愛「『攻略してほしい女がいる』……?」璃奈『無理なら絶対に返信しないように』
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愛「面白いじゃん、愛さんに落とせない女の子なんていないよ!」ポチッ
璃奈「愛さんなら、そう言ってくれると思ってた」
愛「りなりー! 何ですぐ近くにいるのに、わざわざLINEしたの?」
璃奈「こっちの方が、カッコいいと思ったから」
愛「確かに……。これから何かが始まる! って感じはしたけどー」
璃奈「うん。それで、LINEで送った通り、愛さんには、これからある女の子たちを攻略してほしい」 愛「アタシは、この装置でりなりーとの記憶を消す。それから、必ずもう一度りなりーと友達になる。そして――」カチャッ
璃奈「待って!」
パチパチッ
璃奈「! 愛さん……! 愛さん!」
璃奈「……どうして……」
璃奈「私は、今の言葉だけで十分だったのに……!」
愛「――どしたの?」
璃奈「!」
璃奈「愛さん!」
璃奈(ああやっぱり、あの装置は失敗作だったんだ。そう、思ったのに)
愛「あれ? 愛さん、キミとどこかで会ったことあるっけ?」
璃奈「……!」
璃奈(装置は、残念ながら、ムカつくほどに成功作だった)
璃奈「……私は、情報処理学科一年、天王寺璃奈。あなたと」
璃奈「――友達になりたい」 おつでした。そういう背景だったのか。ある意味自分の発明が完璧だったせいなのか 神のみ本編だとあまり記憶消えるの気にしなかったけどやっぱ辛えわ 乙
あのモブはアニガサキの住民じゃなくて、スクスタ出身のモブだな ※※※
璃奈(その後、愛さんと私は以前と同じとはいかないまでも、順調に仲良くなった)
璃奈(しかし、お互いの記憶の齟齬は所々に現れ、その度に暗い感情が私を支配する)
璃奈(愛さんは私を大切にしてくれたけど、恋愛的な意味での好意を持ってくれるようになる兆しはない)
璃奈(そんな時、私は一冊の漫画に出会った)
璃奈「神のみぞ……知るセカイ?」
璃奈(その漫画は、恋愛ゲームの天才である主人公が、様々な問題を抱えた現実の女の子たちを攻略していくという内容だった)
璃奈「これは……使えるかも」
璃奈「……」スマホトリダシ
璃奈(開いたのは、愛さんとのLINEのトーク画面。毎日一緒にいたから、実はまだLINEでやり取りをしたことは無い)
璃奈(もう随分と前に送ろうとして諦めた『よろしく』という文字が、送信前の状態で表示されていた) 璃奈「……」
璃奈『よろしく』
璃奈『よろし』
璃奈『よろ』
璃奈『よ』
璃奈『』
璃奈『攻略してほしい女がいる』
璃奈『無理なら絶対に返信しないように』
愛「面白いじゃん、愛さんに落とせない女の子なんていないよ!」ポチッ (回想開始)
――
――――
―――――
璃奈「こんな感じ?」ボードソウチャク
侑「良いね! 重量はどう? 付けたまま歌えそう?」
璃奈「大丈夫」
侑「ライブ本番楽しみだね!」
璃奈「うん」
璃奈(同好会に入って、色んな人と繋がれた。愛さん以外とも普通に話せるようになってきた)
璃奈(この同好会は本当に素敵。だからこそ)
璃奈(愛さんは大事にしたいよね?)
璃奈(愛さんがもう一回私を好きになってくれる保証は無い。……もう待つのは辞める)
璃奈(――愛さんが落ち込んでいるところを、私が攻略する) 順番間違えました。>>451の前にこれが入ります
――
――――
――――――
(回想終わり)
愛「……」
璃奈「……」
愛「りなりー……ごめんね」
璃奈「謝らないで。私が悪かったんだから。私が愛さんを信じられないなんて言ったから」
愛「忘れられる辛さは愛さんにもよく分かった。りなりーは、それをアタシに教えたかったんだよね?」
璃奈「……違う」
愛「?」
璃奈「私の目的は、愛さんに告白してもらった時から、ずっと変わってないよ」 ※※※
【ハルカカナタ編】
遥「私、お姉ちゃんが忙しすぎて、倒れちゃうんじゃないかって心配で……」
遥「それで、今日見学に来たんだ」
彼方「そうだったの……?」
愛「……りなりー?」ボソッ
璃奈「うん。今回の攻略対象は、彼方さんの妹さんみたい」ボソボソ
愛「これまた変化球だね……」ボソッ
璃奈「他校の生徒……難しそう?」ボソッ
愛「いや、やってみる!」ボソッ
璃奈(初対面の後輩、生徒会長、感性の違うスイスの女の子……。これまで愛さんは、何度も高いハードルを乗り越えてきた)
璃奈(きっと他校の生徒くらいじゃ簡単に攻略しちゃう)
璃奈「……!」ポチポチ
璃奈(彼方さんもかなり動揺してるみたい。これなら)
璃奈『今回は、近江姉妹二人を、同時に攻略する必要がある』
愛「……!?」
璃奈(戸惑ってる。流石の愛さんでも、今回で挫折するかな) ※※※
もんじゃ宮下店内を映し出すスマホ(盗撮は犯罪です)
璃奈(遥さんをもんじゃ宮下でバイトさせる。考えたね愛さん)
璃奈(一方では、侑さんとせつ菜中心に彼方さんのサプライズライブが計画されてる)
遥『すみません……。はい……すみません……』
モブ美『もういい、あんたじゃ話にならないわ!』
璃奈(……横暴な客。常連が客層の中心であるもんじゃ宮下では、あまり起きないタイプのトラブルだね)
愛『お客様』サッ
モブ美『!?』
モブ美『……何よ?』
璃奈(愛さん言い返すんだ。今はSNSにあることないこと書かれて店側が不利になるのに)
璃奈(そういう所も好きだけど、ここは私も動いた方が良いかな) ※※※
璃奈(久しぶりに良いことをした。とても気分が良い)
璃奈(愛さんたちはどうなったかな)スマホチラッ
愛『そっか。それじゃあ次は、それをこうやって』グイグイ
璃奈(……横に立って口頭で教えればいいのに。どうして抱きついて胸を押し当てる必要があるの)ムスッ
璃奈(愛さん、遥ちゃんみたいな子のほうがタイプなのかな……?)
璃奈(……)
璃奈(これは、ただの気分転換だから)ツインテムスビムスビ
※※※
璃奈(愛さんが彼方さんのサプライズに対抗して、遥さんもサプライズをやると言い出した)
璃奈(私が遥さんの真似をして髪型を変えたことに、愛さんは気付いていない。心の璃奈ちゃんボード『しめしめ』)
璃奈(それにしても、サプライズ思いついてその日にやるってどうなの)
璃奈(取り敢えず、ノッてくれそうなあの3人を呼び出して……) 〜
かすみ「……それで、かすみんたちに協力してほしいと」
せつ菜「確かに、ライブをするだけでは解決しないような気がしてきました……」
エマ「そうだよね。遥ちゃんを納得させることばかり考えてたけど、彼方ちゃんも変わらないといけないんだよね」
璃奈「うん。これまでは、他人の事情に踏み込みすぎるのはよくないと考えてたけど、3人ならわかると思う」
「「「???」」」
璃奈「本当に困ってる時、伸ばされた手は、とても輝いて見える」
璃奈(まあ、皆愛さんのことは覚えてないんだけど)
かすみ「確かに……」
せつ菜「ガンガン踏み込みましょう!!」
エマ「私も、もう頼られるのは待たないよ!」
璃奈(……仮に愛さんのことは覚えてなくても、記憶を操作されてなお、立ち直れた心はそのままなんだ)
璃奈(……また、対象置換の精度が証明された)
璃奈(……愛さん)
璃奈(やっぱり愛さんは、すごいよ)
璃奈(これで、次の作戦に移行できる) ※※※
璃奈(エマさんとかすみちゃんを近江家に、せつ菜さんをもんじゃ宮下に向かわせた)
璃奈(せつ菜さんは侑さんとかなり上手くいってる。これできっと歩夢さんは問題を起こす)
璃奈(その原因がせつ菜さんを攻略した自分にあると気づいた時、きっと愛さんにも何らかのダメージは入るはず)
彼方『じゃあ、愛ちゃんの所でなら……バイトしても、いいよ?』
遥『!』
せつ菜『彼方さん……!』
愛『……』ジッ
璃奈(愛さん……?)
璃奈(何故かさっきから、せつ菜さんばかり見てるような……)
※※※
璃奈(結局、愛さんは同時攻略までこなしてしまった)
璃奈(でも大丈夫。まだいくらでも手はある……)
璃奈(気になるのは、遥さんが今後ももんじゃ宮下でバイトをすることになったということ。流石にここを記憶操作すると、後々矛盾が大きくなる。それに)
璃奈(彼方さんが無理をし続けることになって、確実にまた同じ問題が起こる……)
璃奈(……!)
璃奈(どうして私、愛さんと自分以外の人の幸せなんか考えて……?)
璃奈(……最初は目的を果たすためだったけど、やっぱり私も同好会のことが好きになってるんだな……) ※※※
【しずく編】
璃奈「しずくちゃんの様子がおかしい?」
かすみ「うん……なんかね、いつものしず子より、『しゅ〜ん』って感じで」
璃奈「うーん。そうだったような……そうじゃなかったような……」
色葉「そういえば、主役降ろされちゃったって聞いたけど」
かすみ「ええ! なにそれ!?」
浅希「演劇部の子が言ってたの……それで、もう一回オーディションがあるって……」
かすみ・璃奈「……」
〜
かすみ「ねえりな子!」
璃奈「!? どうしたの、かすみちゃん」
かすみ「一緒にしず子を励まそう!」
璃奈「え」
璃奈(下手にしずくちゃんが立ち直る前に愛さんを向かわせたいんだけど……)
かすみ「ね! しず子も大切な友達でしょ!?」
璃奈(友達……)
璃奈「……うん」 ※※※
愛「じゃあ、今回の攻略対象はしずくなんだね?」
璃奈「うん」
璃奈(正直、しずくちゃんはこれまでの攻略対象の中でもかなり難易度が低い。悩みの原因が明確だし、ある程度攻略の道筋もはっきりしてる)
璃奈(ただ、同好会には心の隙間のある子が集まってると言ってしまっている以上、今後しずくちゃんが明確な悩みを表す保証が無いなら、愛さんに解決させた方が怪しまれない)
璃奈(それにしてもしずくちゃん、あんなに自分を否定して……)
璃奈「……ねえ、愛さん」
愛「どしたん?」
璃奈「愛さんは、自分のこと好き?」
愛「んー……アタシは、出来る限り自分を好きになろうって思ってるよ」
璃奈「どうして?」
愛「そりゃあ、アタシが自分のこと好きじゃなかったら、愛さんのこと好きになってくれた子たちに失礼じゃない?」
璃奈(ああ……)
愛「それに、他人を愛するには、まずは自分を愛せってね! 愛だけに!」
璃奈(やっぱり愛さんは、すごいな)
璃奈(でも……)
璃奈(愛さんは、誰を愛したいのかな……?) ※※※
璃奈(かすみちゃんと話して、かすみちゃんの中では攻略時の愛さんがしずくちゃんに置き換わってることがしっかり確認できた)
璃奈(正直しずくちゃんは消化試合だと思っていたけど、これは使えるかもしれない)
璃奈(それにしても……)
璃奈(自分を愛していない人が他人も愛せないとすると、私は今、本当に愛さんを愛せてるのかな?)
※※※
かすみ「かすみん、ちょっと校舎内の可愛いを探してきますっ!」
果林「普通にトイレって言いなさいよ」
かすみ「かすみんはおトイレなんか行きません!」
果林「ふふっ、はいはい」
かすみ「ではっ!」ガラガラッ
璃奈「……私も行ってくる」 ※※※
璃奈(無事かすみちゃんの足止めをすることが出来た)
璃奈(演劇部の部室にしずくちゃんがいないことに気が付いたら、すぐに教室へ向かうはず)
璃奈(それまで恐らく10分間。既に愛さんはしずくちゃんと話してる頃だろうから、丁度いいタイミングになる)
タッタッタッ
璃奈(……! 来た)
かすみ「……そんな……!」
璃奈(……)ズキッ
璃奈(……大丈夫。今見たものは、すぐに忘れさせてあげるから) ※※※
かすみ「……!」パタン
愛「……りなりー?」
璃奈「危なかった。また隙間ができると、これが効かなくなる」
璃奈(もちろん嘘。愛さんには攻略して精神が安定したら使えると信じさせるけど、実際は感情が乱れていれば、それは良い方向でも、悪い方向でも構わない)
愛「それって、前に言ってた記憶をいじる装置?」
璃奈「うん。かすみちゃんには悪いけど、これでもう大丈夫」
璃奈(これの効果が絶大だっていうのは、愛さんが一番知ってるはずだよ……いや、忘れちゃってるんだったか)
愛「攻略時の私との思い出は、分割して他の人との思い出として置換されるって言ってたよね?」
璃奈「うん」
愛「それって、誰に置換するかりなりーが調整できるの?」
璃奈「出来ない。この装置じゃ、一部の記憶を消すか、ランダムに思い出の相手を変更するくらいしか」
璃奈(……!)
璃奈(まずい、この間と微妙に説明が違う。これ以上追求されたら)
愛「そうなんだ。まあいいや」
璃奈(……? 誤魔化せた?) ※※※
【果林編】
璃奈(藤黄学園の綾小路姫乃さんという人から、ダイバーフェス出演の誘いが来た)
璃奈(でも、出演できるのは一人だけ。そう言い出した果林さんは、途中で練習を抜けて帰ってしまった)
※※※
璃奈(もんじゃ宮下に綾小路さんが来た。スクールアイドルのグッズを見に行くために、ゲーマーズへ行くらしい)
璃奈(そういえば、部活中に歩夢さん、侑さん、せつ菜さんもゲーマーズに行くって話てたような……)
璃奈(……本当は使いたくなかったけど、愛さんのバッグに仕込んでおいたアレを……)
【盗聴は犯罪です】
姫乃『もちろん嬉しいですよ? でも、この程度ではまだまだ私の尊敬する方には敵いませんから』
愛『お? 姫乃、恋してる顔だね?』
姫乃『……わかりますか?』
璃奈(ふーん、そうなんだ)
璃奈(綾小路さんの好きな人って、誰なんだろう?)
果林『あら? あなたたちも来てたの?』
璃奈(!)
璃奈(どうやら、歩夢さんたちと合流したらしい。何故か果林さんもいる) 果林『綾小路さん? 何故あなたまで』
姫乃『あ、あの……えっと』モジモジ
璃奈(……?)
せつ菜『お待たせしましたー』
璃奈(せつ菜さんだ)
果林『ねえ、あなたのグッズはないの?』
せつ菜『え?』
せつ菜『……無いですよ……ちょっと、悔しいですけどね』ニガワライ
璃奈(せつ菜さん……)
〜
歩夢『今決めるの?』
せつ菜『はい! 果林さんの本気は、全員に届いているはずですから!』
せつ菜『私たち同好会が次のステップに進むために、必要なことだと思うんです!』
せつ菜『……どうでしょう?』
姫乃『お待ち下さい』
璃奈(姫乃さんが止めた。どうしたんだろう) 姫乃『仮にこれから相談して決めた場合、誰がステージに立つことになりそうですか?』
侑『完成度で言ったら、せつ菜ちゃんかかすみちゃんが有力かな……?』
歩夢『この話が来るキッカケになったしずくちゃんもあり得るし……』
愛『既に大勢の前でライブを経験したりなりーやカナちゃんも任せられそうだよね』
果林『フェスの客層を考えると、愛が一番盛り上げてくれそうだけど』
せつ菜『しかし、歩夢さんやエマさんも、最近ぐんぐん成長してきてますよね』
姫乃『……』
姫乃『やはり、意見が割れるようですね』
侑『う、うん……』
姫乃『お言葉ですが、このまま大した時間も確保できていない状態で決めるのはいかがなものでしょうか?』
璃奈(……確かに。でも)
姫乃『もう少し、じっくり考えても良いのではないでしょうか?』
璃奈(みんなが候補を挙げた時、誰も果林さんの名前を出さなかった。綾小路さんは、それに反応したように聞こえた)
璃奈(もしかして、綾小路さんの好きな人って……) ※※※
愛『折角女の子が二人きりなんだし、恋バナでもしよっか?』
璃奈(突然始まった愛さんとエマさんの恋バナ。興味しかない)
エマ『愛ちゃんは、好きな子いるの?』
璃奈(……これで私だったら、もうこんなことしなくて良いのに)
愛『せっつー……かな?』
璃奈(……そっか)
※※※
璃奈(その後、エマさんが果林さんに好意を持っていることが分かった。攻略時の愛さんとの思い出は果林さんに置換したから、当然なんだけど)
璃奈(でも、この状況は使える。前回かすみちゃんの件で、愛さんはそこそこ心を乱していた)
璃奈(もし愛さんが本当にせつ菜さんを好きになったら、私に勝ち目はない)
璃奈(……普通なら)
璃奈(これが最後の作戦。元攻略対象同士でカップルを複数作り、愛さんが感情を大きく乱した所をこの装置で――)
璃奈(愛さんの中のせつ菜さんを、私に置き換える) ※※※
璃奈(想定外の事態。果林さんと姫乃さんが付き合い出した)
璃奈(難易度が上がるのは良いんだけど、愛さんが攻略してくれないと、ターゲット同士のカップルを作った時のショックが小さくなってしまう)
璃奈(……どうしよう。幸い愛さんには、まだ果林さんがターゲットだとは伝えてない。一旦歩夢さんか侑さんを優先する……?)
璃奈(……いや、ここは逆に……)
※※※
天王寺家
璃奈(果林さんがダイバーフェスのステージに立つことになった。そちらの方が都合が良いので、私も果林さんに票を投じた)
璃奈「ここ数日で、急に心の隙間が大きくなったメンバーがいる」
愛「え?」
愛「だ、誰?」
璃奈「――果林さん」
璃奈(既に恋人のいる相手。それに、エマさんの存在もある。愛さんなら攻略自体は何とかなるかもしれないけど、後味はかなり悪いはず) ※※※
璃奈「お疲れ様」
相手「……うん」
璃奈「大丈夫?」
愛「う、うん……! 今回の件で、やっぱりアタシがやらなきゃいけないんだなって思い知った、かな?」
璃奈「……」
璃奈(都合は良いんだけど、これでもまだ折れないんだ。せつ菜さんへの好意もまだはっきりしてないみたいだし、まだ早いかな)
愛「ただアタシは、誰かが落ち込んでるのをほっとけないだけ……」
璃奈(……)
愛「……!」
愛「姫乃はどうなったの!?」
璃奈(……綾小路さんの心配までするんだ)
璃奈(ダイバーフェス終了後、綾小路さんから心の乱れは検知されなかった。失恋直後だし、仮に攻略対象となってもあまり期待は出来なかっただろう)
璃奈「今のところ、心に隙間が出来た様子はない。会いに行ってみたら?」
愛「うん!」ダッ
璃奈(果林さんは無事にエマさんとくっついた。いよいよ次が最後の攻略になる)
璃奈(歩夢さんと侑さんとせつ菜さんの三角関係。これで愛さんのせつ菜さんに対する好意がはっきりすれば……)
璃奈(あとは、私がそこにおさまるだけ)
璃奈(ねえ愛さん。それだけ皆のことを考えられるのに……)
璃奈「どうして、あの時私を一人にしたの?」 ※※※
【愛編】
璃奈(以前から企画されていた、同好会夏合宿が終了した)
璃奈(帰る前に愛さんとせつ菜さんが何か話していたようだけど、皆の前で盗聴器の音声を聞くわけには行かず、会話の内容は分からない)
璃奈「愛さん、今回の攻略対象は歩夢さんだよ」
璃奈(合宿の時、せつ菜さんと侑さんには何か進展があったらしく、歩夢さんの様子がおかしかった。侑さんとどちらにするかは迷ったけど、今回の攻略対象は歩夢さんにした)
愛「……そう」
璃奈(愛さん、明らかに元気がない)
璃奈(……ひょっとして)
璃奈「……!」ピコピコ
璃奈「……やっと……」
璃奈(愛さんの感情が、大きく乱れている。今なら記憶操作装置の効果が確実に現れると思う)
璃奈(あとは、せつ菜さんへの気持ちを確認できれば……) 璃奈「……ねえ愛さん。今、好きな人はいる?」
愛「な、なになにいきなり!? りなりーも遂に恋バナしたいお年頃なの!?」
璃奈「ううん。特に意味はないんだけどね」
愛「好きな人……ちょっと前までは自覚無かったんだけどね」
愛「アタシ、せっつーのこと好きなのかなって思い始めた」
璃奈「……そう」
璃奈(計画通りに事は運んでいる。だけど、やっぱり実際に口にされると辛い)
愛「りなりーは、好きな子いないの?」
璃奈「私は……」
璃奈(愛さんが好き。こんな卑怯な真似をしてでも、愛さんがくれた思い出は、変わらず私の中にあるから)
璃奈(言いたい。でも、我慢するんだ私。もうすぐで、やっと計画が完遂するんだから)
璃奈「――皆が好き、かな」 ※※※
璃奈(またも想定外の自体が発生した)
璃奈(侑さんが、せつ菜さんではなく歩夢さんを恋愛的な意味で好きだった)
璃奈(これでは、せつ菜さんがフリーになってしまう。愛さんがせつ菜さんと付き合って心が満たされてしまうと、記憶操作装置が効くか分からなない)
璃奈(侑さんの中の歩夢さんをせつ菜さんに置き換えることは出来ない。侑さんと歩夢さんは幼馴染。たとえ短い範囲であっても、お互いに関する記憶をいじれば、必ず齟齬が生じる)
璃奈「急がなきゃ」
璃奈(今のうちに、入れ替わった後の私と愛さんの記憶に齟齬がないよう、せつ菜さんから愛さんとの思い出を聞き出しておかないと) ※※※
愛歩夢デート中
歩夢『それでね……』
愛『あっはっは!』
璃奈(流石愛さん。歩夢さんを楽しませられてる)
璃奈(でも、駄菓子屋にゲームセンターに、今話してる公園……)
璃奈(記憶が無くなる前に、私とよく行った場所ばかりだね)
〜
愛『こういう時につけ込むような卑怯な真似、どんなに自分を騙そうとしても、愛さんにはやっぱり出来ないよ』
璃奈(……! 何してるの愛さん)
愛『歩夢、これ見て』スマホトリダシー
歩夢『……『攻略してほしい女がいる……?』』
璃奈(愛さん……?)
愛『……ね? ゆうゆ?』
璃奈(……イレギュラーな展開の連続。折角ここまで来たっていうのに……)
璃奈(……すぐに実行に移さなきゃ) ※※※
璃奈(侑さんによる歩夢さん攻略は、元々両思いだったこともあってすんなり成功した)
璃奈(記憶に齟齬が生まれるのを防ぐために、愛さんの目的の部分だけ記憶を消させてもらったけど……)
璃奈「……ねえ、愛さん」
愛「ん?」
璃奈「本当にお疲れ様」
カチッ
璃奈(チャンスは今しかない。今ここで、愛さんの記憶を操作する……!)
璃奈「何かやり残したことはない?」
愛「……何言ってるの?」
璃奈(……)
璃奈(本当に、これで良いの?)
璃奈(愛さんがせつ菜さんに告白したところで、成功する可能性はかなり低い)
璃奈(せつ菜さんはすごく真面目な人。侑さんが歩夢さんと付き合い始めたとはいえ、侑さんへの気持ちが無くならない限り、誰かと付き合うとは思えない)
璃奈(……あと、少しだけ待っても)
璃奈「……何でもない」 ※※※
侑「ねえねえ愛ちゃん」
愛「ん? どしたん?」
侑「せつ菜ちゃんには、もう告白したの?」
愛「え、いや……。やっぱり出来ないよ……」
璃奈(……)
かすみ「え!? 愛先輩、せつ菜先輩のこと好きだったんですか!?」
しずく「まあ」
エマ「素敵〜!」
果林「ふふっ、愛も隅に置けないわね?」
彼方「すやぴ」
遥「お姉ちゃん起きて! 大ニュースだよ!」ペシペシ
彼方「んにゃ?」
璃奈「……」
璃奈(過去の攻略対象者からこのこんな言葉が出るなんて、とっても残酷)
璃奈(愛さんの心の沈み方もこれまでで一番大きい。これなら、いつでも記憶を操作できる)
歩夢「何言ってるの?」
愛「?」 歩夢「自分の気持ちに正直になった方がいいって、言わなきゃ何も伝わらないって、私に教えてくれたのは愛ちゃんだよ?」
侑「そうだよ! このままだと絶対後悔する!」
果林「弱いところは武器にしていかなくちゃ。それもあなたの魅力の一つなのよ?」
しずく「もしも勇気が出ないのなら、理想の自分を演じれば良いんです! 愛さんが一番好きになれる自分で勝負してみましょうよ!」
遥「頑固になってたら、前には進めませんからね」ニコッ
彼方「ある程度、自分を許してあげなきゃね」
エマ「たまには甘えてみるのも大事だよ〜!」
かすみ「かすみんも皆も、ずっと世界一楽しそうに笑う愛先輩を見てました! 愛先輩なら大丈夫です! 自信を持ってください!」
璃奈(……!)
愛「……!」
愛「みんな……!」
璃奈(愛さんの精神状態が、急に安定した!?)
璃奈(それぞれくっつけた相手に対して確実に好意を維持するよう、攻略直前の記憶を残していたのが裏目に出た……!)
璃奈(たとえ愛さんの言葉だとは覚えていなくても、その言葉が与えてくれた勇気は、思い出は、皆の心にしっかりと刻み込まれてる……!)
璃奈(……私が間違ってた)
璃奈『……どうして……』
璃奈『私は、今の言葉だけで十分だったのに……!』
璃奈(はじめから、私も自分の言葉で、正直に、真っ直ぐに気持ちを伝えておけば良かったんだ……)
璃奈(こんな私に、人を愛する資格はない)
璃奈(みんなと一緒に夢を追いかける資格なんて……ない) ――
――――
――――――
(回想終わり)
愛「……」
璃奈「だからね。私、もうみんなに合わせる顔がないの」
愛「……りなりー」
璃奈「……なに」
愛「りなりーは、まだ愛さんのこと好きでいてくれてるの?」
璃奈「……うん」
愛「……そうなんだ」
愛「アタシ、りなりーの話してたこと、全く覚えてないけど……」
愛「りなりーが愛さんのために頑張ってくれたこと、それだけはしっかりと伝わったよ」
璃奈「ちがっ……」
璃奈「私は……。自分のことだけ考えて……」
愛「違わないよ」 続きがきてた。結果的に良い方向になったけど、りなりーの計画は他の子達にも結構な悪影響が出ちゃう可能性もあったんだな 愛「りなりー、ありがとう。記憶を失う前の私の気持ちを守ってくれて」
璃奈「……そんなんじゃ」
愛「そうなんだよ。愛さんがりなりーを好きだったことは、間違いなく事実で」
愛「きっと、これから」
璃奈「嘘! 愛さんは、こんな卑怯で最低な私のことなんか!」
愛「りなりー!」
璃奈「!」ビクッ
愛「アタシの心を勝手に決めないで!」
璃奈「……!」
愛「せっつーに振られたばっかりで虫が良すぎるかもしれないけど、愛さんはりなりーのことが好き!」
愛「今はまだ友達としてかもしれないけど、愛さんはりなりーがいないと悲しいよ? りなりーのこと、とっても大事に思ってるよ? だから!」
愛「……愛さんはずっと側にいるよ。ずっと一緒にいたいんだ」
璃奈「……愛さん」
璃奈「私も……愛さんとずっと一緒にいたい」
愛「!」
ガチャ 璃奈「愛さん……」
愛「りなりー……!」
ダキッ
璃奈「……私、みんなに酷いこと」
愛「大丈夫」
璃奈「愛さんだって傷付けて」
愛「大丈夫」ナデナデ
璃奈「……」
愛「たとえりなりーがどんなことをしても、愛さんは離れていったりしないよ」
愛「ねえ、りなりー? りなりーの最初の友達は、愛さんなんだよね?」
璃奈「……うん」
愛「じゃあ、次は恋人になりたいな」
璃奈「……」
璃奈「最初の恋人に?」
愛「ちょっと違うかな」
璃奈「?」
愛「そんな言い方だと、まるでいつか他の恋人が出来るみたいじゃん」
愛「言ったでしょ? りなりーとずっと一緒にいるって」
愛「――愛さんはね」
愛「りなりーの、最初で最後の恋人になりたいんだ!」
璃奈「……嬉しい」ニコッ
完 完結です。長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。 おつでした。みんなを救うためと信じてた愛さんはともかく、りなりーは結構人としてギリギリなことしてたから不安だったけど、
ハッピーエンドになって良かった 乙
題材の落とし神の如く順調に攻略してく愛さんが見てて楽しかった。りなりーも救われて良かったね
神知る懐かしかったなぁ… 皆様感想ありがとうございます。
一応各編のレス番貼っときます。
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>>294 果林編
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