穂乃果「スタートレック」絵里「 イントゥ・ダークネス」 Part4
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老海未「"私はあなた達の運命を変える可能性のある情報は与えないと誓いました"」
老海未「"あなた達の道はあなた達だけで、進むものです"」
海未「・・・・・・」
老海未「"それを承知の上で、お話ししましょう"」
老海未「"エリーチカはミューズが遭遇した最強最悪の敵です"」
老海未「彼女は賢く、残酷で、何の躊躇もなくあなた達を皆殺しにするでしょう」
海未「倒しましたか?」
老海未「犠牲を払って・・・倒しました」
海未「どうやって?」
老海未「・・・・・それは」 ――・・
――――――
――――――――――
👢コツ―ン,コツ―ン…..
にこ「こっちには都合が良いけど、なんで誰もいないの?」
絵里「この船は最悪の場合、単独で飛ばすことが可能よ」
にこ「1人で!?そんなことって・・・・・」
🤛ヒュッ,パシッ!
絵里「・・・・・・」グギッ
士官1「があっ!?」
🤛ビュッ,ドスッ
💥ズウゥンッ!
士官「」ドサッ
ほのにこ「「!?」」 ― U.S.S.ヴェンジェンス号 船内廊下 ―
士官2「いたぞ、かかれっ!」
士官3「ふんっ!」
🤛ビュウッ!
絵里「はっ・・・・!」バシッ
穂乃果「うわっと!」ヒョイッ
士官4「ぬんっ!」
💪ガシッ,ギリギリ
にこ「ああっ、ぐあっ!」
にこ「ふぬぬぬぅ、放せえっ!」バタバタ
穂乃果「待ってたよ・・・・丁度体がなまってた所なんだ、てあぁっ!」
🤜ビュオッ,ドガッ,ドッ..... "誰もいない"その一言が合図であったかのように
通路の左側の角から保安部員の男が躍り出て
3人の先頭を進んでいたエリーチカに飛びかかった。
エリーチカは自分を狙って伸びてきた敵の腕をつかんで捻り上げ
胸に突きを入れると、向かって右側の壁に叩き付けて沈めた。
先陣を切ったその男に続いて、物陰に隠れて接近してきた保安部隊が
侵入者を目掛けて一斉に飛びかかってきた。
エリーチカは即座に二人目を片付けにかかり、彼女の後方にいた穂乃果は
自分に覆いかぶさるように迫って来た相手を躱し応戦する。
その一方で、最も小柄で戦闘にも不慣れなにこは敵の太い腕に捕らわれて
動きを封じられた。
幅2、3メートル程度の狭い廊下が、たちまちのうちに
3人の女とそれに倍する人数の男たちが繰り広げる乱闘の場となった。 士官2「ええいっ!!」ブゥンッ
絵里「・・・・っ!」ヒョッ
絵里「はっ!」シュッ
💥バッシュ! 🤜
士官2「うぅっ!」ヨロッ
💥バッシュ,バッシュ,ドゴスッ! 🤜
士官2「ごっはっ・・・・!」バタッ
エリーチカはここでも超人類の格の違いを敵に見せつけた。
二人目の男が横なぎに振るってきた拳を難なく回避し
逆に相手の横面を目掛けて左右両側からフックを打ち込み
胸に拳をめり込ませる。
常人の拳よりもはるかに硬い、鈍器で殴打されたような衝撃と音が
身体に走り、男は一瞬で意識を手放して倒れた。
タッタッタッタッタッ
絵里「たあぁっ!」ビュワッ
💥ゴスッ👢
士官5「ぐぬあぁっ!」
ヒュウウゥッ,ズゴンッ!
士官6「うぐおぉっ!?」ドサドサッ 間髪を入れず廊下の向こう側から向かってきた三人目の敵に対しては
助走をつけて跳躍し、飛び蹴りを放った。
相手は車に撥ねられたかの如く宙に舞い上がり
数メートル後方にいた4人目の男に激突し、
そのまま床に折り重なって伸びた。
士官7「このぉっ!」ジャキンッ!
🔫ガシッ,ベリッ! 🤛
士官7「はっ!?」
💥Smash!🔫
士官7「ぶふっ・・・!」パタッ
絵里「ふぅ・・・」
絵里「・・・・・・」
五人目の男は大型のフェイザーを携えていた。
しかしエリーチカは彼が引き金を引くよりも早く
その手から武器を奪い取ると顔面を目掛けて振るい、殴打した。
彼女はクリンゴン戦士十数人を相手取って互角に戦える超人類
人間の士官数人程度を片付けるなど造作もない事であった。 穂乃果「ていやぁっ!」ブンッ
💥Kick!👢
士官3「ぶわっ」
にこ「ん〜〜っ!んん〜〜〜っ!!」バタバタ
穂乃果「放せえぇっ!」
💥Kick!👢
士官4「んぐっ!」
保安部隊「「「「・・・・・・・」」」」
穂乃果「これで全員か・・・・・にこちゃん、大丈夫?」
にこ「げほっ、ええ・・・エリーチカは?」
穂乃果「はっ・・・・・いないっ!?」 ― 同刻 ミューズ号艦橋 ―
海未「大尉、上級医療士官と機械技師を兵器室に集合させてください」
ことり「分かりました」
海未「ドクター真姫、先程魚雷を起動しましたが、もう一度できますか?」
真姫「どうして私にそれを聞くのよ?」
海未「できますか、できませんか?」
真姫「ああもうっ、私は医者よ、魚雷の事なんか知らないわよ!」
海未「ええ、だからこそ私の言う事を注意深く聞いてください」
真姫「はぁ・・・・?」 タッタッタッタッ.....
にこ「アイツ、どこに行ったの?」
穂乃果「はぁっ、はぁっ・・・・ダメだ、分からない!」
穂乃果「しまったなぁ・・・・」
絵里「遅いわよ、何してるの?」スッ
穂乃果「!」ビクッ
絵里「・・・・・・こっちよ、ついて来て」
タッタッタッタッ…..
穂乃果「・・・・ブリッジに着いたら彼女を撃って」
にこ「え、麻痺させるの?私たちの助っ人じゃないの?」
穂乃果「私たちがあの人の助っ人みたいだよ・・・・」 ――・・
――――――
――――――――――
💻ビュイイィ――ッ,ピピピッ💡
砲手「パワーが戻りました」
絢瀬「再度ミューズを狙え」
砲手「了解」カタカタ
🎇キュウウゥン! バチイッ! 🔫
砲手「うぐっ・・・・!」バタッ
絢瀬「何だ!?」
タッタッタッ!
穂乃果「っ!」ジャキンッ
🎇ズキュン,ズキュウゥンッ! 🔫
通信士「かはっ!」
💥Shoot! 💥Shoot! 💥 絵里「!!」ジャキンッ
💥Beam! 💥Beam! 💥
航海士「ぐっ・・・・!」
💥Spark! 💥Spark! 💥Spark! 💥
「あ”おおっ!」
「う”あっ!」」
ドサドサドサッ.....
システムが復旧し、絢瀬提督が今度こそミューズ抹殺の命を
下そうとした正にその時、穂乃果たち3人がブリッジに突入し、
瞬く間に提督以外の全員を昏睡させた。
船の中枢が制圧され、形成は完全に逆転、
老獪な絢瀬提督の謀略は、若きキャプテンの奇策と強運、
そして勇気の前に破られる事となった。
絢瀬「・・・・・」
穂乃果「はあっ、はあっ・・・っ」コクッ
にこ「・・・・っ」コクッ
💥ズギュゥンッ!
絵里「う”っ!!?」ドサッ
穂乃果「あの人を見張って」
にこ「OK、ちょっと失礼・・・」トットットッ
亜里沙「はい・・・・」サッ 絵里「」
絢瀬「・・・・・・」
穂乃果「絢瀬提督、逮捕します」
絢瀬「まさか本気でやる気じゃないだろう?」
穂乃果「椅子から立ってください、提督」
絢瀬「・・・自分が何をしているかよく考えるんだ、高坂」
絢瀬「お前はクロノス星で何をした?」
絢瀬「お前は敵の惑星に侵入したんだ、クリンゴンの警備隊を殺した」
絢瀬「禍根を残さなかったとしても、戦争は避けられん」
絢瀬「その時誰が指揮を執るというのだ?貴様か!?」
穂乃果「・・・・・・・」 絢瀬「私が先頭に立たなければ、人類は存亡の危機に立たされる!」
絢瀬「それでも私に下船を命じると言うのなら、この場で殺すがいい・・・!」
穂乃果「あなたを殺したりしません」
穂乃果「ですが麻痺させて、椅子から引きずり下ろすことはできます」
穂乃果「娘さんの前でそうしたくはないけど・・・」
穂乃果「亜里沙ちゃん、大丈夫?」
亜里沙「はい、キャプテン・・・・・」
絢瀬「ぐぬうぅっ・・・・・・!」 追い詰められ、孤立無援となっても尚、
提督は己の意志を曲げようとはしなかった。
その言葉の中にも、道理があることは穂乃果も分かっていた。
政治の場、ことに国同士の駆け引きの場においては、
理念ばかりを語ることはできない。
むしろ、それらが通用しない事の方が遥かに多いかもしれない、と。
この広い宇宙、姿も心も異なる多様な種族との関係の中では、
時に互いの相容れぬものの為、
望まぬ争いを強いられることもあるだろう、と。
しかし、だからこそ許すわけにはいかなかった。
同胞を生贄にして、誰も望んでいない戦争を
わざわざ自ら始めようとする行為を、
自分やエリーチカの、仲間を思いやる心を踏みにじった悪辣さを。
・・・・・・・。 💥ドスッ
にこ「っぐ・・・!」バタッ
亜里沙「穂乃果さんっ!!」
穂乃果「えっ?」
💥ズンッ
穂乃果「うあ"っ!!」バタッ
絢瀬「ふぅ・・・・・」
それは一瞬の事だった。にこのくぐもった呻き声と
それに重なる殴打音に穂乃果が振り返った瞬間、
黒い影に視界が閉ざされ、全身に衝撃が走った。
コンソールを飛び越えたエリーチカの体当たりを受けて
穂乃果は呆気なく床に転がっていた。
穂乃果「くうううぅ」
絵里「・・・・・」バゴッ
穂乃果「ぐえっ」
絵里「はああぁっ!!」バギッ!
穂乃果「ごっほぉ・・・・」
👊ムンズッ,グギュウウゥ・・・・・💥
穂乃果「い"っ、あ"あああああっ・・・・!!」 椅子から逃げようとする提督を捨て置き、
エリーチカは穂乃果の顔面に拳を叩きこんだ。
鉄槌で打たれるような衝撃で、頭の中に火花が散る。
幾人もの荒くれ者たちの拳を身に受け、腕っ節を磨いてきた穂乃果だったが
エリーチカの放つ一撃一撃はそれらを遥かに上回っているのを実感した。
絵里「ふんっ!」ゴスッ
穂乃果「ああっ・・・」
ブォンッ!!
穂乃果「うわあああっ!!」バッターンッ,ズササァ...
穂乃果「うぐうぅ・・・・・」
エリーチカは更に穂乃果の髪の毛を鷲掴みにして無理やり立たせ
腹部に膝をめり込ませる。
肺の中の空気を吐き出させて無力化したキャプテンを投げ飛ばすと
穂乃果の身体はコンソール台の隅の方へ滑り、そこで力なく伸びた。
エリーチカは麻痺を受けて僅か数十秒で意識を取り戻していた。
予想を超えた優勢人類の回復力によって、穂乃果たちの主導権は脆くも奪われた。 コツコツコツ.....
亜里沙「待って!」バッ
絵里「・・・・・・・」
亜里沙「話を聞いてっ!」
🖐パシ――ンッ! 💥
亜里沙「きゃっ」バタッ
絵里「邪魔よ」ゴスッ
🦴ゴキャッ!! 💥
亜里沙「あっ"、はああああああぁぁぁぁぁっっ!」
闘争心を露わにしたエリーチカは、邪魔者を片付けると
その矛先を絢瀬提督に向けた。亜里沙は逃げる父親を庇い
全身から敵意を漲らせて歩き迫る超人の前に立った。
しかし、彼女は用済みとなった下等人種の話を聞く耳など持たない。
虫けらを払うように平手で薙ぎ、コンソールに寄りかかった亜里沙の
足を思いっきり踏み付ける。
骨の砕ける音と共に亜里沙は悲鳴を上げた。
亜里沙「ああああああぁぁぁっ・・・・・っ!!」
亜里沙「あああ・・・・・!うううぅ・・・・・」
絢瀬「!?」 絵里「・・・・・・」ズンッ,ズンッ,ズンッ
絢瀬「まっ、待てっ!」
ガシッ!
絢瀬「あっ、ああっ!?」
💀ギリギリギギギ
絵里「ふううぅ・・・っ!ふうううぅぅ・・・・っ!!」
絢瀬「うがっ、はがあぁっ!!」 提督はブリッジの隅に設けられた脱出ポッドを起動させて
逃走を図ろうとしていた。エリーチカは彼の頭を両手で掴み、
ポッドから引きずり下ろした。
万力の如く頭蓋を絞め付ける彼女の息は獣のように荒く、
眼は冷たい炎で爛々と輝き、顔は憤怒の形相に歪んでいた。
絵里「ふううぅぅ・・・・ぬうううぅっ!!」ギシッ,ギシギシッ
絢瀬「ああっ、あああっ・・・・!!」ミシミシッ
絵里「あなたはっ、私を・・・・・」
絵里「眠らせておくべきだった!!」ギリッ,グギギギギッ
絢瀬「い"っあ"あ"っ、はがっ、あ"あ"あ"あ"ぁっ!!」ピシッ,ビギギッ
💀......ゴリッ,ゴシャッッ! 💥
亜里沙「うああああああああああああっ!!!」
穂乃果「!!」
仲間を奪われた悲しみ、利用された怒り、弄ばれた屈辱。
その全てを渾身の怪力に込めて、エリーチカは絢瀬提督の頭蓋を粉砕した。
亜里沙の悲鳴がブリッジに響き渡った。 ――・・
――――――
――――――――――
海未「キャプテンは今どこに?」
希「センサーが落ちていて分からん・・」
💻ブツッ
絵里「"私の要求は至極単純・・・・・"」
穂乃果「"うぅ・・・・・"」
海未「キャプテン!」
絵里「"互いのクルーの交換よ"」
海未「裏切ったのですね・・・・!」
絵里「”あら、賢いのねMs.園田”」
穂乃果「"海未ちゃん、ダメだよ・・・・"」
ギリギリッ,グキッ
穂乃果「”ああぁっ!"」 絵里「”Ms.園田、私の部下を渡して”」
海未「渡したらどうする気ですか?」
絵里「”やりかけていた任務を達成する”」
海未「その任務とは、貴女方が価値を認めない種の大量虐殺だったはずですが?」
絵里「”ふふっ、あなたも虐殺してあげようかしら?”」
絵里「”それとも、私の要求を呑むか”」
海未「我々の転送装置は機能しません」
絵里「”幸運にも、こちらのは完璧に機能するわ”」
絵里「‟シールドを下げて頂戴、そうすれば問題なく交換できる‟」
海未「しかし、そうすればあなたがミューズを破壊しないとも限らない」 絵里「はぁ・・・・・仕方ないわね」フルフル
絵里「なら論理的に事を進めましょう」
絵里「まず、私が自分の決意を示すためにあなたのキャプテンを殺す」
穂乃果「・・・・・」
絵里「それで足りなければ他に方法が無いわ、あなたのクルーを皆殺しにする」
にこ「・・・・」
亜里沙「くっ、ううっ・・・・・」
海未「”この船を破壊すれば、あなたの部下をも殺すことになりますよ”」
絵里「あなたたちと違って、私の部下には酸素が必要ない」
絵里「だから、ミューズの船尾にある生命維持装置を壊せばいいわ」
絵里「そして、あなた達クルーが全員窒息死してから・・・・」
絵里「冷たくなったあなた達の死体を跨いで、私が悠々と部下を迎えに行くの」
絵里「それじゃ、始めるとしましょう」ニヤッ 海未「・・・・シールドを解除してください」
希「・・・了解」
⌨カタカタカタ…
🛡ギュウウゥン…….
絵里「賢い選択よ、海未」
🥾ドガッ!💥
穂乃果「う”っ!!ゲホッゲホッ・・・・・」
絵里「72本の魚雷はまだ発射管の中ね?」
絵里「もし私のじゃなかったらすぐに分かるわ」
海未「”ヴァルカン人は嘘をつかない。その魚雷はあなたのものです”」 エリーチカは穂乃果に再度蹴りを入れて床に打ち捨てると、
ミューズの格納庫をスキャンした。
コンソールパネルにミューズの第二船体が表示され、
それ拡大すると、側面一列に設けられた発射管の内部に
魚雷が装填されているのがはっきりと確認できた。
本性を現した超人類の前に、ミューズは無力だった。
キャプテンを人質に取られ、生殺与奪の権を握られた彼女たちは
取引を呑む以外の道は残されていなかった。
⌨ピッピッ,ピロロ―ッ
💫シュイイイイィィ――……
✨シュオォッ!
絵里「ふふっ、ハラショー・・・・」
転送装置を起動し、監視カメラに目をやると、
シャトル一台置かれていなかった自艦の格納庫に
無数の魚雷が出現するのが見えた。
広大な空間に規則正しく並んだ部下たちの寝床を見て
エリーチカはほくそ笑んだ。 絵里「ありがとう、Ms.園田」
海未「“あなたの要求は呑みました、次はこちらの番です”」
絵里「ええ、約束は違えないわ」
絵里「さあ、穂乃果。あなたをクルーの下へ帰してあげる」
穂乃果「うぅ・・・・・」ヨロヨロ
にこ「痛っつうぅ・・・・」フラフラ
絵里「キャプテンは、やはり・・・・」
💫シュイイイイ.......
絵里「船と運命を共にしなければね」
✨イイイィィ――ンッ,カッ!
🚨⚠ピィ―イッ,ピィ―イッ!⚠ 🚨
希「フェイザー砲をロックしとるっ!!」 ✨シュオオォンッ!
監守「!?」
亜里沙「うぅん・・・・・ここは?」
にこ「あの野郎!今すぐここから出しなさいっ!」
( ( ( ドオオンッ! ) ) )
にこ「う”わ"っ!?」ドタッ
穂乃果たち3人が転送されたのは、エリーチカが収監されていた独房だった。
にこがガラス壁を蹴りつけて叫ぶのと同時に
船体を大きな震動が襲い、機関士の体は寝台に投げ出された。
ドオオォォ……
〜〜〜〜〜〜Σ=> Σ=> Σ=> シュウンッ,シュルルルッ!
💥ドゴオッ💥ドゴオッ💥ドゴゴゴオッ! 💥
絵里「ふふふふ・・・・あははははっ!」 💥ドオォンッ! ガタガタッ!!
海未「・・・っく!」
希「シールド、残り6%!」
今度こそヴェンジェンスから放たれたフェイザー砲が、光子魚雷が
ミューズ号を目掛けて一斉に襲い掛かる。
その様子を、エリーチカは恍惚とも言うべき表情で眺めた。
最大火力をもって一撃でミューズを焼滅させようとした提督とは反対に
無慈悲な彼女は弱火で炙るように、相手をじわじわと
いたぶって葬るというより残虐な手法を選んだ。
誰に憚ることも無く優生人類の残虐性を発揮した余興。
或いは、彼らの覇業の再開を祝うに相応しい盛大な儀式。
ミューズはそのための生贄であった。
海未「あの魚雷は、あと何秒ですか!?」
希「12秒や!」
海未「全員、近隣での爆発の衝撃に備えなさい!」🎙
タッタッタッタッ…..
にこ「何言ってんの、爆発って何よ!」
穂乃果「!!」
穂乃果「魚雷だよ、あの魚雷を仕掛けたんだ!」 ⏱ピッ….ピッ….ピッ…..ピ――ッ!
タイマー『”00:00”』
💥ドガアアアァァ――ンッ!!💥
絵里「きゃああっ!」バタッ
💥Doom!💥Doom!💥 Dooooom!💥
絵里「う、嘘・・・・まさか、そんな!!」
絵里「Heeeeeeeeeeeeeeeet!!」
🔥ドゴゴオオォ…… ヴァルカン人は嘘を吐かない。しかし、正直者とは限らない
エリーチカがヴェンジェンスに回収した魚雷は
その時点で既に起動していた。
パネルのタイマーがゼロを表示した瞬間、72本全ての魚雷が一斉に起爆し
格納庫は木っ端微塵に吹き飛ばされた。
その炎が外殻を突き破って第二船体を丸ごと包み込む様子は
ミューズのブリッジからもはっきりと見えた。
ミカ「やった!やりました!」
ヒデコ「人間を甘く見るからよ。ざまあ見ろ!」
希「魚雷が起爆した。やりよるな、海未ちゃん!」
海未「ありがとう、希」
エリーチカは、部下を家族と呼んだ。
その言葉が示したように、彼女には志を共にし
戦火をくぐり抜けてきた彼らへの並々ならぬ執着がある。
故に、海未はエリーチカがミューズを裏切り抹殺しようとするその前に
何らかの方法で部下を取り戻そうとする可能性に賭けた。
その賭けは、見事に成功した。 タッタッタッ….
穂乃果「真姫ちゃん!」
真姫「来たわ、ナース!」
看護師「はい!こちらへ、絢瀬博士」
亜里沙「ああっ、あっぐぅ・・・・」ズキズキ
ことり「大丈夫、直ぐに治るから・・・」
足の折れた亜里沙の腕を両脇から抱えて医務室に入って来た
穂乃果とにこを、真姫と医療部員が迎えた。
ことりは看護師と共に亜里沙を受け止めると、寝台へと運んだ。
真姫「お帰り、穂乃果」
穂乃果「魚雷の起爆を手伝ったでしょ?」
真姫「よく分かったわね」
穂乃果「エリーチカのクルーを殺したの!?」
真姫「いいえ・・・」 真姫「海未は冷たい人だけど、そこまでじゃないわ」
真姫「エリーチカのクルーはここにいる。ほら見て」
⚰🛏⚰🛏⚰⚰⚰🛏
⚰⚰🛏⚰🛏⚰⚰⚰…….
真姫「人間アイスキャンディ72本、カプセルごと全部取り出したわ」
真姫「お陰で病室はこの通り、足の踏み場も無いけど」
穂乃果「すごいよ、真姫ちゃん・・・・ははっ」
真姫「お安いご用よ」フフンッ
💡ブツンッ
穂乃果「へ・・・・?」 💡ブツンッ,ブツンブツンッ,ギュウウウゥ――・・・・・・・
ギギッ,ギギギギイィ・・・・・・
希「中央パワーブロックが機能停止!」
海未「補助パワーに切り替えなさい」
ミカ「補助パワーも起動しません!」
優生人類にようやく一矢報いることができた。
そう思えたのも束の間に過ぎなかった。
船中の照明が点滅するとともにミューズ号が船首から前のめりに傾き
一度は収まった震動が再び激しさを増していく。
((( ズゴゴコオオォッ!! )))
希「中佐、船が地球の引力に引っ張られよる!」
海未「止められますか?」
希「このままじゃ、どうにもならん・・・!」
ミューズの試練は終わっていなかった。度重なる攻撃に晒されて
船の動力系統は安定を維持できない程に損耗していた。
一難去ってまた一難、平衡を失ったミューズは地球へ向けて
真っ逆さまに落下し始めた。 🚨⚠ピィ―イッ,ピィ―イッ!⚠ 🚨
💥ボボオオォ――ンッ!!
ガラガラガラッ!! ドンッ,ガラララッ!!
機関クルー「きゃあああっ!」
パイプ(プシュウウウウ――ッ!!)
花陽「あわわわ・・・・はわわわっ!」
花陽「ぜっ、全エリア封鎖!全員直ぐに退避してください!」
💻 “WARP CORE OFFLINE” 🚨
ワープナセルが火を噴き上げ、爆風に巻き込まれた機関士たちが
剥離した部材と共に下層部に転落してくる。
最早コアの修繕どころではない。花陽は作業にあたっていた
全エンジニアに即時退避するよう命じた。
真姫「緊急ロックダウンよ、負傷者をベッドに固定して!」
真姫「外に出てる器具も全部しまいなさい!」
真姫「あなたが揺れに強いといいけど」ガチャガチャ
亜里沙「あ、あなたは・・・?」
真姫「・・・・弱いわ!」 海未「フミコ、全デッキに避難命令を」
フミコ「了解!」
🔊"全デッキに通達、避難命令が発動されました。
🔊各自脱出用シャトルへ乗り込むこと。繰り返す・・・・"
海未「キャプテン代理として、皆さんにも退避を命令します」
💺ガチッ🔒
海未「私は残り全てのパワーを、生命維持と脱出用に回します!」
希「・・・・・・・」
ミカ「・・・・・・」
クルー達「・・・・」
海未「これは命令です、船を捨てて逃げなさいっ!」
希「お言葉やけど海未ちゃん、皆どこにも行かへんで!」
💺ガチッ🔒
海未「・・・・」
希「こうなったら、一蓮托生や・・・・!」 タッタッタッタッ…….
にこ「たった一日にこがいないだけでこれよ!」
グラグラグラッ,ガクンッ!
にこ「うわわわっ!」ズルズルズルッ!
海未「”重力システム停止、掴まれ、掴まれっ!”」
穂乃果「うおおあぉっ!!」ズザザザザッ,ガシッ
穂乃果「ううぅ・・・」
地球の重力に捕らわれたミューズは、風に揺られる木の葉のように
激しく船体を揺らしながら急降下していった。
医療室に真姫たちを残し、ブリッジに向かおうとした穂乃果たちは
ターボリフトに通じる渡り廊下で傾斜に見舞われ、辛うじて欄干に掴まった。
船内に張り巡らされた廊下には、しがみつけるような物は殆ど無い。
その時運悪く船室を出ていたクルー達は、巨大なシーソーと化した船が
横倒しになる度に、重力に引きずられて滑落するしかなかった。
士官「きゃあああぁぁぁ・・・・!」ヒュルルルル…..
穂乃果「くっ・・・・!」
🔊"全デッキに通達、避難命令が・・・・”
にこ「船の姿勢を安定させるパワーを回復させない事には、避難なんかできないわよ!」
穂乃果「回復できるの?」
にこ「機関室でないと、ワープコアに行かなきゃダメよ!」 ゴゴゴッ,ギギイイィ・・・・・
穂乃果「もっ、戻った・・・・」
士官「誰かぁっ、引き上げて!」
フミコ「ほら、掴まって!」グググ
フミコ「急いで、また傾く前にここを離れないと・・・!」
にこ「穂乃果・・・・上の階が・・・」
穂乃果「にこちゃん、とにかくパワーの回復を、急ぐよ!」
穂乃果たちはワープコアのある機関部を目指して走り出した。
床が壁に、壁が天井に、再び天井が壁に・・・
上下と前後左右が目まぐるしく入れ替わる。
その中を走るのは洗濯機やコンクリートミキサーの中を
進むような心地だった。
穂乃果「はぁっ、はっ・・・・・」
🎇パァンッ,バチバチッ!
ゴォンッ,ギギギゴゴゴ・・・・
にこ「また来たわっ!」
穂乃果「止まらないで!走り続けるんだよ!」 ヒュルルルルル……
士官「ああああぁぁぁ・・・・・・・!!」
穂乃果「にこちゃん、飛ぶよ!」
にこ「ええっ!?」
穂乃果「飛べっ、飛べぇ!」シュバッ
にこ「嘘おぉっ!」シュタタッ
深い垂直の縦穴と化した曲がり角を飛び越えようとすると
上方から転落してきた士官が悲鳴と共に穴の底へ消えていくのが見えた。
今、この時ばかりは彼女たちに救いの手を差し伸べる事はできない
船を安定させるまでは、何とか自力で身を守ってもらうしかない。
より多くを救うために、目の前の個々の人命を見捨てる。
キャプテンにとっては歯痒い選択だった。
床(ミシミシ……バキッ,ベリベリベリッ!)
ミカ「非常用パワー、15パーセントから低下中・・・・!」
☄ズゴゴゴゴ……. 〜 機関部 〜
🔊”各自脱出用シャトルへ乗り込むこと。繰り返す・・・・"
🌉ダッダッダッダッ……
穂乃果「もう少しだ、急いで!」
穂乃果「花陽ちゃんが無事ならいいけど・・・」
にこ「花陽?あの子にここを任せてたの!?」
窓から見える地球の姿が少しずつ大きくなっていく。
その間に、穂乃果たちはやっとの思いで機関部に通じるドアをくぐり
上階のバルコニーからせり出した細い足場を伝って降りていった。
機体が傾く度に、資材や工具、壊れた部品が頭上から降り注ぐ。
そんな機関部は船内でも輪をかけた危険地帯と化していたが
ターボリフトが使えない以上、階下に降りるために
使用できるルートは他に無かった。
穂乃果「的確な人事でしょ?」
にこ「いや何やらしてんのよ!」
にこ「いくらあの子が優秀だからって荷が重・・・」
ゴオオォンッ!ガガガガッ!
穂乃果「っ!!掴まれえぇっ!」
にこ「もおっ!」 ガァンッ,ガラガラガラッ!
穂乃果「振り落とされないで!」
にこ「くううぅ・・・あたしの可愛い船がぁ・・・あんまりよ!」
足場を渡り切るよりも早く空間が横転し、二人はまたしても
細い欄干にしがみ付いた状態でぶら下がる羽目になった。
船の骨組みや外殻が軋む音が、広大な機関室全体に反響している。
にこにはその音が、自らが手塩にかけて整備し、
我が子のように守ってきたミューズ号の上げる悲鳴のように聞こえた。
バキッ!バリバリッ!
にこ「!?」
🛢ヒュルルルルッ!!
穂乃果「危ないっ!」
💥ガアアァン!
穂乃果・にこ「「うあああああっ!」」 パラパラ…….
━✊━ グググ・・・・
にこ「ほ、穂乃果ぁ・・・!」
穂乃果「頑張れ!」
こんな事になるくらいなら、仲間を残して船を降りたりなどするべきじゃなかった。
自分が同行していれば、この惨事を未然に防ぐことができたかもしれないのに。
にこは、最初に魚雷の違和感に気付いておきながらも
エンジニアのプライドを捨てきれずにミューズを去った
自分の選択を心の底から悔やんだ。
その後悔に追い打ちをかけるかの如く、自重で脱落した冷却用のガスタンクが
足場に、それも丁度二人のいる地点に直撃し、二人は空中へと投げ出された。
にこ「くっ・・・・もう・・・ダメっ・・・・!」ズルッ
🤝ガシッ
穂乃果「ふんっ!ふぬぬぬぬ・・・・!!」プルプル
━✊━ グギギギ・・・
穂乃果「ぬおおおおおおっ!!」プルプル
にこ「馬鹿っ!放しなさい、アンタも落ちるわよ!」
穂乃果「うおおおぉ・・・そんなのっ、ダメだっ!」 ヒョオオオォォ……
にこ「放すのっ!このままじゃ二人とも!」
━✊━ ギチギチ,ギギギ・・・・ズルッ!
穂乃果・にこ「!!」
🤝ガシッ
穂乃果「・・・・ん?」
花陽「ふぐぐぬぬぬっ・・・!穂乃果ちゃん、にこちゃん!」
穂乃果「花陽ちゃん!?」
花陽「つ、掴まえました!」プルプル
にこ「でかしたわ!離さないで!」
花陽「ふんっ!ぐむむむううぅっ!!」
花陽「ぬううわあああぁぁぁっっ・・・・・!!」 ゴゴゴッ,ギギイイィ・・・・・
花陽「うっ、腕が・・・・・」ジンジン
穂乃果「ありがとう、花陽ちゃん」ゼェ―,ハ―
にこ「ワープコアが回復しても、パワーを調節しないと!」
花陽「そうだよ、穂乃果ちゃん!」
穂乃果「どういうことなの?」
にこ「手動オーバーライドに切り替えなくちゃ、スイッチがあるから」
花陽「デフレクター板の後ろにあります、私が行くので二人はコアの方に!」
穂乃果「よし、行こうっ!」 花陽「はあっ、はあっ・・・・急がないと!」
ズゥンッ,ガクンッ!
花陽「わあっ!」ツルッ
ズルッ,ズルズルッ….. (傾斜20度)
花陽「うわっ、ちょっと待っ、ダメっ!」
ズザザザザザザァ――ッ!(傾斜50度)
花陽「うわっ、うわああああ・・・・!」
花陽「ピャアアアァッ―――ッ、ダレカタスケテエェ―――!!」 海未「希、全パワーをスタビライザーに」
希「今できるだけのことをやってる!」
― デフレクター制御室 ―
花陽「はあっ、はっ・・・し、死ぬかと思った・・・・・」
花陽「切り替え装置は・・・・あった、あれだ!」
⌨カタタタッ!
花陽「ふんっ、ううぅんっ!(重いっ!)」
ギギギギ、バカッ
花陽(良かった、開いた・・・・後は、このレバーを!)
ガシャンッ!
花陽「やった・・・・行けた・・・」
花陽「後は頼みました、穂乃果ちゃん、にこちゃん・・・・」 🔊 "コアが未調整、危険です。コア・・・・"
にこ「ちょっとちょっと・・・待って待って、待って!」
穂乃果「何!?」
にこ「コアがフレームごとずれちゃってる」
にこ「これじゃパワー調節なんてできないわっ!」
にこ「船は死んでるわ!もうおしまいよ・・・・」
ゴゴゴゴ・・・・
穂乃果「・・・・いや、まだだよ!」ダッ
にこ「はぁっ、何?」 タッタッタッタッ
穂乃果「ここが入り口だね?」
⌨ピッピッ,カタカタカタ
にこ「待って穂乃果!中に入れば死んじゃう!」
にこ「ねぇ聞いてる?放射線にやられるって!」
穂乃果「・・・・・・」カタカタ
にこ「頼むから聞いてよっ!あんた何するつもりなのっ!」
穂乃果「ドアを開けて中に入る」
にこ「そのドアで放射線を防いでるんでしょうがっ!」
にこ「中に入ってもコアを登りきる前に死んじゃうって!」
穂乃果「・・・・・・」ピタッ
穂乃果「大丈夫、にこちゃんは登らせないから」 にこ「はあ・・・?」
穂乃果「ふんっ!」
💥🤛三ドゴッ
にこ「う"っ!」グラッ
💺ドサッ
パネルを操作する穂乃果の手が止まった次の瞬間、その手が拳となって
にこの顔面に炸裂した。不意打ちを食らった機関士は、堪らず気を失い崩れ落ちた。
穂乃果はその体を抱き止めると、コンソールの前に置かれたシートに座らせ
ベルトでしっかりと固定した。
ガチャッ,プシュウ――ッ
穂乃果「よし、開いた・・・」
穂乃果「にこちゃん、ごめんね・・・・」
にこ「」
タッタッタッタッ…… パネルにコードの続きを入力し、遮蔽扉を解除した穂乃果は
にこの方を振り返って呟いた。
機関主任に抜擢されて以来、誰よりも徹底して
船の安全を守ってきた彼女に対するせめてもの謝罪だった。
力なくシートに寄りかかかるにこを後に残して、穂乃果はエアロックの扉を
内側から閉じた。そして反対側にあるハッチを上げると、大人一人が通れる程度の
低く狭い内部通路を四つん這いで進み、ワープコアの深部へと入っていった。
ゴソゴソ....
⚡ヴヴヴヴヴ......
穂乃果「これが、コアの内部・・・・・」
シャフト(ジジッ......ジジジジッ........)
穂乃果「あれか・・・・」
遮蔽通路を通り抜けた抜けた先は、ドーム状の防護壁に密閉された窪地になっており
その中央には太い円柱がそびえ立っていた。その周りには木の幹ほどもある
太いケーブルが張り巡らされ、螺旋を描いて上に向かって伸びていた。
これがダイリチウム結晶炉、ワープ航行に使うエネルギーを含め
船のあらゆる動力を生み出す心臓だった。
全てのケーブルが一つに合流するその頂上部分、窪地と天井のドームで形作られる
球体の中心部分では、炉の内側から突き出たシャフトが火花を散らしていた。 ジジジジ....
穂乃果「んっ・・・」フラァッ
穂乃果「・・・・・っ!!」パァン
穂乃果「よし、行こう!」ガシッ
あのシャフトの曲がりさえ元に戻せば、コアはまたエネルギーを精製できる。
穂乃果は意を決し、早くも頭の奥に生じた微かな痺れを無視して
ケーブルに足を掛けた。
☄ゴゴゴゴ......
⌨シュタタタタタッ!カタタタタ!!
希「良い子やから、もうひと頑張りして・・・・・!」 ブリッジではクルー達がシステムを復旧しようと努力を続けていた。
希は、パイロットとして持てる限りの知識と技術を総動員し
あらゆる手段を使って動力系統へのアクセスを試みていた。
その両手は目にもとまらぬ速さでコンソール上を駆け巡り
正確無比にキーを叩いていた。
希「このままシールドが張れないと、再突入でみんな燃えて灰になる!」
海未「・・・・・・」
🚨ヴィ―ッ,ヴィ―ッ!
しかしその間にも、真っ暗だった船外の景色は徐々に青みを帯び始め
星々の輝きがその中に溶け込んで次第に消えていった。
希の言葉通り、ミューズ号は流星になろうとしていた。
地表の景色は、目前に迫っていた。 穂乃果「ハア・・・・・ハア・・・・」スルスル
穂乃果「ふぬぬぬぬっ!!」ガシッ
穂乃果「あっ・・・・・」クラァ
穂乃果「はっ!」ガシッ
穂乃果「ぐぐぐぐぐ・・・・・っ」
コアの中は薄暗く、焼け付くように熱い。階段や梯子も無い。
命あるものを拒む過酷な環境の中で、途切れることなく続く揺れに耐えながら
滑りやすい丸いケーブルを伝おうとすれば、僅かに残された穂乃果の体力は
容赦なく奪われていった。
(((ズズゥンッ!グラッ)))
穂乃果「うあっ!」ズルッ,ガシッ
穂乃果「ハッ・・・・ハッ・・・ハッ・・・・・」ズキズキ
穂乃果「うっ・・・痛っつう・・・・・・」 炉の中程まで来て、腕の力だけを使って全身を引き上げようとした時
急激な目眩に襲われ、意識が遠のきそうになった。
振り落とされまいと、ケーブルにかじりつき、乱れた呼吸を
整えようとすると、頭の痺れがいつの間にか明確な痛みに
変っているのが分かった。
穂乃果「ダメだ・・・・ダメだ、ダメだ・・・・」
穂乃果(穂乃果がやらないと、みんな死ぬ・・・・それだけは、絶対!)
穂乃果(頑張れ、もう少しだっ!)ブルブル
穂乃果「ふんっ!」ガシッ
規則にも常識にもとらわれず、己の情熱と信念に
突き動かされるまま走り続けてきた。
父の背中を追い、東京の下町から艦隊アカデミー、そして宇宙へと至った
その旅路の果てに、穂乃果を待ち受けていたのは父と同じく
クルーを救うために自らの命を引き換えにするという過酷な運命だった。 ☄ゴゴゴゴゴォッ!
🔥ボボオボボボオォッ!!
外殻(ベリッ、ベリベリベリイッ・・・・・)
ミューズ号の外縁部がオレンジ色に染まり始めた。
それは、ミューズがいよいよ大気圏に突入し、摩擦で生じた熱が
船体を焼き焦がそうとしている事を示していた。
超高温の大気は、ヴェンジェンスの砲撃で穿たれた裂け目から船体の
内側に侵食し、風圧は亀裂をさらに押し広げながら銀色の
化粧板を引きはがしていった。
穂乃果(後、一息・・・・)
穂乃果「ふんっ、ぬああおおおおおっ!」ググググ
穂乃果「・・・・くうぅっ!」ダンッ
穂乃果「あぁ・・・はぁ・・・・ふぐっ!?」
穂乃果「げぇっ・・・・ヴぇえっ、ゲホッゲホッ」
穂乃果「つ、着いた・・・・」フルフル ミューズ消滅までの秒読みが始まるのと時を同じくして
穂乃果は遂に頂上部の縁に手を掛けた。
炉を登りきると、折れ曲がったシャフトの中で生成された
プラズマエネルギーがワープコイルに通じるケーブルに
送られることなく明滅しているのが見て取れた。
シャフト(ジジジジ・・・・・・バチバチッ・・・・・・・)
穂乃果「後は・・・・・えいっ!」
💥ガンッ👢
穂乃果「えぇいっ!」
💥ガガンッ👢
穂乃果「ぬあああっ!」
💥ガターンッ👢
穂乃果「くうぅ・・・・」ズキズキ
穂乃果は天井から延びるもう一方のシャフトに手をかけてぶら下がり
対となる曲がったシャフトを蹴りつけ始める。
心臓は既に早鐘の様に打ち、胃の裏返るような猛烈な吐き気が襲う。
炉から放たれた放射線がじわじわと細胞を破壊していく激しさに
全身が悲鳴を上げていた。
しかし、それでも穂乃果の足はシャフトを蹴るのを止めようとはしなかった。
船が燃え尽きるのが先か、キャプテンが力尽きるのが先か。
全ては時間と自分自身との勝負だった。 "私にとって、私のクルーは家族よ"
"あなたには家族のためにできない事なんてあるの?"
穂乃果(あなたの言う通りだよ、エリーチカ・・・・)
穂乃果(家族のため、仲間のためなら、なんだってするよ・・・・)
穂乃果(あなたみたいに、皆を見捨てて逃げたりなんかしない!!)
頭を割らんばかりの激痛の中で、穂乃果はエリーチカの問いに答えた。
エリーチカの仲間に対する親愛の情は結局の所、遺伝子改良で肥大した
支配欲と利己心の産物でしかない。故に自分自身に危害が及べば
いとも簡単に隅に追いやられ、消え去るものだ。
穂乃果(皆も船も、穂乃果の手で守ってみせるっ!)
💥ガンッ,ガンガンッ! 👢
シャフト(グラッ.....)
穂乃果「うんっ!ふぅんっ!」
穂乃果「直れ・・・・直れ・・・直れっ!」 しかし、穂乃果たちは違う。
彼女らの心は時に論理や利己心を越えて動き
己の命すらも投げ打ってその意志を貫こうとする。
他者のために命を張れるか。その姿は強き者にとっては
愚かで不可解な行為でしかないかもしれない。
だがその非合理さこそが、時に避けられぬ運命をも
変える人間の力であるという事を
穂乃果はその身を以て証明しようとしていた。
シャフト(グラグラ.....)
穂乃果「コア、直れええぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
シャフト(グラグラグラッ,ズズッ,ガチッ)
⚡バチバチィッ,シュボオォッ!🎇
穂乃果「うあああっ!」ドンッ
ガラガラアッ!
渾身の力を込めた連続蹴りを受け、遂にコアの軸が動いた。
上下一対のシャフトが垂直に並び、その両端から放たれた光線が
ぶつかり合い、プラズマがほとばしり出る。
エネルギーが起こす波動に弾き飛ばされ、
穂乃果の身体は炉を転がり落ちていった。 >>69
誰にもレス貰えないからって自演して恥ずかしくないの? ミカ「ワープコアが回復しました!」
海未「スラスターエンジン、全開!」
希「よっしゃあ!」
希「スラスター全開、スタンバイ!スタンバイ!」
極限まで密度を高められたエネルギーがワープコイルに注入され
船を駆け巡り、停止したあらゆる機能が息を吹き返していく。
そのタイミングを希ら艦橋のクルーは逃さなかった。
ナセルとシールドを起動し、スラスターに点火
船の安定化を図ると共に落下に歯止めをかける。
船体基底部に設けられたスラスターから炎が噴き出し
ミューズ号を押し上げようとするエネルギー作用に相殺されて
船の速度は徐々に低下、回復したシールドに保護されて、
摩擦による外殻の剥脱も止まった。
既に空は青く染まり、眼下には白い雲が広がっている。
地表すれすれでの起死回生だった。
ナセル(ボッ,ギュイイイィィッ!)
スラスター(シュボボッ,ボボボボッ!!)
☁☄ゴゴゴオォ………ズボッ☁
.........。
☁ 🚀ギュオオ〜〜〜オオォッ!! ☁ シールド技師「シールドが回復」
動力管制「中佐、パワーも回復しました!」
希「海未ちゃん、姿勢が安定した!助かったんや!」
ミカ「もうダメかと思いました・・・奇跡ですね」
黒煙を纏わりつかせたミューズが雲海を突き抜けて消えた。
その直後、白雲を濛々と沸き立たせて、長大な円盤が顔を覗かせた。
歌の女神ミューズは死の淵から蘇り、
傷だらけの翼を広げて再び天空へと舞い上がった。
努力が報われたクルー達は胸を撫で下ろし、ブリッジ全体が
疲労感と安堵に包まれた。希は座席の拘束を解除しながら
この奇跡を与えてくれた神に深く感謝した。
海未「そんなものは無いはずです・・・・・」
🔊ブツッ
にこ「"機関室からブリッジへ、Ms.園田、聞こえる?"」
海未「にこですか?」
にこ「"中佐、こっちへ来て頂戴。大急ぎで"」
海未「・・・・・・っ!」ダッ タッタッタッタッ.....
海未「にこ、矢澤少佐!」
にこ「・・・・・・・」
海未「Ms.矢澤、一体何が・・・?」
にこ「・・・・・・・」
コアの回復と、にこからの通信。
その二つが結びついた時、海未の中に生じたのは激しい胸騒ぎだった。
一刻も早く、この不穏な感情の正体を確かめたい。
抗い難い衝動に突き動かされて、海未は殆ど飛び上がるように
船長の椅子から立ち上がり、ターボリフトの方へ走っていた。
ズルズル…..
穂乃果「ハァ・・・ハァ・・・・・」ズルズル
穂乃果「うぅ・・・・・」ズズッ,ズッ
海未「!!」 にこは稼働し始めたワープコアの前に立っていた。
海未の姿を見ると、エンジニアは何も言わず、ただ首を横に振った。
彼女の背後の透明な遮蔽扉に目を移し、その内部の光景を見ると
炉の中核部に繋がる内部通路から、
穂乃果がゆっくりと這い出てくるところだった。
海未「・・・・開けてください」
にこ「除染プロセスが終わってないわ。区画全てが汚染される」
にこ「ドアは開けられない・・・・」
海未「・・・キャプテン!」ダッ
穂乃果「ハァ、ハァ・・・・ゴホッ・・・・・」ピッピッ,カチカチッ
ハッチ(プシュ―ッ,ガチャンッ)
穂乃果はやっとの思いで体を引きずり、遮蔽扉へ辿り着くと
レバーを引いて内部通路のハッチを閉じ、除染シークエンスを起動させた。
全精力を使い果たした彼女には、もはや立ち上がるだけの力も残されていなかった。
力なく扉に寄りかかる穂乃果に、海未は駆け寄った。
手の施しようが無い事は分かっていた。だが、そうせずにはいられなかった 穂乃果「ふう・・・・・・・」
穂乃果「わ、私たちの船は・・・・?」
海未「危険を脱しました。あなたがクルーを救ったんです・・・・」
穂乃果「・・・・・奴を魚雷で攻撃するなんて」
穂乃果「よ・・・よく考えたね」
海未「あなたなら、そうするだろうと」
穂乃果「・・・・これもだよ」
穂乃果「海未ちゃんならこうしたよ・・・・唯一、論理的な手だから」 海未「・・・・・・・・」
穂乃果「・・・・・・・」
穂乃果「ねえ海未ちゃん・・・・」
穂乃果「穂乃果、怖いよ・・・・どうすればいい?」
穂乃果「どうすれば・・・何も感じない?」
海未「・・・・・・・」
海未「分かりません・・・・」
海未「今は、私にもできないんです・・・・!」 扉一枚隔てた向こう側で、穂乃果は迫りくる最期の瞬間に怯え、凍えていた。
命と引き換えに仲間を守るという、自身の父と同じ運命を選択しながらも
彼女に与えられた死は父親に訪れた速やかなものとは違い、
無慈悲な程に緩慢で冷たかった。
快活さを失い、幼子の様に弱り切った姿を目の前にしても
海未は彼女の望むような答えを与えられなかった。
確かにヴァルカン人は頑ななまでに論理を重んじる。
しかしその理由は、彼らに元来備わっている起伏の激しい感情を抑制し
平穏と調和を得るためのもの。
決して理不尽な運命を甘んじて受け入れるためのものでも
他の誰かにそれを強要するためのものでもない。
論理的な選択の末にキャプテンに訪れた悲劇的な結末に
彼らの望む平穏など無かった。 穂乃果「・・・・・でも・・・これなら」
穂乃果「火山で・・・・どうして海未ちゃんを見捨てられなかったか」
穂乃果「あの時どうして戻ったか、分かる?」
海未「あなたが私の・・・・友達だからっ・・・・!」
震える声で絞り出すように答えた時、キャプテンの姿は
目頭から零れようとする熱いものでぼやけ始めていた。
自分の涙によるものだという事は直ぐに分かった。
どれだけ疎んじられても、退けられても、副長として助言を続けてきた。
しかし、いざ本当に必要とされてみれば
目の前で苦しんでいる彼女に何も与えられない。
延ばした手は届かず、守るべきものは再び失われる。そう、母のように。
目の前で繰り返されようとしている悲劇によって
海未が保とうとしてきた平静は脆くも崩れ去ってしまった。
穂乃果「そう、だよ・・・・・・・ゴホッ」
穂乃果「やっと、分かってくれた・・・・ね・・・・」
海未「っく!ううぅ・・・・」グスッ
穂乃果「・・・・・・」 自らの中にある、同胞を失う悲しみや恐れについては
深く理解しているつもりだった。
しかし、キャプテンや恋人から自分に向けられていた同じ思いには
応えられていなかった。与えられた生き方に忠実であろうとするが故に
仲間たちの思いを無下にしてしまっていた。
今自分が感じている胸を引き裂くようなこの悲しみは
私の死で皆が感じるであろう悲しみなのだ。
何故もっと早く、別の形で気づけなかったのか。
身をもって知る代償は、あまりに大きかった。
穂乃果「はっ・・・はあっ・・・っ・・・」スッ
🤚プルプル….
海未「・・・・?」
🖖"長寿と、繁栄を"
海未「!!」
副長の答えを聞いた穂乃果の顔からは
苦痛が消え、微かだが安らかな笑みが浮かんだ。
海未の地球人としての半身がこの瞬間に感じている、
抑えきれない程の悲痛。それは彼女が自身でも気づかぬ内に
種族の垣根も上官と部下の関係も越え
心で穂乃果と深く繋がっていたという証しでもあった。
仲間とは助け合うもの。そこに理由などは必要ない。
自分にとって海未は仲間だ。だから救いたいと思った。
そして今、海未がその思いをようやく受け止めてくれた。
それを確かめられた事が、死にゆく穂乃果の大きな救いとなった。 海未「・・・・・・」スッ
🖖"長寿と、繁栄を"
🙏
穂乃果「・・・・えへへっ」
落涙する海未へ、穂乃果は震える腕を延ばした。
扉に押し当てた手は、中指と薬指の間を大きく開き、Vの字を作っていた。
ヴァルカン・サリュート。ヴァルカンの人々が同胞と交わす
最大限の祝福と敬意を込めた挨拶のサインだった。
最後の気力を尽くして送った二人の友情の証。
海未はガラス越しに手を重ね。同じ形を作ってそれを受け取った。
穂乃果「・・・・・」
穂乃果「」
海未「キャプテン・・・?キャプテン!」 タッタッタッ……
ことり「海未ちゃんっ!」
穂乃果「」
海未「・・・・・・・」
ことり「穂乃果ちゃん・・・そんな!」
にこ「だから言ったのに・・・バカ!」
海未を追って機関室へ入ったことりが、ワープコアの前で見たもの。
それは拳を握りしめ立ち尽くすにこと
ドアを隔てて穂乃果の前にうずくまる海未。
真っ直ぐに海未を見据えていた穂乃果の瞳から光が消え
頭が垂れる。力を失った手が、ゆっくりと滑り落ちていく。
その時間が、永遠の様に長く感じられた。
穂乃果「」
海未「ああぁ・・・・・(また、守れなかった)」
海未「・・・・・・・」
海未「・・・・・・っ!!」
海未「エリイィーチカアアあああぁぁぁっっ!!!」 ☄ゴオオオオォ――――ンッ!!
希「おおっと!すれすれやった・・・・・」
☄ズドドドド!!
絵里「目的地をセット!宇宙艦隊本部ビルよ!」
🔊"故障により、目的地への到達を保証できません、命令の確認を・・・"
絵里「もう確認したわ・・・・!」
安定を取り戻したミューズ号の真後ろを
ヴェンジェンス号の巨体がすり抜けて落ちていった。
同胞を目の前で爆殺された上、下等種族に出し抜かれた。
その衝撃と絶望から、エリーチカは怒りで我を失っていた。
全ての策略を打ち砕かれ、部下たちも失った今
彼女の中に残されたのは唯一つ、復讐心だけだった。 ゴゴォン.....
「ん・・・?」
「何だ、あれ・・・・?」
☄ゴゴゴゴッ
「船だ、あんなデカいの見た事ねぇっ!!」
多くのサンフランシスコ市民にとって
その日はいつもと変わらぬ一日となる筈であった。
宇宙艦隊の動揺を聞き知ってはいたものの
それはどこか遠い場所で起こった事件でしかなかった。
漆黒の宇宙船が空から降りてくるのを見るまでは。
☄ゴゴオオオオオオォォッ!!
「こっちに向かってくるぞ・・・・・!」
「ああ、神様・・・・」ガクッ
「逃げろ、逃げろおお!!」ダッ 湾に侵入し、市街地を目指して飛んで行くヴェンジェンス号の姿は
岬の先端にある宇宙艦隊のアカデミーからもはっきりと見えた。
候補生たちは、目の前を横切っていくのを
ただ立ち尽くして見る事しかできなかった。
敵は余りにも標的に近く、
彼らはあまりにも遠い場所にいて、無力だった。
☄ゴゴゴゴ........ズガアアァン!!
🌊ザッパアァ.....!!
🏙ズドドドド..! 💥
「「「うわああああああ〜〜〜っっ!!!」」」
「「「きゃああああああ〜〜〜っっ!!!」」」
アルカトラズ島と、その上に立つ刑務所史跡を削り取ると
ヴェンジェンスは船首から海面に突っ込んだ。
その船体は、水を海底の砂泥諸共すくい
数百メートルの壁を打ち上げても尚止まらなかった。
主人の執念に応えるかのように、巨艦は行く手を阻む高層ビル群をなぎ倒し
内陸の艦隊本部を目指して驀進を続けた。 🏙ズガアァン,ズガァン.....ズゴゴゴ..... 💥
🏙ガラガラ,ドドオォ.... 💥
🏙ギギイィ..... 💥
ヴェンジェンスは墜落の衝撃で分断された。
まず円盤状の第一船体が自らの作った瓦礫に勢いを相殺されて停止
続いて、葉巻状の第二船体がその下に潜り込むように突っ込んで止まった。
何千、何万とも知れぬ連邦市民の断末魔が、瓦礫の下に埋もれて消えた。
超人エリーチカの復讐(Vengeance)が、宇宙艦隊の中枢を地獄絵図に変えた。
希「やりおったな・・・・・・エリチ・・・・」
花陽「何てことを・・・・酷すぎる・・・・」
海未「敵の船の生命反応を探してください!」
希「さすがにあれじゃ生きとらんよ・・・・」
海未「いいえ、彼女は違う!生きてます!」
希「・・・・・了解」 📢ウゥ――ッ,ウゥ――ッ........
🎇フシュウウウゥ......ジジッ,バチバチッ.......
絵里「うっ・・・・うぅん・・・」ヨロヨロ
絵里「ふう・・・・・・・」
スルッ,スルスルスル.....シュタッ
🏙ヒョオオオオォ...... 🔥
絵里「・・・・・・・」
絵里「すうぅ・・・・・・・っ」
絵里「はあっ!」シュバッ
ヒュルルルルル......ドンッ,ズザザァ―――...... 海未の言う通り、エリーチカは艦長席の背後に隠れ
墜落の衝撃から身を守っていた。
彼女は起き上がると、大きく前方に傾いたブリッジを滑り降りて
ガラスの砕け散った展望窓の縁に立った。
飛距離、加速度、落下の衝撃、最適な降下ルート。
全てを瞬時に計算しブリッジの端から大きく跳躍、
ズタズタに引き裂かれた甲板に着地した。
希「うわっ、30mは飛んだで!」
海未「転送できますか?」
花陽「損傷が酷く信号を補足できません!」
花陽「でも、こちらから転送で降ろすことはできそうです」
彼女が長大な急斜面となった甲板を滑り降りて、地表の瓦礫の上に立つのを
ミューズのクルー達はモニターで捉えていた。
この女は自分たちの予想を超えている。数々の驚異的な離れ業を見せつけられて
今やクルー達はエリーチカが何をしても殆ど驚かなくなりつつあった。 海未「・・・・・・」
ことり「捕まえて」
海未「・・・・・・」コクッ
タッタッタッタッ……
花陽「ブリッジから転送室へ、園田中佐が向かいます」
転送技師「”了解”」
花陽「転送の座標は・・・・・3597の2598!」
転送技師「”座標を確認、転送します”」 🏙ゴオオオン......🔥
「クリンゴンの攻撃か!?」
「いや、あれは艦隊の船だぞ・・・・」
「じゃあ、事故なのか?」
「分からない、何がどうなっているのか」
「救助はまだなの!?」
ザワザワ....
ギャーギャー
ズンッ
「うあっ!」
スタスタスタ.....
絵里「・・・・・・」 絵里(本部ビルまでは届かなかったわね・・・・)
絵里(でも、これで終わりじゃない)
絵里(いつの日か必ず、繁栄に驕る弱く愚かな者たちを一掃する)
絵里(そして強く偉大な世界を作り上げる!)
🧥バサッ
絵里(クリンゴンも、その先から来る敵さえも及ばない世界を・・・・)
目の前に広がる凄惨な光景に被災を免れた人々が茫然として立ち尽くしている。
エリーチカは彼らを押しのけて、足早に墜落現場から立ち去ろうとしていた。
黒煙と粉塵の立ち昇る廃墟を背に、誰かの落とした上着を羽織り
何食わぬ顔で歩いていく彼女は既に野望の成就に向けた次なる計画を
頭の中で描き始めていた。
💫シュイイ――ン....
市民「ん・・・・?」
エリーチカ「っ!」
✨カッ!シュゥンッ!
海未「・・・・・」クルッ
エリーチカ「・・・・・・・っ!」ダッ
海未「待ちなさい!」ダッ 🏃🏼♀ビュゥッ
「きゃっ!」
🏃🏻♀ビュオォッ!
「うおっ!?」
「なっ、何!?」
ミューズ号の副長が地上へ降り立ち、
最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
混乱の渦中で行き交う人々の間を縫って、
二人の女が駆け抜けていく。
跳ね飛ばされれば無事では済まされない。
その常人離れしたスピードを見た人々は
彼女らの前方から慌てて飛び退き道を作った。
海未「はあっ、はぁっ、はぁっ・・・・」
絵里「はあっ、はあっ・・・・くっ!」 絵里(やるわね、ヴァルカン人)
絵里(この私を、ここまで追い詰めるなんて)
絵里(このエリーチカが、尻尾を撒いて逃げるなんて、屈辱だわ!)
絵里(でも・・・・・・・絶対に)
絵里(絶対に捕まらない!)
絵里「はっ!」
🏢ガッシャアァンッ!! 💥 全速力で市街地を疾走しながら、エリーチカは恥辱を噛み締めて思った。
無様だった。かつて地球上の半分を支配した女王が全てを失い
ただ一人で異星人から逃げている。エリーチカにとって
それはおよそ300年の人生の中で味わったどれにも勝る辛酸だった。
だがしかし、その苦汁を飲み込んで、今は逃げる。
彼女にはそれだけの精神的な強靭さがあった。
エリーチカは行く手に見えた階段を3段飛ばしに駆け登ると、
ビルのエントランスを突っ切り反対側の窓ガラスを突き破って走り続ける。
あのヴァルカン人からは、かつてない程の強烈な敵意を感じる。
彼女は間違いなく自分を殺すつもりで追ってきている。
先に逝った同志たちの為にも、絶対に捕まるわけにはいかなかった。
・・・・・・。 絵里「どいてっ!」ドンッ
「きゃあっ!」
🚗キキイイィッ!
👢ダッダッ,ダダダダダッ!!
海未(逃がしませんよ・・・・・!)
海未(絶対に捕まえて・・・・あなたを殺す!) 仲間に対する思いは、海未も同じであった。
園田大使が語ったもう一つの世界。そこで起こったエリーチカとの死闘で
危機に陥ったクルー達を命と引き換えに救ったのは他ならぬ海未であった。
あのコアに入っていたのは穂乃果ではなく、自分かもしれなかった。
いや、自分であれば良かった。生涯の友情を約束されたはずの人に対する
無念の思いが、海未を突き動かしていた。
坂道を駆け下り、通行人を突き転ばし、走る車の眼前をすり抜けて
逃げ続けるエリーチカと、髪を振り乱してその背後に食らい付く海未
二人の追走劇は、互いが失った大切な存在に対する思いを競う戦いになっていた。
・・・・・・・・ バサッ
穂乃果「」
にこ「・・・・・・・」
看護師「・・・・・・」
負傷士官「・・・・・」
亜里沙「穂乃果さん・・・・・・」
除染された穂乃果の亡骸はにこたちの手で医務室に運び込まれた。
シートが取り除かれ、変わり果てた姿で戻って来たキャプテンの姿が
中から表れると、その場にいた誰もが言葉を失った。
真姫「・・・・・・・」コツコツ
真姫「はあぁ・・・・・・・」ドサッ
"真姫ちゃん、ほら早くっ!"
"凄ぉい、ピアノも弾けて歌も歌えるなんて!"
"お願い!これで最後にするから!レポート写させて、ね?"
真姫「・・・・・・」 真姫(いつか・・・・)
真姫(こういう日が来るかもしれないって思ってたけど)
真姫(穂乃果、アンタって人はっ・・・・!)
艦隊で初めてできた友が、無言で横たわっている。
その様を見た真姫は力なく椅子にへたり込んだ。
脳裏には騒がしく、無鉄砲で、底抜けに明るく元気だった
友人の姿が浮かんでは消えていった。
真姫(馬鹿ね、真姫・・・・何考えてるの)
真姫(私は医者よ、生き返らせるなんて不可能だって分かってるでしょ?)
真姫(だって、穂乃果はもう・・・!)
医者でありながら、目の前の死を受け入れられない
医者であるが故に、救う道を諦めきれない。
それが親友の死に直面した真姫にとっての不幸だった。
( ).....
(( ))モゾッ
((( )))モゾモゾ
真姫「・・・・・え?」 離婚で全てを失った時以上の絶望感に犯され、額を抑える真姫
彼女の沈痛を終わらせたのは、視界の端にいた一房の毛玉だった。
見間違いかもしれない。最初に研究サンプルとして積み込んだ時、
それは間違いなく生命機能を完全に停止していたのだから。
そう思い主任用デスクに置かれたトッリブルの死骸に目をやると
死んでいた筈の獣は確かに息を吹き返し、おもむろに動き始めていた。
(−8−)クルルルル....
真姫「!!」ガバッ
(・8・)チュンッ,チチチ.....
真姫「・・・・・冬眠用のカプセルを持って来て!」
トッリブルの穏やかな囀りが、沈黙に支配された空間に響き渡る。
それを聞いた真姫の頭の中を思考が電流の如く駆け巡り
目には消えかけていた紅玉の輝きが再び宿った。
医療主任の力強い一声で、止まっていた医務室の時間が
再び慌ただしく動き始めた。 タッタッタッ……
通行人「うん?」
🏃🏼♀ビュオッ,ズンッ💥
通行人「う"っ」ドサッ
絵里「・・・・・・・」シタタタタッ!
キャプテンが、助かるかもしれない。医療班に一筋の光明がもたらされた一方、
その肝心要となるエリーチカは依然として逃走を続けていた。
海未の追跡が始まって以来、両者は全力で市街地を疾走し
その距離は数キロにも及んだが、
二人の差が縮まる気配は一行に見えなかった。
いつしかヴェンジェンスの残骸はビル群の合間に埋もれて姿を隠し
彼らの前方には都市下層部の工業地帯から立ち昇る白煙が見えてきた。
絵里(鈍いわね、人間は・・・・・まあ、仕方のない事だけど)
絵里(それに引き換え・・・)
海未「はああぁ・・・・はああぁっ・・・・!」タッタッタッタッ 絵里(彼女のあの剣幕・・・・復讐心ね)
絵里(船を救って死んだキャプテンの仇討ち。そうでしょ、Ms.園田?)
絵里(考えなくたって分かるわ、だって・・・・・)
絵里(今のあなた、あの時の私と同じ顔をしてるから!)
絵里(でも、残念ね・・・・・復讐を果たすのは)
艀(ギュルルルルルルル〜〜〜〜〜)
絵里(私の方よ!!)
シュタタタタタタッ,ビュゥオッ.........ダダンッ!
艀(ギュヴィヴィヴィイィ〜〜・・・・・・) 彼女らのいる大通りは摩天楼の間に敷設された複数の街路が重なった
立体交差の上層部に位置している。
その各所には都市の下層を見下ろせる大きな吹き抜けが点在しており
それらは地表区域に向けて出入りする多数のシャトルの通り道にもなっていた。
正に渡りに船。エリーチカは新たな逃走手段としてその内の一機に目を付けた。
通りの縁に沿って設置された落下防止用の欄干を乗り越え
廃棄物を積んだ赤い艀をめがけて跳躍した。
タッタッタッタッ......
海未「はあっ!」ビュオッ,
━✊━ガッ
艀(ヴィイイイイィィ〜〜〜・・・・)
海未「ふっ、くうぅ・・・・・・・」
🏙ヒョオオオオォ......
海未が敵に追いついた頃、既に艀は人々の頭上数メートルの高さまで浮上していた。
艀の甲板に華麗に着地したエリーチカに対し、海未は手すりを踏み台にして
それも相手を地上に引きずり戻さんばかりに手を伸ばして飛び上がり
ようやく辛うじて船底にぶら下がることができた。 ハッチ(ギギギ.....)
絵里(この艀を使えば、郊外の廃棄物処理場まで一気に行ける)
絵里(そこまで来れば、隠れる場所なんていくらでも見つけられる)
絵里(走って逃げるよりはずっと合理的よ)
絵里(それに・・・・)
🧗ズルッ,ズズズ.....
💥シュババッ,ドスッ👢
海未「うっ!」
🔫カランッ,カランカラン...... 海未は艀の船腹を伝い、右舷の側から甲板へ這い上ろうとした。
その行動が敵に対して無防備な姿を晒すことになった。
海未の頭が船べりから覗いたのを見るや、
エリーチカは操縦席のハッチを開けようとする手を止めて、
即座に追っ手の始末にかかった。
エリーチカが海未の腕を目掛けて放った蹴りは
フェイザーをその手から弾き飛ばし
敵が所持する最も強力な武器を失わせた。
絵里(しつこい追っ手を片付けるのにももってこいの場所だわ!)
🤛ギュムッ,グリッ,ズザザカッ!
絵里「ぬうぅんっ!!」ブォンッ
💥ドォンッ!
海未「うあはっ!」ドサッ
地の利で劣る海未は敵の先制をまともに受けるしかなかった
怪力によって引きずり上げられ、次の瞬間には宙を舞い、
右舷の船縁に叩き付けられていた。
逃げるか。戦うか。二者択一ではなく、両方を同時に行う。
空飛ぶ艀は最も効率的なその選択を可能にする絶好の舞台と言えた。
神はエリーチカに肉体と精神の二物に加えて、悪運をも与えていた。 海未「」ヨロヨロ
🤛ゴオッ!
海未「くっ!」ヒョイッ
絵里「ちっ・・・・・!」
🤛シュッ! 🤛シュッ! 🤛シュッ! 🤛
海未(来るっ!)
🤜シュッ! 🤜シュッ! 🤜シュッ! 🤜
🤜 💥 🤛ガガッ! 甲板にうつ伏せに倒れ込んだ海未を狙ってエリーチカのフックが飛んでくる。
かがんでそれを回避した海未も即座に応戦、同じくフックを放つ。
さらにエリーチカがそれを躱し、二撃目を放つ。
二人が交互に拳を繰り出し、相手の出方を探る間、艀は高度を上げながら
ビルの角を曲がり、摩天楼の間を通る宙道に沿って飛び始めた。
地球を発ち、クリンゴンの首都惑星を巡り
同胞の裏切りと陰謀がもたらした暗闇を乗り越え再び地球へと至る。
数日に渡って繰り広げられたミューズ号の追跡劇は今、
再び空中へとステージを移し、二人による一騎打ちという最終局面を迎えた。
・・・・・。 海未(そこだっ!)
🤏ガシッ,ギュウゥッ!
絵里「う"っ!?」
絵里「い"っ、ああ、ぐあああああっ!!」
海未はエリーチカの攻勢の中にわずかに生じた隙を突いて
彼女の肩を掴み、肉に深く指を食い込ませた。
その瞬間、エリーチカは久しく感じた事の無い激痛が全身に広がるのを感じ
反射的に悲鳴を上げた。彼女が物理的な苦悶で顔を歪めるのは
ミューズと対峙して以来これが初めての事だった。
⚡キィ――ン...
絵里「はああ・・・・ぐあぁ・・・・」
絵里「うおお・・・おおぉ・・・」ガクッ
海未「・・・・・・・」
絵里「おおおぉ・・・・・」 ヴァルカン・ピンチ。
ヴァルカン人の持つテレパシー能力の応用形態である格闘技の一つ。
相手の神経系統を直接掴み、伝達作用に働きかけるこの技は
使い方次第で対象の意識を遮断し、死に至らしめる事さえできる。
海未は父親の血から受け継いだこの力を最大限に使って
エリーチカを屈服させようとした。
絵里「ふぐぐうぅ・・・・・・」
🤏ガシッ✊
海未「!!」
絵里「ぬあああぁっ!」
🤏ズリッ✊
海未「くっ、おおおおっ!」
🤛三シュッ,ベシッ
海未「う”ふっ!」
予想外の精神攻撃を受けて、エリーチカは遂に膝を突いた。
しかしそれでも、超人類の意志は頑強に抵抗を続けた。
流れ込んでくる痛みに耐えて海未の手を掴むと
肩に食い込んだ指を引き剥がし、海未の頬にパンチをねじ込んだ。 💉プシュッ
穂乃果「」
カプセル(ガラガラガラ.....)
真姫「この男を取り出して、そのまま麻酔で眠らせておいて」
真姫「中身を穂乃果と入れ替える、脳機能を保存するにはこれしかないわ」
亜里沙「エリーチカの血はまだ残ってるんですか?」
真姫「・・・・もう無いわ」
🎧ガチャッ
真姫「ミューズから海未へ、海未!」 グイグイ…..
海未「ぐぇっ、ごっ・・・・」
絵里「であぁっ!」ドゴスッ
海未「うあっ!」ドッシャアッ
海未「くふっうぅ・・ゲホッ」
絵里「ふっ、ふふ・・・・」
💀 ガシッ
海未「なっ!?」
絵里「う"う"う"う"ぅおおっ!」グギッ,ギシシ
💀ミシッ...ミシッ....ピキッ 海未「ぬぐっ、かっ、があ"あっ・・・・あっ・・・」
絵里「ふっ、ふふふふ・・・・・」グリグリ,ギリギリ
海未「はっあがっ、うぅ・・・・」
絵里「よくも私の部下を・・・・家族を・・・!絶対に許さない!」
エリーチカが首筋を鷲掴みにして動きを封じ、正拳を胸に叩き付けると
海未は艀の船尾の方へ向けて数メートルも飛んだ。
強かに背中を打ち付けて倒れ込んだ敵が自ら起き上がるよりも早く
エリーチカはその頭を両手で挟み込んで無理やり立たせた。
海未は自分の頭蓋骨に万力のような力が加わり、軋みを上げるのを感じた。
海未「ぬううぅぅ・・・・っ!」ギロッ
🤏ギュウゥッ!
絵里「うぐっ!」
⚡ギリリッ,キリリリリリッ!
絵里「い"っ・・・・ううぅあああぁっ!」バッ
🦵ゴスッ
海未「っ!」ドサッ
絵里「はぁ、はぁ・・・・・」 エリーチカは絢瀬提督と同じ方法で海未に引導を渡そうとした。
だが、地球人よりも遥かに強靭なヴァルカン人の頭部を握り潰すのは
提督を殺した時ほど容易ではなかった。
エリーチカが難儀する間に海未の手が今度はエリーチカの側頭を掴み
再び痛みとも目眩ともつかぬ不快感が超人類を襲う。
命の危険を察知したエリーチカは堪らず海未に膝蹴りを入れて甲板に放り出した。
絵里「はぁはぁ・・・・・」
海未「ハー・・・・ハー・・・」ズキズキ
絵里「チッ・・・」クルッ
🏃♀タッタッタッタッ.....シュバッ!
海未「待てっ!」
感情を抑制する術を得る以前、ヴァルカンの民は
クリンゴンにも引けを取らない苛烈な戦闘種族だった。
その頃の名残は数千年を経た23世紀においても健在で
地球人のおよそ3倍の筋力という形で留めている
したがって、一度理性という軛から解き放たれた彼らは
超人類にとっても油断のならない恐るべき戦士となった。
認めたくはないが、このままでは分が悪い。そう悟ったエリーチカは
海未を一瞥すると、船尾から飛び降りた。二人の乗る艀を追い越そうと
その後方から接近してきた、もう一隻の艀に飛び移るために。 海未「逃がすかっ!」
🏃🏻♀ダンッ,ダムッ,ダッダッ
海未「はっ!」ヒュバッ
エリーチカの着地した艀は直ぐに最初の艀の下に
もぐり込んで見えなくなった。
海未はすかさず立ち上がると、エリーチカとは反対の方向
即ち船首の方へ向けて駆け出した。
着地可能か。論理に拘って考えるような余力は無い。
行ける。いや、行かねば。穂乃果と同じく、ただ己を信じる心一つを頼りに
十数メートル下を飛ぶ目標を目掛けて空中へ躍り上がる。
ヒュルルルルル..............ズンッ!
海未「うぉあっ!」ゴロロッ
ゴロンゴンッ,ズササッ
絵里「・・・・・・・」 落差と加速による衝撃で、海未は甲板に着地するのと同時に転倒し
そのまま船尾まで転がっていった。
凹部に手を掛け、辛うじて転落を免れた彼女が
艀のスピードと風圧に抗い、よじ登ろうとする様子を
甲板に立つエリーチカはじっと見つめていた。
ほんの数秒で二人の立場が逆転した。獲物として追われていたエリーチカが
今度は巣穴から出てくる獲物を待ち構える捕食者となっていた。
海未「くっ・・・・くああっ・・・!」ズルズル
👢タッタッタッ…..ドスッ💥
海未「かはっ!」ドサッ
🤛ビシッ,バシュッ
海未「はっ・・・・あうぅっ!」
✊ズイッ,ズァッ
ゴロゴロ,ドンッ
海未「ぐふっ、うっ・・・・」ヨロヨロ 甲板に辛うじて這い上がった海未を目掛けて
エリーチカが容赦のない蹴りを飛ばす。
獲物が仰向けに倒れ込むと、無防備に晒された胸と顔に続けてパンチを見舞う。
その次は右肩を掴んで反対側の船首へ向けて投げ転がし、海未が立ち上がる前に
素早く二発目の蹴りを入れる。
タッタッタッ.....
絵里「ほぉっ!」ゴスッ
海未「ぶはっ・・・・」ゴロロッ
絵里「あははははっ!」タッタッタッ
🤛シュッ,ビシッ,バキッ
海未「・・・・・っ!・・・・・っ!!」ガンッ,ガンッ
一度優位を奪ってしまえば、ヴァルカン人の強みを封じるのは容易い事だった。
神経を掴まれるのが脅威なら、掴めぬ程に叩きのめせばいい ⚰プシュ―ッ
亜里沙「冬眠シークエンスを開始」
⚰ピキピキピキ….. 🧊
真姫「真姫よりブリッジへ」🎧
真姫「海未と通信できないけど、生きたエリーチカが必要よ!」
真姫「あのクソ野郎を今すぐこの船に連れ戻しなさい!」
真姫「・・・・・穂乃果の命綱よ!」
希「転送で引き上げられる?」
花陽「いや、動き回っててどっちもロックできません・・」
ことり「なら傍に降りることは?」
花陽「えっ?」
ことり「・・・・・私が行くよ!」 クソつまらんSSにクソみたいな一言レス
何故か決まってどいつもこいつも必ずageる
クソSSもくだらない自演もやるなとは言わないから板の最底辺でやってろよゴミ コイツもう何年もこんな荒らし続けてる自演ガイジだから言ったところで聞かないよ
文章も効果音も絵文字もなろう並の幼稚さで笑えるよなw
誰にも相手にされないのに汚い落書きを延々続ける発達障害のガキみたい ズゴッ
海未「ぐふっ・・・・・」
絵里「はああああぁぁっっ!!」ギリギリギリッ
海未「んぐっ!」ミシッ,ピキピキ....
海未「はっ・・・・はあっ・・・」ピトッ
絵里「くぐぐうぅっ・・・・!」
再び頭を握り潰されそうになっても
海未はエリーチカの意志を屈服させられなかった。
強い打撃を立て続けに受けたことで、相手の神経を掴むだけの力と
繊細な感覚が失われていた。
それでも微動だにしないエリーチカの腕を掴むと
憎しみと嘲りに満ちた意志が自分の意志を撥ね退けて
逆に流れ込んでくるのを感じた。
海未(私たちの、仲間意識に・・・・・つけ込み、踏みにじり利用する)
絵里(黙りなさいっ!)
海未(そんなあなたにっ、家族の何たるかを語る資格などありませんっ!)
絵里(うるさいっ!)
絵里(そんなにあのキャプテンの事が大事なら、後を追わせてあげる)
絵里(安心しなさい、他の仲間も直ぐに追いつくことになるわ・・・・・)
絵里「うおおおぉぉぉっ!!」ググググ ✨シュゥンッ!
ことり「・・・・・っ!」
絵里「おおおおっ・・・・!」グリグリッ
海未「ふぅっ、ふううぅ・・・」
絵里「はっ!?」バッ
ことり「・・・!!」チャキッ
🔫チュイ―ン……
艀に転送されたことりの目に最初に映ったもの
それは恋人を組み伏せ、頭を圧潰しようとする敵の後ろ姿だった。
エリーチカが新手の気配に気づいて振り返るのと同時に
ことりは手に持っていたフェイザーを構え、引き金を引いた。
💥ズキュンッ,ズキュンッ! 🔫
⚡ビリビリッ!
絵里「かっ・・・・っ!!がっ・・・・」
海未(ことり・・・・!) エリーチカは海未から手を離すと、即座に乱入者へ矛先を向けた。
ヴァルカン人と比べれば、ことりは遥かに非力な人間の女。
排除するのは簡単な筈であった。
しかし、執拗に神経を狙われたことで、彼女の意志も確実に摩耗していた。
麻痺に設定されたフェイザーのもたらす痺れが、嫌が応にも超人の身をよじらせた。
ズキュンッ,ズキュンッ🔫
海未(何か、武器は・・・・)
海未(・・・・・あれだ!)
⚙🤛ガシッ
海未「ふんっ!」
💥 ⚙ 🤛バキッ
海未「ふううぅ・・・・っ!!」クワッ
海未(ことりには、触れさせません!)
敵の圧握から解放されると、海未は甲板に据え付けられた
コンテナ開閉用のハンドルを力任せに引き抜いて立ち上がった。
訪れた好機を物にするためではない、恋人を守るため。
もう誰も、自分の前で殺させはしないという決意が、彼女を突き動かしていた。 海未「えぇいっ!!」
ヒュッ,ゴオォンッ! 💥
絵里「う"っ・・・・・・!」ユラァ
ことり「!!」
海未は痙攣するエリーチカの肩を引いて自身の方に向き直らせると
鋼鉄製のハンドルを水平に振るった。
動きを封じられたエリーチカにそれをいなす余力はもはや無く
ハンドルは彼女の顔面を強打し、釣鐘を突いた様な音を響かせた。
無機質な金属の塊による一撃でエリーチカは振盪に見舞われ
その視界は大きく回転、甲板にくずおれる寸前となった。
絵里「」フラフラ
ガシッ,グリッ
海未「ぬんっ!」
🦴ゴキッ💥
絵里「ぎぃっ、あああっ!」
ことり「海未ちゃん!」 無類の強靭さを誇る優性人類とて、その耐久力も無限ではない。
それまで有機体からの攻撃をものともしなかったエリーチカが
怯む様を見て海未は猛反撃を開始した。
彼女の左腕を掴んで背中側に捻り、自らの肩に担いでひん曲げると
関節が砕ける乾いた音が響き、敵が絶叫した。
海未「いぃやぁっ!」
グルグルッ,バアァンッ!
絵里「ぐあぁっ!」
海未「うおおぉっ!たぁっ!であっ!」
バッシュ! バッシュ! バッシュ!
絵里「お”ふっ!ごっ・・・・・・!っ・・・・・!」
ことり「海未ちゃん!海未ちゃん、止めて!」
ことり「海未ちゃんってば!」
バッシュ! バッシュ!
海未の攻勢は続いた。エリーチカの足を掴んで引きずり上げ
同時に上体を強く押して転ばせると、相手の身体は勢いよく宙を縦に回転し
甲板に叩き付けられる。
伸びた相手の上に馬乗りになると、
青白い顔に向けて何度も何度も拳を振り下ろす。
たとえ腕が萎え、拳が砕けようとも。止めるつもりはなかった。 海未(止めないでください、ことり!)
海未(今この女を倒さねば、より多くの人々が犠牲に・・・・・)
ことり「穂乃果ちゃんを助けるのにその人が必要なのっ!」
バッシュ、バッシュ…….ピタッ
海未(え・・・・・?)
🏙ヒョオオォ.....
ことり「・・・・・・」
海未「・・・・・・・」
絵里「うぅ・・・・ごほっ・・・・?」
海未「・・・・・・・」
海未「ふうぅ・・・・・はっ!」シュッ
💥ドゴッ
絵里「」ドサッ ことりの放った言葉で、海未はようやく手を止め、
急速に冷えていく頭の中で、彼女の言葉の意図を論理立てた。
数秒の逡巡から覚めると、海未はぐったりと力を失ったエリーチカに
最後の一撃を叩き込んだ。
何が起きたのか。
状況を理解しきる前に、エリーチカの視界は暗転した。
・・・・・・。 一言のみで読んでなくても書ける空疎な文だし自演でしょ
実際つまんねーし "どっちだ?"
"女の子よ・・!"
(この声・・・・お母さん?じゃあ、今の男の声は・・・・)
"父上は8分間だけ船長だった・・・・"
(お父さん・・・・・?南、提督・・・・・)
"800人の命を救った・・・・・君は越えられるか・・・?"
(越える・・・・・・誰を?)
(私は・・・・・・)
穂乃果「はっ!」パチッ
穂乃果「・・・・・・・・」
真姫「あ、起きたわね」 穂乃果「真姫、ちゃん・・・・?」
真姫「まあ、そう大袈裟に騒がないで。一瞬しか死んでないわ」
穂乃果「死ん・・・・そっか」
穂乃果「私、死んで・・・って、え?え?」
真姫「負担が大きかったのは輸血の方よ。2週間意識がなかった」
穂乃果「?、?、?・・・・・輸血って?」
真姫「身体全体にダメージがあったから、仕方なくね」
艦隊病院の一室で目を覚ました穂乃果が最初に見たのは
白衣に身を包んだドクターだった。
一度死んだ筈の人間が意識を取り戻した。
医療の常識を根底から揺るがす光景を目にしたにも関わらず
真姫はさして驚く様子もなく、いたって冷静に事の次第を語った。
穂乃果「・・・・・・・、あっ!」
穂乃果「もしかして、エリーチカの?」
真姫「そう」
真姫「血清を合成したの。彼女のスーパーブラッドでね」
真姫「人を殺したい衝動は無い?暴力的、独裁的な衝動は?」
穂乃果「・・・・普段と同じくらいだよ」
真姫「なら良かった(普段からあるのね・・・・)」 まるで定期健診でも行うかの如く検査を続ける親友の姿に、
穂乃果は困惑した。徐々に蘇ってきた数日間の記憶が
全て悪い夢だったかのようにさえ思った。
ただ、記憶の中で水色の双眸を輝かせ、不敵に笑うかの者の姿だけが
自分の味わった過酷な経験が紛れもない現実であることを物語っていた。
できればもう二度と相対したくない強烈な敵、その血に命を救われる。
互いに奪われたものため、守るべきもののために戦った者同士の
奇妙な巡り合わせだった。
穂乃果(そっか、エリーチカが・・・・)
穂乃果「でも、どうやって捕まえたの?」
真姫「私じゃないわ」チラッ
コツコツ......
海未「・・・・・・」
穂乃果「海未ちゃん・・・・」
真姫が枕元を離れると、病室の奥の壁際にいた女性が寝台の前に進み出た。
制服をきっちりと着こなす、青みを帯びた髪色のヴァルカン人、海未だった。
副長の姿を見て、キャプテンは死んでいる間に
起こった事の全てを理解した。 穂乃果「命の恩人だよ・・・」
真姫「ことりと私も結構頑張ったのよ?」
穂乃果「はは・・・分かってるよ・・・」
海未「あなたが助けたんです、キャプテン。私とクルー全員を」
海未「だから、私もあなたを」
穂乃果「いいよ、海未ちゃん」
穂乃果「ありがとう」
海未「・・・・どういたしまして、穂乃果」ニコッ 🚪タッタッタッ........バタンッ!
真姫「!?」
ことり「はぁ、はぁ・・・・・・・」
穂乃果「ことりちゃんっ!」
真姫「ことり、面会はまだ駄目だって・・・」
タッタッタッ,ガバッ
真姫「あっ、こら!」
ことり「穂乃果、ちゃん・・・・?」
ことり「穂乃果ちゃんが、起きた・・・・起きたんだね?」
ことり「だよね?生きてるんだよ・・・ね?」
海未「ええ、間違いなく」
穂乃果「うん、この通りだよ。生きてる」
ことり「・・・・っ!」ブワァッ
ことり「よかっだああああぁぁぁっ!!」
ことり「穂乃果ちゃああぁぁん!うわああぁぁぁ!!」 穂乃果「ことりちゃん・・・・」
ことり「うあああぁぁぁ・・・・っ、良かったああぁぁ!」
穂乃果「・・・・・」フルフル
真姫「・・・・・」コクッ
ことり「ううぅ・・・・ひぐっ、ううぅ・・・」
穂乃果(ことりちゃんも、色々抱えてたんだよね)
穂乃果(お母さんのことも、海未ちゃんのことも・・・)
穂乃果「ごめんね・・・・心配かけて」
真姫「本当よ、無茶ばっかりして」
真姫「フォローする私たちの身にもなって欲しいわ」
真姫「これに懲りたなら、少しは自重しなさい」
真姫「まあ、当分は起き上がれないでしょうけど」 穂乃果「うん、約束するよ。もう二度と死んだりしない」
真姫「あなたもよ、海未」
真姫「今度規則なんかに拘って命を粗末にしたら・・・・」
真姫「その緑の血を抜き取って、人間の赤い血と入れ替えるから」
海未「はい、努力します」
穂乃果「うんうん、だからことりちゃん」
ことり「ひぐっ・・・・グスッ・・・・?」
穂乃果「もう泣かないで、笑って?泣いてる顔は似合わないよ」
ことり「ううぅ、グスッ・・・ズズッ・・・・こう?」
穂乃果「うん、いつものことりちゃんだ。本当に生き返ったんだね、私」
海未「はい、いつものことりです」
ことり「っ!・・・やっぱりむりだよおおぉっ!」ジワアッ 真姫「・・・・・」フゥ
真姫(一時はどうなるかと思ったけど、もう大丈夫みたいね)
真姫(まったく、世話の焼ける二人、いや三人だわ)
真姫(本当に、お疲れ様・・・・・)
真姫(さ、他の皆にも伝えてきましょうか)
🚪スタスタスタ.....バタンッ
“あなた達2人が協力すれば、互いの能力を最大限に引き出すことができる”
“いいですか、海未?時には自分の感情に従うことも大切です”
“ひとまず論理は脇に置き、自分が正しいと信じる事をなさい”
海未(園田大使・・・・・・)
海未(あなたの言葉の意味、少しですが、理解できたような気がします) 💻カチャカチャ,カタカタ.....
🔊ピッピッ,ピ―ッ!
職員A「最終調整完了、扉を閉めよう」
職員B「了解。さあ皆出ろ」
ゾロゾロゾロ......
地球のどこか、人知れぬ極秘施設の奥深く。
広大な格納庫を無数のカプセルが占拠している。
規則正しく並べられたそれらの中には
一際奥まった場所に離れて安置されたものが一つあった。
🚪ウィイィ―――,ゴゴオォン......
⚰フシュ―…….フシュウウウゥ……..
絵里「」シュコ―
結露に覆われたガラスケースの下に横たわる金髪の女性。
彼女の顔は安らかで、微笑みを浮かべているようにすら見えた。
分厚い鋼鉄の扉が閉じられ、厳重に錠が施される。
遺伝子工学の生んだ怪物エリーチカは、
愛する部下たちと共に再び長い眠りについた。
眠りこそが、唯一の救済だった。 穂乃果「敵はどんな時代にも現れます」
穂乃果「身を守るため、我々は己の中の悪を呼び起こします」
穂乃果「愛する者を奪われると、まず我々は反射的に復讐を考えます」
穂乃果「しかし、それは本来の姿ではありません」
飛行編隊の煙幕が空に太く力強い線を描く中
惑星連邦の旗が儀仗隊の手で規則正しく折り畳まれる。
未曽有の惨劇からおよそ一年、艦隊を揺るがす陰謀を阻止した当事者として
穂乃果は艦隊本部前で行われた追悼式典の演説に立った。
穂乃果「私たちは、今日再びミューズ号を出港させます」
穂乃果「そして、一年前に亡くなった仲間を共に悼みます」
穂乃果「南提督は昔、私に艦隊の誓いを暗唱させました」
穂乃果「当時は、あまり有難くありませんでした」
穂乃果「でも、今はそのおかげで思い出せます」
穂乃果「かつての私たちを。そして、未来にあるべき姿を」 艦隊、連邦政府の要人たち。海未やことり達ミューズ号の面々。
居並ぶ多くの人々を前に、今は亡き恩師から受け継いだ思いを
キャプテン高坂は語った。
穂乃果「そして、この言葉を・・・・・」
穂乃果「宇宙、そこは最後のフロンティア」
穂乃果「これはU.S.S.ミューズ号が、5年間の調査飛行で」
穂乃果「未知の世界を探索して、新たな文明と新たな生命を求め」
穂乃果「人跡未踏の宇宙へ果敢に挑む物語である、と」
愛する人、大切な人を理不尽に奪われて、怒りを感じるのは
決して悪い事ではない。復讐心を抱くことも。
しかし、時に敢えてそれとは違う道を選ぶことで
新たな道が開ける事もある。
その道の先にこそ、絶望に打ちひしがれ、嘆き悲しむ人々を救済し
報復の連鎖を断ち切って解放されたより良き世界がある。
試練を乗り越えた今、そんな気がした。 花陽「ブリッジにキャプテン!」
穂乃果「さてと・・・・希ちゃん」
穂乃果「一度味わったら、中々キャプテンの椅子から立てないでしょ?」
希「ふふっ・・・・キャプテンっていい響きやな」
希「でも、椅子はお返しするで」
穂乃果「ありがとう」
ミューズ号の艦橋に、キャプテンの入室を告げる花陽の一声が響く。
穂乃果が船長の椅子に近づくと、そこに座っていた希は飄々と席を退いた。
操縦士・東條希と航海士・小泉花陽。
船の舵取りを担う二人の柔和な物腰は、確かな信頼をクルーに約束していた。
穂乃果「にこちゃん、コアはどう?」
にこ「"ご機嫌の子猫ちゃんよ。長い航海の準備万端だわ!"」
穂乃果「うんうん、素晴らしい」
穂乃果「ほら真姫ちゃん、そんな顔しないで。きっと楽しいよ!」ポンポンッ
真姫「はぁ・・・・」
真姫「5年も宇宙なんて、勘弁してよ・・・・・」 ワープコアの前から応答するにこの声が宇宙1エンジニアとしての
自信に満ちていたその一方、真姫は多くのクルーが期待に胸を膨らませる中で
唯一人、不安を露わにしていた。
宇宙は危険に満ちている。
だからこそ、その旅路を行く友人たちを自分が支えなければならない。
不平不満、悪態は尽きずとも、そこには彼女の医師としての決意が表れていた。
穂乃果「絢瀬博士」
亜里沙「穂乃果さ・・・キャプテン」
穂乃果「別に良いよ、名前で。ようこそ、私のグループへ」
亜里沙「ありがとうございます。家族ができて、嬉しいです」
穂乃果「これからよろしくね、期待してるから!」
亜里沙「はい!」
続いてキャプテンが声をかけたのは、新しい科学士官、亜里沙。
彼女の父親は過ちを犯した。しかし亜里沙の協力が無ければ
その陰謀を阻止し、危機を乗り越える事はできなかった。
穂乃果たちはミューズに新しい席を用意することで
彼女の働きに対する感謝の印とした。
新しい仲間と共に過ごす日々が、彼女が心に負った
傷を癒してくれることを誰もが願っていた。 穂乃果「海未ちゃん!」
海未「何でしょう、穂乃果」
穂乃果「ねえ、何処へ行こうか?」
海未「そうですね・・・・5年間の調査は前人未到ですから」
海未「キャプテンのご判断に従いますよ」
穂乃果「よし、分かった」
ことり「ふふふっ・・・」
各々が持ち場に就く中、最後に穂乃果は最も信頼する副長に問いかけた。
海未は口元に仄かな笑みが浮かべ、答えた。
クルーとして、友として、恋人として。この二人を皆で支えて行こう。
背後から二人の様子を見守っていたことりはそう思った。
穂乃果「さあ希ちゃん、発進だよ!」
希「了解、キャプテン」
☄ギュウウウゥ......ズギュゥンッ!!
無限に広がる未知の世界を目指して、U.S.S.ミューズ号は旅立った。
ワープナセルの描いた二本の航跡が一瞬瞬き、星々の中に溶けて消えた。
― Fin ― ◇配役◇
高坂穂乃果 ジェームズ・T・カーク船長
(演:クリス・パイン/吹替:坂口周平)
園田海未 スポック中佐
(演:ザッカリー・クィント/吹替:喜山茂雄)
南ことり ニョータ・ウフーラ大尉
(演:ゾーイ・サルダナ/吹替:栗山千明)
西木野真姫 レナード・マッコイ少佐/ボーンズ
(演:カール・アーバン/吹替:宮内敦士)
小泉花陽 パヴェル・チェコフ少尉
(演:アントン・イェルチェン/吹替:栗野志門)
矢澤にこ モンゴメリー・スコット少佐/スコッティ
(演:サイモン・ペグ/吹替:根本泰彦)
東條希 ヒカル・スールー大尉
(演:ジョン・チョー/吹替:浪川大輔)
矢澤虎太郎 キーンザー少尉
(演:ディープ・ロイ/吹替:なし)
絵里(エリーチカ) ジョン・ハリソン中佐/カーン・ノニエン・シン
(演:ベネディクト・カンバーバッチ/吹替:三上哲) ◇配役◇
高坂穂乃果 ジェームズ・T・カーク船長
(演:クリス・パイン/吹替:坂口周平)
園田海未 スポック中佐
(演:ザッカリー・クィント/吹替:喜山茂雄)
南ことり ニョータ・ウフーラ大尉
(演:ゾーイ・サルダナ/吹替:栗山千明)
西木野真姫 レナード・マッコイ少佐/ボーンズ
(演:カール・アーバン/吹替:宮内敦士)
小泉花陽 パヴェル・チェコフ少尉
(演:アントン・イェルチェン/吹替:栗野志門)
矢澤にこ モンゴメリー・スコット少佐/スコッティ
(演:サイモン・ペグ/吹替:根本泰彦)
東條希 ヒカル・スールー大尉
(演:ジョン・チョー/吹替:浪川大輔)
矢澤虎太郎 キーンザー少尉
(演:ディープ・ロイ/吹替:なし)
絵里(エリーチカ) ジョン・ハリソン中佐/カーン・ノニエン・シン
(演:ベネディクト・カンバーバッチ/吹替:三上哲) 南提督(理事長) クリストファー・パイク提督
(演:ブルース・グリーンウッド/吹替:田中正彦)
絢瀬提督(※) アレクサンダー・マーカス提督
(演:ピーター・ウェラー/吹替:仲野裕)
ヒデコ ヘンドルフ中尉
(演:ジェイソン・マシュー・スミス)
ミカ ダーウィン少尉
(演:アイーシャ・ハインズ)
園田大使 スポック・プライム
(演:レナード・ニモイ/吹替:菅生隆之)
※原作該当キャラなし。亜里沙に合わせて名前だけ変更
※絢瀬絵里の苗字を南條に変更 南提督(理事長) クリストファー・パイク提督
(演:ブルース・グリーンウッド/吹替:田中正彦)
絢瀬提督(※) アレクサンダー・マーカス提督
(演:ピーター・ウェラー/吹替:仲野裕)
ヒデコ ヘンドルフ中尉
(演:ジェイソン・マシュー・スミス)
ミカ ダーウィン少尉
(演:アイーシャ・ハインズ)
園田大使 スポック・プライム
(演:レナード・ニモイ/吹替:菅生隆之)
※原作該当キャラなし。亜里沙に合わせて名前だけ変更
※絢瀬絵里の苗字を南條に変更 ― どこか遠くの惑星 ―
娘「え?それって・・・・どういうこと?」
父「そのままの意味だ」
父「俺をここに置いて、お前一人で逃げるんだ。できるだけ遠くへ」
娘「何を言ってるの、お父さん・・・こんな時に冗談だなんて、嫌だなぁ」
父「・・・・うっ!痛っうう」
娘「ああ、ほら!動いたりするから・・・待ってて、今手当てするから」
父「はぁ、はぁ・・・・いや、いい」
娘「え?」
父「この深さじゃ、どのみち長くはもたない。それよりも、俺の話を聞くんだ」
娘「・・・・・」 絵里も仲間になるかと思ったけど、そこまで甘くはないよねw
穂乃果生き返って良かった 父「いいか、奴らは何としても、俺たちを捕まえて殺すつもりだ」
父「俺を抱えて逃げても直ぐに追いつかれるだけだ」
父「それよりは、お前一人だけの方が・・・・うぅ・・・・」
娘「いや・・・・嫌だよ」
娘「そんなこと、できない。できるわけないじゃん・・・」
娘「傷のせいで弱気になってるだけだよ、きっとそうだ・・・」
父「いや、違う・・・・聞いてくれ、俺は」
娘「嫌だ、嫌だ聞きたくない、止めて・・・」
父「なあ、頼む」
娘「やめてっ!!」
父「凛!」 凛「やめて・・・・できるわけないよ、したくなよ・・・」
凛「見捨てろなんて、そんなこと言わないでよ・・・」グスッ
凛「凛が助けるから・・・・ううぅ・・・」
凛父「・・・・・顔を、上げてくれ」
凛「?」
凛父「大きく、なったな。もう、立派な船乗りだ」
凛父「お前はみんなの中で誰よりも足が速くて身軽だ」
凛父「それに、メカや武器の扱いにも長けてる。お前ならきっと、奴らの目を掻い潜れる」
凛父「生きていれば、この星を脱出する手段もきっと見つけられ・・うっ!ごほっ!」
凛「お父さん!」 凛父「大丈夫だ・・・だからお願いだ、逃げて生き延びてくれ・・・」
凛「・・・・お母さんも」
凛「お姉ちゃんたちも、他の人たちも、みんなあいつらに殺された」
凛「凛一人だけ生き残るなんて、できないよ・・・」
凛父「だからだよ・・・・みんなお前の事を大事にしていた。」
凛父「お前の元気な姿が大好きだったんだ・・・俺はもう十分に生きた」
凛父「お前に会えなくなるのは辛いが、お前が死ぬのはもっと耐えられない」
凛父「だから頼む。俺の最後の願いを聞いてくれ。俺たちの・・・・」
凛「・・・・くっ!!」
凛「うぅ・・・ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・」
凛「凛に、力が無いせいで・・・」
凛父「いいんだ、大丈夫・・・ずっと見守ってるから・・・・」 ヴルルルルル…….
凛「はっ!!」
凛父「来た・・・!」
凛父「近くにいる・・・・・今しかない、行くんだ!」
凛「いや、でも・・・」
凛父「行けっ!!」
凛「・・・・・・・っ!!」ダッ
タッタッタッ……..ピタッ
凛「・・・・お父さん」クルッ
凛父「?」
凛「愛してる、永遠に!」
凛父「・・・・俺もだ!」
タッタッタッタッタッ……
凛父「生きろ・・・・凛・・・・」 タッタッタッタッタッ…….
🌲ガサッ,ガサガサッ,バキッ
凛「はあっ、はぁ・・・・・」
ボボォ――ンッ……ドギュウゥンッ!
凛「!!」
凛「くっううぅ・・・・ううぅ・・・・・っ」ポロポロ
凛「ダメだ、泣いちゃダメだ!」フルフル
凛「必ず、生き延びてやるにゃっ!」
タッタッタッタッタッ……..
To be continued……? 一年近くダラダラ グダグダと書き続けてきた自己満足の駄文
それでも最後までお付き合い頂いた皆様に長寿と繁栄を
ありがとうございました おつでした。スタートレックは全然分からないけど楽しめましたよ。
凛の出てくる話も、書きたいなら書けば良いと思います >>176
ありがとうございます
凛が誰なのかは元ネタの続編を観ていただければ分かるかと思います ついでに
言っても信じてもらえないとは思いますが自演等は一切してません
>>176さん含め本文以外は全て別人です
つまらないのは自分の力量不足なので申し訳ないと思ってます・・・・ 乙
きちんと見てただよ
自演呼ばわりする輩については気にしてはいけないと思うし
また気が向いたらトレックでもフェレンギ人でもいいからなんか書いてほしい ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています