栞子「ここが二週目の世界ですか……」
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栞子「ぅ……ここは……」
栞子(目の前にスーツを着た女性……理事長……?)
栞子(ぼやけた視界に、だんだんとその姿が浮かび上がる……)
栞子(私は一体、何を……。どうして理事長室に?)
栞子(何か喋っているのは分かるけど、上手く聞き取れない。ノイズ交じりの声が耳を素通りしていく)
栞子(立ち眩み……貧血でしょうか? 目を閉じて深呼吸すると、だんだんと落ち着いてきました)
栞子(声のノイズが消え、視界も一段とクリアになって――)
???「栞子〜〜!!」ガチャ 栞子「……ランジュ?」
栞子(理事長室に飛び込んで来たのは、上機嫌な幼馴染の姿)
栞子「……どうしました? そんなに大きな声を出して」
ランジュ「あら? 驚かないのね? アタシの計画だと栞子の慌てふためく顔が見られるはずだったのに……むぅ、つまらないわ」
栞子「えっと……? どこに驚く要素があるのでしょうか」
ランジュ「このアタシがこんな狭っ苦しい国に来てあげたのよ? 充分なサプライズじゃない!」
ランジュ「それにしても懐かしいわね、栞子。ビデオ通話こそたまにしていたけど、こうして顔を合わせるのは何年ぶりかしら」
栞子「……? 今日も会いませんでしたか?」
ランジュ「何を言っているのよ? ……あぁ、そういうこと。アタシをからかっているのね。栞子にそんなお茶目な一面があったなんて」 ランジュ「……まあ良いわ。それより、紹介したい子がいるの。ミア、挨拶して。アタシの幼馴染で大親友の栞子に」
ミア「……Hai.I`m Mia」
栞子(ランジュの背に隠れていた女の子が、気だるげに顔を覗かせる)
栞子「ミアさん?」
ランジュ「あら、知っているのね。ニューヨークから連れて来たの。すごいでしょ」
栞子「知っているも何も……」
栞子(薄々気づいていましたが、この既視感は……あの時の。まるで時間が巻き戻ってしまったかのような……。これがランジュの言うサプライズだったり?)
栞子(半信半疑のままスマホを取り出して、カレンダーのアプリを立ち上げる)
栞子(嘘……。本当に、時間が……っ)
栞子(ランジュが何か話しているけど、言葉が耳から抜けていく。スマホを持つ手が震える)
栞子(信じられません……こんなこと) ランジュ「栞子? どうしたのよ。今はスマホよりランジュの話を聞く方が重要でしょ?」
栞子(ランジュの不満そうな声を受け、生返事に終始していた顔を持ち上げる)
栞子(……あぁ、彼女が何を話そうとしているのか、手に取るように分かってしまう)
ランジュ「いい? ここからが大事よ。アタシはこの虹ヶ咲学園で――」
栞子「スクールアイドルを始める……そう言いたいのではないですか?」
ランジュ「え? そ、その通りだけど……どうして分かったの?」
栞子「……ミアさんは世界に名を轟かせる音楽一家の次女で、稀代のヒットメーカーです。そんな方を伴ってこの学園に転入するということは、ただの気まぐれではなく何か目的があるはずです」
栞子「作曲といえば、虹ヶ咲学園にはスクールアイドル同好会があり、先のスクールアイドルフェスティバルでは国内外問わず大きな注目を集めました。当然、ランジュの耳にも入っているはずです」
ランジュ「……驚いたわ。そこまで推察できるなんて……さすがアタシの大親友ね!」
栞子「それほどでもありませんよ」
ランジュ「もっと自分を誇りなさい! そんなに謙虚だとアタシまで大したことないように思われちゃうわ!」
栞子「……ふふ、相変わらずですね」 栞子(それからも私の知っている通りに会話は進み、スクールアイドル部を作ると宣言してランジュは理事長室を後にしました)
栞子(なるほど。やけにリアルな夢ですね。知っていますよ、こういうのを明晰夢と言うんです)
栞子(本当に夢……ですよね? こういう時はアレです、試しに頬を……)ムニィ…
栞子「痛ふぁい……」ズキズキ…
栞子(それから数日ほど過ぎましたが、残念ながら記憶と寸分違わない日々の繰り返しです。月日も変化なし。どうやら認めるしかないようです……)
栞子(私は、過去に戻ってしまった……!) 〜栞子の部屋〜
栞子「はぁ……」
栞子(着替える気力も湧かず、制服のまま畳に寝転んで、胸元のリボンを緩めます)シュル…
栞子(天井をぼーっと見上げながら…………『見上げる』で合っていますよね? まあそれはともかく)
栞子「最後の記憶は……確か、その日も生徒会の仕事をこなしていて……」
栞子(靄がかかった記憶を、ゆっくりと手繰り寄せていきます……) 〜回想 生徒会室〜
栞子「ふぅ、こんなところでしょうか。お二人ともご苦労様です」
栞子「普段より早く雑務を終えることができましたね。……あぁ、お二人が監視委員の任を解かれたおかげですか」
右月・左月「…………」
栞子「今後は生徒会の仕事も捗りますね。本当に良かったです」
右月「……あの。それだけ、ですか?」
栞子「はい? 監視委員会は解散しましたし、お二人は同好会の皆さんを自由に応援することができますけど……」
右月「そういうことではなくて。私たちに何か、ないんですか?」
栞子「何か……とは?」
左月「……あの場では黙っていましたけど。謝罪、とか……」 頭痛が痛いなんて言葉なぁいから!頭痛がするでしょ!? 栞子「え。目論見通り、同好会の皆さんは極力活動を妨害されることなくゲリラライブも成功を収めました。監視委員も解散しましたし、むしろ感謝されていたではないですか。私も本当に良かったと思いますよ」
左月「本気で、言っているんですか? そんな、他人事みたいに……」
栞子「……?? 監視委員が解散するのは良いことですよね?」
左月「そういうことでは、なくて……っ!」
左月「私たち……あのオンラインライブで素性が割れていますし。もう、応援なんてとても……」 右月「そもそも、三船会長の指示では被害を最小限に抑えられていません」
栞子「……そうでしょうか? 徹底した監視ではないですし、ゲリラライブという手段も予想はつきましたが、予防策を張ることはしませんでした」
栞子「練習に関しても同様です。学内での活動であれば、見かければ取り締まるよう指示は出しましたが、監視委員はあくまで学校内の組織です。学外での活動を制限する権限は持ち合わせていません。聞いた話によると、音ノ木坂で練習していたそうですよ。音ノ木坂に限らず、別に近所の公園でも構わないんです」
栞子「加えて監視委員の人員はたったの二名。広大な敷地を有する虹ヶ咲学園であれば、部室が使用禁止にされていたとしても練習場所の一つや二つ確保できるはずです。毎度のように見つかる可能性は低いと思います」
栞子「繰り返しますが、私は徹底した監視及び練習の妨害は行わないよう指示を出したつもりです」
栞子「私は現場にいませんでしたし、取り締まりの裁量は与えていたつもりです。各々の判断で見逃せば良かったのではないですか……?」
左月「自分で指示を出しておいて、そんな言い方……っ」
栞子「えっと……事実を言っているだけなんですが」
右月「……もう良いです」
左月「……さようなら」バタン
栞子「行ってしまいました……。もう仕事もないですし、私も帰りましょう」
栞子「……あの二人、結局何が言いたかったのでしょうか?」バタン 監視委員会だけスクスタけら知能上げるのやめろ
あいつら絶対そんなこと考える頭ないからな 栞子「……監視委員会を発案したのはランジュですし。私も別に、好んで同好会の邪魔をしたいとは考えていません。むしろ応援したいと思っています」テクテク…
栞子「ランジュの行動を封じ込められていないのは事実ですが、それでも同好会はライブを成功させ、最近では部よりも精力的に活動できていますし、ファンの数も順調に増えているじゃないですか」テクテク…
栞子「監視委員による妨害も決して乗り越えられない困難ではなかった……」テクテク…
栞子「理解に苦しみますね。同好会にしても、元同好会のお二人との良好な関係は続いているはずですし、現時点で大きな問題はないはず……むしろ状況は良くなっています」テクテク…
栞子「なのに……書記のお二人、泣いていました。もしかして、私のせいで……っ!?」ズルッ
栞子「しまっ――!」
栞子(考え事をしていたせいで、段差に足を……っ!)
――ドサッ!
……………………
…………
……
… お前らも指示に従わないって選択肢があったんだぞ 甘えんな 指示に従わなかったら栞子がランジュにチクって退学だろ 〜回想終わり〜
栞子「……あぁ、全て思い出しました。というか、私…………っ」
栞子「どうしてこんなに人の気持ちが分からなかったんですか!!?」
栞子「空気も読めていないし無神経っ!」
栞子「あり得ないわ……。活動を極力妨害させない目的のためとはいえ、同好会のファンである彼女たちを監視委員に任命して……そもそもかなり妨害していましたし!」
栞子「彼女たちの協力がなければ、ランジュの指揮下でより徹底した監視委員会が設立されていたはず。心優しい彼女たちが断れるはずもありません……苦渋の決断だったのでしょう。断腸の思いで引き受けてくれたのでしょう……っ! 同好会のために!」
栞子「にも関わらず私は平然とした態度で謝罪の一つもなし。ランジュが作ってランジュが解散させたのだから我関せずといった感じで……。任命した責任は私にあるのにっ!」
栞子「盛大に頭を打ったせいでしょうか……目が覚めたような気分です。視界もとびきり明快、問題ありません」
栞子「……この事態は不可解ですが、なにも別の世界へ飛ばされたというわけでもありませんし、むしろ好都合です」
栞子「同じ轍は踏みません。書記のお二人を……大切な同好会の皆さんを悲しませないよう、私が行動しなくては!」
栞子「今日この瞬間から、あんな最低な未来とは決別です……っ!」 流石に退学にはならんだろうが内申はボロボロにされそう いやまずランジュに逆らえよ、友人として正せよ、従わないと死ぬのかよ 〜生徒会室〜
栞子「とは言ったものの、どうすればランジュを止められるのでしょうか?」
栞子(……まず、目標を決めておく必要がありますね)
栞子(最終的にはランジュが同好会誘致から手を引く、諦めさせるのが大目標です。部として活動するのは同好会の刺激にもなりますし、廃部まで追い込まなくても良いでしょう)
栞子(次点として、監視委員会の設立阻止、同好会メンバーの転部を防ぐ……といったところでしょうか)
栞子(しかしどうすれば……) 友達が泣いている時は一緒に泣いてあげればイイ
友達が悩んでいる時は一緒に頭かかえて悩んであげればいい
友達が脱糞した時はあなたも脱糞しなさい新ちゃん
どんな痛みも友達なら分け合うことが出来るのよ
そしてもし友達が間違った道を進んでしまった時は
その時は友情を壊してでも友達を止めなさい それが真の侍の友情よ レズレイプだな
同好会でどれだけ成長したかをわからせてやれ ランジュ「栞子〜! 部室ができたわ!」ガチャ
栞子「ノックもなしに……まあ、言っても聞きませんよね。それで、部室が完成したのですか?」
ランジュ「完成ではないけどね。まだまだ改良の余地はあるけど、とりあえず形になったというところかしら」
ランジュ「生徒会の仕事は終わったの?」
栞子「はい、今しがた片づけました」
ランジュ「ならちょうど良いわ、部に来て。アタシの指示通りに作った、素晴らしい環境を見せてあげる」
栞子「分かりました。では行きましょうか」
ランジュ「その後はトレーニングルームで練習ね!」
栞子「……はい?」
ランジュ「ん? 何よ」
栞子「えっと、私は同好会に……」
ランジュ「栞子は部に入るんでしょ?」 >>31
死ぬより酷い目にあうかも
日本はレールから脱線すると悲惨やぞ
お前らなんて積極的に同好会の妨害するやろなぁ 栞子「…………あ」
栞子(そうでした、この問題が残っていました!)
栞子(過去の私はランジュが来た途端あっさりと同好会を抜け、スクールアイドル部側についたのです)
栞子(あくまでランジュの横暴を止めるためでしたが……その成果は芳しくなく、同好会メンバーからの心証は良くありませんよね)
栞子(同好会を抜けず、ランジュと徹底抗戦すれば、私の本気を分かってくれるでしょうか)
ランジュ「……栞子??」 栞子「…………あ」
栞子(そうでした、この問題が残っていました!)
栞子(過去の私はランジュが来た途端あっさりと同好会を抜け、スクールアイドル部側についたのです)
栞子(あくまでランジュの横暴を止めるためでしたが……その成果は芳しくなく、同好会メンバーからの心証は良くありませんよね)
栞子(同好会を抜けず、ランジュと徹底抗戦すれば、私の本気を分かってくれるでしょうか)
ランジュ「……栞子??」 栞子(部への所属は、こんな私を誘ってくれたあの方を裏切るような行為です。これは、やり直すチャンスではないでしょうか?)
栞子(……あぁ。短い間ではありましたが、同好会での日々はとても楽しいものでした)
栞子(人の温かさに触れ、愚かな私を受け入れてくれて……)
栞子(同好会で過ごした時間が、走馬灯のように頭を流れて……)
栞子(………………。決めました)
栞子「はい。私は、ランジュの幼馴染ですからね。部に入りますよ」
ランジュ「当然よね! 早速部に案内してあげる!」
栞子「……ですが、その前に同好会を抜けることを皆さんに伝えないと」
栞子「私は後で顔を出しますので。……あ、場所は突き当りのところですよね?」
ランジュ「え? そうだけど……」
栞子「これも記憶通りですか。……ああ、いえ、こちらの話です。では失礼します」バタン
ランジュ「……あれ? 部室の場所って、ランジュ伝えたかしら?」 栞子(…………はぁ、やってしまいました。これで二度目の裏切りですね)テクテク
栞子(……でも、これで良いんです。悔いはありません)テクテク
栞子(だって私は、ランジュの幼馴染ですから)
――コンコン
栞子「失礼します」ガチャ
歩夢「あ、栞子ちゃん」
かすみ「しお子遅いよ〜。って、また律儀にノックしてるし」
せつ菜「あれ、今日は制服のまま来たんですね?」
栞子「……はい。今日は、皆さんにお話があって来ました」 栞子「先日、虹ヶ咲学園に鐘嵐珠という生徒が転入してきたのはご存知ですか?」
歩夢「あ、聞いたことある。ハーフの女の子だよね?」
せつ菜「噂になっていましたね。廊下を歩いていただけで、かなり人目を引いていました」
栞子「そのランジュなんですが、実は私の幼馴染でして……。言いづらいんですが、今後、同好会の皆さんにご迷惑をお掛けするかと思います」
歩夢「幼馴染かぁ……良いよね、幼馴染。でも、迷惑って?」
栞子「はい。そのランジュが、転入早々スクールアイドル部を立ち上げることになりまして……」 かすみ「スクールアイドル部? でも、うちの学園にはこの同好会があるよね。しお子、似たような部を承認しちゃうの?」
せつ菜「確かに、類似した部活は生徒会の審査で弾くことになっていますね。栞子さん、活動内容はこの同好会と同じなのですか?」
栞子「はい、同じだと思います」
せつ菜「でしたら、部の設立は難しいですね……。そもそも新規に部を立ち上げなくても、ランジュさんが同好会に加入すれば良いのでは? 私たちと同じくスクールアイドルが大好きな方なんですよね?」
栞子「それは、はい。スクールアイドルフェスティバルを見て同好会のファンになったと言っていました」
かすみ「えへへ、かすみんのファンに? まあかすみんの可愛さはグローバル級だからねぇ。分かってるじゃん、そのランジュって子」
しずく「同好会の、だからね?」
せつ菜「なるほど、ランジュさんは箱推しというわけですねっ!」
栞子「……ええと」
――ガチャッ!
ランジュ「もしかしてランジュの話をしてるの?? アタシも混ぜなさいよ!」
栞子「ランジュっ!?」 ひょっとしたらランジュちゃんも頭を強く打てばまともになるのでは 栞子(前の世界では、私がランジュとミアさんを同好会に連れて行きましたが……そうきましたか。話がこじれそうです)
ランジュ「きゃーっ、生で見る同好会の皆は最高に可愛いわねー!」
かすみ「可愛い……えへへ」
ランジュ「可愛いわよ、かすみ❤」
かすみ「はうぅぅっ」
璃奈「かすみちゃん……璃奈ちゃんボード『ちょろ〜ん』」
しずく「かすみさん、可愛いって言われ慣れてないから……」
かすみ「毎日のように言われてるって! 失礼な!」 ランジュ「それで、もう話は済んでいるの?」
せつ菜「ええと、ランジュさんがスクールアイドルを始めたいと……」
かすみ「かすみんの可愛さを理解してくれる人なら大歓迎ですよっ」
エマ「あのね、わたしも海外から来て、心細く思うこともあったけど……同好会の皆は本当に優しくて、温かい人たちだから、安心してね」
栞子(……あぁ、胸が……。締め付けられるように痛みます……っ)
エマ「ランジュちゃん、これから同好会で一緒に頑張ろうね?」
ランジュ「……? それは違うわよ。あなたたちがランジュのスクールアイドル部に入るの」
エマ「え……」 ここで同じ流れになるようだと結局この後もずるずるといくだけになりそう せつ菜「あの、言いづらいんですけど、既存の同好会と活動内容が重複している以上、たとえ規定人数が揃っていても生徒会の認可は下りなくてですね……」
ランジュ「そうなの? もう作っちゃったけど」
せつ菜「はい?」
栞子「その、ランジュは理事長の娘なので……」
せつ菜「そ、そんな滅茶苦茶な……まるでラノベじゃないですか!」
ランジュ「らのべ? とにかくもう活動場所はできているの。あとはあなたたちが部に移るだけよ!」
かすみ「ええと、そもそもどうして部を作る必要があるんでしょうか? 同好会に入れば良いじゃないですか」
栞子「それはですね――」
ランジュ「それは却下よ。見たところ、この同好会は成長できる環境が整っていないわね。最新の設備も一流のスタッフも何もかも足りていないわ」
ランジュ「でも安心しなさい。最高のスタッフ、最高の環境を整えたスクールアイドル部で同好会にできなかったことをさせてあげる! だから同好会なんて捨ててきなさい」
歩夢・エマ「…………は?」 彼方「今の話……さすがに眠気が覚めちゃったなぁ」
愛「うーん。それは言いすぎじゃないかな」
果林「あなた、同好会のこと何も知らないのよね?」
ランジュ「見れば分かるわよ? 何もないじゃない。あ、素敵なメンバーだけは揃っているけどね」
歩夢「……取り消してよ」
ランジュ「ん? 何か言った?」
歩夢「ここは、あの子と一緒に育んできた大事な場所なの。かけがえのない思い出がいっぱいあるの」
歩夢「……私たち、同好会でできなかったことなんてないよ。同好会だったからこそ、できたことばかりだもん」
かすみ「歩夢先輩の言う通りです! 黙って聞いていれば一体何なんですかっ! かすみんたちが大切に守り抜いてきた同好会を、そんな自分勝手な理由で悪く言わないでください! そんなの、廃部だって言ってるようなものじゃないですか!」
栞子「……」ビクッ ランジュ「そうは言っても、部に移った方が着実にレベルアップできるわよ。それも飛躍的にね。この同好会で活動を続けるメリットって具体的に何かあるの? 馴れ合うことが目的じゃないでしょう?」
かすみ「むきーっ! 何も知らない癖に、それ以上同好会を語るなぁっ!」
せつ菜「か、かすみさんっ、落ち着いてくださいっ!」
しずく「かすみさんどうどう❤」
かすみ「ウマじゃなーいっ! これが落ち着いていられますかっ! 大体、部に移るような裏切り者、うちの同好会には一人としていませんから! 残念でしたねっ! べーっ、だ!」
しずく「そうです、同好会は固い絆で結ばれているんです!」
ランジュ「……でも、栞子は部に移るんでしょ?」
栞子以外の同好会メンバー「………………え?」
栞子「……………………」 栞子(え、え。こんなはずでは……え)
栞子(脂汗が……止まりません。これほどの殺気……もといプレッシャーを感じたのは初めてです……)
かすみ「……しお子? 嘘だよね?」
歩夢「一緒に頑張ろうって、あの子とも約束し合ったよね?」
せつ菜「……栞子さん? 昨日の敵は今日の友、ですよね?」
栞子「……………………」
栞子「……………………ごべんなざいっ」ポロポロ…
栞子以外の同好会メンバー「!!!!!???」
栞子「わ、私は……ヒック、グス……ど、同好会を……抜けますっ!!!」ポロポロ…
栞子以外の同好会メンバー「!!!!!???」
ランジュ「ほらみなさい」
栞子「キッッ!!」
ランジュ「……っ!?」ビクッ
栞子「交渉は決裂しましたっ! ランジュ、帰りますよっ!」グイグイ
ランジュ「ちょっ、何っ、まだ話は終わっていないわよっ、栞子っ!? 押さないでっ!」バタン
栞子以外の同好会メンバー「………………え?」 〜部室〜
栞子(うぅ、最悪です……。ランジュのせいで、私の信用は地に落ちたようなもの……)
栞子(……いえ。もう決めたじゃないですか。私は同好会の皆さんと仲良くなるためにこの二週目を歩んでいるんじゃない)
栞子(全ては同好会の皆さんを守護るために行動しているんです!!)
栞子(なら、同好会側につくことは不利です。ランジュの所属している部に諜報網を敷けなくなりますし、余計な反発を招いてしまいます)
栞子(仮に敵対したところで、ランジュが大人しくなるわけがありません。ランジュの言う大親友の言葉を素直に聞くような性格じゃないということは、私が一番良く知っています)
栞子(……今後の私の役割は、ランジュの横暴を止めつつ、同好会側に危害が及ばないよう上手く立ち回る)
栞子(三船の家に生まれた私です……。スパイだって何だって、やってやります!!) 2週目だろうが栞子は栞子でしかないってのがよくわかる 一旦ここまでとなります
結末まで書いていないので、また書き溜めてきます 楽しみにしてるぞ
栞子メインだから荒れるかもしれないけど頑張って欲しい >>62
浪人生の合格率が必ずしも高くないのと一緒の理屈かな 栞子抜いたら総員2名でしかない部の創部を認めて多額の部費を割り振った生徒の責任者…
一体何者なんだ? 塩餡がアホみたいに荒らしにくると思うがめげずにがんばれ メインストーリーもうこんな風にタイムリープするくらいしか解決策なくない? 二週目の世界は初めてです……
の方がタイトル良かったかも… いうてワンピの手生える人も似たようなもんじゃなかったか? >>75
手生える人で例えるなら栞子のムーブはアラバスタで加入した直後にW7で離脱するような感じじゃね
栞子にも空島編みたいにちゃんと仲間やってる期間が必要だった 1週目の愛と果林は一体どういう誘い文句で部に行こうと思ったんだ 栞子は自分が悪だと認識していないプッチ神父みたいなドス黒さ >>80
というかほとんどのキャラがそんな感じ
加害者も被害者も悪いことを悪いとも思わないから悪びれないし謝らないし怒らない あの世界って悪の定義がねじ曲がってる気がする
俺らにとってはその行為は許されない極悪なんだけど、向こうでは軽く済まされるような
だからあれだけの仕打ちを受けても怒らないし感謝さえしたりするから理解のズレが生まれて心底気味が悪い 栞子(私にもっと権限があれば良いのですが……理事長の鶴の一声で部は作られましたし、それを生徒会でどうにか阻止できるはずもなく、その逆もまた然り……無い物ねだりをしても意味はありませんね)
ランジュ「…………むぅ」
栞子(……さて。ランジュはよほど納得がいかないのでしょう、頬を膨らませることで不満を表明しています。子供ですか)
栞子(呆れ交じりの視線に気づくと、ランジュは椅子から腰を上げ、大股で近づいて来ました)
ランジュ「ねえ、どういうこと? 報酬に糸目を付けず最新の設備を用意して、スタッフも各業界からトップクラスのプロを呼び寄せたわ。ランジュの部では、スクールアイドル活動をする上で申し分ない環境を提供できる……それはあの子たちにとって大きなメリットとなるはずよ」
ランジュ「専門スタッフの指導を受け、計算し尽された練習メニューに従って鍛錬を重ねれば、必ず今よりも成長できる。ランジュは見る目があるもの。あの子たちね、素晴らしい才能を秘めているのよ! なのに、あぁ……見ていられないわ。あんなお粗末な環境で練習しても時間と才能の無駄じゃない」
ランジュ「アタシの部に来ればもっと輝ける……もっと多くの人を魅了する一流のスクールアイドルになれるの! ……にも関わらず、断られた。意味が分からないわ」
栞子「それは……」 ランジュ「誰もが恵まれたバックアップを受けられるわけじゃないの。アタシは何も凡百のスクールアイドルを見境なく育てたいわけじゃない。魅力的なあの子たちだからこそ、このランジュが全力でサポートすると言ってあげたのに……」
ランジュ「同好会でできなかったことなんてない、とか何とか……」
栞子「同好会に愛着があるんですよ。そもそも急な話でしたし、もっと仲良くなってから説得を続けてみてはどうでしょう。初対面の相手に大切な同好会を捨ててくださいなんて言い方をされたら、普通は警戒されますよ」
ランジュ「……んー、それもそうね。お近づきの印に、今度ビュッフェに誘ってみようかしら」
栞子(よし、良い流れです。このまま機先を制して攻め切らないと……!) 栞子「そもそも、同好会の皆さんはランジュの実力を知りません。本当にレベルアップできるかの確証がないのでは?」
ランジュ「それは確かに! ランジュのパーフェクトなライブパフォーマンスをまだ見せていなかったわね!」
栞子(愛着とか、仲間の絆だとか、そういう感情論は説得材料になり得ません。一見無茶苦茶な思考の持ち主のようでいて、その実、ランジュは現実的な物の見方をしますからね。理路整然と説明するのが効果的です)
栞子「では、ライブに招待しましょう。スクールアイドルたるもの、正々堂々とライブで魅了すれば良いんです」
ランジュ「良いアイディアね! そうと決まれば早速ライブの準備に取り掛かるわよ!」
栞子(……ふぅ、とりあえずこの場は切り抜けられました)
栞子(ただ、時間稼ぎにしかなりませんよね……。ランジュの圧倒的なパフォーマンス力を見せつけられたとして、同好会の皆さんがあの人のいる同好会を捨てるでしょうか?)
栞子(おそらく、可能性は低いでしょう。野心のある果林さんは興味を示すかもしれませんが……転部を強いられるほどの決定打にはなり得ません)
栞子(私としても同好会の皆さんが部に流れるのは望ましい展開ではありませんし……どうすれば同好会メンバーの誘致を諦めてくれるでしょうか?)
栞子(早くも頭が痛くなってきました……けれど、私が考えなくちゃ!) やり方はともかく一理あるんだよな。妨害とか無理矢理勧誘とか小物臭いことしなければ 自分の魅力だけで惹きつけようとしないで親の力使って釣ろうとしてる時点でかなり小物だぞ スクスタで薄情な振る舞いを続けてきたメンバーを見てきてるから良心や愛着を信じることができないのがつれぇ >>90
親の力でも何でも良い環境を整えようとすること自体はそんな間違ってないと思うんだよな。それで他の妨害とかしなければな このssの結末は分からんがまともな人間なら一周目にここまで考えるんだよな
あいつ普段何考えて生きてんの? ぶっちゃけ妨害さえなければランジュはかなり擁護できる立場だった… 監視委員がなければそういうやり方もあるってだけだからな
まあプロの環境を揃えるならスクールアイドルなんてやらずにプロアイドルになれよと思うけど 環境の整った高校野球部みたいなものでそこで結果出せばプロへの道も開けると考えれば
ランジュのやり方もありだと思う。妨害さえなければな 〜後日 ランジュのライブ終了後〜
ランジュ「どういうことなの栞子っ、また断られたわよ!?」
栞子(ですよね……とは口が裂けても言えません)
栞子「ですが、皆さんランジュのライブパフォーマンスを絶賛していましたよ」
ランジュ「ええ、アタシの実力を本物だと認めてくれたのは嬉しかったわ! でも、それとは話が別ってどういうこと!? 自分たちの方法でこのランジュを上回れるわけないじゃない!」
栞子(別に勝負はしていませんからね。同好会の皆さんは自分たちの方法で高みを目指しているのです……と言ってもランジュは納得しませんよね)
ランジュ「話が違うじゃない、もぉ……。他に何か良い方法は――」
栞子「あります!!」
ランジュ「!? あ、あるのね……? 聞かせてちょうだい」
栞子「はい、言われなくても」 栞子(ランジュは自分本位の塊です……。私に似て頑固で、善意を押し付けてくる。一度確信したものをそう簡単に手放すはずがない)
栞子(入念な準備を整えて虹ヶ咲学園に転入してくる気合の入れようですから、あらゆる手を講じてでも同好会の皆さんを引き入れようとするでしょう。それほどに、あのスクールアイドルフェスティバルで見せた同好会のパフォーマンスは、ランジュの心を奪ってしまった)
栞子(魅了されたからこそ、もっとあの子たちを輝かせてあげたい、磨けば光る原石のままじゃ可哀想だ、とお節介を焼きたがる)
栞子(ランジュの行動は変えられない。これは確定。ならば……)
栞子「気になったのですが、いきなり入部というのは少々焦りすぎていませんか?」
ランジュ「何事も早い方が良いんじゃないの?」
栞子「早急すぎるんですよ。確かにランジュの実力は伝わりました。しかし自分がランジュのように成長できるのか、明確なイメージが結びつかないのでは?」
ランジュ「それほどランジュが圧倒的ということね! でも、困ったわ。まさか自分の高すぎる実力が仇になるなんて……」
栞子「大丈夫ですよ。ランジュの熱意は必ず伝わるはずです。……とりあえず、同好会の皆さんの不安を払拭するために体験入部を勧めるのはどうでしょう?」 ランジュ「体験入部? どうしてそんな遠回りをする必要があるの?」
栞子「いきなり入部ではハードルが高すぎます。理想と現実のギャップに打ちのめされる恐怖……ランジュには分からないでしょうね」
ランジュ「まあ、確かに部の練習はハードだけど……」
栞子「そこで体験入部をしてもらうんです。自信のある商品に試用版があるのと同じですよ」
栞子「粗悪なものなら試用の段階で見破られてしまいます。だからあの手この手で購買意欲を煽りますが……自信があって質の良い商品ならどうでしょう。饒舌な謳い文句よりトライアル訴求ほど効果を実感できるものはありません」ペラペラ
ランジュ「なるほど、考えたわね! 確かに転部というのは大きな決断を伴うし、一度入ったらそう気軽に抜けられないイメージがネックよねー。もし入部して自分に合わなかったら、と考えてしまうのも無理はないわ」
栞子「……あっ」
ランジュ「ん?」
栞子「いえ、何でも……」
栞子(ともかく、食いつきましたね。これで良いんです) 栞子「では、招待状を作りましょう」
ランジュ「そんなのいる? ランジュが直接話に行くわよ」
栞子「いえ、それだと警戒されるのが目に見えています」
栞子(また余計なことを言いそうですし……)
栞子「招待状を作り、私が説明を交えて渡してきます。何か伝えたいメッセージやアピールポイントがあれば教えてください」
栞子(さて、招待状を作っている間に次の一手を考えなければ……)
栞子(むろん同好会の皆さんがなびくとは思えませんが……少し手応えがほしいところですね。ランジュに無能の烙印を押されては話が通りづらくなってしまう)
栞子(三人……は厳しいでしょうか。二人くらいはこのトライアルに食いついてほしいものですね) 〜数日後〜
ランジュ「ほんとに来るのかしら?」
栞子「大丈夫ですよ。ランジュのパフォーマンス力は圧巻でした。ノーリスクなら参考にしたいと考えるのが普通です」
ランジュ「そうよねぇ。あぁ、誰が来るのか楽しみだわ。もしかしたら全員来ちゃうかも!」
栞子(それはないですけどね……)
――コンコン
栞子「噂をすれば」
ランジュ「同好会の人ね! 待っていたわ、大歓迎しちゃう!」
???「はいっ、失礼します❤」ガチャ しずく「ここがスクールアイドル部の部室……わ、海が見えるんですね♥」
果林「……へぇ、中々お洒落な部屋じゃない。部費がたんまりと掛かっていそうだわ」
愛「愛さんアガっちゃうなぁ」
ランジュ「きゃあ❤ 三人とも早速気に入ってくれたようね! さ、ゆっくりしていって。まずはランジュとお話しましょう!」
ランジュ「あ、ちょっと待ってて。今お茶を用意するわね」
栞子(まさか三人も来るとは……!)
栞子(それにしても、ウキウキのランジュ、可愛いですね……。果林さんの皮肉にも気づいていませんし)
栞子(……っと、外見に惑わされてはいけません。悪意のない善意がどれだけ人を傷つけるか……私は身を以て知りました)
栞子(人の適性を決めつけ、当人が望んでもいない道を歩ませる……それが幸せに繋がると、どうしてあの頃の私は思っていたんでしょう)
栞子(私と同じような過ちを、ランジュには繰り返してほしくありません) ランジュ「それで、三人はどうして来てくれたの? プロの環境に惹かれちゃった? それともパーフェクトなランジュに? どっちもかしら♪」
栞子(三人を椅子に勧め、ランジュが話を始めます。その顔は喜びで満ちています)
しずく「惹かれたというよりは、部がどのような活動をしているのか、主に同好会との違いについて気になったので。もちろん非の打ちどころのないパフォーマーのランジュさんにも興味がありますよ。ここまで圧倒的な存在は見たことがなかったので……」
ランジュ「見る目があるわね! 体験入部と言わず、気に入ったら今日からでも正式に入部しちゃって良いのよ? このランジュの許に来れば、同好会では得られない経験と成長を与えることができるわ!」
果林「私は、ランジュが普段どの程度の練習をしているかについて知りたいわ。正直、あのパフォーマンスは学生離れしすぎている……。悔しいけれど、レベルの差を痛感したわ」
愛「愛さんは、逆に同好会のことについてランジュに教えたいなって。もちろん、部について色々知りたい気持ちもあるよ!」
愛「ランジュのライブ、本当にすごかったからね! こう、見えない圧みたいなものが一気に押し寄せて来る感じで! せっつー以外にも、こんなスクールアイドルがいるんだって!」
愛「だから、ランジュに力試したいのもあるのかな」
ランジュ「へぇ、やる気充分ね! 愛の挑戦、ランジュはいつでも受けて立つわ」 果林「……元々、部の体験入部を決めたのは愛の勧めがあったからなの」
しずく「実のところ、同好会の大多数はランジュさんが立ち上げた部について、あまり良い印象は持っていなかったんです」
ランジュ「えぇっ、そうなの?」
栞子(あ、しょんぼりしました)
果林「そりゃあ、初対面の人に同好会を捨てなさい、ランジュの許へ来れば何もかも上手くいくわ、なんて言われて、信用できると思う?」
ランジュ「それは……そうね。栞子にも指摘されたわ」
しずく「でも、愛さんが部のことを良く知らないまま否定するのは違うって、そう言ってくれたんです」
果林「愛は色々な部活の助っ人として活躍しているから、一理あると思ったのよね。それで意見の一致した私たちが来たってわけ」
愛「百聞は一見に如かずってね。一週間の体験入部なら、活動に支障もないし。愛さん、ランジュとも仲良くできるのが一番だって思ってるからさ」
ランジュ「うんうん、良い判断だわ。早速トレーニングルームに案内してあげる」
しずく「あ、その前に一つ良いですか?」 ランジュ「どうぞ、何でも訊いて」
しずく「では一つだけ……。あの、仮に転部となった場合、どのようなライブパフォーマンスをすることになるんですか?」
ランジュ「良い質問ね、しずく! アナタたちはソロのスクールアイドルよね? そこはランジュの活動方針と一致しているわ」
ランジュ「アタシとしてはユニットを組んでも良いけど、中々ランジュに比肩するようなアイドルは現れないもの。アナタたちもアタシと同じく基本ソロで活動してもらって、それぞれの特色を活かしてもらうわ」
しずく「なるほど……」
栞子(同好会を知ってからまだ日も浅いのに、相変わらずランジュの観察眼は鋭いですね。確かに同好会は個を重んじています。下手に混ぜ合わせてしまうと、方向性の違いから充分なパフォーマンス力を発揮できません)
栞子(その観察眼で人の気持ちも見抜いてほしいものですね……) ランジュ「ただ、転部してもしばらくは基礎レッスンね。その域に達していないから」
果林「……」ピキ
栞子(うわぁ、平然と言い放ちましたよ。悪びれずに、よくもまあ……)
ランジュ「初めに言っておくけど、アタシが求めているのは完璧なパフォーマンス。それができないうちはライブにも出さないし、当分はバックダンサーからよ」
果林「……あの、喧嘩を売っているの?」
ランジュ「どうして? ランジュより実力が足りていないのにメインを張れるというの? それは完璧を求めるスクールアイドル部のコンセプトに見合わないわね」
ランジュ「練習の段階でランジュを超えられなかったのに、本番だとレベルアップして完璧になるのかしら?」
果林「……それは」
ランジュ「何もずっとバックダンサーを務めてもらうわけじゃないわ。少し言い方が悪かったわね」 ランジュ「部のライブは作曲家――ミアが作る楽曲に合わせているの。例えばその曲に一番合うのが果林なら、メインでそれを歌ってもらうわ。もちろん必要な実力を付けてもらった上でね」
ランジュ「楽曲に見合うのは誰か、総合的に判断して決めているのよ。実力が足りないうちは選ばれなくて当然。ただ、あなたたちはそれぞれランジュにないものを持っているわ。ランジュは完璧だけれど、何事においても適材適所があるの」
愛「えっと、完璧ならどんな楽曲でもカバーできるんじゃないの?」
ランジュ「できるわよ。でも、それはあくまでカバー」
ランジュ「そうね……しずくは演劇経験者でしょ? なら、私の言っていることが分かるんじゃないかしら」
しずく「……どんなに完璧な演技をする役者でも、例えば老婆の役なら、若い人よりもキャラクターの年齢に近い役者が演じた方がイメージに見合いますよね。決して演じられないというわけではありませんけど、確かにより適した配役になります。そういうことでしょうか?」
ランジュ「さすがね、しずく! ミアは何もランジュに合わせた曲を作るわけじゃないわ。その時の流行り、学園の生徒たちが好みそうなデータなど、あらゆる角度からの情報を分析した上で最高の一曲を生み出してもらっているの」
ランジュ「そして、その最高の曲に見合う人が最高のパフォーマンスを行う。……どう? 完璧なプランニングでしょ?」
愛「じゃあ、スクールアイドルありきで曲を作らないってことだね?」
ランジュ「そうなるわね。個人に合わせて曲を作った方がより親和性は高められる……けれど、それを評価するのは観客よ?」
ランジュ「アタシのための曲だからといって、そもそも観客の心に響かなかったら意味がないし、楽曲のパターンも似通ってきてしまうもの。だから曲優先ってわけ」 栞子(……練られていますね。ただ、ランジュの方向性……それは果たしてスクールアイドルと呼べるのでしょうか?)
栞子(別に、スクールアイドルの明確な定義は決まっていません。学生のランジュがやりたいようにやる、それもスクールアイドルなのでしょう)
栞子(でも、しっくりきません……)
ランジュ「案外、演劇部も兼任しているしずくの方が、部との相性は良いかもしれないわね。ほら、演劇も台本が先でしょ? そして、その役柄にどれだけ魂を近づけられるかが大事……そうよね?」
しずく「ふふ、そうですね」
ランジュ「果林も部の方針は理解してくれたかしら?」
果林「……ええ、良く分かったわ。誤解しちゃって悪かったわね。私の早とちりだったわ」
ランジュ「分かってくれれば良いのよ。他に異論や質問がないようなら……」
ランジュ「三人まとめてハグよっ♥ 一週間よろしくね!」ギュゥゥ
愛「あははっ、意外と情熱的だねぇ! 愛さんも愛情の深さじゃ負けてないぞー! 愛だけにっ♪」
栞子(とりあえず、話はまとまったようですね)
ランジュ「ランジュに任せてくれれば、無問題ラ!」
栞子(さて。一週間後の反応に備えて、次の一手を考えなくては……) 〜一週間後〜
ランジュ「ちょ、ちょっと、ほんとにもう戻っちゃうの?」
果林「あくまで一週間という約束だったから」
愛「いや〜、環境はとってもすごかったよ? ただ、活動するとなると、やっぱり愛さんは同好会が一番だなぁ。みんな大切な仲間だからね!」
しずく「練習メニューありがとうございました💙 この短期間で成長できた気がします💙」
――バタン
ランジュ「そんなぁ〜〜っ、何でなのよぉ……っ」 栞子「まあまあ。でも、確実に効果はありましたよ」
ランジュ「……そうかしら?」
栞子「ええ。部での活動は悪いものではありませんし、あの三人は自分が体験した実情を同好会内に伝えるはずです。そうしたら、ランジュの部に興味を抱く人もいるかと」
ランジュ「……それもそうね。ただ、もっと効率的な方法はないかしら。ランジュの部に入らざるを得ないような……」
栞子「あっっ!!」
ランジュ「わっ、どうしたのよ?」
栞子「この一週間、練習ばかりでしたからね。ライブを開催するのはどうでしょう? 生徒の人気を集めないことには、何も始まりませんよ」
ランジュ「そうね! ライブをしましょう! ……ただ、本当ならあの子たちもバックダンサーとして出てほしかったんだけど……」
栞子「いいですか、スクールアイドル部の現状としては、最高の環境で練習できるということ……ただそれだけです」
栞子「同好会の皆さんには披露しましたが、一般生徒に向けてのライブは開催していませんよね? つまり実績がないんです」 ランジュ「あっ! そういうことね!」
栞子「ええ。練習だけ上手くなっても、本番のライブで成功を収めない限り意味はありません」
栞子「生徒からの知名度と人気を得れば、同好会の皆さんも部に移りたくなるはずです。形だけはしっかりしているのに何の実績もない企業があるとして、ランジュはそこを信用しますか?」
ランジュ「しないわ! ……そうよ、実績! 栞子、善は急げよ! 今すぐにでもライブを――」
栞子「待ってください、慌てすぎです。何事も最初が肝心ですから」
栞子「改めてデータを集め直し、ミアさんに最高の曲を依頼して、パフォーマンスを磨く。それと並行してライブの周知も不可欠です」
ランジュ「それってどのくらいかかるのよ?」
栞子「……二週間ほどです」
ランジュ「そんなに待てないわよ〜っ」
栞子「最初で躓いたら全て瓦解しますよ? 生徒の好みに合わない楽曲、的の外れた演出、そもそも客の入りが少ない……そんなことになったらどうするんです?」
ランジュ「うぐぐ……一理あるわ」
栞子「徐々にファンを集めていくような泥臭い活動より、入念な準備を重ねた上で完璧なパフォーマンスを披露し、華々しくスクールアイドル部を始動させた方がランジュらしいです。同好会の皆さんも呼んで、完璧なライブの成功を突きつけましょう。ランジュの虜になること間違いなしです……!」
ランジュ「栞子……あなたっ」
栞子(さすがに盛りすぎましたか……?) ランジュ「アタシのこと良く分かっているわね! 完璧なパフォーマンスに華々しいスタート! それこそがランジュだわ!」
栞子「分かってくれれば良いんです」ニコ
栞子(作戦成功です……!)
栞子(一見してただの時間稼ぎ。けれど、それが正解なんです)
栞子(ランジュの行動を変えることは不可能。なら、その行動をある程度誘導しつつ、時間を稼ぐ)
栞子(一週間の体験入部に、二週間ほど時間をかけたファーストライブ。この調子で時間を稼ぎ続けるんです)
栞子(何もランジュが卒業するまで時間を稼ぐわけではありません。目的はただ一つ……あの方の帰国! それまでもてば良い)
栞子(間近で見ていて分かりました……あの人が不在のスクールアイドル同好会は屋台骨が半壊しているようなものです。そこをランジュの強引な手段で突き崩されればお終いです)
栞子(たとえ監視委員会が設立されてしまっても、あの人がいれば大丈夫なはず……)
栞子(それに、私だって監視委員を見過ごしません)
栞子(……だから、それまで何とか耐え忍んでみせます!)
……………………
…………
……
… 〜部室〜
ランジュ「ライブは大成功。部のファンも順調に増えているわ」
栞子「そうですね。週一のライブは敷地内に点在する各掲示板で周知してあります。抜かりはありません」
栞子(ついでに部が同好会と別物であることを強調しておきました。SIFの手柄を横取りするわけにはいきませんからね)
ランジュ「でもね、一向に同好会のメンバーがやって来ないの。どういうわけ?」
栞子「前にしずくさんが顔を出していましたよね」
ランジュ「お茶を飲んで帰って行ったわよ?」
『上品なお味です💙 とっても良い茶葉を使っていますね💙』
栞子「まあ関係が良いのは悪いことではありませんし」
ランジュ「そりゃあ、しずくはアタシの親友だもの、いつでも歓迎するわ。欲を言うと部に入ってくれるのが一番なんだけど……」
栞子(……そろそろ潮時でしょうか)
栞子(ミニライブを週一開催にすることでランジュの気を逸らしたりと、あの手この手で時間を稼いできました)
栞子(中でも講堂の使用許可がブッキングによって一週間以上掛かるというのは我ながら面白かったです。あの時のランジュ、さすがにキレ気味でしたね……)
栞子(……さて、次の策はどうしましょうか。うーん) 栞子「料理で釣る……とか」
ランジュ「え? どうして?」
栞子「押してダメなら引いてみろと言います。部に入れば美味しい料理が食べられるというのはお得ですよね」
ランジュ「毎日のように一流シェフの手掛けるビュッフェ断られているんだけど?」
栞子「……うーん。この作戦はなしですね」
ランジュ「……栞子。アタシの気のせいだと思うんだけどね?」
栞子「はい」
ランジュ「真面目に協力してくれているのは良く分かるし、ただの勘違いだと思うんだけどね?」
栞子「はい」
ランジュ「なんか、最近雑じゃない?」
栞子「…………。そんなことありませんよ」
ランジュ「そうかしら?」
栞子「はい」
ランジュ「まあそうよねぇ……栞子はアタシのために色々考えてくれているもの」
栞子「はい」
栞子(……さすがに雑でしたか) この栞子有能だけどやっぱ監視委員会は止められそうもないな
まあ栞子の発案じゃないんだから当たり前か
そしてあなたちゃんは役に立つのだろうか?
案外駄目すぎてしっちゃかめっちゃかになりそう
結局理事長をなんとかしないと駄目だな ――コンコン
ランジュ「! やっと部に入ってくれる気になったのかしら!」
栞子「まだ同好会の方と決まったわけではありませんよ」
ランジュ「きっと同好会の子よ。どうぞ、入って」
…ガラガラ
モブ子「し、失礼します……」
ランジュ「んー? ランジュのファンかしら? サインでもツーショットでもしてあげるわよ」
モブ子「あ、ありがとうございます。その、あとでいただきますっ」
ランジュ「今でも良いのに」 モブ子「あ、あのっ、私……ランジュさんに憧れていて、スクールアイドル部に入りたいんですっ」
ランジュ「……ええ?」
栞子(あ、ランジュの目が怪訝そうに細められました)
栞子(スクールアイドル部に入りたい、そう言った彼女を見やります)
栞子(リボンの色は黄色……私と同学年ですね)
栞子(丸みを帯びた顔立ちに、ショートボブの髪が良く似合っています)
栞子(愛らしい瞳をしていますが、少し長く伸びた前髪で半ば隠れてしまっているのは勿体ないです。背は低めで、少し猫背気味でしょうか)
栞子(容姿は可愛いけれど、雰囲気やおどおどとした口調、長く伸びた前髪が影を落としている印象です)
栞子(見た目に関しては、前髪の長さを調整し、胸を張るだけでもだいぶ見違えるはずですが)
栞子(スクールアイドルへの適性は……いえ、これは、また私の悪い癖ですね)
栞子(人は誰しも可能性を秘めています。私がスクールアイドルをしているように) >>125
監視委員の元締が面白いこと言ってらっしゃる ランジュ「うーん。とりあえず、ステップを踏んでみて」
モブ子「え……ええっと」
ランジュ「歌でも良いわよ」
モブ子「ぁ……うぅ」
栞子(言われるまま、彼女は口を開きます)
栞子(これは、ランジュの曲ですか。弱々しく震えていますが、綺麗な声をしています)
――パンっ!
ランジュ「――もう良いわよ」
モブ子「あ、え……?」
栞子(不意に乾いた音が響き、彼女の歌声を断ち切ります)
栞子(……ランジュは可能性ではなく、人を才能で判断してしまう)
栞子(勇気を出して地中から顔を覗かせた芽を、残酷に踏み潰してしまう)
栞子(出てこなかった方が良いよ、とでも言うように)
栞子(ランジュの唇が動いて、無感動な目で告げる――) ランジュ「不合格ね。スクールアイドルは目指さない方が賢明よ。冴えないし、特に才能も感じられないわ」
栞子「……ランジュ」
ランジュ「嘘を言うのはこの子のためにならないわ。適当に煽てて茨の道を歩かせるつもり? それは酷じゃないかしら」
栞子「……」
栞子(言い返せません……)
栞子(でも、彼女が心からスクールアイドルを始めたいのなら、それは正しい選択となり得ます)
モブ子「……ご、ごめんなさいっ。私、全然ダメダメで……っ」
ランジュ「あ、ちょっと待って、ランジュのサイン――」
栞子「行ってしまいましたね……」 ランジュ「そうね。……栞子、後で部のメンバーは募集していないって通知、掲示板に貼り出しておいて」
栞子「同好会の皆さんの勧誘、諦めてしまうのですか?」
ランジュ「あの子たちは例外よ」
栞子(まあ、そうなりますよね)
ランジュ「……あぁ、今日はなんかやる気出ないわ。ランジュもう帰る」
栞子(つまらなそうに独りごちると、ランジュも部室を出て行ってしまいました)
栞子(……予想外の展開です。とはいえ、とりあえず今日を乗り切ることができました)
栞子「ここにいても仕方ありませんね。私も帰りましょう」 〜中庭〜
栞子(そのまま帰る気分にもなれず、ふらふらと寄り道をしてしまいました)
栞子(あの生徒は……ランジュの一言でスクールアイドルを諦めてしまったのでしょうか)
栞子(ランジュの言動が、かつての自分に重なってしまう……)
歩夢「……あれ、栞子ちゃん?」
栞子「……あ。歩夢、さん……」
歩夢「こんなところでどうしたの?」
栞子「いえ、もう帰ろうかと。歩夢さんは……練習中ですか」
歩夢「うん、ランニング。体力つけるために頑張ってるんだ」
栞子「……こんなこと私が言うのもおこがましいですが、頑張ってくださいね。歩夢さんは素晴らしいスクールアイドルになれると思います」
栞子「それでは、さようなら」
歩夢「……待って!」 歩夢「私がなれるなら、栞子ちゃんにだってなれるよっ」
栞子「……そんな、こと」
歩夢「ねえ。栞子ちゃんは、どうして部に移ったの?」
栞子「それは……」
栞子「ランジュを……幼馴染を放ってはおけないからです」
歩夢「……うん。でも、それだけじゃないよね?」
栞子「え?」
歩夢「私たちを守るためじゃないの?」
栞子「……どうして、そう思うんですか」
歩夢「最近のランジュちゃん、良く勧誘してくるから。……ほら、ランジュちゃんは理事長の娘で、スクールアイドル部を作れるくらいだから、何でもできちゃうんでしょ?」
歩夢「だから、栞子ちゃんがランジュちゃんの側について、色々と抑え込んでいるんじゃないかなって」
栞子「……考えすぎですよ」 歩夢「栞子ちゃん、一人で抱え込まないで? 私たちのことを想っていなかったら、同好会を抜けるって言った時、あんな涙見せないよっ」
歩夢「同好会を抜けたあの日、幼馴染が迷惑を掛けるかもって、一番に私たちの心配をしてくれたよねっ」
歩夢「頼りないかもしれないけど、もっと私を……仲間を頼ってよ!」
栞子「……っ!」
歩夢「私が同好会を……スクールアイドルを諦めようとしていた時、栞子ちゃんは支えてくれたよね。今度は、私の番だよ」
歩夢「何かできることがあるなら、私を頼って!」
栞子「その言葉……」
歩夢「ふふ、覚えてる? 栞子ちゃんが言ってくれた言葉だよ」
栞子「歩夢さん……。私は、本当に良い友達を持ちましたね」
歩夢「私だけじゃないよ。同好会の皆も、栞子ちゃんのこと待ってるから」 栞子「……ありがとうございます。では、何かあればご相談するかと思います」
歩夢「同好会には、戻って来てくれないの?」
栞子「……それは分かりませんが。全部終わってからなら、あるいは……」
栞子(本当に、ありがとうございます。歩夢さんの温かな言葉に救われました)
栞子(でも……)
栞子(私が同好会に戻るような未来は、おそらくありません)
栞子(……さて、気を引き締めて考え直しましょう。あと、もう少しなんです!)
栞子(あの方が帰って来るまでの間、何としてでもランジュを抑え込んでみせます!!)
……………………
…………
……
… 〜講堂〜
あなた(すごい……っ! こんなライブ初めて見た!)
あなた(圧倒的な存在感! 鮮烈なスポットライトを浴びて、より際立ってる!)
あなた(完璧すぎるよ。こんな子が同好会に入ったんだ! ……でも、あれ)
あなた(栞子ちゃんは歌わないのかな?)
あなた(それに、いつもの衣装じゃない。服飾同好会に新しいのを作ってもらったのかな)
あなた(新衣装も似合ってるなぁ。同じく和のテイストで、凛とした栞子ちゃんの表情を引き立たせてくれる)
あなた(……あ、目が合った)
あなた(……笑ってる?)
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栞子(良かった、帰って来てくれたんですね)
栞子(あなたの同好会は無事ですよ)
栞子(誰一人として欠けていない、と言えば嘘になりますが)
栞子(私はカウントしなくて良いんです)
栞子(あなたというピースが嵌まって、元の同好会に戻るだけですから……)
……………………
…………
……
… 前半パート終了しました
深夜に続きを更新するかもしれません ここでも栞子ちゃんかわいそう、さすが栞子ちゃん、栞子ちゃんありがとうになってしまうのか? このしずく、部を無料のドリンクバーかなんかだと思ってるな… このしおってぃーには救われてほしいけどはてさて……
続きも楽しみにしてます! 1周目よりランジュというか部自体は強敵になってそう しずく、ノウハウと福利厚生だけ満喫してとっとと帰るってのは本編と同じで草 離反組はどうなるのかって思ってたのは1週間体験ってのは良い着地点
それはそれとして既にランジュを上手いように利用してるしずくで笑った 23章に限って言えば栞子も運営の言い訳に使われてる被害者だし…
まあ謝らないのに関しては想定通りな気もするけど 理事長カスだし裏切り組の内面が変わっただけ
栞子は先延ばししてるだけで何も解決できてなくね 問題はあなたちゃんが栞子ちゃんの想定通りの働きをしてくれるかどうか 栞子(目論見通り。あの方が戻ってからの同好会は、一本の芯が通っているかのような安定感を保っています)
栞子(魅力的な企画の立案に、メンバーのやる気向上、同好会にとっては良いこと尽くめです)
栞子(ランジュは同好会の部長や部員に接触を図り、事ある毎に勧誘を続けていますが、当然のように離反者はゼロ)
栞子(部長を中心としてまとまった同好会に、ランジュの甘言は通用しません)
栞子(また、同好会はスクールアイドル活動においても順風満帆です)
栞子(この頃は、部を差し置いて同好会の勢いは増すばかり。特にあの方が考案した、メンバーの持ち歌をシャッフルして披露するという企画は好評を博していましたね)
栞子(生徒に投票を呼び掛けることで注目を集められますし、ライブへの関心も高まります。また、応援している子が普段とは異なる楽曲を歌うことにより、元々その曲を担当しているメンバーにも興味が向く)
栞子(お互いがライバルであると同時に、彼女たちは仲間です。今回のシャッフル企画はスクールアイドルの新たな魅力を発見すると共に、お手本のような相互扶助を実現させていました。誰もが損をすることのない、素晴らしいライブです) 栞子(それに対して、ランジュ率いるスクールアイドル部は……)
ランジュ「納得いかないわ! どうして同好会の方が人気なのよ!?」
栞子(同好会に観客を奪われ、当初あった勢いが嘘のように萎んでいました)
栞子(まあ、一週目の制限された中でも部は押されていましたからね……)
栞子(特にあの方が帰って来てからの同好会の快進撃は、ランジュの心に多大なダメージを負わせました)
栞子(精神的に打ちのめされ、精彩を欠いたパフォーマンスでは、なおのこと観客の心は掴めません。スクールアイドル部は逆境に立たされていました)
ランジュ「……素晴らしいアイディアを思いついたわ。監視委員会を作れば良いのよ」
栞子(ついに、ランジュの口から邪悪がこぼれ落ちました) あなたいるし支持されてなけりゃファンからも敵扱いされるしヘーキヘーキ ここで栞子自身が泥をかぶるのか、他の妙案があるのか。さすがに前回と同じ間違いはしないと信じたい 栞子(しかし、前回とは状況が異なります。突破口は見えている)
ランジュ「……そうよ、同好会の活動を取り締まる組織を作れば良いじゃない。スクールアイドルの活動、練習からライブに至るまでの一切を禁止するの。当然、練習場所である部室も没収するわ」
栞子「その案、私は断固として反対します!」
ランジュ「どうしてよっ。ランジュに楯突くの!? 同好会の活動を取り締まれば、部に入らざるを得なくなるわ。それがあの子たちのためになるのよ」
栞子「残念ながら、その考えはもう破綻していますよ。本当に同好会の皆さんのためを思うなら、そのような発想には至らないはず」
ランジュ「なんでよ、言ってみなさい」
栞子「それは、部よりも同好会の方が人気を集めているからです。ランジュの提案は現状何の問題も抱えていない同好会にとってマイナスとなるものです」
ランジュ「う……ぐっ」 栞子「つまり、権力で同好会の動きを封じ、蹴落とそうとしているんです。ライブでは勝てないから」
ランジュ「……っっ!!」
栞子(眉をひそめていたランジュが、一転して言葉に詰まります)
栞子(ようやく気付きましたね。己の矛盾に)
栞子(前回と大きく異なる点、それは部の価値です)
栞子(前の世界で、部はSIFの手柄を横取りし、スクールアイドル同好会のメンバー数名を引き込み、完成度の高いライブパフォーマンスによってその地位を揺るぎないものにしました)
栞子(自分たちが何も困窮していない状況で、上の立場から同好会を押さえつけようとした。部に来ればメリットがあると)
栞子(しかし、今では同好会の方が優勢。部の立場は下になっています。そんな状態のスクールアイドル部に移ることは、生徒から絶大な支持を得ている同好会にとって不要、むしろ悪影響を及ぼします) 栞子「加えて言うなら、ランジュは親友の部室を奪えるのですか?」
ランジュ「……っ! それ、は……っ」
栞子(一週間の体験入部。そして、監視委員会設立までの間、ランジュは一部の同好会メンバーと交流を深めてきました)
栞子(ほぼ初対面に近い状態で監視委員会を立ち上げた前回とは、積み重ねた時間の重みが違います)
栞子(……一つ一つ、丹念に仕込んでいた策が、ランジュを追い詰めていきます)
ランジュ「――まだよっ!!」
栞子「……っ」ビクッ もとからしてここらへんの話に関わりないから当たり前だけど見事にミア空気だな ランジュ「アタシは負けていないわ。……そう、部には最高の環境があるじゃない」
栞子「その最高の環境で活動できている部の人気は低迷しているようですが?」
ランジュ「栞子っ、あなたどっちの味方なのよっ。ランジュの大親友じゃないの!?」
栞子「私はおかしい点を指摘しただけですよ。賢いランジュなら分かっているでしょう? ここで監視委員会を設立するのは愚策です、自分の首を絞めますよ」
栞子「私は、ランジュの身を案じてそう提言しているんです。分かっていただけましたか?」
ランジュ「ううぅぅぅ〜〜〜!!」
栞子(さあ、どう出ます? 無理やり監視委員を組織すれば、同好会のファンから反感を買いますよ。同好会からも失望されることでしょう)
栞子(加えて、ランジュは自身の力では及ばなかったと、敗北を受け入れることになります)
栞子(……それでも、監視委員が設立されてしまったら)
栞子(その時は、私が監視委員のトップに立ちましょう。同好会の皆さんに事情をお伝えし、きちんと根回ししておけば大きな問題にはなり得ません)
栞子(もう、前回の役立たずな私とは違うんです……!) ここまでは上手くいってるけど、ランジュは賢いけど暴走したら権力持ってるしね ランジュ「はぁぁぁ〜〜」
栞子(激しく感情を露にしていたランジュが、深々と息を吐き……)
栞子(私の目を真っ直ぐに見据えました。その瞳には、先ほどまではなかった強い意志の光が宿っています)
栞子(これは、闘志……でしょうか)
ランジュ「ねえ、栞子。さっきライブでは勝てないって言ったわよね?」
栞子「はい」
ランジュ「パフォーマンスも何もかも、ランジュの方が上よ」
ランジュ「アタシほど完璧を体現したスクールアイドルはいないわ」
栞子「それをどうやって証明するんですか?」
ランジュ「もちろん、ライブよ。同好会と直接対決するわ。ステージ上でランジュの偉大さを見せつけてあげる」
ランジュ「これ以上ないくらい、圧倒的にね!」
栞子「……なるほど」 栞子(いよいよクライマックスですね)
栞子「同好会側にメリットはありませんが?」
ランジュ「万が一、億が一もないでしょうけど、アタシが負けたらもう同好会からは手を引くわ」
栞子「マッチポンプじゃないですか」
ランジュ「とにかく、後は任せたわよ。ランジュは新曲の手配を済ませるから」
栞子(そう言って、ミアさんの作曲ルームに向かうランジュ)
栞子(あぁ……やっと、ここまで来ました)
栞子(最大の懸念事項であった監視委員会設立を阻止。後は同好会との直接対決でランジュが敗北を認めるだけ)
栞子(素直に敗北を受け入れれば、今後同好会の皆さんに危害が及ぶことはないでしょう)
栞子(……これまで、ランジュは圧倒的に自分が上だと思っていました)
栞子(でも、今はその立場が危うくなっている。自分の実力を見せつけることで、スクールアイドル部の優位を回復したい)
栞子(直接対決で同好会を下せば、部のメリットが証明されますからね。そうなれば、また監視委員会などという強硬策を用いて同好会メンバーの引き抜きに取り掛かる)
栞子(一見してスクールアイドル部にメリットしかないような対決ですが、これは背水の陣です。敗北を喫すればランジュの沽券にも関わります)
栞子(つまり、これが初戦にして最終決戦。ランジュに王手を掛けることができます)
栞子(同好会も、他の生徒たちも、ランジュによって貶められることがなくなります)
栞子(まずは、同好会側にこの話を承諾してもらわないと……!) 〜廊下〜
栞子(勢いで作曲ルームに向かったランジュを追いかけ、直接対決についての詳細を詰めた後……)
栞子(同好会の部室に行く途中で、かすみさんと遭遇しました)
かすみ「あれ、しお子どうしたの?」
栞子「かすみさん? ランニングの帰りですか」
栞子(練習着を身にまとって、首から黄色いタオルを掛けている。そんなかすみさんの目が、ちらりと私の手提げ袋に留まった)
かすみ「どうしたの〜? 同好会に戻りたくなっちゃった? ん? その袋はかすみんへの差し入れかな?」
栞子「……いえ、そういうわけでは。ただ、同好会にお話がありまして」 かすみ「なーんだ、残念。まあ知ってたけどねー」
栞子(あっけらかんと笑い、私の手を取る)
栞子「え、あ、あの?」
かすみ「部室に行くんでしょ? ほら、かすみんが連れてってあげる!」
栞子「いえ、場所分かりますし。って、廊下は走らなくても良いじゃないですかっ。校則違反ですよっ」
かすみ「いいからいいからー!」
栞子(かすみさんに腕を引かれながら、こんな何気ない日々に思いを馳せます)
栞子(明るく悩み一つないかすみさんの横顔に、同好会の平和な日常を垣間見ることができました)
栞子(それだけで、充分です)
……………………
…………
……
… あなた「監視委員……そんなことを考えていたんだね」
栞子「はい。あの手この手で同好会の活動を追い込もうとしているんです」
栞子「ですが、それもこのライブで同好会側が勝利すれば、ランジュは全てを諦めると思います」
栞子「……急な話ですみません。私としても、同好会の皆さんを巻き込んでしまうことは本意ではありません。けれど、もう私一人では抑えられなくて……」
歩夢「そんなことないよっ。相談してくれてありがとう」
あなた「そもそも、目を付けられているのは私たちだからね……。皆はこの話どう思う?」
かすみ「かすみんは賛成ですね。初めて会った時、同好会を好き勝手言われたので。ライブで勝っちゃえば、それを覆せるんですから! ランジュにぎゃふんと言わせちゃいましょう! ……あれ、中国語でぎゃふんって何て言うんでしたっけ」
せつ菜「あのライブパフォーマンスには目を見張るものがあります。ぜひ、一度お手合わせ願えたらなと!」
歩夢「私も勝負を受けた方が良いと思う。ここで逃げちゃったら、本当にその監視委員ができちゃうかもしれないし……。それに、これ以上栞子ちゃんが辛そうにしているところ、見たくないよ」
歩夢「……あ。ただ、対決って言ってもどういうルールになるのかな? 全員参加じゃないよね?」
栞子「ルールに関しては、講堂内に生徒を集め、ブレードの発色による集計で勝者を決めます」
栞子「勝負の形式ですが、三番勝負になります。ソロでも大丈夫ですし、デュオなどのグループでも問題ありません。また、一組につき一曲という決まりですが、こちらはランジュ一人のため、部は例外として一人三曲となります。」 かすみ「あれ、しお子は歌わないの?」
せつ菜「そのルールだとランジュさんが不利になりませんか?」
栞子「私はバックダンサーを務めます。ランジュは三曲連続で歌うことくらい余裕だと。……それに、自分の手で決着をつけないと気が済まないのでしょう」
あなた「……なんか、とばっちりだね。こっちはランジュさんに何かしたわけじゃないのに……」
栞子「すみません、昔からそういう性格なのです。私も苦労させられてきました」
栞子(……ここ数カ月は特に)
あなた「……そっか、栞子ちゃんも色々と大変なんだね」
栞子(詳細は分からないにせよ、私の心労を悟ったらしく、苦笑いする)
栞子(その顔を引き締めて、一度大きく頷いた)
あなた「うん、分かった。同好会はこの勝負、受けて立つよ。ライブの開催日は二週間後だったよね?」
栞子「はい。お手数ですが、当日は何卒よろしくお願いいたします」
あなた「もう、栞子ちゃん硬いよ。私たち友達なんだからさ、もっと砕けても良いのに」
栞子「癖のようなものなので……。それに、これでもあなたのこと、とても信頼しているんですよ」
あなた「……栞子ちゃん。……ね、このライブが終わったら、また同好会に――」 栞子「これをお返ししておきます」
あなた「あ……」
歩夢「え。栞子ちゃん、なんで?」
栞子「…………」
栞子(あなたがくれた、大切な衣装。これをスクールアイドル部の私が着るわけにはいきません)
栞子「すみません。私はスクールアイドル部に属しています。……だから、あなたが帰ってきたら、返そうと思っていたんです」
あなた「……そんな。これは、栞子ちゃんにあげたものだよ」
あなた「私が作ったものじゃないけど。一応、栞子ちゃんに似合うようイメージして、服飾同好会の人に相談して……」
あなた「だから、これは栞子ちゃんしか着れない衣装なんだ。栞子ちゃんに持っておいてほしい」
栞子「……では、訂正します。預かっていただけませんか?」
あなた「考えは変わらないんだね……。うん、分かった。でも預かるだけだよ? ちゃんと取りに来てね」
栞子「……そうですね。いつかは」
あなた「約束だよ。……あ、せめてこれを」
栞子(そう言って、袋の中から取り出したのは、ライブ用の髪飾り)
栞子(優しく手のひらに載せると、包み込むように握らせてくれる)
栞子「……ありがとうございます。大切にしますね」
歩夢「……栞子ちゃん。どうしてそこまで……?」
栞子「……私は、自分が思っている以上に弱いので。だから、この大切な衣装をお預けしたのは……そうですね」
栞子「――決意、でしょうか」 眠くなってきたので一旦ここまでとなります
時間を見つけて更新しますので、その際はよろしくお願いします 乙。会長選のこととか色々あるけどこれが24章でいいな 5chのSS書きですら出来る仕事が出来ない公式とは(哲学) タイムリープしなきゃやりなおせないレベルなんだよ
というかそれでも若干やり直せてないレベル 栞子「……なんて、決意表明としては最低ですよね。同好会の皆さんに勝ってほしいと、そう願っているのに。私は部について……。自分でもどっちつかずで、矛盾しているって分かります」
栞子「もはや裏切りかもしれません。同好会側にランジュの打倒を頼んでおきながら、大切な衣装を押し付けて、自分は部に味方するんですから」
歩夢「ううん、そんなことない。矛盾なんかしてないよっ」
歩夢「栞子ちゃんは、同好会も、ランジュさんも大切なんだよね」
歩夢「同好会の皆が傷つくのは見過ごせないし、ランジュさんのことも放っておけない。これって、おかしなことなのかな?」
歩夢「……気持ち、分かるよ。大切な……かけがえのない幼馴染だもんね」
歩夢「栞子ちゃんがついていなかったら、きっとランジュさんは一人になっちゃう」
あなた「そうだね。……栞子ちゃん、ライブでは全力でぶつかってきてよ。私たちは全力で栞子ちゃんの想いを受け止めるよ。同好会を大切に想ってくれる気持ち、ランジュさんを大切に想う気持ち、全部ひっくるめてね」
あなた「そして、私たちはスクールアイドル部に勝利する」
あなた「スクールアイドルとして、ステージ上で手抜きはなしだよ。お互い、力を出し切って頑張ろう……!」
あなた「……なんて、私は舞台袖から見守ることくらいしかできないけどね」
栞子「いえっ……いえ、そんな……こと……っ」グス
栞子「皆さん……本当にありがとうございますっ!」ペコリ 〜後日 スクールアイドル部 トレーニングルーム〜
ランジュ「――――っ!」
栞子(すごい……)
栞子(一糸乱れぬステップ。身体の末端まで洗練された身振り)
栞子(ランジュが華麗なターンを決めると、大粒の汗がきらりと舞い散ります)
栞子(その鬼気迫るような横顔からは、ランジュの本気具合が窺えました)
栞子(……やはり、超一流のパフォーマンスです。歌もダンスも、同好会の皆さんでは太刀打ちできないほど練られている。至高の領域に達しています)
栞子(部の人気低迷や集客問題……そんな雑念を取っ払い、ライブでの直接対決という一点のみに集中したランジュは、さながら一本の槍のようです)
ランジュ「…………あれ、栞子?」
栞子「あ、はい。タオルを渡そうと思いまして……」
ランジュ「謝謝っ。ん……ふぅ」
栞子「あんまり無理をしないよう、気を付けてくださいね。当日で倒れては元も子もありませんから」
ランジュ「言われなくても分かっているわ。体調管理を怠るようなパフォーマーは一流失格だもの」
ランジュ「それに、まだ全然余裕よ。息、上がっていないでしょう?」
栞子「……確かに」 ランジュ「ミアが最高の曲を書き上げてくれたんだから、ランジュも最高のパフォーマンスで応えなければいけないわ!」
栞子(自信に満ちた眼差し。不安や緊張といった感情を、そこに見出すことはできません)
栞子(油断も驕りも一切ない。ただ全力で、自身を完璧に近づけている……!)
栞子「問題ないようですね」
ランジュ「全くね。さっきのダンスも完璧だったでしょ?」
栞子「はい、完璧だったと思います。……ただ」
ランジュ「何よ? 完璧なら言うことないじゃない」
栞子「いえ。完璧だからこそ、当たり前にあるものに気づけないこともあります」
ランジュ「どういうこと?」
栞子(やはり、ランジュにはまだ見えていないようですね)
栞子(ここで教えても……きっとその価値を理解してくれない気がします)
ランジュ「まあ、別にどうでも良いけどね。ランジュは完璧だから」
栞子「そうですか……。では、私はこれで」
ランジュ「あれ、栞子は練習していかないの? バックダンサーだからといって手抜きは許されないわよ」
栞子「もちろんです。ただ、ここにいるとランジュの集中を乱してしまいそうなので。私は別の場所で練習しますね」
ランジュ「そんなの全然気にしないのに」
栞子「私が気にするんですよ」バタン 栞子「……練習場所、どうしましょうか」
栞子「……屋上にしましょう」
栞子(監視委員の妨害を受けた同好会は、よく屋上で練習していましたね……)
栞子(私の出番はバックダンサーがほとんどで、ソロパートはわずかですが……)
栞子(念には念を入れましょう。なにせ、部には私とランジュしかいませんからね)
栞子(……全力でぶつかると、同好会の皆さんと約束しました。それを反故にするのは、皆さんを信用していないと言っているようなものです)
ミア「あ、栞子」
栞子「ミアさん。……その荷物は買い出しですか?」
ミア「数日引きこもっていたせいで食料の備蓄が切れそうなんだ。まあ、おかげで最高の曲が書けたけどね」
栞子「それはお疲れ様です。ランジュもミアさんの曲に報いるため、練習を頑張っていましたよ」
ミア「ランジュの技術とボクの曲が合わされば敵なしだね」 ミア「ただ……最近納得できないんだ。あの同好会の曲、どういうわけか心に響く……」
ミア「あんな稚拙な曲……ボクの方が何十倍も完成度の高い曲を作れる。ランジュのパフォーマンスだって何の問題もない。完璧さ」
ミア「二つの最高が合わさっている……けれど、同好会を称賛する声の方が多い。意味が分からないよ。なあ、一体ボクの何がダメなんだ!?」
栞子(……このくらいの口添えなら問題ないでしょう)
栞子「いえ、ダメではないと思いますよ。優劣や、技術的な瑕疵ではなく、ランジュのスクールアイドルに対する向き合い方と、ミアさんの曲作りの方向性……それが必ずしもこの学園のステージで通用するわけではない、ということでしょうか」
ミア「……意味が分からないよ。そういえば昨日、ネットでも意味の分からないことを言われたな。思い出しただけで腹が立ってくるよ」
ミア「そもそもスクールアイドルって何なんだ。技術的に優れた曲が全てじゃないのか?」
栞子「それは……」 栞子「まずはスクールアイドルを知るところからですね。ミアさんは私とランジュ以外のスクールアイドルと接したことはありますか?」
ミア「ないよ」
栞子「でしたら、新米の私より適任な方をご紹介します。その方にご相談されたり、色々と訊いてみてはいかがでしょうか」
ミア「誰? その子」
栞子「同好会の天王寺璃奈さんです」
ミア「どうしてその子?」
栞子「さあ、どうしてでしょう。ただ、璃奈さんとミアさん、いくつか共通点がありそうです」
ミア「???」
栞子「仲良くなれる適性があるということです。……それでは、私はこれで。本日中に話を通しておきますね」
ミア「あ、wait――」
ミア「……面倒なことになったな。まあ、良いか。ボクの仕事は済んだんだ。ライブが終わるまでベースボールかゲーム、後は寝るくらいしかすることがないしね」
ミア「もちろん情報集めや曲のインプットくらいはするけど……はぁ」
ミア「天王寺璃奈……か。ライブの動画、見ておくか」
栞子(これで、また二人の交流が生まれると良いんですが……) 〜自室〜
栞子(念のため、確認しておきますか……)
栞子「……ふふ。簡素だった電話帳も、ずいぶん賑やかになったものです」
栞子「…………」プルル…プルル
歩夢『こんばんは、栞子ちゃん』
栞子「こんばんは、歩夢さん。こんな夜分遅くにすみません、少しご相談したいことがありまして……お時間大丈夫ですか?」
歩夢『うんっ、全然大丈夫だよ。相談って、何かあったの? もしかして、悩み事……とか? 私で良かったら力になるよ』
栞子「ああいえ、悩み事とか……そこまで深刻なことではないんです。でも、ご相談に乗っていただけるようで助かります。あ、もっと肩の力を抜いて良いですよ」
歩夢『う、うん。すー、はー……』
栞子「ふふ。落ち着きましたか? 相談といっても、確認みたいなものなんです」
歩夢『えっと、何か確かめたいことがあるの?』
栞子「はい。とてもシンプルな問いなので、そう気構えないでくださいね」 栞子「歩夢さんにとって、スクールアイドルとは何でしょう?」
歩夢『え? ええっと……何だろう。もう一人の自分自身でもあるし、日常の一部っていうか……うーん』
歩夢『あの子や、ファンの人が私のライブを観てくれて、笑顔になってくれるのが嬉しくて……。私自身も、可愛い衣装を着て、歌ったり踊ったりするのが楽しくて……普通だった私を変えてくれた、ときめき……?』
栞子「なるほど、とても参考になりました。ありがとうございます」
歩夢『……えへへ。あんな答えで良かったのかな?』
栞子「はい。とても歩夢さんらしい回答でした」
歩夢『……ちなみに、栞子ちゃんにとっては?』
栞子「……そうですね」
栞子「希望、でしょうか」
……………………
…………
……
… このSSの作者は田中仁やろ。栞子のキャラ改変がすごく上手い。
アニメ2期で栞子出すならこんな感じに性格を改変してほしい。 栞子「……ふぅ」ボフ
栞子(歩夢さんとの通話を終えると、布団で仰向けになり、ここ数日の出来事を思い返します)
栞子(……うん、全て順調。何も問題はない)
栞子(……でも。問題がないということは、ランジュの敗北を想定しているということでもある)
栞子(私は、あくまで公平なはずです。今までだってヒントはあった。ミアさんへの助言は……許容範囲でしょう)
栞子(まったく、我ながら甘いですね。ただ、私の見立てでは同好会側に勝算があります)
栞子(ランジュは実力で戦い、そして敗れる……)
栞子(けど、ランジュが勝ってしまったら? その可能性を否定することはできません)
栞子(たとえそうなったとしても……)
栞子「……私が、ランジュを止めるだけです。何度でも、策を考え……暴走するランジュを……私が……」スヤピ
栞子(じわじわと浸食して来る睡魔に、意識を明け渡します)
栞子(あぁ……何か、懐かしい光景が……)
……………………
…………
……
… 栞子(……楽しげな声が聞こえます)
栞子(公園に集まって遊ぶ子供たち……)
栞子(良いな。私もあの中に入りたいな)
栞子(この道を通りがかる度に、つい公園を眺めてしまう)
栞子(私にもお友達がいれば……あそこで遊べるのかな)
栞子(でも、今日だってお稽古ばっかりで……とてもお友達なんて……)
栞子(また今日も、公園を通り過ぎる……)
ランジュ「ねえ、そこのあなた!」
栞子「え?」 ランジュ「いつも見ているわよね? 一緒に遊びましょうよ!」
栞子「え。でも私……お友達なんて誰も……」
ランジュ「なら今日からアタシが友達よ! ほら、そんなところにいないで、一緒に遊びましょう!」
栞子「……あ。は、はいっ」
栞子(こちらに駆け寄って来て、腕を引かれる)
栞子(決して越えることはないと思っていた、柵の向こう側……)
ランジュ「アタシはランジュよ。あなた、名前はなんて言うの?」
栞子「三船、栞子です……」 ランジュ「そうっ。いーい栞子、これは鉄棒よ」
栞子「知っています……」
ランジュ「じゃあ逆上がりはできる? こうするのよっ」グルン
栞子「す、すごいです……!」
ランジュ「でしょ? ランジュはすごいのよ」
ランジュ「そんなすごいランジュと一緒にいれば、栞子も笑顔になれるわ!」
栞子「笑顔に……」
ランジュ「だってあなた、ずっと笑っていないでしょ?」 ランジュ「いきなり鉄棒は難しいから……そうね、あっちのブランコに乗りましょ」
栞子「ブランコ……乗るのは初めてです」
ランジュ「怖いの? 大丈夫、友達のランジュが付いているわ」ギュ
栞子「あ……」
ランジュ「栞子は一人じゃない。さぁ、一緒に楽しみましょ!」
栞子「は、はいっ」
ランジュ「……ふふ」
栞子「??」
ランジュ「栞子って、八重歯が可愛いのね」
あぁ……これは。
夢、ですか。
明晰夢……小さい頃の私が、ランジュと遊んでいて……
……温かい。
夢の中って、こんなに居心地が良いんですね。
できることなら、もっと長くこの夢を……
……いえ。
私にはやるべきことがあります。
――ランジュ。
私の大切な……幼馴染。
私は、あなたを………………
…………
……
… 〜ライブ当日 講堂前〜
栞子「いよいよ本番ですね……」
…ワイワイガヤガヤ
栞子「客の入りは上々。同好会と部のライブですから、当然ですね。講堂が満員になるかもしれません」
栞子「……おや」
右月・左月「あ、三船会長。お疲れ様です」
栞子「お疲れ様です。って、今日は生徒会の仕事は休みなんですから、そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ」
栞子「同好会と部のライブ、楽しまれてください」
右月・左月「はいっ」 栞子(……生徒会の雑務をこなしている時、同好会のファンだと教えて下さいましたよね)
栞子(あの時の笑顔を、こうして見ることができて良かったです)
栞子(前の世界では、恩を仇で返してしまって……)
栞子(生徒会長に就任した際、当時の副会長は辞めてしまい、困っていた私を書記のお二方が支えて下さいました)
栞子(一年で生徒会長、しかもあんな振る舞いで……到底納得できなかったでしょうに……最上級生の役目だからって……)
右月「三船会長」
栞子「はい?」 右月「会長は、ライブに出ないんですか?」
栞子「出ますよ。といってもバックダンサーですけどね」
左月「会長。私たちが同好会のファンだと話した時のこと、憶えていますか?」
栞子「……? はい、もちろんです」
右月「恥ずかしくてお伝えしていませんでしたが……。その同好会の中には、会長も含まれているんですよ」
栞子「え?」
左月「応援しています、三船会長」
栞子「……っ! 右月さん、左月さん……っ」
栞子「ありがとうございます。ご期待に沿えるよう、精一杯頑張りますね」
右月・左月「ふふっ」 〜講堂 舞台裏〜
ランジュ「良く来てくれたわね。この日をずっと楽しみにしていたわ」
あなた「さすが、自信満々ですね」
ランジュ「当然、勝つ気でいるもの。ランジュの実力を勝敗という形ではっきりさせれば、同好会の皆も部に興味を持ってくれるでしょ?」
あなた「それはどうかな……。ただ、勝つ気でいるのは同好会の皆も同じですよ」
ランジュ「そ。ステージで現実というものを見せてあげるわ。ランジュのパフォーマンスに酔いしれなさい」
栞子(本番当日を迎えても、ランジュの絶対的自信に揺らぎはない)
栞子(かといって、慢心もしていない……万全の体制ですね) ランジュ「トップバッターはランジュで良いのよね? 問題がなければ、早速始めるわよ」
あなた「はい。ランジュさんのステージ、楽しみにしていますね」
栞子(あの方の表情にも自信がみなぎっています)
あなた「僭越ながら、ランジュさんには本当のスクールアイドルをお見せできるかと思いますよ」
ランジュ「……面白い! 素人のアナタごときが語るスクールアイドルなんて、どうせ大したことないわ」
ランジュ「スクールアイドルはね、最高の環境で磨いてあげてこそ眩い光を放つの」
ランジュ「宝の持ち腐れだということ、ランジュが直々に教えてあげるわ! 覚悟しなさい!」
あなた「望むところです……!」
栞子(どちらの主張が正しいか、このライブではっきりするはずです)
栞子(いよいよ、幕が上がる――!) ラ板のSS書きが公式で果たすべき仕事してるとかいう重大バグ これがメインストーリーだったら、栞子の人気も爆上がりだったろうになぁ…
めちゃくちゃ期待 メインストーリーは手遅れ状態だから遡って監視委員会消さないと引き継ぐなんて無理でしょ… とりあえず今のストーリーをバッドエンドからの夢オチにしてこのSSを本採用しよう キャラの背景とか少なすぎるからただただムカつくだけなんだよな この先掘り下げられるなら良いんだが ここのしおってぃーには幸せになってほしいな……
めちゃくちゃ続きが楽しみです! 二章のやり直しにはなってるが一章の挽回はできてないから公式がこのシナリオだったとしても火種は燻ったままだと思うよ 20章公開される前はまた栞子と新キャラメインで9人空気かよって感じだったからな
それを下回るとは思わなかったけど 雨野見てるかー!?
ラ板住民がお前の書いたクソシナリオの尻拭いしてんだぞ!!恥を知れ 面白い
公式がアレだと二次創作で面白いのが出てくる現象やな
筆者にとって大好きなコンテンツだからこそなんとかしたいって思いがあるんやろうな 1から書いてる雨野に対して出てきたものの悪いところを洗い流して修正していってるんだから元より良くなるのは当然ではある
とはいえラ板の有志が雨野と同じ条件で1から書いてもあそこまで酷くはならんと思うが >>240
そういうのを組織でやってもらいたいんだよなあ。聞いてるか蟹 なんで金もらってるプロの雨野より一銭ももらってない素人のSSのがまともなんだよ >>242 まず監視委員会とかプロットの時点で没にすべきだしな
そう言う権利戦争をやる作品ならともかく、ラブライブでやるには余程上手くやらなきゃダメだった 山岡「このスクールアイドルは出来損ないだ とても見れたもんじゃない」 でも凡百のSS書きにはあのシナリオは思いつきもしないよ
そういう意味では才能あるんだろうね ここまでとは言わなくても親友ならもっと制止してほしかったね
スクスタのランジュと栞子はガキ大将と子分の関係だ とはいえ本編あってのコレだからね
これを本編で出されてたら面白かったというとそんなわけないし(メタ行動とりまくりだし)
ギアスとかアビス、種デスの断罪系(改変)SSみたいで懐かしいけど 種死がスパロボで救われたように、虹ヶ咲にもスパロボみたいなオールスタークロスオーバーが必要なのでは? 面白いけど本編でこれやってたら2ndシーズンでも栞子優遇かよふざけんなで終わりだっただろうけどね
あのゴミが地盤にあってこそ、このSSが面白くなってる
お台場だけに >>252
オールスタークロスオーバーがスクスタなんですが… むしろクロスオーバーしない方(アニガサキ)が救われてね? μ'sやAqoursが同学年に居る時点で本来存在できないパラレルワールドだからな そうだった、元々スクスタが夢のクロスオーバー作品として生まれてた ランジュ「さぁ、ランジュが支配してあげるわ!」
〜〜〜〜♪
栞子(相変わらずの圧倒的パフォーマンス力! さすがはランジュです!)
栞子(リハーサルの時以上に洗練されていますね。同じステージに立つことで、より彼女の非凡さを肌で感じます)
栞子(ミアさんが手掛けた完成度の高い新曲を、あの短期間でものにするとは)
栞子(最初からランジュのために生み出されたような、そんな錯覚すら抱かせます)
ランジュ「〜〜〜♪」
栞子(実力はやはり、ランジュの方が上!)
栞子(この講堂には同好会のファンも多いでしょうに、観客の目がランジュの存在感に釘付けです……!)
栞子(それこそ本当に、あっという間に会場内の空気を塗り替え、支配してしまった!)
ランジュ「〜〜〜♪」
栞子(……曲の最後、ランジュの華やかな高音が伸び上がる。一切のブレがない、突き抜けるようなロングトーン)
栞子(きまった! 歌もダンスも……っ!)
ランジュ「……ふぅ、無問題ラ。パーフェクトね!」
…………
……
… ここは議論・愚痴スレじゃないぞ他所でやれ
更新来たかと思ったじゃん ランジュ「さて、次は同好会の手番ね。誰が来てもランジュの勝ちは決まったようなものだけど……」
ランジュ「せつ菜かしら? それとも愛か果林……しずくの可能性もあるわね」
栞子(ランジュの言う通り、せつ菜さん濃厚でしょうか。単純に、ランジュのライブパフォーマンス力に対抗できるのはせつ菜さんくらいしかいません)
栞子(初戦で負けてしまっては流れが悪くなる。ここは実力者のせつ菜さんを選出し、ランジュに打ち勝たないと後がありません)
栞子(幸いにも観客の声が勝敗を左右するルールにおいて、『スクールアイドル優木せつ菜』の知名度と人気は有利に働きます)
栞子(逆に初戦でせつ菜さんが破れてしまうようでは、部の勝勢になりますが……)
ランジュ「あ、舞台袖から誰か……えっ!?」
栞子「……!」 >>261
すごいタイミングでちょっと笑ってしまった かすみ「えへっ。次はとびきりキュートなかすみんのライブですよー♥」
ランジュ「中須かすみ……っ!? どうしてっ!?」
栞子(なるほど、そう来ましたか……!)
ランジュ「かすみも魅力的だけれど、この局面でランジュに張り合うにはだいぶ力不足のような……」
栞子「……いえ」
ランジュ「栞子?」
栞子「良い勝負になると思いますよ」
ランジュ「え。確かにかすみは可愛いけれど、現時点でのパフォーマンス力はそんなに……」
栞子「技巧ではランジュの方が上ですね。圧倒的に」
ランジュ「ならどうして良い勝負になるのよ。曲に自信でもあるの? 新曲があるならどうしてランジュに教えなかったのよ、隠してたの!?」
栞子「早とちりですよ、ランジュ。かすみさんが歌うのは……おそらく」 〜〜〜〜♪ \Hey! Love! Come on かすみん!/
ランジュ「なっ……ダイアモンド!? このランジュ相手に既存曲で勝とうって言うの!?」
栞子「……やはり」
ランジュ「どういうことよっ、何か分かってるなら説明して!」
栞子「私の解説なんかより、ライブを見た方が早いですよ」
ランジュ「〜〜っ、勿体ぶっちゃって。このランジュが負けるわけ……あれ?」
かすみ「〜〜〜♪」
ランジュ「会場の盛り上がりが……え? ランジュの時より、どうして……っ!」 栞子(ランジュの新曲は、パフォーマンスと歌唱力を重視しています)
栞子(対するかすみさんのダイアモンドは、可愛さを追求しつつも客が楽しめるような構成になっています)
栞子(そして、既存曲ということはそれだけファンが慣れ親しんでいる……。かすみさんも歌い易いでしょう)
栞子(ランジュは新曲という要素を重要視していますが、ライブで一体となって盛り上がれるのは既存曲の方です)
栞子(盛り上がるということは、それだけ心を揺さぶられたという事実に他なりません) かすみ「は〜い皆さん、準備はいいですかぁ?」
観客『Yeah‼』
かすみ「L・O・V・E かすみん! いきますよ〜? せーのっ!」
かすみ「L・O・V・E かすみん!」
観客『L・O・V・E かすみん!』
〜〜〜♪
かすみ「合格っ♥」
観客『きゃ――――っ♥』
ランジュ「そ、そんな……嘘よ」
栞子(自らの敗北を悟ったランジュが、がっくりと項垂れます)
栞子(眩いステージ上を直視できないとでもいうように……)
栞子(かすみさん……。今のあなたは、それこそダイアモンドの輝きを放っていますよ……!) …………
……
…
栞子「集計の結果は……パステルイエローの方が勝っていますね」
栞子(目視でも分かるくらいには……)
かすみ「やったー! まずはかすみんの勝利です! ショウ・ランジュにぎゃふんと言わせてやりました!」
ランジュ「…………」
栞子(もはや何か口にする気力もないようですね……)
栞子(あれだけ完璧なパフォーマンスを披露したにも関わらず、かすみさんに出鼻を挫かれたんです……当然でしょう)
栞子「ランジュ、次の準備をしなくて良いんですか?」
ランジュ「……もう、どうでも良いわよ。このランジュが、負けたのよ?」
栞子(……! 手が震えて……) せつ菜「みんなぁ――っ!! 会いたかったよ――っ!!!」
観客『Yeah――っ!』『Fooooo!』『私も――っ!』
ランジュ「しかも次はせつ菜……こんなの、無理よ」
栞子(初めての敗北。それは想像以上の重みを持ち、ランジュの心に深く圧し掛かっている……)
栞子(戦意喪失……といったところですね)
栞子「……では、辞退するのですか?」
ランジュ「……ええ。スクールアイドルが、ランジュには分からないわ……」
栞子「ランジュ……」
栞子(かすみさんのライブを見る前の、自信に満ち溢れていた顔が嘘のようです……)
栞子(長い髪が垂れ、目元に暗い影を落としています……)
栞子(不謹慎ながら、こうなることは予想していました) 栞子「……では、ランジュ。そこで見ていてください」
ランジュ「……え」
栞子(ゆるゆると顔を上げる。頬に貼り付いていた髪が、はらりと垂れる)
栞子「私が出ます」
ランジュ「え、栞子が? でも……相手はせつ菜よ?」
栞子「勝てるわけがない。そう言いたいんですか?」
ランジュ「……だって」
栞子「同好会に勝負を申し込んでおいて、初戦で負けて出演を辞退。そんなことになったら、部はお終いじゃないですか」
ランジュ「………栞子としては、その方が都合良いんじゃないかしら」
栞子「! 気づいていたんですね」
ランジュ「……何となくね。ランジュより、同好会の肩を持っている気がしたわ……」
栞子「……そうですか。あくまで平等に接していたつもりですが……」 ランジュ「どちらにせよ、もう良いじゃない。全ては栞子のシナリオ通りなんでしょ?」
栞子「……はい。でも、今の私はスクールアイドル部の一員です」
ランジュ「え?」
栞子「不戦敗で、同好会に勝ちを譲ることはできません。それでは、ランジュの属するスクールアイドル部の名折れです」
ランジュ「…………勝てるの?」
栞子「さあ。新米スクールアイドルの私と、ベテランで名実共にスクールアイドルの鑑のせつ菜さん。勝率で言えば彼女に軍配が上がりますね」
栞子「ただ、勘違いしないでください。私は何も、せつ菜さんに勝つためだけにあのステージに上がるわけではありません」
ランジュ「……どういうこと?」
栞子「この話は、また後で。……準備をしてきます」
栞子(……覚悟はしていました)
栞子(でも、緊張で胸が高鳴っています)
栞子(それは、心地良い緊張感です……! あのステージに上がれること、ソロで歌わせてもらえることに、心底ワクワクしています!)
栞子「すぅ……はぁ……」
栞子(――髪飾りを、強く結び直す)
栞子「三船栞子、参ります!」 そういえば一周目ぶん長く練習してるのかこの栞子
ずるいな …………
……
…
栞子「〜〜〜♪」
ランジュ「……すごい」
ランジュ(あのせつ菜に迫るものを感じるわ……っ! もっとぎこちない印象があったけど、栞子ってこんなに上手かったかしら?)
ランジュ(とはいえ、技量的にはランジュや他のスクールアイドルに劣っている……。でも、この胸にこみ上げて来る感情は何なの……?)
ランジュ(ステージ上の栞子から、目が離せない)
ランジュ(栞子のパフォーマンスに応じて、観客も盛り上がっていく)
ランジュ(かすみのライブを観た時にも感じた、この一体感……) ランジュ(もしかしたら、あのせつ菜に勝ててしまうかもしれない)
ランジュ「……頑張って」
ランジュ(気づけば、声が漏れていた)
ランジュ(もう何も絞り出せないと思っていた喉が震え、想いを形にする)
ランジュ「栞子っ、頑張って!!」
ランジュ「……あ」
ランジュ(今、目が合った? ターンする時に一瞬、舞台袖のアタシと? 声なんて届いていないのに……? 気のせい……かしら)
ランジュ「……っ!」
ランジュ「栞子っ、頑張れ――っ!」 …………
……
…
栞子「はぁ……はぁ……はぁ……っ」
せつ菜「これは……判定待ち、ですね」
栞子(全てを出し切りました……)
栞子(私の力は、せつ菜さんに及んだのでしょうか……?)
スタッフの生徒「…………えー、結果が出ました!」
せつ菜・栞子「――っ!」ビク
スタッフの生徒「勝者は、優木せつ菜! よってこの勝負、スクールアイドル同好会の勝利となります!」
観客『わ――――っ!!』
せつ菜「やりました! ぶいっ!!」 栞子「……あ」
栞子(せつ菜さんが、勝った。ということは、私たちの負け、ですか)
栞子(当たり前のことを理解するまで、脳が時間を要しました)
栞子(それほど、悔しいのですね……っ)
栞子(……でも)
栞子(それと同じくらい、楽しかったです!)
ランジュ「栞子……」
栞子「ランジュ……」 ランジュ「その……素晴らしいライブだったわ。ランジュよりも、ね……」
ランジュ「でも、理由が分からないの。アタシは、完璧じゃないのかしら……?」
栞子「……いえ。完璧だったと思いますよ」
ランジュ「だったら、どうして……」
栞子「それは……。その話をする前に、聞こえませんか?」
ランジュ「え……? あっ」
観客『アンコール! アンコール!』
ランジュ「でも、もう決着はついて……」
スタッフの生徒『えー、ただいまのアンコールを受けまして、同好会側から提案がありました』
スタッフ『すでに勝ち星二で同好会の勝利が決まっていますが、ライブを続行するのはどうかと』
愛「最後は愛さんとカリンのデュオ曲なんだよね〜!」
果林「ファンの期待に応えるためにも、ぜひ披露したいわ」
愛「この日のためにたくさん練習してきたし、愛さんの生歌、皆も聴きたいよねっ! このまま歌えなかったら、身体が鈍っちゃうよ〜〜。ナマだけにっ!」
\あはははは!/ \プヒャヒャヒャ!/ スタッフの生徒「ということなのですが、どうでしょう?」
ランジュ「…………うぅ。栞子、ランジュは……」
栞子「はい。その提案、部は受け入れます!」
観客『やった――――っ!』『Foooooo!!』
ランジュ「ちょ、ちょっと! 栞子がステージに上がるんでしょうねっ」
栞子「はい。ただし、ランジュも一緒です」
ランジュ「何でよっ!?」
栞子「向こうがデュオらしいので。さ、行きますよ」
ランジュ「デュオの練習なんてろくにしていないし、無理よっ!」
栞子「今のランジュなら、私と組むのはちょうど良いじゃないですか。比肩するスクールアイドルが現れて良かったですね」
ランジュ「それアタシが弱ってるだけじゃない!? というか、そもそも音源がないわ!」
ミア『音源なら用意しているよ』
ランジュ「ミアぁっ!?」
栞子(イヤモニからの助け舟……もとい追い打ち。ナイスです、ミアさん) 栞子「もう決着は付いているんですから、別に良いじゃないですか」
ランジュ「絶対に嫌っ!」
栞子「そうやって、一生ステージに上がらないつもりですか?」
ランジュ「それは……っ」
栞子「躊躇いがあるのは、スクールアイドルに未練があるからです」
ランジュ「で、でも今じゃなくたって……!」
栞子「今ほどおあつらえ向きの舞台はありません。さあ、行きますよ」
ランジュ「栞子ぉ……っ!」 栞子「大丈夫、大親友の私が付いています」ギュ
ランジュ「あ……」
栞子「ランジュは一人じゃありません」
ランジュ「あ……れ? この言葉、どこかで……?」
栞子「……ふふ」
〜小さい頃のランジュ『大丈夫、友達のランジュが付いているわ』〜
栞子(ランジュ、あなたが私に言ったことですよ)
栞子(一人で縮こまっていた私を、外の眩い世界に連れ出してくれたんです)
栞子(だから、今度は私の番)
栞子「さぁ、一緒に楽しみましょう!」
…………
……
… 栞子「〜〜〜♪」
ランジュ(ライブ前に栞子が言ったこと……)
栞子『良いですか、ランジュ。お客さんに目を向けてください』
栞子『あなたが感銘を受けたスクールアイドルフェスティバル、あれは完璧でしたか』
ランジュ『完璧では……なかったけど。でも、胸が高鳴ったわ』
栞子『それが、スクールアイドルの輝きです』
ランジュ(こんな状態で観客を見ろだなんて、無理に決まってるでしょ!?)
ランジュ(ステップもタイミングがずれて、音程は波打ってる……っ)
ランジュ(緊張と不安で息が上がって、溺れそうなくらい苦しい……っ)
ランジュ(こんな情けない……これが完璧を追い求めたランジュの姿だっていうの??)
ランジュ(認めたくない……っ。でも、傍目から見ても明らかよ!) ランジュ(……完璧でないランジュに、価値はない)
ランジュ(ただのすごいランジュじゃ、もうダメなの。誰もアタシを見てくれない)
ランジュ(観客だって、呆れ返っているはずよ。下手したらブーイングが飛んでくるかも)
ランジュ(けれど……)
栞子『良いですか、ランジュ。お客さんに目を向けてください』
ランジュ(観客は、自身を映す鏡よ)
ランジュ(ステップはよろけ、声はみっともなく上擦る。イヤモニに返ってくる調子っぱずれな歌声が、他人のものにしか聞こえない)
ランジュ(この醜い自分を受け入れろってわけ……?)
ランジュ(……良いわ。大親友の言葉だもの)
ランジュ(そこにどんな意味が込められていても、アタシは――)バッ! ランジュ(…………え?)
ランジュ(皆、私たちを応援してくれてる……?)
ランジュ(光の向こう側で、ランジュに微笑みかけてくれたりして……)
ランジュ(そういえば、観客の顔を意識したことって、今までなかったわね……)
ランジュ(ステージに立つと、割れんばかりの歓声に、光の海が広がって……)
ランジュ(それが当たり前の景色だった……。だから、その一つ一つを確かめようとは思わなかった)
ランジュ(今のアタシなんて、誰も応援してくれるはずがない……適当にブレードを振ってるだけだって)
ランジュ(でも、違った。皆、こんな私を受け入れてくれて……)
ランジュ(……あ。あの子、見覚えがあるわ……)
ランジュ(そうよ、以前スクールアイドルになりたいって、ランジュの部に来てくれた子)
ランジュ(あんな冷たい言い方をして追い返したのに、あなた……まだ、ランジュのファンでいてくれたの?)
ランジュ(必死にブレード振っちゃって。ときおり心配そうに顔を歪めて……)
ランジュ(どうして、気づかなかったの? こんな近くで、最前列でランジュのことを見守って、応援してくれている人がいたのに……っ!)
ランジュ(ダメ。ここで泣いたら、台無しになる……!) ランジュ(……そっか。観客は、ランジュの味方でいてくれるのね)
ランジュ(でもランジュは、ファンに目を向けなかった)
ランジュ(最高の楽曲、最高のパフォーマンス、最高の演出……それで完結していた)
ランジュ(圧倒的なクオリティでその場を支配して、ただ一方的に自分の色に塗り替えて……それでお終い)
ランジュ(ファンの声援を、真摯な想いを、受け取ろうとしなかった)
ランジュ(そして、ファンに何かを与えようとも思わなかった。ただ自分が完璧でいれば良いと思っていた)
ランジュ(……違う! そうじゃない!)
ランジュ(ファンがいてくれて、初めてスクールアイドルは成立する!) ランジュ(……アタシは、貰ってばかりね)
ランジュ(……こんなアタシでも、応援してくれるファンの皆に、何か返せるのかしら……?)
ランジュ(――あ。声の震えが止まった)
ランジュ(声量も、出る。……これならっ! 次のソロパート、いけるわ!)
ランジュ「〜〜〜♪」
\きゃ――♥/
栞子「〜〜〜♪」ニコ
ランジュ「――!」
ランジュ(ありがとう……。もう、迷わないわ)
ランジュ(アタシは、スクールアイドルになりたいっ!!)
ランジュ・栞子「〜〜〜♪」
…………
……
… 24章のランジュや部の負けもこんな感じになりそう。これよりはクオリティ低そうだけど 〜ライブ終了後 講堂〜
あなた「あ、ランジュさん」
ランジュ「その……後片付けまで手伝わせちゃって、悪かったわね」
あなた「いえいえ。同好会と部のライブでしたから」
ランジュ「……そう。同好会のライブ……素晴らしかったわ」
ランジュ「……アタシの完敗よ」
あなた「――!」
栞子(ランジュ……大人になりましたね)
かすみ「へっへーん! かすみん大勝利――もごぉっ!?」
しずく「かすみさん、しーっ、だよ」
ランジュ「あと、まだ言いたいことがあるの」 ランジュ「……アタシ、同好会のことを悪く言ってしまったわ。本当にごめんなさい」ペコリ
栞子(あのランジュが、頭を下げた……っ!!? 謝った!?)
栞子(親友が頭を下げているのを見るのは初めてです……っ!)
ランジュ「それに、アナタにも失礼なことを言っちゃったわね……ごめんなさい。あ、日本では膝をついて頭を下げるんだったかしら……?」
あなた「わーっ! そんな土下座までしなくて良いから!」
ランジュ「そ、そうなの……?」
ランジュ「あと、謝罪の他にも言いたいことがあるの」 ランジュ「――謝謝。ありがとう」
あなた「えっ!? どうして、お礼なんか……」
ランジュ「今日のライブのおかげで、自分の足りないところに気づけたわ」
ランジュ「アタシは、スクールアイドルですらなかった。あえて言うならパフォーマーね」
ランジュ「だって、観客が全然見えていなかったもの。ステージ上で、ただ自分の完璧を追い求めていた……それだけよ」
ランジュ「ファンの皆は、完璧な曲とパフォーマンスを見に来てるんじゃないのね。観客が本当に見たかったのは、スクールアイドルよ」
ランジュ「全ては曲次第……そんな部のコンセプトは誤っていたわ。だって、それじゃ最高の曲を表現できるなら誰でも良いってことになるもの。ランジュでなくたって、実力のあるパフォーマーであれば構わない」
ランジュ「でも、ファンはランジュを……栞子を見たがっていた。最高の曲を表現するための器じゃない、スクールアイドルを見たがっていたの」
ランジュ「アナタのスクールアイドル一人一人を想って作った楽曲は、その子にしか表現できない唯一無二の輝きよ」
あなた「――! ランジュさんが、そんなふうに思ってくれるなんて……」
ランジュ「お世辞じゃないわよ? 心からそう思ったの」 ミア「……なるほど、そうだったのか」
ミア「ボクは、楽曲だけを見据えていた。でも、そうじゃなくて……キミの作る楽曲は、スクールアイドルの歌声が、想いが乗って初めて完成する。ボクのクオリティとバズる要素を加味して作り上げた楽曲が、スクールアイドルを求めている生徒に響かないわけだ……」
ミア「音源だけを分析しても心に刺さらなかったのに、同好会のスクールアイドルが歌うと心を揺さぶられる理由が分かったよ……」
あなた「……あはは。単純にクオリティ不足もあるけどね。でも、そう言ってもらえて嬉しいよ」
ミア「あ、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。……特に、璃奈の曲は素晴らしいよ」
璃奈「ミアさん、ありがとう。好き」
ミア「璃奈……っ」 ランジュ「えーっと、まあそういうわけよ。……あと、かすみ」
かすみ「ヴェッ、なな、何ですかっ?」
栞子(警戒しつつも、怯えの混じった目を向ける……)
栞子(そんなかすみさんを見返して、ランジュが優しく微笑みます)
ランジュ「かすみは、ランジュと似ているわね」
かすみ「へっ? かすみんとランジュ――先輩が?」
ランジュ「ええ。でも決定的に違ったわ」
かすみ「どっちなんですか……」
ランジュ「ああ、分かりにくかったわね。かすみは、ステージ上で自分の可愛いを追求している。そうよね?」
かすみ「はいっ、かすみんは誰もが恋に落ちちゃうような最高の可愛さを求めていますよっ。ステージ以外でも可愛いですけどね」
ランジュ「それに対して、ランジュは完璧を求めている……。でも、かすみの可愛いは一方通行じゃなかったわ。ファンの皆も、かすみの可愛いを求めている」
ランジュ「似ているけど決定的に違うと言ったのは、そういうことよ」 ランジュ「だからアタシは、皆に求められる完璧さを目指すわ」
ランジュ「自身のパフォーマンス力を高めるだけじゃなくて、ファンの想いにも応える。そうして客席からパワーを貰って、ランジュの完璧なステージは完成するの」
ランジュ「……アタシ、いつも以上に自分が完璧になれるステージが大好き。自分の可能性をぐんぐん超えていけるようで、ワクワクするの」
ランジュ「今後は、そのワクワクをファンの皆とも共有していきたい。ファンと一心同体で完璧なステージ作りを目指すわ!」
ランジュ「自分が納得のいく完成度のパフォーマンスで、ファンの想いや期待にも完璧に応えて、ランジュのライブを観に来てくれた人みんなが幸せになれるような、そんな完璧なスクールアイドルになるわ!!」
栞子(自分の中で答えを見つけたランジュは、憑き物が落ちたように清々しい顔をしていました)
せつ菜「これは……ますます手強くなりそうですね」ゾクゾク
あなた「これが、スクールアイドル・鐘嵐珠……っ!」
ランジュ「次勝負することがあったら、絶対に負けないから」
ランジュ「さ、帰るわよ、栞子」クル
栞子「はい。それでは皆さん、また学校で」
…………
……
… ランジュ「……ねえ、栞子」テクテク
栞子「はい?」テクテク
ランジュ「あの時……せつ菜が立ちはだかった時、栞子がステージに上がりたかった理由、分かったわ」
栞子「……答え合わせ、というわけですね」
ランジュ「そうね。まず一つは、ファンの期待に応えるため」
ランジュ「あの場にはスクールアイドル部の出番を心待ちにしているファンもいたわ。もしランジュも栞子もステージに上がらなかったら、ファンの期待を裏切ることになる。それではスクールアイドル失格よ」
ランジュ「そして二つ目。ステージに立つのが楽しいから」
ランジュ「スクールアイドルにとって、ステージは最高に輝ける場所だもの」
栞子「……ふふ。大正解です」 このくらい物分かりの良く他人の気持ちを察せるランジュが居たらなあ ランジュ「……アタシ、栞子と同じ気持ちよ」
ランジュ「早くステージに立ちたいわ! スクールアイドルに、なりたい!」
栞子(……あぁ。ランジュはもう、大丈夫なんですね)
栞子(ここまで長かったような、あっという間だったような……)ピタ
栞子(私のサポートがなくても、ランジュは立派なスクールアイドルになるんでしょうね)
栞子(私なんかが手の届かない次元に、遥か彼方に……) ランジュ「栞子?」クル
ランジュ「なに立ち止まってるのよ。早くこっちに来なさい?」
栞子「あ、えっと……」
タタタタタッ
ランジュ「ほーらっ」ギュ
栞子「!!」
栞子(駆け寄ってきたランジュが、力強く私の腕を引っ張る)
ランジュ「アタシには大親友の栞子が必要よ。当然、付いてきてくれるわよね?」
栞子「……!」
栞子「はいっ」 〜二カ月後 スクールアイドル部改め、スクールアイドル研究部〜
栞子(あれから、ランジュはスクールアイドル部の名称を『スクールアイドル研究部』に変え、部員を募りました)
栞子(入部に際して適性試験などはなく、面接で入部希望者をヒアリングし、目指すべきスクールアイドル像を問うと、その大半を通しました)
栞子(スクールアイドル研究部では、初級から上級まで三つのコースを用意。なるべく部員の希望に沿った振り分けを行いました)
栞子(ランジュの心情の変化。また、プロの指導を受けられるということもあり、門戸を開いたスクールアイドル研究部の名は一気に広まりました)
栞子(ランジュいわく、スクールアイドルは敷居が高い。作詞作曲、ライブ衣装の制作、演出面などを一般の女子高生たちが担うのは難しい。環境が整っていないと、そもそもスタートラインにすら立てない)
栞子(そこで、本当に部を必要としている人、スクールアイドルになりたい人の願いを叶えたいのだと言う)
栞子(もちろん入部にあたり部費はタダ。しかしその分、来年の入学希望者は大幅なプラスが見込めるらしいです)
栞子(SIFで知名度を上げた虹ヶ咲学園の、スクールアイドル志望者に対する受け皿が確保できていなかった問題を、ランジュのスクールアイドル研究部が解決したわけです)
栞子(――恵まれた環境でスクールアイドルの夢を叶えられる。理事長は今後、他校からスクールアイドルの編入生受け入れにも力を注ぐらしく、虹ヶ咲学園をスクールアイドルによって盛り上げる腹積もり……もとい経営方針らしいです)
栞子(利益や機材の一部は、SIFを成功に導いたスクールアイドル同好会にも流れるようで、平等に恩恵を得られる形となりました)
栞子(そして、ランジュは……) ランジュ「今の良いステップね!」
モブ子「は、はい! ありがとうございます!」
栞子(部長として後進の指導に取り組み、日々完璧を目指しながらスクールアイドル活動に邁進しています)
ランジュ「でも、ここの振りが甘いから……」ギュ
モブ子「はぅ……//」
ランジュ「……ん? どうしたの? 顔が赤くなっているわね……少し休む?」
モブ子「し、幸せです……//」プシュー
ランジュ「わ、大変っ。栞子、濡れタオル持って来て。この子、顔から湯気が!」
栞子「はい、分かりました」タタタ
栞子(あの子はつい先日、中級者コースに進んだばかりですよね。特にランジュの指導と相性が良いらしく、実力をどんどん伸ばしています)
栞子(私も追い抜かされないよう日々精進しなければ……)
栞子「ランジュ、濡れタオルです」
ランジュ「謝謝」 言われてみるとスクールアイドルは敷居が高いというのは本当にその通りだね。これならランジュのやり方は万人に開かれてる ――コンコン
ランジュ「……ん? お客さんのようね。ちょっと対応してくるわ」
モブ子「あぁ、ランジュ様の温もりが……」シュン
ランジュ「……! この声は――どうぞ、入って」
――ガチャ
あなた「今、ちょっと良いかな」
ランジュ「きゃあっ♥ アナタなら大歓迎よ!」
栞子(あのライブ以降、すっかり態度が変わりましたね……)ジトー あなた「実は、ちょっと相談したいことがあってね……」
ランジュ「そうなのっ? ぜひ聞かせてちょうだい!」
あなた「うん。ちょっと小耳に挟んだんだけど、最近同好会と部のどちらが優れているか、みたいな話をしている生徒がいてね。それで軽く喧嘩になっちゃったらしいんだ」
ランジュ「それは……困ったわね」
ミア「その話題なら、この頃SNSでも見かけるね」
ランジュ「んー……前に直接対決をしたせいかしら」
ミア「研究部の部員が増えて、勢いも増しているからね。以前からの同好会のファンは現状を快く思っていないのかも。もちろん部のファンの調子づいてる書き込みも見かけるから……うーん」
あなた「そこでなんだけど、今度は対決じゃなくて、同好会と部の合同ライブを開けたらなと思ってるんだ。どうかな」
ランジュ「良いアイディアじゃない! ステージ上で同好会のスクールアイドルと共演できるってわけでしょ? そんなの最高よっ」 ミア「ボクも……その、スクールアイドルとして出て良いかな? ダンスとかはまだ全然だけど……璃奈と共演したいんだ。そのための曲をキミと作れたら……って、話が進みすぎたか。Sorry」
あなた「共作曲……! それも良いね!」
ミア「ほんと!?」
ランジュ「ふふ、同好会と部の合同ライブ……決まりね! また楽しみが増えるわ!」
あなた「……あ、栞子ちゃん」
栞子「はい?」 あなた「合同ライブをするなら、この衣装……受け取ってくれるかな」
栞子(そう言って袋から取り出したのは、私のライブ衣装)
あなた「預かりっぱなしだったからさ。でも、合同ライブをするなら、この衣装を着ても問題ないよね?」
栞子「それは……はい。もちろんです」
栞子(衣装を受け取って、思わず涙ぐみそうになる)
栞子(この衣装を着て、またステージに立つことができるなんて……)
あなた「じゃあ、私はこれで。具体的に企画を練ってくるね。といっても叩き台になると思うから、またランジュさんたちの意見を聞けたら嬉しいな」
ランジュ「分かったわ、楽しみにしているわね!」
あなた「ありがとう! 一緒にたくさんの大好きが溢れるような、最高のライブを作ろうね!」
栞子(笑顔でそう告げると、胸のトキメキが抑えきれないというように、あの人は駆け出していきました)
栞子(その背を目で追っているのに気づいて、慌てて顔を伏せます) ランジュ「……ねえ、栞子」
栞子「何ですか」
ランジュ「追いかけても良いわよ」
栞子「え……」
ランジュ「アタシはもう大丈夫。だから、素直になりなさい」
栞子(……もしかして。自分はもう、不要なのでしょうか)
栞子(そう思ってランジュの顔を見ると……優しい目をしていました)
ランジュ「何も今生の別れってわけでもないじゃない」
ランジュ「それに、たとえ栞子が地球の裏側へ行ったって、アタシの大親友なのはずっとずぅっと変わらないわ……!」
ランジュ「だから……栞子」
栞子(透き通った空色の瞳が、波紋を生むように揺れ動きます)
ランジュ「ありがとう。――行ってらっしゃい」
栞子「……っ!」 栞子(受け取った衣装を、胸の前でかき抱く)
栞子(優しく背を押してくれた、大親友の言葉を噛み締めながら、私は席を立ちました)
栞子「こちらこそありがとうございますっ。行ってきます!」
栞子(立ち上がった勢いのまま、私は研究部の部室を飛び出して、遠く離れた背を追いかける)タタタタッ!
栞子(ずっと胸に秘めていた想い……やっぱり、私は……っ!)タタタタッ!
栞子「――――っ!」タタタタッ!
あなた「……ん? 栞子ちゃん?」クルッ
栞子「私を……っ」
栞子「スクール同好会に、入れてくださいっ!」
〜栞子「ここが二週目の世界ですか……」END〜 おつでした。二周目じゃなくてもこれに近いくらいのことをさせてればね。栞子やランジュだけじゃなくてこれなら誰も裏切らずに済んでるし おつ
俺は栞子編でリタイヤして一周目すら知らんが普通に面白かった、公式は相当酷いんだろうなぁ 最高のSSだった。栞子もミアもランジュも好きになれそう。 乙
こうして見ると本編の栞子は本当にランジュと同好会の両方に良い顔したいってだけだよな… ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
こちら過去作です。
せつ菜「今日は私の誕生日です!!」栞子「…………」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1596829323/ おつ。アニヶ咲の雰囲気に近い素晴らしいストーリーだった。
20章夢オチからのこの展開だったら炎上も収まっただろうになぁ… こうなってたらシラミなんて言われなかったね、後味良くランジュの人気もかなり上がってただろうし。
このシナリオだと栞子が嫌な面全てひっくるめて人気上位になる可能性高いよね。本当どうしてこうならなかっただよ。 >>1乙!
ホントどうしてこうならなかったんだ... まるでこれが原作なんじゃねえかってくらいクオリティ高かった、おつ スクスタ本編でもランジュが何故同好会の決して完璧ではないはずのパフォーマンスに惹かれたのかってことに焦点が当てられることになるとは思うけどねぇ おつ、お前が2ndシーズンだ
>>310
ゴミ屑って形容詞すら生温いレベル、読むに値しないからリタイアは正解 最後の対決でのランジュの心情変化の描写が丁寧で物凄く応援したくなった……
しおってぃーの頑張りも報われたしこれは素晴らしい名作
おつでした!!!!! ほんとにこれだったらなぁ……
すげぇ面白かったわ
この栞子は推せる キャラの成長が感じられとても良かったです
過去作も読んできます🙇♂ これでスクスタの虹ヶ咲2のページにモブ子がわらわら追加されるのか 王道でよかった
ただりなりーとミアちゃん絡ませる必要はなかったな たくさんのコメントありがとうございます!
ただ最後の最後で脱字をしていることに気づきました
正しくは以下の通りです
栞子「スクールアイドル同好会に、入れてくださいっ!」 >>353
ありがとうございます
勝手に脳内補完されていました… スクスタのストーリー読んでないから普通にしおラン好きになってしまった >>355
こういう人が栞子擁護していくんだろうなぁ
本編読んでないからまともな擁護不可能 良かったわ乙
公式もこうなる要素撒いてはいたけど、多分回収しないだろうなあ こういう展開なら栞子やランジュにもヘイトたまらないのに いや実際に本編でこうなってたら絶対さすしおさすしお言われまくって荒れるぞ
ぶっちゃけこのSSが評価されてるのはあの本編があるからこそのことっていうのがあるから そりゃ本編がないとリープ物なんて作れないし何をそんな 話の構成がよかった
誰かにヘイトを溜めなくても面白い話は作れるんだなって ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています