「なぜ君」続編『香川1区』が映し出す衝撃のスクープとは

ドキュメンタリー映画では異例のヒットとなった『なぜ君は総理大臣になれないのか』(通称「なぜ君」)。

大島新監督が衆議院議員の小川淳也氏を17年間追い続けた同作の「スピンオフ」にあたる映画『香川1区』が12月24日より公開されている。

香川1区とは、初代デジタル大臣・平井卓也氏(自民党)と小川淳也氏(立憲民主党)が一騎打ちを繰り広げる全国的に注目の選挙区のこと。

弊サイトでは撮影期間中に大島新監督にインタビューを行っているが(過去記事参照)、香川1区で小川氏が圧勝したことは、周知の事実。つまり、「結果」がわかった状態で観る映画、のはずだった。

ところが、強敵・平井氏に小川氏が勝利するという感動ストーリーかと思いきや(もちろんそれも重要な要素の一つではあるが)、フタを開けてみると、観客がヒヤヒヤするような“隠し球”がいくつも登場する。2時間半超の長編が、あっという間に感じるほどだ。どのように取材していったのか、大島監督にインタビューした。

※以下、ネタバレを含むため、まだご覧になっていない方はご注意ください。

大人対応から、ネガティブキャンペーンに

『香川1区』の主役は、香川1区の「有権者」たちであり、と同時に、裏の主役は小川陣営の熱狂や平井陣営の警戒など、様々な盛り上がりや混乱を巻き起こした『なぜ君』に見える。

「前作と決定的に違っていたのは、取材者であり記録者であった私たち自身も、今回は当事者として、ある意味出演者にもなり、現場の混乱の中に巻き込まれていったことです。

映画の公開をきっかけに小川さんの知名度も上がり、今回はそれがきっかけで小川さんを応援したいと言って、新たに若い方や県外の方なども小川陣営に加わり、すごい熱気だったんですよね。古くから小川さんを応援している方々には『映画のおかげで』と言っていただくことも多く、こそばゆいような気持ちにもなりました(笑)。

でも、逆に、平井陣営のほうに行くと、『映画のせいで』と言われて。

自分の仕事によって、もし世の中が良い方向に変わるのであれば、それは嬉しいことではありますよね。全国を大きく動かしたわけではなくとも、少なくとも香川1区の政治状況に関しては現実に影響を及ぼしたことは間違いないので、自分としてもどう受け止めて良いか、複雑な気分ではありましたね」

そう心境を語る大島新監督。

同作に登場する「小川陣営」と「平井陣営」は、それぞれの持つ色味や温度感の対比があまりに明確で、フィクションに見えるくらいだ。

「まさに色味や服装の風合いなど、映像ではそういう対比が明確に映し出されるんですよね。

特に公示日の出陣式のとき、平井さんの陣営ではバックショットでみんなが『ガンバロー!』とこぶしを上げるカットがあるんですが、自民党の選挙の象徴的な空気のようなものが、数秒のワンカットでわかるんですよね。それに対して、小川さんの陣営は、若い方などが集まって飾りつけをして、カラフルで。

でも逆に、フィクションでこの展開を描いたら、ベタすぎてダメだろうと思うんです(笑)」

大島監督が8月にインタビューを行ったときには、「大人の対応で、余裕も感じた」という平井氏だが、10月に菅政権から岸田政権に代わり、平井氏がデジタル庁の大臣を外れたあたりから対応に変化が現れ始める。

「街頭演説では、最初は『デジタル庁』について自分の功績を語っていたのですが、途中で『立憲共産党でいいのか』という切り口に変化し、最終盤になると、映画(なぜ君)を絡めたネガティブキャンペーンが始まりました。『あれはPR映画だ。あんなことは許されるのか』と」

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FRIDAYデジタル
2021年12月28日
https://friday.kodansha.co.jp/article/221823