新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、基礎的財政収支の赤字額が拡大していることを踏まえ、菅総理大臣は、経済財政諮問会議で、経済あっての財政という考え方で政策を進めるとともに、夏の「骨太の方針」に向け、財政健全化の具体的な検討を進める考えを示しました。

総理大臣官邸で開かれた経済財政諮問会議には、菅総理大臣のほか、麻生副総理兼財務大臣や西村経済再生担当大臣らが出席し財政健全化について意見が交わされました。

この中で、内閣府は、今年度の基礎的財政収支について新型コロナウイルス対策のための歳出の増加や税収の減少などで、当初見込んでいた8兆4000億円の赤字から、40兆1000億円の赤字になるという見通しを報告しました。

これを踏まえ、菅総理大臣は「この内閣では、経済あっての財政という考え方で、成長志向の政策を進めるとともに、財政健全化の旗を降ろさず、これまでの改革努力を続けていく」と述べ、夏に決定する「骨太の方針」に向け、財政健全化の具体的な検討を進める考えを示しました。

また、会議では、民間議員が、新型コロナウイルスの感染拡大を見越して、この冬のいわゆる「第3波」のピーク時の2倍を想定した病床の確保に取り組むとともに、平時には、医療機関の機能分化や統合を進めるなど構造改革を求める提言を出しました。

健全化 想定より進んでいない要因は

26日の経済財政諮問会議では、財政健全化が想定より進んでいない要因の分析結果が示されました。

政府は、財政健全化の指標である国と地方を合わせた「基礎的財政収支」を2025年度に黒字化する目標を掲げています。

しかし、内閣府の最新の試算では、高めの経済成長が続く想定でも、黒字化の実現は目標より4年遅れて2029年度になるとしています。

内閣府は、財政健全化が進んでいない要因を今年度の財政状況をもとに分析しました。

それによりますと、今年度の基礎的財政収支の赤字額は40兆1000億円となり、現在の目標を立てた2018年の夏の試算の8兆4000億円より大幅に悪化する見通しだとしています。

その内容を詳しく分析したところ、これまでに行った歳出の効率化で、基礎的財政収支を3兆8000億円改善した一方、新型コロナウイルスの影響による歳出の増加で18兆9000億円、税収の減少で10兆6000億円それぞれ悪化したとしています。

さらに、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の米中貿易摩擦で海外経済が減速したことなどによる税収減の影響も残り、6兆円の悪化につながったとしています。

経済財政諮問会議では、この分析結果を前提に財政健全化に向けた議論を本格化させ、ことしの「骨太の方針」に反映させることにしています。

西村経済再生担当相「今は財政のことを気にかけず」

西村経済再生担当大臣は、記者会見で「今は、財政のことを気にかけることなく、まずは必要な新型コロナウイルス対策をしっかり講じていくことが何より大事だ。あらゆる政策を総動員して、事業と雇用、生活を守り抜いていく」と述べました。

その上で、国と地方を合わせた「基礎的財政収支」を2025年度に黒字化する目標について「実現するべく、財政運営を進めているが、今後の道筋については、まさに新型コロナウイルスの感染状況や経済状況を踏まえて、引き続き、『骨太の方針』を目指して、議論を深めていきたい」と述べました。

NHKニュース
2021年4月26日 23時30分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210426/k10012999201000.html