にもなる橋下徹府知事(当時)に異を唱え、“大阪のジャンヌ・ダルク”と言われたことも。最近では、ツイッターでトレンド入りし、“維新キラー”の異名まで持つ。どんな思いで政治家になったのか。事務所を訪ねた。

地元は維新旋風の大阪「当選は奇跡」

 「あ、ごめんなさい。名刺いりますよね。(大阪との)二重生活になるので、最低限のものをそろえているところで。まだそんな状況なんです」

 昨年11月下旬の東京・永田町。大石さんは、割り当てられた議員会館の部屋に入ったばかり。あいさつすると、笑顔を交えながら新人議員らしさをのぞかせた。

 その一方で、インタビューが始まると、事務所のスタッフに「こっちからだけでなく、向こうからもいろいろ(取材風景を)撮っといてね」とてきぱきと指示し、「あ、私やかましいですかね」と私(記者)に慌てて言うなど、気さくな人柄も感じさせた。

 地元の大阪では、維新が衆院選で19選挙区中15選挙区の議席を獲得する“維新旋風”が吹き荒れた。大石さんは大阪5区から立候補。公明党、共産党の候補に次ぐ3位にとどまったが、比例近畿ブロックで復活し、初当選を果たした。

 そもそも、議員になるために必要とされる「地盤・看板・かばん」(組織・知名度・資金)を持たない元府職員だった。議員バッジを得ることができた要因をどう思っているのか。

 「奇跡ですよね。本当に。当選の知らせを受けたときは、もう諦めて自宅で寝てましたから」。そう笑いながら話した上で、言葉をつないだ。「選挙区を回っていても(れいわの)山本太郎代表は知っていても、私の知名度は低かったんです。その中で、風を呼び込もうとしても起きないかもしれないけど、それでも呼び込む努力を続けたことだったと思います」

文通費問題で維新の“矛盾”指摘

 注目を集めるきっかけとなった文通費の問題は、大石さんも当選した昨年10月31日投開票の衆院選直後の11月に浮上した。

 月額100万円の文通費は、国会議員に対し、給与の歳費(月額約129万円)などとは別に支給され、議員活動に伴う書類の印刷代や切手代、電話代などに充てられる。しかし、領収書が不要なため、使い道がチェックされていない。

 この文通費は、日割りで支給する仕組みがなく、10月31日に初当選した議員らは在職わずか1日なのに、10月分が丸々支給された。そのことを、維新の新人議員が「国会の常識、世間の非常識」と、投稿サイト「note」で指摘すると、世論の批判が起こった。「身を切る改革」を掲げる維新副代表の吉村大阪府知事もツイッターで「『経済的弱者の救済を!』と声高に叫ぶ政党も、結局、自分達の厚遇に関しては、みんなで仲良く下向いて知らんぷり」と他党を批判した。

 ところが、吉村知事は、2015年10月1日に衆院議員を辞職して大阪市長選に出馬した際、10月は在職1日なのに文通費を満額受け取っていた。その“矛盾”をツイッターで指摘したのが大石さんで、ネット上で「特大ブーメラン」などと反響を呼んだ。

 吉村知事は囲み取材で、「振り返ればきっちり対応すべきだった。やり過ぎてブーメランが刺さりました」と認めて反省した。

 12月21日に閉会した臨時国会では、この文通費に関わる国会議員歳費法について、与野党で「日割り支給」に改めることは一致したが、立憲民主や維新、国民民主の野党3党は、領収書の添付による使途公開なども含めた改正を要求。与党が難色を示したため、法改正は先送りになった。

 大石さん自身は、文通費について「むしろ200万円でも300万円でも認めて、実費精算以外は受け付けないようにしてほしいです」と主張する。自身のツイッターでは「維新が『100万円もったいない』と空騒ぎ。維新を倒すための戦費として私は100万円でも何でも使います」とも記している。

「大石さん」がツイッタートレンド入り

 維新への批判はこれにとどまらない。

2に続く

毎日新聞
2022/1/2 16:00
https://mainichi.jp/articles/20211229/k00/00m/010/019000c