「μ's江戸物語」【凛・花陽編】
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時は江戸時代。
長屋で暮らす、私、希は何時ものように空を眺めて惚けていた。
雲はゆったりゆったりとなめくじのように流れ、することも無い腹も減った。
そんな私は空腹を紛らわす為に、ゆったりゆったりと流れる雲をゆったりゆったりと眼球を動かしながら追っていた。
今日も一日、何事も無く過ぎるだろう。
いや、平和が一番。
後は食うのに困って無ければより一層神様に感謝なのだが・・・。
長屋の住人は皆、私の事を仕事をしない穀潰しだと思っているだろうが仕事はしている。
知る人ぞ知ると言ってみれば聞こえはいいが私がどんな仕事をしているか少なくとも長屋の住人は知りもしないだろう。 まぁ今は私がいるから寂しい思いをする事はないだろう。
こうやって外に出歩くのも、花陽が寝ている時に人間の言葉を練習する時ぐらいだし。
花陽の出身の村は名前は忘れたが、猫の私にもその噂は知っているほど、不思議な噂があった。
その村はどうやら神様がいるらしい。
神の住む村。
そう呼ばれていた。
実際に、私のような猫又という種がいるから神もさぞ神はいるだろうと考えたいが神はこの世にはいない。
あれは人間が作り出した都合の良い言い訳だ。
それでいて、都合の良い依代だ。
私ら獣の中に神を信じる奴はいない。
いつの間にか花陽の産まれた村から神がいるかどうかに思考が変わってしまった。
花陽の産まれた村は黒い噂が絶えない。 例えば、村の神が言う事には何でも従うらしい。
あいつを殺せと言われたら殺し、死ねと言われれば死ぬ。
人間があそこの村には決して近寄るなと言っている。
それは人間だけじゃない。
私達、動物もあそこの村には近寄らない。
近寄るとすればすぐに人間が手の届かない所へ逃げることが出来る鳥ぐらいだ。
それぐらいあそこの村は異質。
大袈裟だが異界なのだ。
花陽は前に聞かせてくれた。
たまたまその村の近くの山を偵察していた町奉行所のお役人により拾われたらしい。
拾われて分かったのは名前だけ。
一緒に手紙も書いてあったらしい。 手紙の内容はこの村で生きるのに疲れたから続き。
最後にこの子花陽をお願いしますと書かれてあったらしい。
恐らく村で狂信的な信者によって何かあったのだろう。
まぁ今は私と楽しく暮らしてる。
過去に何かあったかは重要ではないが、少し引っかかる。
少しでも花陽を癒せる力になる為には彼女を深く理解する必要があるのも事実だ。
ふむ、あーだこーだと考えても仕方がないかと思い伸びをしてから花陽の元へと戻る。 半開きの戸を抜けると、黒い影がゆっくりと動く。
花陽がいつの間にか起きていたようだ。
花陽「凛ちゃん?」
凛「にゃにゃにょ」
ぶっつけ本番で花陽の名を呼んでみるが、失敗。
彼女にはただ私が鳴いただけのように聞こえただろう。
花陽「よ、よかった・・・」
花陽は私を持ち上げ優しく抱きしめた。
花陽「どっか行っちゃったかと思った。心配だった・・・また一人になったかと思った」
抱きしめる腕が微かに強くなる。
私の体温や匂いを更に感じるように、それでいて私が苦しまないように。
怖かったのだろう。
また一人になってしまったと思ったのだろう。
時間はあまり経っていないが、その間不安で仕方なかったのだろう。
花陽「どっかに行っちゃやだよ・・・」
悪い事をしてしまった。 それから、私は花陽に抱きしめられたまま眠ってしまったらしく。
気付けばもう朝だ。
雀の鳴き声が家の外から聞こえ、花陽の腕からするすると抜け出した私は戸の隙間から差し込むお日様の光を浴びながら背伸びをした。
今日もいい天気だ。
花陽「・・・凛ちゃん?」
どうやら花陽も目覚めたらしい。
眠い目を擦りながら私の名を呼んだのでにゃあと返事をしておいた。
花陽「よいしょ・・・朝ご飯作るね」
凛「にゃ」
そそくさと朝飯の支度をする花陽をよそに、私はお日様の光を目一杯浴びていた。 花陽「出来たよ凛ちゃん」
花陽は沢庵に味噌汁、麦飯をせっせと運ぶ。
私の飯は味噌汁とご飯を混ぜたねこまんまだ。
花陽「あ、ねぇ凛ちゃん?」
凛「?」
花陽「昨日はごめんね」
昨日は何かあったかな?と考える。
特別、何もないような気がするが・・・。
花陽「凛ちゃんもどこか行きたい所あるのにどこにも行かないでって・・・私ちょっとわがままだよね」 謝らないでいい、そんな事ない。
私は花陽とずっと一緒にいる。
そう、言葉に出して伝えたかったが、喋れない私はどうする事も出来ず。
この気持ちを伝えるのはどうしたらいいか考えた結果、頭を花陽に擦り付ける。
花陽「あっ、ふふっくすぐったいよ」
無意識に喉がゴロゴロと鳴ってしまう。
私の気持ち、花陽に伝わっただろうか?
花陽「さぁ、ご飯食べよ?」
凛「にゃ」
早く言葉を喋れるようになりたい。 更新が遅くなり申し訳ないです。
ただ今体調が悪く更新が滞ってる状態です。
プロットやその後の展開は考えてあるので今月中には書き切ります。 書けば必ず感想書きます故、どうか続きを所望します… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています