果林「K.A, 203X SS coll. VW」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
めちゃくちゃ面白い
こういうのは貴重なので続き楽しみにしてます あちゃー
酉までつけちゃって…
こういうのは5chじゃなくて渋あたりに上げた方いいと思うよ KARIN ASAKAはハイブランドだろうけど、何もハイブラに限らず、全てのシグネチャーブランドはこのSSで描かれているような企画を経て世に出回ってる
その辺のセレショに置いてある安い洋服だって基本的にはブランドから買い付けてるわけだし
顔真っ赤にしてる人達は、このSSに出てくる用語とか設定を、なろうとかその辺に出てくる創作用語かなんかと勘違いしてないか?
少なくとも現時点では現実でもごく普通に使われる以上のものは出てきてないよ
こう言っちゃ>>1に失礼かもだが、ブランド名やコレクションのタイトルの付け方、アトリエ内の様子なんかも、実際のドメブラで一番よくあるパターンにただ果林さんを当て嵌めただけって感じでなんのひねりもない
むしろ淡々としてて特に痛さは感じられない >>43
いつもの荒らしが湧いてるだけだからそんなに気にしなくていいぞ 見た目スレとか声優のブランド品で発狂してたこどおじが荒らしてるんだろ 縫製部では10数人の男女が机に向かって黙々と作業に没頭していた。
カタカタとミシンの針が進む音が響く。
縫い方一つで見た目や着心地は大きく変わる。
ここはまさにファッションブランドの心臓部だ。
「あの……南さんという方はいらっしゃいますか?」
大きな作業台を使って、紙に線を引いていた女性が顔を上げた。
ことり「はい……?」
「お忙しいところすみません。――と申します」
ことり「あぁっ!果林さんへの取材の!」
ことり「もしかして、私達の様子を撮影しに来たんですか?」
「ええ、見学させていただければと思っていまして。作業の邪魔をしてしまっ――」
ことり「えぇ〜っ!恥ずかしいなぁっ……He! Tout le monde, les equipes de tournage viennent nous filmer! (みんなっ!取材の人が撮りにきたんだって!)」
彼女が仲間に呼びかけると、数人のスタッフがこちらを向いて破顔した。
金髪の女性がフランス語で何やら呟いている。
ことり「えへへっ……『メイクしてないから恥ずかしい』、そうです」 ことり「――彼方さんに言われたんですねっ!」
「え、ええ。作業に水を差すようなタイミングですみません。私達はただしばらくここで撮影させていただくだけでも大丈夫なので」
ことり「いーえいーえ!全然大丈夫ですっ。私で良ければご案内しますよ〜?」
彼女の名前は南ことり。
日本で会社を立ち上げた当初から働く古株で、この部屋の実質的なリーダーである。
南はパタンナーとして働いている。
パタンナーはデザイナーの描いた絵を基に、服を作るための型紙(パターン)を作る。
パターンは、簡単に言えば服の設計図だ。
生地をどこで何cm裁断するか、裁断された生地が服のどこにあたるのかといったことが記されている。
スケッチという平面の図を、立体の洋服にするためにデザイナーの意図を的確に把握しなければならない。
デザイナーの指示は時として抽象的だ。
中にはデザイン画を描かず、口頭や写真でイメージを伝えるだけというスタイルのデザイナーさえ存在する。
したがって、パタンナーは縫製の技術や繊維・素材の知識だけでなく高い共感能力も必要とされる。
ことり「果林さんの場合は、きっちりイメージが固まったデザイン画を出すこともあるし、そうじゃないこともあるかなぁ?」
「南さんが今作られているのはパリコレ用の?」
ことり「うん、そうです!でもこれは作り始めてすぐのものだからまだ形にもなってないけど……」 「型紙を作る過程はどういう感じなんでしょうか?」
ことり「う〜ん、そうですねぇ……まず私が今やってたのは平面製図っていうんですけど、えっと、そこのジョナサン――髪の色が派手な人がトルソーに布を当てながら作業してますよね?あれは立体裁断って言って、型紙には平面と立体の2種類の作り方があるんです」
「どっちがどうとか、特徴とかあるんですか?」
ことり「やっぱり立体裁断の方が服のシルエットを確認しやすかったりはします。でも、私は服の種類やデザインによって使い分けたりしてますねぇ」
ことり「あっ、CADを使ってパターンメイキングすることも!」
ことり「で、そのあとはパターンをもとに試作品を作って……っていう感じですっ」
ことり「それでイメージやシルエットがちょっと違ったりしたら都度修正するし、果林さんに見せて修正が入ったり……」
ことり「ここにいる人はみんなそんな作業をやってます!」
ことり「パターンだけじゃなくて、コレクションでモデルさんが着るものも、みんなで作ってるんですよ?」
「大変な作業ですね」
ことり「まあ、確かに大変だけど……みんなお洋服が好きだからやってるんです」
ことり「……すぐ帰っちゃう人もいるけど」
「そうなんですか?」
ことり「う〜ん……最近はそういう人もいます。プライベートの時間も大事だから、しょうがないかなぁーって。あの人達の気持ちも分かるんですけどね」
ことり「あっ、そうだ!パターンだけ見てもピンと来ませんよね?作りたてのお洋服、見ちゃいます?」
「おおっ、是非お願いします!」
南はラックから完成した服の1つを取り出してきてくれた。
ことり「Louise, pouvez-vous m'apporter le patron de cette robe? (ルイーズ、このドレスのパターン持ってきて!)」 眼鏡をかけた女性がパターンを持ってきた。
我々に軽く会釈したと思うと、すぐに持ち場に戻ってしまった。
ことり「あはは……ちょっとシャイな子なんです」
ことり「気を取り直して!このパターンがですねぇ〜、なんと……こんな感じになっちゃうんですっ!」ファサッ
丈の長いワンピースはベージュの薄いメッシュの生地で透けており、その上に細かな花の模様のレースが入っている。
シルエットは決してありふれたものではなく、かといって無闇矢鱈に珍奇でもない。しなやかな風合いが高級感を醸し出している。
ことり「かんわいいですよねぇ〜……――さんもそう思いませんかぁ?」
「綺麗ですね……!このパターンが、これに変わっちゃうんですね」
ことり「そうなんです!」
ことり「あっ、そうそう……果林さんの元のスケッチがこれですっ」
南が渡してくれた朝香の元絵には、洋服を着た顔の無い人が描かれている。
服の部分を塗り潰してしまわず、素体の線を重ねて描くことでシースルーを表現しているようだ。
「これがこうなるんですね……。スケッチの方はなんというか、結構ラフに描かれているというか」
ことり「細かなディテールとか雰囲気は果林さんとしっかり話して決めていくんです」
ことり「逆に私達が提案することで『それいい!』って言ってくれることもあるし、そういう意味では、うちでは果林さんと一緒に一着一着作り上げていくっていうイメージに近いかも?」
「なるほど、そうなんですね」 「そういえばこのスケッチの人、誰かモデルでもいるんですか?」
ことり「え?どうして?」
「いえ、何というか、顔はのっぺらぼうになっちゃってますけど、その割には髪型とか具体的じゃないですか。あとそばかすもあったりして」
ことり「ん〜?今まで意識したことなかったけど……」
ことり「確かに具体的……かも?もしかしたらモデルがいるのかもしれないなぁ……でも私には分かんないです!」
「そうですか」
ことり「ふふふっ、着眼点が面白いですね」
ことり「やっぱり面白い番組を作る人って独特の発想を持ってたりするんですか?」
「えっ?」
ことり「日本にいた頃、よく――さんの番組、見てたなぁ〜って……」
「あぁっ!ありがとうございます……でも私はまだまだ下っ端なので」
ことり「そうなんですか?」
「入社3年目です!」
ことり「あぁ〜、じゃあまだまだ下っ端ですねっ」
「え?」
ことり「ふふっ、冗談です♪ごめんなさい!」
「あっ、あはは――でもまあ下っ端なのは事実ですよ」
ことり「応援してますっ。――さんが立派なお偉いさんになったら私のことも取材しちゃってください♪その頃には私も独立してるかなぁと思うので!」 「あっ、独立されるご予定なんですか?」
ことり「まだ先の話ですけどね……?」
ことり「フランスに移りたてでまだまだ会社の体制も整ってないところはあるし、こんな私でも果林さんや彼方さんに必要とされてるなぁって思うのでもうしばらくはいなきゃとは思うんですけど……」
ことり「でも、やっぱり幼馴染のいる日本が恋しくなっちゃうんです」
「そうなんですね。でも南さんがいなくなったら大変そうですね、会社が」
ことり「だから最近は後進を育てることにも力を注いでるんですよ?ジョナサンとルイーズはやる気もあって、技術もあって……」
ことり「来年からメンズのお洋服も作る予定なんですけど、知ってました?」
「あっ、ええ。存じ上げております」
ことり「ジョナサンは男の子だから、メンズのライン。ルイーズは私の直接の後継に……なんて」
「えっ!?南さんが辞められるのってそんなすぐ先の話なんですか?」
ことり「あっ、いやいや!来年は流石に早すぎるなって私も思うので」
ことり「う〜ん……再来年?遅くとも3年後には、日本で独り立ちできたらなぁって」
ことり「あはは……今日本人のメンバーがいなくてよかったぁ。これ、まだ果林さんにも相談してないことだから……秘密にしておいてくださいね?」
ことり「ちゃんとタイミングは考えてますから!」
「はい、勿論です」
南だけではない。
少なからず、こうした業界で働く人間は自分のブランドを持って勝負したいと思うものだ。
30余人もいれば、全員が1つの方向に向かって波長を合わせられるはずもない。
後に我々は、そんな人間模様を垣間見ることになる。 「ありがとうございました」
ことり「いえいえっ!取材の参考になれば幸いですっ」
ことり「本当はもっと紹介したい部屋があったんですけど……」
「はははっ、それはまた次の機会に――」
ことり「はーい♪いつでもどうぞ♪」
南を始めとするパタンナーや見習いのお針子に礼を告げて部屋を出た。
縫製部の部屋はカーテンが締め切られていたため気付かなかったが、雨が降り出していた。
時刻は20時を過ぎ、天候のせいもあってか外はすっかり暗くなっていた。
カチャリ...
タッタッタッ...
彼方「あやっ」ドンッ
「わっ――」ドンッ
「すっ、すみません……!」
彼方「いたた……こちらこそごめんなさい。前方不注意でした」
近江は私物を入れたバッグを提げ、少し急いでいる様子だった。 早歩きの近江の横に並ぶ。
「これからどこかに行かれるんですか?」
彼方「いやぁ〜……果林ちゃんのお迎えですよ」
彼方「あっ、朝香!朝香ですね」
「いつも呼んでいるようにして下さって結構ですよ。きちんと隠しますから。編集やナレーターのボイスオーバーなんかで」
彼方「あはは……お気遣いありがとうございます」
「それで、『お迎え』ということですけど」
彼方「えっと、んー……そうですね。果林ちゃんのイメージもあるので、いい感じにぼかしておいてもらいたいんですけど、方向音痴なんですよ」
「え?方向音痴?」
彼方「そう、果林ちゃんね。それはもうむごいくらいの方向音痴なんですよ〜……」
「えっと……じゃあ、散歩に行かれて、方向音痴で……迷子、ですか?」
彼方「ぷっ――迷子って果林ちゃんには絶対言わないでくださいね。拗ねちゃうんで」
「はっ、はい。それは弁えます」
彼方「まあGPSがあるから、位置は把握してるんだけど……雨も結構降ってるし、地下鉄やバスで帰ってくるよりは直接迎えに行っちゃった方が私としても安心できるし」
彼方「せっかくなのでお二人も来ますか〜?ちょうど私の車4人乗りなので」
「はい、お願いします」
彼方「あっ……カメラマンさん、傘とかあります?機材濡れちゃいません?駐車場までちょっと歩くことになっちゃうので……」
『あっ、ありがとうございます。防水なんで大丈夫ですよ』
彼方「へえ〜、防水なんだ……。やっぱりプロの機材は違うなぁ」 アトリエを出ると、篠突く雨の音がやかましく轟いていた。
並木道を逸れ、しばらく歩くと近江の自家用車兼、社用車があった。
旧式の白いルノーは中古で買ったものだ。
バタン バタン バタン...
彼方「ふう〜……濡れちゃったぁ〜。結構雨酷いですね」
「そうですね……私のハンカチで良ければ使ってください」
彼方「ありがとうございます……でも、自分の、持ってるんで。ありがとうございます」
車は駐車場を出て、13区内の通りを進む。
道路にできた水たまりに街灯の光が反射していた。
「雨のパリって乙な感じですよね……」
彼方「あはは……」
「朝香さんはどちらにいらっしゃるんですか?」
彼方「8区にいるみたいですね〜。さっき電話したら、雨宿りでカフェにいるって言ってました」
「えっ、8区ですか?ここから結構遠くないですか?」
彼方「歩きだけだと……う〜ん、1時間半くらいはかかっちゃうかなぁ」
「毎回そのくらい歩かれてるんですか、朝香さん」
彼方「そうですね〜。8区は果林ちゃん頻出エリアなんですよ、やっぱり服屋さんが沢山あるからかなぁ」
彼方「一番意味不明だったのは――えっと、うちのアトリエをしばらく南に行くと大学があるんですけど、その大学の構内で迷子になったっていう時が一番『なんで?』っていう感じでしたね、ふふっ」
彼方「事務の子としばらく笑っちゃいましたよ」 隙間なく建物が建ち並ぶフランスの街道を走る。
「は、はあ……そうなんですね」
「そういえばこの車、近江さんの車兼社用車っていうお話でしたけど」
彼方「はい」
「なんというか――」
彼方「ラグジュアリーブランドの癖にケチくさいなぁ〜、みたいな?」
「えっ!?」ビクッ
「……あっ、いえ、そこまでは」
彼方「経費削減の一環ですよ〜。アトリエで車を使うタイミングなんてそんなに無いですし、社用で使わないといけない時は私が出ちゃえばいいか〜っていう感じで」
「なるほど……」
彼方「まあ、うちみたいなところの洋服って高いじゃないですか、はっきり言って」
彼方「だからさぞかしぼったくってんだろって思われてるかもしれないですけど……いや、実は私も昔はそう思ってましたけど」
彼方「そもそも欧州での知名度はないし、うちの利益は大したことないんです」
彼方「売値はやっぱり高いし、原価率はファストファッションと大差ないので利益の絶対額は確かにあっても、いろいろ経費がかかるんです」
彼方「社外秘なので具体的には教えられないですけど」
彼方「まずゼロからデザインを作る分、それだけ時間も材料費もかかる。生地や素材にこだわるから仕入れもかさむ。工場から上がる製品のクオリティを担保するためにも安い国には投げられない。直営店の地代やスタッフの人件費。あとはブランドを維持するための広告宣伝費とか――」
彼方「あとは売れない商品をセールで売ったりとかもしにくくて……安売りするとブランド価値を毀損することになっちゃう」
彼方「最近は環境への配慮も求められてて、在庫の廃棄もしにくい。だから何着作るのかっていう計画や予測が大事なんですけど、そんなの正確に把握できたら誰も苦労しないじゃないですか」
「……」
『……』 彼方「それにコレクションのために作った服が売れるとは限らないし」
彼方「パリコレなんか見てると、こんなの誰が着るんだろ?って、服があったりするじゃないですか」
「ああ、ありますね……っていうかそれを近江さんが言っちゃって大丈夫なんですか」
彼方「あはは――まあ、ああいうのは、もちろん買ってくれるバイヤーやお客さんがゼロなわけじゃないですけど……やっぱりリアルクローズにはならなくて」
彼方「ある意味、ブランドの雰囲気だとかコレクションのメッセージを伝える役目もあるわけです」
彼方「そういうメッセージ性とか、独創性や目新しさを求める姿勢はパリコレだと特に顕著だから、うちの方向性としても東京でやってた時よりはそっち寄りにならざるを得ない」
彼方「独創的な服はむしろ果林ちゃんの得意分野だから、そこはまあ、見てろよ〜パリジャン!って感じなんだけど……」
彼方「でも、オフィスの移転費用もあって、借入金もかさんでる中で――もしコレクションがうまく行かなかったらって思うと……」
彼方「はぁ……」
彼方「なんかごめんなさい」
「いっ、いえいえ……!ありがとうございます、いや、そうですよね……ええ」
『……』
彼方「あっ、右。セーヌ川ですよ」
彼方「そういえば――さんはこれまでにフランスに来られたご経験はあるんですか〜?」
「いえ、私は今回が初めてです。っていうか初の海外なんです」
彼方「えっ!?そうなの!?えぇ〜……じゃあしっかり観光しなきゃですね」 確かにこれだとアパレル業界事情の知識を列挙してるだけと変わらんな しばらく更新ができそうにないので申し訳ないのですが一旦打ち止めにして、書き溜めてまた改めて立てようかと思います
保守していただいてありがとうございました、また見かけたらよろしくお願いします >>81
おつかれさまでした
会話の内容とか出てくる小道具がめちゃくちゃ写実的で引き込まれたのでいつか続き見れることを願って待ってます 写実的(笑)
自演するにしてももう少しうまくやれよ害フォンw >>81
待ってるよ
次はワッチョイ付けるといいかもね >>81
了解!乙です
めっちゃ好きなのでのんびり続き待ってます ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています