◆駐日ロシア大使・ガルージン氏に聞く 「4島のロシア主権認めることが大事」

 先の日ロ外相会談では、両国の考えの違いが際立った。首脳会談を前に、ガルージン駐日ロシア大使に、ロシア側の立場を聞いた。 (大杉はるか)

 −ラブロフ外相は会談で、第二次世界大戦の結果を認めるよう求めた。

 「南クリール諸島(北方四島)に対するロシアの主権を認めていただければとの立場だ。大戦の結果を認めることが、交渉をさらに進める上で大事だ。ロシアにとって大戦は、二千七百万人の命を犠牲にして達せられたナチスドイツと同盟国に対する勝利だ。そのなかで四島がロシア領土となった」

 −日本の立場と異なる。

 「歴史的に日本国民が島々に関わっていることは尊重し、ビザなし交流や四島水域での漁業操業を認めている。相互主義として、われわれの感情を尊重してほしい」

 −大戦の結果を認めれば平和条約締結は可能か。

 「結べると考える。だが安全保障上の利害関係を調整しなければならない。日本自体は脅威とみていないが、在日米軍はロシアに友好的な存在ではない。日本の(陸上配備型迎撃システム)『イージス・アショア』配備も米国のミサイル防衛システムの一環で、ロシアと中国の戦略兵器を狙うシステムなのは明確だ」

 −交渉の基礎とする日ソ共同宣言では、平和条約締結後に歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島を引き渡すとある。

 「どういう条件や形で引き渡すか明記されていない。将来、一つのテーマとなるのではないか。ロシア側は日本が大戦の結果を認め、平和条約を無条件で調印し、その後について話を進めるとの趣旨を説明し、日本の回答を待っている」

 −日本は四島の帰属問題を解決して条約締結との立場だ。

 「菅義偉(すがよしひで)官房長官は(会見で)『日本の立場は変わっていない』と言ったが、最近の発言に『四島』との言及はない」

 −安倍首相は年初に「北方領土のロシア住民は日本に帰属が変わることを理解して」と話した。

 「日本政府はわれわれに圧力をかけ、交渉の結果を前もって決め付ける試みと受け止めた」

<ミハイル・ガルージン> 駐日ロシア大使。モスクワ出身。58歳。2001〜08年駐日公使、12〜17年駐インドネシア大使。18年から現職。

東京新聞
2019年1月21日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201901/CK2019012102000118.html