えみつん「東京ドームでライブをしたければ……」あんちゃん「野球で勝負!?」 ★2
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ひなひな『さあ、スタンドの声に後押しされて、打席に入るのは8番の小林!!』
ひなひな『しかし、心なしか硬い表情。観客の期待に応え、攻撃をつなぐことが出来るか!?』
ひなひな『はたまた、Aqoursの奇跡も、ここで途切れてしまうのか!?』
ワアアアアッ!!
キャアアァァァッ!!
きゃん「………っ」
ドクンドクン…!
あさみん(雰囲気に……呑まれてしまってる)
あさみん(“悪魔”に、魅入られてしまったら……もう……!) ワアアアアッ!!
アイキャァァァン!!
きゃん(みんなが……応援してる……)
きゃん(それに……応えなきゃ……)
きゃん(みんなが、必死にここまでつないで……)
きゃん(私も……つながなきゃ……!)
ドクンドクン…!
えみつん「………」
ザッ…
ひなひな『さあ、再びマウンドに立ちます、守護神・新田』
ひなひな『先程、諏訪にデッドボールを与えてしまいましたが、ピッチングに影響は――』
グワッ
シュッ!!
きゃん「!!」
ズバンッ!!
\ストライク!/ ひなひな『っ……ストライク!!』
ひなひな『デッドボールの影響など微塵も感じさせない、力強い球!!』
オオオオオッ!!
きゃん「……っ!!」
きゃん(な、なんか……また、力強さを取り戻したような……!?)
きゃん(なんでよ……!! 腰を痛めてて、ベストコンディションじゃないんじゃなかったの……!?)
すわわ「………!」
すわわ(確実に、腰の負傷で、体は悲鳴を上げてるはず……!!)
すわわ(なのに、またこの局面で、渾身の一球を放れる強さ)
すわわ(やっぱり、この人は――)
あさみん(伝説のμ'sを束ねる、リーダー……)
あさみん(新田恵海――!!) えみつん「………」
えみつん(……つらいなんて、言ってられない)
えみつん(みんなが、まだ私のことを、信じてくれてるなら――)
えみつん(私は、最後まで、全力で頑張るだけ)
えみつん(穂乃果も――きっと、そうする、はずだから)
オオオオオッ…!!
ライバー「……やっぱり、えみつん、すげーよ!!」
ライバー「ああ、やっぱりμ'sだな!!」
ライバー「Aqoursに負けんなー!!」
ワアアアアッ!!
ミューズ!! ミューズ!!
アクア!! アクア!!
ひなひな『新田のピッチングに、μ's側応援席も再びヒートアップ!!』
ひなひな『メットライフドームは、μ'sとAqours、双方への声援が渦巻き、大変な状況となって参りました!!』
ウオオオオオッ!!
ワアアアアアアッ!! ひなひな『ところで、姉様……先程、“魔物”は実在する、とおっしゃっていましたが……』
ひなひな『あれは一体、どういう……』
あさみん『……日向も、感じてるんじゃない?』
あさみん『“魔物”の、正体――』
あさみん『それは――スタジアムを埋める、“観客”です』
ひなひな『観客……!?』
ウオオオオオッ!!
ビリビリッ…
きゃん「……!!」
きゃん(歓声が……一層、大きくなって……)
きゃん(まるで、空気が……震えてるみたい……!) あさみん『……プロ・アマ問わず、スタンドからの大きな声援というのは、大きな味方であり、大きな脅威でもあります』
あさみん『特に、甲子園のような大舞台では、それが顕著です』
あさみん『観客は、スター選手がいたり、話題性のあるようなチームに肩入れして、応援したくなる』
あさみん『そして、名勝負やスーパープレーを期待し、「こんな風に盛り上がったらいいな」という願望のもと、声援を送る』
あさみん『その、絶大な声援に後押しされた選手は、時として本当に、観客の“期待通り”のプレー、試合運びを見せてしまうことすらあるんです』
ひなひな『そんな……観客の歓声が、試合まで変えてしまうなんて……』
あさみん『例はいくらでもありますよ。例えば、夏の甲子園を例にとってみても……』
あさみん『2007年の決勝、広陵高校を破った、佐賀北高校の逆転満塁ホームラン』
あさみん『2009年の決勝、優勝校・中京大中京を相手に見せた、日本文理高校の9回の驚異的な追い上げ』
あさみん『記憶に新しい所では、今年の夏の、吉田輝星投手擁する金足農業高校の快進撃もそうでしょう』
ひなひな『……!!』
あさみん『いずれも、甲子園の観客たちの声援が生み出した、一種異様な雰囲気が、試合の展開にすら大きな影響を及ぼした例でしょうね』 あさみん『これこそが――“魔物”の正体』
ひなひな『“魔物”の正体は、スタンドの観客たち……!!』
あさみん『勿論、スーパープレーや快進撃にしても、選手たちが培ってきた努力が実を結んだものであることは疑いありません』
あさみん『しかし、観客の大きな声援と期待が生み出す異様な空間が、選手たちの普段以上の力を引き出すことも、また事実』
あさみん『そして――裏を返せば、観客の歓声を受けていない“相手”のチームにとってみると、とてつもないプレッシャーになります』
ひなひな『言ってみれば、完全アウェーの空気の中でプレーしないといけない訳ですもんね』
あさみん『これが、“魔物”が大きな味方であると同時に、大きな脅威にもなりうる所以です』
あさみん『今――ここ、メットライフドームの中は、Aqoursの粘りに対し、逆転を期待するファンの熱気が高まっています』
あさみん『しかし、新田さんのピッチングで、μ'sへの声援も盛り返しつつある』
あさみん『果たして、観客の熱気は、どちらに傾くのか』
あさみん『そして――それを受け止め、味方につける度量が、今のAqoursにあるのか――』
きゃん「………っ」
ダラダラ…
あさみん(正念場だよ――きゃん) しゅか「おーい、あいきゃん!!」
ありしゃ「一旦、打席外して!!」
ワアアアアアッ!!
ウオオオオオッ!!
ウテェェェェッ!!
きゃん「………」
ハァハァ…
きんぐ「駄目だ、周りの歓声にかき消されて、聞こえてない……!」
ふりりん「きゃん……!!」
きゃん(つながなきゃ……やらなきゃ……)
きゃん(打たなきゃ、とにかく……振らなきゃ……!!)
ドッドッドッ
えみつん「………」
ザッ
シュッ!! きゃん「――っ!!」
ブンッ!!
ズバンッ!!
\ストライク!!/
ワアアアアアッ!!
ひなひな『小林、高め、振らされた!! ツーストライク!!』
ひなひな『追い込まれました、小林!! 大歓声が逆にプレッシャーとなっているのか!?』
ひなひな『粘ってきたAqoursの反撃も、ここで終わってしまうのか!?』
ふりりん「あああ……!!」
あんちゃん「あいきゃん……!!」 きゃん「――っは!! はぁっ!!」
ドッドッドッ
きゃん(駄目だ――打てる、気がしない!!)
きゃん(周りの――スタンドの、声で――体が、潰されそう――!)
ギュッ…
きゃん(助けて……誰か……!)
きゃん(助けて……)
きゃん(ヨハネ……!!)
……………
………
「何やってんのよ。愛香」
きゃん「――っ!?」
ハッ!!
ワアアアアアッ
すわわ「……?」
りきゃこ「あいきゃん……?」
きゃん(今――頭の中に――)
きゃん(……声が……?)
きゃん(今のは……)
「自信持ちなさい。リトルデーモン」
「あんたと、Aqoursの3年間は――無駄じゃない」
「あんたは――」
「いつも通りで、いいんだから」
きゃん「……ヨハネ……?」 ふりりん「な、なに……?」
しゅか「わかんない。こわ……」
あんちゃん「だけど……」
あんちゃん(あいきゃんの、表情が……変わった、ような……)
きゃん「………」
きゃん(もう――聞こえない)
きゃん(今のは――気のせい?)
きゃん(それとも――…)
ワアアアアアッ…
きゃん(なんだか……)
きゃん(視界が、広くなった、気がする)
きゃん(一塁に、すわわ。二塁に、りかこ。ふたりとも――私を、見てくれてる)
きゃん(ベンチには――)
きゃん(あんちゃん。かなこ、あいあい――Aqoursのみんな)
きゃん(そして――) ワアアアアアッ!!
アイキャァァァン!!
ガンバレェェェッ!!
きゃん(そして――)
きゃん(応援してくれてる、ファンのみんな)
きゃん(……最初は、怖かった)
きゃん(受け入れてもらえるか、怖くて、怖くて)
きゃん(メルパルクホールで、初めてお客さんの前に、出た時は。びっくりして、泣いちゃったっけ……)
グッ…
きゃん(そうだ。もう、怖がる必要なんてない)
きゃん(私は。Aqoursと。ヨハネと、一緒に――)
きゃん(これから――もっと、大きいステージに、立つんだから!)
キッ! えみつん「……!」
ピクッ
えみつん(表情が――変わった)
きんぐ「きゃん、ちゃんと球見て!! ボール球に手ぇ出さないで!!」
あんちゃん「ボール3個分、上を叩くつもりで!!」
しゅか「いいから、思い切って叩けー!!」
きゃん(みんなの声も――聞こえる)
きゃん(大丈夫。しっかり、ボールを見て)
グッ
きゃん(恐れるな――!)
えみつん「」
バッ!!
きゃん「ああああっ!!」
ガギンッ! ワアアアアアッ!!
えみつん「!」
あんちゃん「あっ……」
あいにゃ「ああっ!!」
ひなひな『ああっ……打ち上げてしまったぁぁー!!』
ひなひな『ふらふらと、打球は三塁側ファールグラウンドに上がる!!』
アアアアアッ!!
キャアアアアアッ!!
きゃん「っ……!!」 みもりん(やたっ……!!)
みもりん「――くっすん!!」
くっすん「おっけー!!」
ひなひな『サード楠田が、ファールグラウンドでグラブを構えた!!』
ひなひな『Aqours、万事休すか!!』
あさみん(もう……ここまでか……)
りっぴー「はぁー……」
シカコ「やっと終わったか……」
うっちー(ここまで、ずいぶん粘ったけれど……)
ふりりん「あああああー!!」
しゅか「嘘でしょ!?」
きんぐ「もぉー駄目だぁー!!」
あんちゃん「……あきらめちゃ駄目っ!!」
あんちゃん「まだっ……!!」 きゃん(そうだよ……私だって……あきらめたくない……!!)
きゃん(みんなで、ここまで来たんだもの……!!)
きゃん(ここで終わりなんて嫌だ!! だから――)
きゃん「まだ、終わりじゃない……!!」
くっすん「オーライ!」
きゃん「終わりじゃない!!!」
ウオオオオオッ!!
ワアアアアアッ!!
キャアアアアアッ!!
くっすん(うっ……歓声、すご……)
キラッ
くっすん「!?」
ハッ
くっすん(天井の、ライトが――視界に、入って――) バシッ
ポロッ…
みもりん「――!?」
くっすん「あっ……!?」
ポトッ
ひなひな『おっ……落としたぁぁぁぁっ!!!』
ワアアアアアッ!!
ウオオオオオオッ!!
ひなひな『なんだどうした!? 最後のアウトひとつが捕れない、μ's!!』
ひなひな『サード楠田、グラブに当てたものの、落としてしまいましたぁぁぁっ!!!』
きゃん「……あ……」
きゃん「う、嘘……!?」 ふりりん「お……おおお……!!」
あいにゃ「た、たす……」
しゅか「助かった……!!」
きんぐ「し、心臓、止める気か……!」
あんちゃん「そうだよ……!!」
グッ…
あんちゃん「まだ……大丈夫……!!」
ジョルノ「く、くっすん……!?」
ジョルノ(なんだかんだ言って、運動神経良くて、守備は割と安定してる、くっすんが……!?)
くっすん「な、なんで……」
くっすん「なんでー!? くっそー!!」
ガッ!
くっすん(歓声に気をとられたとか、ライトが目に入ったとか、言い訳にならない……!!)
くっすん(えみつんを、助けないといけないのに……ここで、終わりのはずだったのに……!!)
えみつん「くっすん……」 あさみん『一瞬、眩しそうな表情を浮かべましたから、天井の照明と重なって、ボールを見失ってしまったのか……』
あさみん『はたまた、三塁側、Aqoursの応援席からの悲鳴のような歓声に、気をとられたのか……』
あさみん(それでも――“流れ”がある時には、実際に起こる。こういう、信じられないプレーが)
あさみん(そしてそれは、Aqoursの流れが、まだ途切れていないということ……!)
ひなひな『とにかく、首の皮一枚つながりました、Aqours!!』
きゃん「………」
グッ…
きゃん(大丈夫……大丈夫……!!)
きゃん(今のは――きっと、ヨハネが、救ってくれた)
きゃん(それに――初めて、バットに当てられた!!)
きゃん(大丈夫……打てるんだ……!!)
ウオオオオオオッ!!
アイキャァァァンッ!!
ガンバレェェェェッ!!
ビリビリッ…
きゃん「……っ!!」
ゾクゾクッ きゃん(もう、怖くない……!! わかった。ヨハネが、言ってた意味……!!)
きゃん(私は――いつも通り)
きゃん(この、歓声で、空気が震える――この感覚)
きゃん(そうだ。ライブと、一緒なんだ)
きゃん(スタジアムは、ステージ。選手は、キャスト)
きゃん(ブラスバンドや鳴り物の音楽に乗せて、私たちは、全力のパフォーマンスを魅せて)
きゃん(そして、地面を揺らすような、大歓声……!!)
ニッ…!
きゃん(そうだ。いつだって、この歓声に、助けられてきたんだ)
きゃん(この歓声と、Aqoursのみんながいれば――)
きゃん(どこへだって、行ける!!)
きゃん「さぁ――」
ギランッ!
きゃん「行くわよ!! リトルデーモンたち!!」
キャアアアアアッ!!
ウオオオオオオッ!! ひなひな『小林の……表情が、変わった!? 笑っている……!?』
あさみん『……!!』
あさみん(打ち勝った……! 味方に、つけた……!!)
あさみん(“魔物”を……!!)
あんちゃん「あいきゃん……!!」
グッ
あんちゃん「大丈夫……!!」
きゃん「そう、大丈夫……!」
えみつん「ふぅ……はぁ」
ザッ…
シュバッ!!
きゃん(大丈夫!! 絶対、あきらめないから)
きゃん(見てて――ヨハネ!!)
ガキィッ!! ウオオオオオッ!?
ひなひな『これも打ち上げたぁー!!』
ひなひな『しかし、打球はふらふらと上がる!!』
ふりりん「あああっ……!!」
ありしゃ「いや……待って!!」
みもりん(セカンド……!!)
みもりん(いや、センター……ライト……!?)
あさみん『これは面白い所に上がりましたよ!?』
ひなひな『セカンド後方に上がった打球!! 3人が追いかけます!!』
きゃん「……!!」
ダダダッ そらまる「くっ、ちょっと前に出すぎてた……!?」
ダダダッ
りっぴー「捕る、私が……!!」
ダダダッ
うっちー(えみつんを、助けなきゃ……!)
ダダダッ!
ジョルノ「……!!」
ジョルノ「声かけあって!! エラーあるぞ!!」
しゅか「ああー、捕るなぁー!!」
きんぐ「捕るな捕るな捕るなぁー!!」
ふりりん「落ちろぉー!!」
あんちゃん「……大丈夫……!!」
きゃん「……大丈夫!!」
ダダダダッ! うっちー「!!」
りっぴー「あっ……!?」
そらまる「げ、」
ポトンッ
ひなひな『ああー、落ちたぁー!! ポテンヒット!!!』
ワアアアアアアッ!!
キャアアアアアッ!!
すわわ「や……、」
りきゃこ「やった!!」
ダダッ!
あんちゃん「やったあああああっ!!!」
しゅか「きゃあああああんっ!!!」
ひなひな『その間、二塁ランナーの逢田がホームイン!! 諏訪は三塁へ!!』
ひなひな『また1点挙げた!! またつないだ、Aqours!!』
ひなひな『なおも、ツーアウト一・三塁!!!』
ウオオオオオオッ!!
きゃん「やっ……」
きゃん「たぁぁぁぁぁっ!!!」
【μ's 13―8 Aqours】 あさみん『上がった位置が、良かったですね。セカンド、センター、ライトの三者の真ん中、難しい位置でした』
あさみん『外野が定位置、セカンドがゴロを警戒してやや前に出ていたのも功を奏しました。三者も、一瞬判断に迷ってしまいましたね』
ひなひな『しかし小林選手、先程のファールフライ落球、そしてこのポテンヒットと、実に運が良かったといいますか……』
あさみん『勿論、運もあったでしょう』
あさみん『しかしこれも、観客の声援に呑まれず、“魔物”を味方につけたからこそ、とも言えるかもしれません』
あさみん『もう、初めてのステージで、歓声に呑まれて泣いていたAqoursはいない』
きゃん(ありがとう……ヨハちゃん……!!)
きゃん(また、救われちゃったけど……)
きゃん(私が、ちょっとでも、勇気が持てたのは……ヨハちゃんと、Aqoursと……)
きゃん(応援してくれる人たちの、お蔭だよ……!)
ジワ…
ワアアアアアッ!!
アイキャァァァンッ!!
あさみん『3年間の月日は、“魔物”を味方につけるほどに――』
あさみん『彼女たちを、成長させたんです』 くっすん「えみつん……ごめん」
くっすん「あのファールフライ、私がちゃんと捕ってたら……」
そらまる「それ言ったら、ウチらもだよ」
そらまる「りっぴー、内田さんと、ちゃんと声掛けあってれば……」
えみつん「いいんだって!! 誰のせいでもないよ!」
えみつん「それに、わがまま言って投げさせてもらってるのは、私の方なんだから……」
みもりん「………」
みもりん「だけど……認めなきゃね」
みもりん「点差があるとか、あとアウトひとつとか、言ってられない」
スッ…
みもりん「Aqours――強敵だよ」
えみつん「……!」 あんちゃん「りこちゃーん、やったねー!!」
りきゃこ「あーん、あんちゃーん!! みんなのお蔭だよ!!」
パンッ
しゅか「こ……これ……」
ふりりん「ほんとに……勝てる、かも……?」
きんぐ「何言ってんの!! 絶対、勝つんだよ!!」
あいにゃ「………」
ドキドキ…
あいにゃ(みんな、波に乗ってる……あんなにバラバラだったのに、また、ひとつになれた……!)
あいにゃ(嬉しい、嬉しいよ……だからこそ……)
ギュッ
あいにゃ(勝ちたい。終わらせたくない)
あいにゃ(だけど……)
ズキ…ズキ…
『9番、ファースト、鈴木』 ひなひな『さあ、いよいよラストバッターの鈴木まで回ってきました!!』
ひなひな『この回、4点を挙げ、点差はじわじわと縮まっています!!』
ひなひな『しかし鈴木は、ここまで4打数ノーヒット』
ひなひな『Aqoursの打者の中で、唯一、出塁がありません!!』
あさみん『その上、鈴木選手は、8回の守備で足首を痛めています』
あさみん『バッティングにも、その影響が出てしまうとなれば……』
あいにゃ(……でも、やるしかない)
あいにゃ(痛いとか、言ってられない……!)
ドキドキ…!
あいにゃ「よ、よーし……!」
あいにゃ「よっしゃ、行くぜ、ワレ!!」
あんちゃん「………」
あんちゃん「あいな!」 あんちゃん「……あいながいてくれたから、私たち、ここまで頑張れたんだと思う」
あんちゃん「あいなが、あきらめないでいてくれたから。あいなの、言葉があったから」
あんちゃん「私も、Aqoursも、あきらめないで、ここまで粘れた」
あいにゃ「え……?」
りきゃこ「そうだよ! あの、1stの時も……今回も! あいなに励ましてもらって、私もすっごい心強かった!」
きんぐ「そーそー。あいなちゃんが頑張ってると、なんかこっちも頑張らなきゃ、って気になるし」
ありしゃ「なんか、あいなってそういうパワーみたいなのあるよねー」
あいにゃ「そ、そんな……ワシ、照れるわ……///」
あんちゃん「……あいなは、周りに勇気を与えてくれる、すごいパワーを持ってるんだから」
あんちゃん「だから……大丈夫!!」
あいにゃ「あんちゃん……!」 ひなひな『さあ、出てきました!! 鈴木がバッターボックスに向かいます!!』
ひなひな『スタジアム内は、Aqoursの快進撃に、観客の熱気もますますヒートアップ!!』
ひなひな『ランナーは一・三塁!! ノーヒットの鈴木、ここで執念を見せられるか!!』
ワアアアアアッ!!
アイニャァァァァッ!!
ガンバレェェェッ!!
あいにゃ(もー、あんちゃんったら、ほんとイケメンなんだから……///)
あいにゃ(思わず、ほっぺにチューしたくなっちゃう///)
あいにゃ(それに、りかこも、他のみんなも……)
あいにゃ(……信じてくれてる。こんな、あたしを)
あいにゃ(……そして……)
チラッ
すわわ「………」
ニコ
あいにゃ(……すわわ……) あいにゃ(……みんな、ありがとう)
あいにゃ(私が、困ってる時、悩んでる時)
あいにゃ(いつだって、手を差し伸べてくれたのは――Aqoursのみんなだったよね)
あいにゃ(――大好きだよ。そんな、みんなのこと)
グッ…
あいにゃ(だから――)
えみつん「……ふぅー……」
ザッ!
シュバ!! あいにゃ「――!!」
グッ!
ズキィッ!!
あいにゃ「っ!!!」
ブンッ!!
ズバンッ!!
\ストライク!!/
あいにゃ「……っ……!!」
ズキズキ…!!
あいにゃ(痛みになんか……負けない……!)
あいにゃ(Aqoursは、絶対……終わらせないんだから……!!)
ギリ…!
あいにゃ(たとえ、私の体が、どうなっても……!!) >>353
確かに佐賀北や日本文理や金足農業は観客の声がえげつなくて相手チームは完全にアウェーだったな 東京ドームがNHKホールにかわっても微妙になってきたな
年をこすんだろうか…w あいきゃんの打席でマモノのネタ挟んできたのは
魔物→悪魔→リトルデーモン→ヨハネ
って感じのつながりか >>383
それだけになんと言われようと冷静に自分たちの野球を最後までやり遂げた桐蔭はやっぱりすごいよ くっすんのエラーのとこファールやからまだいいけど、実際にやらかして点取られたことあるだけに思い出して胸が締め付けられたわ笑 あいにゃ「ぐっ……!!」
フラッ…
ひなひな『第1球、新田の直球に対し、大きな空振りでワンストライク!!』
ひなひな『しかし鈴木、振ったのち、少しよろめいたような……?』
あいにゃ「はぁ、はぁ……」
ズキ…ズキ…
すわわ「あいな……!?」
りきゃこ「やっぱりあいな、足首が痛いんじゃ……!!」
しゅか「あいなー!!」
ありしゃ「痛いなら、無理しないで!!」
あいにゃ「はっ……がはははっ!!」
あいにゃ「ごめんごめん、勢い余ってちょっとよろけちゃっただけだから!!」
ズキ…ズキ…!
あいにゃ(ここで、無理しなきゃ……)
あいにゃ(全部、終わっちゃうもの……ドームの夢も、何もかも……!) えみつん「―――」
ザッ…
あいにゃ(それに――)
あいにゃ(憧れの、μ'sの、えみつんさんだって。腰の不調を抱えたまま、全力で頑張ってる)
あいにゃ(だったら、私が、弱音を吐いてる場合じゃ……!)
えみつん「」
バッ!!
グッ
ズキィッ!!
あいにゃ「っ!!」
ブンッ…
ズバン!!
\ストライクツー!!/ アアアアアアッ!?
ひなひな『鈴木、どこか力無いスイングで空振り!!』
ひなひな『あっという間に追い込まれてしまいました!!』
あいにゃ「っ……あっ……!!」
ズキズキ…!
ガクッ
りきゃこ「あいな!!」
あんちゃん「やっぱり、あいな、足首が……!!」
ひなひな『鈴木、またもふらつき、膝を落とした!! やはり、先ほどの負傷の影響なのか!?』
あさみん『鈴木選手は左打ちです。スイングの瞬間、軸足である左足から、前に出した右足に、体重を乗せて踏み込まなければいけない』
あさみん『先ほど痛めたのは、右の足首ですから……体重を乗せるたび、激痛が走っていても不思議ではありません……!!』
ひなひな『………!!』 しゅか「見てらんないよ……!!」
りきゃこ「あいな……!!」
きんぐ「………」
きんぐ「でも……」
きんぐ「今の、あいなに……やめてくれ、なんて……言えない」
りきゃこ「え……!?」
きんぐ「だって……あいなは、絶対、あきらめたくないはずだもの……」
きんぐ「あきらめかけた、私と違って……ずっと、Aqoursは勝つって、信じてたはずだもの……!」
きんぐ「だから……」
あんちゃん「………!!」
あいにゃ「く……ふぅ……!」
ズキ…ズキ…
スック…
ひなひな『それでも、鈴木、立ち上がります!! 最後まで、あきらめません!!』
ワアアアアアアッ!!
アイニャァァァァッ!!
ガンバレェェェェッ!! あいにゃ「………」
ハァ…ハァ…
あいにゃ(みんな……ありがとう)
あいにゃ(ほんとにね。みんなからは、救われることばっかり)
あいにゃ(昔の私は、自分のことで精一杯で……自分の殻に閉じこもって、どうにかしなきゃって必死で……)
あいにゃ(でも、そんな私に……Aqoursのみんなは、手を差し伸べてくれたよね)
あいにゃ(困ってる私を助けようとして、みんな、気にしてくれてたんだって、わかって――)
あいにゃ(今は、周りを見渡せば、みんながいるってわかるから。ひとりじゃない。孤独じゃない)
あいにゃ(そんな、みんなのこと――私、大好きなんだよ)
クス… あいにゃ(……幕張ファンミの時だって、迷惑をかけちゃった)
あいにゃ(だけど、あの時も、みんなは私を支えてくれた)
あいにゃ(だから、今度は――私の番)
グッ…
あいにゃ(選球眼も良くない。力も無い)
あいにゃ(そんな、私に出来る――精一杯は――!!)
キッ…!
えみつん「―――」
ザッ…
あいにゃ「――すわわ!!」
すわわ「!?」
あいにゃ「走って!!」
スッ! あさみん『あの構えは――!!』
ひなひな『バント!? スリーバントスクイズ!?』
ウオオオオオオッ!?
えみつん「――!!」
シュバッ!!
あいにゃ(お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん!!)
あいにゃ(私――頑張るから!!)
コツンッ!
あいにゃ(行くよ――)
あいにゃ(――みんな!!)
ダッ!!
あさみん『当てたっ!!』
ひなひな『走ったぁぁぁぁっ!!!』
ワアアアアアアッ!! すわわ「……!!」
ダダダダッ!!
みもりん(まさか、この局面で――!!)
みもりん(痛めたあの足で、セーフティスクイズ!?)
みもりん(駄目だ、私じゃ間に合わない!!)
みもりん「――くっすん!!」
くっすん「わかってる!!」
ダダダッ!!
ひなひな『サード楠田、反応が速い!!』
ひなひな『本塁は間に合わないか!! ファーストで刺せるか!?』
ウオオオオオッ!!
くっすん(今度こそ――!! 私が、刺す!!)
くっすん(終わらせてやるんだ――!!)
パシッ!!
くっすん「――なんちゃん!!」
シュビッ!! ダダダダッ!!
あいにゃ「……っ」
ズキズキッ!!
あいにゃ「っ!!」
りきゃこ「あいな!!」
あんちゃん「あいなぁぁぁぁっ!!!」
あいにゃ(運動神経も良くない、チビで力も無い私が、ちょっとでも、自慢できること――)
あいにゃ(それは、歌と――陸上で鍛えた、この足!!)
あいにゃ(そうゆう体に産んでくれて、ありがとう、お父さん、お母さん!!)
あいにゃ(絶対……立ち止まったり、しない……!!)
ズキズキ!!
ダダダダダッ!!
あいにゃ(私は、私たちは――みんなで、)
あいにゃ(前に、進むんだ――!!)
ズザザザザッ!!
パシィッ!!
ひなひな『滑り込んだぁぁーー!!!』 ひなひな『ファースト捕球のタイミングはほぼ同じ!!』
ひなひな『セーフか、アウトか!?』
\……/
\…セェェーフ!!/
ワアッッ!!
ひなひな『間に合ったぁぁぁぁっ!!! セーフ、セーフです!!』
ひなひな『間一髪、楠田の送球を、鈴木の執念の激走が上回りましたぁぁぁっ!!!』
ひなひな『三塁ランナー、諏訪がホームイン!! つないだ、またもつないだ、Aqours!!!』
ウオオオオオオッ!!
ふりりん「やっ、」
しゅか「たぁぁぁぁっ!!!」
りきゃこ「あいなぁぁぁっ!!」グスッ
【μ's 13―9 Aqours】 くっすん「……!!」
くっすん(間に合わなかった……!!)
くっすん(あと、ちょっとだったのに……!!)
ググッ…!
ひなひな『まさかの、意表を突いたセーフティスクイズ……!! μ's、完全に裏をかかれました……!!』
あさみん『ええ。ツーアウトで後が無いこの局面、しかも足を痛めている鈴木選手が、セーフティを仕掛けてくるなんて……!』
あさみん『しかし、その中でも、サードの楠田選手の反応は完璧でした』
あさみん『三塁線に転がされたボールに、真っ先に反応して飛び出し、すぐさま正確なスローイングで一塁に送球』
あさみん『先ほどのミスを挽回したい、という強い思いもあったのでしょう』
あさみん『バントシフトをとっていなかったとはいえ、楠田選手のプレーにミスはありません』
みもりん(そう……くっすんは、悪くない)
みもりん(予想外だったのは、あの子の想いの強さと、足……!!) あさみん『鈴木選手は、Aqoursいちの俊足の持ち主です。それでも、足首を痛めていますし、本当にタイミングとしては紙一重でした』
あさみん『ですが、鈴木選手が左打ちだったことも、功を奏しましたね』
ひなひな『左打ち?』
あさみん『右打ちと違って、左打ちの選手は一塁側のバッターボックスに立ちますから、右打者よりも僅かに、一塁ベースまでの距離が短くなる』
あさみん『時間にして、ほんのコンマ何秒という差ですが――今回は、正にその僅かな差が、明暗を分けた』
あさみん『自分の左打ちという特性を活かして、足の痛みも構わず、迷うことなく飛び出した』
あさみん『その、鈴木選手の迷いの無さが、Aqoursの未来をつないだんです』
みもりん(ほんと……えみつん、うっちー、なんじょさん……)
みもりん(そして、あの子……みんな、無茶ばっかりするんだから)
えみつん「………」
ハァハァ…
えみつん(だけど……!)
あさみん(だけど、その代償は……!!) あいにゃ「………」
あいにゃ「つ、う……!!」
ジョルノ「ちょ、ちょっと、大丈夫?」
ひなひな『ああー、鈴木、うずくまったまま立ち上がれない!!』
あさみん『やっぱり……!!』
あさみん(あんな無茶をしたら、足は……!!)
あんちゃん「あいな!!」
すわわ「あいなぁぁぁっ!!!」
ひなひな『こ、これは!?』
ひなひな『ホームインした諏訪、真っ先に、鈴木のもとに駆け寄りました!!』 すわわ「あいな!!」
ガバッ
ギュッ!!
あいにゃ「す、すわわ……?」
あいにゃ「もう、なにぃ、こんな所で……ハグ、なんて、恥ずかしいわぁ……」
すわわ「あんな無茶を……!!」
あいにゃ「………」
あいにゃ「……へっ。こちとら、必死よ……」
ハァハァ
あいにゃ「私が、つながなきゃ……みんな、終わっちゃうから」
あいにゃ「みんなのためなら、私――」
すわわ「……馬鹿っ!!!」
ギュウウッ
あいにゃ「へ? すわわ……?」 すわわ「だからって……自分は、どうなってもいいなんて……思わないで……!!」
すわわ「あいなが、足を怪我して……一緒に、ドームに立てなくなったりしたら、私……!!」
すわわ「……幕張の時、一緒に立てなくて、悲しかったのは、あいなだけじゃない」
すわわ「私たちだって……悲しかったんだから……!!」
あいにゃ「……!!」
ハッ
すわわ「………」グス
あいにゃ「すわわ……」
あいにゃ「泣いてる?」
すわわ「泣いてない」
あいにゃ「泣いてる?」
すわわ「泣いてないったら」 あんちゃん「……そうだよー、あいな」
あいにゃ「あんちゃん……!」
あんちゃん「私たちは、9人でAqoursなんだから。ひとりも欠けちゃいけないんだから」
あんちゃん「だから、無理しないで……って、無理して投げた私とか……」
あんちゃん「デッドボールを避けなかった、おすわが言うのもなんだけど」チラッ
すわわ「………」プイッ
あんちゃん「だけど、ありがと……あいな。あいなが、また、私たちをつないでくれた」
あんちゃん「9人で、東京ドーム、立てるように! 一旦、ベンチに退こう」
あいにゃ「……うん」
あいにゃ「ごめん。……ありがとう」
ひなひな『激走を見せた鈴木、一旦ベンチに退くようです!!』
ひなひな『負傷をものともせず、執念で希望をつないだ鈴木に対し、スタンドからは大きな拍手!!』
ワアアアアアッ!!
パチパチパチッ!! ひなひな『鈴木選手の足首の負傷のため、特例として、臨時代走が送られます』
ひなひな『臨時代走を務めるのは、6番の逢田!』
あさみん『本来の臨時代走では、打撃の終わった直後の選手が務めるため、本来なら諏訪選手ですが……』
あさみん『諏訪選手も、頭部にデッドボールを受けているため、今試合のみの特例として、その前の打順の逢田選手の代走が認められたようですね』
りきゃこ(あいなが、あれだけ頑張って、出塁したんだもの)
りきゃこ(あいなの分まで、絶対、ホームに還ってみせる……!)
ひなひな『一塁に逢田、二塁には小林を置いて、試合が再開されます!!』
ワアアアアアッ!! ありしゃ「あいなも、出て……」
ふりりん「一巡……したよ……!」
きんぐ「9点差、あったのに……」
あんちゃん「あと、4点……!!」
ひなひな『9点差が……4点差になりました!!』
ひなひな『しかも、この回……9回、ツーアウト、ランナー無しという状態から……!!』
あさみん『やっぱり、あきらめなければ、こんなことだって起こりうるんです』
あさみん『……そして、ここまで来たら、私も見たくなってきましたよ』
あさみん『“奇跡”が、起きるのを……!!』
あんちゃん「次は――!!」
しゅか「………」
ニッ
『1番、ショート、斉藤』 ワアアアアアアッ!!
シュカシュゥゥゥゥッ!!
ひなひな『アナウンスと同時に、スタンドからは大歓声!!』
ひなひな『打者一巡し、先頭の1番・斉藤を迎えます!!』
あんちゃん「しゅか……!!」
しゅか「………」
しゅか「だいじょーぶだよ。あんじゅ」
しゅか「絶対、つなぐから。Aqoursを、終わらせたりなんか、しないから」
ニッ
しゅか「このさいとーさんに、任せとけ!」 シュカシュゥゥゥゥッ!!
ガンバレェェェェッ!!
ウテェェェェェッ!!
ひなひな『スイッチヒッターの斉藤、左バッターボックスに入ります!!』
しゅか「……うしっ」
みもりん(……この子か。うっちーの球を、最初にヒットにしたのも、この子……)
みもりん(粗削りだけど、センスは抜群。運動神経も、ピカイチ……)
うっちー(この子に回る前に、終わらせたかったけど……仕方ない)
うっちー(えみつん、頑張って……!!)
えみつん(そうだ……)
えみつん(みんなが、まだ……信じて、くれるなら)
えみつん(私は……!!) グワッ…
シュバッ!!
しゅか「――!!」
ピクッ
ズバンッ!!
\ボール!!/
ひなひな『手が出かかりましたが、バット止めてボール!! 僅かに外れた球!!』
ひなひな『しかし、ここに来て……またも、球威が戻ってきたような……!?』
オオオオオオッ!!
しゅか「……!!」
しゅか(すごい……まだ、こんなスピードが……!)
しゅか(でも――)
キッ
しゅか(私だって。私たちだって――)
しゅか(負けられない! 負けられないから――!) きゃん「しゅか……!!」
りきゃこ「頼むよ……!」
えみつん「―――」
ザッ
シュバ!!
しゅか「!」
ピクッ
バシィッ!!
\ボール!!/
ひなひな『……よく見ています、斉藤!! これでツーボール!!』
あさみん『先ほどは、打ち気にはやって、三球三振に倒れてしまいました』
あさみん『落ち着いていますよ、斉藤選手……!!』
あんちゃん「あの、すぐ打ちに行っちゃうしゅかが、あんなにボールをよく見るなんて……!?」
すわわ「それだけ……しゅかも、真剣だし、冷静だってことだよ」
ふりりん「そだね。なんだかんだ、しゅかは、空気が読める子だから……!」 シュッ!!
しゅか「くっ!!」
キンッ!!
ひなひな『ファール!!』
ひなひな『くさい球は、器用にファールでカットします、斉藤!!』
ワアアアアアッ!!
シュカァァァァッ!!
しゅか(……周りから、要領いいね、器用だね、って……よく、言われてきた)
しゅか(でも、ほんとは違う。どんなことでも、練習して、なんとか身につけてるだけ)
キンッ!
あんちゃん「しゅかぁぁぁぁっ!!!」
あいにゃ「頑張れぇぇぇぇっ!!!」 しゅか(だから。本当は全然すごくない、私にとって――曜ちゃんは、私のすべて)
しゅか(曜ちゃんがいなかったら、今の私は無い)
キンッ!
しゅか(私の、憧れの女の子で)
しゅか(でも、悩みながら頑張ってるところとか、私とおんなじだな、と思うところもあって)
しゅか(そんな、曜ちゃんと――)
しゅか(そして、Aqoursを。守りたい。手放したくない!!)
ギンッ!
ひなひな『またもファール!!』
あさみん『決して、緩い球ではないはずなのに……!!』
ひなひな『……恐るべき集中力!! 紙一重で、新田の速球に喰らいついていく斉藤!!』
ひなひな『これが、Aqoursの斉藤朱夏の、本領ということなのでしょうか!?』
オオオオオオッ…!! しゅか「ふぅ、はぁ……!!」
えみつん「はぁ、はぁ……!!」
みもりん(なんて子……!? もう、7球も、ファールで粘ってる……!!)
みもりん(えみつん……!!)
しゅか(……声優としてのキャリアが、一番少ない私のことを、みんなはずっと助けてくれた)
しゅか(だから、私は。得意なダンスと――)
しゅか(今、この打席で、恩返ししたい――!!)
グッ…!
しゅか(そして、立つんだ。曜ちゃんに、見せてあげるんだ)
しゅか(東京ドームに広がる、青い海を――!!)
えみつん「っ!!」
シュバッ!!
ズバンッ!!
しゅか「……!!」
みもりん「……!!」 \ボール!! フォア!!/
ウオオオオオオッ!!
ワアアアアアアッ!!
ひなひな『外れたぁっ!!! フォアボール!!!』
ひなひな『なんと斉藤、新田の豪速球にファールで喰らいつき――』
ひなひな『実に8球粘って、フォアボールを選びましたぁ!!!』
しゅか「――うしっ!!」
しゅか(つないだよ――!! 希望!!)
ありしゃ「しゅか……!!」
あいにゃ「す、すごい……!!」
あんちゃん「しゅか――」
クスッ
あんちゃん「――しゅかは、自分でどう思ってるか、知らないけど」
あんちゃん「やっぱり――お前って、スゴい奴だよ!!」 あさみん『打ち気にはやる気持ちを抑えて、しっかりボールを見極めていました』
あさみん『斉藤選手の、長年のダンスの経験で磨き抜かれた、動体視力と反射神経のたまものだと思いますね』
あさみん『そして、冷静に、次につなげることを第一に考えた――』
あさみん『一見、お調子者に見えて――実は誰よりも空気を読み、冷静な、斉藤選手らしいプレーだったと思います』
えみつん「ふぅ……はぁ」
みもりん(えみつん……)
うっちー(……あの子の場合は、打ち気にはやってくれてた方が、打ち取りやすかった)
うっちー(最後の最後で、こんな冷静さを見せるなんて……!)
ジョルノ(……おいおい)
シカコ(マジか……この、状況……!!) ひなひな『――さぁ!! ついに!! 満塁になりましたぁ!!!』
ひなひな『点差は4点!! 一発出れば、一気に同点!!』
ひなひな『会場の熱気は、最高潮に達しています!!!』
ウオオオオオオッ!!!
ワアアアアアアッ!!!
アークーア!! アークーア!!
ひなひな『そして――この、局面』
ひなひな『打席に立つのは。Aqoursの、命運を、握るのは――!!』
『2番、セカンド、降幡』
ワアアアアアアッ!!
フリリィィィィン!!
ふりりん「………!!」
カタ…
ふりりん(ツーアウト……満塁……!!)
ふりりん(マジかよ……あーしに……)
ガタ…ガタ…!
ふりりん(Aqoursの、命運が……かかってる……!?) 密度が濃くて俺は好き
適当に進められるより作者の気の済むまで最後までやってほしい めっちゃ面白い
けど細かいこと言うとセーフティースクイズは
セーフティーバントでスクイズすることじゃない 更新されるたびに泣いてる。
あいなちゃんもしゅかもほんと…
でもμ'sに勝ってほしいのもある。やっぱり伝説は伝説のままであって欲しいというか。複雑な心境。 あんじゅがサヨナラのランナーか
どっちに倒れてもドラマチックな展開に >あいにゃ「泣いてる?」
>
>すわわ「泣いてない」
>
>あいにゃ「泣いてる?」
>
>すわわ「泣いてないったら」
かわいい ウオオオオオオッ!!
フリリィィィィン!!
ガンバレェェェッ!!
ふりりん「………っ」
フルフル…
ひなひな『大歓声を受けて、降幡が打席に入ります!!』
ひなひな『しかし、プレッシャーからか、いささか固い表情』
ひなひな『チームメイトの、そしてファンの期待に応えることが出来るか!? あいちゃん、正念場です!!』
きんぐ「あいあい……ガッチガチになってる」
ありしゃ「あいあいー!!」
あんちゃん「大丈夫だよ!! 肩の力、抜いてー!!」 ふりりん「………」
ドクンドクン…!
ふりりん(ツーアウト満塁……あーしが打てば……点が入って……)
ふりりん(ホームランなら、同点……? いやホームランとか無理……)
ふりりん(打つ? えみつんさんの球を? じゃあ待つ? フォアボール?)
ふりりん(いや、なに考えてんだあーし……! 頭ごちゃごちゃで……!)
ふりりん(落ち着け、落ち着け……!!)
えみつん「………」
フゥ…ハァ…
キッ!
ふりりん「!!」
ゾクッ
ふりりん(えみつんさん……体、ボロボロのはずなのに……疲れてるはずなのに……)
ふりりん(まだ……こんな、気迫が……!)
ブルッ…
ふりりん(怖い……怖い……!) ザッ…!
ひなひな『新田、足を上げた!!』
ふりりん(来る……来る……!!)
ドクンドクン!
シュバッ!!
ふりりん「――!!」
ズバン!!
\ストライク!!/
ひなひな『ど真ん中を見送ってしまった!!』
ひなひな『降幡、手が出ない!! ワンストライク!!』
ワアアアアアッ!! あいにゃ「あああ……!!」
きんぐ「今の、甘く入ったってやつじゃないの……!?」
あんちゃん(あいあい……!!)
みもりん(危ない……!! 真ん中に入ってきた……!)
みもりん(でも、初球でストライクが取れた。このまま……!)
ふりりん「……っ!!」
ドクンドクン…!
きゃん「あいあい!! 落ち着いて!!」
りきゃこ「深呼吸して!! 大丈夫だから!!」
しゅか「あいあい……」
グッ ふりりん(そうだ……振らなきゃ……打たなきゃ……!!)
ふりりん(振れ、振れ……!)
ドクンドクン…
えみつん「」
ザッ…
ふりりん(振れ!!)
シュバッ!
ブンッ!!
バシィッ!!
\ストライクツー!!/
ひなひな『ああっと、今度は大きく外れたボール球に手が出てしまった!!』
ひなひな『空振り!! これでツーストライク!!』
アアアアアアッ!! ふりりん「はぁ、はぁ……!!」
ふりりん(駄目だ……頭の中、真っ白だ……!!)
ふりりん(どうしよ……どうしたら……!!)
きんぐ「ふり……!!」
ありしゃ「プレッシャーで、テンパっちゃってる……!」
あんちゃん「あいあーい!! 落ち着いてー!!」
ふりりん「ふぅ、はぁ……」
ふりりん「………」
ふりりん(ああ……やっぱり、私……駄目だなぁ……)
ふりりん(こんな、大事な場面で……私を信じて、みんな、送り出してくれたのに……)
ふりりん(期待に……応えられない)
ジワ…
ふりりん(Aqoursの、他のみんなは……すごい人ばっかりで。私、ここにいていいのかって、いっつも悩んで……)
ふりりん(せめて、みんなを引き立てられればって思って、なんとか頑張ってきたけど……)
ふりりん(……引き立て役にすら、なれない)
ポロ…
ふりりん(私……結局、みんなの……お荷物、なんだ……)
しゅか「………!」 しゅか「――こらー、あいあい!!」
しゅか「顔上げろ!! びびってんなー!!」
しゅか「このセクシー家庭教師!!」
ふりりん「!」
ハッ
ジョルノ「……は? セクシー家庭教師?」
ジョルノ「なんで? セクシーなの?」
しゅか「………」
ニッ
ふりりん「………!」
ふりりん(しゅか……) ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています