暗い、暗い森の中でうずくまる。執拗に追いかけてくるナニカから隠れるために。
さっきまで走って逃げたためにきれる息を必死に殺す。

愛(何だったの、アレ…)

気がついたら日の暮れようとする森の中にいたアタシは、そこでようやく出会えた人影に安堵して、不用心にも声をかけてしまった。しかし、それが間違いだった。
振り返った男の姿は異形そのものだった。真っ赤な目にむき出しになったとがった牙、あげく頭には角まで生えていた。その姿に暗い森の情景も合わさり、りなりーの家で一緒にやったホラーゲームを思い出し、アタシの脳内に不吉な結末が浮かび、気が付いたら逃げ出していた。

愛(確か愛さん、りなりーと別れて、ウチに帰る途中で…)

意味も状況も分からない。ただ、逃げる後ろから尋常ではない速度で追いかけてきた男に対する恐怖心だけがあった。