作家の室井佑月氏は、新元号発表による「お祭り騒ぎ」に苦言を呈する。

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 ここんとこ、テレビで一番長く時間を割いて報道しているのは、新元号「令和」について(4月6日現在)。決まる前から大騒ぎしていたもんな。そのことにどんな意味があるの?

 元号が新しくなったからといって、違う明日はやってこない。我々の毎日は変わらない。生活苦にあえぐ人々もそのままだ。血税をジャブジャブ使っている腐敗政治の膿が、洗い流されるわけでもない。

 ここまでお祭り騒ぎをするってどうよ? そんな風にいえば、国民はみな天皇陛下が好きだから、という答えが返ってくる。

 その答えは、半分正解で半分間違いだとあたしは思う。たしかに、国民は陛下が好きだ。しかし、それが馬鹿騒ぎの理由にはならない。

 ならば、テレビは陛下のお話の数々にもっとスポットを当てるべき。

 陛下は、護憲派で、平和を愛し、国から虐げられている沖縄のことも心配されている。どうしてそっちは広めないの?

 安倍さんを熱烈に応援している人々に、「売国奴」「日本人じゃない」といわれるあたしだけど、あたしは日本人だし(個人的にどうでもいいが)この国も天皇陛下のことも好きだ。陛下が皇族だから好きなわけじゃない。陛下のお話しされる内容から窺(うかが)える、お人柄を尊敬している。

 やたらと日の丸を振り回したがる「安倍信者」は、陛下のお話をちゃんと聞いているんだろうか、と不思議になる。

 それからテレビでよく流れるのは、日産前会長のカルロス・ゴーン容疑者のこと。

 ゴーン容疑者が再逮捕されたことで、またお祭り状態になっている。正直、この国の検察の動きに、おかしいと思うところはある。公平なのかと。だけど、テレビでやっているのは、そういうことではない。

 カリスマ経営者だったゴーン容疑者の転落劇を、おもしろおかしく報じているだけ。てか、彼をカリスマと持ち上げたのもマスコミじゃん。

この問題を長々と流されても、それほど興味を抱けないでいる(電気自動車の世界展開はどうなるのかなど、そっちは興味あるけど)。

 ゴーン容疑者は日産のCOO就任(1999年)直後にも2万人超をリストラし、社長だった2009年からは、国内工場などで働く約8000人に上る非正規労働者と約4000人の正規労働者の大量のクビ切り策を強行した人。そして、日産はそのことで儲けた会社。

 日産vs.ゴーン容疑者、なんかどっちの味方にもなりきれない。もう喧嘩の流れをさくっと教えてくれるのでかまわないんだけどな。

 ピエール瀧被告のこともさ。ヘリコプターまで飛ばして、よくやるよ。

 彼らは我々になにを提示したいのか? バカな国民にはこれで十分と思われてる? 彼らのせいでうちらがバカになってきた? ま、軽薄なうちらがそういう扱いを受けてしまうのは、仕方ない部分もあっけど。

※週刊朝日  2019年4月26日号
2019/4/18 07:00
https://dot.asahi.com/wa/2019041700012.html