善子「UNDERTALE?」
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UNDERTALEのネタバレを含みます。ご注意ください。
数年前に埋め立てられて途中でやめていた内容を書き直して改めて投稿します。 〜善子の部屋〜
善子「……Undertaleというゲームを買ったわ」
善子「ずっとネットで話題になってて、私もやってみたかったから前情報はほとんどなしで購入したけど……」
善子「スイッチかPS4のDL版しかなかったのよね。私としてはパッケージで欲しかったけど……ま、仕方ないわね」
善子「さてと、起動っと」pi
むかしむかし ちきゅうには
ニンゲンと モンスターという
2つのしゅぞくが いました
善子「ふむ……舞台は地球なのかしら? 人間とモンスターがいて……」
善子「ところが、ある日……2つの種族の間で戦争が起きた」
善子「あるわよね……モンスターってだいたい恐ろしい見た目で強い力を持ってるし」
善子「人間がそれを怖れて戦って倒す……とか」
善子「ああ、やっぱり封印してしまったのね。……でも、地下なんだ」
善子「それから、長い時が流れ……」
善子「この主人公が、山にあいた大穴から地下へ落ちて…………」
・おちたニンゲンになまえをつけてください
善子「っと、ここからゲームスタートなのね」 善子「ま、もちろん私の名前は……」
ヨ ハ ネ
善子「そして、決定────」
を、押そうとして。
善子「────ぁ」
私の意識が反転した。 〜???〜
善子「いったたた……」
善子「な、なによもう……ゲームしながら目眩って……」
痛む頭を抑えながら、目を開けると────
善子「…………え?」
そこは────見たこともない場所だった。
善子「えっ……え、え? なに、なにここ……」
当然、私の部屋ではない。
善子「わたし……買ったゲームを起動して、名前を打ち込んだら、こ……こに」
善子「……え、なにが……どうなってるの?」
ひとまず、状況の整理。
周りを見渡して分かるのは、ただただ、岩で囲まれた空間であること。
私のお尻の下に、黄色い花がたくさん咲いていること。
そして空────天井には大きな穴が開いていて。
そこから光が差し込んでいる────けれど、その穴の先は、見えない。 善子「……これって、さっきのゲームの状況と似て……ない?」
善子「地下に迷い込んだ、子供が……地上に帰るって、話らしいし……」
善子「もしかして……私、ゲームの世界に迷い込んじゃったの!?」
善子「すごいすごい! 私、自分でゲームをやってるんだわ! じゃあ私はこのゲームの主人公のヨハネで、地上へ帰るためにRPGを!」
善子「……って、んなわけないでしょ」
善子「どうせ夢よ夢。眠たすぎてゲームやりながら寝ちゃったんでしょ……どこまで進めたのかもあやふやなくらい眠たい状態で」
善子「とりあえず……進んでみましょうか」テクテク
少し進むと、中世風のゲートがあった。
それを通って部屋に入る────と、そこにいたのは。
「こんちかー!」(大音量)
善子「」ビク 「やあ! チカはチカウィー!おはなのチカウィーだよっ!」
善子「え、千歌……千歌!? なにやってんのよ!?」
チカウィー「え? 何言ってんの? チカはチカウィーだよ?」
善子「いや、えぇ? 待って……あなた、なんで花になってるの……?
そう、そこにいたのは……黄色くて小さな花になった……高海千歌だった。
誰でもない、私の所属するスクールアイドル『Aqours』のリーダー。
小さな花だけど、そのテンション、その顔はリーダー、千歌に違いない。
やっぱりこれ夢なのかしら……?
キャラに自分の知ってる人を当てはめるって、私の堕天的魔法もここまで来たのね。
というか、まだやってすらないゲームを夢に見るって一体…… チカウィー「キミは……この地底の世界に落ちてきたばかりだね?」
善子「あ、えっと……ええ、そう……みたい?」
チカウィー「そっか! じゃあとっても困ってるんだろうね」
チカウィー「この世界のルールも知らないでしょ?」
善子「まあ、そうね……」
もしかしてチュートリアルかしら。
チカウィー「よかった! それならチカが教えてあげるよ!」
チカウィー「準備はいい? いくよ!」
瞬間。
世界が、今度は暗転した。 ・・・
善子「────へ?」
気がつくと私の体は、小さな赤いハートになっていた。
チカウィー「そのハートはね、キミのタマシイ。 キミという存在そのものと言ってもいいよ!」
対面してその首を揺らすチカウィ。楽しそうな笑顔で、私にこの世界のルールを教えてくれる。
チカウィー「初めはすごく弱いんだけど、LVがたくさん上がるとどんどん強くなるんだ!」
あ、この辺は普通のゲームと同じなのね。
ステータスを確認する。
LV1 HP20/20
私のレベルは1……始めたばかりだから、1番弱い状態ということね。 チカウィー「LVっていうのはLOVE……つまり『愛』ってこと!」
善子「愛!? レベルじゃないの!?」
チカウィー「キミもLOVEが欲しいでしょ?」
チカウィー「待ってね……すぐチカが分けてあげるから」
ま、まあ、それで強くなるん……なら……というか、ゲームだしレベル上げは必須。
でも敵を倒さずにレベルって上がるものなの?
なんか胡散臭いなこの花……
チカウィー「この世界ではね、LOVEはこんなふうに……」
チカウィーはそう言いながら、自分の体から小さな白い球を放り出した。その球はチカウィーの周りをふわふわと浮いている。
チカウィー「白くてちっちゃな……『なかよしカプセル』に入れて渡すんだ!」
か、カプセル……?
でも、珍しいシステムね……弾幕ゲームに近いシステムって聞いていたし、『かすり』判定でレベルが上がったりするのかしら。
……いやないでしょ。
あるわけないでしょそんなこと。多分。 ん?
結局ゲーム画面越しに見てるの?
ステータス画面見れるし、自分のカラダがハート型になったことを瞬時に認識してるってことはそういうことだよね チカウィー「じゃあいくよ? さあカプセルを追いかけて! いっぱいいーっぱい拾ってね!」
善子「わ、ちょっ……」
言うが如く、チカウィーはなかよしカプセルを私めがけて投げてきた。
そして私は────
善子「おっと」ヒョイ
試しに回避。
カプセルはそのまま虚空へと消えていく。
チカウィー「あれあれ? 全部落としちゃったよ?」
そりゃあ……避けたから。
チカウィー「仕方ないなあ……もう一回行くね?」
しぶしぶ、と言った風にチカウィーが例のカプセルを投げてくる。 やっぱりなんか胡散臭いわこの花。うちの千歌と似ても似つかない。
言うことは聞かないほうがよさそう。
善子「……」ヒョイ
というわけで回避。
チカウィー「……」
チカウィー「ふざけてんの? 脳みそ腐ってんの? さっさと当たりなよたm……なかよしカプセルに」
だんだんイライラしてるようね。顔、引きつってるわよ。ていうか、弾って言いかけたでしょ今。
続いて投げつけられた弾を、私はまた難なく回避。もう騙されないわよ。
チカウィー「…………」
チカウィー「キミ……さては知らないふりしてるだけだよね?」
ピキン────と、空気が変わる。
チカウィーの表情が変化し……恐ろしい、怪物のようになっていた。 チカウィー「さてはチカのことバカにしてたんでしょ?」
私のハートの周りに大量の球がばら撒かれる。これ全部があれと同じだとしたら、これを全て喰らえば私はゲームオーバーってことね。
チカウィー「しね」
千歌の顔と声で、そんな言葉を聞かされることになるとはね。夢とはいえ、嬉しいものではないわ。
チカウィーの言葉を合図に、大量の弾が私に向かってゆっくりと近づいてくる。
善子「……どうしたらいいのかしら。ねえ千歌、チュートリアルで私を殺しちゃうの?」
チカウィーは答えない。
善子「……」
じりじりと近づく弾。それは私の動揺を嘲笑うかのように、私が焦る時間を楽しむかのようにじっくりとゆっくりと近づいてくる。
ふ、ふふ────さすがに、少しは怖いものね。
夢とはいえ、このリアル感……
まさかHPを全損して……死んだり、なんて。 >>11
そこまで考えずに描写してるんでしょ
揚げ足取ってやるなよ チカウィー「あはははは! あーっはははは!」
チカウィーが笑う。
さっき私から受けたストレスを解消するかのように、楽しそうに笑う。
私が死ぬのを、今か今かと心待ちにして────
瞬間。
善子「……ん」
チカウィー「え?」
────チカウィーの放った球が姿を消した。
そして。
チカウィー「うわぁ〜!!?」
突如別のところから放たれた火球によってチカウィーは吹き飛ばされ、消えていったのだった。
な、なに……一体何が……?
「情けないわね……罪もない子供をいじめるなんて」
優しい声とともに現れたのは、ひとりの……見覚えのある人物。
いえ、でもこれは夢の話だから……また、私がキャラに当てはめてるだけなのでしょうけれど──── ステータス画面なんてなろうだったら見れて当然のものだし細かいことは気にすんな ローブのような衣装を纏った、それは小原鞠莉だった。
「ハーイ☆ 怖がらなくても大丈夫、もう安心よ!」
マリエル「私はマリエル! このruins……遺跡の管理人よ♪」
善子「ま、マリー……助けに、来てくれたの……?」
マリエル「毎日ここを見回って、落ちてきた子供がいないか確認していたの」
マリエル「待たせてごめんなさい……怖かったでしょう」ギュウッ
善子「あ、あは……はは……」
普段なら振り払う彼女のハグにも、さすがに安堵感が私の中に溢れていた。
まあ、ね……ゲームにしてはなかなか……怖かった……かも、うん。
かも、だから。
マリエル「ニンゲンがこの世界に来たのは本当に久しぶり!」
マリエル「さあいらっしゃい! ruinsを案内してあげる☆」
また暗転。
そしてさっきまでの、私の身体が返ってきた。
なるほど……バトルパートになると私はハートになるわけね。
で、敵の攻撃を避けながら……こっちも攻撃するのかしら。
装備はこの棒切れと、包帯? ……まあ、ひのきのぼうみたいなものか。
モンスターを倒せるようになったらお金も手に入るでしょうし、武器や防具はそのときに買い揃えるとして……とりあえずマリーを待たせるのもよくないし、早く行かなきゃ。 〜いせき〜
マリエル「もう、やーっと来たのね? マリーを待たせるなんて悪い子☆」ツン
善子「わ、悪かったわね……まあ、堕天使的にいい子よりは悪い子の方がいいって言うか?」
マリエル「what?」
善子「……なんでもないわよ」
マリエル「そう? じゃあ話の続きだけど……あなたは今日からこのruinsで一緒に暮らすの!」
善子「えっ」
マリエル「だからこのruinsで暮らすのに必要な仕掛けについて教えておくわね」
そう言うと、マリエルは慣れた手順で床に設置されたボタンを操作し、レバーを倒した。
すると、地面の揺れる音とともに扉が開いた。
マリエル「ここにはたくさんの『puzzle』があるの! 侵入者を撃退するための昔からのskillというわけ♪」
マリエル「部屋を移動するときは必ずpuzzleを解く必要があるから、よく見て慣れておいて?」
善子「え、ええ……わかったわ」
ここで暮らす、ってことは……マリーは私を地上に帰さないようにしているってこと?
ここから出られないってことは、もしかして。
もしかして、最初のボスって────
マリエル「さあ次の部屋に行くわよー?」
善子「あ……わ、わかってるから!」タッタッタッ ・・・
マリエル「この先に進むには正しいswitchを押さなくちゃいけないの」
マリエル「でも大丈夫! ちゃんとシルシをつけてあるわ♡」
……これは道中にも色々パズルがあるってことね? で、そのチュートリアルなんだわ。
私は説明書は読まないスタイルだからありがたいといえばありがたいけど、周回するたびにやらなきゃいけないのは面倒かも。
マリエル「マリーはここで見ているから、頑張って!」
善子「……むう」
私の目の前には広い壁。
その端っこに、めちゃくちゃ矢印で『here!ここ!』と書かれたスイッチが2つ。
わかりやすいけど、なんか……うん。
善子「……ん?」
張り紙がある。
『一度道を決めたら、心を変えることなかれ』
善子「……」
……何の言葉よこれ? 善子「よく分からないけど……ま、いいか。さっさと進めちゃいましょう」
ポチポチ
ゴゴゴゴ……
マリエル「wonderful! 素敵ね!」
善子「ふふん、これくらい私にかかれば簡単よ!」
マリエル「うふふ、さすがマリーの可愛い娘♡ さ、次のお部屋に行くわよっ」
いつのまにか私はマリエルの娘になっていた。
次の部屋には、マネキン人形が1つ置いてあるだけだった。
その前に立ってマリエルが言う。
マリエル「あなたはニンゲンだからモンスターに襲われてしまうこともあるわ」
お、ついにバトルパートのちゃんとしたチュートリアルね!
マリエル「そんな時はどうするか。あなたには分かるかしら?」
善子「もちろん倒すに決まってるでしょ! RPGは倒してレベルを上げて強くなるのが醍醐味なんだから!」
マリエル「No!」
善子「えっ! なんで!?」
マリエル「戦うなんて危ないことはしちゃNoよ! マリーの話をよぉく聞いておいてね?」
善子「は、はあ……」 マリエル「モンスターに遭遇するとバトルが始まるわ。そしたらあなたはモンスターに話しかけるの」
善子「話しかける?」
マリエル「Yes! そして時間を稼いで……マリーが助けに行くのを待っていて!」
善子「……はあ」
まあ……ポケモンも最初は危ないから草むらに入っちゃダメって言われるし。
そういうノリよね。
そして私はマネキン話しかけ、マリエルの戦闘訓練を終えたのだった。
そしてめちゃくちゃ褒められた。
私のことコミュ障とか思ってるんじゃ……いや、しばらく引きこもってたけど! ・・・
マリエル「次のpuzzleは少し先にあるの。ついてきてね?」
善子「ふ、私のゲーム力をバカにしないでもらえるかしら? 私はパズルは当然のこと、RPGもアクションもシューティングもなんでもそつなくクリアできるんだから!」
善子「そして数々のゲームでランキング入り……いつしか私のことを人々は恐れ、こう呼ぶようになった」
善子「天才堕天使ゲーマーヨハ」
暗転。
・フロギーがおそってきた!
善子「うわっ!? か、カエルのモンスター……!」
よかった、さすがにこれは誰も当てはめてないみたい。まあ、カエルになったAqoursとか見たくないし……うん。
善子「ともかく、これが初戦闘だからバッチリ決めたいわね」
善子「いくわよ! 魔剣グラムの力を喰らうがいいわ! ……まあただの棒切れだけど」
バシッ
フロギー「ぎゃあ!」
カエルのモンスターがダメージを受けてひるむ。
が、まだ倒すに至らなかったらしい……
次の攻撃の準備を、と考えていたらどうやら時間切れのようだった。
マリーが現れた。……とても怖い顔で。
マリエル「……」ゴゴゴゴ
フロギー「」ビク
ソソクサ…
善子「えっ」
・YOU WIN!
善子「えぇー……」
暗転。 マリエル「もう、戦っちゃダメって言ったでしょ? マリーがもう少し遅かったら、また痛い痛いだったじゃない!」
善子「なーんでよー……RPGなんだから戦うじゃないのよー……」
マリエル「もう……どうしてあなたはこんなに好奇心旺盛なのかしら。まったく、可愛い私の娘……」ナデナデ
善子「……」
いや、だからなんで娘……? ・・・
少し進むと床一面がトゲだらけの空間が現れた。
マリエル「これがさっき言ってたpuzzleよ!」
善子「……え、まじで?」
マリエル「もちろんマジよ」
善子「……」
いや……え、これパズルなの? どうやって解くのこんなの? どこかにトゲが無くなるスイッチあるの?
マリエル「これは……危ないからマリーと一緒に手を繋いで行きましょうね♪」ギュウッ
善子「あ、ぅん」
大丈夫なの……?」
マリエル「大丈夫よ、ここはちゃんと正しい道を進めばspikeが引っ込む仕掛けになってるの」
善子「……」
意外にハイテクな仕掛けだった。 ・・・
マリエル「さあここまでよくできたわね!」
善子「ま、まあ……堕天使的には簡単でしたけれど」
ほとんどマリエルが解いてるしね。
答える私に、マリエルは少し寂しそうに続ける。
マリエル「でも、次は……すごく辛いお願いをしなくちゃいけないの」
善子「?」
マリエル「……この部屋の端まで1人で歩いていくのよ」
善子「え?」
マリエル「どうか悪く思わないでね」シュバッ
言うが早いか、マリエルは全力で逃げ始めた。
はっや!? いや、なにあれ……速!?
善子「ちょ、ちょっと待ちなさいよ〜! ここまで来て1人にしないでよー!」ダッ
すでにマリエルは見えない。隣の部屋に移動してしまったの?
……っていうか、え、マジで待って!?
ここでいきなり置いてけぼりってなんなのよそれ!? 善子「鞠莉、鞠莉?! ねーえー!」タッタッタッ
しかも通路、長っ!
善子「マリー! ちょっと! おいてかないでよー!」
「ストップ!」
善子「!!」ズザザー!
マリエル「よくできたわ! 安心して、置いて行ったりなんかしないから」
善子「ま、マリー……はぁ……はあ、っ……」
マリエル「うふふ、柱の陰に隠れて見守っていたの。よく頑張ったね」ナデナデ
マリエルが頭を撫でてきた。
めちゃくちゃ子供扱いされてない? 私、2個下よね? こんな母親ムーブされてもちょっと困るというか……
マリエル「でもね、この練習にはとても大事な意味があるの」
善子「?」
マリエル「ひとりでお留守番できるかテストしたのよ」
善子「……お留守番?」
マリエル「Yes」 マリエル「マリーは少し用事があるから、しばらくここでお留守番していてね☆」
マリエル「ひとりで歩き回ったら危ないから、ちゃーんとここで待ってるのよ?」
善子「は、はあ……」
え、バカにされてる?
マリエル「でも、不安よねぇ……マリーも心配だし……そうだわ! あなたにこれをpresent!」ノξソ>ω<ハ6!
善子「……なにこれ、ケータイ?」
マリエル「Yes! 用事があったり寂しくなったら電話をかけてちょうだい! マリーが必ずすぐに出てあげるから」
善子「……わ、わかった」
これでマリエルと電話……んー……ポケギアとか、ポケッチ的なアイテムかしら……?
……ちょっと古いわね例えが。
マリエル「それじゃあ待っててね! see you!」
そう言ってマリーは足早に部屋を後にした。
どんな用事があるのやら…… ……
……
……
善子「……暇」
善子「ていうかこんな広い部屋で1人って……しかもまだここに来て1時間も経ってないのよ?」
善子「でも、マリーがいてよかった……さすがにこんなダンジョンひとりじゃ怖かっtげふんげふん」
善子「……」
・プルルルル……
マリエル『Hello! マリエルよ!』
善子「あ……ま、マリー? その、えっと」
マリエル『どうしたの? 寂しくなっちゃったかしら?』
善子「ま、まさか! そう、あの……挨拶よ! 出会ってちゃんと挨拶もしてなかったし……」
マリエル『ああ、挨拶ね! それじゃあ……』
マリエル『Good morning! ……これで満足かしら? うふふ♡』
・ツー……
善子「……」 ・プルルルル……
マリエル『Hello! マリエルよ!』
善子「あの……マリーって何者なの?」
マリエル『マリーについて知りたいのね? そうねぇ……うーん』
マリエル『あえてお話しするようなことは、なーんにもないわねっ』
善子「えっ!?」
マリエル『だってマリーはただのお節介焼きなおばさんだもの♡』
・ツー……
善子「……え、電話の内容雑じゃない?」
善子「もっと喋りましょうよ私ひとりなんだから〜!!」
善子「…………どうしよ」
善子「ちょっと他の部屋見てみる?」
善子「っいうか、マリーは私を子供扱いしすぎでしょ! パズル? そんなもん天才堕天使ゲーマーヨハネにかかればちょちょいのちょいなんだから!」
善子「とりあえず進みましょうか! たぶん一人行動するためのイベントでしょさっきのやつ!」 ・・・
善子「この部屋は……やっぱ遺跡よね。あ、赤い落ち葉がいっぱい」
・プルルルル……
善子「」ビクッ
善子「……もしもし?」
マリエル『Hello! マリエルよ』
善子「……も、もしもし」
マリエル『お部屋から出たりしてないわよねぇ?』
善子「え、いや……あの、べ、べっつにー?」
マリエル『その先にはまだ説明してないpuzzleがあるの。ひとりで行くと危ないから待っててね☆』
・ツー……
善子「……びっくりした。どこかで見てるんじゃないでしょうね……監視カメラとか」
善子「…………なさそうね」 善子「さてと、本格的に探索の始まりね! マリーもいないしレベル上げまくって、まずはこの遺跡のダンジョンをクリアね!」
そうして私は棒切れ片手に勇者っぽいポーズをとるのだった。
暗転。
・フロギーがこっちへとんできた
善子「うわっと! びっくりするわね……今度こそ倒してあげるわ野生のモンスター!」
善子「ふん! この堕天使ヨハネにかかればカエルなんて!」バシッ
フロギー「!!」
フロギー「ケロケロ」ピョンピョン
善子「ぎゃあ!? な、なによ体当たりとかびっくりするじゃないの!」
善子「でも、あと一発叩いたら倒せそう……!」
善子「そりゃあ!」ポコッ
フロギー「ギャッ!」シュワワワ…
・YOU WIN!
・3EXPと2ゴールドを獲得!
暗転。
善子「おお……初めてモンスターを倒したわ!」
善子「ドラクエの勇者はこれを繰り返して魔王を倒すほどの……ふ、ふふふ」
善子「まさか私が自分で体験することになるとはね!」
善子「さあ進むわよ!」
そんなこんなで私は少しずつモンスターを倒しながら、パズルを解きながらダンジョンを進んでいった。 途中、マリエルからシナモンとバタースコッチのどちらが好きかと電話で聞かれたけど意味がよくわからなかったわ。
まあどちらかといえばシナモンだけど! シナモンシュガーとか美味しいわよね。
また、妙にやる気のなさげな幽霊にも出会ったわ。テンションの低さがちょっとアレだったけど、私を笑わせようと色々やってくれたし面白い子ね!
それからクモがお菓子を作って販売してるとかで、それを購入したり。
パズルも結構作り込まれててやりごたえはあるし。
この世界って結構たのしい!
そして─────
・おもちゃのナイフをみつけた
善子「ついに武器ゲットよ! ……なんかおもちゃっぽいけど、棒切れよりはマシよね」
善子「よし、これを装備して……棒切れは、とりあえずポッケに入れといて」
善子「さてと、そろそろ何かしらのポイントに到着してもいいんだけど……」テクテク 〜ホーム〜
マリエル「もう! 大変だわ、思ってたより時間がかかっちゃった……」
善子「!」
・プルルルル……
善子「あ」
マリエル「!」
マリエル「まあ! 一人でここまで来たの?怪我はない?」
善子「と、当然よ!」
……まあ途中で色々モンスターと戦ったから、無傷ではないけど。回復したら怪我も治るのはさすがゲームよね。
マリエル「ふふ、でも擦り傷だらけ。転んだのかしら……こっちへおいで。回復してあげる」ナデナデ
マリエル「ずっと一人にしてゴメンね……驚かせようなんて考えてたマリーがおバカだったわ」
マリエル「come on!おうちへ入りましょ!」
善子「……わあ」
こんな遺跡の中に可愛らしい家があるなんて……
・私はこの家を見てケツイがみなぎった
ヨハネ LV2
ホーム
セーブしました。 とりあえずは一旦ここまで
バトルパートは
ゲーム画面をそのまま見てるような視点を持ちつつ、ハートになった身体で行動してる感じです
カーソルもハートですので >>49
//*イ`^O^リ あっー!!!
人 Y / o。╭(^O^)みんなー!会いたかったよー!!!
( ヽωつ ο°
(_)_) フロギィたおしちゃってるし、チカリエル・ドリーマーは出ないでしょうね ・・・
ガチャッ
善子「……失礼します」
扉をあけて家に入ると────ふわりと香る、あまい匂い。
マリエル「いい匂いでしょう?」
頷く私に、マリーはとっても嬉しそうな顔で手を広げた。
マリエル「surprise! 実はバタースコッチシナモンパイを焼いたの!」
善子「バター……なに?」
マリエル「バタースコッチシナモンパイよ☆ 私の得意なお菓子なの」
マリエル「あなたが来てくれたお祝いに♡」
善子「な、なによ……おもてなしなんて、別に頼んだわけじゃ……///」
お祝いだなんてそんな大それた事じゃないってのもう別に嬉しくなんかないわよ堕天使はむしろ祝われることを忌み嫌うんだからとはいえせっかく作ってくれたなら食べないわけにはいかないわねええそうよねうんそうそうきっとそう多分そう。
と……落ち着いて、落ち着くのよヨハネ。 マリエル「せっかくだもの、ここで楽しく暮らしてもらいたいわ。だから今日は私の好物のカタツムリパイはガマンガマン……」
うげ、カタツムリって……エスカルゴのこと? 確かにマリーって国際的だし、エスカルゴくらい食べたことあるんでしょうけど。
マリエル「それより、こっちに来て! 他にも見せたいものがあるの!」
手をこまねくマリエル。
早く早く! と急かすマリーに引っ張られる形で廊下を進んでいく。
マリエル「ここが……あなたのroomよ! 綺麗にしてあるからすぐに使えるわ。気に入ってもらえるといいんだけど……」ナデナデ
善子「ちょ、子供扱いしないでよっ! もう!」
マリエル「うふふ♡ あなたはマリーの可愛い娘なんだから、ナデナデくらい許してちょうだい?」
善子「だ、だから娘ってほど年は離れて……」
私がそう反論しようと口を開くと────
……ん?何この匂い?
マリエル「あら? 焦げ臭いわね…………あっ!! oh my god!」
善子「!?」
マリエル「マリーのパイがー!」バタバタバタ
善子「……あー」
なるほど、これは生地の焦げる匂いだったわけね。
慣れないお菓子作りを頑張ってくれたのだろう、彼女の献身に私はとても嬉しい気持ちになった。
にしても、慌ただしいのはここでも変わらないのねマリー…… とりあえず部屋に入ってみましょうか。せっかく用意してくれたんだし……
善子「……」ガチャッ
善子「……ふーん。ずいぶんと可愛らしい部屋ね」
善子「タンスは……いろんな服。男の子、女の子……どっちが来てもいいように揃えてあるみたい」
善子「これはおもちゃ箱かしら? ぬいぐるみにミニカー……ちょっと年齢層低すぎない? 私のために用意されたもの、ってわけじゃなさそう」
善子「……もしかして今まで他にも落ちてきた子供がいたとか? ありえる話だわ」
善子「あ、でも……このぬいぐるみは……可愛いかも」
善子「そして、ベッドね」
ふかふかのベッド。
それを目の端に捉えた途端、猛烈な眠気が私を襲った。
まあ、いきなりこんな世界に落とされてからずっと動き回りっぱなしだったし……
善子「ちょっとくらい……寝ても、いい……でしょ……」バフッ
善子「んん……ぁふ……zzz」 〜数時間後〜
善子「…………ん」
善子「んー……ふぁぁ」
善子「…………」
ぼんやりと目を覚まして、ここが自分の部屋でないことに気づく。
ああ、やっぱり────目が覚めたら私の部屋で学校があって……なんてことはないのね。
やっぱり、ここは現実……私は間違いなく────
善子「……起きよ」
私はのそのそとベッドから降り、顔を洗いにトイレに行こうとして────
善子「ん?」
サイドテーブルに何かが置かれていることに気づいた。
善子「これって……パイ?」
お皿に乗せられた一切れのパイ。シナモンとバタースコッチがふんわり香る、とても美味しそうなパイだった。
善子「……流石に寝起きでこれを食べるのはね」
私はありがたくパイを受け取り、アイテムを……と。
善子「……どうしよ」
ポケットをぱたぱた叩いてみる────と、アイテムストレージが開かれた。
中にはさっき交換した装備の棒切れとほうたい、モンスターアメ数個、スパイダードーナツが収まっていて、バタースコッチシナモンパイもそこへしまっておいた。
ゲームって便利。 善子「さてと、次はこの家の探索ね! 全部の部屋を見て、壺を割ったりタンスを漁ったり……ふふふ」
そうして私は意気揚々とホームの探索を始めた。 ・・・
────家は外観から想像できたように、それほど大きくはないようだった。
玄関から入って目の前には地下室に行くための階段があり、左右に廊下が伸びている。
右に行くと私やマリーの部屋に続く廊下が伸びている。まず私の部屋があって、その隣にマリエルの部屋。
その奥には『かいそうちゅう』と張り紙をされた部屋だけ。
人の部屋の中身を言うのは流石に行儀がよくないから1つだけ言うと……マリーって意外とダジャレ好きみたい。千歌みたいに説明しないだけマシだけど。
そして廊下を左に行くとリビングがあった。
部屋の真ん中には大きな暖炉があり、心地よい炎が灯されている。マリエル曰くこれは魔法によるものらしく、手を入れても火傷はしないみたい。
本棚には大量の歴史書が並べられていて、この世界のニンゲンとモンスターの戦い、そして今に至るまでの内容が細かく記されていた。
リビングの奥にはキッチンがあるわ。大きなパイと、冷蔵庫には何故か有名なチョコが置いてたけど……マリエルも好きなのかしら?
……ま、探索結果はこんなものね。 ・・・
マリエル「Good morning! よく眠れたみたいね」
善子「フッ!」ギラン
リビングに行くと、一人がけの大きなチェアで本を読んでいたマリエルが、眼鏡を外しながら笑顔で迎えてくれた。
私も普段のマリーと会話をするように決めポーズで返事をした。
マリエル「その様子だと、とっても元気みたいでマリーも嬉しいわ! すぐに朝ごはんにするわね♪」
笑顔でスキップしながら、マリーはリビングに消えていった。
数分後。
マリエルが笑顔で出してきたカタツムリ料理を食べることになるとは、この時の私は知る由もなかった…… ・・・
マリエル「……新しい家族ができて、マリーはとってもhappyよ」
善子「え?」
なんとか食事を終えた私に、マリーが慈愛に満ちた表情でそんなことを言い出した。
マリエル「あなたに読ませてあげたい本がたくさんあるし……教えてあげたいこともたくさん」
マリエル「とっておきの遊び場も紹介してあげるし、お勉強だって……ふふ、実はマリー、学校の先生になるのが夢だったの」
善子「へえ……そうなんだ」
マリエル「意外だった?」
善子「そうでもないわよ? マリーって面倒見がいいし、私のこともここまで気遣ってくれてるし……」
マリエル「あ、あら! まあ……うふふ、恥ずかしい……///」 善子「ねえ、それより」
マリエル「なあに?」
善子「新しい家族って……他に、家族はいないの?」
マリエル「……」
あ、やってしまった────そう気づいたのは、とても辛そうな顔のマリーを見た時だった。
善子「ぁ……ご、ごめんなさい、その、わたし……」
マリエル「ふふ、マリーの家族はあなただけよ♡」ギュウッ
善子「!」
マリエル「私の可愛い可愛い……大好きな娘。あなただけがマリーの家族……私の生きがい。だから、ずっとここに居て……マリーと一緒に楽しく暮らしましょうね」ナデナデ
善子「……」
善子「大丈夫よマリー。あなたはひとりじゃないわ」
マリエル「ふふ、ありがとう」
少し寂しそうな笑顔を見せるマリーを慰めてから、私は少し散歩をすることにした。
この遺跡でまだ探索できてないところがないか確認も兼ねて、ね。 ・・・
向かうのは私が最初にいた場所────あの黄色い花が咲いていた小さな空間。
そこへ向かう道すがら、私は自分の置かれた状況を自分なりにまとめることにした。
善子「私のこの状況……どう考えても私は『UNDERTALE』の世界に迷い込んでしまっているわ」
善子「そして登場人物はなぜか私の知り合いの顔をしている。それの理由は、分からないけど……私の認識が置き換わっている、のかしら」
善子「それとも、ゲームをやってないから勝手に想像で改変しちゃってるとか……? まあ、それならそれでわかりやすいからいいんだけど」
善子「異世界に迷い込むなんて堕天使的に最高のシチュエーションだけど、味方がいないこの状況で喜べるほど馬鹿でもないわ」
善子「なにより大事なのは、ゲームの世界であること。
善子「私は……きっとこのゲームをクリアするまで自分の世界に帰れない。よくあるパターンだもの」
善子「そのためにはラスボスまでたどり着かなくちゃいけないから……まずはこの遺跡から外に出なくちゃいけない」
善子「すると、マリーの言いつけを破ることになってしまうから……やっぱり最初のボスは……」
「ケロケロ」
善子「うわっ!?」
か、カエル!? バトルパートか……!
善子「って、あれ……ハートになってない……?」
ってことは、バトルじゃない……の? 善子「あなたは襲いかかってこないのね」
フロギー「ケロケロ(ボクは戦いたくないケロ)
フロギー「ケロケロ(それよりモンスターとのバトルでいいことを教えてあげるケロ)」
善子「いいこと?」
フロギー「ケロケロ(何か特別な行動をとったり、戦って相手を瀕死の状態にすると……)」
善子「うん」
フロギー「ケロケロ(相手が戦う意思をなくすことがあるケロ)」
善子「へえ……確かにプレイヤー目線でもあるわね。戦ってみたものの強すぎてやる気をなくすこと」
フロギー「ケロケロ(そうでしょケロ。だから、モンスターが戦いたくなさそうにしていたら)」
フロギー「ケロケロ(名前が黄色くなっていたらその合図だから、見逃してあげてほしいケロ)」
善子「……見逃す、ね」
善子「なるほどね……考えておくわ。ありがとカエル」
フロギー「ケロケロ」 まあ、私もポケモンとかやってる時に強い奴が出たら『ほえる』あたりで逃げたりしたしね。
経験値はもらえないけど……まあ、他のやつを倒したら補えるしそれはそれで。
善子「それにしても…………戦いたくない敵もいる、のね」
これはゲームの世界だ。
ゲームの世界で、私以外の周りの全てはモンスター。
マリエルもモンスター……だから、つまり……生きている。
だけれど、されどもゲーム。
ゲームなら敵は倒して進むもの。
けれどこのゲームには『殺さない』という選択を取ることも可能────
だからさっきのカエルも見逃してあげて、なんて言ってたわけでしょ?
なら、マリーと戦って和解することができれば……あるいは。 マリエルが私をここから出すまいとする決意は固い……ならば一緒に出てしまえばいいんじゃないだろうか。
善子「そう、そうじゃない!」
善子「RPGなら『仲間にする』ことができるじゃない!」
よく言う『スライムが仲間になりたそうに見ている……』ってやつだ。これでマリーを仲間にすれば、マリーをひとりにすることはない。
きっとマリーも一緒に来てくれる。私もマリーが一緒にいてくれるなら、寂しくないし。
マリーは睨むだけで雑魚モンスターを逃げさせちゃうくらいなんだもの。これから先、必ず戦力として頼りになるわ。
善子「そうと決まれば即行動よ! 遺跡からの出口もマリーなら知ってるだろうし!」
最初の場所へ戻るのをやめ、私はきた道を猛ダッシュで戻った。
急いでホームに帰ると、リビングのマリエルを呼びに……向かおうとして。
ふと、一箇所、探索していないところがあったのを思い出した。
地下へ続く階段だ。 〜ホーム〜
善子「……やっぱりこういうところはちゃんと探索しなくちゃね」
マリエルは地下室について何も言ってなかったから特に気にもしてなかったけれど……
私が探索していない場所はここだけ。
ならば、この先にはきっと────
私はリビングにいるマリエルに気づかれないようにこっそり階段を降りる。
善子「……よっと」
善子「うわ、暗いわね……」
地下室はかなり暗く、長い通路が奥まで続いているだけだった。
とりあえず進む────
「ストップ!」
善子「!」
強い制止の声────振り向けば、そこには私を睨むマリエルがいた」
善子「ま、マリー……? どうしたの、そんな怖い顔して……」
マリエル「もう……roomにいないからびっくりしたわ。ここは危ないから、上で遊びましょ」
そう言うとマリーは私の手を引いて階段をのぼる。
その声色と握る手はいつも以上に優しく、それだけに先ほどの強い声が頭の中で反響しているようだった。
そして確信する────
善子「……やっぱりこの先に、出口が……」 ・・・
善子「ねえ、マリー」
マリエル「あら、どうしたの? いま読んでる本の話をしてあげましょうか」
善子「……それよりマリー、私、この遺跡から出たいの」
さっきの態度。
頑なに地下室へ行かせまいとするマリエル。
私を外へ出したくない物言い。
……おそらく、間違いない。あの先に遺跡の出口がある。
マリエル「……この本は『カタツムリ:72のつかいみち』って言って、カタツムリについての豆知識が……」
現にマリーはこうやって話を逸らそうとしてる。きっと私をここにとどまらせたいのね。
私が自分の世界に帰るには、このゲームをクリアしなくてはいけないはず。
そしてマリーと共に先へと進む。
そのためにはマリーを説得して、分かってもらわなくちゃいけないのだ。
だから私は今、こうしてマリエルと話しているわけ────だが。
善子「遺跡から出たいの、マリー」
何度目かの、このセリフ。
そろそろちゃんと話してくれるかと思っていた、その瞬間。
マリエル「……」
マリーの表情が。纏う空気が。全てが凍ったかのように感じられた。
マリエル「……私はちょっと用事があるからここで待ってなさい」
言うが早いか、マリエルは眼鏡も本も投げ捨てるかのように置いて部屋を後にした。
そして足音は地下室へと続く階段に────
善子「待ってマリー! 私、あなたと一緒に────!」
私はすぐにマリエルを追いかけた。マリエルを説得し、仲間にして、一緒に遺跡から出るために。 〜地下室〜
マリエルは地下に降りてすぐの通路で、こちらに背を向けて立っていた。
マリエル「『おうち』に帰る方法を知りたいのね?」
……私は無言で頷く。それを察したマリエルが続ける。
マリエル「この先に遺跡の出口があるわ。その先は地底の世界……一度出たら、もう中へは戻れない」
マリエル「これから私はその出口を破壊する」
えっ……!!!
マリエル「……もう二度とここから誰もいなくならないように」
善子「マリー、待って! それじゃあ私は……」
マリエル「ええ……一生、私とこの遺跡で暮らすの。お願い、いい子だから上で待っていて」
一方的に言葉を切り、マリエルは通路の先を行く。
善子「はかい、って……そんな、ちょっと待ちなさいよ!」ダッ
追いかける。
マリエルの言いつけは聞けない。そんなこと受け入れたら、私はずっとこのくらい地下の底。
自分の世界には帰れないし、ゲームだってクリアできない。
私の仮説が正しければ、帰るためにはゲームをクリアする必要がある────なら、絶対にマリーを止めなくちゃいけない。
私の世界に帰るため──── 善子「マリー!」
マリエル「……」
マリエル「ここに落ちたニンゲンは、みんな同じ運命を辿るの。私は自分の目で何度も見てきた……」
マリエルは語る。
声を震わせながら、 静かなる決意を灯すように。
マリエル「ここへ来て」
マリエル「ここを出ていって」
マリエル「……そして死んでしまう」
善子「!!」
……しぬ。死ぬ? 私が?
善子「ま、まさか……そんなわけ、だってマリーは優しいし……」
マリエル「あなたは何も知らないのよ。この遺跡から出れば……あなたは彼女たちに」
マリエル「ヨウゴアに……殺されてしまう」
善子「……ようごあ?」
ヨウゴア……ヨウ、曜?
今度は曜と来たか……しかもヨウゴアって語呂悪すぎじゃない? 大丈夫?私の堕天的想像力。
って、そんな場合じゃなくて。 マリエル「これはあなたを守るため……分かってちょうだい。お部屋で待ってるのよ」
マリエルはとても悲しそうに。辛そうに言って廊下を進む。
なるほどね……マリーのやりたいことがわかったわ。
この世界に落ちたニンゲンはモンスターからしたら敵同然なんだわ。
その原因は、この世界で昔、ニンゲンとモンスターの間で起こった戦争。
ヨウゴアってのはその過激派で、マリエルは逆に穏健派……というか、ニンゲンと共存したいと思うタイプ……ってことでしょう。
だからこの遺跡から外に出たら、そのヨウゴアたち過激派によって殺される……ということ。
善子「でも、私は……行かなくちゃ。それがこのゲームのストーリーなんでしょ? なら私はクリアを目指さないと」
善子「じゃないと……私は帰れないんだから」
彼女を追う。
マリエル「……止めても無駄」
マリエルが悲しそうに言う。
善子「マリー、聞いて、私は……」
マリエル「これが最後の警告よ」
善子「ぁ……」 マリエルは聞く耳を持たない。私の言葉を聞こうとしない。
……こういう強情なところは、小原鞠莉とそっくり。優しいからこそ、非常になれる。
大丈夫よマリー。私はあなたと一緒にここを出るんだから。
マリエルがいればヨウゴアなんて怖くないわよ!
マリエル「……」
マリエルが立ち止まるのに合わせて、私も歩みを止める。目の前に大きなゲートが現れたのだ。
これが、遺跡の出口。
ここを出れば、私は地下世界に……
マリエル「どうしても出て行くというのね……」
背を向けながらマリエルが言う。
善子「ええ……私は行くわ、マリー」
マリエル「そう……あなたも他のニンゲンと同じなのね」
嘆息混じりに、マリエルは告げた。
マリエル「なら、残る手段はあと1つ。わたしを納得させて見せなさい」
マリエル「あなたの強さを証明するのよ」 暗転。
・マリエルにゆくてをふさがれた!
善子「……マリー」
善子「ねえ、聞いてマリー」
マリエルは答えない。
善子「……あなたが私を守るために行動してくれてるのは分かるわ。私が傷つかないように、私が死なないように……モンスターから私を守ってくれてるんでしょう?」
マリエル「……」
マリエルが流れるような手つきで空に手をかざすと、そこから炎が現れる。
ひとつ、ふたつ、みっつ────数え切れないほどの炎が渦を巻いて私に襲いかかる。
善子「!!」
善子「わ、ちょっ……! うぐっ……っ」
さすがに避け切れる物量ではない……HPが削られる。
マリーは、本気ってわけね……でも、マリーは私に優しくしてくれたじゃない。私を助けてくれたじゃない。私を守ってくれたじゃない……
善子「ねえ、聞いてよマリー! 私、思ってたの……きっとマリーは私をここから出さないために戦うことになるって」
善子「だから考えたのよ! 私ひとりだったら、きっとマリーの言う通り殺されちゃうかもしれない」
善子「だけど、マリーが一緒なら! マリーが一緒にここから出てくれればきっと怖くないって!」
炎が迫る。
善子「っ……!」
……皮肉なことに話し合いでは通じないらしい。 もう、戦うしかないのね……
善子「マリー……」
私はおもちゃのナイフを握りしめる。
マリエルは目を合わせてくれない。話も聞いてくれない。
なら……さっきのカエルが言ってたように、瀕死にしてから、もう一度……!!
善子「やあっ!!」ザシュッ
マリエル「っ……」
はじめてのダメージにマリエルが少し仰け反った。
戦える……これなら、いける!
マリエルの魔法攻撃を回避し、私は攻撃を浴びせる。
彼女の攻撃は慣れてしまえば、簡単とまではいかないけれど避けることはできる。
マリエル「……」
善子「ねえ、マリー……」
マリーは目を合わそうとしない。
……戦うしかない。
せめて、名前が黄色くなるまで。そしたら相手が戦いたくない合図なんでしょう?
ならあと少し我慢して、マリー……! 善子「マリー……!」
ナイフを振るう。
マリエルの体力は残り半分……私はときどきモンスターアメというアイテムで回復を重ねながら、10以上をキープしている。
善子「マリー……っ」
────ナイフを振るう。
もうやめてほしい。
────ナイフを振るう。
終わらせてほしい。
────ナイフを振るう。
私は戦いたくない……!!
────ナイフを振るう。
早く黄色くなってよ……!
ボスだって仲間にできるはず! だって、だってこれはゲームなんだから!!
だから、だからマリー……!!
ザシュッ!!
マリエル「ぁ、っ……」
善子「…………ぇ」 がくり、とマリエルの身体が崩れ落ち、膝をついた。荒い息を吐きながら傷口をおさえている。
────振るったナイフがマリエルの残り体力
を全て吹き飛ばしたのだ。
善子「ぇ……う、うそ……ま、りー……?」
そんな、なんで……? 今まで少しずつしか削れなかった、のに……
なんで、なんで最後だけ……3分の1くらい、全部吹っ飛ばしたの……?
マリエル「ぁ、は、はは……っ」
傷口をおさえながら、マリエルが言う。
マリエル「あなたは……思ったより、強い子なのね」
善子「ま、っ……マリー、私、私は……」
マリエル「いいこと……? この扉を抜けたら……そのまま、ずっと歩いていきなさい」
マリエル「やがて……出口が、見えてくるはずよ」
マリエルの呼吸はどんどん荒くなっていく。
私の呼吸も、荒く……
善子「まりー……まりー……」
私はマリーに駆け寄…………できない。まだ、バトルパートが終わっていない。
ハートのままでは、マリーに駆け寄ることも、抱きしめてあげることもできない。
善子「マリー……!」 マリエル「……ふ、ふふ」
私の叫びに、マリエルは優しく微笑む。
マリエル「くれぐれも……ヨウゴアにタマシイを奪われないで」
善子「もうやめて! 話さないで!」
善子「私、あなたを殺したいわけじゃ……一緒に、仲間になってほしくて……!」
善子「ねえ、おねがいマリー……死なないで、ねえ、あなたは強いじゃない……! 回復魔法とか、なんだって使えるんでしょ?!」
善子「ねえ、ねえ、マリー……!」
マリーはただ、優しく微笑む。
娘を送り出す、母のように────
マリエル「ヨウの……彼女の、思い通りに……させちゃ、ダメよ」
マリエル「いい子で、いるのよ? マリーとの……約束」
マリエル「おねがいね」
その言葉と。
笑顔を最後に。
マリエルの身体が。
彼女のタマシイが。
消滅した。 暗転。
善子「……マリー!!」
身体の感覚が戻ってくると同時に私は駆けた。マリエルがいた場所へ、彼女を求めて、私は────
しかし。
その場に、もうマリエルはいない。
跡形もなく消えてしまったのだ。
私がこれまで倒したモンスターと同じように。
善子「……」
私は────動けなかった。
善子「…………」
マリーが消えた。
消滅してしまった。
跡形もなく、ちりひとつ残さず。
善子「そ、そうだ……進まな、きゃ……マリーに言われ、たから……うん、行かないと」
善子「いかなきゃ、はやく、いかないと」
震える唇で、無理やり自分に理解させるように言葉にする。
進まなきゃ。
前に向かわなきゃ。
扉を抜けて、遺跡を出なくちゃ。
マリエルの言いつけを守って、扉をくぐる。
そして通路をまっすぐ、まっすぐ、まっすぐに。
まっすぐに──── 「フフフ……」
不思議な部屋に出た。
真っ暗なのに、中央だけ明かりが差している。
その場所に、あの花が────チカウィーがいた。
チカウィー「自分のしたことに満足?」
憎たらしいほどの笑顔で、チカウィーが私に語りかけてくる。
そんなの、満足なわけない。
私はマリエルを殺したかったわけじゃない……一緒に、一緒に遺跡から出たかっただけなのに……!!
チカウィー「ま、不満だとしても運命を変えることなんてできないけどね」
チカウィー「この世界では殺すか殺されるか、だからね」
チカウィー「あの人はそれを変えられると思ってたみたいだけど」
善子「……っ」
なによ、それ……
私は、私は普通にゲームをしてただけなのに……どうして、どうしてこんなに苦しい気持ちにならなきゃいけないのよ……っ チカウィー「あんなに必死になってキミたちニンゲンを助けようとしてさ……フフフ、それで結局自分が死んじゃうんだから!」
チカウィー「救いようのないバカだね!」
善子「ッ……!!」
ブチ、と。
頭の中で何かが切れたような音が聞こえ。
私はチカウィーを殴り飛ばそうとした。
だが。
すでにその姿は消えていて────
彼女の高笑いだけが、空間に響いていた。
善子「……」
行き場のない怒りは、返す刀のごとく私の胸へと突き刺さる。
お ま え が こ ろ し た────と。
マリエルは死んだのだ、と。
信じたく、ない────マリーが、死んだなんて……そんなこと。 善子「……そうだ、電話。ケータイが……」
私はマリエルから渡されたケータイを取り出して、番号を、打ち込み────
・プルルルル……
善子「出て、出てお願い……お願い、お願いだから出て……っ」
・……
・しかしだれもこなかった
善子「ぁ……あ、っ……ぁ、あぁ……」
だれも、でなかった。
何度かけても、必ず出てくれたマリー。
必ず2コール以内に出てくれたマリー。
でも、もう……誰もこの電話に出る人は、いない。
善子「……わたし、マリーを殺したんだ」
ぽつりと呟いたその一言が、私に重くのしかかる。
善子「わたし、が……わたしが……」
善子「マリー……」
名前を呼んでも、もう返事はない。
善子「ぁ、あ……ぁぁ、あっ……あ、ぁ……ぁぁ……っ」
あの笑顔で抱きしめてくれる、大好きな友達はいない。
善子「っ……ぐっ……ぐす、っ……」
私は心がぐちゃぐちゃになって、何も考えられなくなって……
その場にうずくまり、泣いた。
心の中で何度も何度も。
マリーへ懺悔の言葉を呟きながら。 ・・・
善子「……ん」
善子「痛……っ」
気づいたら、眠ってしまっていたらしい。硬い石の床で寝たからか、身体が軋むように痛む。
善子「……マリー」
やはり、マリーはいない。
もう、マリーはいないんだ。
私が……殺したから。
善子「…………」
何もない空間で寝転んだまま、ただ天井を見上げる。
まだ心の整理はついていない。
悲しみもまだ癒えていない。
私の手には、まだ彼女の温もりを感じているかのよう。
────けれど、彼女はもういない。
鞠莉は、マリエルは……私が殺してしまったのだ。
どうすればマリエルを殺さずに扉を抜けることができたのか……私には分からない。
もしかしたらマリエルは絶対に倒さなくちゃいけなかったのかもしれない。
その答えは、私には分からない。
だけど、だけど──── 善子「……よし、これでいいかな。ごめんねマリー、色あせたリボンと棒切れだけの簡単なお墓になっちゃったけど」
即席のお墓に手を合わせる。まだ私の手の震えは消えないけど……私は、マリエルに言われた通りに前に進むしかないから。
……あのカエルの言ったことをもっと早くに聞いておけば、なんて後悔をしても意味はない。
私にマリエルがいたように────
私が道中、倒して……いえ、殺してしまったモンスターにも家族がいたのかもしれない。
彼らにも命があり、魂があるのなら────
────決意を固める。
私はもう、誰も殺さない。
この先、どんな恐ろしいモンスターに襲われても。
どんなに無様でもいい、逃げられるなら逃げるし、見逃せるなら見逃す。
私はこれから出会うすべての命を守る。
その決意を、この墓前に誓う。
善子「……見ていてマリー。私はきっと、もう、誰も殺したりなんかしない」
善子「あなたとの約束……私、守るから」
善子「……じゃあ、もう行くわね」
最後の涙をぬぐい、立ち上がる。
これで流す涙は最後にしなきゃ。これ以上泣いたら、またマリーが心配しちゃうもの。
それに……前に進めなくなってしまうから。
善子「……いってきます」
私は新たな決意を胸に、ゲートくぐった。 今回はここまで
善子の行動はだいたい自分が初めてやった時の内容に準じます 今気づいたけどフラウィって名前伸ばさないね
チカウィも伸ばしちゃダメだった
次回の登場からチカウィで統一します LVアップの描写忘れてた……申し訳ないです
マリエルを撃破した時点で得たEXPでLV5になっています よく考えたらトリエル撃破時にレベルアップ演出はなかったですね
失礼しました
日付変わったくらいに昨日の続き投下します 〜雪道〜
びゅおおーー……と、冷たい風がゲート越しに吹き抜けた。
善子「……さっむ!!?」
トンネルを抜けた先は雪国だった────なんて、ノスタルジックな句を吐いてる余裕はない。
善子「やっ……ば! 何これ……さむ、うぅぅ……」
これ、曜までたどり着く前に寒さで死ぬんじゃ……っていうか地底なのよね!? なんで地底に雪が積もってんの?!
善子「うぅ、これも魔法の力ってやつなのかしら……」
せっかくゲームの世界に入ってるんだから堕天的な魔法とか使えたらいいのに……
マリーがいたら炎で暖めてくれたのかな。
……なんて。
善子「……」
善子「暗くなっちゃ、ダメね」
寒さに震える身体を庇いながら、私は進む。 長い道だわ……どこかに街はないかしら? そこで暖かい服を揃えなきゃ……
善子「ん?」
道を横切るように、大きな木の枝が落ちている。とっても丈夫そう……これを武器にすれば……
善子「……おっも」
なにこれ、重たすぎじゃないの! 全く持ち上がらないんだけど……!
善子「……仕方ないわね。これは置いて行こう……」
結局私は枝を無視して進むことに────
────バキッ!
善子「ひゃぅっ!!?」
唐突の破裂音。
振り返ると────さっきの枝が折れていたのだ。
善子「え……なになになになに……どういうことよホラーとかやめてよ……」
私ホラーあんまり得意じゃないんだけど…… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています