https://news.yahoo.co.jp/byline/komazakihiroki/20171124-00078501/

 報道によると11月22日、無所属の女性議員(緒方夕佳さん)が、生後7ヶ月の赤ちゃんを連れて市議会議場に入ったところ、他の議員から退席を求める声があがり、押し問答になる等、一時混乱したという事件がありました。
 【報ステ】“赤ちゃん連れて出席”熊本市議会が紛糾
 http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000115139.html
 最終的に女性議員は赤ちゃんを友人に預け、議会は40分ほど遅れて開会。
 開会の挨拶の際に議長が議事進行の遅れをお詫びすると、他の男性議員から「お詫びする人間が違う!」というヤジが飛んだそうです。

【社会の反応】

 この事件に対して、SNS上では以下のような反応がありました。
 ロンブーの田村淳さんが取ったネット上のアンケートでは、11月24日現在、反対が圧倒的に多い状況でした。
 これに対して反論して行きたいと思います。

【『「訴え方」がおかしい』論のおかしさ】

(略)

【「パフォーマンスだから悪い」論の悪さ】

(略)

【「赤ちゃんのストレス」になる、は本当か?】

(略)

【そもそもおかしいのは何か?】

 反対している皆さんも、そしてマスメディアでも、緒方議員にフォーカスして批判をされているようですが、ちょっと待ってください。
 熊本市議会の規則においては、「議員以外は傍聴人とみなす」とし「傍聴人はいかなる事由があっても議場に入ることができない」ということなんです。
 そもそもこのルールがおかしくないですか?
 じゃあ、例えば脳性麻痺の障害者が当選した際には介助者が常時必要になりますが、介助者は議場に入ってはいけないんでしょうか?
 医療的ケアの必要な方は、時に看護師が必要になりますが、看護師は議場に入れないんでしょうか?
 そして子どもの預け先がなかった父親、母親は、たとえ選挙によって選ばれた市民代表だったとしても、子連れだと議場に足を踏み入れてはいけないんでしょうか?
 おかしいですよね。
 つまり、介護を必要としたり、障害者だったり、子育て中の父母というマイノリティについては、あらかじめ排除されている規定なのだ、ということです。
 この「無意識の排除」機構こそが、問題なのです。
 そしてそれが行政の中心たる市議会において、しかと埋め込まれている。
 それを誰もが問題と思わず、さらには「ルールなんだから守れよ」と抑圧に加担してしまう。この構造こそが問題であり、そしてそれは、熊本市だけでなく、この日本社会のありとあらゆる場所において見られる構造なのです。
 子育てしづらいな、社会から受け入れられていないな、という子育て経験者が抱く気持ち。
 それは、この「無意識の排除」が仕組み化され、さらにそれが人々の意識を不公正に規定し、さらに仕組みが強化され、という負のフィードバックループが働いているからです。

【まとめ】

 1人の女性市議の勇気ある訴えに対し、「ルールを守れ」「パフォーマンスやめろ」「赤ちゃんが可哀想」と抑圧するのではなく、耳を傾けてはどうでしょうか。
 そして、何が子どもと子育てしている人たちを排除し、追い詰めているのか。そこに思いを寄せてみませんか。
 車椅子の人がバスに乗れなかった時代があったように、そしてその時代を我々が乗り越えられたように。
 この子育てしづらい時代を、我々は異議申し立てを繰り返しながら、乗り越えられるはずなのです。