東京都議会議員選挙は、「都民ファーストの会(以下、都ファ)」が第1党となり、選挙協力した公明党などを合わせると小池百合子都知事の支持勢力は過半数に達しました。
一方、自民党は加計学園問題の対応や「共謀罪」法の強行採決、さらには相次ぐ閣僚の問題発言や政権幹部の疑惑などが影響して過去最低の23議席と惨敗しました。

 敗因は言うまでもなく与党にあります。通常国会がまるで切断されたかのように幕が下りたことで、国政の問題が都議選で問われました。
本来であれば都議選であってもローカル選挙なのに、都民にとって具体的なローカルガバメントは見えにくいままで、
注視されたのは既存の議会での不透明な部分を可視化するという小池氏のプロセスでした。
このことが「東京大改革」と謳った小池氏への期待が都ファを第1党へと押し上げたのです。
ところが小池氏は、二元代表制などへの懸念を理由に都ファの代表を7月3日付で辞任しました。国政復帰については否定していますが、
将来国政のスプリングボードになるという考えで反自民、反安倍政権の糾合勢力になることもあり得ます。そうなれば自民党の中で“化学反応”が起きる可能性はあります。

 都ファの圧勝は「安倍一強」に大打撃を与えました。安倍一強が揺らぎはじめた今、内閣改造、憲法改正なども見直しを迫られそうです。
G20など華々しい外交活動がありますが、下がり続けている内閣支持率の巻き返しは厳しいでしょう。
 都民の待機児童問題や少子高齢化、大震災などといった切実なテーマについては不透明なままです。オリンピック以後の世界が見えないことに不安感を持つ都民に対し、
都政は何も示していません。政党のアジェンダセッティングと、都民が抱えている問題のレベルがすれ違っているようです。

 一連の不祥事で内閣を追い込むために都議選が重要だという問題設定では、これまでと同じ過ちを繰り返すだけです。
都民のインフラの明確なビジョンを出さないといけないのに、まるで空中戦をしているかのような今回の選挙は、相も変わらず「都民不在」でした。

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