東京都では新型コロナウイルスをめぐる今月12日の4回目の緊急事態宣言発令後も感染者数の増加に歯止めがかからない。28日には初めて3千人を超え、2日連続で過去最多を更新した。医療提供体制への影響が懸念される重症者数も増加傾向にあり、同日時点で80人。都は「病床に余裕はある」としているが、国と都で「重症者」の基準が異なり、国の数字では病床は「逼迫(ひっぱく)」に近づいている。

小池百合子知事は28日、報道陣に対し、「ワクチンがなかったこれまでと違い、感染者数だけの問題ではない」と述べ、総合的に状況を判断すべきとした。感染者数そのものは年末年始の感染第3波を上回るものの、都の基準では28日時点の重症者は80人で、重症病床の使用率は20%。第3波ピーク時の64%を大きく下回っている。

だが、厚生労働省の数字は深刻だ。厚労省は直近の重症者数を発表していないが、都によると、同省の基準に基づく重症者数は26日時点で703人。重症病床使用率は58%と逼迫しつつある。同省は集中治療室(ICU)に入る患者すべてを重症者とカウントするのに対し、都は人工呼吸器や人工心肺装置を使う患者のみを数え、ICU管理の患者を一律に重症者とは扱わないためだ。

病床の空き具合などで一時的にICUに入るケースも多く、都の担当者は「厚労省の重症者はいわば机上の数字」とする。とはいえ、中等症を含めた入院患者数は2864人(27日時点)で、病床使用率は48%。厚労省の専門家組織は28日、都内ですでに一般医療への影響が生じており「このままの状況が続けば、通常であれば助かる命も助からない状況になることが強く懸念される」との分析結果をまとめ、危機感を強めた。都は状況次第で病床の上積みも検討するとしている。

感染の急拡大の背景は、感染力の強いインド由来の変異株(デルタ株)が猛威を振るい、街中の人出が抑えきれていないことが挙げられる。このまま増加傾向が続けば東京五輪の継続を危ぶむ声が強まる可能性もあり、都はパラリンピックの「有観客」開催に向け、ワクチンの普及を急ぐ。

ワクチン接種が進む高齢者の感染は確実に減っており、第3波のピークだった1月7日には60代以上の感染者は全体の14%だったのに対し、7月28日は5%まで下がった。

都は8月上旬までに大規模接種センターを16カ所稼働させ、若年層への接種を加速させる方針だ。

産経新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/35b9fd2e2be185aa081e98281a07fd1d4c9a5637