NTTの澤田純社長らから接待を受けた総務省幹部や当時の総務相らが、贈収賄容疑で相次いで刑事告発されている。過去には利害関係者から接待を受けた官僚らが有罪になったこともある。今回の一連の問題が罪に問われるかどうかは、接待の目的や金額が焦点になってきそうだ。(小沢慧一、三宅千智)

「なぜ総務省でズブズブの接待がまかり通っていたのか。検察はしっかりとメスを入れてほしい」
 16日午後、総務相だった高市早苗氏と野田聖子氏らを収賄容疑で、NTTの澤田社長らを贈賄容疑で東京地検特捜部に告発した市民団体「検察庁法改正に反対する会」の岩田薫共同代表は、東京都内で開いた記者会見で語気を強めた。
 告発状は、高市氏が2019、20両年に1回ずつ、澤田社長らと会食し、代金のうち1万円は負担したものの、それぞれ4万円余りの贈与を受けたと指摘。野田氏については、17、18両年にNTTドコモの立川敬二元社長らから、1回2万円の飲食接待を受けるなどしたとしている。
 同会は菅義偉首相の長男正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」の接待問題でも先月、16日に辞職した谷脇康彦前総務審議官など総務省幹部らを贈収賄容疑で告発。同省の調査によれば、谷脇氏はNTTと東北新社から計22万円以上の接待を受けていた。

刑法の収賄罪は、公務員が職務に関連し、賄賂を受け取った場合に成立する。
 1998年の旧大蔵省接待汚職事件では、銀行側からの接待を受けた同省幹部ら4人の有罪が確定。2018年の文部科学省汚職事件では、利害関係のある業者から接待を受けた同省幹部が有罪になった。
 ある省庁の50代の幹部は「何万円もの接待は経験がないが、若いころは業者とよく飲みに行った。利害関係者からの接待は、国家公務員倫理規程で禁じられるようになり、近年は気をつけている。今回のような高額接待が収賄と言われるのは、ある意味仕方ないのかも」と話した。
 だが、法務・検察当局は立件に慎重な姿勢だ。ある検察幹部は「大臣には幅広い権限があり、総務官僚らも通信や放送を担当している。いずれも職務権限はあるのかもしれないが、具体的な要請を受けたわけでなければ、罪に問うのは難しい」と指摘。別の幹部は「ポイントは接待の金額だ。過去の立件例は100万円を超えるものが多く、10万円そこらだと社交儀礼の範囲内だろう」と話す。
 元裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授(刑事法)は、「理論的に贈収賄罪は成立するが、カギとなるのは接待が職務に関する対価と立証できるか否か。現状では金額面からしても立件のハードルは高い」とみる。
 園田寿・甲南大法科大学院教授(刑事法)は「コーヒー代や弁当代の負担ならまだしも、1万円を超える接待は社交儀礼の範囲を超えている。国家公務員の綱紀が緩んでいるのではないか。立件には金額の上積みが必要だという考えもあるのなら、検察はほかにも接待がなかったか捜査を尽くすべきだ」と強調した。

東京新聞
2021年3月17日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/91920