せつ菜「今日は私の誕生日です!!」栞子「…………」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
せつ菜「すみません、遅れました!」ガララッ
彼方「おや、主役は遅れてやって来るって言うけど、その通りだったねぇ」
彼方「せつ菜ちゃん、お誕生日おめでと〜。彼方ちゃんね、せつ菜ちゃんのことめっちゃ尊敬してます」
歩夢「せつ菜ちゃん、おめでとー」
愛「せっつーおめめー!」
果林「ずいぶんと個性的な祝い方ね……。おめでとう、せつ菜」
かすみ「もぉー、ほんとに遅いですよ、せつ菜先輩。かすみんお手製のスペシャルコッペパンが冷めちゃいますぅ」
せつ菜「皆さん、遅れてしまってすみません。……それに、私のためにありがとうございます!! 誕生日……憶えていてくれたんですね!」 せつ菜「ちなみにかすみさん、そのコッペパンはもしや……」
かすみ「むっ失礼な。何も小細工なんかしてませんって」
彼方「そうだよー。かすみちゃん、せつ菜ちゃんのために家庭科室まで借りて出来立てのコッペパンを作ってたからねぇ。悪戯心の代わりに愛情たっぷりなのさー」
せつ菜「彼方さんがそう言うのでしたら……。かすみさん、疑ってしまってごめんなさい。早速いただきますね!」
かすみ「分かれば良いんですよ、分かれば。って、そんなにかすみん信用ないですか!?」
せつ菜「あむ、もぐもぐ……んんぅ〜! ふわふわなパンの感触と焼きたての香ばしさ……堪りません!」
エマ「良いなぁ、美味しそう……」
かすみ「もちろん皆さんの分も用意していますよ!」
せつ菜「あぁ、今日は最高の一日です! 大好きな同好会の皆さんからこんなにも嬉しい言葉をいただけて、絶品のコッペパンまで……あれ?」
せつ菜「そういえば、栞子さんの姿が見えませんね」
あなた「栞子ちゃんなら、生徒会の仕事で少し遅れるって連絡があったよ」 せつ菜「そうでしたか……。生徒会、大変ですもんね。私も手伝いに行った方が――」
栞子「その心配には及びませんよ」ガララッ
せつ菜「あっ、栞子さん! もう雑務は済んだんですか?」
栞子「ですからこの部室にいるんです。私が仕事を放り出すような人に……いえ。そんなことよりも、せつ菜さん――」
せつ菜(栞子さんがこちらを見つめ、小さく口を開きます)
せつ菜(特徴的な八重歯がちらりと覗いて、しかし何も言葉を紡ぐことなく、その蕾のような唇を結んでしまいます)
栞子「………………」
せつ菜(……栞子さん?)
せつ菜「あの、何か――」
――ブツッ
…………
……
… せつ菜「……え? 夢?」
せつ菜(気づくと、机の上に突っ伏していました)
せつ菜(ここは……教室。でも、誰もいませんね?)
せつ菜「掃除を済ませた後、先生に用事を頼まれて……その後は」
せつ菜(記憶を辿ろうとするけど、何も思い出せません)
せつ菜(どうして私、教室で居眠りなんかしていたんでしょうか? 彼方さんの持て余した睡魔が移ったとか……)
せつ菜「ふふ、まさか」
せつ菜(自分で苦笑して、椅子から立ち上がります)
せつ菜(とにかく、ここにはもう何の用もありません。同好会の部室に行かないと)
せつ菜「〜〜〜♪」
せつ菜(先ほどとっても良い夢を見たせいか、気分が高まります)
せつ菜(もしかして、あの夢のように私を祝ってくれたりして。そんな期待を膨らませながら部室の扉に手を掛け――) せつ菜「すみません、遅れました!」ガララッ
彼方「おや、主役は遅れてやって来るって言うけど、その通りだったねぇ」
彼方「せつ菜ちゃん、お誕生日おめでと〜。彼方ちゃんね、せつ菜ちゃんのことめっちゃ尊敬してます」
歩夢「せつ菜ちゃん、おめでとー」
愛「せっつーおめめー!」
果林「ずいぶんと個性的な祝い方ね……。おめでとう、せつ菜」
かすみ「もぉー、ほんとに遅いですよ、せつ菜先輩。かすみんお手製のスペシャルコッペパンが冷めちゃいますぅ」
せつ菜「…………あれ?」
璃奈「せつ菜さん、どうしたの? 璃奈ちゃんボード『おろおろ』」
愛「きっと感動して固まっちゃったんだよー。でしょ、せっつー」
せつ菜「あ……いえ、はい。そうですね。皆さんが一斉に、こんなサプライズをしてくれるなんて……あ、部室の飾りつけまで……」
せつ菜(さっきの夢と一言一句違わぬ言葉。もしかして、と冷や汗が背中を伝います)
せつ菜(その後、皆さんにお礼を述べてから、かすみさん特製コッペパンを頬張って、そして……) 栞子「すみません、生徒会の仕事が長引きました」ガララッ
せつ菜「あ、栞子さん……」
栞子「どうしました? 私の顔に何か付いていますか?」
せつ菜「いえ、そういうわけでは……」
栞子「? 何もないなら良いんですが。……それより、せつ菜さん」
栞子「…………」
せつ菜(栞子さんが何かを言おうとして、その口を閉ざしてしまいます)
せつ菜(無言のまま、数秒ほど見つめ合い……)
――ブツッ
…………
……
…
せつ菜「また夢……ですか」 せつ菜(放課後の教室に、色鮮やかな夕焼けが差し込んでいます。先ほどと同じく、私以外には誰もいません)
せつ菜「やはり!! これはループしていますね!!」
せつ菜(思わず拳を握ってしまいます。だって、あのループですよ!?)
せつ菜「あぁ……まさかアニメやゲームで憧れたループ現象を体験できるだなんて……! 神様がくれた誕生日プレゼントでしょうか?」
せつ菜「そうと決まれば、この現象を楽しまなくちゃ!!」
―三回目のループ―
せつ菜「すみません、遅れました!」ガララッ
せつ菜「かすみさん、もしや後ろ手に隠し持っているのは特製コッペパンですか!」
かすみ「うぇっ!? ど、どうして分かったんですかぁ!?」
せつ菜「ふふふ、私の超能力……ですかね」
―四回目のループ―
歩夢「せつ菜ちゃん、おめでとー」
愛「せっつーおめめー!」
せつ菜「ありがとうございます!!」ペカー
五回目…六回目…七回目……
……
… せつ菜(最初の方はループを楽しんでいましたが……まさか、このままずっと抜け出せないなんてこと、ありませんよね?)
かすみ「せつ菜先輩、どうしたんですか? 汗すごいですよ?」
しずく「もしかしてかすみさん、コッペパンに何か激辛なものを仕込んだんじゃ……」ジトー
かすみ「仕込んでないってー! そうですよね、せつ菜先輩っ」
せつ菜「え、あ、はい。美味しいですよ、かすみさんの特製コッペパン」
かすみ「……何だか感情がこもっていませんねぇ。まさか味付けを間違って……ぱくっ。もぐもぐ……ませんよねぇ。いつも通り、世界一美味しい自信作です」
かすみ「なのに、まるで食べ飽きたような……」
せつ菜「……実は、その。私……信じられないかもしれないですけど」
かすみ「はい?」 せつ菜「何度も、ループしているんです!!」
かすみ「…………あー」
しずく「…………という、設定ですよね?」
せつ菜「違いますっ、本当なんです!」
あなた「確か、厨二病だっけ?」
歩夢「ふふ、ねえ覚えてる? そういえばあなたも中学生の頃に――」
あなた「わー! わぁー! 歩夢ちゃんそのことは言わないで!」
せつ菜(……ダメです、全然信じてもらえません)
せつ菜(そういえば、皆さんにおすすめした作品にループ物のアニメがありましたっけ。よもや私のオタク趣味が仇となるなんて……)
栞子「すみません、生徒会の仕事が長引きました」ガララッ
せつ菜(ああっ、そうこうしているうちにタイムリミットが!) せつ菜(……というか、このループのトリガーになっているのって、栞子さん?)
せつ菜(その可能性は高いですね。毎回彼女が何か言おうとして、そこで暗転しますから)
せつ菜(であれば、この場を乗り切るためには――)
栞子「あの、せつ菜さん?」
せつ菜「はい、はいっ!?」ビクゥ!!
栞子「あの……」
せつ菜「すみませんっ! 私、用事を思い出しました!!」
栞子「あ、ちょっと――」
せつ菜「さようなら!!」
――バタンっ!!
せつ菜「はぁ、はぁ……。これで、良かったはず……」
せつ菜「……でも、栞子さんの顔……悲しそうでした」
せつ菜「本当に、こんな結末で――」
――ブツッ
…………
……
… せつ菜「――はっ!」
せつ菜「そんな、また戻って……。栞子さんはトリガーじゃなかった?」
せつ菜「いや……一度接触した時点で、手遅れなのでしょうか」
せつ菜「でしたら、避けるしかありません。同好会にも寄らない方が良いでしょう」
せつ菜「皆さんに祝ってもらえないのは残念ですけど……仕方ありません」
せつ菜「立ち寄ってすぐに出て行くというのも、栞子さんに失礼ですし……帰りましょう」
せつ菜「……はぁ」トボトボ…
せつ菜「やっぱり、帰りたくない……。って、あれは!?」
栞子「…………? せつ菜さん?」 せつ菜(しまった! もうこんな時間でした! 帰りたくないからとゆっくり歩いていたせいで……!)
せつ菜(ですが、幸いにも距離は遠いです。聞こえないふりをして、このまま通りすぎちゃいましょう!)
栞子「あ、せつ菜さ――」
せつ菜(ごめんなさいっ、栞子さんっ!)タッタッタッタッ!
せつ菜(これも、世界のためなんですっ! 止むを得ない逃走なんです!) ―家―
せつ菜(結局、あのまま帰って来てしまいました)
せつ菜(どうやら、その選択が正解だったようです)
せつ菜(栞子さんと接触し、もうとっくに時間を遡っているはずなのに、私は何ともありません)
せつ菜(放課後、誰とも会わない誕生日……。このままで良いんでしょうか?)
せつ菜「……あ」ブーブー!
せつ菜「皆さんからのメッセージが……こんなに」 せつ菜「……やっぱり、ダメですよね」
せつ菜「逃げてばかりで、それで解決なんて。ちっとも私らしくありませんっ!」
せつ菜「待っててください、栞子さんっ! うおおおおおおっ!」
〜間〜
せつ菜「はぁ、はぁ……。栞子さん、まだ帰っていないでしょうか」
せつ菜「同好会の部室は……誰もいませんよね。だったら――」
――コンコン
せつ菜「失礼します!」
栞子「あ……どうして、ここに」 せつ菜「やっぱり。栞子さんといえば生徒会室ですよね」
栞子「……いえ。私は、その……引き継いだばかりですし」
せつ菜「その反応……まだ、引きずっているんですか?」
栞子「え?」
せつ菜「私に代わって新生徒会長に就任したことを負い目に感じている……違いますか?」
栞子「……そんなことありません」
せつ菜「とてもそうは見えませんよ。言ったじゃないですか、私は栞子さんに感謝しているって」
栞子「それは、そうですけど……」 せつ菜「本当ですよ。私は生徒会長より、心のどこかでスクールアイドルの方を優先していました。そんな私の隙を、栞子さんは見抜いたんです」
栞子「けれど私は、あなたの居場所を奪ってしまいました。それだけでなく、私怨のような形で……いえ、その通りですね。私の身勝手な都合で同好会を潰そうとして……」
栞子「そんな私が、今はスクールアイドルになっている。……せつ菜さんは、不満に思わないのですか? なぜ責め立てようとしないのです?」
せつ菜「それは、悪いことじゃありませんから。生徒会長になったのは、多くの生徒が幸せになるように導こうとしたからですよね?」
せつ菜「スクールアイドルになったのも同じ理由だと思います。……それって、栞子さんの大好きですよね?」 栞子「私の、大好き……」
せつ菜「そうです! 自分の中にある大好きを、大切にしてあげてください!」
せつ菜「同好会を廃部にしようとした一件は、確かに私情も混じっていたかもしれませんけど。悪意はないってちゃんと分かっていますから」
せつ菜「一人一人の適正に合わせた部活動を勧めることで、皆が幸せになれるようにした。スクールアイドルに関わって、不幸になったと思った人がいたから。そうならないように、栞子さんは全力を尽くしただけです」
栞子「もしかして、姉さんのことを……」
せつ菜「はい。スクールアイドルフェスティバルの後、ご本人から聞きました」 せつ菜「確かに方法は間違っていたかもしれません。でも、栞子さんは気づけたじゃないですか! 自分の過ちに。自分の大好きに!!」
せつ菜「私も栞子さんも、結局のところ想いは一つなんです! 皆に笑顔でいてほしい。そうですよね?」
せつ菜「ほら、私のこの顔を見てください!! これが悲しんでいるように見えますか?」
栞子「……っ! せつ菜……さん。私、その……」
栞子「ごめん、なさい……っ」ポロポロ…
せつ菜「良いんです。もう、良いんですよ」ナデナデ
せつ菜「幸せに、笑顔になるのは。私だけじゃなくて、栞子さんもですよ!!」
栞子「……せつ菜さん。私、スクールアイドルとして、あなたに伝えたいことが――」
――ブツッ
…………
……
… せつ菜(ループを終わらせる正しい条件。それはきっと、栞子さんが自分の内に抱えているものを吐き出すこと)
せつ菜(その想いは、私に関連していることでしょう)
せつ菜(私を見かけなかったり、きちんと接触しなければ、想いは膨らまずにループが終わる。それも選択肢の一つですが、正しいとは言えません)
せつ菜(逆に、接触して想いを膨らませてしまうと、伝えられなかった後悔でループする)
せつ菜(前回は、その想いを溢れさせてしまいましたね。結局、泣きじゃくってて肝心の言葉は聞けなかったんですけど)
せつ菜(もう、大丈夫でしょう。大好きな想いは時空を超えるはずです――) せつ菜「すみません、遅れました!」ガララッ
彼方「おや、主役は遅れてやって来るって言うけど、その通りだったねぇ」
彼方「せつ菜ちゃん、お誕生日おめでと〜。彼方ちゃんね、せつ菜ちゃんのことめっちゃ尊敬してます」
歩夢「せつ菜ちゃん、おめでとー」
愛「せっつーおめめー!」
果林「ずいぶんと個性的な祝い方ね……。おめでとう、せつ菜」
かすみ「もぉー、ほんとに遅いですよ、せつ菜先輩。かすみんお手製のスペシャルコッペパンが冷めちゃいますぅ」
せつ菜「皆さん、遅れてしまってすみません。……それに、私のためにありがとうございます!! 早速コッペパンをいただきますね!!」
かすみ「あ、はい。……えと、素直というか、疑ったりしないんですね?」
せつ菜「はいっ! かすみさんのパンは世界一ですから!」モグモグ
かすみ「……っ! わ、分かってるじゃないですかぁ、せつ菜せんぱぁい」
しずく「ふふ、かすみさん嬉しそう」 栞子「すみません、生徒会の仕事が長引きました」ガララッ
せつ菜「あ、栞子さん!」
栞子「……どうしました? 私の顔に何か付いていますか?」
せつ菜「ふふ。いえ、そういうわけではないですよ」
栞子「? 何もないなら良いんですが。……それより、せつ菜さん」
栞子「…………」
栞子「お誕生日、おめでとうございます。スクールアイドルにかける情熱を、私も見習わなければいけませんね」
栞子「スクールアイドルとして。自分の中の、大好きを大切にして」
せつ菜「はいっ!!!」ペカー 以上となります
せつ菜ちゃんお誕生日おめでとう!! >>24
ふと思いついたので書いてみました!
何とか落ちずに書き切れて良かったです! 8月だからエンドレスエイトもじってるのかな?
面白かった >>27
ありがとうございます!
そういえばその季節でしたね! ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています