にこ「わたしがわたしでなくなるその前に」
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絵里「大丈夫、にこ?」
にこ「だ、大丈夫、大丈夫だから、大丈夫」
大丈夫じゃないのは自分自身で自覚していた。
先ほどから話しかけられても答えるのが億劫になってきたうえ、絵里の用意してくれた食事にも手が伸びなくなっていた。
絵里「にこ、そんな格好したらあぶないわよ。こまったわね」
にこ「ふぁう?」
絵里にお酒を勧められて、飲めないのにお付き合いしたせいで私はすっかり酔ってしまっていた。 そう……何と言うか、頭に水が詰まっていて、それが首を傾けるたび中でユラユラしている感じ。
何だか身体が重く、気を張っていないと次の瞬間には意識を失ってしまうくらい、私は酩酊させられていたのだ。
腕が、頭が、瞼が重く、指一本動かすことさえ面倒に感じた。
絵里「ベッド空いてるから、休んだら?」
にこ「い、いいわよ。わ、私は、家に、帰る、ん、だから〜」
絵里「呂律も廻ってないわよ」
にこ「ちゃんとしてる、わよ…。…………………………………………ろれつ、まわって、ま、す、か、ら、だい、じょう、ぶ、よ」
絵里「まともに話せてないじゃないの。泊まって行きなさいって」
にこ「かえり、ます、か、ら」 何とか立ち上がろうと試みたが、
床がゆらゆらと波打ち、
真っ直ぐに立っていることが出来ず、思わずへたり込んでしまった。
お酒など飲んだこともなく、まして酔うなどと言う感覚がどういうものなのかも分からず、ただ私は自分の状態に驚いてた。
酔っ払う感覚は気持ちの良い部分もあったのだろうか、驚きながらも絵里とやりとりする私は、少し上機嫌だったようにも思う。
その機嫌の良さがなければ、いくら身体の具合が悪くても、絵里を振り切って帰宅しただろう。
絵里「あ〜、にこお酒飲んだことないって言ってたけど、本当に飲んだことが無かったのね。しかも、すごく弱い♪」
にこ「かえるって」
絵里「お、おっとっと。もうっ」 よろけて床に倒れてしまいそうになる私を、絵里があわてて受け止めた。
絵里に支えられたままでも、お酒がもたらす幾分か心地のよい感覚に浸り、私はふらふらと揺れてた。
正気の状態ならば絵里の身体がこんなにも密着していることに嫌悪を覚え、周囲の人が見たら驚くほどの勢いで絵里を突き飛ばしたことだろう。
絵里「本当にあぶないんだから。そんなのじゃ、帰ることはもちろん歩くのだって無理よ。にこがしゃんとなるまでは、絶対出て行かせないんだから」
絵里はおどけて怒ったふりをしながら、私との身体の密着をいよいよ強くした。
私を抱きとめた手で、私の二の腕をなぞるように動かし、肩に触れた。
ぐっと私の体を強引と言っていいほどの力で抱き寄せ、私の頬に鼻で触れたのだ。
絵里「ね?」 私は絵里にこういうことをされるのが嫌でたまらず、無理にでも帰ろうとしていたのだ。
私は女同士でこういうことをする絵里を気味悪く感じ、嫌に思っていた。
μ'sで一緒になった当初は絵里のことをかなり気に入っていたと思う。
夢へ向かうものとして尊敬してたし、絵里本人の雰囲気は思ったよりなんだかのんびりとしていて、ほっとさせられる空気を纏っている、そんな風に思っていて、一緒にいるだけでなぜか安心できた。
私と相通じるものがある、そんな気がしていた。 そんな気持ちも私の思い込みではなかったようで、聞いた話だと絵里から他人に興味を持つなどあまり無いとのことだったが、
特別扱いなのか何かにつけ私のところにだけは気軽に足を運んでくれた
大げさに言いふらしたりしないものの、絵里の私に対する扱いに内心鼻高々だった。
絵里「強引に泊まらせるわよ」
絵里が私を抱えたままドアを開くと、奥には大きめのシングルベッドがあった 絵里「ちょっと休憩したら、きっと元気になるわ。にこは酔っ払っているだけなんだから」
ベッドまで連れて行かれると、私は絵里の手で横たえさせらた。
体に酔いが廻った私の身体は崩れ落ちるがままベッドへと投げ出され、並ぶように絵里も同じベッドの上で横になった。
絵里「でも、めずらしいわよ、にこみたいにお酒に弱い人は。ほんのちょっと飲んだだけなのに……。ふふっ」
絵里からの特別扱いと思って喜んでいた私だったが、少しずつ絵里の親しすぎるんじゃないか、と思わせるスキンシップに戸惑うようになっていた。
何かあると絵里は気軽に私の体に触れてくるのだ。
絵里の触れ方は、体に触られていることを常に私に自覚させるように、意識的に行っていたように思える。
触れられることで二人の間の垣根が壊れ、少しずつ親しくなっていく、そういう友人関係が進んでいく良いものとは何かが違っていたのだ。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています