かのん「大好きが溢れるボタン……?」
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かのん「……」
かのん(朝、学校に来てみたら下駄箱に怪しいボタン……スイッチ?が入っていた)
かのん「何だろう、これ。何のボタン……?」
かのん「ていうか何で私の下駄箱に入ってるの……?」 かのん「私に対する新手の嫌がらせ……じゃないよね。意味がわからないし」
かのん「……入れっぱなしにしておくわけにもいかないけど、触っても大丈夫だよね?」
かのん「んしょ……と。間違っても押さないように……」
かのん「見た感じは普通のボタン、だね。テレビのクイズ番組とかでよく見る、押すと音が鳴るやつみたいな」
かのん「でも、それだったら余計に私の下駄箱に入ってた意味が……」ヒラッ
かのん「ん……メモ書き?えぇと、なになに……?」ガサガサ 『澁谷かのん様へ』
『はじめまして、かのんさん。突然のお手紙でごめんなさい』
『先日のライブを見ました。とても素敵で、ドキドキするくらい素敵でした』
『本当は直接会って感想を伝えたかったのですが、私は他校の生徒なのでそれができません』
『なのでこうして、お手紙で気持ちを伝えさせてもらいました』
『一緒に入っているボタンは、私からのささやかなプレゼントです』
『いつもがんばっているかのんさんにと、私の仲間の言葉をヒントに作りました』
『その"大好きが溢れるボタン"をぜひお役立てください』
『これからの活躍をお祈りしています R.T』 かのん「……うぅん」
かのん「えーと、つまりこれは他校のファンの人からの贈り物で」
かのん「大好きが溢れるボタンっていう、よくわかんない発明品ってこと……?」
かのん「お役立てください、って言われてもこれを押すと何がどうなるのか全くわからないし……」
かのん「かと言ってファンの人からの好意を無下にするわけにも……」
キーンコーンカーンコーン
かのん「……うえっ!?もうそんな時間!?ヤバいヤバい……!」
かのん「と、とりあえずこれはまとめてカバンに入れて……!」ゴソゴソ
かのん「急げーっ!」ダダダ ―昼休み―
かのん「はぁー……。疲れたー……」グデー
かのん「さて、と。それじゃお昼……の前に」
かのん「……このボタンをどうするか考えなきゃ」
かのん「さすがにこんな得体の知れないものをみんなに相談するわけにもいかないから」
かのん「とりあえず1人で部室に来てみたけど……」 かのん(あのあと見つけたボタンの説明書によると)
かのん(どうやらこの大好きが溢れるボタンは、名前の通り押すと大好きが溢れてくるボタン、らしい)
かのん(それも押した本人じゃなくて、対象にしたい人を思い浮かべて押すことでその人の大好きが溢れてくる……)
かのん(ただし、溢れてくるのはボタンを押した瞬間、対象の人が1番強く思っていた大好きに限られるとのこと)
かのん(あの人が好き、あの食べ物が好き、あの動物が好きみたいな、好きの種類は考慮されない……)
かのん(それとどれだけ自分を思い浮かべて押しても、自分に向けては使えない、か)
かのん「……よくわからないけど、仮に食事中の私に使えたらハンバーグ愛が溢れてきたりするのかな」 かのん「いやー……。貰ったはいいものの、どうしようかなぁ……」
かのん「微妙に使い道に困るけど、押してみたくはあるし……」
かのん「というか、まず本当に効果があるのかわからないし、イタズラの可能性も……」
かのん「もし効果があるなら、知らない人に使うわけにもいかないよねぇ……」
かのん「……うん。せっかく私のために作ってくれたんだから使わないわけにはいかないよね」
かのん「よーし、そうとなったら誰か部の人は……」 ガチャ
すみれ「あら、かのん?」
かのん「あ、すみれちゃん」
すみれ「1人で何してるのよ、こんなところで」
かのん「こんなところって、部室なんだけど」
すみれ「まだ放課後じゃないし、誰かとお昼食べてるわけでもないならこんなところよ」
かのん「そうかな?」
すみれ「そうよ」 かのん「そういうすみれちゃんは、どうして部室に?」
すみれ「昨日忘れ物しちゃったのよ。使わなかったタオルなんだけど、あんた見てない?」
かのん「見てないかなぁ」
すみれ「なら仕方ないわね。どこいったかしら……」
かのん(……あれ?これ、ひょっとしてチャンスなのでは?)
かのん(今こうして楽しくお喋りしてるけど、作った人を信じるならここでボタンを押したら効果が表れるはず)
かのん(もし、これが本当だったとしたら、すみれちゃんからはどんな好きが出てくるのかな……)
かのん(……まぁ、すみれちゃんだし、いっか。押しちゃえ)ポチッ すみれ「……メロン」ボソリ
かのん「えっ?」
すみれ「メロンが食べたいなぁ、って。最近食べてないのよ」
かのん「そ、そうなんだ」
すみれ「あんたも知ってるでしょ、私がメロンが好きだって」
かのん「それはまぁ……」
すみれ「メロンを使ったスイーツだとか、カットメロンは普通に売ってるし、食べるのよ」
すみれ「だけど、それだとやっぱり違うっていうか、メロンは一玉を切って食べるのも醍醐味っていうか」
すみれ「かのんはメロン、好きだったかしら?」 かのん「どちらかと言えば好きな方だとは思うけど……」
すみれ「なら、今度私のおすすめをいくつか教えてあげる。メロンをもっと好きになってもらえるんじゃないかしら」
かのん「う、うん。ありがとう」
すみれ「……なんて、メロンの話をしてたらメロンの口になっちゃったわ。今日は何か買って帰りましょ」
すみれ「っと、やっと見つけたわ、私のタオル。それじゃかのん、邪魔したわね」
かのん「あ、う、うん。またあとでね」
バタン
かのん「……ふぅー」 かのん「本物だ……。これ、本物だ、すごい……」
かのん「あんなにメロンに饒舌なすみれちゃん、初めて見た……」
かのん「最初は私とのお喋りのひとつかと思ったけど、まさかあんなに語るとは思わなかったな……」
かのん「ということは、あの時点ですみれちゃんの頭の中はメロンのことでいっぱいだったってことかぁ」
かのん「……目の前に私がいたのに、メロンに負けたのはちょっとだけ悔しい」
かのん「いやまぁ、ここで私のマシンガントーク始められても困るは困るんだけども」
かのん「それよりも、これが本物ってわかったんだしもうちょっと試してみたいなぁ」
かのん「すみれちゃんは今使ったから、あとは恋ちゃん、可可ちゃん、ちぃちゃん……」
かのん「恋ちゃんは生徒会、ちぃちゃんも何か用事で出て行って……」
かのん「可可ちゃんは……もしかしてあそこかな?ちょっと行ってみよっと」 かのん「えっと、確かこの辺りに……」
可可「スヤァ……」
かのん「あ、いたいた」
かのん(可可ちゃん、最近は天気がいいと昼休みによくここでお昼寝してるんだよね)
かのん(午前の授業で使った体力をここで回復しないと練習で持たないとか言ってたっけ)
かのん「……でも、寝てる人に向けて使ったところで効果あるのかなぁ」
かのん「何より気持ちよさそうに寝てるところを邪魔するのも……」
可可「スピー……」
かのん「……やっぱ気になる。ごめん、可可ちゃんっ」ポチッ 可可「ん……んー……」
可可「ふあー……。あぇ、かのん……?」
かのん「お、おはよう」
可可「おはようございマス……。可可、寝てたハズでは……」
かのん「よく寝てたようには見えたけど……起こしちゃったみたいで、ごめんね」
可可「大丈夫デス、今日はこれでバッチリ元気になりまシタ」
可可「ここで休んでおかないと放課後の練習で地獄を見ることになるデス……」
かのん「あはは……」 可可「……まぁそうは言ってみるものの、練習がキライというわけではないんデスよね」
かのん「そうなの?」
可可「もちろんデス。可可はスクールアイドルが大好きなので」
可可「千砂都のメニューはシャレじゃなく大変で、今の可可にはついていくだけでも一苦労で……」
可可「だけど、それは全部スクールアイドルとして輝くためデスから」
可可「そのためなら、千砂都の鬼のシゴキにも耐えてみせマス!」
かのん「可可ちゃん、そんなこと思ってたんだ……」 可可「……い、今のはどうか、どうか内緒に」
かのん「ふふっ。わかった、私と可可ちゃんだけの秘密ね」
可可「あ、ありがとうございマス。命拾いしまシタ……」
可可「やっぱりかのんは優しいデス、かのん様様デス」
かのん「もう、可可ちゃんってば」
可可「さて、それでは可可はそろそろ行くデス」
可可「午後の授業を乗り越えて、放課後の練習が可可を待ってマス」
可可「ではかのん、またあとで」
かのん「またねー」 かのん「……いやー、寝てる人にもちゃんと効くんだなぁ、これ」
かのん「まさか寝起きの直後からあんなにスクールアイドル愛が飛びだすなんて……」
かのん「だけど、それだけスクールアイドルのことが大好きなんだね、可可ちゃんは」
かのん「……私も負けてられないなぁ。がんばらないと」
かのん「まぁそれはそれとして、これで2人目。すみれちゃんと、可可ちゃん」
かのん「生徒会でお仕事中の恋ちゃんに使うわけにはいかないから、あとは……」
ピロリロリン♪
かのん「あれ……?メッセージ、ちぃちゃんから……?」 千砂都「あ、かのんちゃーん!」
かのん「お待たせ、ちぃちゃん。遅くなっちゃった?」
千砂都「ううん、いいのいいの。私も急に誘っちゃったんだし」
かのん「でも、ちょっとびっくりしたなぁ。てっきりどこかでもう食べてるんじゃないかと思ってたから」
千砂都「私も誘ってみたけど、さすがにもう食べ終わってるよねってダメもとではあったかな」
かのん「それじゃ、お昼にしよっか」
千砂都「いただきまーす」 かのん「そういえばちぃちゃん、昼休み早々に出て行ったけど、どこ行ってたの?」
千砂都「音楽科の友達にちょっとね。課題で曲を作ったんだけど、どうかなって」
千砂都「私がスクールアイドルをやってるから、感想が欲しかったみたい」
かのん「そっかぁ」
千砂都「かのんちゃんの方こそ、お昼も食べないで何やってたの?」
かのん「私?私はちょっとボタ……」
千砂都「ボタ?」
かのん「あ、ううん。何でもないよ何でも」
かのん「教室を出てぶらぶらして、すみれちゃんや可可ちゃんとお喋りしてたらお昼忘れちゃってただけ」 千砂都「ふーん?」
かのん(……あ、危ない危ない。うっかり口を滑らせるところだった)
かのん(いや滑らせたところでまさかこんなの信じる人がいるとは思わないけどさぁ……)
かのん(ただちぃちゃんのことだし、私が言ってるからってまるっと全部信じちゃいそう……)
千砂都「?」
かのん(……まぁそれより、せっかくちぃちゃんと2人になれたことだし)
かのん(このボタン、押さない手はないよね)
かのん(ちぃちゃんの好きなもの……いくつか候補はあるけど、たぶんまるのことだよね……?)
かのん(今ここでまるへの好きを炸裂させられた場合、大変な目にあうのは私になるんだろうけど……)
かのん(……考えてても仕方ないし、押してしまおう。せーのっ)ポチッ 千砂都「……あ、あの、かのんちゃん?」
かのん「うん?」
千砂都「箸が止まってるけど、どうかしたの?」
かのん「え?あ、う、ううん。何でもないよ」
千砂都「早く食べないとお昼休み終わっちゃうよ」
かのん(あ、あれ?全然効いてないみたいだけど、何で?)
かのん(私の方がミスしちゃったのかな……?もう1度、ちぃちゃんを強く思い浮かべて……)ムムム
かのん(これで、どうかな……?)ポチッ 千砂都「あ、そうそう。今日の練習だけどね……」
かのん「うえっ!?れ、練習?練習が、どうしたのっ?」
千砂都「いや、今日の練習についてだけど、恋ちゃんとすみれちゃんが出られなくなっちゃったみたいで」
かのん「生徒会と、お家の手伝いか何かかな……?」
千砂都「だから、今日の練習はお休みにしようと思って」
かのん「そ、そうだね。それでいいんじゃないかなぁ」
千砂都「じゃ、みんなにメッセージで回しておくね」
かのん(えぇー……?どうしてちぃちゃんには効かないの?)
かのん(これでもかというくらいにちぃちゃんのこと、考えてるんだけど……何でだろう、壊れちゃった?) 千砂都「ごちそうさまっ。それじゃあ、私は先に行くね」
かのん「……えっ?あ、あれ、ちぃちゃん、もう終わったの?」
千砂都「私が早いっていうより、かのんちゃんがぼんやりしてただけなんじゃない?」
かのん「うっ……」
千砂都「もうあんまり時間ないけど、慌ててかきこんだりしたらダメだからね」
千砂都「よしっ。かのんちゃん、お先にー」
かのん「わーっ!ちょ、ちょっと、ちょっと待ってーっ!」 ―放課後―
かのん「はー……。今日も終わったぁ……」
千砂都「お疲れさま、かのんちゃん」
かのん「数字と記号が頭の中で飛び回ってるよ……」
千砂都「まぁわからなくもない、かなぁ」
かのん(……あれから授業の合間に何回か押してみたけど)
かのん(ちぃちゃんに何か変わったような様子はないみたい……) かのんちゃんへの大好きが溢れすぎてとんでもない目標立ててそう かのん(このボタン、すみれちゃんと可可ちゃんには効いていた。それは間違いない)
かのん(だけど、ちぃちゃんには何の効果も出なかった。念のためもう1回……)ポチッ
かのん(……やっぱり何も変わらない。どうしてなんだろう)
かのん(私の思い浮かべが足りなかった?いやでも、あの2人のときは軽く思い浮かべるだけでよかったのに)
かのん(やっぱり壊れちゃったのかなぁ。せっかく貰ったのに……)
かのん(直してもらおうにもこの人がどこの誰なのかは全くわからないし……)
かのん(……仕方ない。ちぃちゃんに使うのは諦めよう)
かのん(まぁ、延々とまるの話を聞かされずにすんだのはよかったのかもしれないけど)
千砂都「か、かのんちゃん?どうしたの、私のことじーっと見て」
かのん「ううん、何でも。練習お休みにしちゃったし、帰ろっか」 千砂都「……今日はどこか寄り道していったりする?」
かのん「うーん。今日はまっすぐ帰ろうかな」
千砂都「そっか……。えと、それじゃあ……」
かのん「ちぃちゃん?」
千砂都「……あ、あの、ね。かのんちゃんち、遊びに行ってもいい……?」
かのん「遊びにって……今日、これから?」
千砂都「うん……。特に何かしようってわけじゃないんだけど」
千砂都「ただ、一緒に……かのんちゃんとお話したいなって……」 かのん「私も今日は帰ってもやることないし……じゃあ、うち来る?」
千砂都「い、行くっ!」
かのん「……全然いいんだけど、まさかちぃちゃんがそんなに私とお喋りしたいと思ってたなんてね」
千砂都「そ、それは……」
かのん「えへへ。ちぃちゃんってば、可愛いんだから」
千砂都「や、かのんちゃんっ……」
かのん「ほら、行こう、ちぃちゃんっ」 かのん「ただいまー、っと」
千砂都「お、おじゃまします……」
かのん「どうしたの、ちぃちゃん。そんな初めて私の部屋に遊びに来たみたいな」
千砂都「え、えと……さ、最近遊びには来てなかったから、ちょっと緊張しちゃって」
かのん「そんなに来てなかったっけ?」
千砂都「お店の方には行くけど、かのんちゃんの部屋の方は……」
かのん「だとしても、今更緊張するような間柄じゃないのに」
千砂都「そう、だね……」
かのん「今お菓子とコーヒー持ってくるから、ちょっと待っててね」
パタン
千砂都「……」
千砂都「……かのんちゃん」 かのん「んーっと、コーヒーは入ったけど、何かお菓子は……」ゴソゴソ
かのん(……ちぃちゃん、いつもと様子が違うみたいだけど、どうしたんだろう)
かのん(学校で話してたときから、帰り道もずっとそわそわもじもじしてる感じで……)
かのん(うちに来てからも落ち着かないみたいで、緊張しちゃってるって言ってたし……)
かのん(ひょっとしてあのボタンが効いてきたのかと思ったけど、特にまるが溢れてきてるわけでもない……)
かのん(すみれちゃんと可可ちゃんのときは好きが一気にどばーっと出てたから、違うよね)
かのん(じゃあ何だろう。悩み事かなぁ……?)
かのん(無理に聞き出すわけにもいかないし、少し様子を見ようかな)
かのん「お菓子はこれでいいかな。よし、戻ろっと」 かのん「ちぃちゃん、お待たせー……?」
千砂都「……あっ。かのん、ちゃん……」
かのん「……どうしたの、ちぃちゃん。私の練習着なんか広げて」
千砂都「あ、あああああの、これはっ……!」
かのん「いやまぁ、投げっ放しにしたのは私ではあるんだけど、まじまじ見られるとちょっと恥ずかしいかな……」
千砂都「え、えと、その……」
かのん「……あ。さては私がいない間に何かイタズラみたいなことでもしたりした?」
千砂都「違っ……」
かのん「何も怒ったりはしないからさ、本当のこと……」
千砂都「……かのんちゃんっ!!」 ボスン
かのん「……え?」
かのん(あ、あれ?私、ちぃちゃんに押し倒されてっ……!)
かのん「ちょちょちょ、ちぃちゃんっ!?な、何っ!?」
千砂都「ふーっ……!ふーっ……!」
かのん「か、からかったのは悪かったから!謝るから、怒らないで……」
千砂都「違う……!違うのっ!!」
千砂都「私……!私、はっ……!」
かのん「ちぃちゃん……?」
千砂都「私っ……!かのんちゃんのことがっ……!」
千砂都「……好き、なのっ……!」 かのん「えっ……?え、えええぇぇぇっ!?」
かのん「な、何でっ!?何でちぃちゃんが私をっ……!」
かのん(も、もしかして……今になってボタンの効果が……!?)
千砂都「私っ……!かのちゃんのこと……ずっと、ずっと、好き……だったの……!」
千砂都「高校生になるよりも前から、ずっと……」
かのん「ずっと、って……」
かのん(ちょっと待って、それはおかしいよ。あのボタンはあくまで押した時点での好きなものを溢れさせるだけで)
かのん(前から好きだったと思い込ませるような効果なんてないはずだよ……?) 千砂都「本当は……ちゃんと、伝えたかったんだ。かのんちゃんが、好きだって……」
千砂都「だけど、言えなかった……。かのんちゃんに嫌われるのが、かのんちゃんとの関係が変わるのが、怖くて……」
千砂都「この想いは、私の中だけにしておくつもりだった……。上手く隠せてたはず、だったのに……」
千砂都「今日になって、急に想いが膨れ上がって……我慢できなくなってっ……!」
かのん「ちぃちゃん……」
千砂都「ごめん……。ごめんね、かのんちゃん……」 かのん(そっか……。そういうこと、だったんだ……)
かのん(ちぃちゃんはずっと前から、私のことが本当に好きで……)
かのん(いつ、どこのタイミングでボタンを押したとしても、ちぃちゃんの1番の好きは……)
かのん(私、なんだ……)
かのん(そのボタンも効果が出なかったわけじゃなくて……誰にも悟られないように、顔にも態度にも出ないように隠して……)
かのん(それを私は、ちぃちゃんの気も知らないで何度も何度も……)
かのん「……ちぃちゃん。ごめんね」
千砂都「何で、かのんちゃんが謝るの……」
かのん「ちぃちゃんが今、そうなっちゃった原因は……私にあるんだ」
千砂都「えっ……?」 かのん「今日の朝、下駄箱にこんなボタンが入ってて……」スッ
かのん「これを押すと、相手の人の好きが我慢できなくなるほど大きくなっちゃうみたいなんだ……」
千砂都「そんなこと……」
かのん「嘘みたいな話だけど……本当なの。すみれちゃんと可可ちゃんも、好きなものが飛び出しちゃってたから……」
かのん「そのボタンを……ちぃちゃんに向けて、使っちゃったの……」
かのん「だから……ごめん。まさか、ちぃちゃんが私のこと、そんなにも好きだったなんて思いもしなくて……」
かのん「ちぃちゃんの気持ちをこんな無理やりみたいな形で聞いちゃって……」
千砂都「……ううん、いいんだ。きっと、これはひとつのきっかけなんだと思うから」
千砂都「かのんちゃん……。私と……」
千砂都「私と、恋人になってくれない、かな……?」 かのん「私……ちぃちゃんと恋人になるっていうのが、よくわからないんだ」
かのん「長い間、ずっと幼馴染として一緒にいたから」
千砂都「やっぱり……そう、だよね……」
かのん「でもね。ちぃちゃんに好きって言ってもらえたことは、本当に、何よりも嬉しかったんだ」
かのん「誰かと一緒になるならちぃちゃんとがいいって思うし……何より、私の1番好きな人は、ちぃちゃんだから」
かのん「今はまだちぃちゃんと一緒の好きじゃないかもしれないけど、それでもよければ、私と……」
千砂都「かのんちゃんっ!」モギュッ
かのん「んぐぅっ」
千砂都「かのんちゃんっ……!私、私っ……!」
かのん「……ごめんね。勝手に怪しいモノの対象にしちゃって」
かのん「それと、ありがとう。私のこと、好きって言ってくれて」 千砂都「ううん。お礼を言うのは私の方だよ」
千砂都「かのんちゃんがその謎のボタンを私に使ってくれてなければ……」
千砂都「今こうやって、かのんちゃんに面と向かって好きだと伝えられてなかったと思うから」
千砂都「だから。私からもありがとう、かのんちゃん」
かのん「そっか……。なら、よかった」
千砂都「……ところで、そのボタン?って結局何なの?」
かのん「それが、私にもよくわからないんだ。さっきも言ったけど、今朝、私の下駄箱に入ってて」
かのん「一緒に入ってた手紙を読む限り、私のファンの人からのプレゼントらしいんだけど……」 千砂都「へぇー……。ねぇ、これって私が使っても効果あるのかな?」
かのん「他の人に使わせたことはないけど……まぁ普通なら使えると思うよ」
かのん「相手のことを思い浮かべてボタンを押すと、その瞬間に1番大きかった好きなものが溢れてくるんだって」
千砂都「それじゃあ、私がこれを押したら、かのんちゃんが私のことを好きに……」
かのん「それはそうだろうけど、この状況だしそうなるのは当然なんじゃないかなぁ」
千砂都「あ、そっか」 かのん「……私さ、これ……昼休みと授業の合間に何回かちぃちゃんに使ってみたんだけど」
かのん「いつ使っても何も変化なくて……もしかして、ずっと……?」
千砂都「うん……そう、なるかな。かのんちゃんと一緒なら、どんなときでもかのんちゃんが1番好きだから」
かのん「私、てっきりまるへの愛が炸裂するんじゃないかって思っちゃってたよ……」
千砂都「そうだねぇ……。かのんちゃんとは別々の場所にいるときに押されたら、もしかしたらそうなってたかもしれない」
かのん「近くにいない人は対象にしようとしなかったから、できるかどうかはわかんないんだけどね」
千砂都「でもね。今は、かのんちゃんがそうやってイタズラしてたときまでとはちょっと違うんだ」
かのん「イタズラって……」
千砂都「違うの?」
かのん「まぁ……はい。それで、違うっていうのは?」 千砂都「それはね。かのんちゃんが私の好きを、受け入れてくれたこと」
千砂都「だから今の私は、たとえかのんちゃんと一緒じゃなくて、別々の場所にいたとしても」
千砂都「そのボタンを押して飛び出してくるのは、かのんちゃんのことだけだよ」
かのん「そ、そこまで言われると何だか照れちゃうなぁ」
千砂都「ふふふっ。ねぇ、かのんちゃん」
千砂都「私ね。きっとかのんちゃんが思ってるよりもずっと、ずっとかのんちゃんのことが好きなんだよ」
かのん「ずっと私のことが好きだって言ってたもんね」
千砂都「うん。だから、その……かのんちゃんにも早く私と同じ意味の好きになってもらいたくて……」
かのん「ちぃちゃんがこんなにも私のことを好いてくれてるんだから、すぐにそうなるような気はするんだよね」
千砂都「……いつか、ボタンを何千、何万回押しても私のことしか出てこないくらい、好きにさせちゃうんだから」
千砂都「覚悟、しててよね。かのんちゃんっ♪」
おわり これでおわりです。読んでいただきありがとうございました
かのんちゃんとちぃちゃん以外のキャラは少しずつ慣らして出していくことにします
お時間がありましたら過去のかのちぃもよろしくお願いします
かのん「ちぃちゃんを抱きたい」
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