首相の安倍晋三は最近、官房長官の菅義偉とこんな相談を始めた。

 「将来的に負担が増えそうなものを変え、財政健全化の道筋をつくる。政治主導でやろう」。そしてこう付け加えた。「経済成長なくして財政健全化はない」

 政権復帰から5年半。消費増税を2度見送り、看板政策アベノミクスで大盤振る舞いを続ける安倍にとって、財政規律は大きな弱点だ。「次の3年」は、歳出削減に手をつける。一方で成長は掲げ続ける。先送りしたツケを自分の手で払い、長期政権の「実績」としていかに残すか。視線はすでに、9月の自民党総裁選「3選後」の政権運営に向いている。

 わずか4カ月前は、行き詰まっていた。国会を揺るがした森友・加計問題は公文書改ざんという前代未聞の不祥事に発展。朝日新聞の世論調査で、内閣支持率は31%まで下落し、元首相の小泉純一郎が3選は「難しいだろう」と公言した。

 それが今や永田町では、政調会長の岸田文雄が不出馬と安倍支持を表明するなど3選の動きが加速する。6月の新潟知事選での与党系候補の勝利と日朝首脳会談に意欲を示す発信を境に、流れが変わった。

 安倍は「政治はモメンタム(勢い)だ」と語る。経済と外交で期待を振りまき、選挙での勝利を最大限、政治的パワーとして生かす。この政治手法は、離合集散を繰り返した野党の自滅と非力さも手伝い、不祥事や政権へのダメージを覆い隠した。5年半は、その繰り返しといえる。

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 いま政権内では、アベノミクス…

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朝日新聞
2018年7月26日07時42分
https://www.asahi.com/articles/ASL7S53XRL7SUTFK01F.html