果林「さ…寒いわ…」ガタガタ
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これは、あるクリスマスの夜のおはなし…
果林「うぅ…」ブルブル
果林「さ…寒いわ…」ガタガタ
この朝香果林という少女は、大人びた見た目をしていましたが、中身はなかなかの間抜けでした…
今日はクリスマスだというのに、電気代を3ヶ月分払い忘れたせいで電気を止められていたのです…
果林「うう〜…」ズビッ
果林「何よ何よぉ…電気なんて生きるのに絶対必要なんだからタダでもいいじゃない…!」ブルブル
果林「うぅ…クリスマスなのに…」ガクブル
今彼女を温めてくれるのは、一本のロウソクだけでした… >>133
誤字訂正
海未「その間違い、この園田海未衛門が正して差し上げてましょう!!」
↓
海未「その間違い、この園田海未衛門が正して差し上げましょう!!」 1です
なんか地域表示がもんじゃになってましたが、>>133、>>144はわたしです 西木野真姫之丞は一国を治め、多くの侍を従える武将ではありましたが、三田九郎とは異なり、自ら前線には立たず状況に応じて戦術を組み立て軍を動かす指揮官型の部署でした…
それ故、真姫之丞は実際に戦で刀を振るった経験は三田九郎には及ばず、普通に一騎打ちすれば負けるだろうと踏んでいました…
そこで、「まず城内にいる大勢の兵を三田九郎にぶつければ、もし一騎打ちになったとしても相手の三田九郎は疲弊し、経験で劣る自分でも勝てるのではないか」と考えたのです…
しかし、いざ三田九郎と一騎打ちで刃を交える事になり、真姫之丞は戦慄します…
海未「フゥッ…フゥーッッ…!!」
真姫「はぁ…はぁ…」
真姫「まだそのような力が残っていたとは…!」ゾッ
三田九郎の剣はあれほどの激戦を超えてなお、力強さと鋭さを微塵も失っていませんでした…
息を荒げ、瞳をぎらつかせ、ただひたすらに「討ち取る」という意思で向かってくる三田九郎の気迫に圧倒され、真姫之丞は攻め返す隙もなく防戦一方に追い込まれました…
海未「はっ!!」ブンッ!
真姫「ぐっ…!!」ガキン!
海未「破ッッ!!」ブゥンッ!
真姫「あぁ!!」
三田九郎の強烈な一撃に、真姫之丞はついに刀を取り落とし、床に膝をつきます…
海未「覚悟ッッ!!」チャキ…
真姫「もはや、これまでか…」
真姫之丞は自らの運命を悟り、瞑目します…
真姫(にこ姫…もっと早く、素直に貴女に愛を伝えておれば…) 音ノ木の郷の合戦は、日付をまたぎ、朝日が昇ってもなお続いていました…
合戦の中、疲労困憊の音ノ木の侍衆たちはあるものに気付きます…
穂乃果「はぁ…はぁ…」
穂乃果「な、なんだ…?」
穂乃果「西木野の城から…煙が…?」
その煙は西木野軍の降参を意味する狼煙でした…
狼煙に気づいた西木野軍の雑兵たちは、諦めたようにその場にくずおれます…
三田九郎率いる音ノ木の侍衆は、この合戦に勝ったのです…
穂乃果「海未衛門…」
穂乃果「成し遂げたのだな…!」
遠く朝霞に煙る輝夜城に向かい、感慨に耽る穂乃介でした…
ドドドド…
しかし、この時穂乃介は気づいていませんでした…
海未衛門を輝夜城まで連れて行ったあの妙な鹿が、穂乃介の後ろから突撃をかけて来ている事には…
ドドドドドドドド…
緊張から解放されると途端に阿呆さが出てくるのが穂乃介の悪い癖でした…
花火(トナカイ)「メェー!!」ドガシャ!
穂乃果「うわぁぁ!?」ドサッ
鹿に跳ね飛ばされた穂乃介は鹿の背に乗るような格好で着地し、そのまま鹿に連れ去られて行くのでした…
花陽(トナカイ)「メェーッ…!」ドドドド…
穂乃果「なっ…何処に連れて行くつもりだ!?」
穂乃果「うわ…!速いっ…!」
ドドドドドドドド… 鹿は穂乃介を連れ去り、そのまま街道を輝夜城の方へと走り、道の途中で急に立ち止まるのでした…
穂乃果「うわぁ!?」ドテン
鹿がいきなり立ち止まったせいで穂乃介は勢いよく地面に投げ出されます…
鹿を非難がましく睨んだ後、おもむろに前に目を向け、穂乃介は驚きで一瞬言葉を失います…
海未「はぁ……はぁ……!」ヨロ…ヨロ…
穂乃果「海未…衛門…?」
穂乃介の目の前に、鎧を血で真っ赤に染め、全身ボロボロとなった三田九郎がよろよろと歩いてくるのが見えます…
三田九郎は、背中に何かが入った大きな白い袋をかついでいました…
穂乃果「海未衛門っ!!」
海未「ほの…すけ……?」
穂乃果「海未衛門!よくぞ一人でここまでやってのけた…!」
穂乃果「お前は真の武士(もののふ)だ…!!」
穂乃介は満身創痍の海未衛門をねぎらうと、海未衛門とともに鹿に乗って音ノ木の郷へと急いで帰るのでした…
花陽(トナカイ)「メェー!!」ドドドド… 海未「穂乃介…」
穂乃果「どうした、海未衛門」
鹿を御して帰り道を急ぐ穂乃介の背中で、三田九郎はぽつりぽつりと語り始めます…
輝夜城への道中、連れて来た2人の侍衆と乗って来た馬を伏兵に殺されてしまったこと…
逃げる伏兵を討ったが、その時に敵の部隊に見つかってしまい、窮地に立たされたこと…
その時、鹿の大群が窮地を救ってくれた上、その鹿の1匹が、馬を失い途方に暮れていた三田九郎を輝夜城まで送り届けてくれたこと…
たどり着いた輝夜城で大勢の敵兵を相手にたった1人で闘い抜いたこと…
敵の総大将、西木野真姫之丞との一騎打ちに勝ち、真姫之丞に恋愛禁止のお触れを取り下げる事と音ノ木から兵を引く事を約束させたこと…
そして輝夜城から帰るとき、真姫之丞から袋いっぱいの褒美を持たされたので、帰ったら郷の皆で分け合いたいということ…
穂乃介は時々相槌を打ちながら、黙してそれを聞いていました… 三田九郎と穂乃介は朝のうちに音ノ木の郷に帰って来ました…
園田の屋形の門をくぐると、三田九郎は帰りを待っていた侍衆や領民たちに大きな声で呼びかけます…
海未「各々方!我々の勝ちです!!」
海未「西木野の当主は恋愛禁止のお触れを取り下げました!!」
郷の皆は自由に恋愛ができるようになった事や、戦に勝った事、三田九郎が生きて戻ってきた事に喜び、あれよあれよという間に宴が始まりました…
皆が戦の疲れも忘れたようにはしゃぎ楽しむのを、三田九郎は眩しそうに見ていました…
顔には微笑みを湛え、何も言わず静かに、心より嬉しそうに見つめていました…
そして日も落ちた頃、三田九郎はおもむろに穂乃介を呼び止めました…
海未「穂乃介、少し裏庭で話しませんか?」
穂乃果「…?」
穂乃果「別に構わんが…どうかしたのか?」
海未「少し、貴方に話しておかなければならないことがありましてね…」
未だ盛り上がり続ける宴の場を後にし、2人は屋形の裏庭へと向かいました… にぎやかな宴の声を遠くに聞きながら、三田九郎と穂乃介は屋形の裏庭の縁側に腰掛けていました…
師走の寒空はこの上なく透き通り、大きな満月が輝いていました…
穂乃果「しかし、お前が西木野の城でもらった褒美は凄かったなぁ…」
穂乃果「郷の皆も大喜びだったな…」
海未「えぇ…」
穂乃果「…」
海未「…」
海未「穂乃介…」
少しの沈黙の後、三田九郎は少し神妙な面持ちで穂乃介に話を切り出しました…
海未「貴方に、この郷のこれからを任せます」
穂乃果「…?」
穂乃果「ははっ、海未衛門、何を言ってるんだ」
穂乃果「この郷はまだまだお前が…」ギュ
穂乃果「…!!」
三田九郎の手を握り、穂乃介は三田九郎の言葉の真意を悟りました…
無双の武人であるとはいえ、1人の人の身に余るほどの業を成した三田九郎の身体は、この時すでに限界を迎えていたのです…
穂乃果「海未衛門…!」
海未「…」コクリ
穂乃果「っ…!」
あまりにも唐突に突き付けられた事実に、穂乃介はしばし言葉を失います… 穂乃果「……」
穂乃果「…わかった」
覚悟を決め、穂乃介は親友の頼みに応じます…
感情をこらえ、いつも通りに答えようとしてはいましたが、その声は少し震えていました…
海未「…ありがとうございます」
海未「貴方になら、安心して任せられます…」ニコッ
その答えが聞けてよかった、そんな感情が三田九郎の笑顔の中に満ちていました…
穂乃果「…」
海未「穂乃介、郷を背負うからには常に皆の模範となるような振る舞いをするのですよ?」
穂乃果「…うん」
海未「朝は早く起きるのですよ?」
海未「寝坊なんてもってのほかです」
穂乃果「うん…」
海未「鍛錬は欠かしてはなりませんよ?」
海未「怠け癖さえ直せば、貴方はきっと私以上の剣士になれるのですから…」
穂乃果「…そんなわけ」
海未「ありますよ」
海未「怠け癖の抜け切らない今でさえ、時々私に勝つぐらいなのですから…」
三田九郎が優しい口調で言う小言は、穂乃介がいつも言われ続けていた小言でした…
普段の穂乃介ならいきりたって反論したり、不貞腐れたりしていましたが、今の穂乃介は静かに、胸の内に刻み込みながらその小言を聞いていました… 海未「…穂乃介」
穂乃果「…」
海未「私は幸せでした」
海未「貴方のような人と、幼馴染でいられて…」
海未「親友でいられて…」
そんな海未衛門の言葉には、流石の穂乃介も感情を堪えきれませんでした…
穂乃果「…っ」
穂乃果「私だって…」
穂乃果「お前と幼馴染で…」
穂乃果「幼馴染で、親友でいられて…!」
穂乃果「嬉しかったよ…!」
穂乃果「楽しかったよ…!!」
穂乃果「海未衛門っ…!!」
せめて送るなら笑顔で送り出そうと、なんとか穂乃介は笑顔を絞りだして応えます…
海未「…!」
海未「ふふ…そうですか…」ス…
そして、まるで眠りに落ちるように海未衛門はゆっくりと瞑目します…
穂乃果「海未衛門っ…!」ポロポロ
月の光に照らされた海未衛門の顔は、凪いだ海のようにどこまでも安らかな微笑みをたたえていました…
その傍らで穂乃介は天を仰ぎ、声を殺してただただ静かに涙を流していました…
穂乃果「うっ…うぅっ…」ポロポロ
穂乃果「海未衛門っ…」ポロポロ
穂乃果「海未衛門っ…!!」ポロポロ
師走の25日、美しい満月の輝く寒い夜の事でした… これ以来、音ノ木の郷では毎年師走の25日頃になると、恋人たちの自由のため闘った真の武士(もののふ)の三田九郎こと園田海未衛門を称え、偲ぶようになり…
三田九郎が輝夜城でもらった褒美を郷の皆に配って回った逸話にちなんで、子どもの枕元におもちゃを置くようになりました…
そしていつしか「この日に結ばれた恋人たちは三田九郎様の加護で幸せになれる」とまで言われるようになりましたとさ…
めでたしめでたし… しずく「さあ!どうです!!」
しずく「私の力作は!!」
璃奈「うっ…ぐす…」シクシク
璃奈「海未衛門さん…」シクシク…
かすみ「確かにすごかったけど…」
かすみ「長いよ…」
かすみ「すっごく長いよ…」
しずく「まあ力作だからね!」
しずく「仕方ないよこれは!」
かすみ「んじゃツッコミ入れてくね〜」
しずく「えぇ!?どうして!?」
かすみ「どうして!?」
かすみ「なんで逆にツッコまれないと思ったの!?」
かすみ「これメインの登場人物μ'sじゃん!!」
かすみ「虹ヶ咲でやる劇だってさっきから言ってるのに!!」
しずく「でも、うちの生徒の方が多く出演してるよ!?」
かすみ「うちの生徒ほぼモブじゃん!!」
かすみ「逃げてきた恋人とトナカイばっかじゃん!!」
かすみ「それじゃ意味がないから!!」
かすみ「他校に迷惑をかけるなって!本当にもう!!」 しずく「でもこの脚本はことりさんの協力を得て作ったんだよ?」
しずく「衣装とかも協力してくれるって…」
かすみ「ことり先輩も巻き込んでたの!?」
かすみ「準備良すぎでしょ!!」
栞子「……あの」
栞子「この脚本って、何をベースにしてるんですか?」
しずく「よくぞ聞いてくれました!」
しずく「この劇は忠臣蔵みたいな時代劇と、サンタクロースをミックスしたもので…」
しずく「三田九郎というのはサンタクロースのもじりなんですよ!」
しずく「物語の大まかな流れはサンタクロースの語源の聖ニコラウスの逸話を踏襲しています!」
栞子「なるほど…」
栞子「…」
栞子「でも、この「主人公が恋愛を禁止された恋人たちのために立ち上がり、最終的に死んでしまう」というのは…」
栞子「聖ニコラウスの逸話ではなく聖ヴァレンティヌスの話だった気がするのですが…」
かすみ「…」
璃奈「…」
しずく「…」
しずく「…くっ!!」
結局、スクールアイドル同好会は栞子主演で『クリスマス・キャロル』をやる事になりましたとさ…
栞子「いじわる老人の役をさせられるのは初めてです…」
おしまい♡ 最初の脚本で先輩のこと間抜け呼ばわりしまくってて草
エマかりの前で朗読させたい 【補足】
ちなみに、「貧しい娘たちを憐れんで、彼女たちの家の煙突に金貨を投げ込んだら暖炉脇に干してた靴下の中に入った」という感じの逸話が聖ニコラウスの逸話
聖ヴァレンティヌスというのはバレンタインデーの語源となった聖人
「クリスマス・キャロル」は意地汚い守銭奴のスクルージという老人が、クリスマスイヴに過去・現在・未来を旅する不思議な体験をして改心するお話
そしてサンタクロースが赤いのはコカコーラのマーケティングのせい 途中忙しくて間が空いたりもしましたが、こんな自己満足まみれのSSを読んでいただきありがとうございました… 元になった逸話みたいなのはこれのために調べた感じ?
そういう話ってどこで知るのかちょっと気になった どうも1です
聖ニコラウスの逸話も聖ヴァレンティヌスの逸話も、「サンタクロース 由来」とか「バレンタインデー 起源」とかでググればすぐ出てきます
あと、昔ラ板かどっかで聖ヴァレンティヌスの逸話をベースにしたSS(確かことりが王様役で希が聖ヴァレンティヌス役だった気がする)を見たことがあります
ちなみに、海未衛門の生存ifって需要あります? 1ですが、海未衛門生存ifは別にスレ立ててやっていいですか?
このスレで続けるとなんかこのSSの趣旨から逸脱してしまいそうな気がして… 1です
生存if落としてしまったんでスレ立て直します
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