穂乃果(24)「ありがとうございました、またのお越しを〜!」
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曜とルビィもカプセルから出されたとすれば
二人とも見た目10代のままなのかな? 第6章「終わりの始まり」
〜沼津〜
秋穂「スー……」
秋穂「……ハー」
秋穂「ここにお母さんがいたんだ…」
秋穂「よし!早速、聞き込み開始だ!」
秋穂「あの、すいません!」
「なんだい?」
秋穂「えっと…この写真の女性を見たことありませんか?」
「いやぁ、知らないねぇ」
秋穂「そうですか…すいません、ありがとうございます」
秋穂「……あの!」
「なにかね?」
秋穂「この写真の女性を見たことありませんか?」
「いやぁ、ないねぇ」
秋穂「そうですか…」
秋穂「あの、すいません!ちょっとお聞きしても…」 ・
・
・
-5時間後-
秋穂「だーーーっっれも!知らないじゃん…」
秋穂「……お母さん、本当にここにいたのかな?」
秋穂「あと聞いてないのは…あそこの旅館くらいかな」
秋穂「……十千万」
ガララッ
秋穂「あの、ごめんください!」
タタタッ
志満「あら?どうなさいました?」
秋穂「すみませんお忙しい中…」
志満「いえいえ、お気になさらずに」
秋穂「あの、私…人を探してて…いろんな人に聞き込みさせてもらってるんです」
秋穂「この写真なんですけど」
志満「どれどれ?」スッ
志満「あら、すごく可愛い子ねぇ…」
秋穂「昔の写真なんですけど…何かご存知ないですか?」 志満「うーん…ごめんなさい…ちょっとわからないわ…」
秋穂「そうですか…」
美渡「その子、数年前まで沼津にいたよね」
秋穂「え…」
志満「美渡…知ってるの?」
美渡「志満ねぇ、覚えてないの?ほら、あったじゃん数年前に町内会が急に言いだした謎の催し」
志満「あぁ…ダンスパーティー…そういえばそんなことあったわね…」
美渡「私たちも乗り気じゃなかったのに無理矢理オシャレさせられて行かされたじゃん」
美渡「その子、その時に見たよ」
秋穂「お母……その人は今も沼津に?」
美渡「いーや?数年前に出て行っちゃったよ」
秋穂「そう……ですか……」
秋穂「……お母さん」ポツリ…
志満「お母さん?」 志満「………」チラッ
美渡「………」チラッ
志満「………」コクッ
美渡「………」コクッ
美渡「確かその時のパーティー、参加者全員、ビデオメッセージみたいなの撮ったよね」
秋穂「……!」
志満「そんなこともしたわね〜」
秋穂「……あの、それって」
美渡「いいよ!私が町内会長に掛け合っといてあげるから」
秋穂「あっ…」
志満「……お母さんの事、何かわかるといいわね」
秋穂「あ、ありがとうございます…!」ペコリッ 町内会長「何年前じゃったかなぁ…」
町内会長「町内会の人間が何に感化されたんか、突拍子もなくダンスパーティーやりたい言うてなぁ…」
秋穂「はぁ…」
町内会長「ただ、唐突すぎて人の集まりが悪うての」
町内会長「旅館の看板娘二人になんとか来てもらって華は出たもんの、いかんせん、こじんまりしてもうてな」
町内会長「そんな時、街でたまたま歩いてる女の子を見つけてな、可愛いと思うたから、それに強引に誘ったんじゃ」
町内会長「最初は乗り気じゃなかったみたいじゃが、ワシの押しに負けての。あははは!!」
秋穂「………」
町内会長「………本題に入るか」
町内会長「言ってたもんはこれじゃな」
秋穂「そうです…そのビデオ…」
町内会長「当時、集まった人間に沼津への思いを語って貰おうと思ったんじゃが…その子だけな…」
秋穂「…?」
町内会長「まぁ、再生してみぃ」
秋穂「は、はい…」 ポチッ…
雪穂『………私が、こんなところに来ていいのか』
秋穂「……お母さんだ」
雪穂『姉は私のせいで死んだ』
秋穂「……え?」
雪穂『……娘には悲しい想いをさせた』
雪穂『私のワガママで日本を…世界を…地球を…混乱させてしまった』
雪穂『“あいどる”が支持される現状を作ったのは私……私が……』
雪穂『……虫のいい話と思われても仕方ない……私がそんな事を言う資格、ないのかもしれない……」
雪穂『でももし、このメッセージの意味がわかる人がいるなら……これを見てる時まだ“あいどる”が力を持っているなら……』
雪穂『誰か……誰か彼女たちを止めてください!』
雪穂『さもないと2035年に世界は終わってしまう…』
プツッ
秋穂「!?」
秋穂「…え?」
町内会長「切られたんじゃな、確か取り直しの分がもう一つあったと思うが」 秋穂「(……穂乃果おばちゃんが死んだのはお母さんのせい……?)」
秋穂「(2035年に世界は終わる…?)」
町内会長「あった、つけるぞ」
秋穂「……お願いします」
ポチッ…
雪穂『……秋穂』
秋穂「!」
雪穂『秋穂……こんな事を私が言える立場じゃないのかもしれない……だけど』
雪穂『絶対……幸せになってね』
プツンッ
秋穂「……お母さん」
秋穂「……うん」 秋穂「………」
町内会長「まぁ……茶でも飲めい」コトッ
秋穂「………」
町内会長「………」ズズッ
町内会長「思い出した事がある」
秋穂「……なんですか?」
町内会長「東京で巻き起こった、全身から血を出す病…」
町内会長「あれがこの沼津で起きた事があった」
秋穂「……沼津だけじゃない、それは全世界で」
町内会長「いや違うんじゃ。あの血の大晦日…東京大爆発が起きる前の話じゃ」
秋穂「……それって」
町内会長「日本で初めてあの病気が出たのは沼津なんじゃねぇか?」
秋穂「……そんな大事なこと、なんで知られてないんだろう?」
町内会長「……犠牲者が少なかったからな」
町内会長「なんてったって、沼津であの病気で死んだのは一人だけだ」
秋穂「一人?あの感染力で…なんでそんなに少ないんだろう…」 町内会長「ビデオの娘のおかげだ」
町内会長「あの女医さんが止めたんじゃな…今になって思うと」
秋穂「……女医?」
町内会長「……結局、この病気が沼津で出たのを知ってる奴らは俺を含めてごく僅かだ」
町内会長「だがここで起きていた方が東京での被害を減らせたのかもな…」
秋穂「……ちょっと待って。女医ってなに?」
町内会長「……岸壁の上に病院がある」
町内会長「そこで働いてたんじゃよ」
秋穂「………」
町内会長「あの女医さんがいなくなって、廃墟になってるが…良ければ行ってみるといい」
町内会長「お前さんの知りたいこともわかるかもしれん」
秋穂「……どんな人だった?」
町内会長「……ふと現れて、いつの間にかいなくなった」
町内会長「なにか悩みを抱えているようじゃったが……」 ・
・
・
ギシッ…
町内会長「ここだ」
秋穂「……こんなところでお母さんは何を?」
秋穂「あっ…案内ありがとう」
町内会長「老人には少々堪えるな」
秋穂「ご、ごめんね…」
秋穂「……ねぇ、一ついい?」
町内会長「なんだ?」
秋穂「さっき、その女医さんが病を治めたって言ってたけど、ワクチンでも使ったのかな?」
秋穂「多分、病ってウィルス性のものだと思うんだけど…」
町内会長「ワクチン…まぁそうなんじゃないか」
秋穂「その段階でワクチンが完成してたなら、なんで2019年12月31日の血の大晦日で使わなかったのかな…?」
町内会長「……さぁな、その辺のことはワシにはよくわからん」 〜廃病院〜
ガシャ…ガシャ…
秋穂「ひぇ〜…ガラスの破片だらけ…」
秋穂「……」キョロキョロ
秋穂「……ん、ネームプレートに何か書いてある」
秋穂「文字が薄れててよく見えないや……え〜っと」
【Dr.KOUS…】
秋穂「……この部屋ってもしかして」
ガチャ、キィー 秋穂「……お母さんの部屋」
秋穂「……ここにお母さんがいたんだ」
スタスタ…パキッ!
秋穂「……!」
秋穂「……写真?」
秋穂「おばあちゃんとお母さんと穂乃果おばちゃん…」
秋穂「……音ノ木坂入学式の時の」
秋穂「……何か他にないかな?」
秋穂「引き出しとかに…」
ガラッ
秋穂「……!」
秋穂「これって…」スッ
秋穂「お母さんの……日記?」 秋穂「………」パラッ
秋穂「……え?」
秋穂「」パラッ
秋穂「え、え……これって……」
秋穂「そんな…」ズルッ
バサッ…
秋穂「……嘘……でしょ……」
秋穂「お母さんが……?」 ・
・
・
〜東京〜
秋穂「」トボトボ
海未「秋穂」
秋穂「…!」
海未「…おかえりなさい」
秋穂「…ただいま」
海未「どうでした?お母さんの事、何かわかりましたか…?」
秋穂「……うん。……うん」 秋穂「……これ」スッ
海未「…?これは?」
秋穂「お母さんの……日記……」
海未「雪穂の?」
秋穂「……読んでみて」
海未「………」パラッ
海未「……培養に成功」
秋穂「その裏のページ…」
海未「裏のページ?」
海未「……」パラッ
【全身から出血した猿A】
海未「…!?これは…」
秋穂「…………」
海未「」パラパラ…
【……私が30万人の都民を殺した】
海未「これは…まさか…雪穂が…?」
秋穂「そう……。お母さんが……あのウィルスを作った、張本人……」 ・
・
・
真姫「エリー…日本に行くのね」
絵里「えぇ、秋穂たちの事も気になるし」
真姫「でも……わざわざ密航する必要なんて」
絵里「仕方ないわよ、私は正規の船には乗れないんだから」
真姫「そうかもしれないけど…」
絵里「大丈夫よ、心配しないで。……ねぇ、真姫」
真姫「…?」
絵里「亜里沙を……よろしくね」
真姫「……えぇ、任せといて」
真姫「……雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん、必ずみんなで一緒に帰るから」
絵里「うふっ…ハラショー…♪待ってるわね」 曜「ルビィちゃん…本当にここに残るの?」
ルビィ「うん…花丸ちゃんやお姉ちゃんもいるし…」
真姫「それに、ちょうど私も助手が欲しかったのよね」
真姫「ま、利害の一致って感じかしら?」
ルビィ「は、はい!ルビィも真姫さんのお手伝いが出来るなんて光栄です…!」
真姫「うふっ…なら良かった♪」
ルビィ「えっと…果南ちゃんは飛行機で帰るんだよね?曜ちゃんは?」
曜「え?私?もちろん私は絵里さんと同じ船に乗るんだよっ!」
絵里「え!?曜…あなた、無理しなくてもいいのよ?」
曜「いえいえ無理なんて!私は生まれながらの船女ですから!」
曜「船があるなら乗り込むまで!ヨーソロー!」
真姫「う、うん…ま、まぁ気をつけてね…」
絵里「え、えぇ…」 絵里「じゃあ、そろそろ行くわね」
真姫「本当に雪穂ちゃんと会っていかなくてもいいの?」
絵里「私が会ったところで…ね。真姫に任せるわ」
真姫「……わかったわ」
真姫「そっちも海未や希によろしくね」
絵里「えぇ、伝えとく」
曜「ルビィちゃん、体調とか気をつけてね!絶対にまた会おうね!」
ルビィ「うん!またみんな揃って!」
果南「そうだね、またみんなで!……ってあれ?」
曜「ん?どうしたの果南ちゃん?」
果南「いや……私、なんか、忘れてるような……」
絵里「忘れるくらいなら瑣末なことでしょう?さっ、行くわよ」
ルビィ「あっ…え、絵里さん!」
絵里「……?……なにかしら?」
ルビィ「あの……こ、ここまで本当にありがとうございました!」ペコッ
絵里「……ふふっ、ハラショー♪」
絵里「こちらこそ、ありがとう……」
真姫「……ウフッ」
真姫「またね」 ・
・
・
〜神田明神〜
希「これがその雪穂ちゃんの日記?」
海未「はい、かなり昔の事まで綴られていました」
希「……雪穂ちゃんがウィルスを」
海未「……しかし、詳しく読めば望んで作ったものではないという事も分かりました」
希「ウチらにとってはそれで良くても…秋穂ちゃんにとってはお母さんがウィルスを作ったっていう事実が辛いんよ」
海未「………」
希「今、秋穂ちゃんは?」
海未「……はい。すっかり寝込んでしまって、しばらく学校にも行けていません」
希「そっか……当然やね……だいぶショックを受けてるだろうし……」 希「日記には他になんて?」
海未「……えっと、その///」
希「……?なに、どうしたん?」
海未「その……だから……雪穂と亜里……ゴニョゴニョ///」
希「……えぇ!?なんて!?」
海未「その…///」モジモジ
希「〜〜〜っ!!」
希「もう〜!海未ちゃん、早よ言ってよ!何をそんなに照れてるん!?」
海未「だ、だから!雪穂と亜里沙ちゃんは……その……恋人関係にあったらしいんです……!!!
希「………」ポカーン
希「……知ってるよ?」
海未「え?」
希「当時、気づいてなかったのって海未ちゃんだけちゃうかなぁ?」
海未「そ、そうだったんですか…」 希「それで雪穂ちゃん達がどうしたの?」
海未「は、はい…日記によると雪穂と亜里沙ちゃんは自分たちの子供を設けたいと考えたようです」
海未「そうして、雪穂は木皿教授のご息女と細胞の研究を始めたそうです」
希「女性同士でも子供が作れるようにって?」
海未「そのようですね…。そして、この木皿教授のご息女こそが、穂乃果に秋穂を託したあの女性のようです」
希「あれ…?でも待ってよ、“あいどる”は秋穂ちゃんに自分はもう一人の母親だって言ったんやろ?」
海未「はい。それは恐らく事実だと思います…」
希「なら、“あいどる”は亜里沙ちゃんって事に…」
海未「いえ、重要なのはこの後なんです」 海未「日記によると、雪穂たちの研究に目をつけた女性がいたそうです」
海未「恐らくこの人物こそが“あいどる”かと…」
海未「雪穂は…協力しなければ父親を殺害すると脅されたみたいです」
希「………」
海未「……そして、協力しなかったためにお父さんは殺された……と、雪穂は記しています」
希「雪穂ちゃんのお父さんって確か…膵臓癌で亡くなったんじゃ…?」
海未「そうです。ですが…それはあくまでも表向きの死因で、実際は何らかの方法で…殺害されたんでしょう…」
希「………」 海未「そして別のページには、亜里沙の訃報を聞き、悲しみに明け暮れ、立ち直れなかった自分の前に現れた彼女に気を委ねてしまった…と、記されています」
希「……じゃあ、亜里沙ちゃんの不可解な死も、“あいどる”が一枚噛んでる可能性があるね」
海未「その後“あいどる”は次々とスクールアイドルを拉致し…更に、その子たちの監禁を始めたそうです…」
海未「これは穂乃果がヒデコから聞いたと言っていた、勧誘の事ではないでしょうか?」
希「“あいどる”はなんでそんな事を?」
海未「はい。次にこう記してあります」
海未「自身の卵子を精子へと変換させるために必要なプロセスであり、その適応者を探すため」
海未「この適応者とは…何のことなんでしょうか?」
希「……ウチらにはよくわからないね」 海未「その後、二人の間に生まれた女の子に…秋穂と名付けた…」
海未「そして…しばらくしてから穂乃果に預ける決断をした、と」
希「なんで穂乃果ちゃんに預けようって思ったんだろう?」
海未「それは……“あいどる”は危険と判断したからでは?」
希「そんなの秋穂ちゃんが生まれる前からわかってることやんか」
希「日記にはなんて書いてあるの?」
海未「それが…所々ページが破られていてよくわからないんです」
希「ふーむ…」
海未「亜里沙ちゃんの事もあり、寂しさから正常な判断が出来なかったのではないでしょうか…?」 海未「その後……木皿教授のご息女は“あいどる”に洗脳されたため、疎遠になったとも書いてあります」
海未「……そして……ある年、“あいどる”から出されたオーダーが……」
希「あの血の大晦日に使われたウィルスってわけやね…」
海未「……はい」
希「……やっぱり、雪穂ちゃんにしかわからない事が多すぎるね」
希「カードもわからないって言ってる」
海未「……そうですか」
希「……まぁ、ウチらが今やるべき事は秋穂ちゃんのケアだよ」
希「……色々あって、きっと疲れてると思うんよ」
希「穂乃果ちゃんがいなくなってから……ウチらはあの子に随分救われたからね……」
希「今度はウチらが支えになってあげないとね!」ニコッ
海未「希…。はい…そうですね」 ・
・
・
コンコンッ
海未「………」
コンコンッ
・・・シーン
海未「……秋穂?」
海未「入りますよ……?」
ガチャ
海未「……秋穂?いないんですか?」
・・・ガラーン
海未「あの子…いったいどこに…?」 〜ゲームセンター〜
秋穂「!!!!!」
バチンッ!!!!!
ピーピー
カカリインヲオヨビクダサイ…
ザワザワ…
女客「えっ…壊れた?」
男客「パンチングマシンを壊すなんて…」
女客「最近の子はストレス溜まってるのねぇ…」
秋穂「はぁ……はぁ……」
不良1「ねぇねぇ!お姉ちゃん!」
秋穂「……ふん」プイッ
不良1「華奢なのに、すげぇ力してんねぇ、カッコよかったよ」
秋穂「……」キッ
不良1「うっ…」
不良2「まぁそうカリカリしなさんな!せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
不良2「地元ここ?見ない顔だけど」
秋穂「………」スタスタ
不良3「帰んの?車あるから送ってくよ!」
秋穂「」ピタッ
秋穂「……乗せて帰ってよ」
不良3「!!!」
不良3「へへ、任せときな…」 〜車内〜
不良2「大丈夫?狭かったら俺の膝の上にでも乗る?w」
秋穂「………」
不良2「……はっ」
不良3「ねぇ、さっきから窓の外ばっか見てるけど、面白い?」
秋穂「……あなた達と喋ってるよりかは」
不良3「」カチンッ
不良2「つか、さっきからなに聞いてんの?」
不良2「音楽プレーヤー?…古っ」
秋穂「触ったら承知しないから」
不良2「はは、機嫌悪いねぇ…」
秋穂「………」 秋穂「………」
・
・
・
秋穂「ねぇねぇ、穂乃果おばちゃん」
穂乃果「……」ガチャ、ガチャ
秋穂「穂乃果おばちゃん!!」
穂乃果「ん?どうしたの秋穂?」
秋穂「穂乃果おばちゃんはなんで歌えるの?」
穂乃果「え…?」
秋穂「秋穂以外のお客さん、欲しくないの?」
穂乃果「たはは…そりゃまぁ、欲しいよ」
秋穂「なんで欲しいと思ってるのに…なんで辛いのに続けられるの…?」
穂乃果「……秋穂」
秋穂「…?なーに?」 穂乃果「諦めないことが大切なんだよ?」
穂乃果「なんでも諦めずに最後までやり遂げる事が大切なの」
穂乃果「諦めずにやってたら、きっと何かが変わるから!」
秋穂「……そうなの?」
穂乃果「そうだよ〜!だって、私たちがそうだったんだもん!!だから保証するよ!」
秋穂「えへへ…そっか!」
穂乃果「うん、そうだ!」
秋穂「そっかそっか!」
穂乃果「そうだそうだ!」
秋穂「クスッ…」
穂乃果「プッ…」
穂乃果&秋穂「あはははは…!」
・
・
・
秋穂「諦めずに……か」
秋穂「」ジワッ…
秋穂「穂乃果おばちゃん……私、もうダメだよ……」 不良2「……寂しそうだね。これ、使ってみ」スッ
秋穂「なぁに…これ…?」
不良2「大丈夫。変なものじゃないよ?すげぇ気持ちよくなるから」
秋穂「………」
不良3「それ、カラフルで可愛いっしょ?」
不良3「嫌なこと全部忘れられるから」
秋穂「これを使えば、穂乃果おばちゃんに…会える…?」
不良1「あぁ…その穂乃果さんにもきっと…穂乃果…穂乃果…?」
不良1「いや待てよ…コイツどっかで見た事…」
秋穂「はぁはぁ…穂乃果…おばちゃん…私…!」
不良1「よく見れば……コイツ……あの高坂穂乃果に……なんか……雰囲気……」
不良達「…ッ!」ゾッ
キーッ!!
不良1「お、降りろ!」
秋穂「……っ!」ドサッ!
バララッ…
秋穂「あ…!」
不良1「やベェヤツ捕まえちまった…!出せ!」
不良2「で、でもクスリ渡したまんま…!」
不良1「いいから!早く出せ!」
不良3「あ、あぁ!」
キイイイィィ!!ブーン… ザワザワ…
通行人女「あ、あなた…大丈夫?」
秋穂「あれ…あれ?さっきのやつ…どこかにいっちゃった…」
通行人女「さっきのやつ?もしかして、これ…?」スッ
通行人男「え…お、おい…それってMDMAってやつじゃ…」
通行人女「えっ、なに…それ?」
通行人男「薬物だよ…!見た目はそんなだけど…かなり危険なやつ…!」
秋穂「か、返して…!」バッ
通行人女「ひっ…!」
秋穂「はぁ…はぁ…!これを使えばまた穂乃果おばちゃんに…会える…会える…!」ジワッ
秋穂「…っ、お母さん、お母さん…」ツー…
秋穂「うっ…やだ、やだよぉ…もう…」
通行人男「も…もう使っちまってんのか?情緒不安定というか…なんか危ないぞこの子…」 通行人女「つ、通報した方がいい…?」
「ま、待ってください!」
通行人男「…!?」
千歌「その子は…私が預かります」
通行人男「あ、あんたは?」
千歌「私、こういうものです」スッ
通行人女「け、刑事さん?」
千歌「はい。ちょっと、通してもらえますか」
秋穂「はぁ…はぁ…」
千歌「秋穂ちゃん、ほら立って…」
秋穂「だ、誰?……誰ぇ」
千歌「千歌だよ…。とりあえず、ここじゃ人目があるから…」 ピンポーン
千歌「誰かいないかな…?」
ガチャ
千歌「…あっ」
海未「どなたで……。ッ!!」
千歌「う、海未さ…!」
海未「秋穂…!」
秋穂「……スー」
千歌「あっ…疲れて、寝ちゃったみたいです」
海未「そうですか…。あの、失礼ですが…あなたは?」
千歌「けい…いや、秋穂ちゃんの友達です」
海未「…そうですか。この子…こんな時間まで、いったいどこに…」
千歌「ここから離れたところでちょっと…」
海未「えっ?まさか…そこから秋穂をおぶって、帰ってこられたんですか…?」
千歌「あ、はい!タクシー使おうにもお金がなかったので…あはは…」
海未「ほ、本当に申し訳ありません…」
千歌「い、いえいえ!そんな気にしないでください!じゃ、じゃあ私はこの辺で…」
海未「あ、あの…!」
千歌「…はいっ?」
海未「よければ、上がっていってください」
海未「お茶くらいしか出せませんが…」 秋穂「……スー」
コトッ…
海未「……どうぞ」
千歌「あ、ありがとうございます!」
千歌「ズズッ……海未さんは、ずっと秋穂ちゃんの家に?」
海未「えぇ…。あまりにも帰りが遅いので、心配していたんです」
千歌「そうですか…」
千歌「……ちょうど私、ゲームセンターから男の人たちに連れられて出てきて、車に乗り込む秋穂ちゃんを見て……それで慌ててタクシーに乗って後をつけたんです」
海未「そんな事が……」
千歌「はい。中でなにがあったのかはわからないんですけど…」 千歌「しばらく走った後、秋穂ちゃん…外に出されたんです。まるで、放り出されるみたいに…」
海未「えっ…?」
海未「ま、まさか…何か酷いことをされたのでは!?」
千歌「あっ…いえ、そういう形跡はなかったんですけど…」
千歌「でも一歩間違えたらそれも……」
千歌「……車から降りた時の秋穂ちゃんはすごく混乱していて、私を認識する事も出来てませんでした」
千歌「……そして、手には薬物が……」
海未「……え?」 海未「……秋穂が……そんなものを……?」
千歌「たぶん、無理やり持たされただけだと思うんです」
千歌「だから…怒らないであげてください」
海未「……」チラッ
秋穂「…スー…スー…」
海未「……」
千歌「この歳の女の子じゃ…受け止めきれない事がたくさんあって当然ですよね…」
海未「……そうですね」
千歌「ズズッ…」
千歌「……私、そろそろお暇しますね!」
海未「あっ…そ、そうですか…?あの、今日は本当にありがとうございました…」
千歌「いえいえ、当然の事をしたまでですから!」
千歌「それじゃあ…」ガチャ
海未「」ペコッ
バタンッ
海未「………」
秋穂「……スー」
海未「」ギュッ…
秋穂「……ん」
海未「……私では代わりにならないかもしれません……。でも、側にいますから」
秋穂「……っ、ん……」
海未「………穂乃果」 -翌日- 〜理事長室〜
鞠莉「………」
果南「………」
曜「………」
鞠莉「まぁ…まずは曜の無事を喜ぶべきよね?」
果南「う、うん…」
鞠莉「でもね果南。私が果南をニューヨークに行かせたのは梨子の捜索で……ノー、怒るのはやめましょう……」
鞠莉「そもそも、あんなノーヒントで行かせた私にも責任はあるからね」
鞠莉「…それに、曜にルビィに花丸…それにダイヤが無事ってわかったんだから、結果オーライよね」 曜「あのさ鞠莉ちゃん」
鞠莉「ワッツ?どうしたの、曜?」
曜「千歌ちゃんは?三人はずっと無事だったんだよね?」
鞠莉「……千歌ッチは今、大忙しだと思うよ」
果南「え、どうして?」
鞠莉「ムロタさんもそうだけど……警察がね」
鞠莉「近々“あいどる”が秋葉原でパレードを開くみたいデスからね」
果南「パレード?」
鞠莉「えぇ、視察も兼ねたね…」
鞠莉「かなり大規模に行うみたいだから…人も大勢集まるはず」
鞠莉「今はその護衛なりの準備で人員を割いてるらしいよ?」 ・
・
・
-パレード当日-
『ご覧ください!“あいどる”の勇姿を!』
『“あいどる”は徐行する車から、市民一人一人に目を向け手を振っています。現場は非常に和やかな雰囲気に包まれています!』
にこ「……こんなパレードをテレビ中継なんて、くだらないわね」
凛「……あれ〜?ねぇ、にこちゃん、かよちん知らない?」
にこ「花陽?そう言えば見てないわね…」
にこ「……まさか、この秋葉原パレードに行ったんじゃ」
凛「凛たちに何も言わずにかよちんが一人で?」
凛「はは。ないにゃないにゃ〜…」
凛「ん〜どこ行ったんだろう〜?」
にこ「…しかし…パレードねぇ…」 『凄まじい“あいどる”コールが響き渡ります!』
『“あいどる”のこの後のご予定は……』
秋穂「……」ジッ
海未「さて…お昼ですし、何か作りましょうか」
海未「秋穂、何か食べたいものはありませんか?」
秋穂「……ねぇ、海未おばちゃん」
海未「はい?」
秋穂「パレード…行きたい…」
海未「……ッ!」
海未「………」
秋穂「……ダメだよね」
海未「……わかりました」
秋穂「だよね………え?」
秋穂「海未おばちゃん……いいの?」
海未「たまには太陽の光を浴びないといけませんからね。構いませんよ…」
海未「ただし!私も同伴しますからね」
秋穂「……うん、わかった」 ・
・
・
刑事2「高海」
千歌「………」
刑事2「高海…!」
千歌「えっ…?は、はい?」
刑事2「……お前なぁ」
千歌「す、すいません…」
刑事2「……まぁ、やる気が出ないのもわかるけどよ」
刑事2「このパレードの後、“あいどる”は各所の視察に行かれる。そして最後に神田明神へ参拝の予定だ」
千歌「神田明神…」
刑事2「もう明神が混雑してるらしい、行くぞ」
千歌「は、はい!」 ・
・
・
ルビィ「真姫さん!」
真姫「なに?今、手が離せないんだけど…」
ルビィ「見てくださいこれ!」
真姫「いや、だから……んもう!なによ?」
真姫「なにこれ……パレード?」
ルビィ「こっちでも日本のこと放送するんですね〜…」
真姫「“あいどる”が出てると、どこもかしこも取り上げるのよ、バカみたいに…」
公野「本当にバカみたいだね」
真姫「ひゃっ…!」ビクッ
ルビィ「うゆっ…!」ビクッ
公野「そんなビックリしなくても…」
真姫「あなた…神出鬼没すぎよ」
公野「ごめんごめん!いやね、今日は真姫に見せたいものがあってさ」 公野「ハターキとコンタクトが取れてね」
真姫「ハターキ?」
公野「知らないの?今度“あいどる”のテーマソングを手がける人」
真姫「それがどうしたのよ?」
公野「ほらこの前、ルビィの友達いたじゃない?」
真姫「ルビィの友達……誰だったかしら」
ルビィ「果南ちゃん!」
真姫「あぁ…で、それがなによ?」
公野「あの子、本当はハターキを探しにニューヨークに来てたんだよ」
ルビィ「あっ…果南ちゃんが最後に言ってた忘れてる事ってそれだったのかな…」
公野「でさ、気になったから私なりに調べてみたのハターキを」
公野「そしたらあの人面白くてさ……ぷぷ」
真姫「……あなた、冷やかしにきたの?」
公野「違う違う!ま、いいや…余計な話は置いといて、これ見てみなよ!」 真姫「…これは?」
公野「歌詞ノート」
真姫「誰のよ?」
公野「……“あいどる”の」
真姫「……え!?」
公野「ハターキに貸してもらったの」
ルビィ「な、なんで、ハターキさんが…?」
公野「まぁ、情報提供…?あの人は完全な“あいどる”側じゃないからね」
真姫「……希望は悪の手で撃ち殺されるのよ」
ルビィ「え、真姫さん…?」
真姫「……歌詞よ」
公野「…それ、あの法則から考えてヤバくない?」
公野「“あいどる”は歌詞に忠実…」
真姫「……あっ」
ルビィ「……え?」
真姫「…っ、自作なんて、もうなんでもありじゃない…!!」
真姫「今日のパレード…マズいわ…」
真姫「秋穂が……殺される……」 ・
・
・
ワーワーワーワー!!!!!
アイドルー!!!!!
海未「どこに行っても人混みだらけですね…!」ギュウギュウ
海未「秋穂、大丈夫ですか…?」
海未「……秋穂?」
・・・
海未「い、いない…!」
海未「……っ!もう、あの子は!」 千歌「あれ、先輩…?」
千歌「しまった…はぐれちゃった…」
千歌「あっ…テレビカメラ」
テレビリポーター「“あいどる”は今、世界で最も危険な道を進んで行きます!」
テレビリポーター「我らが愛する“あいどる”は世界の崩壊を唯一止めることができるお方です」
テレビリポーター「日本が世界に誇る“あいどる”が今ゆっくりと…そして堂々と国民に手を振っています!」
千歌「……こわいなぁ」
刑事1「」ニヤッ
千歌「!?」
千歌「あっ…あの人…!」
千歌「なんで、こんなところに…?」
千歌「……ッ!」タッタッタッ ギュウギュウ…!
秋穂「ん…!んぅ〜…!」
スポンッ
秋穂「ぷはっ!」
秋穂「はぁはぁ…だいぶ人混みに流されちゃった…!」
秋穂「海未おばちゃんと…はぐれちゃった…」
秋穂「どうしよう…」
秋穂「というか、ここって…」
秋穂「神田明神じゃん…」
秋穂「そっか…今は下でパレードしてるから…まだここにはあんまり人が…」
秋穂「そうだ!せっかくだし、希おばちゃんに挨拶しとこ」
バンッッッ!
秋穂「!?」
「止まれ」
秋穂「あなた…」
刑事1「つぎは当てる」
秋穂「ブリトニーを殺した、あの…?」 ザワザワッ…
「今…あいつ、撃った…?」
「銃、持ってる…?」
「いや、いやあああああああぁぁぁぁぁ!!!!」
刑事2「全員伏せろ!」
刑事2「(あの野郎…ここで何を…!?)」
秋穂「なんでこんなところに…」
刑事1「“あいどる”がお前を“退部”させろってな」
秋穂「たいぶ…?」
秋穂「……私は“あいどる”に会って話をしないといけないの」
刑事1「それは無理な相談だ。何故ならお前は今ここで死ぬからな」
秋穂「………」
刑事1「おっと、逃げるなんて考えるなよ?」
ガラッ!
希「ちょっと!今のなんの音…」
刑事1「お前が逃げたら…こうだ」
バンッッッ!
バシュッッ…
希「がっ…!ッッ……!!!」ドサッ
秋穂「ッッ!!!!!」
秋穂「希おばちゃんッッ!!」 秋穂「希おばちゃんになんてことするのよ!!」
刑事1「今のは参考だから足を狙ったんだ。感謝しろよ、死にゃしない」
秋穂「……!」ギリッ
刑事1「お前が逃げたらここにいる奴ら全員殺す」
希「……あ、秋穂ちゃん……ッ……い、いいから、早く逃げや……!」
秋穂「……撃てば」
刑事1「…!流石は運命の子、肝が座ってる」
刑事1「じゃ…」
ダダダ…
刑事1「あ?」
秋穂「!」
海未「秋穂っ!」ガバッ
秋穂「海未おばちゃん…!?あ、危ないから逃げて!」
刑事1「どけよババア…お前ごと撃つぞ?」
海未「撃つなら私を撃ってください!」
海未「私の……私たちの子に手は出させません……!」
秋穂「……海未おばちゃん」
刑事1「ふんっ。バカが。お前一人が庇ったくらいじゃ、どっちにしろ貫通して二人とも死ぬ」 刑事1「だいたい…お前たちの子じゃないんだよ」
刑事1「神の子なんだよッ!」
秋穂「海未おばちゃん、私のことはいいから逃げて…」
海未「……っ」ギュッ
秋穂「……なんで」
刑事1「希望は悪の手で撃ち殺されるのよ」
秋穂「………」
刑事1「素敵な歌詞だ」ニコッ
刑事1「じゃあな」スッ
海未「!!」ギュッ!
秋穂「海未おばちゃん…」
刑事1「あははは!!」
秋穂「……くそぅ」 希「……ッッ!」グッ
ブルン……
刑事1「……あ?」
ブルンブルンブルンブルンッ!!!!
刑事1「なんだ……この音?」
秋穂「……バイク?」
ブゥゥゥゥゥゥゥン!!!
ガンガンガンガンッ!!
刑事1「なに!?」
ブルンッ!
刑事1「あぶねぇっ!」サッ
キィィィィィ!
「…………」
刑事1「だ、誰だ!ヘルメットを取れ!ぶっ殺してやる」
「仲間を……」
「……秋穂を」
スッ…
刑事1「……ッ!お前は……!」
絵里「絶対、殺させやしないんだから」
希「絵里ち……」
秋穂「絵里…おばさん…」 刑事1「ふんっ…」スチャッ
絵里「…………」
刑事1「死ね」
秋穂「…ッ!ダメ!!」
バンッッッ…!
絵里「……?」
秋穂「……え?」
刑事1「…………あ、れ…?」
刑事1「………俺が…希…望……で…お前……らが悪……だった……のか…?」
刑事1「ゴパッ…」
刑事1「」バタンッ
イヤ、イヤアアアアアアアアアア!!!!!!!!
ニゲロニゲロ!!
絵里「……っ」ダッ
刑事1「」
絵里「……即死か」
絵里「……弾はまだあるわね」
・
・
・
酒井「」ニヤッ
酒井「ほら、拾えよ…拾えよ9番」 絵里「」キチャ…
絵里「伏せときなさい、いいわね?」
秋穂「う、うん…」
絵里「海未、秋穂を…」
海未「絵里…。わかりました…」
絵里「頼んだわよ」
絵里「…希!」
希「へ…?ど、どうしたん!?」
絵里「それで、止血しなさい」ブンッ
希「…っと!」パシッ
絵里「………」
秋穂「絵里おばさん…」
絵里「…ここにいて」
秋穂「でも、私…」
絵里「ここにいるのよ」
秋穂「……わかった」
絵里「……」コクッ
海未「……」コクッ
絵里「」ダッ 刑事2「落ち着け!落ち着いてこの場から離れろ!」
絵里「どきなさい」
刑事2「!?」
絵里「」スチャッ
「え…?い、いやああああああ!!!!!」
「あ、あれ…テロリストの…!絢瀬絵里よ!!!!!」
「いやああああああぁぁぁぁ!!こ、殺される!!!!」
ドタバタ…
絵里「……みんな、お利口さんね」
刑事2「待て!」
絵里「……なに?」
刑事2「あいつは……死んだのか?」
絵里「えぇ…即死だったわ」
刑事2「……絢瀬絵里」
絵里「…あなた警察?なら、私のことよりも階段の整理をしといてちょうだい。もしもの時、あの子たちがすぐに逃げられるようにね」ダッ
刑事2「あっ!お、おい!!」 ダダダッ
曜「絵里さん!」
絵里「どう曜?わかった?」
曜「はい!あそこです!あそこのビルの屋上から撃ったはずです!」
絵里「わかったわ、曜はここで見張りをお願い!」
曜「了解であります!」
絵里「……屋上ね」
絵里「」ダダダダダッ
…ガチャリ ヒュー…
酒井「………」
絵里「……あなた」
酒井「よう、9番」
絵里「……あなたが撃ったの?」
酒井「あぁ」
酒井「ん?……9番、お前……ちょっと変わったか」
絵里「………」
酒井「いや…変わったんじゃない…戻ったのか」
絵里「……秋穂たちを襲った彼は“あいどる”側なんでしょ?」
絵里「つまりあなたのお仲間のはず。なぜ撃ったの?」 酒井「はっ…わからないのかよ9番…」
絵里「えぇ…さっぱりよ」
酒井「茶番なんだよ……このパレードも全部な」
酒井「あいつは神の子に歯向かって殺されるという役を演じてただけだよ、ノリノリでな」
酒井「ま、本人は知らなかったんだけどな」
絵里「………」
酒井「お前もまんまとのせられたんだよ9番」
絵里「なにが言いたいの…?」
酒井「パレードなら人も集まって、関心を持たせられる」
酒井「絶好の舞台なんだよ」
酒井「このパレードをキッカケに“あいどる”はなろうとしてるんだよ…」
絵里「……なにになろうとしてるのよ?」
酒井「本当の神にだよ…」 絵里「……人では神になれないわ」
酒井「人知を超越した存在になれば…それは神となるんだ」
酒井「お前たちも不可能と思われた事を実現して伝説と呼ばれたんじゃないのか?」
絵里「………あなた、どこまで知ってるの?」
酒井「教えるもんか」
絵里「………」
酒井「神だとか、伝説だとか…そういう称号は自分で付けられるもんじゃないんだ。こればっかりはな」
酒井「具体的になにをすれば人々は彼女を神と認めてくれると思う?」
絵里「……全人類を洗脳でもする気?」
酒井「……死ぬんだよ」
絵里「どういうこと…?」
酒井「キリストの話、有名だろ?」
酒井「イエスは死んだ後、蘇り…神となった」
酒井「人は死んだ後に生き返ると…神とみなされるんだよ…」
絵里「……!」
絵里「……ッッ!」ダッ
ガチャリ、バタンッ…
酒井「ふっ…」 ダダダッ
曜「ん?」
曜「え、絵里さん…?」
絵里「“あいどる”のところに行く。あなたは隠れてなさい」
曜「え、ど…どういうことですか!?」
絵里「“あいどる”が神になったら……世界は終わる」
絵里「……その前にあいつの正体を」ダッ
曜「ちょちょ…!絵里さんっっ!?」 絵里「はっ…はっ…!早く、あいつを止めないと…」
絵里「……!?あれは……」
花陽「……」キョロキョロ
花陽「」サッ
絵里「花陽…?」
絵里「いや…今は…」
ワーワーワー!!!
絵里「“あいどる”…!」
ワー!!!
絵里「ッ…どいてください…!」
ワーワー!!!!
絵里「どいてください!」
アイドルー!!!!
絵里「……ッッ!」
絵里「どいてッッ!!!」
「え?い、いやああああぁぁぁ!!!!?」
「な、なに…今の声?だ、誰が…?」 警察「貴様…!下がれ!“あいどる”に近づくな!」
SP「」バッ
絵里「………」
“あいどる”「やぁ、絵里ちゃん」
絵里「」バッ…
絵里「」スチャッ
イ、イヤアァァァァァ!!!!
テ、テロリスト…!!!
SP「」スチャッ SP「」スチャッ SP「」スチャッ
警察「発砲準備!!」
絵里「………」 “あいどる”「いいんだ、彼女は私の友達だから」
“あいどる”「それに市民に銃を…ましてや女性に向けるなんていけないよ?」
SP「………」サッ
警察「待機せよ…」
絵里「……マスクを取るのよ」
絵里「あなたの正体は…あなたは誰?」
“あいどる”「マスクを取ったら…私もみんなの仲間かな?」
絵里「……私たちの時代はもう終わった。あの時の今に置いてきたのよ」
“あいどる”「……そっか」 “あいどる”「そうやってあなた達はいつも、私を仲間はずれにする」
絵里「……何を言っているの?」
“あいどる”「そうだ、亜里沙ちゃん。生きていたんだね…おめでとう」
絵里「……ふざけないで。今はあなたが誰かを聞いてるの」
“あいどる”「……そっか、お礼はなしか」
絵里「あなたの何にお礼をしろっていうの?」
“あいどる”「亜里沙ちゃんが生きているのは私のおかげなのに」
絵里「……なんですって?」 “あいどる”「どんなに活躍しても、どんなに頑張っても…それを認めてくれる人はいない」
絵里「………?」
“あいどる”「所詮その程度の存在なんだ」
“あいどる”「私のやる事は当たり前で…だから、お礼もないんだ」
“あいどる”「やっぱり、損な役回りだよね」
絵里「なんの話……?」
絵里「……あなたは誰なの」
絵里「……ッッ。あなたはいったい誰!?」スチャッ
ヒィィィ!!!
イヤアァァァ!!! “あいどる”「私を覚えてないの?」
“あいどる”「私の顔がわからない?」
絵里「だから、マスクを…!」
“あいどる”「なら、穂乃果ちゃんの顔も覚えてない?」
絵里「……穂乃果?」
“あいどる”「そんなわけないよね、穂乃果ちゃんは覚えてるのに…私を覚えてないなんて」
絵里「……なにを?」
“あいどる”「これを見ても…わからない?」スッ
絵里「……花?」
“あいどる”「昔、たくさん見たでしょ?」 絵里「……っ!」
絵里「いえ……そんなはずないわ……だって……」
絵里「いや、でも…」
絵里「あなた……まさか……」
“あいどる”「……」
バンッッッ!!
絵里「…っ!?」ビクッ
警察「ふ、伏せろ!!」
絵里「なに…?」 “あいどる”「あ……」
SP「ッッ!!!」
“あいどる”「あ、れ……」バタンッ
絵里「あっ…」
「い、いやあああああああぁぁぁぁ!!!!!」
「誰が…誰が!??」
「逃げろ逃げろ!殺されるッ!!」
「“あいどる”うううぅぅ…!いやあああぁぁぁ死なないでぇぇぇぇ!!!」
絵里「いったい…どこから?」
「あぁぁ…!この人よ!!この人が撃ったのよ!!」
絵里「…!」クルッ
フミコ「……終わった」
絵里「フミコ……?」 フミコ「終わりましたよ、絵里先輩」
絵里「フミコ…あなた、ここで何を…?」
フミコ「私が彼女の暴走を止めないと」
バンッッッ!
フミコ「私があ」プシャッッッ
絵里「!?」
フミコ「」
絵里「フミコッッ!!!」
・
・
・
酒井「ヘッドショット。よくも“あいどる”を」
酒井「“あいどる”…どうか、ご無事で…」 曜「絵里さんっ!!」
絵里「曜…」
曜「狙われてます!逃げて!」
絵里「ッッ……フミコ……」
フミコ「」
絵里「くっ…!そこを開けなさい!」 スチャッ
「いやああああああぁぁぁぁぁ……!!!」
「こ、殺さないで……!!!」
絵里「ッ…行くわよ…」ダッ
曜「はい…!」ダッ ・
・
・
『“あいどる”が何者かによって銃撃を受けました!』
『“あいどる”は病院へと運ばれ、かなりの重体と予想されます」
凛「今のって…絵里ちゃん…?」
にこ「あの子なにして!」
凛「ね、ねぇ!“あいどる”は?」
にこ「わからない…わからないけど…あれじゃ多分…」
凛「……“あいどる”がもし死んだら……世界は平和になるのかな……」
にこ「どうでしょうね…もしかしたら」
にこ「逆かもね…」 ・
・
・
ルビィ「ま、真姫さん…!テレビ…!」
真姫「見てるわよ…」
真姫「……ッ」
真姫「こんな終わり方って…」
公野「……本当にこれで終わりかな」
真姫「……どういうこと?」
公野「………」
真姫「……?」
ルビィ「絵里さんが“あいどる”を…?」
真姫「リアクションからして撃ったのはエリーじゃない…」
真姫「…っ、でも、こんなの…」 ・
・
・
鞠莉「このまま“あいどる”が死んだら……なにもわからずじまい」
果南「これじゃ、梨子ちゃんと善子ちゃんの行方が…」
鞠莉「うん…。それに…このまま“あいどる”が死んで、日本が…世界が良い方に進むとは…正直、思えない」
ガチャ!
千歌「はっ…はぁ…はぁ…」
果南「千歌…!」
鞠莉「千歌ッチ…持ち場、離れても良いの?」
千歌「はっ…はぁ…もう…持ち場もなにも…ないよっ…はぁ…」 千歌「以前に話してた先輩は死体で発見されるし“あいどる”も…!」
果南「いや“あいどる”はまだ死んだわけじゃ…」
鞠莉「…いや…ダメだね…」
果南「え?」
『速報です!“あいどる”が逝去…“あいどる”がお亡くなりになられました…!」
果南「し、死んだの…?」
鞠莉「はぁ…」ギシッ
鞠莉「結局…“あいどる”の正体は…誰だったのかしら…」 大切じゃない人が死んだ時の気持ちって不思議な感じで、泣くとか笑うとか…もう、そういう概念じゃないんだ。
じゃあ、どんな気持ちかっていうと。ただ、ジッと見つめて最期を見届けようとするの。
私は…家のテレビで海未おばちゃんと希おばちゃんの三人で、その人の最期を見届けようとした。
私は…何故だか震えて、そしたら海未おばちゃんがギュッて抱きしめてくれた。
落ち着いた。すごくすごく…安心した。
でも、私とは対照的に…抱きしめてくれた海未おばちゃんの身体は少しだけ…震えてた。 私より長く生きてる人の勘だったのかな。今、考えると、海未おばちゃんはあの時、胸騒ぎしてたんだと思う。
アキバドームってさ、昔は野球とかする場所だったんだけど、今は歌手とかも使うの。
そのキッカケを作ったのは私の穂乃果おばちゃんがリーダーのμ's。
その場所が彼女の、葬儀場に決まった。
そして、その日を迎えた。 「人類滅亡が近い今、我々は最も大切なお方を失ったのです」
「あなたは私たちにとって、いつまでも唯一無二の存在であり続けるだろう」
「この模様は全世界の国・地域で同時生中継されており、世界中が偉大な英雄の死を悼んでいることでしょう」
ツバサ「先生、まもなく開場します」
山田「今日だな」
ツバサ「……先生?」
山田「今日、μ'sの名前は」
山田「あなたのものになる」
山田「………“あいどる”」
“あいどる”「」 『世界各国の首脳、各界の著名人、そして多数の一般人が“あいどる”の最期を見届けようと、このアキバドームにやってきました』
秋穂「………」
海未「秋穂…何か、飲みますか…?」
秋穂「……いや」
秋穂「いらない……」
希「……秋穂ちゃん、寒いんやし……コーヒーでも飲んだら……?」
秋葉「……いい」
希「………」
海未「そう…ですか…」
『天にまします我らの父よ…』
秋穂「………」 ・
・
・
ガチャ
凛「ッ!」
花陽「…ただいま」
凛「かよちん!!もう、どこ行ってたの!?何日もいなかったから心配したんだよ!!」
花陽「う、うん…ごめんね」
にこ「花陽…“あいどる”が」
花陽「うん……らしいね」
花陽「もう、終わりでいいよね…私も…疲れた…」
凛「…?かよちん…?」
にこ「二人とも」
にこ「…始まるわよ」
『まもなく代表者による、スピーチが始まります』 司会「全人類の唯一の希望である“あいどる”」
司会「あなたを欠いた、日本は、世界は、地球は…きっと不安定になってしまうでしょう」
司会「しかし、私たちはあなたの教えに従い、明るく笑顔で…どんな壁にぶつかろうと、いつまでも歩み続けます」
司会「2019年の12月31日に起きた、あの血の大晦日。ホノカ一派を退け、いち早くワクチンを作り上げた、あなたの活躍は、いつまでも語り継がれることでしょう」
司会「“あいどる”が夢にされていた世界同盟は…私たちで必ずや」
司会「それでは、“あいどる”と親交が深いアメリカ合衆国大統領より弔辞を頂きます」 ・
・
・
公野「私は神になる…」ブツブツ
公野「そして世界は血の海に…」ブツブツ
真姫「……さっきからなによ?ブツブツと……」
ルビィ「神様、怖い…」
公野「怖いって言われても…ノートに書いてあるんだもん」
真姫「ノートって歌詞ノート?別にもういらないでしょ…“あいどる”は死んだのよ…」
公野「死んだから悩んでるんだよ」
真姫「どういうこと?」
京極「なるほど…余ってしまったのですね」
真姫「京極くん…余ったって?」 公野「そう、余っちゃったの」
真姫「だからそれどういう事よ!」
公野「ニブチンだねぇ…真姫も」
公野「この歌詞ノート、大体の事は“あいどる”によって実現されてる」
ルビィ「“あいどる”がこうなった以上…もう歌詞は増えないんだよね…」
公野「いや、そうじゃなくてさ…死んだのに歌詞が2曲分余ってんの」
真姫「……あ」
真姫「まさか…そんな事…」
公野「……おそらく、そのまさかだよ」
ルビィ「え?え?」 京極「ゆゆしき問題ですね、これは…」
真姫「…どうすればいい…?」
公野「こんなの…どうしようもないよ…もう」
ルビィ「ま、真姫さん…」
真姫「…どうしたの?」
ルビィ「る、ルビィの見間違いかもしれないけど…い、今…なんか、動いたような…」
真姫「……?なにが……?」
ルビィ「……あいどる”が……」
・
・
・ 司会「以上、大統領の弔辞でした」
司会「続きまして、献花のお供えを」
大統領「」スッ
スタスタ
大統領「……“Idol”」
“あいどる”「」
大統領「……」
“あいどる”「」ピクッ
大統領「……?」 “あいどる”「」ピクッ、ピクッ…
大統領「!?」
ザワザワザワザワ…
“あいどる”「」ガサッ…ゴソッ…
大統領「Oh my God…」
“あいどる”「」ムクッ
大統領「…It's a miracle」
“あいどる”「……」
“あいどる”「」コツコツ… “あいどる”「……」
“あいどる”「」サッ
……ワ
ワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!
“あいどる”「………」
“あいどる”「………」スッ
ウオオオオォォォォォォォォォォ!!!
オォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!
キャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!!!!!!
アアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!
酒井「すごい……奇跡だ」
ツバサ「彼女こそ、人類の希望…」
あんじゅ「アメージング!本当に蘇ったのね」
英玲奈「神だ…神になられたのだ」
山田「……ははは」 ・
・
・
秋穂「いや……。いや……いやっ……!」
海未「まさか…こんな事…」
希「う、嘘やん……」
・
・
・
凛「なんで…なんで生きてるの…!?」
にこ「わ、わからないわよ…!確かに…あの時…“あいどる”は…」
花陽「彼女は……本当の……神なのっ……?」
・
・
・
人々「アイドル!アイドル!アイドル!」
絵里「……っ」
絵里「やられたわね……」
曜「こんな…ありえないよ」 ・
・
・
果南「そんな……こんなことって……」
千歌「こ、これって現実…?」
鞠莉「……クリスチャンじゃなくても知ってる、有名な話がある」
千歌「鞠莉ちゃん…?」
鞠莉「キリストは死んだ3日後に生き返ったんだよ…」
鞠莉「最悪だよ…最悪の展開だよ…」
鞠莉「アイツを止められる人間はもう……」
鞠莉「いない……」
千歌「……ッ」 千歌「……でも、穂乃果さんなら」
鞠莉「いない人間に頼っても仕方ないでしょ?」
鞠莉「バッドエンド……終わった。こうなるんだったらいっそのこと……」
果南「マリー……」
鞠莉「世界はあいつの手中に収められる……ほんっと……自分が無力で腹が立つ……」
果南「でも、なんで…ありえないよ、こんなの…」
千歌「……みんな」 その日…世界中の人たちは「μ's」の名前が入った小旗を振りかざした。 “あいどる”のために。
おばちゃん達の存在なんて、最初からなかったみたいに。
あたかも、それは最初から“あいどる”のものだったみたいに。
もう止められない。
誰にも。
ごめんね、おばちゃん。私、守りきれなかった。
ごめんね、お母さん。私が楽にさせないといけないのに。
ごめんね、みんな…。
本当に、ごめんね…。 -数日後- 〜国会〜
“あいどる”「随分…メンツが変わったね」
“あいどる”「あぁ…みんな“退部”しちゃったんだ」
“あいどる”「……さてと」
“あいどる”「確かあと、もう一つやりたい歌詞があったよね」
女「……あなた……誰?」
山田「」ピクッ
ツバサ「……」
“あいどる”「……君は木皿教授の娘さんだよね」
“あいどる”「会ったじゃないか、あの時」
女「………」 “あいどる”「世界は血の海と化し…それは美しい虹を描くだろう」
“あいどる”「うん、我ながらいい歌詞」
“あいどる”「……じゃ」
“あいどる”「やろっか」
・
・
・
その日、世界各地にウィルスがばらまかれた。
何億という人が死んだ。でも。
それは…とてもとても、美しい虹を描いた。
そして世界は。
滅亡した。 ・
・
・
秋穂「……エッ、エッ」
海未「泣かないでください、秋穂……」ナデナデ
秋穂「エグッ……こんな時に穂乃果おばちゃんがいてくれたら……きっと、何かを変えてくれたのに……」
海未「秋穂……穂乃果は。もう、穂乃果は……」
希「秋穂ちゃん、みんないるから…。絵里ちも帰ってきた。きっとみんなでなら…なんとかなるから…」 秋穂「グスッ…グスッ…やっぱり私は…穂乃果おばちゃんみたいに…誰も悲しませずに、みんなを笑顔にしながら頑張るなんて出来ないよ…」
秋穂「グスッ…私は、私のやり方で…」
海未「……秋穂?」
“あいどる”の復活と同時に西暦は終わった。
あいどる歴が始まり“あいどる”は各国から要請を受け、世界大統領に就任した。
μ'sも…Aqoursも…秋穂も…。“あいどる”の暴走を……止めることはできなかった……。
第6章「終わりの始まり」-完- 〜北海道〜
ブゥーン…
「ふーんふーんふふふーん…」
「ふふふふーん…」
バス…バスッ
「あっ」
「……ありゃりゃ、またかー」
「大丈夫…!君ならいける、できるよ」
「やろうと思えば…なんだって出来るんだから!」
ブン…ブゥーン
「……よしよし!」
プスッ…
「あ、あれ…?」
プス…プスッ…
「…あちゃぁ…ガス欠だぁ…」
これは、あいどる暦2年の話。
彼女が東京に向かっている事をまだ、誰も知らない。
第6.5章「虹の向こう側」-完- おつおつ
トランプがあいどるの弔辞読んでると思うとなんか笑えるな 第7章「舞い戻る伝説」
『ありがとう』
『大丈夫、次こそ出来る!』
“あいどる”「ん、んんぅ…」
『3人でやらない?』
『一番になろう!』
“あいどる”「はっ…はぁ…はぁ…」
『じゃあ一緒にやろうよ!』
『いいよ、やってあげる』
“あいどる”「うん…うん…」
『勇気で未来を見せて』
“あいどる”「ははは…あははは…」
・・・
“あいどる”「……あ……?」 『・・・あなたが、こんな風に死ぬなんて・・・』
『ごめんね』
“あいどる”「!?」
“あいどる”「はっ!」ガバッ
“あいどる”「はぁ…はぁ…はぁ…」
“あいどる”「夢…?」
“あいどる”「今の…記憶は…?」
“あいどる”「……うっ……うぅ……」
“あいどる”「ううぅ……」 ・
・
・
-あいどる歴3年-
「向こうだー!向こうにいるぞー!!」
「追えー!」
ダダダダダダッ…
絵里「はっ…はぁ…」
曜「絵里さん……もう、限界ですよ」
絵里「……やっとの思いで東京に戻ってきたのに、この仕打ち」
絵里「歓迎パーティーもなさそうね」
曜「…こんな時によく冗談言えますね」
絵里「…しかし、いつまでも親衛隊と追いかけっこしてるわけには行かないわね」
絵里「せっかく、東京に戻ってきたんだから…」 「不法侵入者を捕らえよ!」「不法侵入者を捕らえよ!」
「不法侵入者発見!」
絵里「ッ!行くわよ曜!」
曜「はいっ!…ッ!」
曜「った…」ドサッ
絵里「…!曜…!?」
曜「だ、大丈夫ですから…先に行ってください!」
絵里「足ね…?見せなさい…!」サッ
曜「……ッ」
絵里「こんなに腫れて…いつ…」
「捕まえろ!」
絵里「まずい…。おぶるわ…!」
曜「……行ってください」
絵里「いいから早く!」
曜「絵里さんに迷惑はかけられないんです!」
絵里「…っ。あぁっ!もうっ!じれったいわね!」サッ
曜「ちょ…絵里さん!」 タッタッタッ…
絵里「はっ…はっ…」
「追え!追え!」
曜「え、絵里さん!もういいですよ…!下ろしてください〜!」グググッ
絵里「……冗談」
絵里「絶っ対に下ろさないから!」
曜「絵里さん…」
曜「でも、このままじゃ本当に…」
「絵里さん!」
絵里「……!?」
こころ「こっちです!」
絵里「こ、こころちゃん?」
こころ「早く!」
絵里「……ッ!」タタッ… 「どこに行った?」
「くそっ!探せ!」
タッタッタッタッタッタッ…
こころ「……ほっ。行ったみたいですね」
絵里「こころちゃん、なんでここに?」
こころ「それはこっちのセリフですっ!」
こころ「それに絵里さん…親衛隊に追われてるみたいですけど…いったい何をやったんですか?」
絵里「壁を…超えてきたの」
こころ「えっ!?あんな高い壁を自力で…!?」
絵里「えぇ、なんとかなったわ」 曜「ッッ…い…」
絵里「曜…大丈夫?」
こころ「あら?お連れの方、怪我をされてるんですか?」
絵里「えぇ…ちょっと足をね…」
こころ「なら、我が家にご案内しますよ!」
こころ「近くなので!」
絵里「い、いいの?」
こころ「もちろんです!外にいたら奴等に捕まるのも時間の問題ですからね…」
絵里「……なら……お邪魔させてもらおうかしら」
曜「すみません…」 キュッ
ここあ「はいっ!これでひとまずは大丈夫なはず!」
曜「あっ、ありがとうございます!」
絵里「こころちゃん、東京でいったい何をしているの?」
こころ「……お姉様を探しに来たんです」
絵里「……そう。ここあちゃんと2人で?虎太郎くんは?」
ここあ「虎太郎は…“あいどる”が胡散臭いって外で言って、親衛隊に連れて行かれた…」
絵里「……虎太郎くんが」 こころ「お姉様は花陽さん達と共に行動してるとお聞きしたんですが…」
こころ「絵里さんは今、お姉様がどこにいるかをご存知ですか?」
絵里「……ごめんなさい、私もさっき言ったみたいに……数年ぶりに東京に帰って来たの」
絵里「にこ達の行方はわからない…」
こころ「……そうですか」シュン
絵里「それに、もしかしたら花陽は……」
ここあ「ねぇねぇ!なら、氷の女王って知ってる?」
絵里「氷の女王?」 ここあ「都民に武装蜂起を呼びかけてるんだ」
絵里「武装蜂起…」
こころ「なんでも、リーダーの女性がすごくカリスマ性があるらしいんです」
ここあ「でもでも!すごく冷徹らしくて、そこから付けられたあだ名が…」
ここあ「氷の女王!」
絵里「へぇ…」
こころ「…って、私。お客様にお茶も出さずに!いや…もうこの際ご飯も食べていってください!」
絵里「いや…!遠慮しなくていいのよ、こころちゃん」
こころ「いえ!お気になさらずに!ここあ、あなたも手伝って」
ここあ「はーい」 曜「……しかし、テレビもないし……なんだか、寂しいですね」
ここあ「いやいや〜、テレビなんて高くて無理だよ」
こころ「そうなんです。もう、税金を納めるのに精一杯で」
曜「テレビも買えないほどの税金って……“あいどる”に対して反発とか出ないんですか?」
こころ「デモなどは一応ありますよ。ありますけど…」
こころ「…みんな連れて行かれた」
絵里「……」 ここあ「あっ!でもラジオはあるよ!ほら!」
曜「おぉ〜!このご時世に珍しい…!」
ここあ「まぁ、なーんにもやってないんだけどね」
こころ「それ、壊れてるんじゃない?」
ここあ「ほんとに?」
曜「どれどれ〜…」ピーグルグル…
「……では、最後に今日の“あいどる”の声をお届けします」
曜「あっ」
ここあ「おっ」
絵里「………」 ここあ「こんなのやってるんだ」
こころ「初めて聞きますね」
「……東京のみなさん、8月3日……未知のウィルスによって、人類は滅亡します」
絵里「………」
「私を信じ、私を愛する者だけが助かります」
ジー…
ここあ「なんだこれ?」
絵里「8月3日……ね」
こころ「ほら、ここあ…もういいでしょ?ご飯の用意するから手伝って」
ここあ「ん〜」スッ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こころ「お待たせしました〜!どうぞ!」
ジィィィ…
曜「うわ〜!美味しそう!」
曜「いただきま〜す!」
絵里「……パクッ」
ジィィィ…
こころ「お口に合いますか…?」
曜「ん〜!!美味しいですっ!!」
こころ「ほっ…。良かったです!絵里さんはどうでしょうか?」
絵里「…モグモグ」
こころ「絵里さん…?」
絵里「…えっ…あっ、いや…すごく、美味しいわ!」
こころ「な、なら良かったです」
曜「……?」 曜「どうしたんですか?絵里さん」
絵里「いえ…なにか…聞こえない?」
ここあ「確かに…そういえばさっきから、なんだか変な音がするような…」
ジィィィ…
ここあ「あっ…これだ」
曜「ラジオですね。そういえば消すの忘れちゃってました…」
ここあ「なーんだ!消しとくね〜」
絵里「いや、待って!ここあちゃん!」
ここあ「え…?」
ジィィィ…
絵里「これは……ノイズとかじゃなくて……なにか……人の声みたいな……」
曜「人の声……?」
絵里「よく聞いてなさい」
……ジー ジー ジー ブソウホウキ……セヨ
曜「!!」 曜「き、聞こえた…」
絵里「……ね?」
「……ブソウホウキ……武装蜂起せよ、8月3日……武装蜂起せよ、私は氷の女王……未知のウィルスは“あいどる”の真っ赤な嘘……みんなで……」プツンッ
曜「切れた…」
ここあ「すごいすごい!初めて聞いた!氷の女王の声!」
絵里「今の声……そうっ……氷の女王……あの子が……」
ここあ「でも、なんで途中で切れたんだろう?」
こころ「電波ジャックだったんでしょ。たぶん見つかって、電波が遮断されたのよ」 こころ「ここあ、もうラジオは直しなさい」
ここあ「なんで?」
こころ「夜のテレビやラジオは法律で禁止されてるじゃない。親衛隊の人にバレたら連れて行かれるのよ?」
ここあ「そ、そういやそうだった!うぅ…それはやだなぁ…」
ジー…ボクハイマ
ここあ「ん?」
「家路を急ぐ…」
曜「歌…?」
こころ「歌…ですね」
「そんな毎日が君の周りで…」 「ずっとずっと続きますように…」
絵里「ふっ…」
曜「これ、いい歌ですね」
こころ「もう!ここあ!消しなさいってば!」
ここあ「待ってよお姉ちゃん!これだけ聴かせて!」
こころ「んもぅ…」
ここあ「これがご近所さんが言ってた…謎の歌かぁ」
曜「どこの放送局だろう…それともこれも電波ジャック?」
こころ「……今、東京でちょっとしたブームになってるんです、この歌」 絵里「ふふっ…懐かしいわね」
曜「え?絵里さん…知ってるんですか?」
絵里「えぇ…昔、無理矢理…聴かされたわ」
絵里「ブーム……か」
絵里「今、流行ってもね……」
絵里「昔に流行ってれば、あの子も助かったのかしら…」
「……グータラ〜スーダララ〜」
絵里「……え?」
こころ「え?」
曜「どうかしたんですか?絵里さん…?」
「グータラ〜スーダララ〜」
絵里「……私が知ってる歌詞じゃない」
絵里「……まさか?」 原作の内容知らないから先が気になってしょうがないわ ことりが途中からいないのは何か意味がある事なのか… 穂乃果(24)「ありがとうございました、またのお越しを〜!」
ワイ「ええ店やったのになぁ…」 ・
・
・
〜北海道〜
聖良「じゃ、理亞…行ってくるから、留守番お願いね」
理亞「行ってらっしゃい、気をつけてね」
理亞「……あんまり、姉様に迷惑かけないでよ」
善子「迷惑って…私のことなんだと思ってんのよ!かけないわよ!」
聖良「あはは…じゃ、行ってくるね」
ブルルンッ、キー
理亞「まったく…」スタスタ
理亞「……ん?」
理亞「これって……」スッ
理亞「こんなカセットテープ……あったっけ」 聖良「それにしても、2人で行くのは久しぶりですね」
善子「私、最近はずっっっと留守番でしたからね!」
聖良「出来ることなら、3人で行きたいんですが…何せ、2人乗りの車ですからね」
聖良「でも、久しぶりの食料探し…燃えるんじゃないんですか?」
善子「……もう、この北海道に食料なんて残ってないんじゃ」
聖良「………」 聖良「……いずれ、私たちもここから出ないといけなくなるでしょうね」
聖良「実際、たくさんの人が出て行きました…」
聖良「でも、ギリギリまで私たち…いや…少なくとも私はここに残ります」
聖良「ふるさとですから!」ニコッ
善子「……ま、まぁ……付き合いますけど」
聖良「ふふ…ありがとうございます」 キーーー!
ガチャ
聖良「私は向こうの工場に行ってみます」
聖良「善子さんはあっちの工場の探索、お願いしますね」
善子「はーい…ってヨ…!」
聖良「では、また後で!」タッタッタッ
善子「……〜〜〜」
善子「はぁ…」
善子「もう食べれる食料なんて缶詰ぐらいしかないわよね……」スタスタ キィ…
善子「失礼しま〜す…」
・・・シーン
善子「……なんかもう雰囲気からして、食料なんて無さそうな感じなんだけど……」
善子「はぁ…わざわざ遠出してこれって…もうね…」
善子「東京では…みんな何してるのかな」
善子「ずら丸やルビィは元気にしてるかしら…」スタスタ ピタッ
善子「……って」
善子「食料発見ッ!」
善子「缶詰ね……賞味期限は……まだ大丈夫じゃない!」
善子「久しぶりに探し当てたわ…!」
善子「ククク…やはり私の探知能力は人より優れてい…」
カンッッッッ…!!
善子「!?」 善子「……何?なんの音?」
善子「……だ、誰かいるの?」
善子「聖良……さん?」
善子「それとも、まさかまだ北海道に…私たち以外の人が…?」
善子「」ドキッドキッ
ノソノソ…
カンッッッッ!!
善子「わわっ!?」
善子「……な、なんなのよ!!」
善子「……あっちの方から聞こえたわね」スタスタ スタスタ
善子「この扉の向こうから聞こえたわよね」
ガチャガチャ
善子「閉まってる…」
善子「…あ、あの」
・・・
善子「……あの!」
・・・
善子「……あれ?」
善子「おかしいわね……空耳だったの?」
「………なに?」
善子「いっ!」
善子「う、うわぁ…!」ドサッ 善子「い、いった〜…!」
善子「(…っ、いい歳して尻餅ついちゃったじゃない…)」
善子「…あ、あなた…誰?」
「お前こそ誰だよ」
善子「わ、私…?…私は…堕天使ヨハネ!」
「ヨハネ……お前……“あいどる”の手先か?」
善子「…はぁ?」
善子「何よ手先って!逆に“あいどる”が私の手先なぐらいなんだから!」
「あぁ…なんだ…ただの痛い人間か」
善子「…い、痛い言うなッ!」 善子「って言うか、こんな扉越しで喋るの…疲れるんだけど?」
「………」
善子「出て来なさいよ」
善子「(私がこんなこと言う立場になるなんて…)」
「…外はどうなってる?」
善子「外?」
「ウィルスだよ、ここが一番被害を受けた」
善子「……ほとんどの人が死んだ」
善子「……僅かに生き延びた人たちもみんな……比較的安全な場所へ移った」
「……敵は?」
善子「敵?」 善子「あんた、誰と戦ってんのよ…」
「裏切られたんだ……仲間に……」
善子「人にイタいとか言っといて……あんたの方がイタいじゃないのよ」
「お前と一緒にするな、俺は……“あいどる”に……騙されたんだ」
善子「…!」
「信用してたのに……くそっ、くそっ……」
善子「……あんな見るからに胡散臭いの、信用する方が悪いんでしょ」 善子「……見返したいとか思わないの?」
「……俺は何もできない、1人では何も」
善子「私も…今、出来ることなんて何もないと思ってたけど…一緒にいる子たちの発案で…ラジオで音楽を流してるの」
善子「昔、私も放送とかよくしてたから…」
「そうか……お前らか」
善子「……?何がよ」
「……あの音楽、グータラグータラ言ってる歌をラジオで流してるの」
善子「っ、グータラスーダラだから!」
善子「いや、別に私が訂正する義理なんてないんだけど…」
善子「……去年だっけ?もうずいぶん前よ」
善子「私が、1人で留守番させられてた時に…その人は現れた」
善子「……ボロボロだったのに」
善子「すごく、オーラが……あったっけ」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
-1年前-
善子「なんで私が留守番なのよッ!」
理亞「あなた、いつも何も見つけてこないじゃない!探すの下手なのよ!」
善子「ぐっ…ぐ〜…」
聖良「すみません、善子さん…すぐに帰って来ますから!」
ブルルンッ!ブウゥゥーン
善子「あぁ〜…もう〜!!」
善子「1人で留守番は暇なのよぉ〜!」 善子「なによ…私、もうずいぶんと食料調達に行ってないじゃない…」スタスタ
ザッ…
善子「!」
「…………」
善子「だ、誰…?」
「…………」
善子「い、生きてる…わよね?」
「………水」
善子「は…?」
「お水…ちょうだい…」バタッ
善子「えっ!?ちょ、ちょっと…」
善子「大丈夫…!?」ユサユサッ
「うぅ〜…」 「ゴクッ…ゴクッ…!」
善子「………」
「っぷはぁ〜!生き返る!」
「ありがとう!ホントに助かったよ」
善子「それはどういたしまして…」
善子「しかし、この北海道に私たち以外に人がいたとはね…」
「あ、ここ、北海道なんだ」
善子「え、知らなかったの…?」
「うん」
善子「……今までどこにいたの?」
「さぁ…どこにいたんだろう」 善子「…?」
善子「あなた…名前は?」
「名乗るほどの者じゃないよ、ただのシンガーだよ」
善子「……あっそう」
女性シンガー「そっちこそお名前は?恩人の名前を覚えときたいな!」
善子「ふっ、ヨハネよ」
女性シンガー「ヨハネちゃん…ヨハネちゃんか!よし!覚えとこう!」
善子「!!」パァァ…
善子「〜〜!ツッコまなくて良いなんて…いい人…!ヨハネ、感激…!」 女性シンガー「ご飯まで出してくれるなんて…!なんて優しい子…モグモグッ」
善子「あなた、今まで何してたの?」
女性シンガー「」ピクッ
女性シンガー「…記憶を無くしてて」
善子「え…き、記憶喪失?」
女性シンガー「何より…泣いてた…ずっと…毎日毎日」
女性シンガー「得体の知れない何かにずっと怯えてて…でも、誰かを守らなきゃって…思ってたの」
善子「…そうなんだ」
善子「…今は何してるの?」
女性シンガー「今?今は帰ろうとしてるよ」パクパクッ
善子「どこによ…」
女性シンガー「家だよ?……帰るって約束したし」モグモグッ
善子「家か…私もぶっちゃけ帰りたいわね…」
善子「……ちなみに、約束って誰としたの?」
女性シンガー「………」
善子「……?」 善子「そういえば…それは?」
女性シンガー「それって…このギターのこと?」
善子「そっ…それ、何か弾けるの?」
女性シンガー「いや〜、なんにも…」
善子「なによそれ……」
女性シンガー「あ、いや…1曲だけ弾けるや」
善子「…聴かせてよ」
女性シンガー「いいよ…!」
女性シンガー「…日が暮れてどこからか…」
善子「へぇ…弾き語りなのね」 女性シンガー「グータラ〜スーダララ〜」
ジャーン…
女性シンガー「…どうかな?」
善子「いいんじゃない?私は好きよ」
女性シンガー「そっかそっか!なら良かった…」
女性シンガー「…さてと、じゃあ…そろそろ行こうかな」
女性シンガー「ご飯、ありがとうね!」
善子「あっ…最後に…本当の名前…」
女性シンガー「…また」
善子「…え」
女性シンガー「また会えるよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 善子「その時にコッソリ録音させてもらってたのよね…」
善子「あなたもいい曲と思うでしょ?」
「……あぁ」
善子「……ねぇ、そろそろ出てきたら?」
「帰れ」
善子「なっ…!なによぉ…急に!心配してあげてるのに!」
「頼んでない、帰れ」
善子「〜〜〜!!!」
善子「帰るッ!」
「そうしてくれ」
「……俺はずっとここにいる」
善子「……ふんっ!」 善子「ああもうっ!なんなのよ!なんなのよ!」
善子「まったく!ムカつくわね!」
善子「缶詰は重いし…!まったく、いくつ入ってるのよ!?」
善子「…って、これは」
善子「ヘリコプター…篭ってるあいつの…かしら…」
善子「……あ〜もう……知らないんだから、知らない知らない……」
善子「…聖良さん…早く来ないかな」 ブゥーン
聖良「今日は善子さんのおかげでお腹いっぱい食べれそうですね!」
善子「ふふふん!ま、私の能力にかかればこんなものです!」
聖良「ふふ…そうですね」
キッ
聖良「ただいま理亞。ごめんなさい、結構かかっちゃって…」
善子「ふふ、待たせたわね…」
善子「喜びなさい…!我がリトルデーモン!今日は存分にマナを回復でき…」
ダダダダダッ!!
善子「へ?」
理亞「善子おぉ…!あなたねっ!!」 ズイッ
善子「いっ!ち、近い…な、なによぉ…!」
理亞「このカセットテープ、いつ手に入れたの!?」
善子「え、えぇ…?それは…きょ、去年よ…」 理亞「なんでこんな大事なこと黙ってたのよっ!!」
善子「ど、どういうことよぉ…!勝手に放送したのがまずかったの…!?」
理亞「……あなた、このカセットテープの曲、誰が歌ってるのか本当にわからないの?」
善子「え?いや、本人はシンガーとしか言ってなかったけど…」
理亞「言ってた…言ってたってあなた…これを生で聴かしてもらったの!?」
善子「そ、そうよ?去年1人で留守番してた時に彼女が来て…」
理亞「うそ…来たって…ここに…?」
聖良「さっきからどういうことなの理亞?そのカセットテープはいったい…」
理亞「姉様も聴けばわかる!わからないのは善子だけ!」
善子「むっ…もう、いったいなんなのよ…!」
理亞「……いい?これを歌ってるのは間違いなく……」 ・
・
・
〜園田家 道場〜
海未「…………」
ギシッ…
海未「………!」パッ
花陽「海未ちゃん」
海未「……花陽」
海未「久しぶりですね…」
花陽「うん…」 海未「……どうぞ、座ってください」
花陽「うん…ありがとう」スッ
花陽「……海未ちゃんは……家元を継がないとダメだもんね」
海未「……はい」
花陽「………」
海未「私はもう…やれる事はやりました…」
海未「家元を継いで…ずっと迷惑をかけてしまった母上に恩返しを…」
花陽「……やれる事はやったっていうのは……秋穂ちゃんのこと?」
海未「………」
海未「今まで、あの子の面倒を見ることで私も手一杯でした……」
海未「でも、今はもう…その必要もないので…」
花陽「…そっか」 花陽「海未ちゃん……私、秋穂ちゃんに会いたいんだ」
海未「…秋穂に?」
花陽「うん…」
海未「…なぜですか?」
海未「“あいどる”が蘇ったあと秋穂は…花陽、あなたのところに行ったと聞いていましたが」
花陽「……一時は協力を仰がれて、一緒に行動してた」
花陽「でも、秋穂ちゃんはだんだんやる事言う事が過激になっていって…ついに私たちと意見が対立しちゃって…」
海未「………」
花陽「今、噂になってる組織があるの…」
花陽「“あいどる”と敵対する過激派組織…リーダーはその冷徹さから、氷の女王と呼ばれてるって」
花陽「……この氷の女王って秋穂ちゃんじゃないのかな……?」
海未「………」 海未「……はい、そうかもしれませんね」
海未「……秋穂の件ですが……今、あの子と連絡を取るのは私でも難しいんです」
花陽「お願い海未ちゃん……私、秋穂ちゃんを説得したいの」
花陽「私たちの一派と秋穂ちゃんたちの一派で意見が対立して…それ以来もう絶縁状態なんだ…」
海未「…武装蜂起をやめさせるつもりですか?」
花陽「うん…止めた方がいいよ、絶対に」
海未「花陽も知っていると思いますが、秋穂は説得されてやめるような子じゃありません…」
花陽「………」
海未「しかし、花陽の言う通り……止めないといけません」
海未「秋穂は……穂乃果に似て、1人で抱え込む癖があります」
花陽「………」
海未「放っておいたら…本当に自らの命さえ、投げ出すかもしれません…」 海未「物心がつく前から母親である雪穂はいなかった…」
海未「幼少期に最愛の伯母を失った…」
海未「唯一の肉親である祖母とは会えなくなり……1人であの子はずっと戦い続けている」
海未「片親は誰かもわからない悪の権化……あの子の心情を思うと……私は……」
花陽「私もそう思うよ……だから秋穂ちゃんに何とかして……」
海未「……いえ、秋穂を止めるのは無理です」
花陽「え?」
海未「ですが…秋穂の手を汚さない事は出来ます」
花陽「それって…」
海未「……もう一度、私たちμ'sが立ち上がるんです」 花陽「う、海未ちゃん……本気?」
花陽「無理だよ……もう……私たちじゃ」
海未「…っ!何を弱気になっているんですか花陽!」
海未「あなたはボノカ一派のリーダーなんですよ…?もっと自信を持ってください!」
海未「……“あいどる”は世界を征服しました……あとはもう、人類を滅ぼす以外にやる事がありませんッ…!」
海未「“あいどる”の標的は私たちです……なぜ、ここまでμ'sを目の敵にするのかはわかりませんが……」
花陽「………」
海未「最近、思うんです……彼女ほどの力があれば……いつでもμ'sを……私たち8人を殺せたはずではと……」
海未「それをしなかったのは…何か理由があるからではないかと…」
海未「……もし、彼女の暴走の原因が私たちにあるとすれば……それを解決するのは娘である秋穂ではなく、私たちμ'sだと思うんです…!」
花陽「………」 花陽「」スッ
海未「……?」
花陽「」スタスタ
海未「花陽…?」
海未「どこに行くんですか…?」
海未「…花陽!」
花陽「」ピタッ
花陽「……海未ちゃん……もう無理だよ」
花陽「なるようにしかならないと思うの……」
海未「花陽…」
花陽「…やっぱり、私はリーダーに向いてない」
海未「そんな事……ボノカ一派をここまで率いてきたのは……他でもないあなたなんですから」
花陽「………」 海未「花陽、今ここで挫けてどうするんですか…?」
海未「私たちが踏ん張らないと…本当に世界は…」
花陽「……私には何もないから」
海未「え?」
花陽「海未ちゃんみたいな包容力とか統率力とか……穂乃果ちゃんみたいなカリスマ性もない……」
海未「……そんな事ないですよ」
海未「スクールアイドル部の部長だって、やり遂げたじゃないですか…。どうしたんですか、いきなり…」
海未「花陽にしかない長所はたくさん…」
花陽「……きっと、きっとね」
海未「……?」
花陽「きっと、“あいどる”は本当のアイドルになれなかったんだと思う…」
花陽「どこかで踏ん切りをつけて諦めていたけど…急に疎ましくなったんだと思う」 花陽「μ'sは…しっかりみんなで終わりって決めて…ちゃんとライブもやって…最後を迎えられた」
花陽「あの時の今が楽しくて…最高で…私たちはそれで満足だった…充実感もあったし…やり遂げたっていう達成感もあった…」
海未「………」
花陽「でも…本当にみんながみんな、そうだったのかな…?」
海未「……どういう事ですか?」
花陽「例えば…“あいどる”となった彼女はその後…虚無感に襲われたんじゃないのかな…」
海未「……虚無感?」
花陽「うん……まだまだやりたいって……一緒に歩みたいって……思ったんじゃないのかな……」
花陽「私、思うの…もしかしたら“あいどる”はどこかで……誰かに……中途半端に希望を持たせられたんじゃないのかな……って」
海未「………」
花陽「……μ'sのリーダーは間違いなく穂乃果ちゃんだよ」
花陽「その事に疑問を持ったことがある?」
海未「そんな事…私は一度だってありません…」 花陽「そっか……そうだよね」
花陽「うん、私もないよ……やっぱりμ'sのリーダーは穂乃果ちゃんだもんね」
花陽「でも、その事に納得がいかない人もいるって事だよ…たぶん…」
花陽「リーダーをやって気づいたことがあるんだ…」
海未「気づいたこと?……何ですか?」
花陽「………」
海未「……花陽?」
花陽「……“あいどる”の気持ちなんて誰にもわからないよ」
海未「……そうかもしれませんね」
花陽「海未ちゃん、そうかもじゃなくて……そうなんだよ……?」
花陽「わからないんだよ、誰にも……それは穂乃果ちゃんだって、海未ちゃんだって、絵里ちゃんにだってわからないよ……」
海未「………」
花陽「………」
花陽「……秋穂ちゃんに会わないと」 このSSの続きずっと楽しみにしてたから再開すごい嬉しいわ!
ラストまで頑張って欲しい このSSの続きずっと楽しみにしてたから再開すごい嬉しいわ!
ラストまで頑張って欲しい -数日後-
海未「……花陽の様子」
海未「あれは…なにか…」
海未「………」
ガラッ
海未「……?」
こころ「海未さんッ!」
海未「こ、こころちゃん…?」
海未「どうしたんですかいったい、こんなところまで…」
こころ「こっちです!」テマネキ
海未「え?」
こころ「ついてきてください!」グイッ!
海未「え!?ちょ、ちょっと…!こころちゃん…!」 タッタッタッ…
海未「こ、こころちゃん…!どこに連れて行くつもりですか…!?」
こころ「海未さんに会いたがってる人がいるんです!」
海未「あ、会いたがっている人…?」
海未「…ッ!それにしたって…!いったいどこまで…!」
こころ「あとちょっとですから!」グイッ!
海未「わっ…!」ヨロッ
こころ「あ…」
「…ッ!危ない…!」パシッ
海未「……ほっ」
海未「あ、ありがとうございます……って」
海未「絵里…?」
絵里「海未…大丈夫…?」 こころ「ご、ごめんなさい海未さん!」
こころ「私が引っ張りすぎたから…」
海未「いえ、気にしないでください。今のは私が足を引っ掛けただけですから」
海未「……それにしても、絵里……帰っていたんですね」
絵里「えぇ…つい先日ね」
曜「東京に帰ってくるまで2年ぐらいかかりましたもんね〜…」
海未「……あの、そちらの方は?」
曜「……あっ、そうだ!海未さんとは初対面ですもんね!」
曜「初めまして!私は渡辺曜って言います!」
曜「そうですね……絵里さんの……絵里さんの弟子です!」
絵里「……連れ人」
海未「そ、そうですか…」
海未「園田海未です。よろしくお願いしますね」
曜「はいっ!存じてます!」 海未「しかし……ここまで来るのは大変だったんじゃないですか?」
こころ「そうですね…移動は全部徒歩なので…正直疲れました〜…」
絵里「私の都合で新幹線や電車…公共の乗り物は使えなかったから」
曜「でもまぁ、4人で固まって歩いてたから、どのみち目立っちゃいましたけどね!」
絵里「なるべく人のいない道を通って来たから大丈夫とは思うんだけど……」
海未「あの……一ついいですか?」
絵里「どうしたの海未?」
海未「4人ではなく……3人では?」
曜「…え?」
海未「絵里に曜にこころちゃん…。3人ですよね?」
こころ「あれ?」
絵里「そう言えば…」
曜「1人足りないような…」
こころ「………ッ!」
こころ「ここあ……!ここあがいないです……!」
絵里「あ……!」 ・
・
・
ここあ「あれ〜…」
ここあ「もしかして…迷ったかぁ?」
ここあ「この辺り、あんまり来ないから道わかんないよ〜…」
グ~
ここあ「〜〜〜ッ」
ここあ「お腹減ったな〜…」スタスタ
ここあ「……ん!」ピタッ
ここあ「ラーメン屋さんだ……食べた〜い!」
ここあ「でもお金な〜い……」
ここあ「はぁ……お姉ちゃんたち、どこだ〜」
ここあ「おーい!」 ここあ「人通りまったくないから訊ねることも出来ないしぃ…」
ここあ「それに、海未さんの実家…どこって言ってたか覚えてないし…」
ここあ「う〜ん…」
ここあ「……あっ、そうだ!」
ここあ「せっかくここまで来たんだし…にこお姉ちゃんを探しちゃおう!」
老婆「!」
グ~
ここあ「もしかすると、この辺りなら何か手がかりがあるかもしれないし……しかし、お腹減った〜……」
老婆「無料」
ここあ「…え?」
老婆「今ならラーメン無料」
ここあ「えぇ…!?」
老婆「中にいる娘に、店の前にいた老婆に無料と言われたと言いなさい」
ここあ「……ほ、本当に?無料?」
老婆「無料」 ここあ「やったー!ラッキー♪」
ここあ「ん?」
ここあ「(…でも、なんか怪しいなぁ…このおばあちゃん)」
グ~
ここあ「(うっ…だけど…)」
ここあ「(もう限界だし…いいや!入っちゃえ!)」
ガラッ
ガラーン…
ここあ「………ありゃ?」
ここあ「あの〜!」
・・・シーン
ここあ「全然、お客さんいないじゃん……それに店員さんもいない」
ここあ「というか、肝心のおばあちゃんが言ってた娘さんがいない…」
ダッダッダッダ
ここあ「!」
主人「へい!すみません遅くなって!」
ここあ「あれ?」
主人「へい?」 ここあ「私、娘さんが中にいるって聞いたんだけど?」
主人「娘さん…?…あ〜!はいはい!」
主人「その子なら、そこにいますぜ!」
ここあ「そこ?」キョロキョロ
ここあ「……どこ?」
主人「そこっすよ!ってほらほら漫画読んでないで反応してあげてよ…!」
主人「秋穂ちゃん!」
ここあ「秋穂?」
秋穂「」パタンッ
秋穂「……」
ここあ「うわっ…!?」
秋穂「……なに?」 ここあ「い、いつからそこに…!?」
主人「たぶん入店した時からいたっすよ」
ここあ「……う、うそー」アングリ
秋穂「それで、私に何か用?」
ここあ「あっ!えーと、ラーメン無料って店前にいたおばあちゃんに言われたんだけど」
秋穂「……作ってあげて」
主人「へいっ!」
秋穂「………」スッ
秋穂「………」ペラッ
ここあ「(ありゃりゃ…また漫画読み始めちゃった)」 ギィ…
ここあ「よいしょっと」
秋穂「」ペラッ
ここあ「……なんか、この辺り人いないね!」
秋穂「………」
秋穂「」ジッ
ここあ「え…な、なに?」
秋穂「………」ペラッ
ここあ「……!?(む、無視……!?)」
ここあ「(すっごい冷ややか…!)」 主人「へいっお待ち!」
ドンッ!
ここあ「お〜!美味しそう〜!」
ここあ「お姉ちゃんを探す景気付けに…!」
ここあ「いっただっきま〜す!」
ここあ「ズルズル!」
秋穂「………」ジッ
ここあ「……ん、ん?」
ここあ「にゃに…?」
秋穂「いや…美味しそうに食べるなと思って」
ここあ「うん!美味しいよ!」 秋穂「あなた…」
ここあ「ふぇ?ズルズル」
秋穂「どこかで会ったことある?」
ここあ「……わたひ?にゃいとモグモグおおうズルズルけど……」
秋穂「…ごめんなさい、食べてる最中に話しかけて」
秋穂「食べてからでいいや…」
ここあ「うん、ズルズル」
ここあ「(…なんだ、案外普通に喋るんだ)」 ゴクッ…ゴクッ…
ここあ「ぷはぁ〜!美味しかった!」
ここあ「ご馳走様ッ!」
秋穂「……あのさ」
ここあ「ん?あぁ、なんだっけ?」フキフキ
秋穂「さっきお姉ちゃんって言ってたけど、そのお姉ちゃんの名前って…」
ここあ「にこ!矢澤にこだよ」
ここあ「……え?もしかしてっ!お姉ちゃんを知ってるの?」
秋穂「………」 ここあ「あれ?待てよ?」
ここあ「そういえば私もどこかであなたの声を聞いたことある気がぁ…」
ここあ「ん〜…と…」
秋穂「………」
ここあ「どこでだっけ……」
ここあ「……ぶそ……武装……あっ!」
秋穂「………」
ここあ「思い出した!あなた、もしかして…」
ここあ「……いや、そんなわけないか〜!」
秋穂「……そうだよ」
ここあ「え!?」
秋穂「私だよ……。私が……氷の女王」 ここあ「氷の女王……ほ、ほんとなんだ」
秋穂「……どうする?ラーメン、まだ食べる?」
ここあ「い、いや!もういい、お腹いっぱい!」
秋穂「そうっ…」
秋穂「……おばあちゃんから無料で食べる事を許されたって事はあなたは白って事だ」
秋穂「……でも、そっか……にこおばちゃんの……」
ここあ「……えっ?にこおばちゃん?」
秋穂「いや、なんでもないの……忘れて」
ここあ「……??」 秋穂「……もう帰れば?」
ここあ「(ラーメン食べるって聞いたり、帰れって言ったり忙しい子だな)」
ここあ「ま!お腹も膨れたし、そうしようかなぁ」
主人「えっ!?」
ここあ「えっ、なに!?」
主人「い、いいのかい秋穂ちゃん!?せっかく仲間になれそうな子なのにッ!」
秋穂「………」
主人「チャンポン達が使えない今、戦力補強は急務だろうに…」
ここあ「(チャンポン…?長崎の?)」
秋穂「……いらないよ」
秋穂「……ねぇ」
ここあ「んっ!?なに?」
秋穂「……にこおばちゃんなら凛おばちゃんたちと一緒にいるはずだよ」
ここあ「えっ!?や、やっぱりあなた…お姉ちゃんを知って…!」
ここあ「……お姉ちゃんは今、どこに?」
秋穂「……どこにいるかまでは知らない」
秋穂「そう…生温い…ボノカ一派のことなんて…知らないもん…」
ここあ「……生温い?」
主人「……そうかい」
主人「さっ、食ったなら帰った!帰った!」ドンッ
ここあ「……え、えぇ!ちょ、ちょ〜〜!」
ガラッ、バタンッ
秋穂「……はぁ」 ガララッ
秋穂「帰った?」
主人「ふぅ…。あぁ、追い出してからもしばらく秋穂ちゃんと話がしたいって喚いてたが、ようやく帰ったよ」
秋穂「……そう」ペラッ
主人「……しかし、氷の女王ねぇ」
主人「誰が言い出したか知らねぇがそんな子じゃないんだがなぁ」
秋穂「……」ペラッ
主人「伯母さんの友達の妹を死地に連れ込むのは抵抗があったんだろう?」
秋穂「……別に……そんなんじゃ……ない」ペラッ
主人「……フッ」
秋穂「」パタンッ
主人「!」
秋穂「アジトに戻る。しばらくここには来れないから、お店も閉めといて」
主人「あいよ」
秋穂「よろしくね」
ガラッ、バタンッ…
主人「……非情になりきれてねぇんだよなぁ。女王さんよ」 バタンッ
老婆「いらなかったかい?」
秋穂「……ごめんなさい、せっかく勧誘してくれたのに」
老婆「にこの妹なら白なのは間違いないし、いい戦力になると思ったんだがねぇ」
秋穂「……白なのは間違いないけど」
老婆「……気が引けたか?」
秋穂「……アジトに戻るね」
老婆「秋穂」
秋穂「なに?」
老婆「……穂乃果は生きてる」
秋穂「…………」
秋穂「……もう、聞き飽きたよ」
秋穂「……生きてるならなんで帰ってこないの?」
老婆「………」
秋穂「いらないよ、同情なんて…」スタスタ トボトボ
ここあ「はぁ……女王様、もっとお姉ちゃんのこと知ってそうだったのに」
「ここあーー!!」
ここあ「!」
こころ「ここあ!」
ここあ「お姉ちゃん!なんでここに?」
こころ「なんでここにって…あなたを探してたのよっ!」
ここあ「あっ、そっか!ごめんね」
こころ「ほんとにもう…」
こころ「さっ、皆さん心配してくれてるんだから、早く来なさい」
ここあ「はーい」 ・
・
・
海未「こころちゃん一人で探しに行かせてよかったんですか?」
曜「やっぱり、私も行きましょうか?」
絵里「大丈夫。こころちゃんももう立派な大人よ」
絵里「……本題に入りましょう」
海未「……はい」
絵里「海未、単刀直入に聞くわ」
絵里「氷の女王は……秋穂ね?」
海未「……おそらく……いえ」
海未「きっと、秋穂です…」
絵里「……そうよね」 絵里「武装蜂起の話は知ってる?」
海未「聞きました、存じています」
絵里「……私には、秋穂が大勢の都民を扇動して、自分や人の命を粗末にするとは……どうしても思えない」
海未「……あの子が変わったのは……全部、私のせいです」
絵里「……海未のせいじゃないわ」
絵里「そう…言うなれば、あの子を取り巻く環境の全てが……変えてしまったのね」
海未「……もし、こんな事がなければ……もっと……もっと普通の愛らしい女の子に育ったはずなんです、秋穂は……」
絵里「そうね……。あの子が見てきた現実は……あまりにも残酷すぎたわ」
絵里「物心がつく前から、彼女は戦い続けてる」
海未「……その緊張の糸はいつ切れてもおかしくありませんでした。ですから……そうならない様に、私がもっと愛を注いでいれば」
絵里「いいえ、海未は充分なほどの愛情を持って育ててきたはずよ。秋穂もそれは理解してるはずだわ」
絵里「……ただ、あの子にとって……穂乃果の穴はなんぴとも埋めることが出来ないのよ……」
海未「………」 絵里「……秋穂に会わせてちょうだい」
海未「……」
絵里「きっと、どこかにアジトがあるはず。海未、あなたなら知ってるんじゃないの?」
海未「……花陽にも聞かれましたが。すみません、私も知らないんです、本当に……」
絵里「…………花陽?」
絵里「花陽がここに来たの…!?」
ガシッ!
海未「…っ!」
海未「え、絵里…?は、はい…先日1人で…」
絵里「ダメ…花陽に秋穂を会わせてはダメ!」
海未「え、え…?」
海未「なぜですか…?」
絵里「………」 絵里「あのパレード…“あいどる”が暗殺されたあの日…私は1人で裏路地に入りこむ花陽を見たの…」
海未「えっ…?あの日、花陽もパレードに来ていたという事ですか?」
絵里「……」コクッ
絵里「“あいどる”は…殺される直前、私に花を見せた」
海未「……花?」
絵里「……思いたくはないけど」
絵里「花陽が……“あいどる”かもしれない」
海未「…花陽が…“あいどる”…?」 絵里「いや、花陽だけじゃない…」
絵里「海未……もしかしたら、穂乃果は生きているかもしれない」
海未「ッ!?」
海未「穂乃果が…生きている?」
絵里「えぇ…ラジオから穂乃果の歌が流れたてきたの。でも、それには今までに聞いた事のないフレーズが入ってた。あれは血の大晦日の前に録音したものじゃない」
海未「そうですか…!なら…穂乃果が生きているなら希望が!」
絵里「いや…おかしいのよ…」
海未「…え?」
絵里「だってありえないじゃない…!」
絵里「あの大爆発の中心にいたのよ穂乃果は!?」
絵里「それなのに、生きてるなんて…あそこから助かる可能性なんて0に近い…いや、0なのよ…?」
海未「……」
絵里「本当に穂乃果が生きているとすれば……穂乃果は……最初から私たち側ではなかったのかもしれないわ」
海未「いえ、そんなはず……」 海未「……ですが、本当にそうだとしたら、“あいどる”は最低でも2人以上は存在するという事に」
絵里「その線は十二分にありえるわ」
絵里「海未、穂乃果から……“あいどる”は複数人いるかもと仄めかされたことはない?」
海未「そんなこと…!」
海未「…ッ!」
・
・
・
海未『つまり穂乃果は“あいどる”は一人ではなく…複数人存在していると言いたいんですか?』
穂乃果『……どうかな、あくまでもなんとなく感じただけだから……私も断言は出来ない』
穂乃果『でも…あの違和感…その線もあるのかな』
・
・
・
海未「………」
絵里「……あるのね」 海未「確かにありました…ありましたが…」
絵里「ことりも行方をくらましてるんじゃないの?」
海未「え?」
絵里「……“あいどる”があの日示した、花の意味」
絵里「私は昔、花陽にあの花を見せてもらったことがある」
絵里「……自ずと答えが導かれるわ」
絵里「……Printempsが……“あいどる”」
曜「……あの、Printempsって確かμ'sのユニットですよね?」
曜「Printempsと花って何か関係があるんですか?」
絵里「……Printempsといえば花のイメージなのよ」
曜「……なんか……言いがかりのようなぁ……海未さんはどう思うんですか?」
海未「絵里、それは…」 海未「…それはありえません」
絵里「……!」
絵里「……なぜ、そう思うの?」
海未「……勘です」
絵里「勘……?」
絵里「勘だなんて…海未らしくないわね」
海未「らしくないのは絵里ですよ」
海未「疑心暗鬼になる気持ちはわかります…。ですが、ありえません」
海未「はっきり言います。μ'sに“あいどる”はいません!」 絵里「……どうして、そう言い切れるの?」
海未「……恥ずかしながら私も昔、ことりは“あいどる”なのでは……?と、疑った事があります」
絵里「………」
海未「ですが……私はあの時、確信したんです」
絵里「……あの時?」
海未「はい、2019年……“あいどる”を止めるために、μ'sが再集結したあの時」
海未「誰1人として私たちを陥れようと……嵌めようと考えているメンバーはいませんでした」
海未「…目を見ればわかるんです」
海未「それに…私たちには切っても切れない縁がある…」
海未「絵里も本当は分かっているでしょう?」
絵里「……ごめんなさい」
絵里「早計だった。私が間違ってたわ…」 海未「……さっき、ことりの行方がわからないと絵里は言いましたが」
絵里「えぇ…」
海未「ことりは…理事長と共に海外へと発ちました」
海未「……絵里は血の大晦日のあと、すぐに“あいどる”から追われる身となったので……伝えそびれていましたが……」
絵里「なぜ、ことりは海外に…?」
海未「PTSD…ストレス障害の疑いがあると聞きましたが…」
絵里「……そうだったのね」
絵里「……仕方ないわ。そうなるのが……普通なのよ」
海未「……理事長がついているので、無事だとは思いますが……」 ガラッ
絵里「!」
こころ「皆さん…お騒がせさせてしまい申し訳ありません!無事、見つかりました!」
ここあ「えへへ、すみません!迷っちゃってて…!」
海未「ここあちゃん…。ほっ…無事で何よりです」
絵里「変な人に声掛けられなかった?大丈夫だった?」
ここあ「大丈夫!あ…でも、ラーメン食べた!」
海未「ラーメン?」
ここあ「あっ!そうだっ!そんなことより、あのね!」
絵里「?…どうしたの?」
ここあ「私、氷の女王に会った!」
絵里「!?」
曜「う、うそ!?
海未「……えっ?」 絵里「ここあちゃん…それは本当?」
ここあ「うん、自分で言ってたもん。氷の女王だって」
海未「……外見はどんな風だったか、覚えていますか?」
ここあ「え〜、なんて言えばいいんだろ」
海未「前髪がパッツンだったとか…」
ここあ「それはわかんないなぁ…キャップ被ってたし」
ここあ「でも、だいぶイメージとは違ったよ?」
ここあ「思ってたより幼くて、割と可愛らしい顔つきで、身長は155ぐらいかな?」
絵里「……たぶん、間違いないわね」
海未「はい、秋穂です……」
絵里「ここあちゃん、どこで氷の女王に会ったの?」
ここあ「さっき言ったラーメン屋さんだよ?」
絵里「彼女はまだいるかしら?」
ここあ「えっ…どうだろう、私、先に出たからなぁ。というより追い出されたから…」
海未「……ここあちゃん、そこへ案内してもらえますか?」 海未がこころちゃんって言ってんのを脳内再生するとどうしてもシャロになってしまうわね ガラッ
主人「ん?すみません!今日はもう閉店…」
主人「…!」
絵里「」コツ…コツ…
絵里「氷の女王はどこ?」
主人「……なんのことですかねぇ?」
バンッ!
絵里「とぼけないでっ!私たちは今すぐ…あの子に会わないといけないの!」
海未「お願いします!秋穂の居場所を教えてください!」
主人「……園田海未に絢瀬絵里。秋穂ちゃんに会って……何をする気で?」
絵里「決まってるでしょ。説得するのよ」
主人「説得?本当に彼女はそれを望んでいるのかい?」
海未「えっ…?」 主人「いつまでも保護者面するのはやめた方がいいですぜ」
主人「彼女のためにならん」
海未「それは……そうかもしれませんが……」
絵里「……いいえ、全然そんな事ないわ」
海未「…!」
絵里「いい?私たちはあの子の行く末を見守る義務があるの」
絵里「あの子に傷一つでもつけさせてしまったら、穂乃果に顔を合わせられないわ」
海未「絵里…」
絵里「教えなさい、秋穂のアジトを」
主人「……知らねぇな」
絵里「…っ、早く言いなさい!」 主人「勘違いしないでくれよ。言わないんじゃねぇ、知らねぇんだ」
絵里「……なんですって?」
主人「あくまで俺は協力者だ。それ以上でも以下でもねぇ」
主人「彼女は用心深い。俺もアジトの場所は教えられてねぇんだ。」
絵里「……なら、何か他に秋穂について知っていることはないの?」
主人「ねぇな…」
海未「……ッ」
主人「おっと、言っとくがここを張り込んでも無駄ですぜ、もう彼女は来ないだろうからね」
絵里「……本当でしょうね?」
主人「嘘をついてるように見えますかい?」
絵里「…………」
海未「…………」
絵里「……くそっ」クルッ
海未「絵里……」
主人「……またのお越しを」 ガララッ、バタンッ
曜「!」
曜「絵里さん!どうでした?」
絵里「……」フリフリ
曜「そうですか…」
海未「……秋穂、いったいどこに」
絵里「………」
絵里「ここあちゃん、氷の女王は何か言ってなかった?」
ここあ「えっ…うーん…」
ここあ「特になにもないと思うけど…」
絵里「……そう」
こころ「本当に?何かないの?些細なことだけど、会話の中で気になったこととか」
ここあ「え〜、気になったこと…?」
ここあ「うーん、気になったことぉ…」
ここあ「……あっ」
絵里「何か思い出したの?」
ここあ「長崎ちゃんぽん…!」
海未「長崎ちゃんぽん…?」 ここあ「そうだそうだ!ちゃんぽん!」
絵里「ちゃんぽん…?」
ここあ「氷の女王じゃないけど、おじさんが言ってたんだよね……」
ここあ「なんて言ってたっけ……確か、チャンポン達が使えない今……戦力補強はうんぬんかんぬん……とか言ってたような……」
絵里「チャンポン……戦力補強……」
絵里「……!」
絵里「お手柄よ!ここあちゃんっ!」ガシッ
ここあ「へ?」
海未「絵里…?」
絵里「タイマフィアと秋穂に接点があるとすれば……いける!秋穂に会えるかもしれないわ!」
海未「ほ、本当ですか?」
絵里「えぇ。まったく……何が秋穂について知ってることはもうないよ……大嘘つきじゃない、あの店主」
絵里「けど、ハラショー……。なんとかなりそうね……!」 ・
・
・
公野「ふふふふふ〜ん♪」ジュー
ガララッ
公野「ん!」
公野「いらっしゃ〜い!」
ハターキ「は〜、お腹減った!」
公野「あら、先生!お一人?」
ハターキ「いいえ?あれ?何をしてるの2人とも、早く入りなさいよ」
ことり「は、はい…」
公野「…!こ、ことり…!」
ことり「えっ…あ、神様…?」
ハターキ「あら?2人とも、お知り合い?」
ことり「はい!昔に色々とお世話になって…」
ハターキ「そう…。って、なにしてるの!梨子ちゃんも入りなさいよ」
梨子「あっ、はい…ありがとうございます」
公野「……おやおや〜。先生、可愛いお供だね」
ハターキ「そうでしょ?使える子たちなの」 ジュー
ハターキ「」モグモグッ
ことり「……神様は……こんなところで何を?」
公野「ん〜…?見ての通りだよ。お店構えてんの」
公野「こういうの、ちょっと興味あってさ」
ハターキ「ももとカワ2本ずーつ!」
公野「は〜い」
梨子「先生、食べ過ぎじゃないですか…?」
ハターキ「大丈夫大丈夫!あなた達も何か食べなさい」
梨子「は、はい…」
ハターキ「そうだ。GODとことりちゃんは顔見知りみたいだけど梨子ちゃんは初対面なんでしょ?」
ハターキ「ご挨拶しときなさい」
梨子「あっ…はい…私、桜内…」
公野「桜内梨子ちゃんでしょ?知ってるよ」
梨子「え?な、なんで…」
ことり「びっくりしちゃうよね、ほんとに…。神様は初対面でもわかるんだ…人の名前とか性格が…」
ことり「私たちも昔、すごく驚いたもん…」
梨子「……す、すごいですね」
公野「なはは!まーね!」 ことり「……神様、すごく機嫌いいですね」
公野「え?……あー、まぁ……機嫌いいっていうより、テンションおかしいのかもね」
ジュー
公野「世界のトップがあんなんじゃ…もう先は長くないしね…」
ことり「………」
公野「名前や性格当てるなんて特技、今じゃなんの意味もないよ」
公野「……それよか」
公野「ことりは今まで何してたの?」
ことり「えっ…わ、私ですかぁ?」
ことり「私は……」 ことり「……ずっと、逃げてたんです」
ことり「私は…穂乃果ちゃんと海未ちゃんに支えられて生きてきたから…」
ことり「穂乃果ちゃんを失ったあの時に……現実から目を背けて、海外へ逃げたんです……」
ことり「全部、みんなに任せて……秋穂ちゃんや海未ちゃんの気持ちなんて考えずに……自分だけ逃げたんですっ……!」
ハターキ「……モグモグ」
公野「……ま、別に普通だよ」
公野「他の子たちのメンタルがおかしいんだよ」
ことり「……でも」
公野「なんにしたって、もう過ぎたことよ。気にしなさんな」
ことり「神様……」
ハターキ「それに、今となってはそう言えても、当時は言葉では表せないほどのストレスを抱えてたんだし、仕方がないわ」
ことり「先生……」
ことり「……ありがとうございますっ」 公野「で、梨子はなんで先生と?」
梨子「私は…昔、友達と一緒にとある件の情報収集をしていた時に急に拉致されて…」
公野「ダイヤと花丸とで穂乃果の情報を集めてたんでしょ?」
梨子「そ、そうです…よく知ってますね…」
梨子「それで……拉致されて……でも、ダイヤさんと花丸ちゃんがなんとか私だけでも……って、逃がしてくれて……」
梨子「途方に暮れていた時に“あいどる”の追っ手から逃げていたことりさんと出会ったんです…」
ことり「それから、梨子ちゃんと一緒に逃亡生活を続けて…もう限界……って、なった時に先生が拾ってくれたんです」
梨子「先生はいち早く“あいどる”が悪だと気づいていたんです」
公野「へぇ…」 公野「しかし、先生はよく“あいどる”に取り込まれませんでしたね」
ハターキ「だって見るからに胡散臭いでしょ」
ことり「そうですけど、実際問題…“あいどる”に心酔する人はたくさんいますよ?」
ハターキ「人間、不安な事が多いんだよ…何かに支えられていないと、酔っ払ってないと…やってられないのよ」
梨子「……つまり、先生は何かに酔っ払ってると?」
ハターキ「え?うん、梨子ちゃんと一緒」
梨子「私と一緒…?」
梨子「あっ…音楽…ですか?」
公野「なるほどねぇ…そう考えてるにもかかわらず、“あいどる”に勘付かれずに上手く取り入ってるって…」
公野「世渡り上手ですね、先生」
ハターキ「そうでしょ?という事で!酔っ払い繋がりでお酒飲んでもいいかな?」
ことり&梨子「ダメですっ!」
ハターキ「……ね?」
公野「ね…?とは…」 ハターキ「梨子ちゃんは作曲センスに長けてるし、ことりちゃんもデザイナーとしての実績がある」
ハターキ「有能な子たちなんだけど…ちょっと怖いところがあってねぇ…」
梨子「こわっ…!別に怖くなんて!先生のためを思って言ってるんです!」
公野「怖いですか?少なくとも、ことりは優しくないですか?」
ハターキ「そうなのよ。ことりちゃんは優しい方なんだけど…」
ハターキ「」チラッ
梨子「〜〜っ!なんで私を見るんですか〜!」
ハターキ「だって…。ね〜!」
ことり「あ、あははは…」
公野「ま、この後もお仕事があるんでしょ?ここはマネージャー達の言う事を聞いといた方がいいんじゃないですか?」
ハターキ「んー…そうね、仕方ないか…」 公野「ま、私も…先生にはお世話になってるから、あんまり強くは言えないんだけど」
ことり「お世話…?というと…?」
公野「歌詞ノートの横流しとか…ま、いろいろ」
公野「そんな事よりことり、あなたこれからどうするの?」
ことり「えっ…?」
公野「先生に付き添ってるだけでいいの?」
公野「世界の終わりを…このまま何もせずに待ってるだけでいいの?」
ことり「……私は」
公野「μ'sにしか、あいつは止められない」
梨子「……ことりさんにはトラウマがあります、ですから……」
ハターキ「トラウマなんて……そんなのみんなあるよ」
梨子「!」
ハターキ「みんなあるけど…どこかで割り切らないと前に進めないのよ」
梨子「……はい」 ことり「……神様はどうしたらいいと思いますか?」
公野「え…私?」
公野「……いいの?私に聞いて?」
ことり「え…?」
公野「……昔からいたでしょ」
公野「あんたの近くに、正しい答えを持った子が」
ことり「………」
ことり「海未ちゃんやみんなにばっかり頼っていられない……私も何かやらないと……って」
ことり「でも、私には……」
公野「……ことり、あんたの幼馴染は世界中から極悪人と呼ばれながら……みんなを守ろうとした」
ことり「……穂乃果ちゃん」
公野「あの子のやる事に付き合って、後悔した事ある?」
ことり「……ない。ないですっ!」
公野「……だよね」 公野「先生、ことりをお借りしてもいいですか?」
ハターキ「え?……えぇ、まぁ……仕方ないわね」
ハターキ「正直、ことりちゃんがいなくなると苦しいけど、そのぶん梨子ちゃんに頑張ってもらいましょう」
梨子「え…?」
ハターキ「いいわよね?」
梨子「は、はい!頑張ります…!」
公野「梨子は……近いうちに仲間に会えると思う」
梨子「……その前にまず、ダイヤさんと花丸ちゃんを……」
公野「……その2人も含めて会えるって、近々」
梨子「え…ほ、本当ですか?」
公野「うむ!私を信じなさい!」 ことり「あの…神様、私たちはこれから何をするんですか…?」
公野「“あいどる”を討つ!」
ことり「………」
公野「……ま、あんまり乗り気にはなれないよね」
ことり「いえ、そんな…」
公野「私は昔みたいにことりに笑って欲しいんだけどな」
ことり「……私にとって、穂乃果ちゃんは太陽みたいな存在だったんです」
公野「……太陽が無くなったら人間は生きれないもんね」
公野「そうだなぁ……うん、仕方ない」
公野「あのねことり」
ことり「なんですか…?」
公野「確証が持ててないから、言うか言わないか……迷ってたんだけど」
ことり「はい…」
公野「ことりのモチベーションを上げるために言う」
公野「……あのね」
ことり「は、はい…」
公野「穂乃果は」 段々キャラが揃ってきたな
そういえばA-RISEはどうしてるんだろ いやそれは分かるけど、穂乃果に潜伏先紹介したり死なないって予言したり
しかもその頃(20年前)から老婆だし ・
・
・
スタスタ
曜「絵里さん、タイ語まで喋れるなんてすごいですね」
絵里「軽くしかわからないけどね」
下っ端「」ピタッ
下っ端「ボスはここだ」
絵里「案内ありがとう。曜、行くわよ」
曜「私も入っていいんですか?」
絵里「別に入るくらいならいいわよ。行きましょ」
曜「なら…失礼します」
ガチャ 絵里「チャンポン」
チャンポン「……ゼェゼェ」
チャンポン「……エリーチカ……か」
絵里「……老いたわね、チャンポン」
チャンポン「お前は……牙が抜けたな」
絵里「……えぇ、そうかもね」
チャンポン「かつては弾丸を当てることが出来なかった……あのエリーチカも……ハァハァ」
チャンポン「今では……ただの娘に成り下がったか……」
チャンポン「そんなお前では……ハァハァ……世界は救えんな……」
絵里「………」 チャンポン「しかし……親友に再開した気分だよ……」
絵里「……私はそんな呑気なこと思えないわ」
チャンポン「ふふっ……釣れん……やつだな」
絵里「チャンポン、時間がないの」
チャンポン「……ある意味、私にも時間がない……」
チャンポン「もういつ…迎えが来ても…おかしくないのでね…ゼェゼェ」
チャンポン「だからこそ……お前に頼みたいことがある、エリーチカ……」
絵里「頼みたいこと?」
チャンポン「ハァハァ…あぁ…」 チャンポン「私が……とある女の子のファンでね……」
チャンポン「昔のお前と同じだよ……。エリーチカ……」
チャンポン「肝が……据わった少女でね……」
絵里「………」
チャンポン「……聞けば彼女は……テロリストホノカの姪っ子らしいじゃないか……」
絵里「………」
チャンポン「エリーチカ……お前が……止めてやれ……彼女……何をしでかすか……わからないぞ」
絵里「……チャンポン、彼女のアジトの場所を教えて」
チャンポン「……彼女は……アジトを転々としている」
チャンポン「だが……おそらく、今は……ここに……いるはずだ……」サッ
絵里「」スッ 絵里「ここからそう遠くないわね」
チャンポン「……彼女は今、氷の女王と呼ばれている」
絵里「……らしいわね」
チャンポン「誰か……止めてやれ……今の彼女は……人の命はもちろん、自分の命さえ投げ出すことも厭わない……」
絵里「……何が彼女をそこまで変えてしまったの」
チャンポン「……心優しい少女だった」
チャンポン「ただ……変わらずにはいられなかったのだろう……強大な敵に立ち向かうためには……甘えた心は捨てなければいけなかったんだろう……」
絵里「………」
チャンポン「頼んだぞ……エリー……チ……カ……」
チャンポン「…」
チャンポン「」
絵里「……任せて」 タッタッタッ
曜「絵里さん!これからどうするんですか?」
絵里「私は氷の女王のところに行くわ」
曜「なら、私も一緒に…」
絵里「いいえ、そこには私1人で行く」
絵里「曜、あなたは神田明神に行って希に海未と合流するよう言っておいて」
曜「わ、わかりました…!」
絵里「……お願いね」ダダッ
曜「」ピタッ
曜「絵里さーん!気をつけてくださいねー!」フリフリッ
絵里「えぇ!」 ウーー!!ウーー!!
男A「侵入者!侵入者だ!」
男B「侵入者を取り押さえろ!」
男C「うおおおおおぉ!!!」
絵里「」サッ
男C「うおっ!」ドサッ
絵里「……なによこれ。素敵な歓迎してくれるじゃない」
絵里「教えなさい!秋穂は……氷の女王はどこ?」
男D「黙れッ!」
男A「動くなッ!」
スチャッ スチャッ スチャッ スチャッ
絵里「………」
男A「動くなよ。そのまま手を上げろ」
絵里「……」サッ 男A「名を名乗れ」
絵里「……氷の女王に、絵里が来たと伝えなさい」
男A「あ…?」
ザワッ…
男B「絵里……?」
男C「絵里ってあの…絢瀬絵里か…?」
ザワザワッ…
男A「……ッ!黙れッ!嘘をつくな!」
男E「そうだ……そうだ!デタラメを言うな!」
絵里「……はぁ。物分かりの悪い子たち……ね!」ダッ!
男I「ッ!逃げた!」
男A「撃てぇ!!」
絵里「……っ、厄介ね」
「待って!!!」
男A「!?」クルッ
絵里「……この声」
ザッ…
秋穂「………」
絵里「はぁはぁ……秋穂……」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
男F「弾丸はそっちに置いとけ!」
男G「火薬はこんなもんか?」
ガヤガヤ…
絵里「……いっぱしのテロ集団ね」
秋穂「……」
絵里「……秋穂、あなた何をやってるの?」
秋穂「……」
絵里「……どこで武器を調達したの?」
秋穂「……小原家とで」
絵里「……まさかとは思っていたけど、本当にあなたがこんな事をするなんて……思ってもみなかったわ……」
秋穂「絵里おばさんこそ……生きてるとは思わなかった」 絵里「えぇ、なんとか……東京に帰って来たのよ」
秋穂「あの大きな壁を越えて、東京に侵入した人がいるって……噂では聞いてたけど……絵里おばさんだったんだ」
絵里「……海未から聞いたわ。なぜ、花陽の一派から離れたの?」
秋穂「花陽おばさん達のやってる事は生温い」
秋穂「……不当に逮捕された人たちを1人1人逃がしたり、食力不足の街に物資を届けたり……」
秋穂「なんの意味があるの…それ?」
絵里「……私には、間違った事とは思えないけど」
秋穂「じゃあ聞くけど、絵里おばさん…それで何か変わるの…?世界は救える…?」
絵里「……そういう地道な活動が」
秋穂「助けた連中とその家族のお寒い再会劇なんていらない。見たくもない」 絵里「あなたが穂乃果や雪穂ちゃんと会えないからって……そんなの、ただの妬みでしょ?」
秋穂「……っ!」
秋穂「……なにそれ?」
秋穂「なんなの……」ワナワナ
バンッ!
秋穂「喧嘩売りに来たなら帰ってよ!!」
絵里「……あなたが何をしようが、それはあなたの勝手」
絵里「ただ、そうやって人を蔑むのはよくないわ」
絵里「……自分の価値を落とすわよ」
秋穂「……だから、あんな御涙頂戴はもう見飽きたんだって」
秋穂「私には……メソメソしてる暇なんかないの」
絵里「………」 絵里「……秋穂、本当に武装蜂起する気?」
秋穂「当たり前だよ。もう……止められない」
絵里「……なぜ、8月3日なの?」
秋穂「………」
絵里「………」
秋穂「……誕生日」
秋穂「穂乃果おばちゃんの……誕生日」
絵里「……そうでしょうね。でも、そんな事を穂乃果が望んでると思う?」
秋穂「絵里おばさん、説得しにきたの?」
秋穂「……そんなのいらない、時間の無駄だから帰って」 絵里「……なぜもっと命を大切にしないの?」
秋穂「……我慢ならないじゃない」
秋穂「絵里おばさんも知ってるでしょ?2035年のあの“あいどる”の復活劇のあと…世界各国にウィルスがばら撒かれた…」
秋穂「その結果、世界で数十億という人が亡くなった……」
秋穂「……家族や恋人や友達を失った人たちが私の元に集まった」
秋穂「彼らは“あいどる”を倒すことだけを考えて生きてきたの」
秋穂「……そんな彼らを……親衛隊や“あいどる”は虫ケラのように殺した」
秋穂「……みんな、私をかばって」
秋穂「……私だけが生き残るなんて不公平。そうでしょ?」
絵里「………」 秋穂「……中国マフィアは全滅。タイマフィアもチャンポンを残してほぼ壊滅……。みんな、私に協力して……死んだ」
秋穂「愛民党の本部を襲撃して……殺されたの」
絵里「……チャンポンも、ついさっき死んだわ」
秋穂「……!」
秋穂「……そう」
絵里「秋穂…。言っておくけど、本当にあなたが8月3日に武装蜂起を決行したら、間違いなく彼らの二の舞いになるわ」
秋穂「………」
絵里「………計画は中止しなさい」 絵里「あなたの仲間は……あなたを慕って、信じて、一生懸命やってくれている」
絵里「そんな子達が…みんな死ぬのよ?」
秋穂「……合意の上」
絵里「……ッッ。いい加減にしなさいッ!」
秋穂「……っ、なんなの!?絵里おばさんに私の何がわかるっていうの!?」
絵里「……わかっているからこそ、なぜあなたがこんな行動に出るのか……理解出来ない」
秋穂「……うそ。なんにもわかってない。みんな、なにも……」
秋穂「あの小さくて愛らしかった高坂秋穂はもういない……どこにもいない」
秋穂「………私が愛した人はみんな死んだ」
絵里「………」
秋穂「」ツー
秋穂「!……グスッ」
秋穂「…っ」ゴシゴシッ
秋穂「……私はもう泣かない」 絵里「……本当にそんな事をして、あなたを愛した人たちが喜ぶと思っているの?」
秋穂「……これはケジメなの」
絵里「……秋穂、もう一度言うわ。すぐに計画を中止しなさい。今すぐよ」
絵里「あなたがリーダーなら、みんなわかってくれるわ」
秋穂「……話、聞いてたでしょ?私がやらないと……」
絵里「絶対に死ぬわよ?」
秋穂「……知ってる、そんなの覚悟の上」
絵里「………」
秋穂「………」ブルブル…
絵里「……本当に決心がついてるの?」
秋穂「………」
絵里「……そうよね」 絵里「……昔、命が危ないと思ったら、一目散に逃げろと言った子がいるわ」
秋穂「………」
絵里「……そう、あなたが大好きだった」
秋穂「穂乃果おばちゃんは死んだんだよ?」
絵里「……いえ、あの子は」
秋穂「やめて!もうたくさん…!」
絵里「………」
秋穂「そんな慰めは腐るほど聞いてきた!」
秋穂「……だって、本当に生きてるなら……私との約束を破ってるってことじゃん……」
絵里「……約束?」
秋穂「……絶対、帰ってくるって」
秋穂「穂乃果おばちゃんが嘘つくわけないもん……」
秋穂「……死んだの。穂乃果おばちゃんは……あの時、あの爆発で」
秋穂「……死んだから、もう帰ってこないの」
絵里「……っ」 絵里「約束を破ったと決めつけるのは……まだ早いわ」
秋穂「………」
絵里「……秋穂、生きてるかもしれないというのは本当なの」
絵里「ラジオから穂乃果の曲が流れたの」
絵里「……あなたの音楽プレーヤーに入ってる、穂乃果の曲とは違うバージョンよ」
秋穂「……あり得ない。穂乃果おばちゃんが最後に歌った曲はこのプレーヤーの中のもの」
秋穂「これとバージョンが違うなんて事は絶対ない」
秋穂「……もし、本当にそうだとして。じゃあそれはいったい、いつ録音されたものだって言うの?」
絵里「血の大晦日の後よ」
秋穂「……もういい。そんな非現実的な話聞きたくない」 絵里「……穂乃果が生きていて、今のあなたを見たら、なんて言うと思う?」
秋穂「………」
絵里「今、自分のやっている事を穂乃果に…胸を張って話せる?」
秋穂「……穂乃果おばちゃんなら、わかってくれる」
絵里「本当にそう思うの?」
絵里「誰よりも仲間思いなあの子が…仲間もろとも死のうとしているあなたに、理解を示してくれると思うの?」
秋穂「………」
絵里「あの子が生きていたら…」
秋穂「……ッッ!」
秋穂「生きていたら生きていたらってうるさいよ!!もうッッ!!!」
絵里「……秋穂」
秋穂「はぁはぁ……生きていたら、来てくれる」
秋穂「……きっと、こんな状況なんてひっくり返して……私を助けてくれる」 絵里「……きっと来てくれる」
秋穂「……まだ言うの?」
秋穂「はは…はははは…」
秋穂「……ッッ。来てくれるわけないじゃんッ!!」
秋穂「だって死んだんだもん!!!」
絵里「……秋穂」
秋穂「下手な希望持たせないで……!!」
絵里「………」
秋穂「………」
秋穂「………ごめんなさい」
秋穂「この絶望的な状況を打破出来るのは私じゃないんだよね……わかってるよ、そんなこと」
絵里「………(ここまで……この子を追い詰めてしまっていたのね……)」
絵里「………誰か」
絵里「……誰かラジオを待っていない!?」
「え……?」
秋穂「……絵里おばさん?」 絵里「ラジオを誰か…!」
秋穂「何言ってるの絵里おばさん…?やめて!」
ザワザワッ…
秋穂「彼らは私の命令しか聞かない!」
男J「あの…」
絵里「!」
男J「この前、ガラクタの中から拾ってきたのならあるんですけど…」
絵里「貸して」
男J「は、はぁ…」
パシッ
絵里「………」
ピーギュルギュル…
秋穂「……何も放送なんかされてないよ」
絵里「黙ってなさいッ!!!」
秋穂「」ビクッ 絵里「お願い穂乃果……秋穂を救ってあげて……」
ピーギュルギュル…
秋穂「……っ、あの人は死んだ!もういいから!」
絵里「………」
ピーギュルギュル
絵里「……電波が届かないのね」
絵里「どこか外に通じるところはない?」
男K「え…む、向こうのスペース…外に出れる場所がありますけど…」
絵里「…ッ!」ダッ
秋穂「まっ…待って絵里おばさん!外に出たら奴らがいるかもしれない!捕まっちゃう!」
絵里「」ダダダッ
秋穂「〜〜っ!」
秋穂「…!」ダダッ 絵里「」ピタッ
絵里「ここなら…!」
バッ!
絵里「お願い穂乃果…!歌って…!」
絵里「穂乃果っっ!!」
・・・ピーギュルギュル……
絵里「………」
絵里「……ッ」ガクッ
秋穂「……」スタスタ
秋穂「……ありがとう、絵里おばさん……。でも、もういいよ」
男L「あの…」
男M「秋穂さん…」
秋穂「なに…?」
男N「なんか……聞こえないですか?」
秋穂「……え?」
絵里「……!」
ジー…
秋穂「……!?」
ジー…
セカイジュウガ…
秋穂「……!」
男達「ザワッザワッ…」 「…世界中が家路を急ぐ」
絵里「……やった」
秋穂「これは……穂乃果おばちゃんの……?」
「そんな毎日が君の周りで」
「ずっとずっと続きますように…」
絵里「……そうよ。歌ってあげて、穂乃果」
「グータラ〜スーダララ〜…」
「グータラ〜スーダララ〜」
秋穂「……っ!」
秋穂「……なに……これ」
秋穂「グータラ…スーダラ…?」
秋穂「こんなフレーズ……聴いたことない……」
秋穂「絵里……おばさん、これって……?」
絵里「………」コクッ
秋穂「うそ……」
秋穂「穂乃果おばちゃんが………生きてる………?」 秋穂って2歳の時に穂乃果がいなくなったから海未に3歳〜18歳?まで育てられたんよな
にもかかわらずほのラブがすごいな 2019年の大晦日らへんで既に穂乃果と達者にしゃべれてるから割と秋穂の中で記憶はあるんじゃないか
2歳にしては出来すぎてる気はするけどな ・
・
・
千歌「ふわぁ…」
巡査「高海巡査長!」
千歌「ん……あぁ……巡査くん、おはよう〜……」
巡査「いえ、ただいま昼であります!そして交代の時間であります!」
千歌「ん……もう、そんな時間かぁ……」
巡査「異常はなかったでありますか!?」
千歌「うん。なにもなかったから寝ちゃったんだよね…」
巡査「この北門検問所の警備を甘くみてはいけません!いつぞや北からテロリストが来るか…!」
千歌「あはは…来るかなぁ…」 千歌「……私ね、ここに来て2年経つけど」
千歌「向こうから人が来たのを見たことがないし、聞いたこともないよ」
巡査「北の人間は死に絶えたのでしょうか?」
千歌「……どうなのかな」
千歌「……素敵な所だったんだけどなぁ」
おじさん「千歌ちゃん」
千歌「あっ、おじさん!」
千歌「どうしたんですか?こんなところまで?」
おじさん「近くまで来たから、差し入れだ」
千歌「わ〜!ありがとうございます!あとでいただきますね!」
千歌「今日も誰も来なくて、ほんとヒマなお仕事ですよ〜」
おじさん「いや。なんか来たよ」
千歌「え?」
ブルルンーン…
千歌「……うそ!」 千歌「は、初めて向こうから……北から人が来た……」
おじさん「え?」
千歌「あっ…い、今のはちがっ…!って、じゃなくて!」
タタタッ!
千歌「あ、あの止まってください!」
女性シンガー「!」
キィッ…
女性シンガー「ふぅ…」
千歌「……あ、あの」
女性シンガー「ん?」
千歌「え、えーっと……」
女性シンガー「あのさあのさ!ここって東京?」
千歌「え……あ、はい東京だす」
女性シンガー「だす?」
千歌「あっ…!す、すみません…初めてそっちから人が来て…ちょっと動揺しちゃって…!」
女性シンガー「……そっか」
女性シンガー「というか……。やーーーっと!東京だぁ〜〜!」
女性シンガー「1000キロだよ!?1000キロ!!」 おじさん「しかしすげぇな。ホンダのスーパーカブだ…。今時こんなのを乗ってるやつがいるとは」
千歌「す、スーパーカップ?」
おじさん「どこでこれを?」
女性シンガー「これですか?拾ったんです」
千歌「拾ったって…」
女性シンガー「うん。移動するためにね」
女性シンガー「…というかさ」
千歌「は、はい?」
女性シンガー「ここ、あんまり東京って感じしないね……。集落って感じ……」
千歌「集落……確かにそうかもしれないですね」
千歌「……2035年、“あいどる”はウィルスの蔓延を阻止するため……無差別に都民を放り出したんです」
女性シンガー「放り出したって…どういうこと?」
千歌「東京の周りに壁を築いて、隔離政策をとったんです」
女性シンガー「……ひどい」
千歌「ここは壁の向こう側に行けない人たちのコミュニティ。だから…ある意味、その通りなんです」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
スタスタ
女性シンガー「いや〜、ごめんね…。繁華街まで案内してだなんて」
千歌「いやいや!ちょうど私も仕事終わりだったので!全然、大丈夫です!」
穂乃果「そっか。優しいね」
千歌「…………」
千歌「……あの」
女性シンガー「ん?」
千歌「どこかで……お会いしたことありますか?」
女性シンガー「えっ…?私?」
千歌「はい…どこかで」
女性シンガー「あ〜…そr」
おじさん「あれを見てみな」
女性シンガー「へ?」 女性シンガー「なんですかあれ?……畑?」
千歌「……墓地です」
女性シンガー「墓地……?」
おじさん「無断で壁の向こうに行こうとしたやつはな…みんな例外なく殺されるんだよ」
女性シンガー「……なるほどね」
千歌「ただ……この前、壁を超えて向こうに行った人がいたって……ん?」
ジロッ…
コソコソ…
ダレ…ダレ…?
女性シンガー「なんか……私、注目浴びてる?」
千歌「初めて見る人なので、みんなちょっと警戒心があるみたいですね…」
おじさん「初めて見るってより…ナリが悪いだろ」
女性シンガー「ナリ?」
おじさん「格好だよ。帽子被ってサングラスかけてギター背負ってるやつはそりゃあ不気味だ」
女性シンガー「そ、そうかなぁ」
おじさん「そうだ、怖い」
女性シンガー「うーむ……。よし!なら挨拶だ!」
千歌「え?」 女性シンガー「みなさ〜ん!!!」
「!???」
女性シンガー「私、怪しいものじゃありません!」
おじさん「怪しいだろう…」
女性シンガー「とにかく、1曲歌うので聴いてください!」
ザワザワッ…
…パチ…パチパチ…
女性シンガー「スー…」
女性シンガー「……日が暮れてどこからか」
千歌「(……あれ?)」
女性シンガー「どれだけ歩いたら 家にたどり着けるかな…」
千歌「(この曲……どこかで……)」
女性シンガー「グータラ〜ス〜ダララ〜♪」
ジャガジャガジャガジャン!
女性シンガー「ありがとうございます!」
住人1「い、いい……いい曲だねっ!」
女性シンガー「ほんとですか!?」
住人1「うん。でもちょっと臭うかな…あはは」
女性シンガー「え…?」
女性シンガー「あ、あぁ…!歌詞がですか?」
住人1「いや……身体かな……」
女性シンガー「……!?」
住人2「あ〜…確かに…。風貌的に旅人…?みたいだし…まぁ、仕方ないけど…」
女性シンガー「〜〜っっ///」カァァ
おじさん「ワシの家で風呂、貸してやろう」
女性シンガー「あ、ありがとうございます…」ズーン
千歌「……あの声……いや、あの歌声……絶対に聞いたことがある」
千歌「……どこで」
千歌「・・・」
千歌「うわ〜ん!なんで忘れてるんだよ千歌〜!」 シャー…
千歌「あの!タオル、ここに置いておきますね」
女性シンガー『うんっ!ありがとね』
千歌「お風呂、いつぶりですか?」
女性シンガー『いつだろう…』
女性シンガー『ほんとにしばらくだなぁ…お風呂とか、そうも言ってられる状況じゃなかったし…』
千歌「……そうですか(絶対に知ってる声なんだけどなぁ……)」
ガラッ
千歌「!」
おじさん「しまったしまった!石鹸切らしてたんだ!」ダダッ
千歌「え!?」
おじさん「入るぞ!」
ガチャッ!
千歌「わ、わぁぁ!?おじさん何やってっ…!!」 女性シンガー「へ……え!?」
女性シンガー「う、うわぁ!?な、なにっ…!?」
おじさん「いや、石鹸切らしてて…」
グイッ!
おじさん「うおっ!?」
千歌「お、おじさんなにやってるの!女性だよ!?」
おじさん「えっ…そ、そうなのか?もう俺も老眼でな…」
千歌「声でわかるよね!?」
おじさん「ま、まぁ…何も見てねぇから気にすんな!」
千歌「気にするよ!ほら、謝って!」
おじさん「め、面目ねぇ…」
女性シンガー「たはは…べ、別に大丈夫ですよ…」
女性シンガー「それにシャワーを貸してもらってるのは私なんだし…」
千歌「ほ、本当にすみま」パッ
千歌「………せ………ん………」
おじさん「……?どうした、千歌ちゃん?」 千歌「(そうだ。全部、繋がった)」
千歌「(あの曲……昔、秋穂ちゃんに聴かしてもらった……)」
千歌「(会ったことがあるって言ったけど……わからないはずだ……だって私が知ってるだけだもん)」
千歌「(サングラスで……何より、長髪になってたから気づかなかった……)」
千歌「……いや、でも」
キュッ…
千歌「!」
ガチャッ…
女性シンガー「はぁ〜…さっぱりしたぁ…」フキフキッ
千歌「あの…」
女性シンガー「…ん?」
千歌「……」ゴクッ
千歌「穂乃果さん……ですよね……?」 女性シンガー「………」
千歌「………」
女性シンガー「」ニヤッ
千歌「……!」
女性シンガー「あのさ!」
千歌「は、はい!」
女性シンガー「さっき、あの壁を超えた人がいたって話してたよね?」
千歌「……は、はい」
女性シンガー「壁の向こうに行く方法ってさ…そんなのしかないの?」
女性シンガー「他になにかない?」
千歌「……えっとぉ」
女性シンガー「……あるんだ?」
千歌「……私もあんまり大きい声じゃ言えないんですけど」
女性シンガー「うんうんっ…!」
千歌「実は…」
コショコショ… 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
千歌「穂乃果さん…!早く読んでくださいよ…!」
千歌「穂乃果さんがここにいると…みんな物珍しさで来ちゃうんですよ…!」
千歌「ほら、もうこんなに野次馬が…!」
ザワザワッ ワイワイッ ガヤガヤッ
女性シンガー「……」ペラッ
十花「」ドキドキ
女性シンガー「……うん」
十花「!」
女性シンガー「面白いっ!!」
十花「あ…ありがとうございます!」
女性シンガー「大切な人を守ろうと一生懸命頑張った主人公がカッコよかったなぁ…」
十花「え、えへへ…昔は小説を書いていたんですけど…その小説がある女性から酷評されまして…」
女性シンガー「それで今は漫画家を?」
十花「え、えぇ…まぁ…絵を入れた方が面白いかと…」
女性シンガー「…そっか。うん、面白いね」 女性シンガー「ところでさ。あなたにお願いがあるんだけど」
十花「お願い?」
女性シンガー「ここから壁の向こう側に行くには関所のゲートを越える通行手形がいるらしいんだよねぇ」
十花「……はぁ。やっぱり、その話ですか……」
女性シンガー「本物は簡単には手に入らないって聞いたから」
十花「偽造手形は昔、何枚か頼まれて作ったけど……もう、やめました!」
女性シンガー「なんで?」
十花「怖いからですよ……!ゲートを潜る前に親衛隊から手形に対して入念なチェックが入るんです!」
女性シンガー「……ふ〜ん」
十花「もし、偽造手形だってバレたら……あなたはもちろん……僕も殺されちゃいますよ!」
女性シンガー「そっかぁ……」 女性シンガー「ん〜…でもさでもさ」
女性シンガー「あそこからチラ〜…っと、通行手形っぽいものが見えるような…しかもたーくさん…」
十花「えっ…あっ、あれは!!」
女性シンガー「どれどれ〜」スッ
十花「ちょ、ちょっと!勝手にやめてください!」
女性シンガー「ほら…。やっぱりこれ、偽造手形だよね?」
女性シンガー「描きかけのばっかり…。でも、あとちょっとで完成しそう…」
女性シンガー「これ…ついでにみんなの分も用意してあげてっ!」
キャー!!!!ワー!!!!ヤッタ!!!!
十花「」アゼン 女性シンガー「じゃあ、よろしくね」
十花「……絶対にバレますよ、殺されます」
女性シンガー「なるようになるって!」
女性シンガー「…じゃ、まかせ…」
バキューン!
千歌「……!?」
キャッ…キャーーー!!
千歌「な、なに!?」
巡査部長「なに?はこっちのセリフだ、高海」
千歌「ぶ、部長さん…」
巡査部長「どこだ?北からやってきた女ってのは」
千歌「えっ……えっと……」
住人3「か、彼女よ!」
千歌「えっ!ちょ、ちょっと!」
女性シンガー「………」
巡査部長「テメェか…」 巡査部長「」スタスタ
女性シンガー「……」
巡査部長「」スチャッ
千歌「部長さん!?なにやってるんですか!!」
巡査部長「なーに、少し話をするだけだ」
千歌「話し合いに銃はいらないですよっ!」
巡査部長「……高海ぃ。今まで北から来る奴なんていなかったから、お前は知らねぇだろうが」
巡査部長「基本的に向こうから来た奴は殺す決まりなんだよ」
千歌「そ、そんなの聞いたことないです…!」
巡査部長「そりゃあ今、俺が作ったからな」
千歌「え…」
女性シンガー「………」
巡査部長「なんとか言ってみろよ、人外」
女性シンガー「………」
巡査部長「……名前はなんだ?」
女性シンガー「………」
巡査部長「殺す」スチャッ 千歌「ま、待って!」バッ
巡査部長「んだよっ!邪魔だ!」
千歌「この人を撃たないで!」
巡査部長「……高海、お前も撃ち殺してやろうか?」
千歌「……ッ!」ブルッ…
千歌「……あ、秋穂ちゃんが言ってた事が本当なら」
女性シンガー「」ピクッ
女性シンガー「……秋穂?」ボソッ
巡査部長「……なんだよ」
千歌「こ、この人が…」
千歌「この人が救世主なんです!」
巡査部長「……くだらん」
巡査部長「高海…“あいどる”が暗殺されたのも、本を正せばお前たちの警備不足のせいなんだ」
巡査部長「本来は“退部”されてもおかしくないところを何故か左遷で済んだ」
巡査部長「……ふんっ。後ろ盾だけは強い小娘が偉そうに」
千歌「………」
巡査部長「あてにならん、お前の言う事など」 女性シンガー「」ズイッ
千歌「……!」
女性シンガー「この子のこと、酷く言わないでよ」
巡査部長「……あ?」
女性シンガー「あなたなんかにそんなこと言われる筋合いないはずだよ」
女性シンガー「すごくいい子なんだから」
巡査部長「……気味悪ぃな。死ね」スチャッ
女性シンガー「撃ちなよ」
巡査部長「!?」
千歌「えっ…」
女性シンガー「私はもう…銃なんて怖くない」
女性シンガー「本当に怖いのは……」
女性シンガー「………」
女性シンガー「……いいから、撃ってみなよ」
巡査部長「上等だこの野郎……なら、お望み通り殺してやるッッ!」 ポンッ
巡査部長「!?」
巡査部長「誰だ…!?」
ムロタ「その辺でやめときなよ。部長」ニコッ
千歌「ムロタさん!!」
巡査部長「ムロタ……!」
ムロタ「こんなに人が集まって……何があったかと思えば……」
ムロタ「勝手な行動はやめてくださいよ」
巡査部長「っ…離せっ!」ブンッ
ムロタ「この地区の責任者は俺のはず」
ムロタ「勝手に変なルールを作るのはやめてね」
巡査部長「……クソが」ダッ
ムロタ「……ふぅ」
女性シンガー「………」 千歌「ムロタさん!グッドタイミングでしたよ〜!」
ムロタ「あぁ。千歌もよく怯まずに立ち向かったね」
千歌「あ、あはは…身体が勝手に…みたいな感じです!」
ムロタ「彼は本当に撃ちそうだったから…ヒヤヒヤしたよ」
女性シンガー「あの…あ、ありがとうございます」
ムロタ「おっ…君が噂の…」
ムロタ「いや、そんな事より…怪我は無い?」
女性シンガー「特に無いです…」
ムロタ「そっか…ならよかった」
ムロタ「じゃあ僕は十花さんに用があるからこの辺で…」
千歌「お疲れ様です!!」 十花「はぁ…」
ギシッ
十花「!」
ムロタ「どうも、十花さん」
十花「う、うぅ…ムロタくん…聞いてくれ!偽造手形を…!」
ムロタ「わかってます。早速、作業に入りましょう」
十花「え、知ってたの…?」
十花「というか僕、絵は描けないんだけど…」
ムロタ「あぁ…いや、十花さんは千歌たちに渡してくれるだけでいいんです!」
ムロタ「僕も表向きは警察官…。本来こんな事をしてはいけないので、絵を描いてるというダミー役がいるんです」
十花「……君は出来る人間だね」
ムロタ「いえ!漫画がウケているのも十花さんのシナリオあってこそですよ」
十花「……ありがとう」
ムロタ「えぇ……。んじゃ、描きますか……」
カリカリカリカリカリカリ!
十花「……相変わらず早いなぁ……」 バッ!
十花「出来たぞ!」
女性シンガー「……は、早いね」
十花「本当にな……」
千歌「……じ、自画自賛?」
ムロタ「おっ?おやおや…君たちも…通行手形を持っているのかい?」
十花「(白々しい…)」
女性シンガー「さっきの…」
ムロタ「いや〜…ここの人たちみんな通行手形を持ってるんだ。不思議なこともあるもんだね」
女性シンガー「そうなんですか。なら早く関所に行けばいいのに」
十花「本当に死ぬかもしれないんだぞ。それでも行くのか?」
十花「奴らもバカじゃない、偽造手形なんて一発で…」
女性シンガー「……約束」
十花「え?」
女性シンガー「あの子と約束したから……」
十花「約束…?」
女性シンガー「絶対に……帰るって」
十花「……?」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ザッ…ザッ…
十花「け、結構歩きますね…ハァハァ」
おじさん「もう少しだ」
女性シンガー「……ふぅ」
千歌「バイク押すの大変そうですね…良かったら私が…」
「止まれ!」
千歌「!」
親衛隊「ここを通りたければ通行手形を出せ」
女性シンガー「」ゴソゴソッ
スッ
女性シンガー「はい」
親衛隊「……貴様、今いくつだ」
女性シンガー「……今、何年?」
親衛隊「……あいどる歴3年だ」
女性シンガー「……あいどる歴?……30歳ぐらいじゃないかな?」
千歌「」ズルッ
千歌「……(そ、それじゃ私より年下です……)」 親衛隊「……発砲準備」
スチャッ スチャッ スチャッ
十花「も、もうダメだ…!」
おじさん「殺されるっ…!」
女性シンガー「ちょっと待ってよ、ちゃんと確認してよ」
親衛隊「……結果は変わらんと思うが」
親衛隊「おい!確認しろ!」
親衛隊「今、部下に確認させている…せいぜい残りの人生を…」
「通せとのお達しです」
親衛隊「……!?」
十花&おじさん「!?」
千歌「……通っちゃった」
女性シンガー「大丈夫だったんでしょ?開けてよ」
親衛隊「……ゲ、ゲートオープン!!」
ガァーー…
女性シンガー「……んじゃ、私行くね」 十花「……い、行こう!私たちも……!」
おじさん「お、おう…!」
十花「よ、よし!行くぞみんなああぁ!!」
オーーーーウ!!!!!!
千歌「えっ……集落のみんな!?」
千歌「い、いつの間に来てたの!?」
ドサドサドサドサッッ!!
親衛隊「くっ…何だ今日は!」
親衛隊「な、並べ!並べぇ!」
千歌「……みんな、そんなに帰りたかったんだ」
千歌「…わ、私も…!」ダダダッ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
千歌「」キョロキョロ
女性シンガー「………」
千歌「あっ!いたっ!」
千歌「穂乃果さ〜ん!」
女性シンガー「………」
千歌「みんなゲート突破しました!」
千歌「みんな穂乃果さんの曲、歌ってましたよ!」
女性シンガー「……この」
千歌「はい…?」
女性シンガー「このデッカい建物ってなに?」
女性シンガー「スカイツリーより大きくない?」
千歌「あはは…それは流石に…」
千歌「この建物は関所を管理する役所です。当然ながら、私は入った事ないんですけど…」
女性シンガー「……へー」
女性シンガー「……私、ちょっと行ってくる」
女性シンガー「よいしょ」スタッ
千歌「えっ!?」
女性シンガー「」タッタッタッ
女性シンガー「あっ、バイク止めといてー!」
千歌「穂乃果さん!!なにされるかわかりませんよ!!おーーい!!」
千歌「……え、えぇ?」ポツーン カンッ…カンッ…
女性シンガー「(人気が全くない……)」
女性シンガー「(……かなり登ったはずだけど)」
女性シンガー「………」
・
・
・
親衛隊「ご命令通りゲートを開け、あの女を中に入れ、警備員も退避させました!」
親衛隊「よろしいですね?」
ツバサ「あ〜………」
ツバサ「う〜ん、ありがと〜……」
親衛隊「……失礼します」スタスタ カンッ…カンッ…
女性シンガー「………」
ツバサ「よく……ここまで来たわね」
女性シンガー「…!」
女性シンガー「……」スタスタ
ツバサ「……あなたが誰か……当ててあげましょうか……?」
女性シンガー「……」
ツバサ「まさか、記憶を無くしてるなんて事はないわよね?」
ツバサ「……ね、高坂穂乃果さん」
女性シンガー「……」 女性シンガー「……私をわざと入れたんですね」
ツバサ「……えぇ」
ツバサ「本当は……本来ならこんなところにいるはずじゃなかった……」
ツバサ「山田先生は……“あいどる”に疎まれて……殺された」
ツバサ「先生は知りすぎたのね…」
ツバサ「……必然的に山田先生の派閥に属する私も……こんな閑散とした関所へと移動させられた……」
ツバサ「ははっ…一時でもアイドル界のトップに立った人間とは思えない扱いよねぇ〜…」
女性シンガー「………」
ツバサ「あなた……“あいどる”が誰か知ってるの?」
女性シンガー「………」
ツバサ「……うふふっ……落ちたわね、あなたも……私も……」 ツバサ「……姪っ子ちゃんの片親が“あいどる”だって……あなたは知ってた?」
ツバサ「……2人の馴れ初め」
ツバサ「元はあなたの妹さんと絢瀬さんの妹で子供を作ろうとしていたそうよ」
女性シンガー「………」
ツバサ「そこに“あいどる”は目をつけた…」
ツバサ「だけど……あなたの妹はそれに応じなかった……」
ツバサ「結果…絢瀬さんの妹は失踪し、あなたのお父さんは腹いせに殺された…」
ツバサ「人は…失って出来た穴を…必ず何かで埋めようとする」
ツバサ「“あいどる”は上手く取り入った…持ち前の人心掌握術でね…」
ツバサ「ふふふ…それとも…あなたの妹が乗せられやすい性格だったのかしら…?」
女性シンガー「……」 ツバサ「……しかし、“あいどる”がここまでするとは思わなかったわ」
ツバサ「“あいどる”は御茶ノ水工科大学の木皿教授を拉致して巨大ロボットを作らせた」
ツバサ「……あなたは何故生きていると思う?」
女性シンガー「………」
ツバサ「あのロボットの操縦室で、あなたはダイナマイトを爆発させるつもりだった……」
ツバサ「実際、爆発した。そう思ってる?」
女性シンガー「………」
ツバサ「……ふふ」
ツバサ「あのダイナマイトは既に細工を施されていて、爆発しないようになっていたのよ」
ツバサ「もし、操縦室の中でダイナマイトが爆発していたら、あなたはあの時ちりになっているものね…?」 ツバサ「血の大晦日の大爆発はあなたのダイナマイトで起きたものじゃない」
ツバサ「個人が用意できるダイナマイトの量であんな大爆発が起きるわけがないものね」
ツバサ「爆発はあなたがいた操縦室の中ではなく…外で起こったもの」
ツバサ「操縦室がシェルターで頑丈に作られていてよかったわね」
ツバサ「……なんて。全て仕組まれていたのよ」
ツバサ「あの場に“あいどる”がいたの……」
ツバサ「あなたたちが今まさに…人類を救おうとしている時に紛れ込んでいたのよ…“あいどる”は」
ツバサ「“あいどる”はまんまと警察や自衛隊を欺き…ウィルスをばらまいてパニックにさせた…!」
ツバサ「2035年に自分の影武者を暗殺させた…」
ツバサ「世界中が注目するお葬式をアキバドームでして…そこで復活した」
ツバサ「彼女は悲劇の主人公……いや、神になった」
ツバサ「それからはもっと強力なウィルスを作って世界中の人間を殺した!」
ツバサ「そして世界大統領……彼女は暴走を続けている……」
女性シンガー「………」 ツバサ「……もうダメ、終わりよ」
ツバサ「彼女はやる事が無くなった……。もう後は本当に人類を滅ぼすしかやる事がない……」
ツバサ「お願い……“あいどる”を殺して」
ツバサ「殺してくれないなら……あなたを殺すわッッ!!」スチャッ
女性シンガー「……」
ツバサ「〜〜〜!!」ブルブルッ…
女性シンガー「……」
女性シンガー「……本当に、落ちましたね……」
ツバサ「……は?」
女性シンガー「……全部他人のせいにして。それって人としてどうなのかなって……」
ツバサ「な、何よ……あなたに何が……あなたに何がわかるのッッ!!!」
女性シンガー「……本当に寂しいです」 女性シンガー「原因は本当に“あいどる”だけなんですか?」
女性シンガー「昔のツバサさんなら逃げずに立ち向かって…決して人に頼る事なく…自分でカタをつけてたはずです」
ツバサ「……!!」
女性シンガー「……本当に怖いものって何だと思いますか?」
ツバサ「……怖いもの?」
女性シンガー「銃ですか?ロボットですか?ウィルスですか?」
女性シンガー「……いや、違います」
女性シンガー「本当に怖いのは……逃げる事です」
ツバサ「逃げる事……?」
女性シンガー「今、向けられてる銃だって私…全然怖くなんてありません」
女性シンガー「……今のツバサさんは少し前の私と同じです」
女性シンガー「真実から目を背けて逃げちゃダメ…」
女性シンガー「……そうですよ」
女性シンガー「私は」
女性シンガー「」サッ
ツバサ「………」
穂乃果「高坂穂乃果です」
第7章「舞い戻る伝説」-完- おつおつ
一から読み直してるのにあいどるの正体の予想すらつかんな…撃たれたのか影武者ならその直前の絵里との会話も当てにしないほうがいいのかな 穂乃果達がこの時点で43とか?
秋穂がハタチだっけ >>808
(満年齢) 過去スレよりコピペ
高坂穂乃果(44)
南 ことり(44)
園田 海未(44)
西木野真姫(44)
星空 凛(43)
小泉 花陽(43)
矢澤 にこ(46)
東條 希(46)
絢瀬 絵里(45)
高海 千歌(35)
渡辺 曜(35)
桜内 梨子(34)
国木田花丸(33)
黒澤ルビィ(33)
津島 善子(34)
黒澤ダイヤ(35)
松浦 果南(35)
小原 鞠莉(36)
高坂 秋穂(20)
高坂 雪穂(42)
矢澤こころ(37)
矢澤ここあ(36)
矢澤虎太郎(33)
鹿角 聖良(35)
鹿角 理亞(33)
公 野(64)
ハターキ (51)
ム ロ タ(47)
“あいどる” (44)
綺羅ツバサ(46)
統堂英玲奈(46)
優木あんじゅ(46) 正直実写も出来は微妙だったけどエンディングで全てが許された感ある 第8章「希望の唄」
・・・2019年の大晦日…いや、違う…2020年の午前0時。
あの大爆発に巻き込まれて、操縦室ごとどこか遠くへ飛ばされた。
奇跡的に命は助かった。
けど、記憶はどうにもならなかった…。
記憶を無くして、自分の名前を…自分が高坂穂乃果だって事さえ忘れて…。
記憶が無くなってるっていう自覚はあったけど、取り戻そうとはしませんでした。
取り戻したくない。そう思っている自分がいたんです。
そのあとは…日本中を彷徨いました…。
一度は東京にも行きました…でも。
東京に行ったら怖くなって…震えと嗚咽が…。
その時、直感しました。自分は得体の知れない何かに怯えてるんだって。そう思って、すぐに東京を離れました。 ある日のことです。私は…かろうじて映るボロボロのテレビを見てました。
その内容は“あいどる”のお葬式。
理由は分からない。けど、何故だかそれを見て…心のどこかでホッとしている自分がいて…つい笑みが溢れた。
でも…。
“あいどる”は生き返った。
私は心底怯えて、ただブルブル震えていることしか出来なかったんです。
数日後、世界中にウィルスがばら撒かれたというニュースを見た。
その時に、2019年の大晦日の映像も流れた。
・・・記憶が戻った。 全部、鮮明に思い出した。
私は逃げた。とにかく東京から離れるように。
北へ…出来るだけ遠くへ。
でも、いつしか逃げきれなくなった。
自分の心の中で迷いがあったから。
本当に逃げてていいの?って誰かが私に囁くんです。
・・・もうあんな残酷で悲惨な光景を見たくない。
だから、私はもう戦えない。そう思いました。
いつしか、考えることさえ疲れた私は…自ら命を絶とうとしていました。 ・・・でも、死ねなかった。
お父さん、お母さん、雪穂、海未ちゃん、ことりちゃん、μ'sのみんな…。そして、秋穂…。
死ぬ間際、みんなの顔が頭の中に浮かんだんです。
その時に…また誰かが本当に逃げていいの?って私に聞いてきたんです。
・・・決めたよ、私はもう逃げないって言ったら
そっか…良かった!って屈託のない笑顔で言ってくるんです。
私が決心したら、その子の姿が見えるようになったんです。
その子は…。拳を握って、ファイトだよ!…って。私に言いました。
結局、人の本質って変わらないんだなって。
・・・私はもう真実から目を背けたりしない。自分でやると言った事はやり遂げてみせるって…決めたんです。 ツバサ「………」
穂乃果「……だから、私のやる事は復讐じゃない」
穂乃果「みんなを守る事なんです」
穂乃果「……私、ツバサさんたちに憧れてスクールアイドルを始めたんです」
ツバサ「………」
穂乃果「だから、こんなのおかしいんです」
ツバサ「こんな…?どういうこと…?」
穂乃果「……私が救世主なんて褒めそやされて、ツバサさんたちがヒール呼ばわりされる」
ツバサ「わ…私は別にそれでも…」
穂乃果「」スタスタ
ツバサ「!」
ツバサ「こ、来ないで!」スチャッ 穂乃果「……まだ、やり直せるんです」
ツバサ「……っ」
穂乃果「だから、またいつか…A-RISEのライブ…見せて欲しいです!」
ツバサ「……!」
ツバサ「……どうなっても、知らないわよ」
穂乃果「私、信じてます」
穂乃果「みんなで手を取り合えば、どこまでだって行ける…どんな夢だって叶えられるんです」
ツバサ「………」
穂乃果「……待ってます」クルッ
スタスタスタ…
ツバサ「………」
ツバサ「はぁ…」
ツバサ「…バカな子ね」 千歌「はぁ〜……」
千歌「……穂乃果さん、遅いなぁ」
ザッザッ…
千歌「!」
穂乃果「」スタスタ
千歌「穂乃果さんっ!ホッ…良かったぁ…生きてた…」
穂乃果「……ねぇ。秋穂はいい子に育った?」
千歌「え?」
千歌「あっ…は、はい!」
千歌「あははっ…!やっぱり穂乃果さんだっ!」
穂乃果「聞いていい?あなたはなんで東京に帰りたいの?」
千歌「千歌です。高海千歌!」
穂乃果「え?……あぁ、名前……。そっか、千歌ちゃん、千歌ちゃんだね」
千歌「〜〜〜っっ!!」
千歌「やったぁー!穂乃果さんに名前で呼ばれたよ〜!」
穂乃果「……たはは」 千歌「……私、東京に仲間を待たせてるんです」
穂乃果「そっか…。私と似たような感じだね」
穂乃果「……じゃあ、そろそろ約束を果たしに行こっかな」
千歌「約束って…ゲートを通る前にも言ってましたよね?」
千歌「確か、絶対に帰るって…」
千歌「誰としたんですか?」
ブルルン!
穂乃果「……秋穂だよっ」
穂乃果「じゃ、私行くね」
ブルルルルンッッ!
千歌「あっ!ちょっと穂乃果さん!!」
千歌「ま、待ってください!私もついて行きますよ〜!」
千歌「待ってくださいってば!穂乃果さ〜ん…!」 ・
・
・
秋穂「みんな集まって!!」
男達「ん?」
絵里「………」
ゾロゾロ…
男A「どうしたんですか?秋穂さん」
秋穂「……みんなに、聞いて欲しいことがあるの」
男B「もしかして、8月3日の新しい作戦指令ですか!?」
男C「秋穂さんの命令なら俺たち、たとえ火の中水の中!」
男D「そうっす!どこにでも突っ込みます!」
秋穂「……ちがうの」
男達「え?」
秋穂「ごめんね……みんな、本当にごめん……」 秋穂「みんなには色々やってもらった…」
秋穂「危険な目に遭いながら武器を集めたり…」
秋穂「膨大な時間をかけて作戦を練ったり…」
秋穂「……みんなが8月3日を生き甲斐にしてきたのは私が1番分かってる」
秋穂「家族や恋人や親友を殺されて……復讐をしたい気持ちもよくわかる……でも」
秋穂「……っ。でも」
絵里「……秋穂」
秋穂「うん…」
秋穂「…8月3日の武装蜂起は…中止します」
秋穂「……ごめんなさい」ペコッ
男達「………」
秋穂「ホントにごめん……」 男D「水臭いですよ秋穂さん」
秋穂「えっ…?」
男B「そうですよ、謝ることなんてない」
男E「秋穂さん、俺たちのリーダーじゃないっすか」
男F「そうだよ。そもそも俺たち、秋穂さんがいなかったらここまでやってこれなかったんだしな」
男A「……そうだな。それにリーダーの命令は絶対だ」
男O「みんな!文句ないよな!」
男達「おう!!!!!!」
秋穂「みんな……」
秋穂「……ありがとう」
絵里「……ウフッ」 ジリリリリリリリンッ!
秋穂「!?」
絵里「なに?」
男Z「侵入者ですっ!」
男A「何奴だ!?」
男Z「親衛隊です!」
秋穂「……っ」
男A「親衛隊のクソどもが!秋穂さん、俺たちは行きますよ!」
男A「行くぞ!お前ら!」
オーーーウ!!!!!
絵里「あなた達まちな…!」
秋穂「待って!!!」
絵里「…ッ!」 男A「秋穂さん…?」
秋穂「私が……出る」
男B「なに言ってんすか秋穂さん!」
秋穂「あなた達が出れば…奴らの思う壺。私なら…」
男C「ダメっすよ秋穂さん!」
『氷の女王一派に告ぐ!無駄な抵抗はやめろ!氷の女王が投降すれば攻撃は加えない!』
『氷の女王が投降すれば他のメンバーは見逃してやる!』
秋穂「……らしいわ」
男D「行かないでください秋穂さん!あなたが行ったら、それこそ奴らの思う壺だ!」
男E「そうだ!秋穂さんを渡すわけにはいかない!」
絵里「……あなた達さっき言ってたじゃない。リーダーの命令は絶対って」
絵里「少しは秋穂の気持ちを汲んであげたらどうなの?」
男達「…っ。それは…」 秋穂「……みんなは脱出口から逃げて」
秋穂「私が時間を稼ぐから」
男P「秋穂さん…」
秋穂「命が危ないと思ったら一目散に逃げないとダメなの…」
秋穂「そうだよね?絵里おばさん」
絵里「……えぇ」
男A「秋穂さん…」
秋穂「……みんな、あとで合流しよう」
秋穂「」ダダッ!
男B「秋穂さんっ!!」
絵里「あなた達は行きなさい、秋穂は私に任せて」ダッ
男C「…くっ」
男A「ちっ…!行くぞ、お前ら…!」
男B「そうだ…!秋穂さんの行動を無駄にするな…!」 親衛隊隊長「突撃ーッッ!」
ガシャアアン!
ダダダダダッ!
秋穂「………」
絵里「………」
親衛隊A「氷の女王、発見!」
親衛隊B「……むっ!こいつは!」
親衛隊隊長「どうした?」
絵里「………」
親衛隊隊長「テロリストの絢瀬絵里…!」
親衛隊隊長「これはこれは…思いがけない収穫」 親衛隊隊長「ターゲット2名を確保し…逃走した反逆者を殲滅せよ!」
秋穂「……やっぱり、嘘だったんだ」
親衛隊隊長「当たり前だ。貴様さえこちらに渡れば残りの奴らなどどうでもいい」
秋穂「私、嘘つきが大嫌いなの」
秋穂「嘘つきには…それ相応の罰がないとダメだよね」
親衛隊隊長「どういうことだ…?」
秋穂「このアジトのあちこちに爆弾が設置されてるわ」
親衛隊隊長「なに!?」
秋穂「それを爆発させるスイッチを持ってるのはあたし…」スッ
秋穂「あんた達が彼らを追うなら…私は躊躇わずこのスイッチを押すわ」
親衛隊隊長「……くっ!」 〜愛民党総本部〜
秋穂「絵里おばさん…大丈夫?」
絵里「ふふ…どうしたの急に?」
秋穂「絵里おばさんも彼らと一緒に逃げてれば…」
絵里「別に…私はただの引率よ」
秋穂「また、そんなこと言って…」
親衛隊A「さっさと歩け!」
ドスッ!
絵里「グッ…カハッ…!」
秋穂「!!」
秋穂「ちょっと!!なにすんのよ!!」
絵里「大丈夫…!」
絵里「秋穂…大丈夫だから…ゲホッ」
秋穂「…っ」 親衛隊隊長「」ピタッ
親衛隊隊長「ここから先は高坂秋穂1人で来るようにとのお達しだ」
親衛隊隊長「貴様はその女を地下へ」
親衛隊A「はっ!」
秋穂「絵里おばさん…」
絵里「私のことは気にしなくていいわ、大丈夫だから…」
親衛隊B「さぁ来い」
絵里「……」スタスタ
秋穂「……」
親衛隊隊長「手錠を外してやれ」
親衛隊C「はっ!」
ガチャリ…
秋穂「…つっ」 親衛隊隊長「ついて来い」
秋穂「……」
スタスタ…
あんじゅ「あら?あらあら!この子があの高坂穂乃果さんの姪っ子?」
英玲奈「“あいどる”のご息女だな」
親衛隊隊長「あんじゅ様、英玲奈様、左様でございます」
秋穂「………」
あんじゅ「へぇ〜…中々可愛らしい子…」ジッ
秋穂「(近い……)」
あんじゅ「……ふぅん♪」
あんじゅ「」ベロンッ
秋穂「いっ……!?」
秋穂「な、何してるのよッ!」
あんじゅ「あはっ♪可愛いリアクション♡」
秋穂「くっ…汚らしい…!」フキフキッ 英玲奈「あんじゅ、遊びが過ぎるぞ」
英玲奈「いくら“あいどる”に贔屓されていると言えど、頬を舐めるなど…」
英玲奈「知れたらただではすまないぞ」
あんじゅ「…ねぇ、英玲奈…この子にアレを持たせたら面白いんじゃない?」
英玲奈「話を聞いていたのか?」
あんじゅ「出して」
英玲奈「……はぁ」スッ
あんじゅ「」パシッ
あんじゅ「それじゃ!姪っ子ちゃん、頑張ってね♡」
ポンポンッ
秋穂「〜〜っ!(鬱陶しい…!)」
スッ
秋穂「!!」
あんじゅ「うふっ…♪」
あんじゅ「じゃあ、みんなご苦労様〜♡」
英玲奈「私たちはこれで」
親衛隊隊長「はっ!」
秋穂「(今、何か…ポケットに入れられた…?)」
秋穂「(この感触…拳銃?)」
秋穂「なんで……あいつらが……?」 ・
・
・
親衛隊A「ここだ。大人しくしてろよ」
囚人達「ザワザワッ… 」
絵里「……私も牢獄に入れられるのは初めてじゃないけど、こんな大人数と一緒なのは初めてだわ」
親衛隊A「ごちゃごちゃ言うなっ!」
おばあさん「ゴホッゴホッ…」
絵里「そこのおばあさん…体調が悪そうだけど大丈夫なの?」
親衛隊A「黙って入れ!」
ドンッ
絵里「…ッ!」ドサッ
親衛隊A「ふんっ…」
ガチャリ… 絵里「んもぅ…いったいわね…」
おばあさん「お姉ちゃん…大丈夫かい?」
絵里「ありがとうございます…平気です」
青年「お姉さんはなんでここに?」
絵里「あなた達と変わらないと思うわ。逆恨みみたいなものね」
青年「あははは…」
「絵里お姉ちゃん?」
絵里「え?」
「やっぱり絵里お姉ちゃんだ。僕だよ」
虎太郎「虎太郎だよ」
絵里「え…?こ、虎太郎くん…!?」 ・
・
・
ブォンブォンブォン…
秋穂「246、247、248、249、250、251…」
秋穂「…何階あるのよ」
秋穂「どこまで行くの、これ?」
親衛隊隊長「…」
秋穂「……260、261……」
……チーン
親衛隊隊長「」サッ
秋穂「……?」
ガァァ…
秋穂「……ッ!!」
“あいどる”「…やぁ」
“あいどる”「会いたかったよ、秋穂」
秋穂「……ゴクッ」 コツ…コツ…
“あいどる”「ほら」
“あいどる”「ここ、座って」
秋穂「………」スッ
“あいどる”「さぁ、食べて」
秋穂「……なにこれ」
“あいどる”「わかるでしょ?おまんじゅう。君の好物だよ」
秋穂「…ッ!」
ガンッ!
秋穂「私を知る人間何人を拷問にかけてソレを聞き出したの!?」
“あいどる”「……そんな事をしなくたってわかるよ。私は神である前にあなたの親なんだから」
秋穂「……うるさい」
秋穂「私の親はお母さんだけ……」
秋穂「あなたを親と思ったことなんて一度だってないッ!」 “あいどる”「……8月3日の武装蜂起、中止するそうだね」
“あいどる”「良かったよ。親子ゲンカなんて思われちゃみっともないもんね」
秋穂「………」
“あいどる”「……近々人類は滅亡するだろう」
“あいどる”「君にもわかるよね?なんたって神の子なんだから」
秋穂「……滅亡なんてするわけない」
“あいどる”「本当にそう言い切れるの?」
秋穂「……滅亡なんてしない……絶対させないッ!」
“あいどる”「今にわかるよ…」 秋穂「なにが神の子よ…」
秋穂「ふざけないで……ふざけないでっ!」
秋穂「穂乃果おばちゃんも海未おばちゃんも絵里おばさんも花陽おばさんも…みんな私を本当の娘みたいに可愛がってくれた…」
秋穂「あの人たちの娘だったらどんなに良かったか…」
秋穂「……あなたの子供に産まれて良かったと思ったことなんて一度もない」
秋穂「私は神の子なんかじゃない……」
秋穂「人類史上最悪の人間の娘よッッ…!!」
ドンッッ!
“あいどる”「………」
秋穂「ハァ…ハァ…」 秋穂「8月3日…」
秋穂「どこにウィルスを撒くの…?」
“あいどる”「……さぁね」
秋穂「みんなどこに逃げれば助かるの…?」
“あいどる”「……さぁね」
“あいどる”「正直…私自身、今度のウィルスにどれほどの殺傷力があるのかわかってない」
“あいどる”「それに…いつの時代も出来事というのは神の気まぐれから起きるものだよ」
“あいどる”「だから…私の気まぐれで無事な場所もあるかもしれないね」
秋穂「…ッ!もうやめて!!」ガタッ
秋穂「」スチャッ
“あいどる”「………」 ・
・
・
スタスタ
海未「秋穂と絵里が捕まったみたいです…。助けないと」
花陽「あの2人が…本当なのかな」
海未「逃げてきた男性が言っていました。金髪の絵里という人物と自分たちのリーダーが拐われた…と」
海未「絵里は秋穂に会いに行ったと…曜という絵里の連れ人が言っていましたし、間違いありません」
花陽「……そっか」
ピタッ
花陽「……ここから上に行けば“あいどるタワー”の駐車場に出られるよ」
花陽「そこで凛ちゃんが待ってる」
海未「花陽はどうするんですか?」
花陽「私は…やる事があるから、気にしないで」タッタッタッ
海未「………」 海未「はぁ…はぁ…」
凛「おーい!海未ちゃん!」
海未「凛!久しぶりですね…無事でなによりです…」
凛「海未ちゃんもね!」
ブチッ…プツンッ…
海未「!」
海未「停電…?」
凛「きっとかよちんがやったんだにゃ!」
凛「急ごう海未ちゃん!凛たちは早く秋穂ちゃんを!」
海未「花陽が…?おかしいです…いくらなんでも早すぎます」
凛「海未ちゃん早くっ!」
海未「凛、秋穂をお願いします!」ダダッ
凛「え!?」
凛「海未ちゃんッ!どこ行くの!?」
海未「私は花陽のところに!そちらはお願いしますね!」ダダダッ
凛「………」ポカーン
凛「…んにゃぁ…」 ・
・
・
ブォンブォンブォン…
秋穂「絵里おばさんのところまで案内して」
“あいどる”「……秋穂、アキバドームに行った事はある?」
秋穂「……なに?」
“あいどる”「素敵なところなんだ」
“あいどる”「μ'sの努力の結晶だよ」
“あいどる”「彼女たちがいたから、今のスクールアイドルはあそこで踊って歌う事が出来るんだよ」
“あいどる”「私はあそこが好き」
秋穂「…あなたはなにを考えているの?」
秋穂「μ'sが好きなの?嫌いなの?」
秋穂「本当に人を殺してなにも感じないの?」
“あいどる”「…質問はひとつにしてくれないかな」
“あいどる”「いくら最愛の娘とはいえ、一気に回答は出来ないからね」
秋穂「……いや、回答なんかいらない。そんなの無くたってわかる……」
秋穂「異常よ。あなたは」
“あいどる”「………」 “あいどる”「どんな時代も天才と謳われる人物は奇人や変人と言われるのが相場なのさ」
“あいどる”「天才でさえその言われよう」
“あいどる”「神ともなれば…その存在を異常と思うのも不思議ではない」
“あいどる”「今はまだ秋穂にはわからないかも知れない」
“あいどる”「でも…君もいつかその境地に辿り着く。神の子なんだから」
秋穂「違う…あなたはただの殺戮者…」
秋穂「……本当の天才って言うのは」
秋穂「不可能と言われる事を成し遂げたり……歌で人を魅了したり……行けないと思ってた場所へ手を引っ張って連れて行ってくれる人のこと」
“あいどる”「それは他人の協力があってこそだよね」
秋穂「……μ'sはあなたとは違う」
“あいどる”「……本当に穂乃果ちゃんが好きだね」
“あいどる”「……昔の人たちもみんなそうだった」
“あいどる”「事あるごとに穂乃果…穂乃果…穂乃果って」
“あいどる”「……いいなぁ」
秋穂「………」 スタスタ…
秋穂「……」
スチャッ スチャッ スチャッ スチャッ スチャッ
秋穂「!」
親衛隊「」スチャ
あんじゅ&英玲奈「……」
秋穂「……どいて!」
あんじゅ「いくら“あいどる”の子供だからって…やっていい事と悪い事の違いもわからないのかしらぁ?」
あんじゅ「親に銃を向けるなんて…」
秋穂「こんなやつ…親でもなんでもない!」
秋穂「殺したってバチなんか当たらない!むしろ…殺した方がきっと…!」
あんじゅ「そう…」 あんじゅ「なら撃ってみなさい」
秋穂「!?」
“あいどる”「……」
秋穂「……?」
秋穂「……!」ハッ
あんじゅ「うふっ♡正解!その銃に弾は入ってないの♪」
秋穂「ぐっ……」
“あいどる”「……彼女は私に銃を向けた」
“あいどる”「だから“退部”だ」
秋穂「…ッ!」
英玲奈「……“あいどる”、お言葉ですが高坂秋穂は“あいどる”のご息女……いくらなんでも」
“あいどる”「娘?関係ない」
英玲奈「しかし…」
“あいどる”「関 係 な い」
英玲奈「……申し訳ありません。失言でした」 あんじゅ「発砲準備」
親衛隊「発砲準備!」
スチャッ スチャッ スチャッ スチャッ スチャッ
“あいどる”「いや、待って」
“あいどる”「彼女を8月3日の主役にしよう」
秋穂「は…?」
“あいどる”「穂乃果の姪。人類を滅亡に追いやる史上最悪の女テロリスト」
あんじゅ「なぁるほどぉ〜…♪」
あんじゅ「なら、行ってもいいわ。姪っ子ちゃん♡」
秋穂「……っ」
秋穂「……ッッ!」ダッ!
“あいどる”「秋穂」
秋穂「」ピタッ
秋穂「……」クルッ
“あいどる”「わかる?私こそ…」
“あいどる”「私こそが真のアイドルなんだよ」
秋穂「……」クルッ
ダダダッ… 秋穂「」タッタッタッ
秋穂「……」ピタッ
秋穂「」ガクッ
秋穂「ッッ…」ジワッ…
秋穂「うぅっ…うわぁぁぁん…!!!」
…タッタッタッ
凛「秋穂ちゃんッ!!」
秋穂「エッ…エッ…凛…おばちゃん…?グスッ…」
凛「どうしたの!?何かされた?いや…怪我はない!?」
秋穂「グスッ…凛おばちゃん…!」ダキッ
凛「んにゃ…!」
秋穂「撃てなかった……!私……撃てなかったよおぉ……!」
凛「……うん、うん……」ギュッ…
秋穂「なんで…グスッ…なんでぇ…」
凛「とにかく……ここは危険だにゃ」
凛「行こう」
秋穂「グスッ…エグッ…うん…」 このssのせいで一足先に映画を観ちまったぜ
さてこちらはどうなることやら ・
・
・
千歌「釣れないですね〜…」
穂乃果「そうだねぇ…」
千歌「……ってちっがーう!」
穂乃果「へ?どうしたの急に…」
千歌「なんで私たち釣りなんてやってるんですか!」
穂乃果「だってお腹減って…」
千歌「早く東京に行かないとっ!」
穂乃果「まぁまぁ。お腹が減ってはって言うでしょ?」
穂乃果「……ずっと気を張ってると疲れちゃうこともあるからね」
千歌「そ、そうですかねぇ…」 千歌「」チョキンチョキン
穂乃果「え…?ハサミ?」
穂乃果「何するつもりなの?」
千歌「ふふふ…。髪、切りましょう!」
穂乃果「ふぇ?な、なんで…?」
千歌「穂乃果さんと言えばセミロングですよっ!」
千歌「それに、そんなに長いと秋穂ちゃんが気づいてくれないかも…!」
穂乃果「えぇ…気づくと思うけどなぁ…」
千歌「いいからいいから!切りましょう!」
千歌「さっ!帽子取ってください!」
穂乃果「たはは…(グイグイ来る子だなぁ〜…)」 チョキン…チョキン…
千歌「きっと…穂乃果さんに会えたら秋穂ちゃん喜びますよ…」
穂乃果「…秋穂の面倒は今…誰が見てるんだろう…」
千歌「海未さんだと思いますよ。いつだか秋穂ちゃんが言ってました…。海未おばちゃんには迷惑かけたくないって…」
穂乃果「そっか…海未ちゃんが」
穂乃果「ぷっ…。それにしても海未おばちゃんかぁ。海未ちゃんもそんな歳になったんだねぇ」
千歌「穂乃果さんも海未さんと同い年じゃないですか」チョキンチョキン
穂乃果「あっ…そっか」
千歌「……秋穂ちゃん、ずっと穂乃果さんに会いたがってましたよ」
穂乃果「……私は」
穂乃果「あの子が思ってるような人間じゃないんだけどなぁ……」
千歌「え?」
穂乃果「………」 穂乃果「あっ…ねぇねぇ、アレ知ってる?」
千歌「アレ?って…あそこに生えてるアレの事ですか?」
穂乃果「そう。それ」
千歌「うーん?なんだろう…アスパラガスかな?」
穂乃果「うーうん。シオデって言うんだよ」
千歌「へぇ〜…」
穂乃果「あのね、シオデにも花言葉があるんだよ」
千歌「そうなんですか?」
穂乃果「うん。味わい深い…ってね」
千歌「味わい深い?美味しいって事ですか?」
穂乃果「じゃなくて、花の色は地味でも面白いって事だよ」
千歌「穂乃果さん…詳しいですねー!」
穂乃果「……うん。昔、教えてもらったんだ」
穂乃果「あっ…もう一つ花言葉があるんだった」
千歌「2つもあるんですか?」
千歌「じゃあ…そのもう一つは?」
穂乃果「もう一つは…」
穂乃果「………」
穂乃果「あなたを離したくない」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
チョキン!
千歌「ふぅ…!終わりましたよ!」
千歌「うーん。我ながら上手く切れてます」
穂乃果「この歳でこの髪型って…大丈夫かな?」
千歌「大丈夫ですよ!海未さんにしたって穂乃果さんにしたって、昔と全然変わってないですから!」
穂乃果「えへへ…ありがと」
穂乃果「…さてと」
穂乃果「よしっ…じゃあ行こうか」
千歌「え…もう行くんですか?」
穂乃果「…何か他にやる事が?」
千歌「釣りは…?」
穂乃果「……うん。確かに、よく考えたら、私たちの獲物は魚じゃなかったよね」
穂乃果「乗って」
ブルンッ!
千歌「は、はいっ!」 ギュッ
ブルルルーンッ!! ・
・
・
ブルルンッ…
ことり「ずいぶん山奥まで来ましたね…」
ことり「神様…いったいどこに向かってるんですか?」
公野「行けばわかるよ」
ことり「私、ちょっと車酔いがぁ…」
公野「えぇ…」
公野「頑張りなよ。もうちょっとで着くから」 キッ…
公野「…ほら、着いたよ」
ことり「ここは…」
ことり「…小屋?」
ガチャ…スタッ…
ことり「ここに何が…?」
ブウウゥン…
ことり「え?」
キッ…
ことり「こんなところへ私たち以外に車で…?」
ガチャ…
真姫「ふぅ……。えっ……ことり!?」
ことり「ま、真姫ちゃんっ!何でこんな所に?」
真姫「それはこっちのセリフよ…って、あなた…」
公野「連れて来ちゃった」
真姫「連れて来ちゃった…じゃないのよ」 ルビィ「あ、あの!」
ことり「…?どうしたのっ?」
ルビィ「あ、あの……///」カァァ…
ことり「えっとぉ…真姫ちゃん、この子は…?」
真姫「私の助手よ。ほら、ルビィ…自己紹介なさい」
ルビィ「は、初めましてっ!黒澤ルビィです!よろしくお願いしますっ!」
ことり「そっか、真姫ちゃんの助手さんなんだ♪」
ことり「私は南ことりだよ。よろしくね♪」
公野「……さてと。自己紹介はその辺にしてさ」
公野「さっそく中に入ろうか」
ことり「神様…それで、ここには何があるんですか?」
真姫「え?ことり…あなた、知らないでここへ来たの?」
ことり「う、うん…神様に言われるがままついて来ちゃって…」
真姫「あなた…」キッ
公野「……遅かれ早かれ知ることになるんだし」
真姫「……まったく」
ルビィ「こ、ここは穂乃果さんの妹さんの研究所なんですっ!」
ことり「!…雪穂ちゃんの…?」
ことり「真姫ちゃん…ほんと?」
真姫「…えぇ。小さいけどね」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ゴソゴソ…
真姫「この防護服は必ず着て。じゃないと…」
ことり「ねぇ、真姫ちゃん」
真姫「なに?」
ことり「雪穂ちゃんはここで何をしてるの?」
真姫「…新型ワクチンの開発よ」
ことり「ワクチン…」
真姫「2035年、“あいどる”が世界中にウィルスをばらまいた時、既に私たちの手でワクチンを完成させていたの」
真姫「……でも、完璧じゃなかった」
真姫「100人に1人効果が出ればいいところの不良品だったわ……。その後、雪穂ちゃんはこの山奥に1人でこもってワクチンを……」
ことり「……そうなんだ」 スタスタ…
真姫「雪穂ちゃん!真姫よ!」
・・・シーン
真姫「……妙ね、返事がないわ」
ことり「どこかに出かけちゃったのかな?」
真姫「雪穂ちゃんの方から来てほしいって連絡があったのよ?そんなはずは…」
ことり「なら、どこに…」
公野「……こっちだね」スタスタ
ことり「あっ!神様!」
真姫「……そっちは確か実験室……ハッ……まさかっ!!」 ダダダッ
真姫「雪穂ちゃんっ!」
雪穂「……真姫さん、来てくれたんですね」
真姫「何…してるの…雪穂ちゃん…?」
ことり「真姫ちゃん!雪穂ちゃん…防護服着てないよ!いいの!?」
真姫「ダメに決まってるでしょ…何してるのよ…雪穂ちゃん!」
雪穂「ことりさんも…来てくれたんですか…久しぶりですね…」
ことり「雪穂ちゃん…」
真姫「雪穂ちゃん!そこから出なさいっ!」
ルビィ「真姫さん、ダメです…!向こうからじゃないと開きません…」
真姫「…ッッ!」 雪穂「真姫さん…“あいどる”が8月3日に使うであろうウィルスを入手しました」
雪穂「そして…そのワクチンも完成しました」
真姫「!」
雪穂「ただ…このワクチンを試したいというクライアントはもういません…見つける時間もないので…。だから」
雪穂「私が…試します」
ルビィ「そ…それって…人体実験!?」
ことり「雪穂ちゃんダメだよっ!危険すぎる!」
雪穂「“あいどる”は今度のウィルスのワクチンは私には開発出来ないと高を括っています……」
雪穂「もう、ワクチンは投与しました」
雪穂「そして、ウィルスを…」
プシャッ!
真姫「……!」
雪穂「真姫さん…もし、このワクチンがダメなら…もう8月3日には間に合いません」
雪穂「これが、最後の試作品…」
ことり「…雪穂ちゃん」
雪穂「私が死んだら“あいどる”の勝ち」
雪穂「生きれば…人類の勝ち」 雪穂「……ハァ……ハァ」
真姫「…何時間持てば有効なの?」
雪穂「ゼェ…潜伏期間は…12時間…それまでに私に何も…ハァ…なければ…いけます…使えます…ハァハァ…」
公野「もう、だいぶ苦しそうだね」
雪穂「…ハァハァ、はは…もしかしたらダメかも…しれないので、その時は…ゼェ…ごめんなさい…」
ことり「ダメだよっ…雪穂ちゃん!死んじゃダメ!」
ことり「死んじゃったら…また誰かが…悲しむ…きっと」
雪穂「私も……血を噴き出して死ぬのは、ハァハァ……嫌なので……あはは……頑張ります……ゼェ」
雪穂「……もし私になにかあったら……デスクの上に“あいどる”についての資料をまとめてあるので……使ってください……」 雪穂「ハァハァ…もしかしたら…今すぐにでも…死ぬかもしれません…」
雪穂「何か聞きたいことがあれば……ゼェ……今のうちに答えます……よ、ハァハァ……なんでも答えます」
ことり「……あのね、さっきの雪穂ちゃんが死んじゃったら悲しむって話……誰のこと言ってるかわかるよねっ……?」
雪穂「……秋穂……ハァ……秋穂……ですよね……」
ことり「うん、そうだよ。だから、絶対に死んじゃダメ……」
雪穂「……ハァハァ、はい……」
雪穂「……あの……秋穂は……元気に……ハァ……してますか……?」
ことり「……私もしばらく会えてないけど、元気な子だよ?」
ことり「元気すぎるっていうか……」
雪穂「ハァハァ……あはは……まるで……お姉ちゃん……みたい……ですね……ゼェ……」 公野「……デリカシーのない質問で悪いんだけど」
雪穂「神様にも……わからないこと……あるんですね」
公野「まぁね……」
雪穂「大丈夫ですよ……?なんでも答えるって言ったので……」
公野「……それじゃあ。秋穂の片親は本当に“あいどる”なの?」
雪穂「………」コクッ
雪穂「そうです……」
ことり「雪穂ちゃん…“あいどる”は誰なの…?」
雪穂「………いろいろと、薬の副作用で記憶が曖昧なんですが………ハァハァ………ゲホッ」
雪穂「“あいどる”は……」
真姫「………」 雪穂「……A-RISEのツバサだと思います」
真姫「……!!」
ことり「うそ……」
公野「……最近聞いた話だと、A-RISEのメンバー3人のうち……ツバサだけ、地方へ飛ばされたらしいわ」
公野「あんじゅと英玲奈は今も“あいどる”の右腕として働いてるって」
公野「冷静に考えてみると、同じ山田派閥だったA-RISEで……ツバサだけ異動はおかしい気がするわね」
真姫「……本当にツバサなの?」
雪穂「はい……今まで黙ってて……ごめんなさい真姫さん……ハァハァ」
雪穂「……私の記憶では微かに……ツバサの……顔が……」
雪穂「もしかしたら……違うかもですけど……ハァハァ」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
雪穂「………ハァハァ」
ルビィ「あと30分!雪穂さん、頑張ってくださいっ!」
雪穂「はは……ありが……とう……」
雪穂「あの……誰か……」
真姫「なに…?どうしたの…?」
雪穂「……秋穂に……ハァハァ……なんでも諦めないで……最後まで頑張るんだよって……伝えといて……ゼェ……ください」
ことり「雪穂ちゃん……」
ことり「……それは雪穂ちゃんが直接伝えてあげてほしいな」
雪穂「でも…。ッッ」
雪穂「オエッ…ゲホッゲホッゲホッ!!!ガバッッ!!」
ことり「雪穂ちゃんっ!」
ルビィ「ッッ…。ルビィ!もう見てられない!中に行ってきます!」
雪穂「ダメッ!!」
ルビィ「!」
雪穂「絶対入っちゃ……ゼェゼェ……ダメ」
真姫「……ルビィ、向こうからじゃないと開かないって言ったのはあなたでしょ?」
真姫「もう見てることしかないのよ…私たちは」
ルビィ「……はい」
雪穂「大丈夫だよ……ルビィちゃん……ちょっと咳き込んだだけ……ワクチンの副作用だから……たぶん」
ことり「たぶんって…雪穂ちゃん…」 ことり「まだ、雪穂ちゃんと一回もお酒飲んだことないよね」
雪穂「え……?あは……そ、そうですね……」
ことり「私、雪穂ちゃんとお酒……飲みたいなっ」
雪穂「……はい、私も……一緒に、飲みたいです」
真姫「……実は私もないわよね」
雪穂「確かに……真姫さんとも……ないですね」
真姫「なら、今度みんなで酌み交わしましょう」
雪穂「はは……はい」 雪穂「ゲホッゲホッ、ゲッホ…!」
雪穂「……!」ツー
ルビィ「あっ…鼻血が!」
雪穂「……だいじょ……ふ……」
雪穂「あっ…」フッ
雪穂「」バタッ…
ことり「……ッッ!雪穂ちゃぁん!」
真姫「雪穂ちゃんッ!」
雪穂「………」
ことり「そんな……」ガクッ
真姫「うそ……でしょ……」
公野「……あんたたち、慌てすぎだよ」
ことり「え…?」
公野「……疲れて眠っただけ」
公野「……もう、12時間経ってる」 ・
・
・
ブゥゥゥン…
穂乃果「……んぅ?」
千歌「どうかしたんですか?」
穂乃果「いや、さっきから…何か注目を浴びてるような」
千歌「……はっ!まさか、穂乃果さんの髪切っちゃったからみんなにバレちゃったのかな……」
穂乃果「いや…私なら別にいいんだけどね…むしろ注目されてるのは…」
穂乃果「あなたかも…」
千歌「え?」
中年「おい、そこの姉ちゃん」
穂乃果「」キョロキョロ
穂乃果「私ですか?」
中年「そうだ。なぁ…あんたの後ろに乗ってるそいつの顔、ちょいと拝ましてくれねぇか?」
穂乃果「…なんで?」
中年「これだよ」ピラッ
穂乃果「」スッ
千歌「……?」
穂乃果「指名手配……逃亡警察官、高海千歌……この顔にピンと来たら親衛隊まで……」
千歌「……えっ!??」 穂乃果「……いつからこれが?」
中年「つい先日だ」
穂乃果「手配書ってこの写真の子だけ?」
中年「あぁ、そいつだけだ」
穂乃果「そっか……」
千歌「穂乃果さん…まずいですよぉ〜…!もう行っちゃいましょう…」コソコソ…
穂乃果「なら、この子が高海千歌だよ」
千歌「!?」
中年「あ?」
穂乃果「だから、この子がその指名手配の子」
千歌「ほっ…穂乃果さんッッ!?」 千歌「うぅ……酷い……酷いですよ、穂乃果さぁん」
穂乃果「………」
中年「おら!もうすぐ親衛隊が来るからなッ!この犯罪者め!」
千歌「やだよぉ…!」
タッタッタッ…
「お待たせしました!高海千歌はどこず…ですか!?」
千歌「おぉ、来た来た…」
千歌「うぅぅ……グスッ」
中年「いつまで泣いてんだ!こいつです!親衛隊さん!」
「ご協力感謝しますわ!」ビシッ
千歌「うわぁぁん!」
穂乃果「……じゃ、私は行くね」ブルルルンッ
千歌「〜〜〜ッッ!」 千歌「エグッ…グスッ…私、どこに連れて行かれるんですか…?」
「ふふふ…連れていくも何もないずら〜」
千歌「え!?…ってことはすぐに殺されて…!…ん?ずら?」
「鈍感すぎではなくて?千歌さん?」
千歌「この声…この口調…まさか!」バッ
花丸「へへ〜」
ダイヤ「うふふ…」
千歌「ダイヤさん!花丸ちゃん!」
花丸「ここまで来ればもう安心だね」
千歌「2人とも久しぶり……いや、その前に……無事で良かった……!」 千歌「というか2人ともなんで親衛隊の格好してるの?コスプレ?」
ダイヤ「千歌さんを探すためですわ」
ダイヤ「少々荒っぽい探し方になってしまいましたけど……」
花丸「ま、無事に見つかってよかったずら〜」
千歌「なんで私を探しに?」
ダイヤ「決まっているでしょう?リーダーがいないとなにも始まらない」
花丸「千歌ちゃんを迎えに来たの!」
花丸「みんな待ってる…行こう!」
千歌「みんなが……うん!行こう!」
千歌「あっ……でも、ちょっと待って!」ダッ
ダイヤ「えっ…ち、千歌さん!?」
花丸「どこ行くの!?」 ダダダッ…
千歌「はっはっ…」
千歌「…!いた…」
千歌「穂乃果さん!!」
穂乃果「……!」
千歌「……知ってて、私を差し出したんですね」
穂乃果「……うん。だって、あなたの同僚は他にもいたのに、あなただけ指名手配なんておかしいからね」
千歌「……穂乃果さん」
穂乃果「……みんなの夢が希望が……唄になったら、また会える」
穂乃果「あなたはもう叶ったね」
穂乃果「…向こうで会おう」
穂乃果「またね……千歌ちゃん」キュッ
ブゥゥゥン!
千歌「ほ、穂乃果さん…!」 タッタッタッ…
花丸「は、はぁ…もう…千歌ちゃん…急に走って…どうしたの…はぁはぁ…」
千歌「…お礼、言っとかなきゃと思って」
ダイヤ「お礼?」
千歌「うん、穂乃果さんに…」
ダイヤ「穂乃果…穂乃果さん…穂乃果さん…??」
ダイヤ「穂乃果さんッッ!?」
千歌「……また、向こうで会いましょうね」 ・
・
・
ハターキ「お呼びで?」
“あいどる”「……先生、私ね……次の曲はSF風がいいと思ってるんだ」
ハターキ「SF風ね…」
“あいどる”「強大な力で世界を震撼させる、みたいな……」
ハターキ「…考えとくよ」
梨子「……」
ハターキ「用件はそれだけかい?なら行くよ」
“あいどる”「ちょっと待って」
ハターキ「え?」
梨子「……?」
“あいどる”「君は残って」
梨子「え…」 梨子「……(どうしましょう?)」ジッ
ハターキ「……(ここは言うことを聞いときなさい)」コクッ
梨子「……(わかりました)」
ハターキ「……では、私は失礼」
バタンッ…
梨子「………」
“あいどる”「………」
“あいどる”「君は……先生のマネージャーだったよね」
梨子「は、はい…」
“あいどる”「……いいね、役割があって」
梨子「はい…?」 “あいどる”「私にも昔は役割があった。他の誰よりも認められていいはずの……役割が」
梨子「……どんな役割だったんですか?」
“あいどる”「………」
梨子「………」
“あいどる”「……ずっと、応援してたんだ」
“あいどる”「ずっと……」
梨子「応援…ですか」
“あいどる”「ずっと……」
梨子「……?」
“あいどる”「ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと」
梨子「…っ」ゾッ
“あいどる”「……しかし、虚無感っていうのはダメだね。本当に虚しくなっちゃう」 梨子「……次の曲、SFみたいにって言ってましたけど……何をする気なんですか?」
“あいどる”「……世界大統領とかさ……なってみて、やってみて初めて気づいたけど……」
“あいどる”「……向いてないね」
梨子「なら…」
“あいどる”「そうだね、飽きたし…」
“あいどる”「そろそろ終わらせよっか」
梨子「え…?」
“あいどる”「自分が信じているものが虚像だと知ったら、みんなどう思うんだろうね……」
“あいどる”「……私、知ってるよ?本当は君が先生の代わりに作曲してるんでしょ?」
梨子「」ドキッ
梨子「い、いえ…」
“あいどる”「いいんだ、別にそんなこと隠さなくたって」 “あいどる”「人には得意不得意、適材適所というものがあるんだから」
“あいどる”「……過去、君は行き詰まった時に次の選択肢があったでしょ?」
梨子「………」
“あいどる”「……私には……もう、なにも……」
“あいどる”「……だから終わり」
“あいどる”「……あの子たちのあの時の判断が正解だって、賢明だったって思い始めてる自分が嫌だよ、もう」
梨子「……いったい、何をする気なの……?」
“あいどる”「……ふふ」
“あいどる”「終わらないパーティーを終わらせるんだよ」 スタスタ…
梨子「……」
ハターキ「おかえり。早かったね」
梨子「先生……はい、まぁ……」
ハターキ「なに言われたの?」
梨子「……よくはわからなかったんですけど……とにかく、終わらせるらしいです」
ハターキ「終わらせる……ねぇ」
梨子「それと…今日の12時30分から特別放送をやるみたいです」
梨子「世界中のテレビや映画館、街頭ビジョンに映し出すそうです」
ハターキ「中途半端な時間だなぁ……それなら正午でいいのに……ちなみに今、何時だっけ?」
梨子「今は……」チラッ
梨子「……12時29分です」
ハターキ「なら、ちょうど街頭ビジョンもあることだし…見ようか」
梨子「……私、何か……嫌なの感じがします」
ハターキ「……私もだよ」
梨子「………」
ハターキ「……さて、なにを語るか」 ジジッ…ジッ…
ブオンッ…
“あいどる”『やぁ、世界中の皆さん、こんにちは』
“あいどる”『みんな覚えてるかな、2019年12月31日の血の大晦日……』
“あいどる”『そして2035年、ウィルスによって世界中でたくさんの人が死んだよね』
“あいどる”『全部、私の予想通りだったよ』
“あいどる”『なぜ予想できたかって?私が神だから?うーうん…違うよ』
“あいどる”『だって全部、私がやったことだもん』
“あいどる”『君たちに愛想を振りまいて、かまけてるのはもう飽きました』
“あいどる”『そもそも私は…彼女と一緒に何かをやりたかっただけなので』 “あいどる”『でも、どうやったって君たちは私に何かを頼む、協力を仰ぐ、助けを求めるでしょう』
“あいどる”『ウンザリです。なので私は結論付けました』
“あいどる”『この世に私は必要だけど君たちは必要ないって』
“あいどる”『神様は1週間でこの世界を作られたみたいです』
“あいどる”『なので私は…1週間でこの世界を終わりにします』
“あいどる”『殺人ウィルスを世界中に撒きます』
“あいどる”『・・・あはは』
“あいどる”『うふふ・・・』
“あいどる”『じゃあ』
“あいどる”『みんな』
“あいどる”『お疲れ様』
第8章「希望の唄」-完- ここら辺でキリがいいのとボチボチ改行出来なくなる頃合いなので次スレ立てます
諸事情により少し期間が空きますが遅くても今日から1週間以内には立てるつもりなのでよろしくお願いします
再投下が長くなって申し訳ないです
このスレが残ってればURLを貼って誘導させてもらいますので、しばしお待ちを… 大作の割に見てる奴のレス少ないなと思ったら700レス以上やってまだ再放送だったのか そういやカンナも小さい時はリボン付けてるんだよな
左結びだけど
https://i.imgur.com/qKybmpU.jpg レス数が900を超えています。1000を超えると表示できなくなるよ。