絵里「怪盗のことだったら」ことり「μ'sにお任せ♪」雪穂「ですっ!」第三話
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カチャカチャ…
雪穂「えっと…最初に金属を伸ばして、鍵穴に入れた後で形を変えていく…」
ことり「そうだよぉ、いい感じいい感じ♪」
雪穂「ここから…右と下の空間を触った感じで鍵の種類を探知して…」
ことり「うんうん。パターンは?」
雪穂「えっと…H、かなぁ?」
ことり「せいかぁい♪ だいぶ早くなってきたんじゃない?」
雪穂「えへへ…///」 雪穂「次に…パターンがHの場合は、金属をY字にして…更に先端を…」
カパ
雪穂「開いたっ!」
ことり「おめでとう雪穂ちゃん♪」
雪穂「タイムは!?」クル
ことり「えーっと、4分23秒…。うん、上出来上出来ぃ♪」
雪穂「4分、かぁ…。はぁー…やっぱり4分切るのは難しいね」
ことり「しょうがないよぉ〜。あのA-RISEの鍵開け担当のあんじゅちゃんだって、4分はかかっちゃうんだし〜」
雪穂「えぇ!? そうなの!?」
ことり「そうだよぉ〜。むしろ、この短期間であんじゅちゃんと同じレベルに来たんだから凄いんだよ〜?」 雪穂「パターンHなんて、並の怪盗なら4分を切るのが当たり前よ」キリ
雪穂「…とか、さらっと絵里お姉ちゃん言ってたけど嘘だったのっ!?」
ことり「ちょ…雪穂ちゃ…今の…絵里ちゃんの真似…? そっくり…あはは…っ!」
雪穂「…///」カァー
ことり「も、もう一回…! お願い、今のもう一回やって…っ!」
雪穂「やんない!///」
ことり「あはは…ふふふ…っ! 雪穂ちゃん…最高だよぉ…♪」クスクス
雪穂「…ふんっ!///」プイ ことり「くすくす…♪ あー、おかしかったぁ…」
雪穂「…」ムー
ことり「…まぁまぁ雪穂ちゃん、絵里ちゃんの嘘のおかげでここまで上達できたんだからいいじゃない?」
雪穂「それは…そうだけど…」
ことり「大体、このレベルの解錠を4分切れる怪盗なんて、絵里ちゃんを覗いたらほんの一部くらいなんだからぁ」
雪穂「ちょっと待って、絵里お姉ちゃんは本気で4分切れるの…?」
ことり「絵里ちゃんが速いのは足だけじゃないよぉ? むしろ解錠の方が得意技かも♪」
雪穂「」 ことり「でも本当に凄いなぁ、こんなに短期間で…。絵里ちゃんったら、教えるのも上手なんだからぁ…♪」
雪穂「得意…どうかなぁ…。最近絵里お姉ちゃんスパルタ過ぎて…」
ことり「くすくす♪ 絵里ちゃんったら、雪穂ちゃんのこと気に入ったのかかなぁ?」
雪穂「えぇー!? 絶対そんなことないよ! いっつも私に厳しいもん! ちょっと間違えただけですぐ怒るし…!」
ことり「それだけ雪穂ちゃんのことを気にかけてる証拠だよ〜。興味ないものには見向きもしない性格なんだからぁ」
雪穂「そう…なのかな」
ことり「この間の件で少し認識を変えたのかなぁ? まぁ…あの絵里ちゃんのつめた〜い視線は、それはそれで癖になるんだけどぉ〜…♡」ハァハァ
雪穂「…」 ことり「ん? どうしたの雪穂ちゃん〜?」
雪穂「…あんまり分からないや、絵里お姉ちゃんのことは」
ことり「え〜、姉妹なのにそれはヒドイんじゃない?」
雪穂「だって…絵里お姉ちゃんはあんまり話してくれないし、それに怪盗の仕事でいつも忙しそうだったから…」
ことり「そうねぇ〜…絵里ちゃんはいつだって真面目に仕事に取り組んでくれているけど、遊びが足りないのかもねぇ」
雪穂「遊び…?」
ことり「うん、遊び。いつも眉を吊り上げてコワーイ目つきばかりだもん、もっといつでも笑ってるような心の余裕がないと♪」
雪穂「あはは…絵里お姉ちゃんが笑っている姿なんて、想像できないや…」
ことり「そうかも♪ まぁ、最近は絵里ちゃんも少しは変わってきたような気がするけど…」
雪穂「そう、なの…?」 ことり「前は後輩の子が出来ても、本当に辛く当たるだけだったんだからぁ」
雪穂「へぇ…。そういえば、お姉ちゃんたち以外の怪盗って…」
ことり「昔は何人もいたんだけどねぇ、みーんな辞めて行っちゃった」
雪穂「そうだったんだ…」
ことり「ちなみに、その何人かの辞めた原因の一つは絵里ちゃんだよぉ」
雪穂「そ、それって、もしかして次に辞めさせられるのは私なんじゃ…!?」
ことり「うーん、大丈夫だと思うけどぉ…」
雪穂「で、でも…!」ハラハラ
ことり「だって〜あの頃の絵里ちゃんの怖さは、今の絵里ちゃんの比じゃなかったよぉ〜? 歩くナイフってああいう感じのことを言うんじゃ無いかなぁ」
雪穂「歩く…ナイフ…」ガタガタ ことり「だぁーから、雪穂ちゃんは大丈夫だよぉ、多分♪」
雪穂「…っ」ガクガク
ことり「うふふ、ちょっと怖がらせ過ぎちゃったかなぁ? あの頃の絵里ちゃん、生で見せてあげたかったなぁ〜♪」
雪穂「〜〜っ!」ブンブン
ことり「くすくす♪ …まぁ、辞めた原因はそれだけじゃないんだけど…」
雪穂「〜〜…?」
ことり「…それはまた今度話してあげる♪」
雪穂「うん…」
ことり「それじゃあ今日の特訓はおしまい! 帰ってお昼ご飯にしよう♪」
雪穂「はぁ〜い」
……。
絵里「怪盗のことなら」ことり「μ'sにお任せ♪」雪穂「ですっ!」
絵里「μ'sとは、私達が働いている会社の名前よ」
絵里「私達は依頼があれば、どんなところからでも華麗にお宝を奪ってくる怪盗なの」
絵里「メンバーは、私の姉であり、経営も怪盗もどんなことも天才的にこなしてしまう完璧超人、南ことり…」
ことり「はーい♪ 南ことりでぇーす☆ 趣味はぁ〜可愛い女の子を観察することでぇ〜、特技はぁ〜…」
絵里「時間がないから次に行くわね」
ことり「ちょっとぉー! 絵里ちゃーん!?」プンプン 絵里「…次に、現役女子高生怪盗として名を馳せているこの私、南絵里」
ことり「はいはーい! 絵里ちゃんはね〜本当に大人気の怪盗なんだよぉ〜? 毎日ポストにラブレターは当たり前…♪ 月に数回はプレゼントが家に届くし…TV出演だってもう常連なんだからぁ♪ それにそれにぃ〜…」
絵里「これも長くなりそうだから、次に行くわよ」
ことり「もぉー! もっと喋らせてよ絵里ちゃーんっ!!」プリプリ
絵里「最後に…私の妹、まだまだ新米で動きもトロければ3回に1回は失敗してしまうようなひよっこ怪盗の、南雪穂」
雪穂「あーっ! 私の紹介台詞取った上に、悪口言ってるー!! 絵里お姉ちゃーん!?」
絵里「遅いのが悪いのよ」
雪穂「そんなぁ…! ことりお姉ちゃぁ〜ん!!」
ことり「よしよ〜し、絵里ちゃんは怖かったよねぇ〜…♡」ナデナデ 絵里「…全く、どうしようもなく出来の悪い妹だけど…自慢の妹でもあるの。まだ中学生ということもあるし、これからの活躍に期待…してもいいかもしれないわね」
絵里「…? そうね、肝心なことを忘れていたわ」
絵里「私達の国では、必要なスキルさえ備わっていれば誰でも怪盗になることができるの。それこそ、私のような女子高生だってね」
絵里「勿論、その必要なスキルはおいそれと習得できる代物ではないわ。だからこそ、私達怪盗…μ'sが重宝されるの」
絵里「…今日も変わらず怪盗の依頼は舞い込んできているわ。どんなお宝でも、私達の手で必ず怪盗してみせる」
絵里「…」
絵里「ふぁ、ファイト…よ///」
……。
絵里「…」
雪穂「…」チラ
絵里「…なに?」
雪穂「あ、い、いや…。ことりお姉ちゃん遅いね」アセアセ
絵里「全くね…。何を手間取ってるのかしら」
雪穂「…つ、次の任務ってどんな感じだろうー…?」
絵里「さぁね。でもどんな任務でも変わらないわ。丁寧、且つ、迅速に任務をこなすだけよ」
雪穂「うん…」
絵里「…」
雪穂(二人きりだと話続かないし…そもそも何話して良いか全く分からないよぉ…)
雪穂(好きな食べ物の話…とか振っても、どうせ「特にないわ」とか返されそうだしなぁ…)
雪穂(それどころか「その話、今必要ある?」とか睨まれそうだよ…)
雪穂(うぅ…やっぱり絵里お姉ちゃん怖いよぉ…)
絵里「…?」
ガチャ
ことり「ごめんごめん〜お待たせぇ〜☆」
雪穂「ことりお姉ちゃん〜! 待ってたよぉ〜!!」ダキ
ことり「え、えぇ〜? どうしたの雪穂ちゃん、急に抱きついてきてぇ〜…♡」ハァハァ
絵里「ことり姉さん遅いわよ。何かあったの?」
ことり「あ、うん、ちょっとね〜。次の任務の資料をまとめるのに時間掛かって…」
絵里「そんなに…?」
ことり「雪穂ちゃん、抱きついてくれるのは気持ちい…じゃなかった、嬉しいけどぉ、ちょっとお仕事するから離れてね?」
雪穂「あ、う、うん」
ガサ
雪穂「うわぁ…凄い量」
絵里「これだけ入念な下準備が必要ということは、相当な大物ね」
ことり「集めるのに苦労したんだよぉ」
絵里「ターゲットは…」パラ
絵里「――っ!?」
雪穂「えっと…何々…。西木野財閥…?」
絵里「西木野…」
ことり「…♪」
絵里「…本気?」
ことり「うん、本気だよ♪」
絵里「…」
雪穂「え? え? この西木野財閥って…そんなに凄いの…?」
絵里「凄いなんてもんじゃない。西木野財閥の屋敷からお宝を怪盗するのは、Sランク怪盗でも困難を極めるという話よ」
雪穂「ふぇ!? え、Sランク怪盗って、つまり…」チラ
ことり「ふふ」 雪穂「ことりお姉ちゃんでも難しいってことだよね…!?」
ことり「うーん…実は以前、一度だけ西木野財閥の館に忍び込んだことがあるんだけどねぇ…」
雪穂「え…ど、どうだったの…?」
ことり「うふふ…♪ しっぽ巻いて逃げ出しちゃった☆」
雪穂「失敗じゃん! 噂っていうか体験談じゃん!!」
絵里「むしろよく逃げ出せたというべきよ。Sランクであることり姉さんだからこそ助かった。…普通なら警察の独房行きか、もしくは…」
雪穂「もしくは…?」
絵里「この世に帰って来れなくなるらしい」
雪穂「え!? そ、それって…死…!?」 ことり「その辺の真相は分からないけどねぇ〜。でも、西木野財閥の屋敷に潜入した怪盗が帰ってこなかったという事例が何件かあるのは事実なの」
絵里「殺されたのか、はたまた、何かの理由で屋敷の中に幽閉されているのか…。全てが謎に包まれているの」
雪穂「そ、そんなところへ怪盗しに行こうっていうの…!?」
ことり「うん♪」
雪穂「うん♪ ってちょっと軽くない!? ねぇ軽くない!?」
ことり「だってお客様の依頼だしぃ〜」
絵里「お客…? 私が依頼の履歴を見たときにはそんな案件…」
ことり「…匿名希望の割り込み客でねぇ、ついこの間依頼を受けたんだぁ」
雪穂「匿名希望…?」 絵里「ことり姉さん、それってつまり…滑り込みの客の依頼を他案件より先に回したということ?」
ことり「あーえっとぉ…」
絵里「どんな依頼でも順序は守らなくちゃダメよ。特例は認められない。信用問題に関わるから」
雪穂「わ…厳しい…」
絵里「厳しい…?」ジロ
雪穂「ひっ…」ビク 絵里「これは仕事として基本中の基本よ。お客様の依頼は絶対だし、選り好みもしない。お友達感覚で受けてこなすのとは違うのよ。これで厳しいなんて言っていたら今後怪盗なんてつとまらないわよ? いい?」
雪穂「は、はぁい…」
絵里「で、模範とならなければいけないことり姉さんがどうしてそのルールを破るのかしら?」チラ
ことり「…"Angelic Angel"」
絵里「!?」
雪穂「へ…? エンジェリックエンジェル…? なに…?」
ことり「今回の依頼主から怪盗を頼まれているお宝の名前…。それが"Angelic Angel"」
絵里「…」
ことり「まさかこのお宝を西木野財閥が手にしているなんて思わなかったよ〜」
絵里「…こ、ことり姉さん…」
ことり「――ねぇ、絵里ちゃん?」
ことり「怪盗したいよねぇ――…?」
絵里「…っ」
雪穂「絵里…お姉ちゃん…?」
ことり「ふふっ、このお宝はね…凄い貴重なお宝なんだぁ〜。だから、西木野財閥の屋敷からなんとしてでも怪盗しないといけないんだよ」
雪穂「そうなの…?」
ことり「ね、絵里ちゃん?」
絵里「…ええ、そうね…」
雪穂「…?」
ことり「くすくす♪」 絵里「…でも、現実問題としてどうやって怪盗するの? 相手は西木野財閥なのよ?」
ことり「だからこうやって時間掛けて下準備してるんだよ♪」
雪穂「で、でも、ことりお姉ちゃんでも逃げてくるような屋敷って…」
ことり「その時は割に合わなかったから、ね」
雪穂「割に合わなかった…?」
ことり「うん。労力に見合わない…って感じかなぁ?」
雪穂「そう、なの…?」
ことり「でも、今回はそうじゃない。全力を賭してでも怪盗しなければいけないお宝がある」
絵里「…」 ことり「それに今回は私一人じゃない…。絵里ちゃんもいるし、雪穂ちゃんもいる♪」
雪穂「私!?」
絵里「雪穂…?」
ことり「私たち三姉妹の力にかかれば、西木野財閥だって余裕のよっちゃんだよぉ♪」
雪穂「ど、どうかなぁ…? 私はまだ新米だし…力になるかな…」アハハ
ことり「大丈夫だよ♪ この間のエキシビジョンマッチだって頑張っていたし、特訓も頑張ってるし…ね?」
絵里「…っ」
スタスタ…
雪穂「あ、絵里お姉ちゃん!」 ことり「もぅーまだ話が途中なのに〜、絵里ちゃんったら相変わらずなんだからぁ」
雪穂「…」
ことり「…でも久しぶりに絵里ちゃんの冷徹な目、ゾクゾクしたぁ〜…♡」
雪穂「…ことりお姉ちゃん、本当に大丈夫なの…?」
ことり「次の任務のこと? 大丈夫大丈夫〜♪ ことりお姉ちゃんに任せて♪」
雪穂「…それも、だけど」
ことり「どうしたの?」
雪穂「その…」チラ
ことり「…ふふ、追ってみたら?」
雪穂「ん…」
……。
ちょっと長いこと間空いちゃってるし、あんまり見てる人いないかもですが一応まだ書いてるので投下します
でも書ききれてないので今日はここまで… 続き待ってたけどこんな日に人少なくても仕方なかろうて 読んでもらえてとても感謝ですが、ちょっと今日も続きをアップできそうにないです、申し訳ない…
できたら明日少し…
カツカツ…
絵里「…っ」
絵里(まさか、西木野財閥の館にAngelic Angelが眠っているなんて…! 今まで、そんな情報は一切出回っていなかった…)
絵里(く…っ! 依頼主は誰…? 匿名と言っていたけれど…)
絵里(あのお宝の存在を知っている人間は少ない筈…! 一体何が狙いなの…!?)
絵里(…)
絵里(Angelic Angelは…私がなんとしてでもこの手で…)グ…
絵里(しかし…仕事である以上、私怨を挟む訳には…!)
絵里(だけど――…っ!)
ことり『怪盗したいよねぇ――…?』
絵里「当たり前よ…ッ!」ドン!
雪穂「ひっ!?」
絵里「ぁ…ゆ、雪穂」
雪穂「あ、そ、その…」オロオロ
絵里「何か用…?」
雪穂「用って訳じゃないけど…。えっと…心配で…」
絵里「っ…」
雪穂「大丈夫、絵里お姉ちゃん…?」
絵里「少し、取り乱したわ…。もう大丈夫よ」
雪穂「本当に…?」
絵里「ええ。だから雪穂が心配する必要ないわ」
雪穂「…"Angelic Angel"」
絵里「っ」
雪穂「Angelic Angelって、何…? お姉ちゃんにとって、そんなに大切なお宝なの…?」
絵里「雪穂には関係ないわ」
雪穂「関係無いって…わ、私だってμ'sの一員なんだよ…?」
絵里「それは…」
雪穂「これから怪盗するお宝のことなら…私にだって知る権利があるよ!」
絵里「…っ」
雪穂「それに絵里お姉ちゃん、いつも言ってたじゃん。怪盗するなら常に情報は頭に叩き込んでおけって…!」
絵里「そうね…」
雪穂「だったら私にも教えてよ…! Angelic Angelのこと…!」
絵里「…」
絵里「"Angelic Angel"は…私たちのお祖母様の家宝よ」
雪穂「お祖母様…?」
絵里「雪穂は覚えてないかしら? ロシアにいるお祖母様のこと。小さい頃はよくことり姉さんと雪穂と私の三人で遊びに行っていたのだけれど…」
雪穂「私は…あんまり覚えてないかも…」
絵里「そう…。まぁ、雪穂は小さかったから仕方がないかもね」
雪穂「うん…」
絵里「お祖母様の家にはね、古くから伝わるお宝があったの…」
絵里「何代も継がれてきた由緒正しい代物で、私はお祖母様からそのお宝の言い伝えをよく聞かせて貰っていたわ」
雪穂「言い伝え…?」
絵里「…その昔、この地に災害や疫病が流行っていたとされる時代に、奇跡を起こすために舞い降りた天使がいたらしいの」
雪穂「天使…」
絵里「天使は自身が持っていた不思議な力を使い、人々の病を治し、その地に平穏をもたらした…」
絵里「そして人々に感謝されながら、天使は空に帰って行ったというわ」
絵里「その際に、天使は一枚の"羽根"を地上に残していったの」
絵里「不思議と淡く光りを放つ白い羽根…。それこそがお祖母様の家に伝わるお宝――…」
雪穂「…"Angelic Angel"」
絵里「そうよ…。私も直に見せて貰うことがあったから覚えているわ。あの不思議な光は一度見たら忘れられない…」
雪穂「…」
絵里「Angelic Angelには、天使が持つ奇跡の力が宿ると信じられていたらしいわ」
雪穂「奇跡の力って…人々の病を治したっていう…?」
絵里「それよりももっと凄い力よ」
雪穂「もっと…?」
絵里「それは…どんな願いでも叶えてくれるという奇跡…」
雪穂「どんな願いでも…!? 何それ…本当に奇跡じゃん…!」
絵里「それが本当ならね」
雪穂「へ?」 絵里「お祖母様に見せて貰ったときに私も願ってみたけれど…そんな奇跡は一つも起きなかったわ」
雪穂「な、なんだぁ…」
絵里「お祖母様には信じれば必ず叶うと言われたけれど…まぁ、精神論よね、そんなもの」
雪穂「夢が無いなぁ…」
絵里「昔の人はそんな儚い夢を信じたんでしょうね。その羽根…Angelic Angelを天使の代わりとして崇め祀り、その羽根を手にしたお祖母様の先祖が代々受け継ぎ、今まで守ってきたの」
雪穂「へぇ…」
絵里「…」
雪穂「…あれ? そんなお祖母様のお宝がなんで依頼で…?」
絵里「――ある時、Angelic Angelは誰かに盗まれてしまったの」
雪穂「盗まれた…!? そ、それは…怪盗ってこと…!?」
絵里「…分からないわ」
雪穂「分からないって…怪盗だったら、予告状も出すし…誰かが依頼するから…」
絵里「その通りよ。原則的に、怪盗は事前に予告状を出すのがルール。怪盗する相手側にも、警察にもね」
雪穂「だよね…」
絵里「盗まれた後、どこの怪盗会社に問い合わせても、警察に確認しても…お祖母様の家に予告状を出したという事実は確認できなかった…」
雪穂「そ、それじゃあつまり…」
絵里「正当なルールに基づいて行われない怪盗はただの盗み…。醜く汚い、悪しき塊…」ギリ
雪穂「っ…」ビク
絵里「…Angelic Angelは、お祖母様にとっての大切なお宝だったの。お祖母様はいつだって嬉しそうに私にその言い伝えを話してくれたわ」
絵里「…でもAngelic Angelは奪われ、お祖母様からも笑顔が失われてしまった」
絵里「いつもあんなに優しく微笑みかけてくれていたお祖母様だったのに、今はただ虚空を見つめるだけ…」
絵里「…っ」
雪穂「絵里お姉ちゃん・・・」
絵里「…だから私は、どこにいる誰かも分からないヤツの手からAngelic Angelを取り戻すために怪盗になったの…!」
雪穂「え…」
絵里「同じ怪盗になれば、何れ…手がかりが掴めるんじゃないかと思ったの」
絵里「西木野財閥…そんなところにお祖母様のお宝が眠っていたとはね…」
絵里「まさか、μ'sに仕事として以来が来るとは…夢にも思っていなかったわ」
雪穂「それって、お姉ちゃん以外にもAngelic Angelを狙っている人がいるってこと…?」
絵里「そんなバカなことがあるわけないわ…ッ!」ドン
雪穂「っ!」ビク
絵里「ぁ…」
雪穂「…」ドキドキ
絵里「…っ」
絵里「…私はなんとしてでも、Angelic Angelを怪盗しなければいけないの…!」
雪穂「で、でも…仕事として怪盗するってことは…」
絵里「分かっているわ…。私の物になる訳じゃない。そんなことは百も承知よ」
絵里「それでも私は…この手で――…っ」
雪穂「…」
絵里「…だから今回の任務…失敗は許されないわ…」
絵里「必ず、西園寺財閥から怪盗してみせる…!」キッ
カツカツ…
雪穂「ぁ…」
雪穂「…」
雪穂「…」ハァ
雪穂「あんな風に怒ってる絵里お姉ちゃん、初めてみた…」
ことり「――くす♪」
……。
希「…」
希「えりち…」
希「…」グ…
ツバサ「東条希さん――よね?」
希「っ!?」バッ
希「…こっわ、急に後から声かけんといてくれる?」
ツバサ「ごめんなさい、癖で」クス
希「あんたは綺羅ツバサ…」
ツバサ「あら? 私の名前を知ってくれてるとは光栄ね」
希「そら知っとるよ…アンタ達のことはよーく知っとる」
ツバサ「へぇ…。まぁ、なんだかんだ言って私たちもそこそこ有名人だからね、知っていても不思議ではないけれど」
希「…ふふ、μ'sを目の敵にするも全く追いつくことのできない美人三人組怪盗…やったっけ?」
ツバサ「ぐ…最初の説明は余計よ」 希「…で、その美人三人組怪盗のリーダーさんがウチに何の用や?」
ツバサ「単刀直入に言わせて貰うわ」
ツバサ「――μ'sについて、教えて貰いたいことがあるの」
希「…」
……。
パラ…
雪穂「西木野**。西木野財閥現当主。西木野総合病院の理事長でありながら、世界の至る所を渡り歩き、あらゆるお宝を収集する冒険家のようなこともしている。お宝を手に入れるためには時に非常な手段に訴えることもあり、その危険度はかなり高い…」
雪穂「西木野財閥の屋敷に怪盗を依頼する人間も数多く存在するが、未だかつて怪盗が成功した事例はなく、担当した怪盗グループは失踪してしまうとされている。この件は警察も介入してはいるが、何れも罰則するには値しないとされ、現在も対処されることはないままである」
雪穂「うぅ…調べれば調べるほど、西木野財閥が恐ろしいって事実しか出てこないんだけど」
雪穂「西木野財閥って、そんなにヤバイところだったんだ…」
雪穂「…こんなところからお宝を怪盗するなんて…絶対無理だよぉ…」
絵里『必ず、西園寺財閥から怪盗してみせる…!』キッ
雪穂「…」
雪穂「絵里お姉ちゃん…凄い怖い目してたな…」
雪穂「いつも私に怒ってるときの目も怖いけど…そういうのとはまた別な…。ことりお姉ちゃんが言ってた昔の絵里お姉ちゃん…なのかな…」
雪穂「…なんというか、あんな絵里お姉ちゃん…見たくないな…」
雪穂「それに、Angelic Angelを取り戻すために怪盗になったって言っていたけど、本当なのかなぁ…」
雪穂「でも、それって…」
雪穂「…」
雪穂「今の絵里お姉ちゃんはただ怖いだけで…私の好きな――…」
亜里沙「ゆーきほっ!」
雪穂「わひゃいっ!?」
亜里沙「――び、びっくりしたぁ…」
雪穂「そ、それはこっちのセリフだよ! いいきなり後から声かけないでよ亜里沙!」 亜里沙「だってー、雪穂が図書室で勉強なんかしてるの珍しかったからー」
雪穂「驚かす理由になってないでしょ! …っていうか、勉強するの珍しいってバカにしてる…?」
亜里沙「バカになんてしてないよー。でも図書室で勉強なんてしたことないでしょー?」
雪穂「う…まぁ、その通りだけど…」
亜里沙「雪穂、急に真面目だね! エライエライ♪」
雪穂「うぅぅ…やっぱりなんかバカにされてる気がするーっ!!」
「あの…図書室では静かに…」オロオロ
雪穂「す、すいません…」ペコペコ
亜里沙「めっ! だよ、雪穂ー」プンプン
雪穂「亜里沙のせいでしょっ…!」 亜里沙「それよりー、何の勉強してるのー?」
雪穂「それよりって…。あー…えっと、怪盗のことについてなんだけど…」
亜里沙「わぁ、凄い量の資料だね」
雪穂「あはは…だよねぇ…」
亜里沙「にしきのざいばつ…? 次のお仕事ー?」パラ
雪穂「あ、ダメだよ勝手に読んだらー。一応仕事の資料だから、他人に見られちゃダメなんだって」
亜里沙「むー、ちょっとぐらい見せてくれてもいいのにぃ−」
雪穂「だーめ! …私も立派なμ'sの怪盗なんだから、そういうルールは守らなくちゃ行けないの!」
亜里沙「えー…?」 雪穂「大変なんだよー? ちょっとのミスで違約金とか払ったりしなくちゃいけなくもなるし、信用がなくなってお仕事がなくなっちゃたりもするんだから…! お姉ちゃん達に迷惑はかけられないし、規則は絶対守らなくダメなんだよ?」
亜里沙「ほぇー…」
雪穂「な、なに…? そんなヘンな顔して…」
亜里沙「むー…ヘンな顔なんてしてないよ!」
雪穂「いや、ほぇーって口でいうぐらいにはヘンだったよ…」
亜里沙「…だって雪穂、本当に真面目になったから。少し前とは大違い」
雪穂「え…そうかな…?」
亜里沙「やっぱり、お姉さんみたいになりたくて努力してるから…なのかなぁ?」
雪穂「ぁ…」 亜里沙「ずーっと言ってたもんね、雪穂。お姉さんと一緒に怪盗したいって」
雪穂「うん…」
亜里沙「そっかぁ…雪穂も立派な怪盗さんになったんだねぇ…」
亜里沙「夢が叶って良かったね、雪穂♪」
雪穂「…うん♪」
亜里沙「ふふ…♪」
亜里沙「雪穂が羨ましいなぁ――…」ボソ
雪穂「ぇ…?」
亜里沙「んー? どうしたのヘンな顔してー?」
雪穂「あ、いや…。って、ヘンな顔なんてしてないよ!」
亜里沙「ふふふー、さっきのお返しー!」
雪穂「もう…!」
亜里沙「それじゃ亜里沙は先に帰るね!」
雪穂「あ…一緒に帰るつもりで来てくれたんじゃ無かったの? いいよ、帰る準備するよ」
亜里沙「ううん、折角努力してる雪穂の邪魔したくないもん」
雪穂「そこまで気使わなくて良いのに…///」
亜里沙「それじゃあ怪盗の勉強、頑張ってねー♪」フリフリ
雪穂「ありがとうー」フリフリ
タッタッタッタ…
雪穂「…」
雪穂「変わった、か――…」
雪穂「少しずつだけど、私も怪盗に近付いてるんだ…」
雪穂「…っ」
雪穂「お姉ちゃんの為にも、西木野財閥の怪盗…成功させなきゃ…!」
雪穂「それには少しでも勉強しないと…だね」
雪穂「ファイト、だよっ!」
「あの…ですから…」オロオロ
雪穂「すいません…」
……。
今回はここまでです
明日は夜映画見に行くので、更新は微妙かもしれません… 余裕がない絵里ちゃんは心配になるなぁ
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