日本のアジア諸国に対する植民地支配を認め、公式に謝罪の意を示した村山談話。その発表から25年を迎えた15日、村山富市元首相(96)が「村山談話に託した想(おも)い」と題したコメントを公表した。日本の侵略戦争を否定する歴史認識は「受け入れられるはずがない」と強調し、村山談話が引き続き世界平和に貢献することを期待した内容だ。

 村山談話は50回目の終戦の日にあたる1995年8月15日、当時の村山内閣が閣議決定した。「植民地支配と侵略によって、アジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」と公式に植民地支配を認め、「痛切な反省の意」と「心からのおわびの気持ち」を表明。その後、安倍内閣を含めた歴代内閣が受け継ぎ、日本政府の公式見解となっている。

 村山氏が15日に出したコメントでは、冒頭で「(村山談話が)世界各国の人々や政府から、高い評価を受け続けているようで、光栄なことだと思います」と言及。当時の経緯について「(敗戦50年の)節目に、けじめをつける意味で、過去の歴史的事実を謙虚に受け止め、平和と民主主義、国際協調を基調とする日本の針路を明確に闡明(せんめい)する必要」があったと振り返った。

 歴代内閣が村山談話を踏襲していることを「当然のこと」としたうえで、先の大戦について「侵略ではないとか、正義の戦争であるとか、植民地解放の戦争だったなどという歴史認識は、全く、受け入れられるはずがないことは、自明の理」と強調した。

 さらに、「日本の多くの良心的な人々の歴史に対する検証や反省の取り組みを『自虐史観』などと攻撃する動きもありますが、それらの考えは全く、間違っています」と指摘。「日本の過去を謙虚に問うことは、日本の名誉につながるのです。逆に、侵略や植民地支配を認めないような姿勢こそ、この国を貶(おとし)めるのでは、ないでしょうか」と呼びかけた。

 最後に「『村山談話』が、今後の日本、アジア、そして世界の和解、平和、発展に貢献してくれることを期待したい」と訴え、「アジアの平和と安定の構築のためには、日中両国の、安定的な政治・経済・文化の交流・発展を築いていかねばなりません。その成就を祈るばかりです」と締めくくった。

朝日新聞
2020年8月15日15時07分
https://www.asahi.com/articles/ASN8H4FXXN8HUTFK003.html