「令安かすみん物語」
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彼方「夢じゃないよ〜」
次々と驚くのも間に合わぬまま、最後に彼方先輩がゆるりと現れます。どういうわけか、それほど懐かしさを感じさせないのが不思議でした。
ずっと近くで応援してくれてたみたいに。
彼方「やっぱりかすみちゃんは、ちゃぁんと自分を見つけられたみたいだねぇ」
よしよしと、彼方先輩は頭をなでてくれます。満たされていました。前を向けば、かすみの大好きな仲間がそこにいる。
人智を超えた奇跡の現れに、この旅で得たひとつの言葉を思い出します。
あらゆる結果は、まず気持ちから生じる、と。
かすみ「うぅ……」
だめ、だめです。ステージの上では泣いちゃだめ。だってスクールアイドルなんだから。
9人そろって、ようやくスタートライン。
ここからが始まりで、ここからが本当のライブなんです。
私たちは誰からとなく、手を繋いでいました。 かすみ「あ、虹――――」
かすみ達の足元で、薄く世界に広がっていく粒子に太陽の光が差し込みます。
見下ろした先には、丸く円を描く鮮やかな虹。
手を繋いだ9人の影が薄い粒子の雲に伸びて、その周りに円状の虹がうまれていました。
歩夢「すごい……」
せつ菜「ああ、これはとっても私たちらしいです!」
璃奈「ブロッケン現象……こんなにきれいに見えたのはじめて」
それはあたかも、かすみ達を中心として、世界中に虹が架かっているように。
9人の虹。9色の虹。
この景色を、きっとあなたも見てくれているでしょうか? キラキラ繋がって
虹色があふれる
出逢えた奇跡は 何より宝もの
大好きが咲いている
僕たちのドリームワールド
一緒に叶えよう
とびきりの明日へ行こう!
Love U my friends――――♪ それはあなたのための歌。それはみんなのための歌。
みんなが望む、素敵な未来へ向かうハーモニー。
まばゆいほどに輝いて、虹色にあふれる景色の中。
目指す方向はわかりきっていました。
歩夢先輩が大切な人と一緒にいられる場所。
しず子が自分を見失わない場所。
果林先輩が本当になりたい自分になれる場所。
愛先輩がみんなと楽しく笑い合える場所。
彼方先輩が妹さんと共にある場所。
せつ菜先輩が両親とわかりあえる場所。
エマ先輩が大好きな歌を歌える場所。
りな子が自分の表情に自信をもてる場所。
虹色の帳の向こう側、手を伸ばした先の先。
みんなが幸せになれるその場所から、どういうわけか届いた自分の声がおかしくて、つい笑っちゃいました。
――――ワンダーフォーゲル部をですかぁ? かすみ「むむむ……」
学園の部室で、かすみんは頭を悩ませていました。ノートを前にペンを持って悩めるその姿は文豪のように見えるかもしれません。
こんなに可愛い文豪がいたら大変ですけどね!
果林「あらかすみちゃん、お勉強?」
かすみ「おっと果林先輩、これは秘密ノートですよ」
ノートをのぞきにきた果林先輩に、みられないようにささっと隠します。
危ない危ない。
果林「もう、またイタズラでも考えてるのかしら?」
かすみ「それは後のお楽しみに……って違いますけど!」 せつ菜「ふふふ……一瞬見えた私にはわかってしまいましたよ、かすみさん!」
かすみ「せつ菜先輩まで……」
ものすごくニコニコしています。こういうときのせつ菜先輩はだいたい間違ってるので問題ないのですけれど。
せつ菜「ちらと見えた『DDD』という文字……間違いなくきのこ関係ですね!」
かすみ「!?」
せつ菜「わかります、私もずっと待ってますから……DDDの三巻目!」
かすみ「は、はい??」
一瞬びっくりしちゃいましたが、やっぱり勘違いのようです。 せつ菜「いったいいつになれば続編が出るのか……待ちきれなくなって自己生産したというやつですね。私も読みたいです!」
かすみ「いや違いますけど!」
しずく「え? かすみさん、お話つくったの?」
かすみ「いや違うからぁ!」
彼方先輩の毛づくろいをしていたしず子がとことこと寄ってきます。
収拾つかなくなってるんですけど。
彼方「すやぁ……」
エマ「ふふっ彼方ちゃんはもふもふだねぇ〜」
愛「りなりーもほら、気持ちいいよ!」
璃奈「もふもふ、ふわふわ」
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---- 異変の起きた世界のことを憶えているのは、かすみだけでした。
あとのみんなはまったく憶えてなくて、逆にかすみんだけがタイムスリップしたかのようなヘンテコな感覚に囚われてしまいましたけど。
まあそれも、もう慣れましたね。
かすみ「ふぅ、危なかったぁ」
家に帰ってから、例のノートを取り出します。見られてものすごく困るわけじゃないですけれど、変に混乱を呼ぶのもあれですし、やっぱり家でこつこつ進めるのがいいかもしれません。
内容は、あの世界で起きたことの記録。思い出せる限りを書き込んでいるのでした。
どうしてそんなことをしているのかというと、ちゃんと理由があって……。
かすみ「? 電話――――先輩だ!」
スマホに表示された名前をみて、飛びつきました。 かすみ「はいは〜い! 可愛い可愛いかすみんですよ?」
かすみ「えへへ……あれ、もしかして歩夢先輩もいます?」
かすみ「いやいいんですけど、なんとなーく思うところがあるというか……なんでもありません!」
かすみ「え、今度の休み?」
かすみ「行きます行きます! もちろんですとも」
かすみ「あ、歩夢先輩も一緒? え、せつ菜先輩も一緒? んん、みんな一緒?」
かすみ「そうですか……」
かすみ「いえ……ふふっ、楽しみです!」
かすみ「あ、そうだ、先輩にお願いしたいことがあって……」
かすみ「……いえ、やっぱりまた今度にします」 そのあとしばらく先輩と電話でお話しました。かすみんをみてくれる大切な人。話しているだけで楽しくなっちゃいます。
歩夢先輩もかなり入ってきましたけれども。
というか半分くらい割り込んできましたけれども。
まあ、楽しそうで何よりです。
かすみ「う〜ん」
さてと、電話を切ったあと。
秘密ノートを手にして悩みます。このノートを書いている理由……先輩へのお願いごとにも関係するのですが、かすみは今回の体験から歌詞をつくろうと思っているのでした。
いろんな体験とか、自分自身の発見とか、いろいろありましたからねぇ。
その歌詞で先輩と一緒に曲をつくれたらなぁと考えていて、でもそれも、歌詞が完成してからですね。
曲ができたら……と、机の上のヘアアクセサリーを手に取ります。緑色の、リボンの形をした一対の髪飾り。
これもまた、体験とは別の、異変からのお土産です。
記憶を除けば、唯一の証とでも言えるかもしれません。 つい先日、夢を見たのでした。
不思議な夢でした。ええ、そのままの意味で。
かすみ「う、うぅ〜ん?」
寝付けないときに、ひつじを数える風習があります。それと同じと言っていいものやら。
夢の中には、扉が2つ開け放たれていて。
彼方先輩がひとり、彼方先輩がふたりと、右から左へと扉を移動しているという内容でした。
塀を飛ぶひつじが並ぶように、たくさんの彼方先輩が扉に並んでいます。
ぼーっと眺めている間にも、彼方先輩がさんにん、彼方先輩がよにん……
かすみ「いやなにやってるんですか!?」
夢の中にしてははっきりツッコめたと思いますよ? 彼方「おやおや、かすみちゃんや」
かすみ「うわ、彼方先輩」
右の扉から左の扉へと移る彼方先輩の列からはみ出た彼方先輩がひとり、かすみんに話しかけてきました。
ちょっとびびります。
危うく彼方先輩がゲシュタルト崩壊するところです。
かすみ「なにやってるんですか? 彼方先輩。というかほんとの彼方先輩ですか?」
彼方「まあまあ落ち着いて」
かすみんと対照的にのんびりとした彼方先輩から、なんとなく危険なものではないことは伝わるのですが。
それにしたって謎な光景でした。
彼方「彼方ちゃんはね〜、あの日『マーケット』でかすみちゃんの中に入った彼方ちゃんなのさ〜」
かすみ「えぇ!?」
びくりと、つい注射針を刺された場所をおさえます。そこに注射痕はまったく残ってないですけれど、それでも良い記憶ではありません。 彼方「あぁ、驚かせたいわけじゃなくて……えっとね、かすみちゃんってこないだ世の中を元通りにしてくれたでしょ?」
かすみ「はぁ」
元通りかはわかりませんが、ひとまず、この彼方先輩に悪気はないようです。
彼方「そのとき一緒に彼方ちゃんも戻るはずだったんだけどねぇ……うっかり寝過ごし申した」
かすみ「ほんとになにやってるんですか!?」
というか寝過ごすとかそういうシステムなんですか?
彼方「でもそのおかげで、かすみちゃんを経由して『マーケット』に残っちゃった彼方ちゃんも、みんなオリジナルの彼方ちゃんに還元できるというわけなんだ〜」
かすみ「かんげん……」 要するに、右の扉は『マーケット』に、左の扉はほんとうの彼方先輩に繋がっているということでしょうか。
かすみ「というか『マーケット』ってまだ残ってるんですか?」
彼方「そ〜なんだよねぇ。起源が元の世界じゃなかったとか、確立しすぎちゃったとかで切り離されたとかなんとか、帽子のおねえさんがいってたけど」
彼方先輩は??と頭にはてなマークを浮かべながら話すので、もちろんかすみにも伝わりません。
伝言ゲームは失敗のようです。
彼方「ひとことでいえば摩訶不思議な世界が隣り合わせにあるってことで……つまり、いつも通りだねぇ」
これまたのんびりと話す彼方先輩のおかげか、まったく危機感が伝わってこないのですけれど。
実際のところ、そんな程度なのかもしれません。
だっていつの世の中にも、奇跡としか思えないくらい素晴らしいことがたくさんあるのですから。 彼方「まあオリジナルの彼方ちゃんは数日ほど遥ちゃんへの愛が重くなっちゃうかもだけど……おっとそろそろ最後だねぇ」
かすみ「えぇ……」
さらりと、とんでもないことを言い残します。いまより愛が重くなるって、普通に心配なんですけど。
彼方「ん、かすみちゃん、いいの持ってるね」
かすみ「へ? あ、お守り」
扉を抜ける直前、彼方先輩の目が開きました。いままでどこにあったのか、いつかせつ菜先輩から受け取ったお守りが、かすみの手に握られています。
彼方「ふふふ、オリジナルの彼方ちゃんみたいに無から有は生み出せないけど、創り変えることならできるんだよ〜」
え〜いと、かつて彼方先輩がそうしたように、手のひらのお守りがまばゆく輝いて。
光が収まったあと、かすみの手のひらには一対の髪飾りがちょこんと乗っていました。
かすみ「あ……」
かわいい……と、素直に思ってしまいます。かすみんのパステルイエローにぴったりな、グリーンの小さなリボンの髪飾り。
お土産だぜ、と彼方先輩はドヤ顔です。
彼方「いつか、それをつけたステージを見せてね」
その言葉を最後に、ぱたりと扉は閉じて、夢は醒めました。
手のひらに緑の髪飾りを残して。 髪飾りはいま、机の上で大事に飾られています。
かすみの中であの体験のすべてが整理できて、歌となったとき、ようやく身につけることができるのでしょう。
それまでは、まだ。 かすみ「えーと、誤字なし……っと」
歌詞つくりは進めないとですけれど、他にもやるべきことはあります。
かすみんファンクラブのホームページの更新。
応援してくれるみんなに、かすみんのかわいい姿をたくさん見せないとですからね。
かすみ「えいっ更新!」
カチリとマウスを押して、作業を完了します。
いつだってドキドキするこの時間、ページが切り替わるつかのまに……ふと、思い浮かぶことがありました。 きのこのこと。今はもうなくなった、かすみんに住み着いたきのこのお話。
かすみんの大好きな先輩は、異変発生時からかすみんの中に溶けていました。存在ごと溶けたといいますか、状態としては魂を持っていかれた果林先輩よりひどく、みんなの記憶から消えてしまうほどに。
どうして先輩がそんな目にあっていたのか、あるいは、他のみんなの変異と同じように、それが先輩の個性に由来するのか。
本人すら憶えていない出来事なので、結局はわからずじまいですけれど。
では、どうしてかすみだけが憶えているのか。
かすみんなりに、ひとつだけ考えがあります。
かすみの中の先輩を通して、さらに他の誰かに繋がっていたんじゃないか、と。
その誰かが憶えているから、意識のなかった先輩を例外として、かすみも憶えているんじゃないか、と。
ある種のきのこというのは、見方によっては世界最大の生物といえるようで……その長大な糸の先に、誰かがいたんじゃないか、なんて。
誰かって誰? と、液晶をみながらの他愛のない妄想ですけれど、ちょっとした娯楽にしては楽しいでしょう? かすみ「! は、は〜いっ」
いけないいけない。お母さんからお風呂の催促をされてしまいました。
ホームページに載ったかすみんのかわいい写真を眺めていたら、もうそんな時間です。
お風呂の準備準備……。
かすみ「っと、その前に」
かすみ「昨日の閲覧数は――」
かすみ「――――えへへ♡」 完結お疲れ様でした
長期連載とても楽しませてもらいました
最高のSSをありがとうございます……… 続き待ってたよ〜!
そして完結おめでとうございます!
独特な世界観の中でも9人の絆は変わらないことが分かる、素晴らしい物語でした…
! 同好会の主人公である栞子ちゃんを省いているので−100点とさせていただきます 長編お疲れ様でした!
素敵なSSをありがとうございました! 完結おめでとうございます。
素敵な物語をありがとうございました! 良かった。
途中からだけど毎日楽しみにしてたよ
乙! 物語は大満足だったけど、シュークリームの賞味期限ずれてたり語られてない伏線とか設定あれば知りたいけど蛇足かな… おつです!
めちゃくちゃ面白かったです!
ちょっぴり寂しい気もします 今更ですが……
読んでくれた方、長い間ありがとうございました。
こんな人を選ぶお話を読んでくれただけで嬉しいです。
裏話的なのを物語外で語るのは控えておきます。すみません。
ただこの世界のせつ菜先輩はネットで「まほよ2はよ」ってよく書き込んでるらしいですよ?
よくわかんないですけど。
(これも蛇足かしら)
それはそれとしてアニメかすみん回が楽しみです。それでは。 乙
電撃組の友情がよく描かれてて世界観の表現も素晴らしかった 最初は不思議な文章だなぁとか思ってたけどいまではこの雰囲気がたまらん
お疲れ様でした! 完結ということで改めて前スレの最初から読み返してきた。
>>1 、こんなに素敵な物語を本当にありがとう。
色んな感想の言葉が出てきて自分の中で収集がつかないんだけど……とにかく、心が震えたよ。
そんでなにより>>1の虹ヶ咲愛、かすみん愛が伝わってきた!
過去作や次回作があるのか気になるところだけれど、とりあえずは令安かすみん物語、完走お疲れ様でした!
きのこ苦手だったけどこれからは食べるようにするわ(?) お疲れ様でした!
前スレから更新を本当に楽しみにしていました。最高の作品をありがとう!
かすみんは頑張ってるなぁ!🍄🌈 5chに投稿してる時点でssってまとめられた方が多く読まれるし見易くなるから良いものだと勝手に思っていたけど作者によっては意に反するかもしれないよね
浅慮な書き込みでした まとめの是非はともかくとして素晴らしい作品が世に広まって欲しいという気持ちはわからんでもないしまあまあ 長い間お疲れ様でした
完結寂しいけど追ってて良かった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています