「音物語」
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西木野真姫が誰かと喋っているのを見た事がない。
そんな風に噂されたのも今は昔。なんて言い方をするとまるで100年単位の大昔の様に聞こえるけれど、なんて事はない数ヶ月前まではそう言われていたのだ。
友達はいらない。人間強度が下がるから。
数ヶ月前の私はそう思っていた。そんな私の殻を破る人物と出逢ったのは四月の音楽室だった。
「ねえ。あなたスクールアイドルに興味ない?」 音楽室で一人ぼっちで堂々とピアノを弾いてる時にキラキラと目を輝かせながら声を掛けてきたのは穂乃果だった。後のスクールアイドルμ'sのリーダー、高坂穂乃果だった。
紆余曲折あって(ここで説明すると長くなるので割愛する)私は穂乃果の誘いを受ける事にした。
そのおかげで、穂乃果の勧誘のおかげで私は学校で人と接する事が多くなっていた。そして、いつからかそれが当たり前になっていた。
当たり前になっていたので練習が休みの日など誰とも話す機会がない日はそわそわしてしまい仕方なかった。 キスショットアセロラオリオンハートアンダーブレードさん!? 部屋で一人勉強していれば携帯の着信が気になった。定期的に画面を覗いてはため息を吐くを繰り返す。そんな事に嫌気がさして、またため息を吐く。
そんな永久機関から抜け出す為に私は私の意思で私の部屋を飛び出して街に繰り出す事にするのだった。
やはり目的が欲しいので、私は老舗の和菓子屋「穂むら。」でおまんじゅうを買う事にした。
道中、もしかしたら偶然に知り合いの誰かとばったりと出くわすかもしれないなんて期待はしていないけれど有り得ない話ではないと思う。 部屋着のままでは流石に乙女としてはマナー違反なので私は少しだけお洒落をして家から出る事にした。
友達の誰かに偶然会うかもしれないからお洒落をしたのではない事は言っておきたい。私はマナーを守る人間だから。ただ、それだけである。これは本当だ。
私は玄関のドアノブをぐるりと回した。 玄関を出て真っ直ぐとアスファルトの道を歩く。延々と続くこの道の先に和菓子屋「穂むら。」はあるのだ。家を出て10分。私は既に後悔をしていた。だってまさか、こんなに外が暑いとは思わなったからである。
もう帰りたいと私は心の中で叫んだ。いや、実際に叫ぼうと思った。それをやめたのは私の視線の先に見知った顔が居たからだ。彼女は私の方をジッと見ている。
凛「あれ?もしかして、もしかすると、もしかしたら、もしかしなくても真姫ちゃんじゃないかな?」
高校の同級生の星空凛だった。
凛「西木野真姫ちゃんじゃないかなにゃ?」
思い出したかの様に語尾を変えるな。 凛「えっへん。アイドルとしてキャラ作りは大事だからね!」
真姫「あっそ」
凛「所で真姫ちゃんはこんな所で何をしてるのかにゃ?あっ!もしかして、練習がお休みで誰とも会ってないから寂しくなっちゃったの?」
真姫「ち、ち、違うわよ」
決して図星なんかではない。私は寂しくなんかないと宣言したい。 凛「へ〜」
その目は何だ、その目は。
真姫「おまんじゅうを買いに行く途中なのよ。穂むらに」
凛「へ〜穂むらに?これまたどうして?」
真姫「どうしてって。だから言ってるじゃない。おまんじゅうを買うためだって」
凛「真姫ちゃんっておまんじゅうそんなに好きだったっけ?実は穂乃果ちゃんに会いに行く口実だったりして」
ギクッ。どこからかそんな擬音が聞こえて来る。
凛「にゃはは〜。やっぱり図星にゃ〜」
真姫「だから違うってば」
凛「凛も暇だったらきびだんごなしでお供しても良かったんだけどね」
きびだんごがあるのなら和菓子屋には行かないし、昔話では猫にきびだんごはあげない。 まだ数行しか読んでないけどもう阿良々木暦(神谷浩史)で再生されてる 真姫「で?凛の方こそ何をしてるのよ?本当に忙しいの?」
凛「失礼だなぁ。凛だって忙しい時くらいあるよ。凛はこれからラーメンを食べに行くんだよ」
こんな時間にラーメンを?今14時なんだけど。
凛「ラーメン屋さんにラーメンを食べに行くんだにゃ」
だから思いだした様に語尾を変えるな。
凛「けどけど。忙しい身である凛だけれども。今すぐにでもラーメンを食べたい凛だけれども真姫ちゃんと多少の時間ならお喋りする余裕くらいならあるんだよ」
だいぶ会話をしてからそう言われても。 凛「凛、面白い遊びを生み出したんだよ!」
真姫「面白い遊び?」
凛「言いにくい言葉の並びの文章をどれだけ早く言えるかって遊びだにゃ」
その遊び、私達が生まれるずっと昔からある。
凛「隣の客はよく柿喰う客だ。言える?」
真姫「隣の客はよく柿喰う客だ」
凛「真姫ちゃん凄いにゃ。流石お金持ちだにゃ」
それは今関係ないし、お金に物を言わせた記憶もない。 そんな事よりも
真姫「じゃあ、次は凛の番ね。斜め七十七度の並びで泣く泣く嘶くナナハン七台難なく並べて長眺め。はい」
凛「にゃにゃめにゃにゃじゅうにゃにゃどのにゃらびでにゃくにゃくいにゃにゃくにゃにゃはんにゃにゃだいにゃんにゃくにゃらべてにゃがにゃがめ」
真姫「ふっ、やっぱりね」
可愛い。 穂乃果の第一声はガハラさんだったけど、流石に他のキャラ出てきてラブライブに戻ったわ A- RISEの綺羅ツバサと出会ったのは凛と別れてすぐだった。
ツバサ「あら?どこの誰かと思ったら。μ'sの西木野真姫さんじゃない。こんにちは」
真姫「こんにちは」
ツバサ「こんな所で会うなんて。今日は練習はお休み?」
真姫「ええ。たまには身体を休めるのも大切だって」
ツバサ「なるほど。それは良い案ね。提案したのはーーーーー。絢瀬絵里さん辺りかしら?」
御明察。流石はA- RISEのリーダー。流石に鋭い。 ツバサ「そんな事言い当てるのは簡単だわ。μ'sのリーダーは高坂穂乃果さんだけれど、練習メニューやスケジュールを管理してるのは絢瀬絵里さんと園田海未さんでしょう?園田海未さんは練習大好きだものね」
真姫「良く知っていますね」
ツバサ「同じスクールアイドルとしてあなた達に興味津々なのよ」
へぇ。何でも知ってるって訳ね。
ツバサ「何でもは知らないわよ。知ってる事だけ」
ふぅん。それってどう言う事? ツバサ「でも、良いのかしら?」
真姫「何が?」
ツバサ「今日は身体を休める為の休暇でしょう?こんな炎天下の中出歩いていて良いのかしら?」
それはーーーーーー。
ツバサ「けれど、癒しが必要なのは身体だけじゃないものね。そう、心にも癒しは必要。例えば…寂しい時には友達に会うとか」
私、何も言っていないのに。この人はどんどん言い当ててくる。彼女はチラッと右腕にはめた腕時計を覗いた。
ツバサ「あら、そろそろ時間だわ。私も行かなくちゃ。高坂穂乃果さんにヨロシクね」
やはり彼女にはお見通しだったみたい。 絵里「今日は身体の疲れを癒す為の休みだったはずなのだけれど。マッキーは一体こんな所で何をしてるのかしら?」
穂むら。の前で声を掛けて来たのは賢くて、可愛くて、クールな元生徒会長エリーチカ事、絢瀬絵里だった。
絵里「まあ。プライベートな時間にまで首を突っ込むつもりはないけれど。ちゃんと休めてる?」
真姫「問題ないわ」
絵里「そう。ならいいけど。そこら辺をうろちょろしてて逆に疲れたなんて事はなしよ」
それはブーメランにならないのだろうか?絵里の後頭部に突き刺さらない事を彼女の為に祈っておこう。
真姫「絵里の方こそ今日はどうしたのよ?」
絵里「私?聞きたい?」 そうやっていつも意味ありげに言うのが絵里の癖だと最近気が付いた。が、私は理由を聞く事にした。
真姫「ここに居るって事は穂乃果に用事があるって事でしょ?」
絵里「御名答!穂むら。でチョコレートを使った新作のおまんじゅうを販売するんですって!私もう楽しみで楽しみで」
私は詳しく聞いたのを激しく後悔した。
あの、クールで冷静沈着な生徒会長はもう居ない。私の目の前に居るのはチョコレートを楽しみにしてるあどけない一人の少女。 絵里「それで?まんまと話を逸らされてしまったのだけれど。真姫はここに何しに来たのかしら?」
先程、プライベートな事にまで首を突っ込むのはやめると言ったのはどこの誰だったか。
真姫「別に。ただ、おまんじゅうを食べたくなったからおまんじゅうを買いに来ただけ。知らない?疲労回復に糖分は最適なのよ」
絵里「へ〜それだけ?」
私を見て絵里はニヤニヤとしている。
真姫「それだけよ!他に何かある?和菓子屋に和菓子を買いに来る以外の理由が!」
どうして誰もかれもいちいち疑うのかしら?私って普段からそんなに信用ない?
絵里「別にそう言う訳ではないけどね。ほら?真姫ちゃんってなんていうか…ちょっぴり素直じゃないから。寂しい時に寂しいって言えないタイプでしょ?」
真姫「そんな事ないわよ!!!」
否定の声は大きく、どうやら店の中まで丸聞こえだったらしい。 私の声を聞きつけて穂乃果が店の戸を開けて駆けつけて来た。
穂乃果「二人共…人ん家玄関の前で何してるの?偶然?」
絵里「そう。偶然なのよ。偶然、お店の前で出会ったの。私は例のおまんじゅうを買いに来たんだけど…」
まるで私は違う理由で来たみたいに言わないでくれないかな。
穂乃果「真姫ちゃんは?もしかして私に会いに来たとか?」
真姫「はぁ?なんでそんな…」
私は性懲りも無く否定をしようとした。
穂乃果「だとしたら嬉しいよぉ。練習がお休みで疲れが取れる〜何て喜んでたけど。皆んなに会えないと寂しくて寂しくて…。みんなに連絡しようか迷っていた所だったんだよ」 だらしなく笑う穂乃果の顔を見て私はなんだか拍子抜けしてしまった。
私が必死に強がって、見栄を張って見せていたのに穂乃果はこうも簡単に心の内を見せつけてくる。
弱音を吐かぬ様にと嘘を吐き、嘘に憑かれ、そんな自分に嫌気もがさし、私は嘘疲れしていたのである。
そんな時に穂乃果のあれである。
なんだか強がっていた私が馬鹿に見える。
穂乃果「えへへ〜。それじゃあさ、お茶を入れてくるから3人で新作のおまんじゅうでも食べよう!ね!」
友達はいらない。人間強度が下がるから。
そんな中二病紛いの事を言うのはもうやめよう。
だって私は、もう高校生になったのだから。 語尾がにゃだけど凛ちゃんは八九寺 絵里が臥煙さん ツバサは羽川 最初のセリフの穂乃果は戦場ヶ原のイメージが浮かんだな
物語シリーズっぽい文章だけど、やっぱ違うもんなんだなって声に出して読んでみると思う ちゃんと伝えようと強く思うほど体は動かず、まるで心と体が遠く別々の場所にあるのではないかと思ってしまう。
そんな事は決してなく原因は私の性格にあって、そんな面倒くさくて可愛くない性格なのだから、当然まともに友達が居た事もなかった。
別に仲間はずれにされて居た訳ではないけど遠足の班決めや体育のペア決めではいつも余ってしまうし下校はいつも一人でしていた。
高校生活もその延長線だと思っていた。けど、ちょっとしたキッカケと少しの勇気で今の私にはかけがえのない存在が私には出来たのである。
ある日の放課後、私はある人物を探していた。 「あ〜あの子は今、教室には居ないけど」
真姫「そうですか。ありがとうございます」
全く・・・どこに行ったんだろうか。待てど暮らせど部室に来ないものだから、わざわざ3年生の教室まで迎えに来たのにとんだ無駄足になってしまった。
真姫「すれ違いになっちゃったかな」
ホームルームが終わって彼女が向かうとすれば部室以外はないはずなので私は再び部室に戻る事にした。 花陽「あれ?廊下で会わなかった?」
部室に入るなり花陽が私に問いかけて来た。その口の横には小さなお米粒が付いている。またダイエットするハメにならなければいいのだけれど。
花陽「その…さっきまでここに居たんだけど…喉が渇いたから飲み物を買いに行くって出て行っちゃって…」
真姫「そんなの部室に来る途中で買ってくれば良かったの。全く本当にせっかちなんだから」
花陽「うん。私もそう思ったんだけど…部屋に入るなり凄いスピードで出て行っちゃったの」 花陽が言うには目にも止まらぬ速さだったらしい。説明しながら頬に付いたご飯粒を取る動作を見て少しはせっかちさを分けて貰えばちょうど良いのにと思った。
花陽「部室に来るなり…ほんと台風みたいだったんだから。ピューって。うん、大家族だしぴったりかも」
どうやら花陽は台風一過を台風一家と勘違いしているらしい。
真姫「あのね花陽。台風一過は別に台風の家族が押し寄せて来る訳じゃないのよ。そんな勘違い集の1ページに載っている様な間違いをしちゃダメよ」
そう注意すると、花陽はくるりと私には背を向けて身体をガタガタと振るわせ始めた。
しまった。繊細な花陽は傷付いてしまったのかと思ったが、そうではなく必死に笑いを堪えている様だった。 花陽「真姫ちゃん…物凄く早口だったね。それこそ台風みたいにピューって」
どうやら花陽は笑いのツボが相当に浅いらしい。呼吸が整うのに少し時間が掛かった。
花陽「ごめんね。でも、急ぎなら今から追いかけていけば見つかるんじゃないかな?部室から一番近い自動販売機へ行っただろうし、それが分かっていればすれ違う事もないと思うよ」
そう言って花陽は再びどこからかおにぎりを取り出して食べ始めた。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています