善子「UNDERTALE?」
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UNDERTALEのネタバレを含みます。ご注意ください。
数年前に埋め立てられて途中でやめていた内容を書き直して改めて投稿します。 絶対エタるよなぁ
面白そうだから完成させてから投稿してほしい
文章はメモやらwordに保存して 待つのもひとつの楽しみとしてやってるから無理せずゆっくりやってくれ
ある程度書き溜めてからでもいいし、少しずつ投下でも構わないから こういうゲームパロは8〜9割エタる
しかもこれ建てたの2回目なんだろ?なんで溜めてないんだ? 前回は埋め茸にやられて断念しただけだからな
あいつがいないなら書き溜めて一気に投下して逃げ切る必要もないし ・・・
善子「……」
さて、そろそろ。
善子「……ここまで街を歩き回って一度も姿を見なかった……ってことは」
彼女たちは、街の出口にいるに違いない。気合いを入れるのよヨハネ……大丈夫。ルビィはきっと優しい子よ。
ちょっと調子に乗りやすいだけの頑張り屋さん。ダイヤもそう言ってた……だから、信じましょう。
そう胸に決意を固め、街の出口へと歩いた。 善子「うわ、なにも見えないんだけど……」
街から出ると、ものすごく濃い霧があたりを覆っていた。
ほんの目の前、たった2m先すらよく見えない……それほどの濃い霧だ。
けれど、私は進む。こういう場所こそ、ボス戦にふさわしい。
私は確信を持って進む。
この先にルビィがいると。
そして────
「ニンゲンさん」
声がした。 「難しい気持ちについて、お話ししても……いいですか?」
パビィルスの声だ。
いいわよ、聞いてあげる。
パビィルス「……それは、ルビィと同じようにパスタを愛するひとを見つけた喜び」
……ん?
パビィルス「ルビィと同じように、パズルが得意なひとへの憧れ……」
パビィルス「かっこよくて、頭もいいひとに、かっこいいって思われたいという願い……」
パビィルス「これこそ……いまあなたが抱いてる感情ですよねっ」
んー……んんんん??
パビィルス「ルビィにはそんな気持ちはさっぱり分かりませんがっ!」
私にもわからないわよ!? パビィルス「だってルビィは、かっこよくて頭のいいイケてるルビィだもんっ」
……あほかわいい。
っ……じゃ、なくて。
パビィルス「孤独なニンゲンさん……あなたは可哀想です」
勝手に可哀想認定されたんだけど……あんた、帰ったら覚えてなさいよ!
パビィルス「でも安心です! ルビィが、あなたをひとりぼっちにはしません!」
パビィルス「このパビィルスことルビィが! あなたの、その、えっと……」
善子「?」
パビィルス「……ぅゆ……」
パビィルス「や、やっぱりこんなことダメだよ……許されないよ……」
パビィルス「ルビィはあなたの友達にはなれないよ……」
……もしかしてこの子。
パビィルス「あなたはニンゲンさん! ……だから、ルビィは捕まえなきゃいけないんだ……」 ────ダイヤの言葉を思い出す。
ダイヤズ『あの子の夢はニンゲンに会うこと……ですから、もし良ければ、会ってあげてください』
────ということは。
ルビィは、もしかして。
パビィルス「あなたを捕まえたら、ルビィのだいじなだいじな夢が叶います」
パビィルス「強くて、人気者で、有名人! ルビィはみんなに認められて、ロイヤル・ガードの一員になるんだ!」 暗転。
・パビィルスにゆくてをふさがれた!
身体がハートになる────2度目のボス戦、開始ね。
ふん、戦い方はもうわかってる。
こちらから攻撃はしないし……受けるつもりもないわ。
堕天使ヨハネはこの地底世界を抜けるまで、天使ヨハネになるのよ!
善子「ルビィ! あなたに言っておくわ……私はあなたに攻撃はしない!」
指をさしつつ宣言する。身体がハートになってるのにどうやって指をさしてるのか、なんて野暮な文句は聞かないわよ!
ビシッと指差されたパビィルスは、
パビィルス「ぅゅ……な、なるほど……戦うつもりはないんですね」
落ち着いた様子でホネ攻撃を繰り出す。
同様に私も落ち着いて回避。難しいことはない、ただの上下を通るホネの合間を縫って避けるだけのこと。 パビィルス「だったら……ルビィの有名な『青攻撃』をくらって!』
パビィルスが青いホネ攻撃を繰り出してくる。
────ふん、これの対処方法はもう知っているわ。青は止まれ……つまり動かなければ当たることはない。
私は一歩も動かず、全ての青いホネが飛び去っていくまで待った。そして高らかに宣言。
善子「その攻撃はすでに見切った! そんなんじゃこの私に傷ひとつつけられないわよ!」
パビィルス「……うふふふ」
不敵に微笑むパビィルス。
まさか、攻撃が完全に見切られて心が折れたとか……? いや、まさか早すぎ……
────その瞬間、異変が私の身体に起こった。
善子「は、えっ!? なにこれぇ!?」
私の身体────ハートが真っ青になったのだ。それと同時に身体が上から強く潰されるような力を感じ、地面に押し付けられた。 それを狙っていたかのように、ホネ攻撃が飛んでくる。これは青い攻撃ではない────通常攻撃ということは、避けなきゃ……ッ!
善子「っぐ……!!」
……避けきれなかった。ジャンプしたのに……遅かった。
パビィルス「ニンゲンさん! これであなたは青くなりました!」
パビィルス「ふっふっふ……これがルビィの『青攻撃』の真の姿! にゃーっはっはっは!」
善子「くっ……」
身体が重たい……ドラゴンボールの重力が倍になる部屋ってこんな感じ、なのかしら?
なんて悠長なことを考えてる場合じゃないわ……
今まではハートの状態になれば、普段の自分じゃ考えられないような動きができたけど……この青くなった状態じゃ、普段の動きすらままならないわよ……!
善子「うぐぐ……このまま避け続けなきゃいけないって、なかなかキツイこと考えるじゃない……!」
だからといって戦うわけにはいかない。パビィルスの気持ちが折れるまで、私の気持ちが伝わるまで、何度だって避け切ってやる……! パビィルス「うふふ、どうかなっ!」
パビィルスがホネ攻撃を繰り出してくる。
私は重たい身体に鞭を打ち、なんとかそれを回避。横に移動し、ジャンプし……とにかく避ける。
パビィルス「どこまで高くジャンプできるかなぁ?」
ホネ攻撃が迫る。
今度は高くジャンプして回避しなければならない。
善子「重たい、ってのに……ジャンプばっかさせないで、よっ……と!」
避ける。
避ける。
とにかく避ける。
パビィルスは私のジャンプできるギリギリの高さでホネ攻撃を放つ。遊ばれてるわね、ったく。 ホネのにおいがする。
パビィルス「もっと高く飛ばなきゃ、もう!」
パビィルス「ルビィにスペシャルこうげきを使わせないでっ!」
今度は入り組んだホネ攻撃だ。
素早くジャンプし、素早く着地し、次々に迫るホネを回避する。あーもうつらい! しんどい!
パビィルス「ルビィはもうすぐ人気者……えへへ、えへへへ……」
パビィルス「ルビィがロイヤル・ガードの隊長になる日も……もしかしたら、近いのかも……」
ルビィは妄想にふけっているようだ。そんなに私を捕まえるのが嬉しいのね……?
クックック……ですが、私だってそう簡単に捕まってあげるわけにはいきません。なぜならこの天使ヨハネ様は、地底世界を統べる王ヨウゴアに命を狙われているのですから。
どんなに無様であろうと……逃げて逃げて、逃げなくてはならないのです。
そして我が混沌の世界へと帰還するのです! 次第にホネ攻撃は激しさを増す。
青くなった身体には未だ慣れず、被弾数がなかなか軽減できない……HPはすでに半分以下。あまりのんびりしていられない。
私が傷だらけになって苦戦してるあいだも、パビィルスは妄想をどんどん披露する。
パビィルス「カナンダインはきっと喜ぶし、王さまはお庭の植木をルビィの顔の形に切り込んでくれて、それからそれから……あ、ファンのみんながルビィにプレゼントをくれるかも!」
パビィルス「でも……みんなが、本当にルビィを好きか、どうやって見極めたらいいんだろう……」
パビィルス「あなたみたいなひとは、もういないだろうし……」
善子「はあ、はあ……そりゃどうも」
愛されたいのか、なんなのか……ダイヤズが言うには、パビィルスはとっても寂しがり屋。
だから頑張って、みんなに認められて、みんなに褒めてもらいたいんでしょう? パビィルス「あなたを捕まえたら、きっとあなたはずっと牢屋暮らし……かわいそうだけど、連れていかなきゃ……」
それに……ほら。
あなたはこんなに優しいじゃない。
パビィルス「と、とにかく! 早く降参しないと……『スペシャルこうげき』を出しちゃうよ!?」
パビィルス「ほ、本当に出しちゃうよ!?」
……ふふ、ふふふふ。
善子「……降参なんてしないわよ。私は戦うつもりはないし、負けるつもりもないからね」
私は不敵に笑って、そう言ってやる。正直めちゃくちゃ身体痛いし動きたくないけど、今だけは、もう少し頑張って……わたし。 パビィルス「も、もうすぐ……もうすぐスペシャルこうげきが発動するよ……?」
普通のホネ攻撃が迫る。
それを避ける。
パビィルス「つ、次! 次のあとは……ほ、本当にスペシャルこうげきだからね!」
普通のホネ攻撃が飛んでくる。
避けきれない。少しダメージを受けた。
善子「つっ……」
パビィルス「ぃ……い、いくよ? ルビィのスペシャルこうげき……!!
大丈夫、回復アイテムは用意できてる。
どんなスペシャル攻撃だって……
────ワンワン!
よしるび『……え?』 パビィルス「ピギャーー!? わ、ワンちゃんさんなにしてるのぉ〜!!」
パビィルスが仕掛けていたホネ攻撃を白い犬が食べていたのだった。
パビィルス「それ、それっ……それルビィのスペシャルこうげきだよぉ! かえして、ねえ、ねえ〜!」
────キャンキャン!
パビィルス「ぁぁああ……」
……どうやらスペシャルこうげきは犬にお持ち帰りされてしまったらしい。そんなに美味しいのかしら、あのホネ……
パビィルス「ぴぃ……ぅ、ぅゅ……」
暗くなるルビィは、なんだかちょっと可哀想だった。私もさすがに見てはいられず、声をかけようとしたが……
ルビィ「こうなったらっ!」
善子「!?」
ルビィ「『ウルトラかっこいいフツーのこうげき』を使うしかない……」
すぐ元気になった。 うん、ポジティブなのはいいことだと思うけど……まだあるのね。
けど……これが本当に最後の攻撃になりそう。
私もモンスターアメで回復し、ウルトラ通常攻撃に備える────
パビィルス「いくよニンゲンさん! なんの変哲も無いフツーのこうげき!」
ルビィが腕を振るう。虚空からホネが現れ、次々に私へと迫る。
私はそれを飛んで回避。着地して回避。とにかく回避。
その攻撃は今までのどれよりも激しく、手数が多い攻撃だった。そして、クライマックスは────
善子「な、なんかめちゃくちゃでかいホネなんだけど!!??」
空を突き破ろうかと言うほどの巨大なホネが、壁のように私へと迫る。逃げ場は……もう、飛んで避けるしかない。
当然、この青くなった身体では避けられないのは分かってるけど……や、やるしか! 善子「とりゃあーー!」
全力でジャンプ。
とにかく、とにかくジャンプ!
……って。
善子「な、なんかめちゃくちゃ飛んでるんだけど!!?」
なんかよく分からないけど、スーパージャンプで回避できてしまったのだった。
……本当によくわかんない。
パビィルス「はあ……はあ……」
善子「……はあ、ふう」
最後の攻撃を終え、互いに息も絶え絶えだ。私とパビィルスは息を切らしながら向かい合う。
パビィルス「ど、どう! はぁ、ふう……あなたに、ルビィは……倒せ、ません……」
善子「その気になれば倒せるわよ……たぶん」
パビィルス「ぅゆ……そ、そんなの強がりだもん! ルビィは強いもん!」
善子「わかった……わかったから」
パビィルス「……えへっ! じゃあルビィがあなたに情けをかけてあげる! みのがしてあげる!」
善子「……ん?」
パビィルス「え、えっと……だからね、その……今なら逃げても、いいよ……って」
善子「……」
……どうやら戦いは終わったらしい。
…………めちゃくちゃ疲れた。
暗転。 戦いが終わる頃には、あたりの霧も晴れていた。少し離れたところでしょんぼりするルビィがよく見える。
パビィルス「うゆゆ……あなたみたいに弱いひとすら倒せないなんて……カナンちゃんに怒られちゃう……」
パビィルス「ルビィはロイヤル・ガードになんてなれないし……友達だって増えないんだ……」
善子「……」
……ったく、世話の焼ける子ね、本当。
善子「ルビィ」
パビィルス「はぇ……?」
善子「友達になりましょ」
パビィルス「……え、え、ほ、ほんとに!? ほんとに、ルビィと……お、おともだちになってくれるの!?」
善子「もちろん。これであなたの私は友達よ」
ほんとはリトルデーモンがいいんだけど……言ったってどうせ分かんないんでしょうし。
パビィルス「そ、それなら……そ、その、特別に……あなたを許してあげてもいい……よ?」
善子「そりゃどーも」 パビィルス「えへ、えへへ……やった、やった! お姉ちゃんに自慢しちゃおっ!」
パビィルス「おともだちが欲しかったら、ダメダメなパズルをやらせて、バトルをすればよかったんだね!」
パビィルス「ニンゲンさん! あなたはルビィに色んなことを教えてくれたから、ここを通ってもいいよっ」
善子「いいの? ありがとう」
パビィルス「それと地上に出る方法も教えてあげる!」
善子「!」
────地上に出る方法。
マリーはまっすぐ進むと出口があるからそこから出ろ、としか言わなかった。具体的なことは何も言わず……消えてしまった。
もっと詳しい情報がもらえるなら……とてもありがたいことだわ。
パビィルス「このまま進んでいくと、洞窟の出口に着くの。そこは都……城下町っていうのかな? そこにバリアがあって、それを抜けたら外の世界に出られるの」
パビィルス「バリアはルビィたちを地底の世界に閉じ込めてる魔法の封印……こっちに入るのは簡単だけど、外に出るのはとっても大変」
パビィルス「つよいタマシイを持つひとじゃないとバリアを抜けることはできないんだ。……だけど、あなたならできる!」
パビィルス「だから王さまはニンゲンさんを捕まえようとしてるの!」
パビィルス「ニンゲンさんのタマシイの力でバリアを壊す……そうしたら、ルビィたちモンスターも地上に戻れるんだ!」
……よくわからないけど、モンスターのタマシイだけでは弱い……ということなのかしら。ニンゲンとモンスターでタマシイの強度が違う……? パビィルス「あ、そうだ……あと大事なことを忘れた」
善子「?」
パビィルス「バリアに行くためには、王さまのお城に行かなきゃダメなんだ」
……王さまの、お城。
パビィルス「すべてのモンスターを統べる王……あのひとのことは……誰もが……」
善子「……ごくり」
パビィルス「だーーーーいすき!」
善子「だいすきなんかい! なによ今の空気!今の間は!」
パビィルス「モフモフしててすっごくいいひとだよ! だから、きっと心配いらないよ」
パビィルス「『おうさま! おうちにかえらせてください!』ってお願いすれば……きっとバリアのところまで案内してくれる」
パビィルス「頑張ってね、ニンゲンさん。ルビィはいつでもあなたの友達としてお家で待ってるから、遊びに来てもいいよ!」
早口にまくし立てると、ルビィはウキウキした足取りでスノーフルへと帰っていった。
……え、私放置? 置いてけぼり?
マジ? ルビィ、あんた……
……
とりあえず私も街に帰ろう……
ヨハネ LV5
スノーフルのまち
セーブしました。 今回はここまで。
書き溜め少しずつやりながらで申し訳ないです……
Nルートまでは頑張って完結させます
Gルートのダイヤズとか色々考えてはいるけど 続き来てたか
このゲームはプレイングで細かく変わったりするから楽しいよな
N→P→GかGのあとにPやるかとか 乙!待ってたよ!
やっぱりパピルスかわいいなぁwルビィちゃんにピッタリだったわw 勇者ああああで知って最近プレイしたからタイムリーなスレだわ
楽しみにしてるよ 3年くらい前に俺がよくやってた妄想とほぼ同じで泣いた ・・・
パビィルスとの死闘から一晩明け、私は街を出る準備を始めていた。
立ちふさがるルビィを撃破したことで、この街でできることは全てやり終えたはず。これ以上ここに留まる理由は無い……と、思うんだけど。
パビィルス「それでね、ルビィはニンゲンさんを捕まえてロイヤル・ガードの一員になるつもりだったんだ〜」
善子「ふーん」
なぜかルビィに捕まって一緒に朝食を取っていた。なんでも、友達なら遊ぶのは当然だしご飯も当たり前、らしい。
まあ、その通りといえばその通り。私もルビィと離れるのは心寂しく感じたため、お別れを兼ねて食事をとることにしたのだった。
この街を出たら……もう会えない可能性だってあるのだから。 パビィルス「でもルビィとニンゲンさんはお友達だから、そんなことしないのっ! カナンちゃん……おほん、カナンダインにもルビィから伝えておくからきっと大丈夫だよ!」
善子「ありがと」
その果南……カナンダインはきっと強敵になる。
ルビィの話を聞く限りでは、性格は大雑把で荒いところもあり、腕っ節がとにかく強い……らしいってことだから。
それはつまり、今まで戦ったモンスターとは比べ物にならないってこと。
これまではみんな、確かに戦いはしたけれど、心の底から私を殺そうとしていたわけじゃなかった……と、思う。
マリエルはもちろん、パビィルス、あの白い犬や千歌の姉たちも。
────チカウィを除いて。
だから、これから先、激しくなるであろう戦いを想像するだけで足がすくむ。
この街を出なければならない気持ちが、揺れてしまう。
けれど、だけれど──── 善子「……そろそろ私は行くわ」
パビィルス「気をつけてね。寂しくなったらいつでも帰ってきていいよ、ルビィがいるからね」
善子「ありがと。……じゃ、また」
パビィルス「うん、またね!」
ハンバーガーを口に放り込み、私は店を後にする。これ以上一緒にいては、きっとつらくなる。
ここは確かに居心地がいい。ルビィもダイヤもヘンテコだけど面白くて大好き。
だけど。
だからこそ、私は帰らなきゃ。
私の世界に。Aqoursのある世界に。 ・・・
パビィルスと戦闘した道を抜けて、スノーフルを出た。
パビィルス曰く、どうやらこの先は洞窟になっているらしいが……確かに水の流れる音が響いて聞こえる。
もしかしたら全身ずぶ濡れになるのかも……って考えると、ちょっと憂鬱。
堕天使ヨハネは常にオシャレでいたい────濡れて見てくれが悪くなるなんて論外よ!
……しかし、だからと言って引き返すわけにはいかない。
私は先へ進まなくちゃ────ん?
善子「あれは……」
私の目線のその先に。
見覚えのある紫の髪のツインテール。私と同じボーダーのセーターでキメた女の子。
トカゲっぽいモンスターの鹿角理亞……いえ、今はリアだっけ────その姿があった。 善子「なにをしているの?」
リア「あ、あなた……なに、私を追いかけてきたの?」
善子「え? いや、私は自分の用のためにこっちにきただけよ」
リア「用? ……もしかして、あの人に会いに?」
あの人?
リア「なるほどね……あなたも子供のくせに意外と根性あるんだ。そうでしょ?」
あ、なんか私の話聞いてないっていうか勝手に話進めてるし……え……えっと、こういうときは……
善子「うん」
適当にAボタン連打して『はい』を押して話を進めちゃうノリで行きましょう…うん。
リア「……やっぱり。子供はみんなあの人に憧れる。当然のこと」
リア「本当に来る気があるなら覚悟して。かっこよすぎて倒れても知らないから。あの人に会うのは遊びじゃないの」
……理亞だわやっぱり。この言い回し それで覚悟ってなに? そもそも誰のことを言ってるのかも分からないんだけど……
誰よあの人って……もしかして理亞の姉の聖良さん……とか?
確かにあの人はダンスも歌もすごい……憧れるのは当然かもしれない。
この世界の理亞も、その目標に向かって突き進んでる……ふふ、私、あなたのそういうところ結構尊敬してるんだから。
リア「あ、そうそう」
善子「?」
リア「私がここにいたこと、父さんや母さんには内緒にしててよ」
善子「……」
リアもまだまだ子供ってことね……フッ。 ・・・
リアと別れて少し進む。
洞窟の入り口らしい────通路に川が流れ、奥まで続いている。岩の洞窟と川のせいなのか、空気は冷えている。暖かい服を着ていてよかったわ。
景色もさっきまでとは打って変わり、岩で周りを囲まれた洞窟で、道端には見たこともない青い花が咲いていた。
なんか変な花……ラッパというか、蓄音機の音が出る部分みたいな形をしてる。
せっかくだからと顔を近づけて花を観察していたら、その花のとなりに立っていた魚人っぽいモンスターが話しかけてきた。
「これは、エコーフラワーだ」
なにそれ?
「話しかけると最後に聞いた言葉を繰り返すんだ」
へえ……面白いわね。地底にはこんな変なのがあるんだ……っていうか、地底なのに花、咲くんだ。 そういえば最初に落ちてきたところにも金色の花がたくさん咲いていたっけ……
マリーの家のそばにも落ち葉がたくさんあったから、地底だけれど、魔法のおかげで草花はたくさん生えているのかも。
そう思いながらエコーフラワーをつついてみると、
『これは、エコーフラワーだ。話しかけると最後に聞いた言葉を繰り返す…』
見事に同じ言葉を繰り返していた。すごいわこの花。ドラえもんのやまびこ山みたい。……例えがなんか古臭い?
善子「へー……」
そんな風に花をまじまじと見ていると、今度は違う人物から声をかけられた。
「あら、ニンゲンさん」
これは……聞き覚えのある声だ。
「こんなところで何をしているんですの?」
善子「……ダイヤ?」
ダイヤズ「ええ、スケルトンのダイヤズですわ。その節はパビィルスがお世話になりました」
善子「い、いや……こちらこそ、色々と」
ほんとに、お世話になりました。ごはんを食べさせてもらったり、寝泊まりをさせてもらったり。
本当に助かったわ。 ……というか。
善子「ダイヤはここで何をしているの? パトロールの仕事は?」
ダイヤズ「ふふ、見てわかりませんか?」
そう胸を張ってくるりと回ってみせるダイヤ。
分かるわけがない。
ダイヤズ「仕事を掛け持ちしているのです。そこの小さな小屋で」
指差す方を見ると、確かに小さな小屋があった。なんの小屋だろうか……看板ひとつ見当たらない。
これじゃ一体なんの仕事なのかもさっぱり。
それでもダイヤがやっているのだから、大切な仕事なのだろう。さすが真面目なお姉さん────
ダイヤズ「なかなか有意義なお仕事ですよ? おかげで休憩時間も2倍なんですから」
善子「おい」 忘れてたわ……ここのダイヤは現実のダイヤとかけ離れたヘンテコなんだった……!
私の世界に帰った時に変な気持ちになりそう……
ダイヤズ「まあまあ、そう睨まないでくださいな。今からグリルビーズに行くんですが、あなたも行きません?」
善子「え?」
グリルビーズっていうと、スノーフルのバーみたいなお店のことね。
さっきパビィルスと朝ごはんを食べたところなんだけど……まあ、せっかくのお誘いだし。
一度出た街に戻らされるのもゲームあるあるよね。
善子「いいわ、行く」
答えるとダイヤズは大げさに手を叩いて、
ダイヤズ「そこまで言われては仕方ありません! 仕事を切り上げて行くとしましょうか!」
と、ニヤニヤしていた。
あ、サボる口実にされただけだこれ!!
ダシに使われた悔しさを若干感じている私をよそに、街とは正反対の方向に歩きながらダイヤズは言った。
ダイヤズ「ついてきてくださいな。わたくし、近道を知ってるんですよ」 乙
ダイヤの見た目で中身サンズってほぼありしゃなのでは 〜グリルビーズ〜
ダイヤズ「ほら、もうつきました」
善子「!!??」
ま、待って!? いまどこ通って……あれ!?
善子「今まで洞窟の入り口にいて……こう、奥の方に入っていったはずなのに気づいたら店に……!?」
善子「どうなってるのこれ!?」
ゲーム特有のワープ!? いやでもおかしくない!? 善子「今さっきまでこんなこと無かったし……えぇ、どうなってんの……?」
私が一人で頭を抱えている横で、ダイヤズは店に来ていた客たちと談笑を交わしていた。どうやらダイヤズは人気者らしい。
「ダイヤ、ついさっき朝ごはんを食べに来たところじゃないの?」
客のひとりがダイヤズに話しかける。
ダイヤズ「いえ、最後に食べに来た朝食は30分も前ですよ?」
ダイヤズ「ブランチなら先ほど食べに来たばかりですが」ツクテーン
どっ、と店内が笑いに包まれた。
私には理解できないジョークだった。
けど、まあ、こんな風に人を笑わせられるから人気者……なんでしょうね。
ダイヤズ「こちらに座ってくださいな」
ダイヤズに促されてカウンター席に腰を落ち着kブギューブリリリリリ…
善子「……」
ダイヤズ「あら! 席を選ぶときは気をつけてくださいな。どこかの誰かがブーブークッションを仕掛けているかもしれませんから♪」
こ、こいつ……!
向こうに戻ったら必ず仕掛けてやるんだから……! ダイヤ「まあまあ、それよりオーダーしましょう。なに食べます?」
善子「んー……」
朝にハンバーガーを食べたばかりだし、ここは軽めに……
善子「ポテトにするわ」
ダイヤ「いいですわね。グリルビーさん、ポテト2つお願いしますわ」
メラメラの燃え盛る炎の店主はメガネをクイッと持ち上げると、奥の厨房へ消えていった。
あのメガネ溶けないのかしら……
しばしの沈黙。思えば、ダイヤと現実でも二人になったことはなかったかもしれない。
ちらりと隣を見ると、私の知る凛々しい顔つきの生徒会長が、そこには在る。中身は多少違えど、やはり芯の部分はダイヤなのかもしれない。
人を気遣えて、やるべきことはしっかりやり遂げる、スーパー生徒会長。
そんなあなたを、私は結構かっこいいと思っている。まあ、こんなこと口に出して言わないけど。 そんなことを思いながら眺めていると、ダイヤズが口を開いた。
ダイヤズ「ところで、あなたはどう思いますか?」
善子「?」
ダイヤズ「我が妹ルビィのことですわ」
善子「……」
善子「え、えっと……頑張ってると思うわよ? ロイヤルなんたらになりたい夢に向かって励んでるし、その……人気者になろうと張り切ってるし」
善子「うん……頑張ってると思うわ。可愛いし」
ダイヤズ「ふふ、トーゼンですわ! あなたもルビィのようなコスチュームを着ればステキなスターになれますわ!」
ん? ダイヤズ「あの子、よほどのことがない限りあれを脱ぎませんからね」
えっ!?
ダイヤズ「あ、でもご安心を。ちゃんと毎日洗っていますわ」
はあ……
ダイヤズ「着たままシャワーを浴びてるってことですが」
……まじかルビィ。
……いや、まず、なに今の質問。
結局なにを聞きたいのか分からなかった質問と、あまり知りたくなかったパビィルスの生態に絶句していると、奥の厨房から店主が出てきた。
頭の炎を揺らめかせながら、揚げたてのフライドポテトを両手に持って。
ダイヤズ「食事が参りましたね。ケチャップ使いますか?」
善子「ありがとう」
ダイヤズ「『ボーン』ナペティ」
したり顔で言うダイヤズだった。今のはイタリア語で『召し上がれ』を意味する『Bon appetit』と骨の『bone』をかけた……って説明させないでよ! 納得のいかないまま私はケチャップのボトルを傾けると……
善子「あ゛!」
キャップが取れてボトルの中身が全てお皿に溢れてしまった……
うわあ、最悪じゃないの……せっかくのポテトがぁ〜……
ダイヤズ「あら……仕方ありませんね。わたくしのをどうぞ」
ダイヤズ「正直、それほど空腹というわけでもありませんから」
そう言ってダイヤズは自分のポテトを私に差し出してくれた。
うう、申し訳なさがすごい……グラサンの奥で寂しく光る店主の瞳が、私の胸をえぐりにえぐった。
私は小さくなりながらポテトを1本かじった。
ごめんなさい…… ダイヤズ「それで……パビィルスのことなのですけれど」
私が飲み込むのを待ってから、ダイヤズが口を開く。
まだ話は続いていたらしい。
ダイヤズ「あの子が頑張り屋なのは認めていただけるでしょう? ロイヤル・ガードになるために地道に努力していますし」
私はポテトをつまみながら頷いて返す。
ダイヤズ「あの子、ロイヤル・ガードのボスの家まで行って……メンバーにしてくれるように頼み込んだんですよ」
ダイヤズ「まあ、当然相手にはされませんでしたが……」
自慢気に話すダイヤズ。やっぱりこういう点は本当にダイヤそのものだ。
妹を想い、愛し、信頼してる。あの子が頑張ってる姿を誰よりも近くで見て、誰よりも知っているのだろう。
だからこそあの子を認める人が増えてほしいのかもしれない。私にこんな話をするのも、そのためだろう。
一度戦った私だからこそ、あの子を認めてくれるのでは、と────
ふふ、そんな気を使う必要はないのに。
私はとっくにルビィのことを────
ダイヤズ「夜も遅かったですから仕方ありませんね」
え、そういう話!?
このスケルトンは、とことん私を真面目モードにさせる気はないらしい。 ダイヤズ「ですが、あの子は朝まで待っていました。そのやる気を買って、ボスも『訓練してやる」と言ってくださいました」
ダイヤズ「それで、まあ……今も訓練中ということです」
善子「ふぅん……」
私はいつのまにか、ポテトをつまむのをやめて彼女の話に聞き入っていた。
頑張り屋の妹。
それを誇りに思い、応援する姉。
この2人は、現実のダイヤとルビィ以上に愛し合っているのかもしれない。
それ以上に素直なのだろう。
自分の気持ちを人に伝え、見てもらいたいという純粋な心を持っているのだ。
私の知る2人は、きっと、お互いにそういうことを伝えるのは恥ずかしがる。
そして、それを自分以外の誰にも知られたくはないんじゃないかとも思う。
だって……そんな風に素直に生きるのは、照れ臭いじゃない? 私には絶対そんなことできない。
思ったらすぐ行動しちゃうバカなリーダーにも、きっとね。
暖かい気持ちでいっぱいになったところで、ポテトをつまもうと手を伸ばしたところで。
ダイヤズ「そうそう、ひとつ聞きたいことがあったのです」
ダイヤの声のトーンが、
ダイヤズ「言葉を話す花って、聞いたことはありますか?」
一瞬にして冷たく変化した──── 善子「……っ!」
その瞬間、時間が止まったような感覚を私が襲う。
言葉を話す花。
喋る花。
知っている。
私は、それを知っている。
何度も見た……あの、黄色い花。
千歌の顔、千歌の声で話すあの不気味な花。
私を最初に殺そうとした恐ろしい花。
この優しいモンスターたちの世界で、唯一、私を本気の殺意で狙った花。
私がマリエルを手にかけて……それを嘲笑った花。
なぜ、ダイヤがそれを────
ダイヤズ「その様子……そう、もう知っていましたか」
ダイヤズ「それはエコーフラワーと言って、沼地のあちこちに生えているんです」
ダイヤズ「この花に声をかけると、その言葉を何度も繰り返すのですが……」
エコーフラワー……さっきモンスターのおじさんから聞いたもの。
私もこの目で見たから知っている。ラッパのような形の、あの青い花。
……ダイヤズが聞きたいのはその花のことなの? それとも、やっぱり────
善子「……それが、どうしたの?」
真意がわからないまま、下手に答えるわけにはいかない……そう思った。 ダイヤズ「……」
ダイヤズ「ルビィが、先日、変なことを言っていたのです『1人でいると、時々……花が1輪現れて話しかけてくる……』と」
……!!
やっぱり、それは。
ダイヤズ「ほめてくれたり、アドバイスしてくれたり、励ましてくれたり」
ダイヤズ「予言したりするという話なのですが……おかしな話ですよね?」
まるで信じられない────という顔でダイヤズは笑う。
そう、信じられるはずがない。私だって……
ダイヤズ「きっと誰かがエコーフラワーを使ってからかっているんです」
私だってあれを、チカウィを見ていなければそう考えるだろうから。
ましてやエコーフラワーという存在がある以上、知らない者からすれば全てそれの仕業だと思うに決まっている。
本当にチカウィがパビィルスに接触していたとしたら……それは、なぜ?
ただの退屈しのぎ……とか? あの花ならやりかねない……けど、私を殺そうとした時とは違ってずいぶんと優しいのね。
私がニンゲンだから? ……わからない、けれど……やはりその花はチカウィに違いない。
────私がこのまま深い思考に陥りそうになった時。
ダイヤズ「まあ、そういうお話でした。あなたも気をつけてくださいまし」
そう言ってダイヤは話を切り上げると、椅子から降りて入り口へと歩いていく。
ダイヤズの声で我に帰った私は、
善子「あ、ちょっ! どこいくのよ!」
ダイヤズ「随分とのんびりしてしまいました。仕事が山積みなのにあなたが引き止めるからですわよ?」
善子「は!?」
いやいや誘ったのあなたよね!? 連れてきたのもあなたよね!!
私のツッコミに、しかしダイヤは無反応。ひどい。 ダイヤズ「そうそう……わたくし、今月は金欠なのでお勘定もお願いしていいです?」
ダイヤズ「10000Gポッキリですから」
善子「はあぁ!?」
待って待って待って!!? 私だってそんなお金ないわよ! 回復アイテム買ったり服買ったりで結構使い込んでるわよ!!
というか10000のポテトってなに!? ルビィと食べた時そこまで高くなかったわよ!
慌てふためく私をよそに、ダイヤズはお得意のしたり顔で笑いだす。
ダイヤズ「うふふ、なーんて♡ 冗談ですわ」
ダイヤズ「グリルビー、今日もつけておいてくださいまし」
そう告げるとダイヤズは足早に店から出て行った。去り方だけめっちゃかっこいい感じで。
むかつく。
1人残された私は、色々と考えたいこともあったけれど、ひとまず置いておく。
チカウィのことなんて考えても分かることじゃない。
あの花とは、きっとまたどこかで合うでしょうし……ね。
だったら今は先に進むだけ。
先に進んで、王さまに会わなくちゃ。
私はすっかり冷めたポテトをたいらげてから店を後にした。 ・・・
パビィルスと戦った道を抜けて、何度目かのエコーフラワーのある小さな広場。近くにダイヤズがバイトしてる小屋がある。
通り抜ける際にダイヤズから、
「また一緒に食事しましょうね」
……と、にこやかに見送られた。
いやあなた何も食べてないじゃん。
というツッコミは心の中に押し止めて、新たなるマップの探索を開始する。
そこは薄暗い洞窟……のような場所で前にも見た通り、水が絶え間なく流れている。
ほら、目の前にも広い滝壺が…… 善子「……って、もしかしてこれを渡らなくちゃいけないの……!?」
濡れる……これ絶対びしょ濡れになる……
とりあえず私は滝壺のそばにあった『いじげんボックス』を開き、荷物の整理をする。必要のないアイテムをあらかた預けた。
そして預けてあったひとつのアイテムを見て呟く。
善子「……本当にこの中に入れてると劣化しないのね」
最初に入れたマリエルのバタースコッチシナモンパイは、まだできたてのように美味しそうだった。 ・・・
・おふるのチュチュをみつけた
善子「こ、これは……!!!」
────話は数分前にさかのぼる。
私は先に進む前に、近場をくまなく探索していた。
まず滝壺。
滝壺と言うからにはだいたい見えないアイテムが落ちていたりするものでしょう?
ほら、ポケモンの地下通路みたいにね。
そんなわけで滝壺のあたりを……びしゃびしゃになりながら探していたの。
もちろん上着だけは脱いで……だけど。
それがあんまりにも寒いもんだし、全然見つかんなくって、そろそろ辞めようと思って上着を取りに岸へ戻ろうとして────
私は流れてきた岩か氷か、とにかく何かの塊に身体を押されたのだ。
善子「いやあぁぁぁああ!!」
私は滝壺をばしゃばしゃと転がりながら、崖になっていたところから落ちた────
し、死ぬ…………っ!!
────と、思ったそのときだった。 その崖(これも滝みたいなものだけど)の下には通路があり、そこへ転げ落ちただけで済んだのだった。
不幸中の幸い、命は助かったのだけれど、それなりの高さからは落ちたわけで……
めちゃくちゃ痛いわけで……
しばらくその場で、声にもならない呻き声を上げてのたうち回ったのだった。
数分くらいその場でうずくまって、ようやく動けるようになったからあたりを見回してみると。
どうやら、私が上着を置いた岸のそばから通路が伸びていて、こちらまで降りてこれるようだ。
……私としたことが痛恨のミス。寒くて痛い思いをしただけよこれ。
それからさらに数分後、完全に痛みも消えたために散策を再開することにした。 するとその先にエコーフラワーがあって、そいつが変なことを喋るのだった。
「あそこには絶対何かがあった……落ちてくる水の裏側だ」
こういうNPCのセリフはだいたい新アイテムやキーアイテムのゲットに役立つヒントに違いない。
ゲームをやり込んでる私が思うんだから当然よ!
というわけで私はその声に従って滝壺を再度探索した。
そして見つけたのだ────落ちてくる滝の裏にある、ひとつの穴。
そこに眠るアイテム、おふるのチュチュを!
そうして今に至るわけ! ・おるふのチュチュ - アーマー DF10
・ようやくてにいれた ぼうぎょりょくのたかい アーマー
善子「これは着るしかないでしょ。おしゃれで言ったらアレだけど……防御力には変えられないわ」
私は即座に装着し、それまで装備していたバンダナをさっきのいじげんボックスに押し込んでおいた。
これで周辺の探索はおしまいね。さあ次に進むわよ! ・・・
少し歩くと────不自然に光の差し方が変わった。
これまで洞窟全体がぼんやりと明るかったのに。
背後から光が差して、影が私の進行方向に伸びている。
そしてその影は、これまた不自然に生えたトウモロコシ畑のように背の高い草むらに掛かっていた。
明らかに怪しい、そんな空気が漂っている。
先ほどまでうるさいくらいに聞こえた水の流れる音が、ここでは全く聞こえない────
善子「なによこれ、通路遮ってるじゃない……」
これを通るしかないのか……面倒ね。
だが背に腹は変えられない。すでに足元はびしょびしょなのだから、これ以上汚れてもいいわよ!
さあ出発────
ガサッ
善子「…………え?」 人の気配。
草むらに身体を割り込ませた途端に、背筋に凍るような悪寒がほとばしった。
誰かがいるのだ。私はその場で動きを止め、視線を動かす。
前後左右、全ての方向は草に覆われて見えない────が。
斜め上……だろうか? 少し崖のようになった、言うなれば2階のような場所に、人影のような何かが立っていた。
白銀の甲冑に身を包んだように見える、その影は。
奥から走って現れたスケルトンの少女────パビィルスから話しかけられていた。
パビィルス「え、えっと……カナンダイン隊長……」
パビィルス「今日の任務の、報告に……きました」
その声はとても震えている。ルビィ、怯えているの……? そして、カナンダインって……
パビィルス「その……さっき電話で伝えたニンゲンさんのことなんですが……」
……やっぱり。
この地底世界を守る王国の騎士団……ロイヤル・ガードの隊長。
ここに落ちてきた人間を捕まえようとしている……つまりは、私の敵──── パビィルス「え? 戦ったのかって……?」
パビィルス「も……もちろん! 戦いました! とっても勇敢に!」
パビィルス「えっ……と、捕えたのか、って……?」
パビィルス「ええぇぇ、えーっと……その……」
パビィルス「一生懸命がんばった、けど……逃げられちゃって……」
鎧の人物────カナンダインの声は聞こえないが、パビィルスの発言から、だいたいの予想はつく。
あのカナンダインとかいうやつは私を捕まえたがってるのだ。そしてあの子の怯えよう……きっと恐ろしく強い。
たぶん、今まで戦った誰よりも。
マリエルより、パビィルスよりも。
2人の会話は続く。
ルビィ「え……? ニンゲンのタマシイを取りに行く……? かなんちゃ……た、隊長が……?」
善子「……!」
その発言に、空気が張り詰めるのがわかった。パビィルスも慌てて、
ルビィ「ででで、でも、別に、殺さなくたって……! だって……」
ルビィ「だって……う、ぅぅ」
駆け寄って懇願しようとするパビィルスが、ビクッと体を震わせて後ずさる。
カナンダインがパビィルスに睨みを効かせたのだろう。 しばしの沈黙の後、パビィルスが、
ルビィ「……はい、わかりました。全力で……手伝います」
そう言って洞窟の出口へ走っていった。
…………気配が少し和らぐ。今のうちにここを抜けて逃げないと、あいつが────
────ガサッ
「……!!」
善子「っ……」
やってしまった。ここは草むらの中……少し動いただけで音を立ててしまうことになぜ気づかないのか。
気を抜き過ぎよ、私……! だって私はただの人間、狩猟ゲームにバトロワ系、色んなゲームをやり込んできたけど!
リアルでこんな場面にあったことなんてないし、こんな緊張感味わったことなんてないのよ〜!!
「……」
ガシャガシャと甲冑を鳴らせながら、やつがこちらへ近づいてくる。
段差の上からこちらを見下ろしているのか────あれは、槍だろうか?
カナンダインは魔法を使ったのか、その手に槍を生み出し構え、こちらを睥睨している。
動けばすぐにあれで貫かれる……? あんなもので刺されたら、私は……っ
とにかく動くな、動くな、動くな。
うるさい、うるさい、うるさい、心臓止まれ。
呼吸もするな、黙って、私……っ
…………
……
…
「……」
────気のせいか。
数秒か、数分か────無限のように感じられる時間が過ぎて、そう呟いた声が、聞こえた。 すると鎧のモンスターは槍をどこかへ消し、自身もどこかへと消えていった。
私はそれから十分に時間をとってから、草むらから外に出た。
善子「はあ……はあ、はっ……」
そこでようやく緊張の糸が途切れたのか、私の全身から冷や汗が大量に噴き出した。
来ていた服がぐっしょり湿っている。
あんな緊張感は初めてだった────
もしかして、あれが殺気ってやつなのかしら……
善子「気配だけで動けなくなることって、本当にあるのね……」
壁にもたれて息を整える。
心臓がばくばくと早鐘を打つ。
善子「これ、落ち着くまで少しかかるかも────」
ガサガサガサッ!!
善子「うきゃぁっ!?」
「ちょ、私、逃げないで!」
善子「えっ……理亞?」
ぽっと呟いた瞬間に草むらをかき分けて現れたのは、あのモンスターの少女。
リア。
見慣れたツインテールに、見慣れない感動したような顔で私に駆け寄ってきた。 ていうか居たのあんた。
ていうか死ぬほどびっくりしたんだけど。
理亞「そんな驚くことじゃないでしょ」
ドライすぎる……
理亞「それより、ねえ……やばい。見た?あなたを見るカナンダインの目……」
善子「ああ、あれね……」
理亞「やばい、やばいわ……」
あれは……本当にやばかった。
一歩でも動けば殺されていた……気を抜けば、私も理亞もその場で死んで────
理亞「マジさいっこーでしょ!!」
善子「……ん?」
理亞「くっ……いい……! なんであなただけあんなに注目されてるの!? 羨ましい……!!」
善子「マジか……」
リアの憧れって、つまりカナンダインだったの……?
……まあ、確かに王国の子供からすれば国を守る騎士団の隊長……まさにヒーローよね。
私もこの地底の生まれだったらきっと憧れてるでしょうね。
理亞「行きましょ。カナンダインが悪いやつをぶっ飛ばすところ見に行かないと!」
そう言って理亞は我先にと走っていった。私を置いて。めっちゃダッシュで。
善子「でも、そのカナンダインの狙いは私なのよ……理亞」
・まだからだがふるえる……
・それでもケツイがみなぎった
ヨハネ Lv5
ウォーターフェルのかいろう
セーブしました。 こんな優しい善子が最終的にみんな殺すとかないよな...? ttps://i.imgur.com/kAhVhqC.jpg お待たせしてすみません…
仕事で部署が変わってしばらくばたばたしてて時間が取れずでして
もう少ししたら落ち着くはずなのでもうちょっとだけお待ちください ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています