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理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3

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0002名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:19:17.05ID:IHJb60Jp
カチ..コチ..カチ..コチ..

理亞「.....」

気分を悪くし、トイレで嘔吐してしまった理亞は休息をとるために客室のベッドの上で横になっていた
壁にかかっている振り子時計が時を刻む無機質な音だけが部屋に鳴り響く

理亞(横になっていたら大分気分が良くなってきた..今何時なんだろう..)

壁の振り子時計の針は時刻は20時を回り、窓の外を見ると日が沈み辺りはすっかり暗くなっている..ひんやりとした空気が内浦を包み込み、シトシトと小雨が降っていた

理亞「もうこんな時間..ずいぶん寝ちゃってた..」

(姉さま..まだ来ないのかな..)

聖良から連絡が入っていないか携帯電話を覗き込むも..新着メッセージは入っておらず、また通話の状態は圏外となっていた
0003名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:20:00.19ID:IHJb60Jp
理亞「.....」

理亞はベッドの上に大の字になって思案を巡らせる

(私はルビィを探すためにやってきたんだ..こんなところで寝ているわけにはいかない..とにかく行動しなくちゃ..でも..どうすればいいんだろう..)

(内浦や沼津の周辺は黒澤家の人達や、地元の住民が隈なく探したはず..それでも手がかり一つ見つからないんじゃ..私一人がどうこうしたところで..)

理亞「こんな後ろ向きな考えじゃダメだ!とにかく情報を集めないと..」

理亞は頭を振って邪念を振り払った..その時..

コン コン..という木製のドアをノックする音が聞こえた
0004名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:20:55.37ID:IHJb60Jp
理亞「誰?」

花丸「遅くにごめんね?花丸だよ..開けてもらえるかな?」

理亞「ちょっと待って..今開ける」

気だるさの残る体に鞭打ち、理亞はベッドから起き上がるとドアの鍵を開けて花丸を室内に迎え入れた

花丸「理亞ちゃん大丈夫?気分は良くなった?」

理亞「ええ..もう大丈夫..迷惑かけたわね」

花丸「気にしないでいいずら..北海道からはるばるやってきてくれたんだもの..疲れが出るのは当たり前だよ」

理亞「花丸一人?ダイヤ達はどうしたの?」

花丸「ダイヤさんは家の人達と何か話し合ってる..善子ちゃんはもう夜遅いから帰ったずら」

理亞「そう..」
0005名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:21:42.73ID:IHJb60Jp
理亞が沈黙すると室内には振り子時計のカッチコッチという音だけが響き渡る..
沈黙する理亞を尻目に花丸は屈託のない笑顔を浮かべて、明るく理亞に話しかけた

花丸「ねえ、理亞ちゃん..少し話さない?」

理亞「え?」

花丸「あ..もちろん理亞ちゃんが嫌じゃなかったらだけどね?」

理亞「いいけど..」

なんだろう..改まって..私..花丸のことあんまりよく知らないから..なんだか緊張する..

花丸「理亞ちゃんは..ルビィちゃんのこと..どう思ってるの?」

理亞「どうって..」

花丸は顔を赤らめて..まるで意中の相手の恋敵を見るような目で..理亞の顔を見つめた
0006名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:22:37.39ID:IHJb60Jp
理亞「大切な..親友...だわ」

花丸「そう..なんだ..」

花丸は何かを堪えるように..ギュッと口元を噛み締める...

花丸「辛いよね..ルビィちゃんがいなくなってから..マルはずっと寂しくて..心細くて..」

花丸「ルビィちゃん..理亞ちゃんにすごくよく懐いていたから..もしかしたら理亞ちゃんの元に行ったんじゃないかって思って..連絡したんだ」

理亞「ルビィからは..何の連絡も来ていないわ..」

花丸「そう..」

花丸は沈痛な表情を浮かべてカーペットに目を落とした
0007名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:23:30.45ID:IHJb60Jp
理亞「花丸も..ルビィのことを親友だと思っているの?」

花丸「当たり前だよ!!ルビィちゃんとはずっと一緒だったんだよ!?マルにとってもルビィちゃんは..大切な親友なんだよ!!」

花丸「うう..ルビィちゃん..一体どこにいってしまったずらぁ..」

花丸の目から涙がポロポロと零れ落ちる..次々と滴り落ちる涙がカーペットの布地へと吸い込まれていった..

理亞「詳しい話を聞かせてよ..ルビィはどこに行っちゃったの?」

花丸「ルビィちゃんは..突然行方不明になっちゃったんだ..目撃情報も全然なくて..地元では神隠しにあったなんて無責任な事を言う人もいるずら」

理亞「どうして..ルビィは行方不明になったのかしら?自分から消えた..?それとも..誰かに..」

誰かにルビィが..その言葉が持つ意味を想像して理亞は体を大きく震わせた..
0008名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:24:52.51ID:IHJb60Jp
理亞の脳裏に羽交い絞めにされて、泣きわめくルビィの顔が浮かぶ..

ルビィの首筋に鋭利なナイフが突きつけられ..その冷たい刃はルビィの首筋を切り裂いて..そして..

理亞(バカバカしい!!そんなことあるわけない!!絶対ルビィは今もどこかで元気でいるに違いない!!どうせ、家出でもしてどこかの街をほっつき歩いているのよ!! ルビィは生きてる..絶対..私はルビィと再会するんだ!!)

焦燥で焦がれる理亞の胸中をよそに花丸は言葉を続けた

花丸「ルビィちゃんの身の回りに特別なトラブルはなかったと思うし..不審者の情報もなかったから..誘拐の線も薄いと思う..」

理亞「それじゃあどこかでケガをして動けなくなったのかも..山で遭難したとか..海で溺れたとか..」

花丸「もちろんその線も踏まえて..地元住民で大規模な山狩りも行われたよ..それでもルビィちゃんは..見つからなかった..」

花丸「海も同じく..果南ちゃんたちを筆頭に地元のダイバーたちが海に潜ってルビィちゃんの手がかりを探したけど..ルビィちゃんの髪の毛一本見つけることもできなかったんだ」
0009名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:25:34.45ID:IHJb60Jp
理亞「ルビィが最後に目撃されたのはどこ?」

花丸「学校ずら..」

理亞「学校?」

花丸「浦の星女学院だよ..スクールアイドルの練習が終わった後、ルビィちゃんは用事があるから..って言って一人で校舎に残ったの..それが..ルビィちゃんを見た最後になったずら」

理亞「じゃあ学校になにか手がかりがあるんじゃ..!」

花丸「もちろん学校も隈なく探したよ..でもやっぱりルビィちゃんの手がかりを見つけることはできなかったんだ..ただ..」

理亞「ただ..なによ?」

花丸「ウチの学校..その..いわゆるイワクつきなんだ」
0010名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:26:34.49ID:IHJb60Jp
理亞「イワクつき?」

花丸「うん..どこの学校にもよくある..いわゆる怪談話なんだけどね..ウチの学校は孤児院だったんだよ」

理亞「孤児院?」

花丸「そう..太平洋戦争で親を失い家を焼け出された子供たちを保護していたんだって..戦時中の内浦には疎開先として各地からたくさんの子供が疎開してきたずら..ウチのお寺も疎開先として児童の面倒を見ていたことがあるんだよ」」

花丸「親を失い帰る場所もない子供たちを不憫に思い..孤児院を建設して子供たちの面倒を見ていたんだよ..それが浦の星女学院の前身ずら」

理亞「そんな過去が..それで..孤児院だったことと、ルビィの失踪がどう関係あるのよ?」

花丸「孤児院に入所した児童の数と..退所した児童の数が..合わないんだって..」

理亞「え?どういうこと?」

花丸「つまり..行方不明になってどこかに消えてしまった児童がいるということずら」
0011名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:27:20.60ID:IHJb60Jp
理亞「なんですって!?それって..」

花丸「今回のルビィちゃんの失踪事件に良く似ているでしょ?」

理亞「行方不明になった子供は..どこに行ってしまったのよ!?」

花丸「わからないずら..施設の厳しい生活が嫌になって、施設を脱走してどこかに消えてしまったんだろうと言われてる..けど」

理亞「けど..何よ?」

花丸「地面の下から..子供が苦しむうめき声が聞こえた..という逸話が残っているずら..」

理亞「ど..どういうこと?」

花丸「失踪した生徒たちの..怨霊が校舎に住みついているんじゃないかって..浦の星女学院の怪談話として..有名なんだ」
0012名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:28:12.23ID:IHJb60Jp
理亞「バカバカしい!!そんなオカルトめいた話をあんたは信じるの!?まさかルビィが怨霊に連れてかれて神隠しにあったっていうんじゃないでしょうね!?」

花丸「もちろんマルも..完全に信じているわけじゃないよ..でもね..?もうルビィちゃんがいそうなところは全部探したんだ..それでも手がかり一つ見つからないとなると..こんな怪談話でも..ルビィちゃんの手がかりが見つかる可能性があるのなら縋りたくもなるずら!!」

理亞「そもそも..その子供が失踪した話って..信ぴょう性はあるの?神隠しなんて到底信じられないわ!」

花丸「身寄りのない子供が失踪しても..探す人なんてだれもいないずら..それに時代は戦後の混乱期..どこまでが本当でどこまでがウソなのかもはっきりしないずら..ただ..あの学校に得体の知れない何かがあるのかもしれない..マルはそう思っているずら」」

理亞「浦の星女学院に..ルビィが失踪した何かがあるかもしれない..花丸はそういいたいの?」

花丸「うん..ただ..ルビィちゃんがいなくなってから、マルや他の生徒たちも学校を隈なく探してみたけど..ルビィちゃんの手がかりはなにも見つからなかったんだ」
0013名無しで叶える物語(アメリカ合衆国)
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2019/05/16(木) 23:28:13.98ID:dP8lBfGo
来たか!
0014名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:29:18.76ID:IHJb60Jp
理亞「まだ探していないところがあるじゃない..」

花丸「え?」

理亞「そのうめき声が聞こえたって言う話よ!もしも噂通り本当にそこから子供のうめき声が聞こえたのなら..その場所に何らかの手がかりがあるかもしれないわ!」

花丸「でも..そのうめき声が聞こえたっていうのも..あくまで噂話で..本当かどうかもわからないし..それが学校のどこかもわからないんだよ..」

理亞「それでも..ルビィの手がかりが見つかる可能性が僅かでもあるのなら..私はソレに賭けるわ!」

理亞「花丸!今から私を学校に案内して!!これから浦の星女学院に行ってルビィの手がかりを探す!」

花丸「今からって..夜になって外も暗いし..雨も降っているし..明るくなってからにしようよ」

理亞「だめよ!!このままジッとしているなんて私にはできない..きっとルビィの手がかりが校舎のどこかに残っているハズ!」

花丸「理亞ちゃん..わかった..ルビィちゃんの手がかりを..探しにいこう!!」

理亞(ルビィ..待っててね..絶対にあんたの手掛りを見つけ出してやるんだから!!)
0015名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:30:06.63ID:IHJb60Jp
そして..2人は海岸沿いの真っ暗な小道へとやってきた..
古びた街灯と微かな月明かり以外には辺りを照らすモノはなにもない..

理亞(暗い所って..やっぱり苦手..)

花丸「この道をまっすぐ進むと..バスの停留所があるんだ..停留所の側にある階段を上った先が浦の星女学院だよ」

理亞「本当..何にもない場所ね..真っ暗じゃない..」

花丸「フフッ..そうだね..内浦は山と海に囲まれていて..それ以外は本当になにもないところだよ..でも地元の人たちはみんな優しくて心の温かい人ばかりなんだ..マルはそんな内浦が大好きずら!」

理亞「ルビィと花丸は..ずっとここで育って来たのよね?」

花丸「そうだよ..マルとルビちゃんは子供の頃から仲良しで..ずっと2人で一緒に過ごしてきたんだ..」
0016名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:30:52.57ID:IHJb60Jp
理亞「学校につくまで聞かせてよ..子供の頃のルビィと花丸はどんなことをして過ごしていたの?」

花丸「そうずらね..小さいころのマルは気が弱くて..いつもルビィちゃんに庇ってもらっていたずら」

理亞「花丸の気が弱い..?意外だわ」

花丸「マルは..ほら、オラとか..マルとか方言がでちゃうから..周りの子達にバカにされることがあって..そのたびにルビィちゃんが相手に言い返してマルを守ってくれたんだ」

理亞「ルビィが..」

そう言えば..私がダイヤのことをバカにした時..ルビィはムキになって言い返してきたっけ..
オドオドして気が小さいくせに..自分の大切な人が傷つけられると怒るのは昔から変わらないのね..
0017名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:31:41.17ID:IHJb60Jp
花丸「マルは聖歌隊に入っているんだけどね?」

理亞「聖歌隊?でも確かあんたの家って..」

花丸「うん..聖歌隊に誘われた時はすごくうれしかったよ?でも..マルの家はお寺だから..その兼ね合いで辞退しようとしたんだ..」

花丸「でも..本心は聖歌隊に入って歌ってみたかった..そんなマルを見かねたのか..ルビィちゃんがマルのおばあちゃんに掛け合ってくれたんだ..マルは歌がうまいから..聖歌隊で歌わせるべきだって..」

花丸「そしたら..お婆ちゃんたちが大賛成してくれて..マルは聖歌隊に入ることになったんだ!」

理亞「そう..昔からそういうところは変わらないのね..ルビィは自分の大切な人の為だったら..ムキになって..相手のために尽くそうとする人..」

花丸「フフッ..そうだね..ルビィちゃんはとっても優しい子だから..マルも..そんなルビィちゃんの事が大好きで..いつまでも一緒にいたいずら..」
0018名無しで叶える物語(やわらか銀行)
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2019/05/16(木) 23:32:26.43ID:IHJb60Jp
理亞「ルビィ..」

会話を続けながら道を歩き..浦の星女学院のふもとのバス停にたどり着いた

花丸「ついたよ..この階段を上るとマルたちの通う学校..浦の星女学院ずら」

理亞と花丸は階段のふもとまでやってきて..山の上にそびえる浦の星女学院を見上げると..シトシトと振っていた小雨がいつしか止んでおり..雲の切れ目から顔を覗かせた月明かりが..校舎を白く..不気味に照らしていた

理亞「花丸..」

花丸「うん?」

理亞「絶対に..ルビィを見つけ出すわよ」

花丸「.....うん!!」

そして..2人は真っ暗な階段を上り..浦の星女学院へと足を進めた
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