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理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
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0002名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:19:17.05ID:IHJb60Jp
カチ..コチ..カチ..コチ..

理亞「.....」

気分を悪くし、トイレで嘔吐してしまった理亞は休息をとるために客室のベッドの上で横になっていた
壁にかかっている振り子時計が時を刻む無機質な音だけが部屋に鳴り響く

理亞(横になっていたら大分気分が良くなってきた..今何時なんだろう..)

壁の振り子時計の針は時刻は20時を回り、窓の外を見ると日が沈み辺りはすっかり暗くなっている..ひんやりとした空気が内浦を包み込み、シトシトと小雨が降っていた

理亞「もうこんな時間..ずいぶん寝ちゃってた..」

(姉さま..まだ来ないのかな..)

聖良から連絡が入っていないか携帯電話を覗き込むも..新着メッセージは入っておらず、また通話の状態は圏外となっていた
0003名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:20:00.19ID:IHJb60Jp
理亞「.....」

理亞はベッドの上に大の字になって思案を巡らせる

(私はルビィを探すためにやってきたんだ..こんなところで寝ているわけにはいかない..とにかく行動しなくちゃ..でも..どうすればいいんだろう..)

(内浦や沼津の周辺は黒澤家の人達や、地元の住民が隈なく探したはず..それでも手がかり一つ見つからないんじゃ..私一人がどうこうしたところで..)

理亞「こんな後ろ向きな考えじゃダメだ!とにかく情報を集めないと..」

理亞は頭を振って邪念を振り払った..その時..

コン コン..という木製のドアをノックする音が聞こえた
0004名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:20:55.37ID:IHJb60Jp
理亞「誰?」

花丸「遅くにごめんね?花丸だよ..開けてもらえるかな?」

理亞「ちょっと待って..今開ける」

気だるさの残る体に鞭打ち、理亞はベッドから起き上がるとドアの鍵を開けて花丸を室内に迎え入れた

花丸「理亞ちゃん大丈夫?気分は良くなった?」

理亞「ええ..もう大丈夫..迷惑かけたわね」

花丸「気にしないでいいずら..北海道からはるばるやってきてくれたんだもの..疲れが出るのは当たり前だよ」

理亞「花丸一人?ダイヤ達はどうしたの?」

花丸「ダイヤさんは家の人達と何か話し合ってる..善子ちゃんはもう夜遅いから帰ったずら」

理亞「そう..」
0005名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:21:42.73ID:IHJb60Jp
理亞が沈黙すると室内には振り子時計のカッチコッチという音だけが響き渡る..
沈黙する理亞を尻目に花丸は屈託のない笑顔を浮かべて、明るく理亞に話しかけた

花丸「ねえ、理亞ちゃん..少し話さない?」

理亞「え?」

花丸「あ..もちろん理亞ちゃんが嫌じゃなかったらだけどね?」

理亞「いいけど..」

なんだろう..改まって..私..花丸のことあんまりよく知らないから..なんだか緊張する..

花丸「理亞ちゃんは..ルビィちゃんのこと..どう思ってるの?」

理亞「どうって..」

花丸は顔を赤らめて..まるで意中の相手の恋敵を見るような目で..理亞の顔を見つめた
0006名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:22:37.39ID:IHJb60Jp
理亞「大切な..親友...だわ」

花丸「そう..なんだ..」

花丸は何かを堪えるように..ギュッと口元を噛み締める...

花丸「辛いよね..ルビィちゃんがいなくなってから..マルはずっと寂しくて..心細くて..」

花丸「ルビィちゃん..理亞ちゃんにすごくよく懐いていたから..もしかしたら理亞ちゃんの元に行ったんじゃないかって思って..連絡したんだ」

理亞「ルビィからは..何の連絡も来ていないわ..」

花丸「そう..」

花丸は沈痛な表情を浮かべてカーペットに目を落とした
0007名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:23:30.45ID:IHJb60Jp
理亞「花丸も..ルビィのことを親友だと思っているの?」

花丸「当たり前だよ!!ルビィちゃんとはずっと一緒だったんだよ!?マルにとってもルビィちゃんは..大切な親友なんだよ!!」

花丸「うう..ルビィちゃん..一体どこにいってしまったずらぁ..」

花丸の目から涙がポロポロと零れ落ちる..次々と滴り落ちる涙がカーペットの布地へと吸い込まれていった..

理亞「詳しい話を聞かせてよ..ルビィはどこに行っちゃったの?」

花丸「ルビィちゃんは..突然行方不明になっちゃったんだ..目撃情報も全然なくて..地元では神隠しにあったなんて無責任な事を言う人もいるずら」

理亞「どうして..ルビィは行方不明になったのかしら?自分から消えた..?それとも..誰かに..」

誰かにルビィが..その言葉が持つ意味を想像して理亞は体を大きく震わせた..
0008名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:24:52.51ID:IHJb60Jp
理亞の脳裏に羽交い絞めにされて、泣きわめくルビィの顔が浮かぶ..

ルビィの首筋に鋭利なナイフが突きつけられ..その冷たい刃はルビィの首筋を切り裂いて..そして..

理亞(バカバカしい!!そんなことあるわけない!!絶対ルビィは今もどこかで元気でいるに違いない!!どうせ、家出でもしてどこかの街をほっつき歩いているのよ!! ルビィは生きてる..絶対..私はルビィと再会するんだ!!)

焦燥で焦がれる理亞の胸中をよそに花丸は言葉を続けた

花丸「ルビィちゃんの身の回りに特別なトラブルはなかったと思うし..不審者の情報もなかったから..誘拐の線も薄いと思う..」

理亞「それじゃあどこかでケガをして動けなくなったのかも..山で遭難したとか..海で溺れたとか..」

花丸「もちろんその線も踏まえて..地元住民で大規模な山狩りも行われたよ..それでもルビィちゃんは..見つからなかった..」

花丸「海も同じく..果南ちゃんたちを筆頭に地元のダイバーたちが海に潜ってルビィちゃんの手がかりを探したけど..ルビィちゃんの髪の毛一本見つけることもできなかったんだ」
0009名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:25:34.45ID:IHJb60Jp
理亞「ルビィが最後に目撃されたのはどこ?」

花丸「学校ずら..」

理亞「学校?」

花丸「浦の星女学院だよ..スクールアイドルの練習が終わった後、ルビィちゃんは用事があるから..って言って一人で校舎に残ったの..それが..ルビィちゃんを見た最後になったずら」

理亞「じゃあ学校になにか手がかりがあるんじゃ..!」

花丸「もちろん学校も隈なく探したよ..でもやっぱりルビィちゃんの手がかりを見つけることはできなかったんだ..ただ..」

理亞「ただ..なによ?」

花丸「ウチの学校..その..いわゆるイワクつきなんだ」
0010名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:26:34.49ID:IHJb60Jp
理亞「イワクつき?」

花丸「うん..どこの学校にもよくある..いわゆる怪談話なんだけどね..ウチの学校は孤児院だったんだよ」

理亞「孤児院?」

花丸「そう..太平洋戦争で親を失い家を焼け出された子供たちを保護していたんだって..戦時中の内浦には疎開先として各地からたくさんの子供が疎開してきたずら..ウチのお寺も疎開先として児童の面倒を見ていたことがあるんだよ」」

花丸「親を失い帰る場所もない子供たちを不憫に思い..孤児院を建設して子供たちの面倒を見ていたんだよ..それが浦の星女学院の前身ずら」

理亞「そんな過去が..それで..孤児院だったことと、ルビィの失踪がどう関係あるのよ?」

花丸「孤児院に入所した児童の数と..退所した児童の数が..合わないんだって..」

理亞「え?どういうこと?」

花丸「つまり..行方不明になってどこかに消えてしまった児童がいるということずら」
0011名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:27:20.60ID:IHJb60Jp
理亞「なんですって!?それって..」

花丸「今回のルビィちゃんの失踪事件に良く似ているでしょ?」

理亞「行方不明になった子供は..どこに行ってしまったのよ!?」

花丸「わからないずら..施設の厳しい生活が嫌になって、施設を脱走してどこかに消えてしまったんだろうと言われてる..けど」

理亞「けど..何よ?」

花丸「地面の下から..子供が苦しむうめき声が聞こえた..という逸話が残っているずら..」

理亞「ど..どういうこと?」

花丸「失踪した生徒たちの..怨霊が校舎に住みついているんじゃないかって..浦の星女学院の怪談話として..有名なんだ」
0012名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:28:12.23ID:IHJb60Jp
理亞「バカバカしい!!そんなオカルトめいた話をあんたは信じるの!?まさかルビィが怨霊に連れてかれて神隠しにあったっていうんじゃないでしょうね!?」

花丸「もちろんマルも..完全に信じているわけじゃないよ..でもね..?もうルビィちゃんがいそうなところは全部探したんだ..それでも手がかり一つ見つからないとなると..こんな怪談話でも..ルビィちゃんの手がかりが見つかる可能性があるのなら縋りたくもなるずら!!」

理亞「そもそも..その子供が失踪した話って..信ぴょう性はあるの?神隠しなんて到底信じられないわ!」

花丸「身寄りのない子供が失踪しても..探す人なんてだれもいないずら..それに時代は戦後の混乱期..どこまでが本当でどこまでがウソなのかもはっきりしないずら..ただ..あの学校に得体の知れない何かがあるのかもしれない..マルはそう思っているずら」」

理亞「浦の星女学院に..ルビィが失踪した何かがあるかもしれない..花丸はそういいたいの?」

花丸「うん..ただ..ルビィちゃんがいなくなってから、マルや他の生徒たちも学校を隈なく探してみたけど..ルビィちゃんの手がかりはなにも見つからなかったんだ」
0013名無しで叶える物語(アメリカ合衆国)
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2019/05/16(木) 23:28:13.98ID:dP8lBfGo
来たか!
0014名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:29:18.76ID:IHJb60Jp
理亞「まだ探していないところがあるじゃない..」

花丸「え?」

理亞「そのうめき声が聞こえたって言う話よ!もしも噂通り本当にそこから子供のうめき声が聞こえたのなら..その場所に何らかの手がかりがあるかもしれないわ!」

花丸「でも..そのうめき声が聞こえたっていうのも..あくまで噂話で..本当かどうかもわからないし..それが学校のどこかもわからないんだよ..」

理亞「それでも..ルビィの手がかりが見つかる可能性が僅かでもあるのなら..私はソレに賭けるわ!」

理亞「花丸!今から私を学校に案内して!!これから浦の星女学院に行ってルビィの手がかりを探す!」

花丸「今からって..夜になって外も暗いし..雨も降っているし..明るくなってからにしようよ」

理亞「だめよ!!このままジッとしているなんて私にはできない..きっとルビィの手がかりが校舎のどこかに残っているハズ!」

花丸「理亞ちゃん..わかった..ルビィちゃんの手がかりを..探しにいこう!!」

理亞(ルビィ..待っててね..絶対にあんたの手掛りを見つけ出してやるんだから!!)
0015名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:30:06.63ID:IHJb60Jp
そして..2人は海岸沿いの真っ暗な小道へとやってきた..
古びた街灯と微かな月明かり以外には辺りを照らすモノはなにもない..

理亞(暗い所って..やっぱり苦手..)

花丸「この道をまっすぐ進むと..バスの停留所があるんだ..停留所の側にある階段を上った先が浦の星女学院だよ」

理亞「本当..何にもない場所ね..真っ暗じゃない..」

花丸「フフッ..そうだね..内浦は山と海に囲まれていて..それ以外は本当になにもないところだよ..でも地元の人たちはみんな優しくて心の温かい人ばかりなんだ..マルはそんな内浦が大好きずら!」

理亞「ルビィと花丸は..ずっとここで育って来たのよね?」

花丸「そうだよ..マルとルビちゃんは子供の頃から仲良しで..ずっと2人で一緒に過ごしてきたんだ..」
0016名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:30:52.57ID:IHJb60Jp
理亞「学校につくまで聞かせてよ..子供の頃のルビィと花丸はどんなことをして過ごしていたの?」

花丸「そうずらね..小さいころのマルは気が弱くて..いつもルビィちゃんに庇ってもらっていたずら」

理亞「花丸の気が弱い..?意外だわ」

花丸「マルは..ほら、オラとか..マルとか方言がでちゃうから..周りの子達にバカにされることがあって..そのたびにルビィちゃんが相手に言い返してマルを守ってくれたんだ」

理亞「ルビィが..」

そう言えば..私がダイヤのことをバカにした時..ルビィはムキになって言い返してきたっけ..
オドオドして気が小さいくせに..自分の大切な人が傷つけられると怒るのは昔から変わらないのね..
0017名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:31:41.17ID:IHJb60Jp
花丸「マルは聖歌隊に入っているんだけどね?」

理亞「聖歌隊?でも確かあんたの家って..」

花丸「うん..聖歌隊に誘われた時はすごくうれしかったよ?でも..マルの家はお寺だから..その兼ね合いで辞退しようとしたんだ..」

花丸「でも..本心は聖歌隊に入って歌ってみたかった..そんなマルを見かねたのか..ルビィちゃんがマルのおばあちゃんに掛け合ってくれたんだ..マルは歌がうまいから..聖歌隊で歌わせるべきだって..」

花丸「そしたら..お婆ちゃんたちが大賛成してくれて..マルは聖歌隊に入ることになったんだ!」

理亞「そう..昔からそういうところは変わらないのね..ルビィは自分の大切な人の為だったら..ムキになって..相手のために尽くそうとする人..」

花丸「フフッ..そうだね..ルビィちゃんはとっても優しい子だから..マルも..そんなルビィちゃんの事が大好きで..いつまでも一緒にいたいずら..」
0018名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:32:26.43ID:IHJb60Jp
理亞「ルビィ..」

会話を続けながら道を歩き..浦の星女学院のふもとのバス停にたどり着いた

花丸「ついたよ..この階段を上るとマルたちの通う学校..浦の星女学院ずら」

理亞と花丸は階段のふもとまでやってきて..山の上にそびえる浦の星女学院を見上げると..シトシトと振っていた小雨がいつしか止んでおり..雲の切れ目から顔を覗かせた月明かりが..校舎を白く..不気味に照らしていた

理亞「花丸..」

花丸「うん?」

理亞「絶対に..ルビィを見つけ出すわよ」

花丸「.....うん!!」

そして..2人は真っ暗な階段を上り..浦の星女学院へと足を進めた
0019名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:33:14.26ID:IHJb60Jp
浦の星女学院

理亞「ついた..ここが..」

花丸「そう...マルたちの通う学校..浦の星女学院だよ」

理亞「門は施錠されているみたいね..乗り越えるしかない」

花丸「え?理亞ちゃん?わ!!」

言うやいなや..門の上に両手を置いた理亞は一足飛びにぴょんと門を飛び越えてしまった

花丸「さすが..セイントスノーずら..」

理亞「何やってるの?早く来て」
0020名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:34:02.64ID:IHJb60Jp
花丸「ま、待って..マルそんなに身のこなしが軽くないずら..ほっ!うわ!」

花丸も理亞に続いて門を飛び越えようとジャンプするも..足を引っかけてしまい尻餅をついてしまった

理亞「ちょっと!大丈夫!?」

花丸「アイタタ..大丈夫ずら」

理亞「ほら、捕まって..」

花丸「ありがとう..よいしょっと!!」

理亞「私は一通り校舎を回ってみるつもりだけど..案内をお願いできる?」

花丸「任せて!」
0021名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:34:48.76ID:IHJb60Jp
理亞「というより..校舎に入れるの?普通施錠されていて入れないんじゃ..」

花丸「大丈夫..廃校寸前の校舎だから..至る所にガタが来ていて鍵のかからない窓があるんだ..そこから出入りすることができるずら」

花丸「警備員さんもいないし..昔みたいに宿直の先生もいないから..夜は本当に無人なんだ」

理亞「え?そうなの?ずいぶん不用心ね..」

花丸「田舎の学校だからね..こんなもんだよ」

理亞「そう..まあ、いいけど..それなら余計な心配をせずにルビィの手がかりを探すことができるわね..」

花丸「こっち!この窓から入れるよ!」

そして二人は..暗闇の支配する夜の校舎へと忍び込んだ
校舎の中はシン..と静まり返っていて物音一つしなかった
0022名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:35:48.97ID:IHJb60Jp
理亞(予想はしてたけど..やっぱり夜の学校って不気味ね..)

年季が入っている木製の床は歩くとギシ..ギシ..と1歩ごとに軋む音を発した..
真っ暗な校舎の中にひんやりとした冷気が漂っており、理亞の背筋をブルッと震わせる

花丸「電気はつけないほうがいいよね..懐中電灯を持って来たから..それで探索しよう」

花丸はそう言うとスポーツバッグの中から小さな懐中電灯を2本取り出して一本を理亞に手渡した
0023名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:36:28.14ID:IHJb60Jp
理亞「花丸」

花丸「な〜に?理亞ちゃん」

理亞「私から離れるんじゃないわよ」

花丸「え?」

理亞「もしかしたら校舎の中にルビィの失踪に関わる危険な何かがあるのかも..ルビィに続いてアンタまで失いたくないから..私から離れないでって言ってるの..」

花丸「理亞ちゃん..うん!わかった..探索が終わるまでマルは理亞ちゃんから離れないずら!!」

花丸はそういうと理亞の袖をきゅっと掴んだ
0024名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:37:13.67ID:IHJb60Jp
理亞「べ、別に袖を掴めとは言ってない..動きづらいから離して頂戴..」

花丸「えへへ〜理亞ちゃん優しいずら..きっとルビィちゃんは理亞ちゃんのこういうところに惹かれたんだろうな..」

理亞「わ..私は..優しくなんか..というより離れてよ..」

花丸「え〜?い〜や〜ず〜ら!!マルが飽きるまでしばらくこうしているずら♡」

理亞「まったく..もういいわ..行きましょう..」

そうして二人は暗闇が支配する廊下を懐中電灯の光だけを頼りに歩き出した

ギシ.. ギシ.. と木製の床が軋む音が鳴り響く..
0025名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:37:54.46ID:IHJb60Jp
理亞(廊下の足音なんて..日中だったら気にも留めないのに..真っ暗でこうも静まりかえった空間だとそれだけで不気味に聞こえるわ..)

花丸「理亞ちゃん..まずはどこを見たい?」

理亞「一階から見て行って..全部見たら上の階へ..最終的には屋上までみたい」

花丸「わかった..案内するよ..そこの教室がマルたち1年生の教室だよ..まずはそこから見てみよう」

理亞「わかった」

花丸に案内された理亞は1年生の教室に足を踏み入れた

花丸「ここがマルたち1年生の教室だよ!」

理亞「ここがルビィの教室..ルビィの机はどれ?」

花丸「あそこ」

花丸は清掃用具入れの側に位置する机を指差すと、そこには主を失った机が寂しげにポツンと存在していた
0026名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:38:41.14ID:IHJb60Jp
理亞「これが..ルビィの机..」

理亞はルビィの席に腰かけて教室を見渡した..

理亞(ルビィは..ここに座って学校生活を送っていたのね..これがルビィの見ていた景色..)

理亞は机の中を覗き込むが中には何も入っていなかった

花丸「そこにはなにもないよ..ダイヤさんが片づけちゃったからね」

理亞「机の中には..ルビィの手がかりになりそうな物は入っていなかったの?」

花丸「もともとなにも入っていなかったよ..ルビィちゃんは置き勉もしない真面目な子だったから..いつも机の中はキレイだったずら」

理亞「そう..」
0027名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:39:22.40ID:IHJb60Jp
花丸「そろそろ次の場所に行ってみる?」

理亞「そうね..案内をお願い」

そして二人は1階の部屋を隈なく見て回ったが..ルビィの手がかりになりそうなモノは髪の毛一本たりとも発見することができなかった

理亞「1階は見て回ったわね..」

花丸「どうする?次は上の階を探す?」

理亞「上に行く前に..体育館の中を見てみたいんだけど..」

花丸「わかったずら..ついてきて」

花丸の後について理亞は校舎の外に出た。冷たい潮風が理亞の頬を弄り..雨上がりの雲の切れ目から、月の光が降り注ぐ
0028名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:40:11.36ID:IHJb60Jp
理亞「さむ..」

理亞が肌寒さに身をブルリと震わせた時..

ワオオオオ〜〜ンンンン

理亞「な..なに?」

獰猛な犬の泣き声が山の中に響き渡った

花丸「時々野犬がでるんだよ..人が噛まれてケガをしたっていう事件がたまに起きるから..関わらない方がいいずら」

理亞「噛まれた?そんな危険な犬がいるのに駆除しないの?」

花丸「保健所の人が捕まえようとしたら..頭を思い切り噛みつかれて10針縫う大けがしたんだって」

理亞「小さい子犬だったらともかく..そんな凶暴な犬は絶対にペットにはしたくないわね..」
0029名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:41:08.86ID:IHJb60Jp
花丸「体育館はトイレの窓のカギが壊れているから..そこから入るずら..こっちだよ」

理亞「本当にボロイ校舎ね..メンテナンスはしっかりしなさいよ..」

花丸「よいしょっと..よし..空いたずら!」

ガラッ..と滑る音を立ててトイレの窓は開かれた

理亞「よし..中に入るわよ..ん?どうしたの?」

花丸「マル..一人じゃよじ登れないずら..理亞ちゃん後ろからマルを押し上げてくれる?」

理亞「世話が焼けるわねまったく..ほら!よじ登りなさい!」

花丸「ずら!!」

花丸はピョンと飛び上がると、トイレの窓に右足をかける..腕の力が足りなくて落ちそうになるところを理亞が支えて花丸のお尻を強く押し出し、トイレの中へと押し込んだ
0030名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:41:48.38ID:IHJb60Jp
花丸「ずら!!アイタッ!」

花丸は尻からトイレの床に落下し、尻餅を着く音が響き渡る

花丸「痛いずら〜!!理亞ちゃんもっと優しくしてほしいずら!!」

理亞「イヤ..着地までは面倒見切れないって..ハッ!」

理亞は軽快にジャンプし、花丸がやっとよじ登った壁をスタイリッシュに乗り越えた

花丸「おお〜〜!!理亞ちゃんすごいずら〜!!」

花丸は子供のような笑顔で無邪気に拍手を送る

理亞「こんなのなんでもないわよ..さあ、行くわよ..」
0031名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:42:34.08ID:IHJb60Jp
トイレの扉を開けると、暗闇に包まれた闇の世界が2人の視界に飛び込んでくる..

体育館の中は暗闇と静寂に包まれており..灯りとなるモノは窓から入ってくる月光のみだった

理亞「とくになんの変哲もない体育館ね」

花丸「あまり珍しいモノを期待されても困るずら..」

理亞「とりあえず一通り見て回るわ..」

理亞は懐中電灯を取り出し、体育館の中を照らし出した

理亞(バスケットコートに...部隊の上にはグランドピアノと表彰台..特に変わったものはなさそうね..)

花丸「真っ暗で不気味ずら..うう..お化けが出そう..」
0032名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:43:23.56ID:IHJb60Jp
理亞「バカなこと言ってないでルビィの手がかりがないか探すわよ..」

花丸「ここも探したから..なにもないと思うけど..」

理亞「アンタたちは探してもないって判断したのよね?探しモノっていうのはね..無いと思い込んだ人が探すと見つからないモノなのよ」

花丸「どういうこと?」

理亞「別の人間が探せば視点や考えの違いで見つかることがあるっていう話よ..ん?」

理亞はバスケットコートの真ん中で足を止めた

花丸「どうしたの?」

理亞(ここ..なにかおかしい..今まで足音はコツ..コツ..だったのに..ここだけタン..タン..になってる..まるでここだけ板が薄いような..気のせい?)
0033名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:44:12.05ID:IHJb60Jp
花丸「床の上で立ち止まってどうしたの?なにかおかしいところがあった?」

理亞「いや..なんでもない..舞台の上も調べてみよう」

おかしいとは思ったが、とりあえず体育館の全体を調べるべきだと考えた理亞はその場所を後にし、舞台の上へとよじ登った

理亞「ここが舞台の上ね..体育館の様子がよく見えるわね」

理亞はステージの上から真っ暗な体育館を一望する..昼間は活気があふれているのだろうが、夜の静まり返って暗闇に包まれた体育館は
生物としての根源的な恐怖を駆りたてるように思えた

花丸「ここで鞠莉ちゃんやダイヤさんが全校生徒にあいさつをするんだよ」

理亞「ふ〜ん..特に変わった様子はなさそうね..表彰台にグランドピアノ..この胸像は誰?」

理亞はステージの横に置いてある初老の男性の胸像を指差した
0034名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:44:55.52ID:IHJb60Jp
剥げた頭にシルクハットを被り、背広に蝶ネクタイを付けた男性の胸像は品格に溢れており
その表情からはかなりやり手であったのだろうと理亞は思った

花丸「ああ..この学院の創設者の胸像だよ..鞠莉ちゃんのお爺ちゃんに当る人だね..」

理亞「創設者..小原鞠莉の祖父がこの学院の創設者なの?」

花丸「うん..鞠莉ちゃんのお爺さんは沼津近郊や内浦を中心にして商売を行う商人だったんだって..沼津近郊で商売を行うウチに、自然豊かなこの土地が好きになって内浦に疎開している身寄りのない孤児を憐れんで、お金を出して孤児院を創設した人でもあるずら」

理亞「え?それじゃあ..鞠莉のお爺さんって..この学園で昔起こった神隠し事件の当事者だったんじゃ..鞠莉に聞けばなにか手がかりが手に入るかもしれないじゃない!」

花丸「マルもそう思って..鞠莉ちゃんに聞いてみたんだけど..なにも知らないって..鞠莉ちゃんのお爺さんはお金を出しただけで、孤児院の運営にはノータッチだったみたい..」
0035名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:45:37.63ID:IHJb60Jp
花丸「それに..神隠しについて鞠莉ちゃんに話したら鼻で笑われたずら..大昔に行方不明になった児童は施設での生活が嫌になって逃げだしただけデース☆って..」

理亞「......」

理亞はなにか釈然としないモノを感じたが、花丸の話にとりあえず納得し、創設者の胸像を見上げた

理亞「まあいいわ..でも..なんか珍しいわね..こんなステージの上に胸像があるなんて..」

花丸「そうだね..他の学校でも創設者の胸像はあるみたいだけど..大体校庭の隅とかに置かれているみたいだよね..言われてみるとなんでここに胸像があるんだろう..」

理亞「なんか怪しいわね..ちょっと調べてみようか..」

理亞は胸像を怪訝な目で見つめると、像の周りを調べ始めた
0036名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:46:20.72ID:IHJb60Jp
理亞(一見何の変哲もない只の胸像に見えるわね..材質は..銅ね..かなり重い..固定されているみたいだし、女の力では動かせそうにないわ)

理亞(ん?)

理亞は胸像がつけている蝶ネクタイに目を留めた..

理亞「この蝶ネクタイ..結び目の裏にくぼみがある..何か埋め込むことができるのかしら?」

花丸「え?あ!本当だ!!今まで気が付かなかったよ..」

理亞「何かがはまっていたようなくぼみだけど..なんなのかしらこれ..」

花丸「この形は..浦の星女学院の校章ずら」

理亞「なんでこんなくぼみがあるんだろう?」

花丸「う〜んわからないずら..学校の七不思議ずら」

理亞「いや、それは違うと思うんだけど..」
0037名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:47:02.12ID:IHJb60Jp
花丸「いつまでも胸像を見ていてもしょうがないずら..そろそろ校舎の探索に戻ろうよ」

理亞「.......そうね」

理亞はもうしばらく胸像を調べてみたかったが..花丸の意見に同意することにし、校舎の探索に戻るために体育館を後にした

花丸「体育館にはルビィちゃんの手がかりになりそうなモノは見つからなかったね..今度は校舎の上の階をって..どうしたの?理亞ちゃん?」

理亞「ごめん..ちょっと気分が悪くて..トイレによっていいかしら?」

花丸「それは別に構わないけど..大丈夫?保健室のベッドで横になった方がいいんじゃ..」

理亞「平気よ..すぐ戻るから花丸はここで待ってて」

花丸「わかったずら」

花丸を廊下に残して理亞は一人で校舎の女子トイレに入った
0038名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:47:44.64ID:IHJb60Jp
理亞(やっぱり..食あたりかな..まだ気分が優れないや..)

女子トイレの中には個室が二つと清掃用具入れが一つ..と一般的で簡素な造りとなっていた

理亞「少し個室の中で休んでから行こう..」

理亞は手前の個室のドアノブに手をかけて、ノブを捻り開けようとするが..

理亞「あれ?びくともしないわ?なんでトイレの扉が空かないのよ..つっかえてんのかしら..カギはかかってないみたいだけど..」

理亞「まあ、いっか..奥のトイレはドアが開けっ放しになっているみたいだし..そっちを使おう」

キィ..バタン ジィ〜〜ファサッ
0039名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:49:31.24ID:IHJb60Jp
理亞(.......)

理亞は洋式便器の上に腰を下ろし、両手を前に組み頭を垂れた

理亞(まずは状況を整理しよう..私はルビィを探すために内浦にやってきて..ルビィが最後に目撃されたこの浦の星女学院に手がかりを求めて訪れた..)

理亞(まだ、一階と体育館しか見回っていないけど..この学院..なにかおかしい..生徒が一人学校内で行方不明になったというのに..どうして窓のカギが空いていたり..)

理亞(学校を警備している人間がいないのか..普通人が一人失踪したなんてなったら..もっと大事になって施設の点検やセキュリティに気を配るはず..)

理亞(理事長の小原鞠莉がよっぽど能天気でおめでたい性格をしているのか..あるいは..ルビィはこの学校で姿を消したわけじゃないか..ということになるけど..)

理亞(もしも、後者だったら花丸がウソをついていることになる..でも、花丸はルビィの親友..ルビィの失踪に関してウソをつく理由なんてどこにもない..ということは..うう..わからない..どういうことなんだろう..?)

理亞(とにかく..まずはあの体育館の胸像が気になるわね..あの胸像にはなにか大きな秘密が隠されているような気がする..あのくぼみに入れることができる何かを探すことから始めるか..)
0040名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:50:16.20ID:IHJb60Jp
理亞(ん?)

トイレの窓ガラスから月明かりが差し込み、理亞が入っている個室の壁を照らし出す..
足もとに映る理亞の影に、もう一人..別の誰かの人影が覆いかぶさるように映っていた

理亞「え?」

理亞は何気なく上を見た..そこには..

??「......」

能で使うおかめのお面を被った何者かが..隣の個室の天井の隙間から身を乗り出し金属の筒のようなモノを理亞に向けていた
0041名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:50:55.46ID:IHJb60Jp
理亞「は?」

ドシュッ!という金属音がトイレの中に響き渡り、理亞の背後に立てかけられていた洋式トイレの蓋が粉々に粉砕され、壁に銀色のアンテナのようなモノが突き刺さった

理亞「な..!!」

何が起こったか理解が追いつかない理亞は便座の上に凍り付いたように固まった

??「.....」

襲撃者は理亞を仕留め損ねたことを確認すると、ボウガンの矢を継げ変えるべく、個室の中へと姿を消していった
0042名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:51:41.48ID:IHJb60Jp
理亞(な..なななななななに今のは!!?? え?なに?何が起こったの!? 今のアイツはなんなの!?..何かが飛んできてトイレの蓋を..え?え?)

理亞は壁に突き刺さったそれを凝視し、何が飛んできたのかを正しく理解した

理亞(あれ..弓矢じゃない!!あんなので討たれたらひとたまりもないわ!!)

突如危機的状況の中に放り込まれたことを理解した理亞はスカートをはき、個室の扉を思い切り開いて外へと飛び出した

理亞が個室の外に飛び出したと同時に..

ギィィィィ〜〜という耳障りな音を立て、隣の個室の扉がゆっくりと開き..
黒ずくめのローブを頭から爪先まで被り、おかめの面を付けた襲撃者が姿を現した

理亞「な、なによアンタ..何持ってんのよ..それ..ボウガンじゃない!!」
0043名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:52:21.93ID:IHJb60Jp
??「........」

襲撃者は理亞の問いかけには応えず、これが返事だと言わんばかりに矢を装填したボウガンの銃口を理亞の心臓に向けた

理亞「やめて!!」

理亞の悲鳴を無視してトイレの中に2発目のドシュッ!という射撃音が鳴り響いた

理亞「きゃああ!!」

ボウガンの矢は理亞をわずかに逸れて、背後の水道管をぶち破り、ブシャー!という音を立てて水道管から水しぶきがトイレの中に飛び散った

理亞は襲撃者に背を向けてトイレの出口へと駆け出し、体当たりをするような勢いでトイレの扉をぶち破り廊下へと飛び出した
0044名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:53:04.51ID:IHJb60Jp
花丸「理亞ちゃん?どうしたの?トイレの中から大きな音が聞こえたけど..」

理亞「花丸!逃げるわよ!!」

花丸「え?どういうこと?」

理亞「いいから!!早く!!」

理亞は花丸の手を掴むと廊下を走りだす..ドン!!という大きな音を立ててトイレの扉が開け放たれて、中からボウガンを構えた襲撃者が現れた

花丸「ずら!?だ、誰あの人!?」

理亞「知るわけないでしょ!?ヤバい奴なのは見れば一発でわかるでしょ!!いいから逃げるわよ早く!!」

花丸「り..理亞ちゃん!!」
0045名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:53:50.90ID:IHJb60Jp
戸惑いと怯えの声を出す2人をよそに..矢を携えるカチャンという金属音が鳴り..ダン!という矢を発射する音が再度響き渡り、銀色のアンテナのような弓矢が飛んできた

理亞「うわ!!」

理亞は弾かれるように空き教室の中に身を投げて矢を回避し、理亞に押し倒された机とイスがガラガラガッシャーンというけたたましい音を立てて床に倒れた

理亞「はぁ!..ハァ..!な..なに?一体なんなの!?」

理亞の足が恐怖でガタガタと震え、突然の事でパニックになった頭は状況を飲み込むことができずにいた

花丸「アグッ!!」

廊下から花丸のうめくような悲鳴が聞こえ、その直後に廊下に倒れ落ちるドサッという大きな音が響いた
0046名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:54:36.74ID:IHJb60Jp
理亞「花丸!?どうしたの大丈夫!?」

花丸「あ..足が..」

理亞「ヒッ!」

花丸の足にボウガンの矢が突き刺さり、矢が刺さった場所から血液がボタボタと滴り落ち、床の木目に赤い液体が伝うように流れて行った

理亞「は..花丸!!」

花丸「痛い..う..動けない..」

痛みに顔を歪める花丸をあざ笑うかのように..暗闇を切り裂いて銀色の矢が飛来し..
狙いを大きく外れた矢は廊下を風のように飛び去ってゆき..奥の壁にドガッ!!という大きな音を立てて突き刺さった
0047名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:55:20.96ID:IHJb60Jp
花丸「理亞ちゃん逃げて!!」

理亞「バカなこと言ってんじゃないわよ!!さあ早くこの手に捕まって!!」

花丸「理亞ちゃ..わッ!」

理亞は花丸の腕を掴むと渾身の力で引っ張り、教室の中へと引き寄せた

??「.......」

カチャン..ドシュッ!!

襲撃者はボウガンを構えると理亞達目がけて矢を撃ち放った

理亞「くっ!!」

花丸を教室の中に引っ張りいれたと同時に、床に銀色のアンテナが生えるように突き刺さった
0048名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:56:02.90ID:IHJb60Jp
花丸「理亞ちゃん..」

理亞「大丈夫..今矢を抜いてあげるから..」

理亞は花丸の太ももに突き刺さった矢を掴み、思い切り引き抜いた

花丸「アグッ!!」

アーチを描くように花丸の足から血が飛び散り、理亞の頬に雨水が飛び散るように血が付着した

理亞(よかった..思ったより傷は深くない..早く手当しないと..でも今はそれより..!!)

理亞「花丸逃げるわよ!!私の肩につかまって!!」
0049名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:56:53.97ID:IHJb60Jp
花丸「マルに構ってたら理亞ちゃんまで殺されちゃうよ..マルのことはいいから一人で逃げて!!」

理亞「何言ってんの!アンタを置いて逃げられるわけないでしょ!?さあ早く!ヤツが来る前に早く!!」

理亞は花丸の腕を自分の肩に強引に巻きつけ、力づくで花丸を立ち上がらせた

花丸「ウッ!」

理亞「後で手当てするから..逃げるよ!」

花丸に肩を貸した状態で二人はベランダまで歩き、扉を開け放った..
夜風の心地よい冷たさが理亞の頬を弄ったとほぼ同時に..窓ガラスにボウガンの矢が突き刺さった

理亞「ヒッ..!」

ガシャーンという窓ガラスが粉々に砕け散る音が鳴り響き..粉々に砕け散ったガラス片がシャワーのように飛び散った
0050名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:57:33.75ID:IHJb60Jp
襲撃者は教室の出入り口にピストルクロスボウと呼ばれる、連射能力に秀でたボウガンを構えて立っており..獲物の様子を伺うように..理亞と花丸を見つめていた

理亞「なんなのよアンタ!!私たちが何をしたって言うのよ!?」

理亞は敵をキッと睨みつけ、腹の底から大声を出して怒鳴りつけた。
襲撃者は理亞の問いに応えることなく、淡々とした手つきでボウガンに矢を装填する作業に取り掛かる

教室の中に矢を継げ変える無機質な金属音が鳴り響いた

花丸「理亞ちゃん逃げよう!!話の通じる相手じゃないずら!」

理亞「クッ!しっかりつかまってなさいよ!!」
0051名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:58:18.48ID:IHJb60Jp
理亞は花丸を肩に担ぎ上げると校庭目がけて全力で駆けた。襲撃者は矢をボウガンに装填すると、理亞の背中目がけて矢を射出した

バシッ!という大きな音の後に夜の闇を切り裂くように矢が飛来する..幸いにも矢は理亞達に刺さることはなく、グラウンドの土に生えるように突き刺さった

花丸「ウッ..痛い..」

理亞「我慢しなさい..どこか安全なところに身を隠さないと!!」

理亞は後ろを振り返り襲撃者の様子を伺うも、襲撃者はベランダに立ち尽くし、2人を追うようなそぶりは見せなかった
0052名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:58:59.37ID:IHJb60Jp
理亞は花丸を背中におぶってしばらく走り続け..プールサイドの側にやってきた

理亞「はぁ..はぁ..大分走ったけど..どうやら巻いたみたいね..少しだけここで休みましょう..花丸足を見せて」

花丸「うん..」

花丸はおずおずと理亞に足を差し出す..血液から発する鉄の匂いが理亞の鼻を突き、わずかに吐き気が込み上げてくるのを感じた。

理亞「フッ..」

理亞は自分のスカートのすそを僅かに破くと、包帯代わりに花丸の足に巻きつけて止血を施した

理亞(これでよし...でも応急処置にしかなってない..早く医者のところに花丸を連れて行かないと)
0053名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:59:42.52ID:IHJb60Jp
理亞はポケットの中の携帯電話を取り出すも..山の中に位置する校舎の中ではアンテナは立たず、圏外とだけ表示されていた

理亞「花丸!アンタの携帯貸して!!」

花丸「ごめん..携帯持ってきてないずら」

理亞「なんですって!クッ..こんなときに..」

苛立ちを発散させるように舌打ちをした後理亞は思考にふける

理亞(どうする..私一人で町まで逃げて助けを呼んでくる?イヤ、ダメだ..私が助けを呼びに行く間に花丸にもしものことがあったら..)

理亞(私たちがいないことに気が付いたダイヤが探しに来てくれるのを待つ..これもダメだ..ダイヤに行先を告げずにここに来ちゃったから..そもそもダイヤは私たちが浦の星女学院に来ていることを知らない..)

理亞(クソッ!どうすれば..どうすればいいんだ!!)
0054名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:00:19.71ID:edE1HvF1
花丸「理..理亞ちゃん!!」

理亞が必死に善後策を練るために頭を働かせていると..花丸の恐怖に上ずった声を上げた

理亞「え?なに?どうしたの?」

ドシュ..ビイイ〜〜ンンン..

理亞「な..!!」

理亞の顔のすぐ横に位置する壁に..ボウガンの矢が深々と突き刺さり、小刻みに震える弓矢の羽が理亞の頬をくすぐった

理亞「あ..あ..」

理亞は恐怖に目を大きく見開き..真横の壁に突き刺さった矢を呆けたように見つめた
0055名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:01:09.27ID:edE1HvF1
花丸「あわわわ..も、もう来たずら!!」

理亞「なんで!?どうして私たちがここに逃げ込んだってわかって..ハッ!!」

月明かりがプールサイドを薄く照らし出し..花丸から流れ出た血痕が道しるべのようにコンクリートの上に点在しているのに理亞は気が付いた

理亞(クッ!花丸の血痕を辿ってきたのか..こんなことに気が付かなかったなんて!!)

襲撃者は矢を取り換えて再び理亞に狙いを定め..ボウガンの引き金を弾いた
ドシュッという音の直後、銀色の弓矢が疾風のごとく理亞目がけて飛来する..

理亞「わああ!!」

理亞は腰を抜かしてしまい、地面にへたり込んでしまう..
ボウガンの矢は理亞の顔面があった場所に突き刺さり、壁の粉末がパラパラと理亞の頭に降り注いだ
0056名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:01:46.67ID:edE1HvF1
襲撃者は矢が外れたことに特に反応を示すこともなく..淡々とボウガンに矢を装填する作業に取り掛かった

理亞(姉さま..姉さま助けて!!)

理亞は想像の中の聖良に縋った..

いつも明るく優しい姉聖良..弱きを助け強きを挫く..どんな相手にも果敢に立ち向かっていく理想の姉..
幼いころ..人見知りが激しくイジメられていた理亞を助けてくれた姉の姿が脳裏に浮かんできた
0057名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:02:21.57ID:edE1HvF1
せいら「もう大丈夫よ..あなたを虐めていた子達は私がやっつけてあげたから..」

りあ「ひっぐ..ひっぐ..」

せいら「もう..泣かないの..私の妹なんだからめそめそしないの!」

りあ「姉さま..ありがとう..」

幼き日の理亞がお礼を言うと聖良は苦笑し、肩をすくめた

りあ「ねえ..姉さま..」

せいら「な〜に?りあ?」

りあ「姉さまは..どうしてそんなに強いの?」
0058名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:03:24.52ID:edE1HvF1
せいら「鍛えているからね..そんじょそこらの奴相手になら負けないわ」

りあ「姉さまは..怖くないの?相手はあんなに大勢いたんだよ?」

せいら「怖くないって言ったら..ウソになるわ 私だって人間だもの..傷つくのは怖いし、痛いのはイヤよ」

りあ「じゃあどうして?どうして姉さまはどんな相手にも立ち向かっていけるの?」

せいら「大切な人を守るため..だからね」

りあ「守る?」

せいら「そう..りあは私にとって大切な人だから..たとえ相手が誰であろうと..何人だろうと..りあの為だったら立ち向かっていくことができるの」

りあ「私も..鍛えれば姉さまみたいになれる?」
0059名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:04:27.59ID:edE1HvF1
せいら「あなたは鍛えなくてもいいわよ..いざとなったら私が駆けつけて守ってあげるから」

りあ「...やだ」

弱い自分が嫌だった..いつも泣いてばかりでメソメソして..そんな自分を..変えたかったんだ

せいら「りあ?」

りあ「私も姉さまみたいになりたい!!姉さまは私の憧れ..いつか私も姉さまみたいになって..姉さまを守ってあげられるようになりたい!!」

せいら「りあ..」

りあ「これからは私も姉さまと一緒に特訓する!!」

せいら「わかった..これからは私があなたをみっちりと鍛え抜いてあげる..」

りあ「うん!早く強くなって..私も姉さまや誰かを守ってあげられるようになるの!!」
0060名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:05:03.63ID:edE1HvF1
そうだ..私はあの日誓ったんじゃないか..もうメソメソ泣かない..強くなって姉さまや大切な人を守れるような強い人間になるんだって..

矢の装填を終えた襲撃者は理亞目がけてボウガンの矛先を向けた

理亞(私が殺されたら次は花丸が殺される..守るんだ..私の大切な友達を..守って見せる!!)

ドシュッ!という鈍い音の直後に銀色の弓矢が理亞目がけて高速で飛来する..
アドレナリンが脳内に分泌された理亞にとって、飛んでくる矢はコマ送りのスローモーションのように見えた

心臓目がけて飛来する矢を理亞は紙一重で交わし、矢は壁に突き刺さった
0061名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:05:45.07ID:edE1HvF1
理亞「守る..私は..友達を守って見せる!お前なんかにやられてたまるか!!」

矢を回避されたことで襲撃者に僅かな戸惑いが生じるも、理亞を抹殺すべく次の矢を装填する作業に取り掛かった

花丸「理亞ちゃん逃げて!!」

理亞「逃げない!私は絶対に友達を見捨てない!!」

理亞は壁に突き刺さったボウガンの矢を掴むと思い切り引っこ抜く..
襲撃者も矢の装填作業を終え、再び理亞目がけてボウガンの狙いを定めた

理亞「せいッ!!」

理亞は体を捻ると襲撃者目がけて矢を投げ放つ..それとほぼ同じタイミングでボウガンが撃ちだされるドシュっという鈍い音がプールサイドに響き渡った
0062名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:06:21.98ID:edE1HvF1
理亞「ッ..!」

ボウガンの矢は理亞の頬を掠め、一筋の血液がツッ..と頬を流れた

ガシャン..!という固いコンクリートの上に金属を落とす音が鳴り響く..
理亞の投げた矢は襲撃者の肩に突き刺さり、敵は肩に刺さった矢の痛みでボウガンを取り落した

理亞「ヤッタ..」

黒いローブから赤い血液がコンクリートの上に滴り落ちる..襲撃者はボウガンを拾い上げると走りだし、プールサイドから逃げ去っていった
0063名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:07:09.12ID:edE1HvF1
花丸「理亞ちゃん..すごい..」

理亞「た..助かった..」

敵の撃退に成功し、自分と花丸を守ることができたことに安心した理亞はヘナヘナとその場に崩れ落ちた

花丸「理亞ちゃん!血が出てるずら!」

理亞「あ..本当だ..かすり傷だから大丈夫よ」

花丸「ダメずら!ジッとしてて!」

花丸は足の痛みをこらえて立ち上がると、乾いたハンカチを取り出し理亞の頬にあてがった
0064名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:07:46.82ID:edE1HvF1
理亞「ありがとう..アンタも大丈夫?」

花丸「さっきよりは痛みも軽くなって来たずら..心配かけてごめんね?」

理亞「よかった..ねえ、今の..ボウガンで私たちを襲ってきた奴..何者なの?」

花丸「わからない..あんな恐ろしい人見たことないよ..」

理亞「ルビィの失踪にアイツが関わっていると思う?」

花丸「もしかしたら..そうなのかも..考えたくないけど」

理亞「またアイツが来るかもしれないから..ここを離れよう..立てる?」

花丸「うん..」
0065名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:08:22.77ID:edE1HvF1
理亞「とにかく人がいるところまで非難するわよ..町まで歩けるかしら?」

花丸「大丈夫..心配いらないずら..早くここから逃げよう!」
理亞は花丸に肩を貸して立ち上がらせ、2人は校門を目指して歩き出した

花丸「フウ..フウ..」

理亞「花丸..大丈夫?ペース早かったら言ってね?」

花丸「うん..大丈夫だよ..それにしても..理亞ちゃんさっきはすごかったね..矢を投げてボウガンの人を追い払っちゃうなんて..」

理亞「別に..さっきは夢中だったから..それに..姉さまだったらああするんじゃないかって..」

花丸「聖良さんが?」
0066名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:09:07.48ID:edE1HvF1
理亞「うん..ウチの姉さま..ものすごくケンカが強いんだ..人見知りの激しい私は..昔から意地の悪い奴にからかわれたり..いじめられたりすることがあって..そのたびに姉さまが助けてくれたの」

花丸「聖良さんが..妹思いの良いお姉さんだね」

理亞「ええ..自慢の姉よ..さっきも姉さま助けて!!って思ったら..昔姉さまが私を助けてくれたときのことが頭に浮かんできて..姉さまだったら誰かを守るために戦うんだろうなって..それで..」

花丸「さっきは守ってくれてありがとう..こうしてマルが生きていられるのは理亞ちゃんのおかげだよ」

理亞「べ..別に..私は..//」

人から感謝されたことが少ない理亞は頬を赤らめて顔を背けた
0067名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:09:50.59ID:edE1HvF1
花丸「あ!理亞ちゃん赤くなってる! 暗くてもよくわかるずら!!」

理亞「あ、赤くなんてなってない!!」

花丸「照れちゃってかわいいずら」

理亞「バカにしてんの?ここに置いてくわよ?」

花丸「ずら!?じょ..冗談キツイずら!!謝るから勘弁してほしいずら〜!」

理亞「それより..早くここから逃げて警察をって..待って..校門の前に何かいる..」

花丸「え?」
0068名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:10:28.85ID:edE1HvF1
グルルル..グルルルルルル...バウ!!ワンワン!!

真っ暗な校門の前に..一頭の大型犬が門番のように待機していて..理亞と花丸目がけて大きく吠えまくってきた

花丸「え?ちょ、ちょっとなんずらこの犬!?お願いだからそんなにほえないでずら!!」

ワンワンワンワン!!ワオオオオオオ〜〜ンン!!

大型犬は2人目がけて跳びかかってきて、校門をぶち破らんばかりの勢いで吠えまくった

理亞(クッまずい!こんなに大きな声で吠えられたらさっきのボウガンの奴に居場所を知られちゃうじゃない!!それに私一人だったらともかく..ケガをした花丸を連れてこんな凶暴な犬がいる夜道は危険すぎる!!)
0069名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:11:21.89ID:edE1HvF1
ワン!!ワンワン!!ワンワン!!

花丸「やめて!!そんなにほえないで!イイ子だから大人しくして!!」

理亞「花丸!ここは危険だから校舎の中に戻るわよ!!」

花丸「え?ち、ちょっと理亞ちゃん!?」

理亞は花丸を担ぎ上げると校門に背を向けて走り出し、校舎の中へと非難した

理亞「なんなのよあのバカ犬!!どうしてこんなときに限ってあんな変なのが出てくるのよ!」

理亞は次から次へと降りかかる異常事態へのいら立ちを隠すことができずに、教室の壁を蹴り飛ばした

花丸「怖かったずら..まだ心臓がドキドキしてるよ..」

理亞「クソッ!あんな凶暴な犬がいるんじゃここから逃げられないじゃない!」

花丸「落ち着くずら..焦っている時ほど冷静さを保たなくちゃだめだよ..」

理亞「これが落ち着いていられるかっての..どうしよう..このままじゃ..」
0070名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:13:52.47ID:edE1HvF1
花丸「ここにいたらあのボウガンの人に殺されるのも時間の問題ずら..どこか身を隠すことができる安全な場所を探そう」

理亞「安全な場所って..どこよそれ?」

花丸「それは..ト..トイレの中とか?」

理亞「絶対にイヤよ..!!アイツはトイレの中で待ち伏せしていたのよ!?それに何かあったら袋の鼠で逃げられないじゃない!!」

先ほどトイレで襲われたことがトラウマになったのか..理亞は花丸の提案を一蹴した

花丸「あう..ごめん..」

その時..廊下からギシ..ギシ..という木製の床が軋む音が聞こえてきた
0071名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:14:28.91ID:edE1HvF1
理亞(まずい..誰かくる!!)

花丸(き、きっとさっきのボウガンの人がマルたちを探しに来たんだよ!!)

理亞(隠れるわよ!!こっちへ!!)

理亞は花丸を連れて教卓の中へと逃げ込んだ

ギシ..ギシ..という足音は次第に大きくなってゆき..足音は理亞達の隠れる教室へと近づいてきた

花丸(せ..狭いずら..)

理亞(し!静かに..絶対に動くんじゃない!)
0072名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:15:06.34ID:edE1HvF1
ギシ..ギシ..ギシ..ギシ..

そして..フードをかぶった何者かが理亞達が隠れる教室の中を覗き込んだ

??「...........」

漆黒のローブをまとった襲撃者はボウガンを手に携え..教室の中を一歩..一歩..と慎重に歩を進めながら見てまわった

花丸(〜〜〜!!)

理亞(絶対に声を出すな!!)

理亞は怯える花丸の口を両手で塞ぎ、見つからないように自分の気配を殺すことに力を注いだ

そして..襲撃者は異常がないと判断し、次の場所を探索すべく、理亞達の教室を去って廊下に出て行った..
0073名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:15:49.89ID:edE1HvF1
花丸(た..助かったずら..)

理亞(静かに..まだ奴はすぐそこにいるのよ..物音を立てたら気づかれる..)

理亞は廊下を歩き去ってゆく襲撃者の足音に注意深く耳を傾け..足音が聞こえなくなったとき..ホッと安堵の溜息を吐いた

理亞「行ったみたいね..とりあえずは大丈夫よ」

花丸「生きた心地がしなかったずら..」

理亞「ここも安全じゃないわね..奴が去った方とは反対の方に逃げるわよ..」

花丸「反対方面だったら..マルたちの部室があるずら..あそこは内側からカギをかけることができるからここよりは少し安全ずら」

理亞「そう..それじゃあそこに移動するわよ..案内をお願い」

花丸「わかったずら..」

そして二人は部室を目指し廊下を歩き出した
0074名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:16:30.10ID:edE1HvF1
ギシ..ギシ..
1歩..1歩と足を踏み出すごとに木製の床が軋む音がする..

理亞「ちょっと..もう少し足音静かにできないの?」

花丸「これが限界ずら..建物が古いから..どうしても床が軋むのは仕方のないことずら..」

理亞「まったく..よくこんなオンボロ校舎で勉強しているわね」

花丸「オンボロでも..ずっと通っていると愛着が沸くものなんだよ..」

理亞「アンタ達って..確かこの学校を守るためにスクールアイドル活動をしているのよね?」

花丸「うん!そうだよ..ルビィちゃんがいなくなっちゃってからは活動は休止してるけど..みんなこの学校を大切に思って活動してるんだ:
0075名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:17:08.56ID:edE1HvF1
理亞「どうしてこんな辺鄙なところに立っている学校を守ろうとしているの?私は学校なんて大嫌いだから..アンタ達がなんでそんなに必死になっているのかがわからないわ」

花丸「学校が..そして..生まれ育ったこの土地が大好きだから..かな..」

理亞「内浦が..?」

花丸「内浦の人達は..みんな心が温かい人達ばかりで..マルは子供の頃から地元の人たちの優しい愛情を感じながら育って来たずら」

花丸「ホントの田舎だけど..マルは生まれ育ったこの町が大好き..内浦の人たちが大好き..」

花丸は両目を瞑り、優しい微笑みを浮かべ..慈しむように地元への愛情を語りだした
0076名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:17:49.80ID:edE1HvF1
花丸「確かに校舎は古いし..海以外は何にもない田舎だけど..この学校には、今まで地元の人がたくさん通ってきて..みんながこの学校を大切にしてきたんだよ..この学校は地元の人たちの思いがいっぱい詰まっているんだ..だから..失くしたくないんだ」

理亞「ごめん..無神経なこと言った」

花丸「ううん..いいの..こんな状況じゃなかったら、理亞ちゃんを色々な場所に案内してあげたいけど..」

理亞「気持ちだけで十分よ..今はそれよりルビィの手がかりと、安全な場所を探さないと」

花丸「もうすぐ部室だよ..話していたらすぐついたね..」

花丸はスクールアイドル部の部室の扉に手をかけて..ドアを開けようとするが..
0077名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:18:29.77ID:edE1HvF1
ガツン

花丸「ずら?」

理亞「ん?」

扉が開くことはなく..カギが掛かった扉が僅かに振動するだけだった

ガツン..ガツン..

2度..3度と引っ張るも結果は同じ..部室にはカギがかかっていて入れなかった

花丸「しまった..部室にはカギが掛かってたんだ..カギは千歌ちゃんが持っているから入れないずら〜〜!!」

理亞「なんですって!?」

花丸はオロオロと頭を抱え、縋るような目で理亞を顔を覗き込んだ
0078名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:19:09.71ID:edE1HvF1
花丸「どうしよう..部室に入れないよぅ..」

理亞「しょうがないわね...他に安全な場所を探しましょう..」

花丸「ずら..ここからだと..図書室がいいと思うずら!」

理亞「図書室?」

花丸「図書室も中からカギが掛けられるし..隠れる場所も多いずら!」

理亞「また鍵がかかってるんじゃないでしょうね?」

花丸「大丈夫ずら!図書委員はマルだから..図書室の鍵はほら..ここにあるずら!」
花丸はポケットから図書室の鍵を取り出して理亞に見せた

理亞「図書室か..もしかしたらルビィの手がかりがあるかもしれないし..わかった..図書室に行ってみよう」
0079名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:19:48.41ID:edE1HvF1
二人は目的地を図書室へと変え、学院の真っ暗な廊下を音を殺してゆっくり歩いて行った

ギシ..ギシ..

1歩..1歩と足を進めるごとに木製の床が軋む音が小さく鳴り響く

理亞「2階の廊下も軋むわね..」

花丸「校舎が全体的に古いからね..ポジティブに考えればそれだけ歴史と伝統があるんだよ..それより..真っ暗で怖いずら..」

理亞「我慢しなさい..懐中電灯で照らしたらあのボウガンの奴に居場所がバレちゃうじゃない..」

花丸「こんな暗い中であの人と遭遇したら..想像するだけで鳥肌が立つずら」
0080名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:20:29.30ID:edE1HvF1
理亞「私これでも耳がいいのよ..私たち以外の足音は聞こえないから..アイツは近くにいないはずよ」

花丸「そ、そうなの?それを聞いて少しだけホッとしたよ..」

理亞「花丸..私この学校について調べたいんだけど..図書室の中にこの学校について詳しく書かれた本とかある?」

花丸「それなら..この学校の会報を読めばいいずら..マルは読んだことないけど..古いモノから新しいモノまで揃っていたと思うよ」

理亞「図書室についたら、その本のところに案内してくれる?」

花丸「わかったずら..っと..話をすれば..ほら、そこが図書室だよ」

理亞「ここが..」
0081名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:21:10.08ID:edE1HvF1
2人は図書室の扉の前へとたどり着いた..灯りのついていない図書室はシン..と静まり返っていて、暗闇の中に何かが潜んでいるのではないか..という恐怖が理亞の背筋を冷たく凍らせた

花丸「開けるよ?ちょっと待ってて..」

花丸はポケットの中から図書室の鍵を取り出して、扉を静かに開けた

花丸「マルの大好きな図書室へようこそ♪」

理亞「待て..図書室の中に異変がないかをまず確認して..イスがいつもと違う場所にあるとか..モノが無くなっているとか..」

花丸「大丈夫だよ..図書室にはカギがかかっていたし、このカギはマルしか持っていないからこの図書室には誰もいないよ」

理亞「そう..」

理亞はホッと安心し、軽く溜息を吐いた
0082名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:22:04.61ID:edE1HvF1
花丸「それより..カギを閉めるから早く中に入って」

理亞「あ、ごめん」

理亞は花丸に促されて図書室の中に入ると、花丸は扉を閉めて内側からカギを閉めた

花丸「これでよし.と言っても相手はボウガンを持っているから..絶対安全とは言えないけど..」

理亞「花丸..私はこの学院の歴史や成り立ちについて調べたいから..本がある場所まで案内して」

花丸「わかった..こっちだよ..」

花丸は理亞を連れて図書室の奥の棚へと案内した

理亞「この棚に..この学院の秘密が書いてある本があるかもしれないのね..」

花丸「本が古すぎて虫食いがある本もあるから..手がかりになるかどうかはわからないけどね..」
0083名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:22:57.22ID:edE1HvF1
理亞は懐中電灯を取り出すと、スイッチを入れた。掌で灯りが外に漏れるのを防ぎ、本棚の背表紙に書かれたタイトルが見える程度の明かりを灯す

内浦の漁業
古代内浦の歴史
内浦の民俗学

理亞「内浦の歴史書ばかりだ..私が知りたいのはこの学校について書かれた本よ」

花丸「あれ?確かここにあったと思うんだけど..マルの記憶違いかもしれないずら..」

理亞「しっかりしてよ..」

花丸「ちょっと待ってて..他の本棚を探してくるずら」

花丸はそう言うと理亞をその場に残してさらに奥の方へと歩いて行った
理亞(それにしても..内浦の歴史や文化について書かれた本か..ちょっと興味があるかも..)

理亞は暇つぶしがてらに、内浦の民族学について書かれた本を取り出し、パラパラとページをめくった
0084名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:23:42.65ID:edE1HvF1
この内浦という土地には独特の風習がある..
理亞はあるページのその一文に目を引かれて、ページをめくる手を止めた

理亞(へえ..風習ね..やっぱり古い土地だからそういう習わしもあるのね..)

この内浦という土地は漁業と農業を主として生計を立てていた
かつて大規模な干ばつがこの地を襲い、作物はできず、また漁も不漁で飢饉に襲われたことがあった

理亞(飢饉って..たしか歴史で習ったわね..食べ物が取れなくて人がたくさん飢え死にすることよね..?そんな悲惨な過去が内浦にもあったなんて..)

数百名にも及ぶ餓死者が出て、この飢饉の影響で当時の内浦の人口の2割ほどが死に絶えたという..

内浦の民たちは沼津の者たちに支援を求めるも、当時の沼津も苦しい状況で他の地域を助けられるほどの余力はなかった

飢えで困窮した内浦の民は死んだモノの遺体を解体してその肉を食べた
0085名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:24:25.13ID:edE1HvF1
理亞「え?」

人肉の味を占めた内浦の民たちは、次々と飢餓で死んだモノたちの遺体を解体してその身を食べることで飢饉を凌いだのだった
内浦の民たちの暴挙とも取れるこの行動を沼津の者たちは忌み嫌い、交流を閉じることで、内浦はますます孤立した

飢饉を乗り切り、全滅の危機を免れた内浦だったが、人肉の味を忘れられない内浦の者達はよそから人をさらってきて、生贄としてその身を食すという
暴挙に乗り出した

理亞「は..え?え?」
0086名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:25:06.23ID:edE1HvF1
主に生贄として連れ去られるのは沼津近郊の人間が多かったため..内浦と沼津の中はさらに険悪になり、内浦のモノたちを忌み嫌う沼津の住民たちは兵を起こし、内浦と沼津の間で戦が勃発した

数で勝る沼津だったが..当時の内浦の当主を筆頭とし、結束した内浦の民たちは襲い来る沼津民たちを撃ち破り、殺した者たちの肉を食べたという逸話が残っている

現代ではもう人を食すことはほとんどないが..内浦の人間たちのDNAには食人の遺伝子が刻まれているのだろうか..数十年に1度よそからさらってきた子供を自分たちの好みの味になるように育て上げて、残虐に食い殺す生贄の儀という伝統が残っているのだ..

生贄の体を痛めつければつけるほど、肉は旨みを増すと言われ..生贄の儀に選ばれたものは凄惨な末路を遂げると言う

そして儀式が終了次第、いなかったものと扱われ、その名を2度と口にしてはいけなくなる

だから、儀式を行う際は生贄を弔うために、ひたすら哀れな贄の名前を皆で口ずさむのだ

この土地に拠点を構えられたことを私は幸せに思う..
この風習を研究してこれを....××××××××
0087名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:25:48.02ID:edE1HvF1
理亞「ここからは虫食いで読めないわ..それにしても..悪趣味だわ!これを書いた奴はとんでもない夢想家ね..現実とフィクションをごっちゃにしてるんじゃないかしら..気持ち悪くて鳥肌が..」

理亞の全身が粟立つように総毛立ち..腕に鳥肌が立つのを感じた..

手がかり一つ残さずに突然失踪したルビィ..
学校に現れて自分たちの命を狙っている謎の襲撃者..
内浦の者たちから理亞に向けられる奇妙な視線..

理亞の中で恐ろしい仮説が組みあがった

理亞(ルビィは..まさか...タ・べ・ラ・レ・タ?)
0088名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:27:12.95ID:edE1HvF1
ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..
ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..

内浦の住民たちがルビィを取り囲んで、ルビィの名前をひたすら口ずさんでいる..

泣き叫び、命乞いをするルビィを..バラバラに切り刻み..そして..

ピギャアアアアアアアアアアアアアアアア〜〜〜〜〜!!!!!

理亞の頭の中で..ルビィの断末魔の叫びが聞こえた...ような気がした 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
0089名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:27:58.05ID:edE1HvF1
理亞「う...」

突如めまいに襲われた理亞は、膝の力が抜けてその場に崩れ落ちた

理亞の額や背中から冷や汗が噴き出してくる

貧血のような立ちくらみを覚えた理亞は、しばらく床に座ってめまいが通り過ぎるのを待った

理亞(なにをバカなことを考えているのよ私は..そんなバカなことがあるわけないじゃない..ルビィが?食べられた?内浦の住民たちに?)

ナンセンス..そう..まったくもってナンセンスだわ..現代日本にそんな..そんなおぞましい風習があるわけないじゃない..
これを書いた奴は頭がおかしいのよ..それかこれはきっと創作なんだわ..あるいは性質の悪い怪談を作って生徒をからかっているのか..

そうよ!!ここは学校の図書室なのよ?図書室にこんな本が置いてあるのがそもそもおかしいわ
こんなの生徒が読んだら..絶対気分を悪くするし、保護者が知ったらクレームモノよ!
0090名無しで叶える物語(SB-iPhone)
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2019/05/17(金) 00:28:16.15ID:9OAm7KOr
眼球芸やめろ
0091名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:28:56.44ID:edE1HvF1
でも..もし..もし..ルビィを殺したのが内浦の住民たちで..それをみんなで隠しているんだとしたら..

あのボウガンの奴は..私を殺そうと奴らが差し向けた刺客..だとしたら..辻褄があってしまう..

つまり内浦の住民の仕業じゃない? それとも罠? そもそもあんなトイレの中で待ち伏せしていたのがおかしい..

ここに私が来るように仕向けたのは花丸..そしてあのボウガンの奴が待ち伏せして襲ってきた..
つまり、花丸とボウガンの奴は..グル?

でも、あのボウガンの奴は私と一緒に花丸も殺そうとしている..少なくとも花丸が味方なのは間違いない

でも..もしも花丸がボウガンの奴とグルで..私を殺そうとしているんだとしたら..

何言ってるのよ?殺そうとしているヤツが、わざわざこんな本が書いてあるところに連れてくるわけがないじゃない..
こんな本を私に読ませたら殺そうとしていることがバレバレになるのよ?

それに..花丸はあんなにルビィと仲が良かったのよ?そんな花丸がルビィを殺そうとなんてするわけがない!!

花丸はとっても優しい女の子よ..虫一つ殺せない人畜無害な人..
0092名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:29:47.38ID:edE1HvF1
理亞(もしかしたら..ルビィの失踪には内浦の人間が関わっているのかもしれない..でも、花丸やダイヤ達が関わっているとは思えない..私はみんなを信じる..)

理亞(ルビィ..絶対あんたを探し出してみせるからね..待ってなさいよ!!)

花丸「理亞ちゃん!!」

そんな理亞の背中に花丸の声がかけられる

花丸「理亞ちゃん!学校について書かれた本がみつか..どうしたの?大丈夫?」

花丸は顔面蒼白になった理亞の顔を見て、心配する声を掛けた

理亞「大丈夫..なんでもない..」

理亞は読んでいた本を本棚に戻し、自分の想像を必死でかき消した
0093名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:30:29.76ID:edE1HvF1
理亞(こんなバカげた妄想を花丸に話すわけにはいかない..心配をかけないように、なんでもないように装わないと..)

花丸「ならいいんだけど..あ、それでね?さっき本を見つけたんだよ!もしかしたら何かの手がかりになるかもしれないずら!!」

そう言うと花丸は理亞に1冊の本を手渡した

理亞「これは..」

花丸「浦の星女学院の会報ずら..」

理亞「ずいぶん古いモノみたいね」

会報は黄色く黄ばんでおり、所々に虫食いの跡があった

花丸「ここなんだけど..」

花丸がページを開くと年月を経たすえた臭いが理亞の鼻を突く..
0094名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:31:10.68ID:edE1HvF1
浦の星女学院の皆さん!こんにちは!この学院の初代理事長の小原です!

理亞「初代理事長って確か..体育館に置いてあった胸像の..」

花丸「鞠莉ちゃんのお爺ちゃんずら」

我が小原グループが内浦の女子教育を推進するために、この学院が設立してから1年がたちました。
自然豊かな土地で地域の皆様と共に日々を過ごせることを幸せに思います。

花丸「この自然あふれる澄んだ空気の元で皆様がすこやかに成長し、知恵を付けて社会に通用する人材になることを切に願っています..これで終わってるずらね」

花丸「さすがに噂の事までは書いてないずら..」
0095名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:31:58.76ID:edE1HvF1
理亞「あくまでウワサだから..信憑性もないし..それに学校の会報に..この学院で人が行方不明になったことがあるなんて書かないでしょ..あら?」

花丸「どうしたの?」

理亞「この本..表紙の裏になにか挟まっているわ..」

花丸「え?」

理亞はそう言うと本の表紙を外して、本をむき身の状態にした..
すると..カツンという音を立てて固い何かが図書室の床の上に落ちた

理亞「これ..レリーフね..」

理亞は床の上に落ちたレリーフを手に取るとクルクルと角度を変えて、レリーフを観察した
0096名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:32:50.50ID:edE1HvF1
花丸「本当だ..この形は浦の星女学院の校章ずら..なんで本の間にこんなものが..」

理亞「校章を象ったレリーフ..はっ!!」

理亞の頭に体育館にあった創設者の胸像が思い浮かんだ..

理亞「このレリーフ..もしかしてあの胸像の..あの胸像にこのレリーフをハメれば何かが起こるのかも!」

花丸「なにかって..なんずら?」

理亞「わからない..でも..他に手がかりがない以上これに賭けるしかないわ!花丸!今から体育館へ.いくわ..危ない!!」

花丸「へ?わあ!!」

理亞は花丸の体を掴むと地面に押し倒した。床の上に倒れこむドサリという固い音が鳴り響く..
2人が床に倒れた約1.5秒後に銀色のボウガンの矢が、2人が立っていた場所を猛烈な勢いで通過して行った

壁に矢が突き刺さるドガッ!という音の後に、ビイイ〜〜ンと矢が振動する少し間の抜けた音が響き渡った
0097名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:33:45.66ID:edE1HvF1
理亞「アイツだ!!」

花丸「ど..どうして!?」

理亞が指を差した先には..黒衣のローブを纏った襲撃者が貸出カウンターの中からボウガンを構えて立っていた

理亞「カウンター机の中に隠れて待ち伏せしていたのよ!!逃げるわよ花丸!!」

花丸「ま、待って!!」

理亞は立ち上がって逃走の体制を整えるが..足をケガした花丸はもたついてしまう..
襲撃者は矢を継げ変えて狙いを花丸に定めた

理亞「危ない!!」

ドシュッ!!という矢を射出する音が鳴り響く
0098名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:34:23.43ID:edE1HvF1
理亞は花丸の体を抱きしめて自分へと引き寄せた..
理亞の体に花丸の温かくやわらかい触感が伝わってくる

理亞「イタッ!!」

理亞は手の甲に焼け付くような激痛を覚えた

花丸「理亞ちゃん!?」

理亞「イタッ..クソッ!!」

ボウガンの矢は理亞の手の甲を掠め、理亞の手に鋭い切傷を刻み込んだ
図書室の床に理亞の手から滴る血液が零れ落ちる..
0099名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:34:58.96ID:edE1HvF1
理亞「この!!ヤッタな!!」

理亞は浦の星女学院の歴史について書かれた本を取り上げると、襲撃者目がけて思い切り投げつけた

??「!!」

襲撃者は自分目がけて飛んでくる本に対してとっさに反応することができず、本が真近になってから慌てて回避行動をとろうとするが間に合わず、額にガツンと言う固い音を立てて本が命中した

襲撃者はのけ反り、天井を仰ぐ。フードの隙間から長い髪の毛がファサッという軽やかな音を立てて背中に零れ落ちた
0100名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:35:35.28ID:edE1HvF1
理亞「え?あたった?」

花丸「理亞ちゃん逃げよう!!」

花丸は理亞の手を引いて図書室から脱出を促す..

理亞「あ..うん..そうね..早く逃げましょう!!」

額を抑えて悶絶する襲撃者を尻目に、理亞は花丸に肩を貸し2人は図書室のドアの鍵を開けると廊下へと飛び出した

花丸「ふう..ふう..」

足を引きづりながら、花丸は息を切らしつつも精いっぱいに前へ前へと足を進める..
理亞は花丸を気遣いながらも、早足に廊下を歩き出した
0101名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/17(金) 00:36:23.80ID:edE1HvF1
理亞(クソッ..こんなノロノロしていたらすぐに追いつかれちゃう..私一人だったら簡単に逃げ切る自信があるのに..)

その時..理亞の心の中に保身に走る自分の声が聞こえてきた

理亞(花丸を置き去りにすれば...そうだ..私は足が速いから..逃げることができる..花丸を囮にしてしまえば..あのボウガンの奴も花丸を狙うから時間を稼げる..私はその間に山を下りて町へ逃げれば..)

理亞(逃げ..るか?)

理亞は痛みに顔を歪めながら必死に歩く花丸の顔を見つめ..花丸をこのまま見捨てて自分だけ助かってしまおうかどうか..
理亞の心は良心と非常の狭間で揺れ動いた
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