侑(休日練習の申請と、ドリンクの補充と……)ウーン 歩夢(侑ちゃんまたジャージの袖通さずに着てる……)ジーッ
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〜放課後〜
同好会部室
侑(そういえばホワイトボードのマーカー、黒のがだいぶ書けなくなってたっけ)
侑(この前かすみちゃんが書いてた『先手必勝』でインクが結構持ってかれたんだよね)
侑(ついでに他の備品も確認して……)
侑「……」ガサゴソ
ランニングから戻ってきた歩夢「……」ジーッ
歩夢(侑ちゃん、さっきから真剣な顔。色々考えてくれてるもんね)
歩夢(私の……)
歩夢(……ううん、みんなのために)
歩夢(……)
歩夢(……だめ、どうしても気になっちゃう)フルフル
侑「〜〜♪」メモメモ
歩夢(侑ちゃんあのジャージの着方、なに……?) 歩夢(いろいろ考えごとしようとしても全部持っていかれちゃう……)
歩夢(なんであんな中途半端な感じなんだろう……)
侑「ん? あれ、歩夢もう走り終わったんだ。早いね!」
歩夢(少なくとも1年生のときにはあんなことはなかったし、他の上着ではやらないし)
侑「クールダウンはちゃんと済ませた? まだなら手伝……歩夢?」
歩夢(ジャージのなにがいったい侑ちゃんをあの着こなしへと駆り立てるの?)
侑「歩夢、歩夢ー?」フリフリ
歩夢「!」
侑「どうしたの? 難しい顔してる」
歩夢「あっ……なんでもない。ちょっと考え事」
侑「そっか」 侑「それ、私が力になれそうなやつ?」
歩夢「力に……ええっと」
侑「そうでないとしてもさ、話くらいなら聞けるよ。あ、話したくないなら全然それで構わないし」
侑「どっちにせよ、歩夢の好きにしていいからね」ニコッ
歩夢「侑ちゃん……」
歩夢「あの……やっぱり良い?」
侑「もちろん。座ろっか」
歩夢「うん」ストン
歩夢「……えっと」
侑「大丈夫。ちゃんと聞くよ」
歩夢「……あのね、ずっと侑ちゃんに聞きたいことがあって」
侑「私に? どんなこと?」 歩夢「……今もだけど、なんでたまにジャージの袖を通さずに着てるの?」
侑「え?」 侑「……え?」
歩夢「どうして……?」
侑「待っ、え? 考え事それ?」
侑「歩夢、私のジャージの着方であんな表情になっちゃってたの?」
歩夢「うん」コクン
侑「えっ……えぇー……ごめん」
歩夢「ううん、侑ちゃんが悪いとか、そういうことじゃないから」
侑「それはそうであってほしいけど」 歩夢「ただすっごい気になって。なんでなの?」
歩夢「ハマった漫画とかゲームにそういうキャラがいたとか? 私はあんまり心当たりがないけど」
侑「いや、そんな大したことじゃないんだけどさ」
侑「でもまあ、私なりに理由はあるんだよ」
歩夢「うん」
侑「その前にちょっと良い?」
歩夢「なあに?」
侑「歩夢、今まで私がこういう風にジャージ着てるとき、なんて思いながら見てたの?」 歩夢「……」
侑「……」
歩夢「えっと……」
侑「……」
歩夢「『侑ちゃん、どうしちゃったんだろう……』って」
侑「言って?」 侑「言おう? そういうときは。遠慮しなくていいから」
侑「そういう感じのやつはさ、変だって思われるよりもなんか、心がザラザラしちゃうよ」
歩夢「ご、ごめんね?」
侑「いいよ。歩夢は優しいから言いにくかったんだろうし」 侑「で、理由なんだけど」
歩夢「うん」
侑「ほら、いまって夏じゃん?」
侑「でも外は暑くて中は涼しかったり、外でも海岸沿いはちょっと冷えたり、日当たりひとつで体感温度って変わってくるよね」
歩夢「そうだね。ランニングから帰ると『ちょっと寒いなー』って思うときもあるかも」
侑「みんなは結構体を動かしてるけど、私はそうでもないから、気温とか室温の差がだいぶモロにきて」
侑「そういうときって、上着を脱ぐと寒い、着ると暑いって感じなんだ」
歩夢「そうなんだ……」
侑「トレーニングしてるみんなからしたら比べられないくらい楽してるから、これくらいはね」 侑「でもこうしてると、寒ければ手を引っ込めれば良いし」シュポッ
侑「暑ければ二の腕から先まで出しちゃえば良くなるから」バッ
侑「いちいち脱ぎ着しなくて良い! っていうのが理由、なんだけど」
歩夢「……」ウーン
侑「ご納得はいただけていない」
歩夢「分かるようで分からないような」
侑「そっかぁー」
歩夢「ねえ、侑ちゃん」
侑「ん?」
歩夢「それって腕まくりじゃダメなのかな?」
侑「……」 侑「……いや……」
歩夢「……」
侑「あぁー……あれだよ」
侑「腕まくりだと肩から肘までは暑くなっちゃう訳で」
侑「布も集まってワシャシャーってなるから、あんまり暑さが緩まないんだよね」
侑「だから結局こうした方が良い感じになる、っていう」
歩夢「そっかぁ」
侑「うーん、微妙な手応え」 歩夢「他にもあるんだけど、良い?」
侑「歩夢の疑問が止まらないね」
歩夢「ひとつ答えが貰えたら芋づる式に気になっちゃって……」
侑「分かった。こうなったらもう全部答えるよ」
歩夢「ありがとう……えっと」
歩夢「それ、普通に落っこちない?」
侑「あー……」
侑「まあ、落ちるよね」
歩夢「落ちるんだ」 侑「風が強かったり、腕を上げすぎたりするとこう……」クイッ
侑「ちゅるん、って感じで落ちるときはある」チュルンッ
歩夢「落ちたあとは?」
侑「拾って羽織り直すよ?」
歩夢「そうなんだ」
侑「パパッとホコリを払って、バサって」
歩夢「……それ、脱ぎ着した方が手間がないんじゃ」
侑「……」
歩夢「……」 侑「……いや」
侑「それ込みでも羽織ってた方が……良いかな」
歩夢「そっかぁ」
歩夢「もうひとついい?」
侑「いいよ。全部答えるって言ったから」
歩夢「ちょっと顔ヤケクソになってるけど」
侑「なってないなってない」 歩夢「侑ちゃんはさっきまでここにひとりでいたんだよね?」
侑「うん。部室の整理とか打ち合わせ書類の準備とかしたから」
歩夢「だよね? それで、部室棟って集中管理されてないし、エアコンの温度もちょうど良くできるでしょ?」
侑「うん」
歩夢「それなら、わざわざ侑ちゃんがジャージの着方で調整しなくても良かったんじゃないかなって」
侑「……」ッスゥーーー
侑「……」フゥーー
歩夢「……」 歩夢「侑ちゃん……私、ウソついてるって思ったりしてないし、笑ったりもしないよ」
歩夢「だから、本当の気持ちを教えてほしいの」
侑「……」
歩夢「……」
侑「ジャージでこんな空気になることってある?」
歩夢「私もびっくりしてる」
侑「だよね。驚きが止まらないよ」 侑「……確かにね、さっき言った理由が全部って訳じゃないんだ」
侑「でもほら、わざわざ言うことでもないかなって」
歩夢「……」
侑「だってさ、思わないよ。上着の着方でこんな重い空気になるなんて」
侑「歩夢がここまで気にし続けるなんて」
歩夢「私も思ってなかった……」
侑「自分で自分を制御できなくなっちゃってるじゃん」
侑「なにがここまで歩夢を駆り立てるんだろう……」
歩夢「侑ちゃんのこと、理解したくて」
侑「初めて髪染めた私を見たときのお母さんと同じこと言ってるよ」 歩夢「あれ? 侑ちゃんのお母さん、すぐOK出してくれたって言ってなかったっけ」
侑「うん。染めること自体はね」
侑「ただ部分染めだったことと色のチョイスにびっくりしたみたいで」
侑「特殊なグレ方したのかって思われちゃったみたい」
歩夢「まあ、私も最初は少し驚いちゃったかも」
侑「ひさびさにあんな寄り添われ方したなぁ」
歩夢「ちなみにそのあとは……?」
侑「1年前だから記憶が曖昧だけど、確か一緒に色落ち防止のカラートリートメント買いに行った」
歩夢「良かったねぇ」
侑「うん」ニコニコ
歩夢「ところでジャージの理由なんだけど」
侑「すっごい。すごいね今日」 侑「いやまあ……もったいぶることでもないんだけどさ」
歩夢「うん」
侑「……」
侑「なんか……カッコいいかな、って……」
歩夢「……」
侑「ちょっと見たアニメでこういう格好のキャラがいて、なんかいいなーって思ったり」
侑「気分がノってるときとかについ、よく分かんないけどこうしてみたくなったり」
侑「そういう……アレだよ」
歩夢「そうだったんだね」
侑「……」
歩夢「……」
侑「……なんかここ部屋暑いね。上着脱ご」ヌギヌギ
歩夢「羽織りは?」
侑「今は良いの!」 侑「はーもう……顔あっついよ」パタパタ
歩夢「な、なんだかごめんね?」
侑「歩夢は悪くないよ。それに私も」
侑「今この部室に悪い人間は誰もいない」
歩夢「でも良かったぁ、肩まわりになにかあるとかじゃなくて」
侑「肩の調子まで疑われてたんだ」
歩夢「うん。だって侑ちゃん、リュックの肩ひもも片方外して背負ってたりするし」
侑「え?」
歩夢「え?」 侑「え、待って……それも引っかかってたの?」
侑「それも込みで私の肩を疑ってたってこと?」
歩夢「疑ってたっていうか『侑ちゃんどうしたんだろう』みたいな」
侑「その感じ多いね。心配かけてごめん」
侑「あの、でもさ、言おう?」
歩夢「うん……」
侑「たぶん私たち、言葉でのコミュニケーションが足りてないよ」
侑「内に秘めないで良いから教えて? そういうときは」
歩夢「なにか理由があるのかなって思ったら、聞くのもなんか、どうかなって」
侑「歩夢は優しいからなあ。ときどき心配になっちゃうよ」 歩夢「でも私、いざ訊こうとしたらさっきみたいにどんどん立て続けになっちゃうよ?」
侑「あー……確かにすごかったけど、我慢するよりは良いんじゃない?」ニコッ
侑「人の不調を心配しちゃうよりはさ」
歩夢「侑ちゃん……」
侑「まあ、とりあえず私に遠慮する必要はないよ」
侑「なにかあったらその時々で考えればなんとかなるって」
歩夢「もう、適当なんだから」
侑「歩夢が真面目すぎるんだよ〜」
歩夢「そうかな」クスッ
侑「そうだよ」
歩夢「あっ……そうだ。最後にひとつ、良いかな」
侑「んー?」 歩夢「結局リュックの理由はなんなの?」
侑「あれ? 分かんない。たぶんクセ」
歩夢「クセかぁ」
おわり 侑ちゃんの私服がダサいのはやっぱり歩夢ちゃんのせいだな はあ…
侑ちゃん可愛い…
ちっちゃくてジャージが似合っててほんと可愛い… 歩夢が侑に身長について聞くssと同じノリを感じるけど同じ作者? ジャージ羽織るのもリュック片方だけ肩にかけるのもガキの頃やってたなぁ >>20,34,41
そうです 読んでくれてありがとう やっぱり身長の人か!
どうりで面白いと思った
百合的な旨味は全然無いし登場人物もこんな少ないのにここまで読ませる作品書けるのすごいわ 後>>1の「先手必勝」でワロタ
確かにホワイトボードならゴシゴシ塗りつぶさないと書けない字だったわ
リュックの背負い方といい細かいところを拾える着眼点がすごい >>47
まだ落ちてないのすげえなw
ぜひ主にはこれからもバンバン新作発表して欲しいわ
もれなく全部読もう >>47
今見返したらこの時点でジャージの話出ててワロタw
歩夢しつこすぎるだろw みんなキャプ翼でヒュウガくんみたいに袖まくってた時代あっただろ
そういったのと一緒だから温かい目で見てあげようよ 今回も身長のやつもほんと好きありがとう
新作どんどん出してくれ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています