果林「my sweet time」
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馴染みある目覚まし時計のけたたましい音に叩き起こされるようにして、目を覚ます。
つい昨日、干されたばかりだろうふわふわとした羽毛布団の誘惑からそうっと手を出して、目覚まし時計を止める。
「ん…」
もぞもぞと動くと涼やかな空気が呪縛に亀裂を入れて、意識がはっきりとしてくる。
枕元にある手をかざすだけで止まるスタイリッシュなデザインのデジタル時計を見ると、いつも起きるより少し早い時間だった。
全体的に暖色系統で整えられているこの部屋にはやっぱり、
ほんの少し浮いている目覚まし時計だけれど、
私にはだからこそ心地好く感じられる。 「そういえばさー、かすみちゃん。ミア子って呼ぶの止めたの? しずくちゃんもしずくだし、璃奈ちゃんも璃奈、栞子ちゃんも栞子になってたよねー」
「あー……」
『ボクがいい加減やめてくれって言ったんだ。良い大人になったからにはもう、そう呼ばれるのはちょっと恥ずかしいって』
「私は別にかすみさんらしくてよかったんだけどな〜」
『しずくは子もくもほとんど変わらないから違和感が薄いだけだろ』
「……言われてみれば」
今更気づいたとばかりに得心の言った表情を浮かべたしずくちゃん。
それが演技だと気づいているだろうかすみちゃんはそれについて特に何も言うことなく「私も大人になりましたし」と切り込む。
『ランジュはいいわよ? ラン子でも』
「え? ウンk――」
「侑ちゃんっ!」
ぐぎっ……っとは言わなかったものの相当な力で口を塞がれた侑は、
流石に飲食店経営者としては見逃せなかった愛もそこに加わって、苦しみにもがきながら従業員以外立ち入り禁止のエリアへと引きずり込まれていく。
「ランジュ先輩はランジュ先輩ですよ」
『あら。そう? 先輩オーラがあるのかしら』
「相変わらずですねランジュは……ミアさんも苦労が多いでしょう」
『まったくだ。いい加減、送料無料で受け取ってくれないか? 特別に0円で構わないぞ』
「いえ、お断りします」
栞子ちゃんとミアの辛辣な反応も、まるで自分のことではないかのようにニコニコなランジュは、確かに手強そうだった。 やはり台詞回しがうまいSSは声付きで脳内再生できるからすごいなっていつも思う 『そう言えば聞いたよ果林、ようやくだって。彼方はランジュとは違うから羨ましい限りだよ』
『ランジュとは違うってなによ……酷いじゃない』
「耳が早いのね」
『時差だって1日もないし、対面はともかく言伝ならいつでも出来るからね。まぁ、今回は号外号外だって突撃してきたMessengerがいたんだけど』
ミアはそういいながらモニターの一点、かすみちゃんの方をじっと見る。
ランジュほどではないにしても、
それなりに快活なかすみちゃんの突撃は疲労たっぷりのミアにとって騒がしかったのかもしれない。
『ねぇ〜ランジュとは違うってなによ〜』
『そういうところだよっ』
いい加減鬱陶しく感じたのか、後ろから覆い被さるようにしていたランジュの顔を押し退けようとするミアと、
それに対抗して頭を押し付けようとするランジュの些細な攻防戦
勝敗は明らかで、肩にランジュの頭を乗せたミアは疲れたようにグラスを傾ける。 『彼方は支えてくれるだろ。これと違って……まぁ、たまにこうしてきてもかわいいからな……多忙な身の上としては良妻賢母……だったか? そんな相手は羨ましい限りさ』
「えへへ〜」
良妻賢母
そう言われて嬉しそうな彼方を横目に頷く。
これ以上ないくらい近い距離でもまだ不満だって肩を抱いて。
「羨んでも渡さないわ」
『……ふっ。酒が甘くなるな』
『果林ちゃんはもうすっかりだね〜……そうだ。ランジュちゃん今度、わたしのところおいで〜』
『行く行く! なんならこの後行くわ!』
『今度って言われただろっ』
徹夜明けのハイテンションに近いランジュと、
それを押さえ込むミアそして楽しそうに笑うエマの三者三様なモニターの中の3人。
私の右隣に来ていたしずくちゃんは「楽しそうですね」と呟く。 「ランジュさんがいたら退屈しないと思う」
「いや……あれは休まらないって言うんだよ。毎日このテンションはかすみんでもキツいかも」
「ランジュも毎日こうなわけじゃないらしいけどねー。ま、今日は特にめでたいからって盛り上がっちゃったんだよ――」
「あっ」
いつの間にか戻ってきた愛が笑顔になった途端、察した声を漏らした璃奈ちゃん。
分かる……もう長い付き合いだからこの後が容易に想像できる。と、
そう教えるように私にとっては小さな肩を軽く叩いてあげたのと同時に、愛の声が高らかに響き渡った。
「酒盛りだけにー! あっはっは!」
「盛り上がるっっ酒盛りだけにっっっぁっははははっ!」
愛の相変わらずのだじゃれに侑は大爆笑で、その隣の歩夢は「またぁ……」と、呆れ顔。
璃奈ちゃんはそんな歩夢の開いたグラスに、ほんの少しお酒を注ぐ。 「歩夢さんも苦労してるみたいだから」
「うぅ……璃奈ちゃんっ」
ぐいっっと一気に飲み干した歩夢のグラスに、もう一杯。
それをまた飲み干して、もう一杯。
わんこそばのごとく、次から次へとお酒を飲ませようとする璃奈ちゃんの危うさに、思わず歩夢のグラスに手が出る。
「飲ませすぎよっ」
「……惜しい」
「歩夢ちゃんを酔い潰させようとするなんて……」
「お持ち帰りしようと思って」
「こらこら」
冗談でもやめなさいと璃奈ちゃんを制すると、彼方がお水を注いだグラスを歩夢に手渡す。
ちびちびとお水を飲む歩夢から目を離した璃奈ちゃんは細やかに笑う。
「冗談。でも、このあと、かすみちゃんとしずくちゃんはここに泊まるらしいから、わたし達もって思って」
「あら……そうなの?」
「あー2人はダメ。あたしの家は111人しか入れないんだ」
「なんでよ」
愛、かすみちゃん、しずくちゃん、璃奈ちゃん、歩夢、せつ菜、栞子ちゃん、侑で8人
11人まではあと3人も余っているのに――。
「っ」
ぎゅっと、腕を抱きしめられて目を向ける。
「……そうね」
なにも言わないし、私の顔を見てもいない。
けれど、私の腕を抱いて離さず身体を寄せる彼方の姿で答えが決まった。
「――あとエマっちとミアチとランジュが泊まるしね。モニターで」
「はいはい。そうね……じゃぁ、仕方がないわね」
愛の冗談に付き合うのは片手間に、彼方の頭を優しく撫でて、こつんっと頭を重ねる。 >>622修正
「歩夢さんも苦労してるみたいだから」
「うぅ……璃奈ちゃんっ」
ぐいっっと一気に飲み干した歩夢のグラスに、もう一杯。
それをまた飲み干して、もう一杯。
わんこそばのごとく、次から次へとお酒を飲ませようとする璃奈ちゃんの危うさに、思わず歩夢のグラスに手が出る。
「飲ませすぎよっ」
「……惜しい」
「歩夢ちゃんを酔い潰させようとするなんて……」
「お持ち帰りしようと思って」
「こらこら」
冗談でもやめなさいと璃奈ちゃんを制すると、彼方がお水を注いだグラスを歩夢に手渡す。
ちびちびとお水を飲む歩夢から目を離した璃奈ちゃんは細やかに笑う。
「冗談。でも、このあと、かすみちゃんとしずくちゃんはここに泊まるらしいから、わたし達もって思って」
「あら……そうなの?」
「あー2人はダメ。あたしの家は11人しか入れないんだ」
「なんでよ」
愛、かすみちゃん、しずくちゃん、璃奈ちゃん、歩夢、せつ菜、栞子ちゃん、侑で8人
11人まではあと3人も余っているのに――。
「っ」
ぎゅっと、腕を抱きしめられて目を向ける。
「……そうね」
なにも言わないし、私の顔を見てもいない。
けれど、私の腕を抱いて離さず身体を寄せる彼方の姿で答えが決まった。
「――あとエマっちとミアチとランジュが泊まるしね。モニターで」
「はいはい。そうね……じゃぁ、仕方がないわね」
愛の冗談に付き合うのは片手間に、彼方の頭を優しく撫でて、こつんっと頭を重ねる。 「あーそうでした。そうでした。彼方さんと果林さんにお祝いの品をですね。持って来てるんですよ」
せつ菜モードになりかけの、酔い半分な菜々は鞄の影に隠していた紙袋を差し出す。
「テーブルランプです。明るさ調節できるので、寝室にどうぞ」
「あら、ありがとう」
「じゃぁ私も」
「ありが……って、ちょっとっ!」
便乗するように璃奈ちゃんがカバンから取り出したポストカード。
表面は普通なのに、裏面には私と彼方の写真を合成しての"私たち結婚しました"が載せられている、悪戯な一品だった。
「もう……違うのに」
「なら、かす……私も出す時が来たかなー」
「えっ?」
自慢げな表情を浮かべたかすみちゃんは驚いた声を漏らしたしずくちゃんを一瞥すると、にやりと笑う。
そして、愛がどこかから持ち出してきた紙袋の中から、
かつての同好会を思い出させる、各々のイメージアイコンを柄に用いたエプロンを2着取り出した。
カラーはそれぞれ私と彼方の色だ。 「かすみんブランドにおける唯一無二のエプロンですよー。もちろんペアなのでぜひお二人でどうぞ」
「わぁ〜! ありがと〜! うれし〜ね〜?」
「……私の分は良かったのに」
「良いじゃないですk――ぃだだだだだだっ! しずく痛いっ! 耳引っ張らないで!」
「かすみさん持ち帰るの大変だろうからなにも準備してないって言ってたじゃんっ! だから私、そうだねって思って今度家に持っていくことにしたのにっ!」
「えー? 素人のえんぎっぃったたたたたぁっごめんっ、ごめんってばぁっ!」
「もーっ!」
嘘か真か涙目なしずくちゃんはぷくーっと頬を膨らませる。
「もーっ。もーっ……どうしよう。あの、今度の私の舞台とかどうですか? 関係者席開けて頂いているので……美味しいお酒も用意したんですけど、家に届けたらいいかと思って手元にないんですっ」
本当に焦っていそうな可愛いしずくちゃん。
たぶん、演技ではなく本当だろうからからかったりすることはしないけれど、ついつい笑みが零れてしまう。
「無理しなくていいのに……でも、そうね。日程教えて貰える? 彼方と……」
そうね。と、ひと息置いて。
「彼方とデートするなら、観劇するのも良いと思うから」
照れる彼方と飛びかう野次、エマは嬉しそうで、ミアは見てられないと目を逸らす一方で、ランジュは酒の肴とでも言わんばかりにグラスを傾けていた。 「そう言われると私もですが……すみません。今度、お家に行かせてください」
「ありがとう。栞子ちゃん」
「侑ちゃんがアレだから私から渡しますけど……これ、侑ちゃんが作曲した曲を私が弾いたやつです」
「ふふっ、帰ったら真っ先に聞くわね。ありがとう」
恥ずかしそうにしながら、でも、渡してくれたCDを大事にしまう。
「そろそろお暇しようかしら。これ以上は彼方も潰れちゃうかもしれないし」
「おーそっか……」
気付けばだいぶいい時間で、明日も仕事となれば帰らないといけなくて。
この賑やかなひと時はいつまでも続けば嬉しいけれど、でも、いつまでもは続けられない時間。
でもきっとまた、私達は集まることが出来るだろうから、寂しくはない。
『またね〜』
「ええ、今度……そうね。今度そっちに遊びに行くわ。彼方も連れて……でも、待ちきれなかったら会いに来て頂戴」
『うん〜準備しておくね〜』
エマともランジュともミアとも挨拶を交わして、
そうして、みんなとも最後に一つ。
「これからのみんなの健康と、さらなる躍進を願って――」
――乾杯
音頭を取り、少しだけのお酒をみんなで乾杯し、ひと息に飲み干して、
主役が帰るならと皆も解散ってしようとしていたけれど、
せっかくだから、続けた方が良いって促して私と彼方だけは一足先にお店を出て、帰路についた。 超久しぶりに集まってお泊り会とか超楽しいんだろうな 付き合い始めた直後の酔っぱらい二人…何も起きないはずもなく… お店の前でタクシーに乗り、家の近くで降りて少しだけ歩く。
彼方はお酒を飲むペースこそゆっくりではあったけれど、
それでもたくさん飲んでいたはずなのに、足取りは軽やかでしっかりとしてる。
でも、念のために声をかける。
「大丈夫?」
「ん〜……大丈夫〜」
「そんな語尾伸ばしちゃって、本当は酔ってるんじゃないの?」
「んふふ〜ちょっとだけね〜」
彼方はほんのりと赤らんだ頬を月明かりに照らしながら、私を振り返って笑みを浮かべる。
彼方はお酒に強い。
たぶん、私の倍の量を飲んだとしてもほろ酔い程度で留められるだろうし、すぐに酔いを醒ませられる。
だからもしかたらもう、酔いは醒めているかもしれないし、ほろ酔いかもしれない。
「……あんまり先行かないで頂戴」
「ん」 ぴたりと立ち止まった彼方の隣に並ぶ。
でもそれが限界で、手を繋いだりは出来ない。
その繋いだ手がもし、私達の関係を知らしめてしまったとしたら、色々と破綻することになってしまうから。
「もし、少しでも先に行ってしまうなら――私は間違いなくその後を追うわ」
「怖いこと言うねぇ〜」
その言葉の意味を知っていながら茶化すように笑う。
「一緒が良いのよ。これからは」
「そだねぇ……でも、そういうこと考えるのは〜……めっ」
ぐいっと、頬に指を突き付けてきた彼方はやっぱり笑顔で。
手を引きたいし、抱きしめたいし、何なら口づけをしたいって思わされる。
陰りの少ない点々とした星の輝きと、妖艶な月光が私の心を誘う。
「果林ちゃんってば、意外とネガティブだよね」
「慎重と言いなさい」
「私……ううん。彼方ちゃんはいつだって果林ちゃんのそばにいるよ。これまでだって、これからだって。もちろん、これからは今までよりもすぐそばにいる」
――だから大丈夫。
彼方はそんな笑みを浮かべながら「早く帰ろ?」と、一歩進む。
「そうね……」
私も今は早く帰りたい。
そう思って、大きく踏み出して、もう一度彼方に並んだ。 何事もなくマンションに着いて彼方、私の順に玄関に上がる。
わき目もふらずに施錠をして――。
「わっ……」
彼方の身体を後ろからぎゅっっとする。
外の冷気に当てられて冷たいけれど、その中に蓄えられている彼方の温もりが感じられて……心地が良くて。
ウェーブがかかった長い髪は、いつもと違ってほんのりと香ばしい、もんじゃの匂いがする。
「……果林ちゃん?」
「もう少し」
「先に着替えようよ〜」
「良いの。このままが良いの」
「もう……果林ちゃん酔ってる〜?」
彼方の柔らかい声がして、小さな手が私の頭を優しく撫でる。
それなりに飲んだから多少は酔ってしまっているかもしれない。成人したばっかりの時、お祝いで飲んで以降口にしていなかった地元のお酒もあったから。
懐かしくて、少し、ペースも早かったかもしれない。
「……酔ってるわけではないわ。でも、ただ、こうしたいの」
そう言うと彼方は「そっか」と小さく呟く。 「……好き」
「うん」
「もう、離れたくないわ」
「そうだねぇ……」
離れたくないって言ったって何かをするときにはこうしてはいられないし、
私にも彼方にもそれぞれ仕事がある。
だから、学生の頃のように好きなだけそばにいるなんてことは出来ない。
だからなおさら、惜しいって感じてしまう。
もっと早くこうしていればよかったって。
無駄に慎重にならないで、ただただ、わがままに踏み込んでいってしまえてればよかったって。
――だから。
「彼方……結婚しましょう」
「うん……んっ、えっ!?」
「今は指輪……ないけれど、でも、ちゃんと用意するから」
「飛んでる飛んでる。色々飛んじゃってるよ果林ちゃん」
驚いて戸惑ってる彼方の身体を抱く力をほんの少し強くしてから手放し、私の方を振り向かせる。
逃したくない。
今踏み込めている自分を止めたことを後悔したくない。 色々と止まってたとはいえお付き合いから数日で結婚は飛びすぎてて草 「彼方は――嫌?」
「そ、それは……嫌じゃ、無いけど……でも、もうちょっと……こう……」
「そうね」
ムードがあった方が良い。そう続くとみて――唇を重ねる。
最後に口にした日本酒のわずかに甘く発酵した香りが突き抜けていく。
「これからもずっと――今までよりもずっと近い、私の隣にいて欲しい。朝も、夜も。顔を合わせて笑顔になれる私達でありたいわ」
「……もうっ。果林ちゃんってば。ちゃんと覚えててくれるのかなぁ?」
彼方は私が酔っぱらっているから、その勢いでこうしていて、
明日の朝になったら忘れてるかもしれないって、思っているみたいだけれど……半分正解。
でも、忘れない。
これは私の心のことだから。
「絶対に忘れないわ。大丈夫……でも、心配なら、ね?」
「も〜……」
彼方はしずくちゃんみたいに可愛らしく頬を膨らませて不満をあらわにすると、
仕方がないなぁって言うかのように私の肩に手を添える。
高校生の頃から小さくて、すっかりそのままな彼方とちょっとは伸びてしまった私。
その身長差を埋めるべく背伸びする彼方のために少しだけ屈むと、唇が触れて。
私の首に腕が絡んできて、起こそうとした身体にもう一人分の重さがついてくる。 「んっ……」
腰とおしりの方に手を回して抱き上げるように支えて、一瞬だけ唇を離し、見つめ合ってもう一度。
「……果林ちゃん……っ」
「彼方……」
唇を重ねて、離れて、もう一度唇を重ねる。
彼方の上着を脱がして、私の上着を脱がされて……少しずつ、薄着になっていく。
「――ベッド、いこ?」
寒さではなく、上気した彼方の上目遣い。
その酔わせるような甘い誘いに従って、すぐそばの扉を開け、ベッドの上に彼方を押し倒す。
「んっ……果林ちゃん……っ」
頬は紅く、うっすらと浮かぶ汗と、張り付いた前髪。
そうしてはだけた格好のまま、私を受け入れるように両手を広げる彼方。
「好きよ。彼方……ずっと、ずっとよ」
「うん……私だって、好き」
そうっと前髪を払い、額に口づけをして、頬に口づけをして、
露わにあっている首筋にキスをして。
「……結婚しましょう」
「んふふ……も〜……果林ちゃんはせっかちさんだねぇ」
笑いながら私の首に腕を回して抱き寄せた彼方は、
耳元で小さく口を開く。 「……良いけど。でも、まずは婚約。それからゆっくり……ゆっくり、付き合って行こうよ。恋人期間を楽しみたいから」
「それもそうね……」
唇を重ねて頬を撫でる。
目を合わせて、ちょっぴり笑いあって、唇を重ねる。
「ねぇ、彼方」
「ん〜?」
「……ごめんなさい。呼んだだけ」
かつては近くても、込められなかった想いを込めて名前を呼ぶ。それに彼方は答えてくれて、可愛らしく笑顔を見せてくれる。
愛おしい私の恋人。
「ねぇ、果林ちゃん」
「なに?」
「ん〜ん……呼んだだけ〜」
「なによもう……明日も仕事なんだから、挑発しないで頂戴」
仕返しのように甘く囁くように名前を呼んできた彼方の頬に口づけをする。
ほどほどに抑えなくちゃいけないって思っても、我慢しきれなくなることだってたくさんあるんだから。
――でも。
「まぁ、明日の私が何とかするでしょ……きっと」
彼方の家から持ち込んだスタイリッシュなデザインのデジタル時計
それと全く同じ型で、色が違うだけの時計
その二つのアラームをセットして、彼方の身体に覆いかぶさる。
「――いいでしょ?」
今まで触れられなかった分、深く、長く、広く、大きく。
彼方の身体に触れて、愛して、じわりじわりと溢れてくる甘い感覚に浸り、溺れて、交わっていく。
そうしてまた、私はきっと馴染みある目覚まし時計のけたたましい音に叩き起こされるようにして目を覚まし、
夜の仕返しとばかりに " ホットミルクチョコレート " を飲まされるのだろう。
でも大丈夫。
――だって。
その分のカロリー消費は、今ここでしてしまえばいいのだから。 終わりがないので、以上で終わりとなります
途中抜けてしまいましたが二ヶ月間お付き合いありがとうございました 乙
殺伐としたラ板の中で甘い時間だった
最後の描写どこかで見たと思ったら序盤の描写か…つまりループ物だな? さすがだなぁ、タイトル通りの甘さだった
次回作にも期待してるぞ 乙
甘々なかなかりをありがとう
彼方のママみと果林の素直になれない&なった途端甘々になるかなかりの素晴らしいところが凝縮された作品だったわ jΣミイ˶^ ᴗ^˶リ終わりよければ全てよし、ですね! 待たされに待たされた彼方ちゃんの感情が爆発するとこすき ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています