えみつん「東京ドームでライブをしたければ……」あんちゃん「野球で勝負!?」 ★2
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ひなひな『8回表、なおもμ'sの攻撃中。すでに打順は一巡し、打席には6番の飯田!』
ひなひな『ツーアウト一塁――アウトひとつが遠いAqours』
ひなひな『大差をつけられ、気力も萎えてしまったか――グラウンド内には、重苦しい空気が流れております』
りきゃこ(こんな状況になっちゃったら……もう、どうすればいいか……)
あんちゃん(ごめん……みんな。私のせいで……)
しゅか(駄目なのか……? ちくしょ……)
ふりりん(あたしたち……ドーム、行けなくなっちゃうんだ……)
きんぐ(あーあ……負けたわ、こりゃ)
きゃん(どうしようもないよ……もう……)
すわわ(ここまできたら……打つ手は……)
あいにゃ(………)
あいにゃ(みんな……) バシィ!
\ボール! フォア!/
ありしゃ「……!」
ありしゃ(ええ……今の、入ってなかった……!?)
ひなひな『際どいコースでしたが、飯田、落ち着いて見て、フォアボール!』
あさみん『もはや、運にも見放されてきましたね……』
ザワザワ…
ライバー「あー……もう、駄目かもな……」
ライバー「こんな一方的な試合、見たくねえよ……」
ライバー「もうコールドで終わりでいいんじゃねえの……?」 ひなひな『ツーアウト一塁・二塁! μ'sの攻撃は終わらない!』
ひなひな『終わらせることが出来ない、Aqours!!』
あさみん『恐るべきは、μ's打線の、波に乗った時の爆発力ですね』
あさみん『交代した小宮選手も、頑張っていますが……普通の速球だけでは、今のμ's打線を抑えることは……』
ありしゃ「はぁ、はぁ……!」
ありしゃ(アウト……ひとつ、だけなのに……!)
ひなひな『Aqoursナインからも……スタンドからも。もはや、諦めにも似た空気が流れてしまっています』
あさみん『………』 あさみん『……確かに、ここからAqoursが勝つとなると、それこそ奇跡でも起きない限り、無理でしょう』
あさみん『そして――奇跡というものは、そう易々と、起こるものではありません』
ひなひな『では、やはり……もう……』
あさみん『――ですが』
あさみん『奇跡とは、“起きる”ものではありません。“起こす”ものです』
ひなひな『“起こす”――』
あさみん『月並みですが――最後まで諦めない、強い意思。それが、奇跡を呼び起こす』
ひなひな『だけど、今のこの空気の中じゃ……』
あさみん『……そう。今のAqoursでは、奇跡は起こせない』
あさみん『せめて――この空気を変える、誰か』
あさみん『いや、たったひとつのプレーでもいい。何かの、きっかけさえあれば……』
あいにゃ「………!」
ゴシゴシッ ひなひな『さて、打席に立つのは7番のPile!』
ひなひな『この回、大量点を奪っているμ's、さらなる追加点となるのか?』
ありしゃ「ふぅ……はぁ……!」
あんちゃん(ありさちゃん……!)
ふりりん(ありさ……頑張ってるけど……)
きんぐ(無理だよ……もう……)
きゃん(いつまで続くの……この回……)
すわわ(みんなの気力も……もう……)
あいにゃ「………っ」 ぱいちゃん「そこ!」
カキィン!!
ひなひな『打ったぁぁ!! これも大きい!!』
ひなひな『打球は右中間、深い所に伸びていく〜〜!!』
りきゃこ「……!!」
きんぐ「あーあ……」
しゅか「また……追加点……」
ふりりん「これで……何点目……?」
あんちゃん「――!」ハッ
あんちゃん「いや……!?」
あいにゃ「はぁ、はぁっ!!」
ダダダダッ!
ひなひな『いっ……いや!? センター鈴木、懸命に追っている!!』
ワアアアアッ!? りきゃこ「あいな!?」
ありしゃ「いや……でも、あれは……無理……」
あいにゃ「……っ!!」
ダダダダッ!!
あいにゃ(やだよ……やだよ! こんな所で、終わっちゃうなんて!!)
あいにゃ(もう少しで……私たちの、夢が……届くところまで、来たのに!!)
ひなひな『懸命に追いますが、これは頭を越えそうだ!!』
ひなひな『しかし鈴木、スピードを緩めない!!』
あいにゃ(確かに、もう負けちゃいそうだけど……無理かも、しれないけど……!)
あいにゃ(でも、まだ……あきらめたく、ない……!!)
あいにゃ(だって……!!)
バッ!!
ひなひな『飛び込んだぁぁぁっ!!!』 あいにゃ(だって――Aqoursに入って、わかったんだもの)
あいにゃ(夢は――)
あいにゃ(自分の手で、掴み取るんだ――って)
パシッ!
ズザザザッ!!
ゴロゴロゴロッ!!
オオオオオッ!?
ひなひな『飛びついた鈴木!! ボールは!?』
ひなひな『フェアか、アウトか!?』
\アウトォ!!/ ワアアアアッ!!
ひなひな『なんとっ……アウトォ!! センター鈴木、超、超、ファインプレー!!!』
ひなひな『長打間違いなしと思われた打球!! 決死の思いで飛び込んだ鈴木のグラブの中に、しっかりボールは収まっていました!!』
ぱいちゃん「うっそ、マジで!?」
しゅか「嘘ぉ!?」
ふりりん「す、すごい……あいな……!」
ありしゃ「あいな……!」
フゥハァ
あさみん『3回にも、同じような場面はありました……! だけど今回は、恐れずに飛びついた結果、アウトになった……!!』
あさみん『これは……あいなちゃんの、諦めない気持ちが呼び込んだ、ファインプレーです!!』
あさみん(これで……風向きが、変われば……!)
あんちゃん「………!!」
ドクン…! ひなひな『――おや?』
ひなひな『鈴木選手、様子が……?』
あいにゃ「ぐ……」
あいにゃ「痛っ……くぅっ……!」
ひなひな『足を押さえ、横たわったまま、起き上がれません!』
あさみん『まさか、飛び込んだ時に、どこか……!?』
すわわ「あいな!!」
タタタッ!
きゃん「大丈夫!?」 あいにゃ「すわわ……あいきゃん、も……」
きゃん「どっか痛めたの!?」
すわわ「……!! あいな、まさか……」
すわわ「前に、痛めた……右足首を……!?」
あいにゃ「……えへへ……」
あいにゃ「今度は……ちゃんと、捕れたよ……?」
すわわ「そんなことよりも……!!」
あいにゃ「つっ!! へへ……こちとら、必死よ……」
あいにゃ「だって……みんなと、東京ドーム……立ちたいもの……」
すわわ「……!!」
きゃん「あいな……」
ひなひな『担架です!! 鈴木選手の、足の具合が心配ですが……』
ひなひな『しかし8回の表、センター鈴木のファインプレーで、μ'sの長い長い攻撃がようやく終わりました!!』
ワアアアアッ!
パチパチパチッ 〜Aqoursベンチ〜
あんちゃん「………」
ふりりん「……あいなと、付き添いのおすわ、なかなか救護室から戻ってこないね……」
りきゃこ「前に一度、痛めた所と同じ、右の足首だし……」
きゃん「心配だね……」
ガチャッ
あいにゃ「ごめーん! みんなー、お待たせー♪」
あんちゃん「あいな!」
りきゃこ「大丈夫なの!?」 すわわ「幸い、骨には異常は無かったみたい」
りきゃこ「そう……!」ホッ
あいにゃ「テーピングぐるぐる巻きにして、しっかりサポーターもしてもらったから大丈夫! 余裕よ、余裕!!」
すわわ「……だけど、前に痛めたのと同じ所を痛めちゃってるから……」
すわわ「極力、無理は……」
あいにゃ「平気だって!! ほら、こんなによゆー……!」
ズキッ
あいにゃ「あつっ……!」
あんちゃん「あいな!!」
すわわ「あんまり、動かないようにしなきゃ……!」
きんぐ「………」
きんぐ「もう……無理じゃない?」 シ…ン
あいにゃ「……え?」
あんちゃん「今、なんて……」
きんぐ「いや……そんな、無理してまで……必死にやる意味も、もう、無いっていうか……」
きんぐ「だって……」
きんぐ「まさか、まだ勝てるとでも思ってるの?」
すわわ「――!!」
ガタッ!
しゅか「ちょ!?」
ふりりん「おすわ、抑えて!!」
きんぐ「だって――現実見なよ!! 9点差だよ、9点差!!」
きんぐ「攻撃できるのはあと2回しか残ってない!! しかも相手のピッチャーは新田さん!!」
きんぐ「どうしようもないじゃん!!」
すわわ「………っ」
グッ… きんぐ「そりゃ、私だって……ドームで、ライブ出来なくなるのは、悔しいよ……」
きんぐ「だけど……それに、あいなが、怪我しちゃったんなら」
きんぐ「もう、無理することもないじゃん……」
あいにゃ「………っ」
ありしゃ「……そう、だね……」
ありしゃ「もう、勝てる見込みが無いなら……ここで試合を終わらせるのも、ありかもしれない……」
きゃん「そう、だよね……高校野球なら、コールド負けの点差だし……」
りきゃこ「無理して、これ以上、怪我人が出るくらいなら……」
あいにゃ「だっ……大丈夫だって!! これくらい、なんでもないから!!」
あいにゃ「余裕よ、よゆー!! がははははっ、は、は……」
あいにゃ「………」
シ…ン
しゅか「……あんじゅは」
しゅか「あんじゅは……どうしたいの……?」
あんちゃん「え……!?」 あんちゃん(確かに、これ以上、怪我人が増えるかもしれないことを考えたら……無理しない方が、いいのかもしれない……)
あんちゃん(だけど……ここで、やめちゃったら……大切な何かを、失っちゃうような……)
あんちゃん(もう二度と、戻れないような……そんな、気もする……)
グッ…
あんちゃん(こんな……こんな時に、優柔不断で、はっきり言えないなんて……)
あんちゃん(私……やっぱり、駄目駄目な、リーダーだ……)
あいにゃ「私は――」
あいにゃ「まだ、続けるよ!」
あんちゃん「!」
すわわ「!」
りきゃこ「あいな……」 あいにゃ「ごめんね……こんな、大事な時に、また怪我なんか……」
あんちゃん「そんなこと……!」
あいにゃ「だけど、前に怪我して、ファンミに出れなかった時も……みんなに、迷惑かけたし……」
あいにゃ「何より……来ていたお客さんを、がっかりさせちゃって……」
りきゃこ「……!」
あいにゃ「今も……まだ、応援してくれるお客さんは、いてくれると思うし」
あいにゃ「だから……今度は、最後まで……続けたい」
あいにゃ「続けさせてください……!」ポロッ
あんちゃん「あいな……」 しゅか「あいな、泣かないで……」
ありしゃ「あいなが……そこまで、言うなら」
りきゃこ「うん……」
りきゃこ「ただし、ポジションは変更しよう。あいなは、一番負担の少なそうな、ファーストに」
りきゃこ「あんちゃんは、センターに回って。大丈夫?」
あんちゃん「あ……うん……」
りきゃこ「はい、そうと決まったら、また攻撃だよ!」
りきゃこ「急いで、準備しよ!」
ガタ…ガタ…
きんぐ「………」
きゃん「……大丈夫かな……」
ひなひな『Aqoursベンチ、ようやく動き始めました。どうやら、続行はするようですが……』
ひなひな『未だ、重い空気は、払拭しきれていないようですね……』
あさみん『………』
あさみん(駄目……なの? あのプレーでも、流れは……みんなの気持ちは、変えられなかった……?)
あさみん(いや。わずかでもいい。小さな灯火が、誰かの心に、ともってさえいれば……!) あんちゃん「………」
あんちゃん「あいな……」
あいにゃ「………」
あいにゃ「……私はさ。ここまで、全然、攻撃とかで役に立ててないから……」
あいにゃ「だから、ちょっとでも、役に立ちたい、って思ったんだけど……」
あいにゃ「怪我しちゃって……かえって、迷惑だったのかな……」
あんちゃん「そんなこと、ない……! あいなは……!」
あいにゃ「……それに、ね」
あいにゃ「やっぱり、まだ……私、あきらめたくない……」
ポロッ…
あいにゃ「だって、私たち……まだ、途中だもの……!」
あんちゃん「……!!」
あいにゃ「まだ、何もかも、途中だから……まだまだ、前に、進みたいから……!」
あいにゃ「だから……」
あんちゃん「………」
あいにゃ「」ゴシゴシ
あいにゃ「……ごめんねっ! いっつも、泣いてばっかりで」
あいにゃ「さあ、あと2回!! 張り切っていくぜー!」
ガタッ…
あんちゃん「………」
あんちゃん(私たちは、まだ……途中……)
あんちゃん(私たちは……前に、進む……)
グッ…
あんちゃん(……あきらめない……)
あんちゃん(私に、まだ……できること……!)
キッ!
【8回裏】
ひなひな『8回裏、大量援護を受けてマウンドに上がるのは、もちろん新田!!』
ひなひな『残り2回、Aqoursを完全に封じ込むか!?』
ワアアアアッ!
みもりん「やれやれ、やっと再開か……」
シュッ
えみつん「………」
パシッ
ひなひな『なんとか反撃したいAqours、この回の攻撃は、6番の逢田から!』 えみつん「」
シュバッ!
ズバンッ!!
りきゃこ「ぐ……!」
りきゃこ(そうは言っても……どうやって、攻略したら……!?)
ひなひな『この回も冴え渡る、新田の豪速球!!』
ひなひな『相変わらず、球速は130キロ台を計測!! もはや向かうところ敵なし!!』
あさみん『ええ……おや?』
あんちゃん「………」
グッ えみつん「」
シュバッ!
あんちゃん「!」
ブンッ!
ズバンッ!!
\ストライク!/
あさみん『……?』
ひなひな『これは……? 伊波選手、ひとり、ファールグラウンドに出て……』
ひなひな『素振り……? を、していますね。まだ打順は、かなり先だと思いますが……』
あさみん『………』
ありしゃ「……?」
きゃん「あんちゃん……?」 えみつん「」
シュバッ!
あんちゃん「!」
ブンッ!
ズバンッ!!
\ストライク! バッターアウッ!/
ひなひな『結局、逢田のバットもボールにかすらせず!!』
ひなひな『三振で、余裕のワンナウト!!』
ワアアアアッ!
ひなひな『しかし、伊波選手は、一体……?』
くっすん「……何やってんの?」
ぱいちゃん「さあ……」
えみつん「………」
パシッ あさみん『新田投手は、続く7番・諏訪も、ボールにかすらせることなく三振』
ズバンッ!!
\ストライク!/
すわわ「くっ……!!」
すわわ(必ず、何か、糸口はあるはず……!)
すわわ(それを、見つけられれば……だけど……)
あさみん『8番・小林は、ビビって完全に腰が引けているところで……』
あさみん『かえって、新田さんのコントロールが乱れ、運良くフォアボールとなるものの』
ズバッ!
\ボール! フォア!/
きゃん(あー、生きてて良かった……)
あさみん『続く、9番、鈴木は……』 あいにゃ(なんとかして、出なきゃ……!! なんとかして……!!)
ドキドキ
えみつん「」
グワッ…!
ひなひな『新田、またランナーがいるのに、振りかぶった!!』
シュバッ!!
あいにゃ「……!!」
ブンッ!
ズバンッ!!
ひなひな『は、速い!! 球速は……!?』
――140km/h ひなひな『新田、フォアボールのランナーを出したものの、この回もAqoursの攻撃をシャットアウト!!』
ひなひな『ここまで奪った9つのアウトは、全て三振!!』
ひなひな『それどころか、全てストレートにもかかわらず、いまだバットに当てることすら許さず!!』
ひなひな『Aqoursに付け入る隙を与えないまま、いよいよ試合は9回、最終回を迎えます!!』
オオオオオッ!!
あんちゃん「………」
スタ…スタ…
ひなひな『おっと、ファールグラウンドに出ていた伊波選手も、一旦ベンチに下がりますが……』
ひなひな『ずっと素振りをしていた伊波選手。最終回に望みをつなごうという、気合の現れでしょうか』
あさみん『………』
あさみん(あんちゃん……まさか……?) 【9回表】
ひなひな『迎えた9回、この回の小宮も、苦しいピッチング!!』
ひなひな『先頭の8番・南條こそ、見逃し三振に仕留めますが――』
ひなひな『9番・楠田、1番・久保に連続安打!!』
ひなひな『さらには2番・徳井にも、フォアボールを与え、ワンナウト満塁!!』
ありしゃ「……!!」
ハァ…ハァ…!
りきゃこ(もう、単なる棒球になっちゃってる……!)
りきゃこ(これじゃ、もう……!) ザワザワ…
ライバー「……もう、見てらんねえよ」
ライバー「こんな一方的な試合、見たい訳じゃないし……」
ライバー「メラド、帰りの電車混むし、もう行こーぜ」
ひなひな『スタンドからは、席を立つファンの姿も見えます』
ひなひな『すでにAqoursのファンの中にも、諦めの気持ちが広がってしまっているのか……』
ふりりん「……!」
あいにゃ「そんな……!」 ひなひな『しかし、運命はAqoursに容赦しません』
ひなひな『満塁のこの場面で、迎えるのは、ここまでAqoursを脅かし続けてきた、μ'sの強力クリンナップ!!』
ワアアアアッ!
ブンッ!
みもりん「……悪く思わないでよね」
えみつん「やるからには……最後まで、本気でね」
うっちー「後輩ちゃんたち……」
うっちー「ここまで、なのかな」
ありしゃ「……!!」
ゼェ…ハァ…!
しゅか「……マジで……?」
きんぐ「終わった……今度こそ、終わったわ」
ふりりん「なんで……こんな、ことに……」
あいにゃ(神様……!)
きゃん(また……たくさん、点、とられるのかな……)
すわわ「………」
りきゃこ(もう……)
りきゃこ(駄目……か……) ひなひな『このピンチに――Aqours守備陣、声を上げる選手は誰もいません』
ひなひな『いっそ、このまま、終わってくれたら――』
ひなひな『そんな、悲壮感まで――感じさせます』
あさみん『………』
あさみん『――絶体絶命の、窮地に立たされ』
あさみん『夢も、希望も、完膚なきまでに打ち砕かれて』
ひなひな『………』
あさみん『だけど――それでも、まだ』
あさみん『小さな小さな、希望という輝きを信じて』
あさみん『立ち向かおうとする、気力のある人がいれば――!』
あんちゃん「………!」
ザッ…! ひなひな『……? おや?』
ひなひな『センターに入っていた伊波が……ひとり、マウンドの方に向かって……?』
あんちゃん「………」
ザッ…ザッ…
ザワザワ…
しゅか「……?」
ふりりん「あんちゃん……?」
あんちゃん「………」
ザッ
ありしゃ「………」
フゥ…ハァ…
ありしゃ「あんちゃん……何を……」
あんちゃん「――ありさちゃん」
あんちゃん「ボール、貸して」
キッ!
あんちゃん「私が――投げる」 Aqoursも勝ってほしいしμ'sにも負けてほしくない…
どっちにもドラマがあると両方応援したくなる >>28と>>29の間に以下のレスが抜けていました
申し訳ありません ひなひな『ひゃっ……140キロが出ました!!』
ひなひな『新田、前人未到の140キロ!! これぞ最強、μ'sの守護神!!』
ウオオオオッ!!
ワアアアアッ!!
\ストライク! バッターアウッ!!/
あいにゃ「……っ」
ズキ…ズキ…
あいにゃ(駄目、だ……手も足も、出なかった……)
あいにゃ(やっぱり……これで、終わりなの? 私たち……)ジワッ
ふりりん「ああ……」
きんぐ「やっぱり……無理だよ……」 ランナー無視のワインドアップといえば茂野吾郎だよな ありしゃ「……!!」
ありしゃ「本気……?」
あんちゃん「………」
コクッ
りきゃこ「あんちゃん……!?」
あんちゃん「ごめん、ありさちゃん。私が不甲斐ないせいで、迷惑かけちゃって」
あんちゃん「でも……だからこそ」
あんちゃん「しっかり、私の手で……始末を、つけたいの」
ありしゃ「………」
ありしゃ「……ごめん。あんちゃん……」
スッ…
ひなひな『マウンド上の小宮、ボールを、伊波に手渡して……!?』
ひなひな『まさか……!?』
ザワザワ…! 『――Aqours、守備の変更をお知らせいたします』
『ピッチャーの小宮が、センター』
『センターの伊波が、ピッチャー』
えみつん「!」ピクッ!
みもりん「また、あの子が……!?」
『3番、ピッチャー、伊波』
『4番、センター、小宮』
『以上に変わります』
オオオオオッ!?
ひなひな『なっ……なんと!? 8回途中、ノックアウトされた先発・伊波がっ……!!』
ひなひな『この、9回満塁のピンチに、再びマウンドに上がります!!』
あんちゃん「………」
ザッ! りっぴー「なんちゃんに、ノックアウトされた、あの子が……?」
ぱいちゃん「ま、大方、他にピッチャーがいないからなんだろうけど……」
ジョルノ「………」
きんぐ「………」
ふりりん「あんちゃん……」
しゅか「やれる、の……?」
あいにゃ「………」
あいにゃ「お願い……!」
ひなひな『先程の回で大量点を奪われ、疲労も溜まっているであろう伊波ですが……』
ひなひな『この場面で、μ'sのクリンナップを抑えきれる力は、残っているのでしょうか……?』
あさみん『……どうでしょうか。しかし、ボロボロの今のAqoursは、こうして少しでも気力のある選手に、すがるしかない……』
あさみん『そんな状況に、陥ってしまっているのも事実』
あさみん『ですが……』
うっちー「……えみつん。みもりん」
みもりん「うん」
えみつん「彩も……感じる?」
うっちー「そうだね。あの子……」
あんちゃん「………」
キッ…
うっちー「まだ――目は、死んでない」 あんちゃん「」
シュッ!
パシッ!
りきゃこ(あんちゃん……)
りきゃこ(大丈夫、なの……?)
ひなひな『投球練習を見る限り、特に変化は見られません、伊波』
あさみん『………?』
あさみん(今の、投げ方……何かが……?)
あんちゃん「………」
パシッ
『3番、キャッチャー、三森』
ワアアアアッ!
ひなひな『さあ試合が再開されます!!』
ひなひな『打席に入るのは、ここまで4打数2安打、3打点を挙げている三森!!』
ひなひな『果たして、Aqoursの息の根を止める打席になるのでしょうか!?』
みもりん「――悪いけど、手は抜かないよ」
みもりん「それが、礼儀だからね」 \プレイ!/
あんちゃん「………」
あんちゃん(あいなが――思い出させてくれた)
あんちゃん(そうだ。あきらめたら、全てが終わっちゃう)
あんちゃん(私たちが積み上げてきたものも。応援してきてくれた人たちの想いも。何もかも)
あんちゃん(千歌たちだって――)
あんちゃん(あきらめなかったから。奇跡を、起こせたんだ)
あんちゃん(私たちだって、信じなきゃ――)
キッ!
あんちゃん(千歌たちに――顔向け、出来ない)
みもりん(気合は――入ってる、みたいだね)
みもりん(いいね。まだ、折れない気持ち――好きだよ、そういうの)
りきゃこ(……あんちゃん)
りきゃこ(頑張って……!) あんちゃん(私……ほんと、ダメダメなリーダーで)
あんちゃん(みんなに、いっつも、助けられてばかりだった)
あんちゃん(だから、今度は――私の番)
ザッ…!
あさみん『――!!』
あさみん(アンダースローだけど。前よりも――)
あさみん(後ろに、振り上げた腕が――高い!?)
あんちゃん(みんなが、困ってるなら――助けて、あげたい)
あんちゃん(ダメダメな――私、だけど)
あんちゃん(今だけは――みんなを、)
あんちゃん(引っ張っていってみせる!!)
シュバッ!!
りきゃこ「――!!」 ズバァン!!
みもりん「……!!」
シー…ン
\ス…ストライク!/
りっぴー「……え?」
くっすん「今の……」
しゅか「な……なんか……」
ふりりん「めっちゃ……速くなかった……?」
きんぐ「まるで、“オラつきモード”の時みたいに……」
りきゃこ(い……今の、球……!?) ひなひな『はっ……速い!? 今の一球、アンダースローにも関わらず……!?』
ひなひな『球速は!?』
――122km/h
ひなひな『――122キロ!? この球速はっ……!!』
あさみん『オーバースローで投げていた時の球速と、同じ……!?』
オオオオオッ!!
あんちゃん「………」
パシッ
みもりん(どうゆうこと……?)
うっちー「さっきまでの球速は、100キロいくかいかないか、ぐらいだった……」
うっちー「アンダースローなのに……なんで、あんなに速い球が投げられるの……!?」
えみつん「………!」 りきゃこ(あんちゃん……一体……!?)
あんちゃん「」
ザッ…!
シュパッ!!
バシィッ!!
\ストライク!/
みもりん(また、速い球……しかも、外角低め、ギリギリのコースに……!)
みもりん(速いだけじゃない。繊細な、コントロールも……!)
ひなひな『低めギリギリ、決まってツーストライク!! これもやはり、122キロ!!』
ひなひな『三森、手が出ない!! 追い込まれました!!』
オオオオオッ!
あさみん『ただ単に、速いだけじゃない』
あさみん『オーバースローの時には無かった、外を丁寧に突くコントロールも、備わってる……!』 シュパッ!
みもりん「くっ!!」
キンッ!
ひなひな『ファール!! なんとか食らいつく、三森!!』
みもりん(今のは、僅かに変化した。シンカー……!)
みもりん(まさか、今は、オーバースローの時の球速と……)
みもりん(アンダースローの時の制球力・変化球を、併せ持ってる状態、ってこと……!?)
グッ…
みもりん「……ふふっ」
みもりん(いいじゃん。この期に及んで、まだ進化出来るっていうの? わくわくする!)
みもりん(覚えておくよ。Aqoursと、貴方の名前……!)
うっちー「みもりん……」クスッ
えみつん「うん……楽しんでる。すずらしい」 あんちゃん(いけっ……!!)
ザッ…!
ひなひな『伊波、大きく後ろに、腕を振り上げたぁ!!』
あさみん『――!!』ハッ
あんちゃん(――天高く!!)
シュバッ!
みもりん「!!」
ブンッ!
ズバァン!!
\ストライク! バッターアウッ!/
ワアアアアッ!!
ひなひな『三振〜〜〜っ!!!』
ひなひな『三森、内角高めのストレートを、振らされましたぁー!!!』
あんちゃん「よしっ……!!」
りきゃこ「や、やった……! あんちゃん……!」 みもりん「………っ!」
みもりん(今の、球……低い位置から、浮き上がってきた……!)
みもりん(あんな軌道の、速い球、見たことない……!)
フッ…
みもりん「……ばいやー」
みもりん「ふふっ。すごいじゃん」
ぱいちゃん「う、嘘……」
りっぴー「内角高めの直球なら、みもりん、第一打席でも楽々ヒットにしてるのに……」
ジョルノ「……軌道がね。違うんだよ」
ぱいちゃん「軌道?」
ジョルノ「アンダースロー特有の、低い位置でリリースされたボールが、まるで浮き上がるような下からの軌道で、高めに決まる」
ジョルノ「しかも、そのスピードはオーバースロー並ときた。いかに、みもでも……あの軌道の豪速球は、未知の球だよ」
りっぴー「未知の球……!」
ジョルノ(そして、あの速さの秘密は、)
ジョルノ(おそらく……)
あさみん『……フォームが……』
ひなひな『え?』
あさみん『フォームが……違う……!』 ひなひな『フォームが違う……!? 見た感じは、前と同じアンダースローですよ?』
あさみん『一見、同じアンダースローに見えますが、実は前の回までとは、全く違うフォームです……!!』
あさみん『映像で確認してみましょう。前の回までの、伊波投手のフォームは、上体を立て、腕は肩から下で振り、リリースしています』
あさみん『典型的な、アンダースローのフォームです』
ひなひな『は、はい……』
あさみん『ところが、今回の伊波投手のフォーム。腕を、後ろに大きく引き――』
あさみん『そこから、身体全体で体重移動しながら、腕を振り、リリースする――ここです!』
ひなひな『……!! 上半身の向きと、腕の位置が、違う……!?』
あさみん『その通りです。上体を横に倒し――腕の振りは、一見、下からの軌道に見えますが――』
あさみん『その実、腕は肩よりも下の位置に、下がってはいない』
あさみん『サイドスロー――いや、オーバースローを、そのまま横に倒したようなフォームになっているんです』
ひなひな『アンダースローなのに、投げ方はオーバースロー……!!』
ひなひな『だから、上手投げと同じスピードの速球を……!! こんな投げ方があるなんて……!!』 あさみん『――かつて、“史上最高のアンダースロー”と呼ばれた投手がいました』
あさみん『彼の名は――“杉浦忠”』
あさみん『今から半世紀も前。南海ホークスのエースとして活躍した、大投手です』
あさみん『1年目から27勝を挙げて新人王、2年目は38勝4敗、勝率.905という驚異的な成績を残し、日本シリーズ対巨人戦で4連投4連勝など、数々の伝説を残していますが――』
あさみん『特筆すべきは、彼はアンダースローのピッチャーにもかかわらず、ノビのある豪速球を武器にしていたことです』
ひなひな『豪速球を……?』
あさみん『当時の映像や写真等の資料が少ないものの……』
あさみん『彼もまた、オーバースローのフォームのまま、上体を横に倒した、サイドに近いフォームで投げていたようです』
ひなひな『では、伊波投手のフォームは、その伝説のアンダースロー投手の、再現……!?』 あさみん『勿論、伊波投手が、伝説の杉浦投手のフォームを知っていて真似た、という訳ではないでしょう』
あさみん『しかし――どん底から再び這い上がり、また前へ、さらなる高みへ、進もうとする強い想い――』
あさみん『そんな想いが、この“オーバースロー”と“アンダースロー”の融合という形で、現れたのではないでしょうか』
あさみん『この激闘の中で――彼女は、進化を遂げたんです』
ひなひな『進化を――』
あさみん『力強い速球で、相手をねじふせようとする、“オラつきモード”でもない』
あさみん『繊細なコントロールと変化球で、相手をかわす、“ぶりっこモード”でもない』
あさみん『いわば、今のあんちゃんは。その、両者を融合させ』
あさみん『リーダーとして、自分の弱さも強さも受け入れ、周りを引っ張る力を身につけた――』
あさみん『名付けるなら――“真・リーダーモード”!!』
あんちゃん「………」
パシッ!
ひなひな『……姉様、なんかダサい』ボソッ
あさみん『何ぃ!?』 えみつん「すず……」
みもりん「いやあ、やられちゃったあ。あはは」
みもりん「――気を付けて、えみつん」
みもりん「さっきまでとは――別人だよ」
えみつん「………」コクッ…
『4番、ピッチャー、新田』
ワアアアアッ!!
ひなひな『さあ、ツーアウト満塁と変わりまして、打席には四番の新田が入ります!!』
ひなひな『ここまでの伊波との対戦は、第1打席がホームラン、第2打席はヒットを放つものの好守備で得点はならず!!』
ひなひな『第3打席は三振、第4打席はフォアボールという内容!!』
ひなひな『μ'sの四番とAqoursのエースの対決、決着なるか!?』
えみつん「あんちゃん……」
あんちゃん「えみつんさん……」
あんちゃん「……勝負です!」 りきゃこ(……あんちゃん)
りきゃこ(いいよ。ここまできたら、あんちゃんの思う通りに――)
りきゃこ(来て。思いっきり――!)
あんちゃん(ありがとう。りこちゃん)
あんちゃん(私が、まだ頑張れるのは)
ザッ…!
あんちゃん(受け止めてくれる、りこちゃんと――)
あんちゃん(守ってくれる、みんなの、お蔭だよ!!)
シュパッ!!
えみつん「――!」
ブンッ!!
ズバンッ!!
\ストライク!!/
ひなひな『内角ストレート、ズバっと決まった!!』
ひなひな『対する新田も、初球からフルスイング!!』
ひなひな『正に真っ向勝負!! 両者とも、譲る気配は全くありません!!』
ワアアアアアッ!! ひなひな『初球から内角に攻めてきました……!! バッテリー、強気ですね!!』
あさみん『それでも速球にノビがあるので、前ほど簡単には当てられません』
あさみん『この、球速とノビを生んでいるのは、フォームも勿論ですが、ひとえに伊波投手の関節の柔らかさも大きな一因ですね』
ひなひな『柔らかさが?』
あさみん『腕を大きく後ろに振り上げ、そこからリリースまでの体重移動に、無駄がありません』
あさみん『なおかつ、柔らかい手首のスナップと、オーバースローと同じ腕の振りによって、ボールに独特の回転とキレを与えている』
あさみん『かつての杉浦忠投手も、天性の体の柔らかさを持っていたそうです。それが無ければ、こんな無茶なフォームで速球を投げることは不可能でしょう』
あさみん『おそらく、伊波選手の、長年の空手の経験が活きているのでしょう』
あさみん『空手を代表とする打撃系格闘技は、ストレッチに多くの時間を割き、体の柔らかさには定評がありますからね』 えみつん(あんちゃん……!)
えみつん(嬉しいよ。逃げずに、真っ向から、向かってきてくれて……!)
ザッ…!
シュバッ!
えみつん「なんの!!」
ギィンッ!!
ひなひな『外の球、負けじと打ち返したぁ!! 大きい!!』
ワアアアアッ!!
りきゃこ「――!!」
ひなひな『っと……切れた、切れた!! ファール!!』
ひなひな『外の厳しい球でしたが、またもフルスイングで打ち返していきました!!』
ひなひな『μ'sの四番として!! そう簡単にはやられないという、気迫を感じます!!』
オオオオオッ!!
えみつん「ふふっ……!」
フゥ…ハァ
あんちゃん「えみつんさん……流石です……!」 シュパッ!!
ガギィッ!!
ひなひな『またもファール!! またもフルスイング、またも渾身のストレート!!』
ひなひな『両者、全く退きません!!』
オオオオオッ!!
あいにゃ「あんちゃん……!」
しゅか「頑張れ……!!」
うっちー「えみつん……」
みもりん「負けるな……!」
えみつん「………」
ニッ…
あんちゃん「………」
フゥ…ハァ… あんちゃん(えみつんさん……)
あんちゃん(貴方と、μ'sは――ずっとずっと、憧れでした)
あんちゃん(ただのファンとして、ライブを見に行った時。あの時の感動は、忘れません)
ザッ…!
あんちゃん(あの時は――届かない星だった)
あんちゃん(だけど――少しでも、近づきたいから)
あんちゃん(だから――私は、あきらめない)
グワッ
あんちゃん(この、9人の仲間で)
あんちゃん(何度でも、何度でも――)
あんちゃん(天へ。空へ――!!)
シュバッ!!
えみつん「――!!」
ブンッ!!
ズバァンッ!! うっちー「………っ」
みもりん「!!」
あいにゃ「――!!」
ありしゃ「………っ」
りきゃこ「………!!」
えみつん「………」
フッ…
\ストライーク!! バッターアウッ!!/ ひなひな『ストラァァイク!! 空振り三振!!!』
ひなひな『内角高め、天に伸びるかのような、渾身のストレート!!』
ひなひな『Aqoursのエースがっ……!!』
ひなひな『μ'sの四番を、抑え込みましたぁぁぁ!!!』
ワアアアアアッ!!
ウオオオオオッ!!
あさみん『………!!』
あさみん(“輝き”は……希望は……!)
あさみん(まだ……消えてない……!)
あんちゃん「………」
ハァ…ハァ…
あんちゃん(Aqoursは……負けない……!!) めっちゃ熱い展開
その内しれっと、紅白でライブをしたければにスレタイ変わってそう あんちゃんとあいながAqoursを支えているわかる 素晴らしい
しかしまさかここで杉浦忠の名前を見るとは エンドロール、野球監修で水島新司がクレジットされててもいいレベル 面白いしドーム公演前に完結してほしいと思ってたけど厳しいかな >>80
いやほんとね
速球使いのアンダーなら牧田か高橋礼かと思ったけど杉浦とはね笑
この>>1何者?笑 >>83
よな
面白いのももちろんだけど野球への造詣が深すぎて ドーム前に完結したらモチベえらいことになりそう たのむぅ でもやっぱキャストの依怙贔屓はすごいね
あいにゃちゃんはいい風に描かれてきんきゃんはひどいw >>86
わかんないよー?これから逆転劇で大活躍するかもよー?
ここまでうまいこと一人一人に見せ場作ってるし あんじゅとあいにゃが活躍してる感じ、本当に精神的に支える2人って感じする あんじゅ リーダー
ありさ サブリーダー
あいにゃ 皆の心の支え
って感じがする 間に合わなかったか…
しかし最後まで追い続けるし、作者ももし今日のライブ見てたらモチベ失わずに頑張ってほしい ひなひな『9回表、ワンナウト満塁のピンチを迎えたAqoursでしたが――』
ひなひな『ここで再び登板したエース・伊波が、3番・三森、4番・新田を連続三振に切って取る、素晴らしいピッチングを魅せました!!』
ひなひな『最後は、低い位置から天に伸びるかのような、浮き上がるストレート!!』
ひなひな『ピンチを脱し、9回裏、最後の攻撃に望みを託します!!』
ワアアアアッ!!
えみつん(あんちゃん……)
フッ…
えみつん(……流石だね)
えみつん(まだ、火は……消えてない、ってことか)
りきゃこ(やった……!)
りきゃこ(すごい、あんちゃん……!)
あんちゃん「はぁ……ぜぇ」フラッ…
ガクッ
ひなひな『伊波、膝をついた!! 大丈夫でしょうか!?』
ザワザワ…! りきゃこ「あんちゃん!!」
ダダッ!
しゅか「大丈夫!?」
あんちゃん「あ、ご、ごめん……ちょっと、力、抜けちゃっただけ……」
ひなひな『逢田、斉藤が駆け寄り……なんとか、立ち上がりましたが……』
あさみん『………』
あさみん『……伊波投手の球数は、140球を超えています』
あさみん『体力も、もうほとんど残っていなかったのでしょう。気力、気迫だけで、その体を支えていた』
あさみん『その状態で、新たなフォームから、限界を越えた渾身の球を投げ――』
あさみん『結果、打ち取った瞬間に、力が抜けてしまったのでしょう』
ひなひな『正に、魂のピッチングだった訳ですね……』
あさみん(しかし、その結果……) ふりりん「あんちゃん、すごいよ!」
ありしゃ「ありがと……あんちゃん」
あいにゃ「あんちゃん……うぅ……」
すわわ「もー、あいな、泣かないの」
あんちゃん「大丈夫……さ、行こ……」
あんちゃん「最後の……攻撃……」
ザッ…ザッ…
ひなひな『ナインと共に、ベンチへと戻っていく伊波に、スタンドからは拍手が起こっています!』
ワアアアアッ!!
ガンバッタゾォォォ!!
パチパチパチッ
あさみん(……今の、あんちゃんのピッチングで、μ's一色だったスタンドの空気が、僅かに傾いた)
あさみん(これが……大きな“うねり”の、きっかけになってくれれば……)
ひなひな『規定により、今試合は9回までで、延長はありません!!』
ひなひな『9回裏――Aqours、正真正銘、最後の攻撃を迎えます!!』 〜ここまでのおさらい〜
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃ ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃μ┃3 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃9 ┃0 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃A ┃0 ┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃3 ┃0 ┃0 ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻
μ'sバッテリー:内田、新田 ― 新田、三森
Aqoursバッテリー:伊波、小宮、伊波 ― 逢田 【μ's】
1左 久保
2二 徳井
3捕 三森
4投 新田
5右 内田
6中 飯田
7遊 Pile
8一 南條
9三 楠田
【Aqours】
1遊 斉藤
2二 降幡
3投 伊波
4中 小宮
5三 高槻
6捕 逢田
7右 諏訪
8左 小林
9一 鈴木 【9回裏】
えみつん「………」
みもりん「……えみつん」
えみつん「ん?」
うっちー「……大丈夫?」
みもりん「その……さっきも、フルスイングしてたし……」
えみつん「………」
ニコッ
えみつん「大丈夫大丈夫! ありがと、心配しないで!」
えみつん「それに、まだ……あんちゃんは、諦めてない」
えみつん「だったら、私も――ちょっとはさ、先輩らしく」
えみつん「最後まで、全力でやろう――って、思うんだ!」
シカコ「……!」
そらまる「えみつん……」
ジョルノ「………」 ジョルノ「えみつん。ま、一応、年長者として言うけど……お前が言うな、って感じだけどさ……」
ジョルノ「無茶はしても……無理は、しないでよ」
えみつん「………」
ニコッ
えみつん「ありがとうございます」
えみつん「でも、南條さんこそ、ですよ」
ジョルノ「………」
りっぴー「……よーし、それじゃあ最後の守備、行こっ!」
ぱいちゃん「うん、えみつんも大丈夫そうだし!」
くっすん「ビシッと勝つぞー!」
えみつん「おー!! 頑張ろ、みんな!」
うっちー「………」
みもりん(えみつん……)
ひなひな『さあ、最後の守備につくμ's!!』
ひなひな『勝利に向けて! ナインが、グラウンドに散っていきます!!』
ワアアアアッ!!
ミューズゥゥゥ!! あんちゃん「………」
ハァ…フゥ
きんぐ「最後の……攻撃、か……」
きゃん「だけど……9点差……」
りきゃこ「……みんな、暗い顔しないで! 顔上げて!」
りきゃこ「せめて最後、少しでも反撃して、一糸報いて……!」
ふりりん「う……うん……」
あいにゃ「……ぐすっ……」
あんちゃん「………」
あんちゃん「みんな……覚えてる?」
ありしゃ「……え?」
あんちゃん「この試合の、最初に……円陣組んで、言ったこと」 あんちゃん「……いつも通り。困ったらお互いの目を見て」
あんちゃん「お互い助け合って……最高の試合をしよう」
すわわ「………」
あいにゃ「最高の……」
あんちゃん「相手が、μ'sでも……全力で、勝ちに行く、って」
しゅか「……!」
あんちゃん「私たち……まだ、途中だから」
あんちゃん「まだ、こんな所で……立ち止まって、られないよ」
りきゃこ「あんちゃん……」
あんちゃん「だけど……やることは、いつもと同じなんじゃないかな」
ありしゃ「同じ?」
あんちゃん「だって、私たち。ずっと、この9人で」
あんちゃん「困った時は、お互いの目を見て。何があっても、助け合って、ここまで来たじゃん!」
ニコッ…
あんちゃん「だから、きっと……今日も……」
あんちゃん「この9人でなら、大丈夫だって……思うから……!」
8人「………」
あんちゃん「行こう。最後の、攻撃……!」 『9回の裏――Aqoursの攻撃は』
『1番、ショート、斉藤』
シュカシュゥゥゥッ!!
ガンバレェェェッ!!
しゅか「よーし……!!」
ザッ
しゅか(なんとか。なんとか、塁に……!)
ひなひな『さあ9回裏、Aqours最後の攻撃は、打順よく1番の斉藤から!!』
ひなひな『なんとか出塁して、μ'sに一糸報いたいところ!!』 えみつん「………」
ザッ…
ひなひな『しかしこの回も、Aqoursの前に立ちふさがるのは、μ'sの絶対的リーダー、新田!!』
ひなひな『球種はストレートだけにもかかわらず、ここまでAqoursに、1本のヒットも許しておりません!!』
ひなひな『Aqours、この最強投手を相手に、活路を開くことは出来るのか!?』
ワアアアアッ!!
エミツゥゥゥン!!
しゅか(あんじゅが、頑張ってるんだ。私だって……!!)
しゅか(とにかく、当てなきゃ。当てなきゃ……!!) ザッ…!
ひなひな『新田、大きく振りかぶる!!』
グワッ…
シュバッ!!
しゅか「っ!!」
ブンッ!
ズバンッ!!
\ストライク!!/
ひなひな『初球空振り!! 球速は136キロを計測!!』
ひなひな『最終回に至っても、球威が衰える様子はありません、新田!!』
オオオオオッ!!
あさみん『……ただ速いだけの球ではありません。回転数が多い、いわゆる“ノビる球”です』
あさみん『バッターからは、まるでホップするかのような感覚に囚われていると思いますね』
ひなひな『正に、火の玉ストレート……おや?』
あんちゃん「………」 きゃん「え……あんちゃん?」
あいにゃ「しゅかの応援、しないの……?」
ひなひな『前の回に続き、この9回も――ひとりベンチを出て、バットを振ります、伊波』
ひなひな『打順的には、この後、回ってきますが……』
あさみん『………』
しゅか(くっそ。まっすぐだけなのに。まるで、浮き上がってくるみたいな……)
しゅか(よく見るんだ。しっかり……よく見て……!!)
ザッ
ひなひな『新田、第2球!!』
シュバッ!!
しゅか「ああああっ!!」
ガキィッ!! えみつん「!」
ひなひな『ファ……ファール!!』
ひなひな『しかし、初めてバットに新田の球を当てました、斉藤!!』
オオオオオッ!!
あいにゃ「しゅかー!!」
ふりりん「がんばれー!!」
しゅか「ぐっ……!」
ビリビリ…
しゅか(なんて、重い球……!)
しゅか(だけど……当てられた。当てられるんだ……!)
しゅか(もう、後が無い。後が無いんだ。私が出なきゃ、私が……!!)
みもりん(……当ててきたね)
みもりん(だけど……)
えみつん「………」
ザッ! シュバッ!!
しゅか「っ!!」
ブンッ!
ズバァンッ!!
\ストライッ!! バッターアウッ!!/
ひなひな『最後は138キロの直球!! 斉藤のバット、あえなく空(くう)を切りました!!』
ひなひな『新田、これで10連続三振!! 後が無いAqours、9回裏、ワンナウト!!』
アアアアァ…
しゅか「く……う、う……!!」
しゅか(もう、後が無いのに……もう、おしまいなのに……!!)
しゅか「ちっ……くしょおおおおっ!!!」
ガッ!
あいにゃ「しゅか……」ウルッ
きゃん「しゅかでも……無理、なんて……」
りきゃこ「……もう……」
あんちゃん「………」 『2番、セカンド、降幡』
フリリィィン!!
ガンバッテェェェ!!
しゅか「あいあい……!!」
あいにゃ「頑張れぇー!!」
ふりりん「………」
カタ…カタ…
ふりりん(もう、後が無い……ワンナウト……!)
ふりりん(あたしが出なきゃ、ツーアウト……なんとかしなきゃ、なんとか……!)
ひなひな『ワンナウト、ランナー無しで、2番の降幡! しかし……』
あさみん『表情が……硬いですね。追い詰められている、プレッシャーか……』 ザッ…
シュバッ!!
ふりりん「ひぅっ……!!」
ズバンッ!!
\ストライク!!/
ひなひな『あっさり初球決まって、ワンストライク!!』
あさみん『諦めずに、しっかりボールを見て欲しいところですが……!』
えみつん「………」
パシッ
ふりりん(えみつんさん……)
ふりりん(アニメで、共演した時……ライブに、行かせてもらった時……)
ふりりん(あんなに、優しかったのに。大好きなのに……)
ガタ…ガタ…
ふりりん(なんで……? 今は、怖い……!!) あいにゃ「ああ……あいあい……」
すわわ「………」
ギリッ…
すわわ(本当に、もうおしまいなの……!?)
すわわ(何か無いの、何か……!? 攻略の、糸口……!!)
ザッ…
シュバッ!!
ふりりん「……っ!!」
ブンッ!
ズバンッ!!
\ストライク!!/
ひなひな『ああー、今度はとんでもないボール球を振ってしまった!!』
しゅか「あいあいー!! ちゃんと見ろー!!」 ふりりん「はぁっ、はぁ……!!」
ふりりん(駄目だ……当てられる、気がしない……!!)
えみつん「………」
パシッ
ふりりん(もう……終わり、なの……? 東京ドームに立つ、っていう夢を、叶えられずに……)
ふりりん(ルビィも……ドームに、立たせてあげられないまま……)
ギリ…
ふりりん(やだ……そんなの、やだ……!)
ふりりん(なんとかしなきゃ。なんとか……!)
ひなひな『ツーストライクと追い込んだ、3球目!!』
シュバッ!!
ふりりん「――!!」
スッ!
えみつん「!」
みもりん(バントの構え――!)
ガキッ!! ひなひな『降幡、バントで当てにいった!!』
ひなひな『しかしこれは、ふらふらと、マウンド寄りに上がってしまった!!』
みもりん「――!」
ダッ!
パシッ!
\アウトォ!!/
ひなひな『咄嗟に飛び出した三森、捕りました!! アウトォ!!』
アアアアァァ…
あさみん『……?』
あさみん(……今の……)
すわわ「――?」
ピクッ
ありしゃ「すわわ……?」
すわわ(今の……キャッチャーフライになったけど……)
すわわ(位置的には、ちょっと微妙……ピッチャーが、向かっても良かった……)
すわわ(だけど……今)
すわわ(新田さんは……全く、動く気配が、無かったような……?) ひなひな『降幡、決死のバントで当てにいき、新田の連続奪三振は阻止したものの……』
ひなひな『球威に押され、打球はフライとなり、あえなくアウトとなりました……』
ふりりん「うっ……ぐすっ」
ふりりん「ううっ……! ふえぇぇぇ……!!」
ポロポロ
ふりりん(駄目だ……役に、立てなかった……!)
ふりりん(もう……もう……!!)
しゅか「あいあい……」
あいにゃ「うっ……ううう……!」グスッ
きんぐ「やっぱり……もう、無理だ……」
りきゃこ「……っ!」ググッ…
ありしゃ「………」
ひなひな『9回裏、ツーアウト、ランナー無し!! 点差は9点!!』
ひなひな『Aqours……ついにっ……ついに、追い詰められました!!』 あんちゃん「………」
ザッ…
ひなひな『……っと。ここで、斉藤・降幡の打席中も、ずっとバットを振っていた伊波が……』
ひなひな『ベンチを横切り……バッターボックスに向かって……』
あんちゃん「………」
あんちゃん「……わかった……上……」
ボソ…ボソ…
あんちゃん「たぶん……“ボール、2個分”……」
ブツ…ブツ…
りきゃこ「………!?」
しゅか「あ……あんじゅ……?」
ありしゃ「………」 みもりん「えみつん、ナイスボール!!」
みもりん「あとひとり!!」
えみつん「………」
くっすん「えみつん、いいぞー!!」
そらまる「最後まで落ち着いてけー!!」
りっぴー「ラストも三振狙ってこー!!」
うっちー「えみつん……」
ワアアアアッ!!
ミューズッ!! ミューズッ!!
ひなひな『勝利を目前にし、盛り上がる一塁側、μ'sの応援席!!』
ひなひな『それとは対照的に――Aqoursの応援席。すっかり、静まり返り……』
あさみん『………』 ありしゃ「ツーアウト……」
あいにゃ「ランナー……なし……」
きんぐ「駄目だ……やっぱり……無理だったんだよ……」
りきゃこ「もう……叶わないの……?」
しゅか「ドームに、立つっていう夢も……その先も……!!」
すわわ「もう……」
ふりりん「ぐすっ……ふえぇぇ……!!」
きゃん「うっ……ひぐっ」
ポロポロ…
きゃん「ああ……もう……終わっちゃうよぉ……!」
あんちゃん「………」
あんちゃん「――終わんないよ」
ザッ
あんちゃん「――始まりだよ!」
『3番、ピッチャー、伊波』 ワアアアアッ!!
アンチャァァン!!
ガンバレェェェッ!!
ひなひな『さあ、ツーアウトランナー無しとなって――』
ひなひな『この場面で打席に入るのは、Aqoursのエースにしてリーダー、伊波!!』
えみつん「………」
ひなひな『ここまで幾度となく相まみえてきた、新田と伊波、リーダーとしての対決!!』
ひなひな『ここでまた、この両者の対決となるのは、運命的なものを感じずにはいられません!!』
ひなひな『果たして伊波、最後の打者となるのか!? はたまた、最後まで足掻くのか!?』
あんちゃん「………」
きゃん「………!」
りきゃこ「あんちゃん……」 えみつん(あんちゃん……)
えみつん(残酷な先輩だと、思うかもしれない)
ザッ…
えみつん(だけど――あんちゃんが、全力で向かってきて、くれるなら)
グワッ…!
えみつん(私も、先輩として。最後まで――)
えみつん(全力で――臨む!!)
シュバッ!!
あんちゃん「――!!」
ブンッ!!
ズバァンッ!!
\ストライク!!/ ひなひな『伊波、初球、空振り!! ワンストライク!!』
アアアアァ…
きゃん「ああああ……」
あいにゃ「あんちゃんでも……駄目、なの……?」
すわわ「………」
すわわ「……でも」
すわわ(今の……タイミング、合ってた……?)
あんちゃん「ふぅー……」
キッ…
あんちゃん(もっと……上……)
あんちゃん(ボール……2個分……もっと……?)
ブツブツ… みもりん(タイミングは……合ってる)
みもりん(ちょっと、やな感じ……ここは、間を置かずに。早めにカウント、取りにいこう)
えみつん(おっけー、すず……!)
ザッ
グワッ…!
ひなひな『新田、体を大きくひねり、第2球!!』
シュバッ!!
あんちゃん「!!」
ブンッ!!
ズバンッ!!
\ストライク!!/ ひなひな『伊波、これも空振り!! ツーストライク!!』
ひなひな『いよいよ、後がありません!!』
あさみん(だけど……)
あさみん(タイミングは、合ってる……!)
あんちゃん「ふぅ……はぁ……!」
ブツ…ブツ…
あんちゃん(ボール2個半でも……駄目だった)
あんちゃん(だったら……)
グッ…
あんちゃん(――“3個分”) ワアアアアッ!!
アットヒットリッ!! アットヒットリッ!!
ひなひな『μ's側応援席からは、盛大な“あとひとり”コールの大合唱!!』
ひなひな『ツーストライクと追い詰められた伊波!! 次が最後の一球となるのか!?』
しゅか「もう……」
りきゃこ「駄目なの……!?」
あいにゃ「あんちゃん……!!」
ギュッ
あんちゃん「………」
あさみん『……!!』ハッ
あさみん(さっきまで、ずっと素振りをしていた、あんちゃん)
あさみん(あれは、単なる素振りじゃなくて……)
あさみん(新田さんの投球に合わせて、バットを振って)
あさみん(ヒッティングの、タイミングを……合わせていたんだとしたら……!?) あんちゃん(私は……千歌から。そして、現実の、Aqoursのみんなから)
あんちゃん(教えてもらった。“奇跡”は、勝手に起こるものじゃない)
あんちゃん(みんなで――起こす、ものなんだって)
ザッ!
グワッ…!
ひなひな『新田、運命の、第3球!!』
あんちゃん(私が――諦めたら。きっと千歌に、もう――向き合えない)
あんちゃん(だから――)
シュバッ!! あんちゃん(起こそう、奇跡を)
あんちゃん(足掻こう、精一杯――!)
グッ!
あんちゃん(全身全霊――)
ブンッ
あんちゃん(最後の、最後まで!!)
カキィッ!!
続く
ドーム公演までに完結できず申し訳ありません
4thの後しばらく抜け殻になってましたが完結できるよう最後まで頑張ります 乙乙
ご自分のペースで
無茶はしても無理はなさらず、で 終わんないよ…。始まりだよ!ってメルパルクで初お披露目の最後の時のあんちゃんの台詞だよな。
熱いな! えみつん「!」
みもりん「!!」
あさみん『!!』
ひなひな『弾き返した!! 新田の足許、抜ける!!』
オオオオオッ!
ぱいちゃん「くっ!!」
ダッ!
ひなひな『ショートPile、飛びついて――』
あんちゃん(抜けろっ……!!)
ダダダダッ
あんちゃん(抜けろ!!) ぱいちゃん「くあっ!!」
バッ!
ビシッ
ひなひな『Pile、弾いた!! 抜けたぁ!!』
ワアアッ!!
あんちゃん「――!!」
ダダッ!
ひなひな『伊波の執念の一打ぁー!!』
ひなひな『弾き返した打球! 好手Pileが懸命に飛びついてグラブを伸ばしたものの、あと一歩届きませんでした!!』
ひなひな『Aqours、剛腕・新田から、ついに初ヒット!! 最後の最後で、一糸報いました!! ツーアウト一塁!!』
オオオオオッ!!
しゅか「やったー!! あんじゅー!!」
あいにゃ「あんちゃん……!!」
あんちゃん「………」
ハァハァ
あんちゃん「……っ」
グッ! あさみん『――伊波選手は先程まで、味方の攻撃の際に、ひたすら素振りをしていました』
あさみん『ですが、ただがむしゃらにバットを振っていた訳ではありません』
あさみん『おそらく、マウンド上の新田投手が投げるのと同時に素振りをし、あらかじめタイミングを測っていたのではないでしょうか』
ひなひな『味方が攻撃している間も、ずっとバットを振っていたのは、そのため……!』
あさみん『結果、バットはボールをとらえることが出来た』
あさみん『当たりは決して良くなかったものの、前に弾き返す意識で、センターに抜けていきました』
あさみん『正に、気持ちで持って行った一打――あんちゃんの執念、とも言えるかもしれません……!』 ぱいちゃん「あーん、捕れなかった……えみつん、ごめーん!」
シュッ!
えみつん「へーきへーき! 大丈夫だよ、ぱいちゃん!」
パシッ
くっすん「たまたまだぞ、たまたまー!」
そらまる「次でビシっと抑えりゃOKよ!」
みもりん(当ててきた……)
みもりん(前の回までは、バットに当てることすら出来なかった。だけど、この回……)
みもりん(最初の子は、ファールで当てた。次の子は、バントフライ。そして、微妙な打球だったけど――ヒット)
みもりん(少しずつ……えみつんの球が、見えてきた……?) りきゃこ「あんちゃん、塁に出た……!」
きゃん「だけど、今さらひとり、ランナーが出たところで……」
しゅか「ちょっと、なに弱気なこと言ってんの!」
あいにゃ「次は……!!」
ありしゃ「………」
ムシャムシャ…
モグモグ…
あいにゃ「って、ありさ! なんでまだ、お菓子食べて……!」
すわわ「――待って、あいな」
グッ
すわわ(……ありさなりに、緊張してるのかもしれない)ボソッ
あいにゃ(……え?)
ありしゃ「………」
モグモグ…
ゴクン
ありしゃ「……よし……」
ザッ
『4番、センター、小宮』 ワアアアアッ!
ひなひな『さあ、続くバッターは四番の小宮!!』
ひなひな『Aqoursの中でも指折りの好打者!! 6回には、反撃の狼煙となる2点タイムリーツーベースを放っています!!』
ひなひな『9回裏、後が無いこの状況の中で、伊波に続くことが出来るか!?』
ありしゃ「………」
ザッザッ…
あいにゃ「ありさー、頑張ってー!!」
すわわ「だけど……」
すわわ(あんな、余裕の無さそうなありさの表情……初めて、見たかも……)
ありしゃ「……!」
フルフル…
ありしゃ(バットを持つ手が……震えてる……?)
ありしゃ(プレッシャー……怖い、の……? 私は……) \プレイ!/
ありしゃ「………っ」
ありしゃ(打たなきゃ……終わる……)
ありしゃ(ドームの夢も、何もかも……)
ドクンドクン…
えみつん「………」
ありしゃ(えみつん、さん……)
ザッ…
シュバッ!
ありしゃ「!!」
ブンッ!!
ズバンッ!!
\ストライク!!/ ありしゃ「くっ……!!」
ひなひな『小宮、初球は空振り!! バットはボールの下を泳ぎました!!』
ひなひな『いかに小宮といえど、新田の剛球の前では通用しないのか!?』
あいにゃ「あああ……!」
りきゃこ「ありさ……」
きんぐ(やっぱり……)
グッ…
きんぐ(頑張ったところで……もう……)
ありしゃ「ふぅ、はぁ……」
チラッ…
えみつん「………」
パシッ
ありしゃ(えみつんさん……そして、μ's……)
ありしゃ(なんて、大きい……) ありしゃ(………)
ありしゃ(……あの日。μ'sのライブを、東京ドームで、目にした時)
ありしゃ(足が震えるほどの、衝撃だった)
ありしゃ(私たちが、あの人たちと同じように、この場所に立てるのか)
ありしゃ(あの人たちのように、大きくなれるのか――怖ささえ、感じた)
ありしゃ(今――あの時と、同じ気持ちになるなんて――)
グッ…
ありしゃ(やっぱり……無理だったの? 私たちには……)
あんちゃん「………」
えみつん「」
ザッ…
ひなひな『新田、小宮に対し、第2球!!』 あんちゃん「っ!!」
ダッ!!
えみつん「!!」
みもりん(走った!?)
ひなひな『伊波、走ったぁ!!』
ウオオオオッ!?
ありしゃ「!!」
バシィッ!!
\ボール!!/
みもりん「このっ!!」
シュッ! あんちゃん「ぜっ、はっ!!」
ダダダダッ
あんちゃん「うああああっ!!」
ズザザザッ!!
バシィ!!
\セーフ!!/
ウオオオオッ!!
ひなひな『セェェーフ!! 盗塁成功!!』
ひなひな『外れた球、すかさず三森が二塁手の徳井に送りましたが、伊波の足が一瞬勝った!!』
ひなひな『伊波、決死の爆走で、二塁を陥れました!! これでツーアウト二塁!!』
あさみん『これはバッテリーも予想していなかったでしょう。一瞬の隙を突いた、あんちゃんの好判断です!!』 みもりん(まさか、この状況で走ってくるなんて……)
えみつん(しかも……ピッチャーで、もう体力もほとんど無いはずの、あんちゃんが)
えみつん(まだ……信じてるんだね。Aqoursを……みんなを)
あんちゃん「ぜぇっ、はぁ……!!」
しゅか「うおー、あんじゅー!!」
ふりりん「あんちゃん……!」
きんぐ「……!!」
ググッ…
きんぐ(なんでよ……なんで、そんなになってまで……!)
きんぐ(まだ……勝てると、思ってるの……!?)
ギリ…
きんぐ(馬鹿じゃん……そんなの……!)
ありしゃ「………」
ありしゃ(あんちゃん……) あんちゃん「………」
ゼェハァ…
あんちゃん「――ありさちゃん!!」
ありしゃ「――!?」
あんちゃん「“みっつ”、だよっ!!」
バッ!
あんちゃん「……へへっ」
ニッ…
ひなひな『これは……? 二塁塁上、伊波が、小宮に向けて、ピースサイン……?』
あさみん『いえ――ピースではないですね。指を3本、立てています』
あさみん『これは……!』
ありしゃ「……!!」
すわわ「――そうか」
ハッ
すわわ「“ボール3個分、上”……!!」 あいにゃ「ボール3個分?」
すわわ「うん。あんちゃん、打席に入る前、何かブツブツ言ってたでしょ?」
きゃん「“上”とか、“ボール2個分”とかってやつ?」
すわわ「あれは、バットの上――“ボール何個分か上の位置を打つイメージで振る”、って意味だったんだよ」
すわわ「そして、あんちゃんが打席の中で、見つけた本当のイメージの位置は――」
すわわ「バットより――“ボール3個分、上”」
あさみん『新田さんの直球が、いわゆる“ノビるストレート”であることは、前述の通りです』
あさみん『よく、“打者の手元で浮き上がる”“ホップする”と言いますが、実際はオーバースローで投げたボールが浮き上がることはありません』
ひなひな『そうなんですか? なら、どうして……』
あさみん『“ノビるストレート”は、通常の直球に比べて、強烈なバックスピンがかかっています』
あさみん『そうすると、ボールに揚力が働き、通常の直球よりも、投げられてからホームベースに届くまでの、落ちる幅が小さくなる』
あさみん『普通の直球の軌道に慣れている打者から見ると、バックスピンがかかった直球は、想定の軌道よりも上の位置を通るため……』
あさみん『まるで浮き上がっているように見え、バットはボールの下を振ってしまう、という訳です』 すわわ「これを攻略するためには、バットをスイングする位置を、通常の直球よりも上でイメージして振ること――」
きゃん「そっか! それが、ボール3個分上、ってことなんだ!」
あいにゃ「おーい、ありさー!! ボール3個分、上振ってー!!」
あんちゃん(ありさちゃんは、私たちの中の誰よりも、スイングスピードが速い)
あんちゃん(だから、しっかり引きつけて。しっかりボール見て、狙いを定めて!)
あんちゃん(ありさちゃんなら――きっと、大丈夫!)
ありしゃ(あんちゃん……)
フッ みもりん(つかんできた――みたいだね)
みもりん(だけど――!)
えみつん「」
ザッ…
シュバッ!
ありしゃ「……!」
ピクッ
ズバン!
\ボール!!/
ひなひな『小宮、冷静に見極めて、ボール!!』
あさみん『小宮選手は、スイングスピードに自信がある分、ギリギリまで待ってボールを見極められるんです』
あさみん『伊波選手の一言で、落ち着きました。見えてますよ、小宮選手は……!!』 ありしゃ(あんちゃんは――自分のことを、頼りないリーダーだ、ってよく言ってるけど)
ありしゃ(それでもね。やっぱり、私たちのリーダーは、あんちゃんだよ)
ありしゃ(だって――)
ありしゃ(こうして、他の誰かを、自然と勇気づけてくれるもの)
ありしゃ(そして――)
えみつん「………」
パシッ
ありしゃ(――えみつんさん)
ありしゃ(覚えてますか? 初めて、会った時のこと) ありしゃ(一緒の舞台に立って、楽屋で色々お話して)
ありしゃ(その時に、ラブライブっていう、私の知らない世界があることを知った)
ありしゃ(挑戦したくなった。未知のステージの中で、自分がどこまで行けるのか)
ありしゃ(貴方のお陰で――私は、こんなにも素晴らしい世界を、知ることが出来たんです)
グッ…
ありしゃ(だから――その、お礼に)
ありしゃ(貴方に―― 一糸、報いたい)
えみつん(ありちゃん……)
ニッ… ありしゃ(そうだ。ドームで、μ'sのライブを見た時も――そう)
ありしゃ(衝撃を受けて、怖さすら感じた。だけど――それだけじゃなかった)
ありしゃ(いつか、私たちも、こんな舞台に立ってみたい。諦めたくない。挑みたい!!)
ありしゃ(そうだった。挑戦する心――それこそが、私。それこそが――Aqours)
えみつん「」
ザッ…
シュバッ!! ありしゃ(それに――)
グッ
ありしゃ(私は――ダイヤなんだから)
ありしゃ(誰よりも、スクールアイドルを愛する女の子)
ありしゃ(そんな、私が。ダイヤが。諦めるのは――)
ブンッ
カッ!!
ありしゃ(――ぶっぶー、ですわ!!) キィンッ!!
みもりん「!!」
ひなひな『打っ、』
ガッ!!
ひなひな『ああっ、三塁ベースに当たった!!』
ひなひな『鋭い打球、ベースに当たり、高くバウンドする!!』
オオオオオッ!?
シカコ「なろっ!!」
ダダダッ!
パシッ!!
ひなひな『ああっと、素早くバックアップに飛び出していたレフトの久保!!』
ひなひな『転々と転がろうとするボールを止め、長打は阻止!!』
ひなひな『二塁ランナーの伊波は、三塁ストップ!!』
あんちゃん「……!!」
タタッ ひなひな『しかし小宮、新田の直球をとらえました!! 伊波に続き、ツーアウトからの連打!!』
あさみん『しっかり引きつけて、ボールをとらえ――非常に速い打球でしたね!』
あさみん『小宮選手らしさを発揮したバッティングと言えますよ!!』
ワアアアアッ!!
あんちゃん(やったね、ありさちゃん……!)
ハァ…フゥ
ありしゃ(えみつんさん……)
グッ…!
ありしゃ(貴方から教わった、この世界)
ありしゃ(私たちは、まだ――止まりたくない!) きんぐ「……!」
きんぐ(あんちゃんだけじゃなく……ありさまで……!)
きんぐ(本気……なの……!?)
しゅか「ありさー!! ナイスー!!」
あいにゃ「そうよ、まだまだ……!!」
りきゃこ「次は……!!」
ひなひな『崖っぷちから、執念の連打で、粘るAqours!!』
ひなひな『ツーアウト、ランナーは一・三塁!! 全ては、このバッターにかかっています!!』
ひなひな『続く、バッターは――』
『5番、サード、高槻』
ワアアアアッ!!
きんぐ「………!!」
ギュッ…! いや伸びる球の性質とか実際に体感してないと分からんぞ
さてはオメェけぇけんしゃだな?? ほんとこの>>1の野球への造詣とこだわりは感心する ひなひな『9回裏、ツーアウトから3番・4番に連打が飛び出し、ランナーは一塁・三塁!!』
ひなひな『このチャンスに、5番の高槻が臨みます!!』
ワアアアアッ!
きんぐ「……!」
きんぐ(よりによって……)
きんぐ(ここで……私……)
みもりん「………」
みもりん「すみません、タイムで」
ひなひな『おっと、ここでキャッチャー三森、マウンドの新田のもとに向かいます』
あさみん『上手いですね。攻撃の流れが出来かけているので、一旦、間を取りましたね』 みもりん「……えみつん」
えみつん「すず……」
みもりん「3番と4番の子は、タイミングが合ってきてた」
みもりん「だけど、ここから先の打順は、今まで見たとこ、そこまでバッティングの技術は高くない」
みもりん「力みすぎずに。落ち着いて放れば、大丈夫」
えみつん「うん……」
えみつん「でも……すず。やっぱり私、最後まで、全力でいくよ」
みもりん「えみつん、だけど……!」
えみつん「それが――」
えみつん「先輩としての、礼儀だと思うから」
みもりん「………!」
みもりん「……わかった。ここまで、一緒にやってきたんだもん」
みもりん「えみつんに、任せるよ」
えみつん「……ありがと、すず」
ザッザッ…
みもりん(だけど……えみつん)
みもりん(これ以上……“全力”で、投げると……) ふりりん「かなこー!!」
あいにゃ「頑張ってー!!」
ひなひな『さあ、バッテリー元のポジションに戻り、試合再開!!』
ひなひな『バッターボックスに立つ高槻、しかしチャンスとはいえ、後が無い状況に変わりはありません!!』
きんぐ「………」
ドキ…ドキ…
ひなひな『セットポジションから、新田、第1球!!』
シュバッ!!
きんぐ「………!!」
ズバンッ!!
\ストライク!!/ きんぐ「………!」
ひなひな『第1球、高槻、手が出ない!! ストライク!!』
ひなひな『バットを動かすことも出来ません!!』
きんぐ(やっぱり……速い……!!)
きんぐ(こんなの……当てられる訳……)
あいにゃ「きんちゃーん、頑張ってー!!」
しゅか「振れって……! 振らなきゃ、どっちみち……!!」
あんちゃん(きんぐ……!) ひなひな『新田、第2球!!』
シュバッ!
きんぐ「……っ!!」
ブンッ!
ズバッ!!
\ストライク!!/
ひなひな『今度はボール球に手が出てしまった!! ツーストライク!!』
ひなひな『あっという間に追い込まれた!!』
アアアアー… あんちゃん「きんぐー!! ストライクとボール、はっきりしてるよ!!」
あんちゃん「落ち着いて、よく見て―!!」
ありしゃ「ボール3つ分上だよ!! かなこー!!」
きんぐ「くっ……! はぁ、はぁ……!」
きんぐ(簡単に言うけどさ……! 私は、あんちゃんやありさみたく、運動神経良くないんだよ……!)
きんぐ(5番に入ってるのだって……単に、ちょっとみんなより、体格良い、ってだけで……)
きんぐ「………」
きんぐ(そうだよ……大体、一番最初にやった、合宿の時から……)
きんぐ(誰よりも体力無いわ、その上、足捻挫して、練習も出来なくなるわで……)
きんぐ(何やってんだろ……私……って……)
ふりりん「かなこ……」
きゃん「………」
あんちゃん「………」 あんちゃん「……きんぐー!!」
きんぐ「――!?」
ハッ
あんちゃん「」ニコッ
あんちゃん「大丈夫だよ! さっきだって、きんぐのタイムリーで同点になったんじゃん!!」
あんちゃん「諦めないで!! 絶対、絶対、大丈夫!!」
きんぐ「………!!」
きんぐ(……なんでよ……)
きんぐ(なんで、まだ……諦めてないの……?)
きんぐ(なんで……私を……信じて、くれるの……?)
きんぐ「ほんと……」
ボソッ
きんぐ「……馬鹿……」 えみつん「」
ザッ…
シュバッ!
きんぐ「………っ!!」
ピタッ…!
バシィ!!
あさみん『振っ……!?』
ひなひな『ハーフスイング!! バット、止まったか!?』
\…ボール!!/
ひなひな『……判定はボール!! 振っていません!!』
ひなひな『ギリギリのところで、振りかけたバットを止めていました、高槻!!』
あさみん『際どい……!!』
オオオオオッ…
ふりりん「あっ……ぶなっ……!!」
きゃん「し……心臓、止まる……!!」 きんぐ「………っ!!」
ハァ…ハァ…
ドクンドクン…
あんちゃん「………!」
グッ…
きんぐ「………」
チラッ…
きんぐ(あんちゃん……)
きんぐ(……わかってる。本当は、私だって、わかってる)
きんぐ(こんな所で、終われない、ってことくらい……) ありしゃ「かなこー!!」
しゅか「頑張れぇー!!」
あいにゃ「きんちゃん、諦めないで!!」
きんぐ(みんな……)
きんぐ(……馬鹿ばっかり)
フッ…
きんぐ(……10代の頃は、ずっとひとりだったから)
きんぐ(最初の合宿の時……みんなの輪に入っていけるのか、怖かった)
きんぐ(だけど……こんな、体力無い情けない私を、みんな、笑って受け入れてくれて……)
きんぐ(気づいたんだ。本当は、誰かと比べられて、自分が未熟だって、周りにバレるのが嫌だっただけなんだ――って)
きんぐ(そんなこと、みんなの前では、隠す必要ないんだ、って……) あんちゃん(きんぐ……!)
あんちゃん(私たちは……背が高いからって、それだけの理由で、きんぐを5番にした訳じゃない)
すわわ「どこか冷めた目線……と言ったら、聞こえは良くないけど」
すわわ「いつだって、一歩引いて、冷静に周りを見る目を持ってる。そう、花丸みたいに」
すわわ「その、かなこの冷静さが――チームを救う時が、きっと来る」
すわわ「だから……!」
あいにゃ「きんちゃん……!」
きんぐ(……そうだ……)
きんぐ(それに、私には、夢がある。やりたいことが)
きんぐ(東京ドームに立つこと。そして――)
グッ…
きんぐ(花丸を――センターに、すること) きんぐ(私はデカいし、可愛い系じゃないし)
きんぐ(私が、花丸やってていいのかって――悩んだことだって、たくさんあった)
きんぐ(だけど、今は違う。マルちゃんのこと、誰にも渡したくないくらい、大好きだから)
きんぐ(だから――)
えみつん「はぁ……ふぅ」
ザッ!
ひなひな『新田、第4球!!』
シュバッ!! きんぐ(あきらめて――)
グワッ!
あいにゃ「!?」
すわわ(バットを、真上に振り上げた――!?)
きんぐ(――たまるかっ!!)
ブンッ!
ガキィッ!!
ひなひな『だ、』
あさみん『大根切りぃ!?!?』
ワアアアアッ!? えみつん「――!!」
ピタッ
みもりん(当てた……!!)
みもりん「ショートぉ!!」
ひなひな『真上から振り下ろしたバットに、半ば無理やり当てた打球は、転々と内野を跳ねる!!』
ひなひな『ピッチャーとサードの間、微妙な位置!!』
ひなひな『ピッチャー新田は――動けず!! ショートPile、飛び出す!!』
ぱいちゃん「任せて!!」
ダダッ!!
すわわ「――!?」
ピクッ
すわわ(ピッチャー、動かない……?) ひなひな『その間、打った高槻、懸命に走るっ!!』
きんぐ「はぁ、はぁ!!」
ダダダダッ!!
きんぐ(私だって……私だってぇ!!)
ワアアアアッ!!
ぱいちゃん「――ファースト!!」
シュッ!
きんぐ「うああああああっ!!!」
ズザザザザッ!!
ひなひな『頭から滑り込んだぁぁぁっ!!!』
ひなひな『微妙なタイミング!! セーフか、アウトか!?』
きんぐ「……っ」 \セーフ!!/
ワアアアアアッ!!
ひなひな『セェェェーフ!!!』
ひなひな『高槻、渾身のヘッドスライディング!! 間一髪、間に合いましたぁぁぁ!!!』
ふりりん「やっ……!!」
あいにゃ「たああああっ!!」
しゅか「よく走った、きんぐ!!」
きゃん「かなこ……!!」
ありしゃ「よしっ……!」
あんちゃん「うっ……」
あんちゃん「しゃああああっ!!!」
ひなひな『その間に、三塁ランナーの伊波、ホームイン!!』
ひなひな『Aqours、高槻の執念のタイムリー内野安打で、ついに新田から1点をもぎ取りましたぁぁぁ!!!』
オオオオオオッ!!
【μ's 13―5 Aqours】 ひなひな『まさかの、強引に上から振り下ろす、大根切りのようなバッティングで……!』
あさみん『ですが――決して、高槻選手は、ヤケになった訳ではないと思います』
あさみん『あの場で、冷静に――出塁できる可能性の高い、最善手を選択した結果ではないでしょうか』
ひなひな『最善手……? あの、大根切りが?』
あさみん『ヒットを打つ、四死球を狙う。出塁する方法は数あれど』
あさみん『最も出塁できる可能性が高く、かつ、最も守備側が嫌がるのは――』
あさみん『――“ゴロを転がすこと”です』
ひなひな『ゴロを――?』 あさみん『内野を抜けて、ヒットになれば言うに及ばず』
あさみん『内野安打になるかもしれない。ヒットでなくても、ボールがイレギュラーしてエラーになるかもしれない』
あさみん『投げたボールが、悪送球になるかもしれない。ファーストが、ボールをこぼすかもしれない』
あさみん『内野にゴロを転がすということは、ヒットのみならず、エラー等の面で見ても、色々なアクシデントが最も生まれやすい』
あさみん『守備としてみれば、一番イヤな形なんですよ』
ひなひな『だから高槻選手は、内野にボールを叩きつけた……!?』
あさみん『横からのバッティングで――ボール3個分、上を見極め、新田投手の速球をミートして飛ばすことは、彼女にとっては難しかった』
あさみん『でも、縦方向からであれば、強引に当てて、ボールを転がすことは出来る』
あさみん『結果、内野安打になりましたが――』
あさみん『これは、咄嗟に、自分が出来る最善手を考え、挑んだ――高槻選手の、何が何でも出塁する、という意識が生んだ、ヒットだったんです』
きんぐ「………」 しゅか「やったー、あんじゅ!!」
ふりりん「えみつんさんから……ついに、点を……!!」
あんちゃん「うん! でも、最後まで諦めなかった、きんぐのお蔭だよ!」
きゃん「あれ……かなこ?」
すわわ「ヘッドスライディングしたまま、起き上がらないけど……」
あいにゃ「まさか、怪我とか……!?」
きんぐ「………」
きんぐ「……う……くっ」
ポロ…
きんぐ「負けたくない……負けたくない……!!」
ポロ…ポロ…
きんぐ「ぐ、ひっく……!! 私だって……私だってぇ!!」
きゃん「……!」
あいにゃ「きんちゃん……」 きんぐ「………っ」
ゴシゴシッ
きんぐ「……よおぉーーっし!!」
ガバッ!
きんぐ「どおだー、見たかー!! 私だってやる時はやるんだからなー!!」
きんぐ「ドーム、絶対立ってやる!! そんで次のセンターはマルちゃん!!」
ありしゃ「……ふふっ」
あんちゃん「きんぐ……!」
クスッ ひなひな『さあ、待望の1点を挙げて、なおもランナーは一塁・二塁!!』
あさみん(完全に沈滞していたベンチに、徐々に活力が戻ってきた……!)
あさみん(そして……バラバラだったAqoursが、また少しずつ、ひとつになりつつある……!)
あさみん(このまま、流れが生まれれば……!)
ジョルノ(1点……取られたか)
ジョルノ「どんまい、えみつん!」
シュッ
えみつん「はい、南條さん」
パシッ
ぱいちゃん「ごめんね、えみつん……」
えみつん「もー、なんでぱいちゃんが謝るのー?」
えみつん「それに、今のは……さ。私の方こそごめんね。処理してもらっちゃって」
ぱいちゃん「えみつん……」
みもりん(あんまり、長引かせたくない……)
みもりん(次こそ……!) あんちゃん「まだいける……まだいける!!」
しゅか「よーっし、次のバッター誰だー!?」
ふりりん「次は……」
りきゃこ「………っ」
『6番、キャッチャー、逢田』
りきゃこ「……!」
ピクッ
あいにゃ「って……りかこ?」
しゅか「ちょっと、次だよー! 大丈夫?」
りきゃこ「あ……うん」
りきゃこ「わ、わかってる。行かなきゃ……!」
ザッ… ふりりん「りかこ、緊張してるの……?」
しゅか「平気? 固くなるなよー!」
りきゃこ「だっ……大丈夫だし!」
りきゃこ「逢田さん、ヒット打てるし!!」
りきゃこ「いっ……行ってくるね!」ヘラッ
ザッ
あいにゃ「りかこ……?」
あんちゃん「………」
あんちゃん(りこちゃん……?) ひなひな『さあ、1点返すも、まだ点差は開いています!!』
ひなひな『流れに乗ることが出来るか!? バッターボックスに入るのは、6番の逢田!!』
ワアアアアッ
りきゃこ「………」
ドクンドクン…!
あさみん「……!」
あさみん(目に見えて、表情が硬い……)
あさみん(いや……それ以上の、何か……?)
ありしゃ「りかこー、落ち着いてねー!!」
りきゃこ「………」
ドクッドクッ
りきゃこ(ツーアウト……後が無い……)
りきゃこ(私が、出なきゃ……終わる……!) みもりん(……物凄く、緊張してるみたいだし)
みもりん(ここで切るよ。えみつん……!)
えみつん「」コクッ
ザッ!
シュバッ!
りきゃこ「――っ!!」
ズバッ!!
\ストライク!!/ ひなひな『ストライク!! 真ん中の球でしたが、逢田、反応できず!!』
ひなひな『チャンスといえど、後が無い状況に変わりはありません!! ここで倒れれば、全てが終わります!!』
ワアアアアッ
りきゃこ「………!!」
ドクンドクン…!
りきゃこ(もう……失敗、出来ない)
りきゃこ(私が、失敗したら……終わる……!!)
りきゃこ(試合も……ライブも……Aqoursも……!!)
りきゃこ(もう、絶対……!!)
ドッドッドッドッ!!
すわわ「……!?」
あいにゃ「りかこ……!?」
りきゃこ「はぁ、はぁ……!!」
ド ク ン ッ
ポロンッ…
ピタッ
ザワ…ザワ…
ザワザワ…!
――ごめんなさい……ごめんなさい……
――ごめんなさい、ごめんなさい……!!
👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b) りきゃこ「はぁっ、はぁっ、はぁっ!!」
ガクガク…!!
みもりん「――!?」
えみつん「……!」
ピクッ
ひなひな『……!?』
ひなひな『逢田選手の、様子が……!?』
ザワザワ…!
あんちゃん「り……」
あんちゃん「りこ、ちゃん……?」
あさみん『まさか……!!』
あさみん(“あの時”の……トラウマ、が……!?) きんちゃんは諦観的に見えて熱い所もあるからなあ…復活してくれて良かった
長くなってもいいから最後まで書ききってほしい 軟式には叩きって言われる戦術すらあるからね
転がせば何かあるとはよく言ったもんよ りきゃこ「はぁっ、はぁっ!! ……っ!! はぁっ!!」
ドッドッドッ…!!
りきゃこ(なっ……なんで……!!)
りきゃこ(なんで、今……!! “あの時”の、ことなんて……!!)
あんちゃん「……!!」
あんちゃん「りこちゃん……まさか……!!」
あいにゃ「“あの時”の……!」
すわわ「1stライブの時の……ピアノの、記憶が……!?」
ありしゃ「りかこー!!」
ありしゃ「ここは、あの時の横アリじゃないの!!」
ありしゃ「落ち着いてー!!」 みもりん(明らかに――様子が、おかしい)
みもりん(だけど――)
みもりん(挑んでくるなら、手は、抜かない。でしょ? えみつん)
えみつん(うん――すず)
えみつん(私に。私たちに、してあげられることは――)
ザッ…
えみつん(――それだけだから!)
シュバッ!
りきゃこ「……っ!!」
ズバン!!
\ストライク!!/
ひなひな『これも真ん中の球、見送ってストライク!!』
ひなひな『バットはぴくりとも動かず、あっという間に追い込まれた!!』
ひなひな『しかし――バッターの逢田は、顔面蒼白』
ひなひな『単なる緊張を通り越して、明らかに様子がおかしく見えますが……!?』
あさみん『………』 あさみん『……もう、後が無い。仲間たちが必死でつないできたけれど、自分が倒れれば、全てが終わる』
あさみん『絶対に、失敗できない。そのプレッシャーの中で――甦ってしまったのでしょう』
あさみん『1stライブの時の――失敗の、記憶。トラウマが』
ひなひな『……!! あの、ピアノ演奏……!!』
あさみん『あれから、1年半以上が経って――克服したと、思っていましたが……』
あさみん『心の奥深くに、未だ、潜んでいたのでしょう。気の毒に……』
ハァハァハァ…
りきゃこ(失敗できない。失敗したら、私のせいで、全部台無しになっちゃう。全てが終わっちゃう!!)
りきゃこ(失敗できない。失敗できない。失敗できない)
りきゃこ(怖い、怖い、怖い怖い怖い……!!)
ガタガタ…!
りきゃこ(……駄目。頭の中がぐちゃぐちゃで、どうしたらいいのか、わかんない……!)
りきゃこ(ただ……怖い! 怖い怖い……!!)
あんちゃん「……!!」
グッ…! あんちゃん「……りこちゃーん!!!」
りきゃこ「!」
ハッ
あんちゃん「大丈夫だよ!! あの時だって、りこちゃん、最後まで弾けたじゃん!!」
あんちゃん「あの時までりこちゃんが、ピアノの練習、誰よりも必死で頑張ってたのだって知ってる!!」
あんちゃん「りこちゃんの力は、こんなもんじゃない!! りこちゃんは凄いんだよ!!」
すわわ「……そうだよ、りかこ!!」
あいにゃ「大丈夫!! もう1回やろう!!」
あいにゃ「大丈夫、絶対大丈夫!!」
りきゃこ「あんちゃん……」
りきゃこ「すわわ……あいな……」
ふりりん「ぐすっ……りかこー!!」
きゃん「ううっ……頑張って……!!」
しゅか「絶対、出来るぞー!!」
ありしゃ「りかこなら大丈夫!!」
きんぐ「自信持ってー!! あんだけ、頑張ってきたじゃん!!」
りきゃこ「……みんな……」 りきゃこ「た……タイム、お願いします」
\タイム!/
りきゃこ「はぁっ、ふぅっ……はぁっ」
りきゃこ(落ち着いて……落ち着け……)
りきゃこ(ここは、“あの時”の横アリじゃない……深呼吸……)
りきゃこ「すぅぅ……はぁぁ……」
りきゃこ「………っ」
ドキ…ドキ…
ひなひな『逢田、一旦打席を外れ、気を落ち着かせているのでしょうか』
あさみん『………』
りきゃこ(……まだ……頭の中、かき回されてる感じだし……)
りきゃこ(正直……怖い、けど……)
りきゃこ(……逃げられない。逃げちゃ、駄目)
りきゃこ(逃げたら、私……きっと、もう、Aqoursのステージに……戻れない……!)
グッ… りきゃこ(ありがとう。あんちゃん、すわわ、あいな……)
りきゃこ(……みんな……)
りきゃこ(“あの時”と、同じ。また、助けられちゃった)
りきゃこ(ごめんね……いっつも。最年長のくせに、頼りにならなくて)
りきゃこ(みんなに、助けられてばかりで……)
りきゃこ(それに……)
りきゃこ(――梨子ちゃん)
ひなひな『逢田、再び打席に入ります! 大丈夫でしょうか?』
リキャコォォォ!!
ガンバレェェェッ!!
\プレイ!/
りきゃこ(“あの時”――失敗した後の、2回目の演奏)
りきゃこ(ほとんど、記憶が残ってなくて――私の中の梨子ちゃんが、弾いてくれたような気がする)
りきゃこ(それだけじゃない。Aqoursのみんな、あの時声援を送ってくれた、ファンのみんな――)
りきゃこ(たくさんの人に――私は、助けてもらった……)
りきゃこ(……だから)
キッ…! りきゃこ(今度は――私自身の、力で――立ち直らなきゃ)
りきゃこ(私は――Aqoursのみんなに。ファンのみんなに。梨子ちゃんに――)
りきゃこ(たくさんのみんなに、助けられて、支えられて――今、ここにいるから)
えみつん「」
ザッ…
りきゃこ(いつまでも、助けられてるだけじゃ、駄目だから)
りきゃこ(だから、今度は私が、みんなを――引っ張ってあげたいから――!)
シュバッ!
りきゃこ「っ!!」
ピクッ
バシィ!!
\ボール!/ ひなひな『……ボール!! バット動きかけましたが、よく止めました、逢田!!』
オオオオオッ…
あさみん『この回、新田投手は、ストライクとボールがはっきりしてきています』
あさみん『速さに、釣られることなく。冷静に、見ていけば……!』
あんちゃん「りこちゃん……!」
あいにゃ「お願い……!!」ギュッ
りきゃこ「はぁ、はぁ……」
グッ…
りきゃこ(それに……私には、やり残したことがあるから。東京ドームで、やりたいことが)
りきゃこ(それは……)
りきゃこ(――9人で、もう一度。“想いよひとつになれ”を、歌うこと)
りきゃこ(必ず、やり遂げたい。今度こそ、9人で)
りきゃこ(私の中での、“1stライブ”は――まだ、終わっていないから)
りきゃこ(9人で、またあの歌を歌えた時。初めて、私の“1stライブ”は、終わると思うから)
りきゃこ(もう一度、9人で。みんなで。心を、想いを、ひとつにできるように――!!) ひなひな『ツーストライクワンボール!!』
ひなひな『追い込んでいる新田、第4球!!』
えみつん「」
ザッ…
トントンッ
りきゃこ「……想いよ、ひとつになれ……」
りきゃこ「……この、ときを、待っていた……♪」
トントンッ
みもりん「――?」
みもりん(何? 歌ってる……?)
あさみん『……!?』
あさみん(新田さんのピッチングに合わせるように、かかとで、リズムを刻んでいるような……?)
あさみん(まさか……!?) えみつん「」
グワッ…
トントンッ
りきゃこ(ラ――ド#――シ――ソ#――レ――ド# シ ド#)
…シュバッ!!
りきゃこ(――グリッサンド!!)
シュッ
あさみん(――“シンクロ打法”!!)
カッ!! キィィン!!
ひなひな『打ったぁぁぁぁ!!!』
ウオオオオオッ!?
えみつん「――!!」
ひなひな『セカンドの頭、越えたぁぁぁっ!!!』
ひなひな『ボールは右中間を転がる!! 長打になるぅぅぅ!!!』
ワアアアアアッ!!
あいにゃ「きゃあああああっ!!!」
しゅか「りかこぉぉぉっ!!!」
ひなひな『ランナー、一人目もホームイン!!』
ひなひな『そして、二人目もっ……!!』
ひなひな『ホームイィィン!!!』
ウオオオオオッ!!
ひなひな『打った逢田は二塁へ!!』
ひなひな『逢田、まさかまさかの2点タイムリーツーベースヒット!!』
ひなひな『Aqours、この回、3点目ぇぇぇっ!!!』
【μ's 13―7 Aqours】 ひなひな『自らのトラウマに打ち勝つ一打を放った逢田!!!』
ひなひな『想いは、ひとつになりましたぁぁぁっ!!!』
ワアアアアッ!!
りきゃこ「……!!」
ハァ…ハァ…
りきゃこ(やった……やった……!!)
ジワッ…
りきゃこ(良かった……諦めなくて……!)
グス…
あんちゃん「りこちゃん……!!」
あんちゃん「やっぱり、すごいよ!! りこちゃーん!!」
あさみん『今の、逢田選手の一打……』
あさみん『あれは、まさしく――“シンクロ打法”』 ひなひな『シンクロ打法?』
あさみん『はい。スポーツ医学者の手塚一志氏によって存在が提唱された、バッティング技術です』
あさみん『バッティングにおいては、“タイミング”が重要であることは、先の南條さんのホームランの際にお話ししました』
あさみん『シンクロ打法とは、投手の投球動作と打者の打撃動作を同調させることで、インパクトのタイミングを合わせる技術のことです』
ひなひな『……姉様、日向さんにもわかるようにお願いします』
あさみん『そうですね……簡単に言えば、じゃんけんのタイミングです』
ひなひな『じゃんけん?』
あさみん『じゃんけんをする時は、「じゃん」「けん」「ぽん」の掛け声に合わせて、手を出しますよね』
あさみん『「じゃん」「けん」のタイミングが合わなければ、お互い「ぽん」に合わせてじゃんけんをすることが出来ません』
あさみん『シンクロ打法とは、言ってみれば、この「じゃん」「けん」のタイミングを、投手と打者の動きに置き換えて、合わせることなんです』
ひなひな『あー、なんとなくわかってきたかも』 あさみん『具体的には、投手が投げる際、“足を上げてから、重心を落として、ボールをリリースするまで”のタイミング』
あさみん『この間のタイミングに、打者も合わせることが出来れば、インパクトのタイミングはドンピシャです』
あさみん『このタイミングを合わせるため、打者はバットを揺らしたり、足を上げたりと、体の一部を動かしますが』
あさみん『最もポピュラーなのは、投手が重心を落とした瞬間に、“かかとを踏み込む”動作ですね』
あさみん『これにより、投手の投球動作と打者の打撃動作が同調し、インパクトのタイミングを合わせることが出来るんです』
あさみん『有名な選手では、かの松井秀喜選手が、巨人時代にこのシンクロ打法を取り入れたのち、本塁打王を獲得しています』
ひなひな『大切なのは、タイミングを合わせること……!』 あさみん『先程の打席。逢田選手は、何かを口ずさみながら、リズムをとるように、かかとをトントンと踏んでいた』
あさみん『おそらく、何かのリズムが、新田投手の投球動作と同調することに、気づいたのでしょう』
あさみん『そして、バッティングのタイミングを合わせることで、長打を生んだ――』
ひなひな『正に、シンクロ打法……!!』
あさみん『逢田選手が、このシンクロ打法を知っていたかどうかは、定かではありません』
あさみん『しかし、トラウマを乗り越えて、諦めない彼女の想いが、この奇跡を生んだ……!』
りきゃこ(ありがとうね……梨子ちゃん)
りきゃこ(引っ張っていくって決めたそばから、なんだけど)
りきゃこ(梨子ちゃんの、ピアノに……また、導いてもらえた……!)
りきゃこ(そして――Aqoursのみんな。みんながいるから、頑張れる)
りきゃこ(ひとりじゃ、ない……!)
あさみん(そして――“奇跡”というものは)
あさみん(連鎖する――!) ありしゃ「よし、これで3点!!」
きんぐ「まだまだいくぞー!!」
あんちゃん「ありさちゃん、きんぐ……!」
きんぐ「……あんちゃん」
きんぐ「あたしさ。奇跡って言葉、あんまり好きじゃないんだけど」
あんちゃん「え?」
きんぐ「だけどさ。夢を声に出せば、実現できる。口に出さなきゃ、実現できないって思うから」
きんぐ「だから、言うね」
ニッ
きんぐ「――勝つからね! 絶対!!」
あんちゃん「……!!」
あんちゃん「きんぐ……!」 しゅか「……よーし! まだまだ続いてくぞ!!」
ふりりん「次は……!!」
すわわ「………」
シャンシャン
『7番、ライト、諏訪』
ふりりん「って、おすわ! こんな時まで、スクフェス!?」
しゅか「んなこと、やってる場合じゃ……!!」
\FULL COMBO/
\ダイブイイカンジ!/
すわわ「ん。おっけー」
スッ
すわわ「……じゃ、行ってくるね」
スタスタ… ふりりん「おすわ……大丈夫?」
しゅか「うーん、相変わらずマイペースというか、何考えてるかわからないというか……」
あんちゃん「……大丈夫だよ」
あんちゃん「ああ見えて……おすわは、熱いから」
あいにゃ「うん……」
あいにゃ「……ん?」
あいにゃ(すわわ、ベンチの上に、スマホ置きっぱなし……)
あいにゃ(画面に、さっきのスクフェスの結果画面が……)
あいにゃ「……え!? これって……!!」
ありしゃ「なになにー?」
きんぐ「これって……『みら僕』のMASTER譜面!?」
ありしゃ「それ、すごく難しいやつじゃなかった?」
きゃん「それを、フルコンボって……すご……」
きんぐ「あ、あのさー……まさか、だけど……」
きんぐ「すわわ……MASTERやって、“速さ”に、目を慣れさせた、とか……」
あんちゃん「……!」 ワアアアアッ!!
スワワァァァッ!!
ひなひな『さあ、3点返して、なおもAqoursの攻撃は続きます!!』
ひなひな『打席に立つのは、7番の諏訪!! Aqours側応援席も、にわかに盛り上がって参りました!!』
あさみん(あれほどμ's一色だった球場の雰囲気も、変わってきた……!)
あさみん(流れが、生まれてる……!)
りっぴー(あれだけ、崖っぷちの状態から、ここまで粘るなんて……)
りっぴー(やっぱり、この子たち……)
シカコ「えみつーん! こっからの打順はノーヒットだし!」
シカコ「落ち着いて、締めてこー!!」
うっちー「………」
うっちー(だけど……この、7番の子)
うっちー(私的には……この子が、一番、イヤらしい……)
すわわ「………」 みもりん(そう。ここからの7、8、9番は、ここまでノーヒット。パワーにも欠ける)
みもりん(この回の粘りを見てると、油断は出来ないけど……)
みもりん(しっかり、ストライクを取っていけば……えみつんの球を、まともに打ち返すことは、難しいはず!)
スッ…
えみつん「……ふぅ……」
ザッ…
すわわ「………」
すわわ(……ここまでで、気づいたことが2つある)
すわわ(まず、この回。8回までと比べて、ストライクとボールが、はっきりしてきた)
すわわ(もともと、コントロールにバラつきはあったけど……ボールは、見極めやすくなってきてる)
すわわ(そして――もうひとつ)
すわわ(それを、確かめるには――)
シュバッ!
すわわ「――」
スッ!
あさみん『!』
ひなひな『バントの構え――!』 くっすん「!!」
ダッ!
そらまる「!!」
ダダッ!
スッ…
ズバン!!
\ストライク!/
ひなひな『バントの構えから、バットを引きました!!』
ひなひな『結果、ボールはストライクゾーンに入り、ワンストライク!!』
オオオオッ…
あさみん『μ'sの先発、内田投手攻略の糸口となったバスター作戦を考案したのは、この諏訪選手でした』
あさみん『今回も、しっかりボールを見極めるつもりですよ……!』
すわわ「………」
きゃん「お、おすわ……?」
あいにゃ「………」
あいにゃ(すわわは……ぼーっとしてるように見えて、いつもちゃんと、しっかり考えてる)
あいにゃ(きっと、今回も……何か……!) すわわ(……やっぱり……)
すわわ(今、バントの構えを見せた時。咄嗟に前に出てきたのは、サード、そしてセカンド)
すわわ(普通は、サードとファーストだけど……ファーストの南條さんは、膝を負傷してるから、代わりにセカンドが出てくるのは理解できる)
すわわ(だけど――)
すわわ(なぜか。ピッチャーの新田さんは、全く、動く気配が無かった……)
すわわ(あいあいが、バントでフライを上げた時も。きんぐが、ゴロを転がした時も)
すわわ(本来、動いていいはずのピッチャーが、全く動かなかった……)
すわわ(“動かない”のか――それとも)
スゥ…
すわわ(“動けない”のか……)
うっちー「……!」
ジョルノ「………」
ジョルノ(勘付かれた……か?) みもりん(……なんか、ヤな雰囲気)
みもりん(とにかく――えみつんのためにも)
みもりん(早く終わらせなきゃ……!)
すわわ「………」
スッ…
ひなひな『諏訪、やはりバントの構え!!』
ひなひな『とにかく冷静に、ボールを見ていこうということでしょうか!?』
えみつん「ふぅー……」
ザッ…
シュッ!!
すわわ「――」
スッ
バシィ!!
\ボール!/ ひなひな『第2球目はボール! 諏訪、あくまでマイペースに、投球を見ます!!』
あさみん『……諏訪選手のここまでの成績は、フォアボールひとつに三振が3つ』
あさみん『記録だけで見れば、まるで当たっていないように見えます。しかし、その実……』
あさみん『第1打席では、それまでAqoursのバッターが手も足も出なかった内田投手の、スライダーと直球を冷静に見極め、バットに当てた』
あさみん『第2打席では、バスターで揺さぶりをかけつつ粘り、貴重な四球を選んだ』
あさみん『諏訪選手は、Aqoursの中で、実は最も選球眼が良く――そして、冷静な頭脳を持っている』
あさみん『きっと、仕掛けてくるはずですよ。この打席でも……!』
ひなひな『……!』 バシィ!!
\ボール!/
ひなひな『第3球目も見た! ボール!!』
ひなひな『あくまで冷静に、マイペースに! 新田の投球を見極めています!!』
オオオオッ…
あいにゃ「すわわ……」
しゅか「粘ってけ……!」
すわわ「……ふぅ……」
すわわ(冷静……マイペース……)
すわわ(みんな、私のこと、そう言うけど。別に私は、そんなんじゃない) すわわ(本当は、人一倍臆病で)
すわわ(色々考えて、口に出そうとするけれど……その言葉を口にした後のこととか、また色々考えちゃって、結局何も言えなくて……)
すわわ(そう。ただ単に、怖がりなだけ。声優になろうって、色々オーディション受けたのも……)
すわわ(才能がなくて、自信が無い自分を変えようと……必死だったんだと思う)
すわわ(だけど……)
キッ…
すわわ(果南に出会って。Aqoursに出会って。たぶん、ちょっとずつ、変われてきた)
すわわ(臆病にならなくてもいい。出来ないことがあっても、出来るまで頑張ればいいんだって……)
すわわ(私は、果南と……Aqoursのみんなに、教えてもらったから……)
グッ…
すわわ(大切な――みんなとの、ステージ)
すわわ(終わらせたくない……!) えみつん「………」
フゥ…ハァ
みもりん(えみつん、疲れが出てきてる……)
みもりん(勝負だからって――あんまり、力みすぎないで)
みもりん(しっかり、ストライクゾーンに投げてくれれば、大丈夫だから)
みもりん(えみつん――!)
えみつん「――」
ザッ…!
すわわ(果南――)
すわわ(本当は私も、果南みたいに――力が強くて、運動神経も良ければいいんだけれど)
すわわ(私には――こんな風に、粘って四球を狙うくらいしか出来ない)
すわわ(だけど――)
グワッ
シュバッ!!
えみつん(あっ……!?) すわわ(いつか――私も)
すわわ(貴方みたいな、強い人になりたい)
ギュオッ!!
あさみん『!!』
ひなひな『あぶな――!!』
ありしゃ(頭に――!!)
あんちゃん「避けっ、」
すわわ(大好きな、)
すわわ(果南みたいに――)
ガツンッッ!!
あいにゃ「すわわあああぁぁぁぁっ!!!!」 今度はシンクロ打法か
引き出しの多さもすごいけどそれをキャストのエピソードに上手く絡ませてるのもすごい 野球についてよく知ってるなあと感心するけど
物語的には消化試合感が半端ないな
どっちが勝つかわからない感じがよかったのに 終盤まで熱い展開でいいな
キャストエピソードはあんまり知らないけど、違和感なく読めてる えみつん前に腰やっちゃってるからなぁ
諏訪さん件は元ネタあるのかな? きんちゃんやすわわのモノローグはG'sのインタビューが元ネタっぽい? 乙、ホント野球とラブライブ両方にめちゃ詳しいな
草野球で良くある死球よけてバットに当ってるパターンなら良いが… りきゃこがドームで9人版想ひと歌いたいって所やきんちゃんが夢は口に出せば実現できるって言う所とか
何気に4thのネタも入ってるのは流石と思う 右翼「(レーザービームしたとこで来年の査定上がるわけないし」 りきゃこ「っ!!」
りきゃこ(思わず――息を呑んだ)
りきゃこ(新田さんの投げた球が――)
りきゃこ(すわわの、頭に直撃して)
りきゃこ(ヘルメットが、弾き飛んで)
りきゃこ(そのまま、すわわの体が、前のめりに倒れて――)
すわわ「――…」
バタンッ
りきゃこ「すわわ!!!」
あさみん『……!!』
ひなひな『に、新田の投げた球が、諏訪の頭に直撃!!』
ひなひな『倒れこんだ諏訪、大丈夫でしょうか!?』
ワアアアアッ!!
あいにゃ「すわわぁ!!!」
ズキッ!
あいにゃ「いっ!!」
きんぐ「ちょ、あいな! 足痛めてるんだから、飛び出したら……!!」
あいにゃ「でも、すわわが、すわわが!!」 えみつん「しまっ……!!」
ダッ!
えみつん「っ!!」
ガクッ!
くっすん「えみつん!」
みもりん(まずっ……!! えみつん、力みすぎて、球がすっぽ抜けた……!!)
みもりん「だ、大丈夫!?」
あんちゃん「すわわぁぁぁぁ!!」
ダダダッ!
すわわ「………」
すわわ「……っ……」
ムクッ…
あんちゃん「ああぁーー……あ?」 すわわ「……つぅ……」
あんちゃん「すわわ!!」
ありしゃ「大丈夫なの!?」
すわわ「……ぁぁ……あんちゃん……ありさ……」
すわわ「……ん……だいじょう、ぶ……」
フラッ
ありしゃ「って、大丈夫じゃないでしょ!」
あんちゃん「無理しないで! つかまって……!」
すわわ「……ん……ごめん……」
ありしゃ「とりあえず、一旦ベンチに……!」
えみつん「――ななかちゃん!」
すわわ「……!」
あんちゃん「えみつんさん……」
えみつん「――ごめん!! ごめんなさい!!」
バッ あんちゃん(えみつんさんは、すわわの目の前で――深々と、頭を下げた)
えみつん「ほんとにごめんなさい! 謝って済む問題じゃないけれど――」
えみつん「だけど――!」
すわわ「………」ハァハァ
すわわ「……頭を上げてください。新田さん」
すわわ「試合……勝負……なんですから。こういうこともあります」
すわわ「誰のせいでも、ないですし……全然、大丈夫です……」
ありしゃ「すわわ……」
すわわ「最後まで……」
すわわ「……やりましょう」
えみつん「……!!」
あんちゃん「……ほら、すわわ、つかまって……」
ザッ…ザッ…
ひなひな『諏訪、伊波と小宮に抱えられ、一旦ベンチに退きます!』
あさみん『大事に至らなければいいですが……』
ザワザワ…
えみつん「………」
みもりん(強い……子、だね)
みもりん(見た目に、よらず……) しゅか「はい、すわわ、冷たいタオル!」
ふりりん「頭に当てて! とりあえず、横になって!」
すわわ「……ん……ありがと……ちびーず」
あいにゃ「すわわぁ……!」オロオロ
すわわ「……あいな……大丈夫、だよ」
すわわ「……それよりも」
キッ…
すわわ「みんなに……伝えときたいことが、あるの」
きんぐ「……え?」
きゃん「伝えときたい……こと?」
すわわ「ずっと……考えてた。新田さんを、どうやって、攻略したらいいか……」
すわわ「それで……気づいたことが、2つ……ある」
あんちゃん「……!!」 すわわ「まず……ひとつ目」
すわわ「9回に入って、新田さんは……ストライクの球とボールの球が、はっきり分かれてきた」
すわわ「前から、コントロールにばらつきはあったけど……疲れが出てきたのか……」
ありしゃ「……確かに。前までは、逆にばらつきがあったからこそ、球を絞りにくかったけど……」
すわわ「この回、ボールのコースは、ボールとして、はっきりしてる」
すわわ「スピードに惑わされずに……しっかり、球を見て、ストライクゾーンに甘く入ってきた球を叩けば……」
しゅか「そういうの、なんていうんだっけ? えーと、こーきゅー……」
ふりりん「……好球必打?」
しゅか「そう、それ!」
すわわ「……ん。その通り」
すわわ「そして、もうひとつ……」
スッ…
すわわ「新田さんは――」
すわわ「ベストコンディションじゃない」
あんちゃん「え……!?」 きんぐ「新田さんが、ベストコンディションじゃない……!?」
しゅか「いやいや!! この回、球が甘くなってきたのは、流石に疲れが出てきただけでしょ!?」
きゃん「バッティングでも、ホームランや長打をかっとばしてて……何より、世界一の速さのストレートまで投げてくるのに……!!」
すわわ「いや……たぶん、間違いないと思う」
すわわ「おかしいと思ってた。あれだけ、圧巻のピッチングが出来るのに、なぜμ'sは新田さんを先発にしなかったのか」
すわわ「内田さんから新田さんへ繋ぐリレーを想定していたとしても、おかしいことがある」
すわわ「内田さんは……腕が限界に達して、打ち込まれても……」
すわわ「1イニングでも長く、投げようとしていたように見えた……」
すわわ「まるで……新田さんを、なるべく投げさせたくない、みたいに……」
ありしゃ「……!」 すわわ「そして――新田さんの、フィールディング」
すわわ「あいあいが、ピッチャー寄りにバントフライを上げた時――飛び出してきたのは、キャッチャーの三森さんで、新田さんは動かなかった」
すわわ「かなこが、ゴロを転がした時も――ショートが出てきたけど、やっぱり新田さんは動かなかった」
すわわ「そして、この打席……バントの構えをした時に、動いたのは……セカンドと、サードで」
すわわ「新田さんは、動かなかった……」
ふりりん「確かに……そういう時は、普通ピッチャーも動くよね」
すわわ「結論。新田さんは、“動かなかった”んじゃない」
すわわ「体の、どこかに不調をきたしているために……」
すわわ「……“動けなかった”」
あんちゃん「――!!」ハッ ひなひな『さて、ベンチに退いた諏訪を待つ間、μ's内野陣、マウンド上に集まります』
えみつん「………」
ぱいちゃん「気にしないで……って言う方が、無理かもしれないけど。えみつんだし」
みもりん「そうだね。だけど、あの子の言ってた通り。これは試合、真剣勝負なんだし」
みもりん「次からは注意しつつも、切り替えていこう」
えみつん「うん……みんな、ごめん。ありがとう」
そらまる「だけど……さ。さっきえみつん、飛び出そうとして……転びかけたよね」
くっすん「……痛いの? えみつん……」
えみつん「………」
ジョルノ「………」
ジョルノ「勘付かれた……かもね」
えみつん「……!」 あんちゃん「そういえば……えみつんさん……」
あんちゃん「前に……腰を痛めたことが、あったって……」
ありしゃ「……!」
すわわ「そう。たぶん、それだと思う」
すわわ「完全に、完治はしていなかった。そして徐々に、その腰の故障の影響が、出てきているんだとしたら……」
きゃん「フィールディングが、出来なかったのも……!」
すわわ「本当は、ピッチングをするので精一杯だった。だから、周りの守備陣が、カバーしていた」
ふりりん「そんな……!」
すわわ「まず、キャッチャーというポジション自体が、腰に大きな負担を強いる」
すわわ「そして、ピッチャーとしてのトルネード投法も、体に大きなひねりを加える分、腰にかかる負担は大きいはず……」
すわわ「もしかしたら、もう……体が、悲鳴を上げてる中……新田さんは、投げてるのかもしれない」
あいにゃ「……!」
しゅか「嘘でしょ……」 きゃん「なんで……」
きゃん「なんで、そこまでして……投げ続けてるの……?」
すわわ「………」
きんぐ「………」
きんぐ「……だけどさ。これって、チャンスじゃん」
あいにゃ「……え?」
きんぐ「新田さんの腰は、万全じゃない。だから球も甘くなってきてるし、きっと球威も落ちてくる」
きんぐ「だったら、まだ打ち崩せるチャンスはあるってことじゃん」
ふりりん「ちょ……!」
ふりりん「ちょっと待てよ!! ボロボロのえみつんさんに対して、チャンスとか、打ち崩すとか……!!」
きんぐ「……だって!!」
きんぐ「新田さんは……そこまでして!! 私たちに、全力で、向かってきてくれてるんだよ!!」
ふりりん「!!」
きんぐ「だったら……私たちだって、全力で挑むのが……!!」
きんぐ「礼儀って、もんでしょ!!」
あんちゃん「――!!」
ふりりん「かなこ……」 ありしゃ「……そうだね」
ありしゃ「えみつんさんなら……いつも、全力だから」
ありしゃ「私たちが、たとえ手を抜いたところで……喜ばないと思う」
あんちゃん(………)
あんちゃん(えみつんさん……)
すわわ「……そう。かなこや、ありさの言う通り」
すわわ「これは……チャンスだから」
ムクッ…
きゃん「ちょっと、おすわ!?」
あいにゃ「大丈夫なの!? 動いて……!!」
すわわ「……ん。大丈夫。新田さんだって、頑張ってるんだし……」
すわわ「それに……私。運動苦手で、全然、役に立ててないけど……」
すわわ「……勝ちたい、から」
あいにゃ「!!」
あいにゃ「すわわ……」
すわわ「……じゃ」
ザッ…
すわわ「一塁……行って、くるね……」
ザッ…ザッ… ありしゃ「………」
ありしゃ「……私たちの中で、一番選球眼のいい、すわわなら」
ありしゃ「さっきの球も……本当は、避けられたんじゃないの?」
すわわ「………」
ピタッ
あんちゃん「!!」
あいにゃ「それって……!!」
ありしゃ「すわわ……出塁、するために……次に、つなぐために……」
ありしゃ「まさか……わざと……」
すわわ「………」
すわわ「……別に。避けるのが、下手なだけだよ」
ザッ…ザッ…
しゅか「……無茶するなあ……」
あんちゃん「すわわ……!」
グッ ひなひな『今、諏訪がベンチから出て、一塁に向かいます!!』
あさみん『大事には至らなかったようですが……無茶は、しないでほしいですね』
ワアアアアアッ!!
パチパチパチッ!!
ぱいちゃん「出てきた……!」
ジョルノ「たぶん、避けられたのに。あの子もなかなか、根性あるね」
みもりん「……えみつん」
みもりん「腰のことは、たぶん相手にもバレた。えみつんの球威も、少しずつ、落ちてきてる」
みもりん「ここでもう一度、うっちーに代わってもらうことも……」
えみつん「………」
フゥ…ハァ
えみつん「ううん……彩は、私の代わりに、もうかなり無理しちゃったし……」
えみつん「これ以上投げたら……本当に、腕を壊しちゃう」
うっちー「………」
うっちー(えみつん……) えみつん「それに……あと、アウトひとつ」
えみつん「あんちゃんたちは……Aqoursのみんなは。あれだけ、劣勢に立たされても、諦めずに……全力で、向かってきてくれてる」
えみつん「だったら……私も、最後まで……全力で、臨みたい」
そらまる「えみつん……」
えみつん「でも……これは、私の、わがままだから」
えみつん「もし、みんなのうち、ひとりでも……駄目だって、思ったら」
えみつん「遠慮なく言って。そうしたら私、大人しく、マウンドを降りるから」
えみつん「だから……」
くっすん「――なに言ってんの!? えみつんが頑張りたいなら、応援するに決まってるじゃん!!」
えみつん「……え? くっすん……」
ぱいちゃん「そうだね。えみつんがいたからこそ、ここまで来れたんだし」
そらまる「最後は、リーダーにビシッと締めてもらわないと!」
ジョルノ「……全く。無理はすんなよー。おまいう、だけど」
みもりん「……えみつん。やっぱりえみつんは、ウチらのリーダーだから」
みもりん「みんな、えみつんのこと……最後まで、信じるし。支えるよ」
えみつん「……みんな……」 えみつん「みんな……ありがとう……」
そらまる「さあ、そうと決まれば! アウトひとつくらい、ちゃちゃっと取っちゃえよー!!」
ぱいちゃん「内野に来たボールは任せて!」
ジョルノ「さっさと終わらせて休もうぜー、おい」
くっすん「あとちょっとだよ、えみつん!」
みもりん「……行こう。最後まで、思いっきり!」
えみつん「……!」
えみつん「――うん!!」
ひなひな『集まっていた内野陣も、元のポジションに戻りました!』
ひなひな『勝利は目前!! 切り替えて、最後のアウトを取りに行きます、μ's!!』
ワアアアアッ
あさみん(おそらく、新田さんは、腰の故障が癒えていない……)
あさみん(それでもここまで、耐えてきたのは……流石と言うほか無い……!)
シカコ(ここまで来たら……最後まで、ついてくに決まってるじゃん。えみつん)
りっぴー(全く――ほんとに、馬鹿がつくほど、真面目で、一本気なんだから)
うっちー(でも、だからこそ……貴方は、μ'sの、リーダーなんだよね)
うっちー(……えみつん) ひなひな『ともあれ、7番諏訪はデッドボールで出塁!! まだ繋ぎます、まだ終わりません、Aqours!!』
ひなひな『ツーアウト、一塁・二塁で、試合が再開されます!!』
ワアアアアッ!
ザワ…ザワ…!!
ライバー「おい……ツーアウトから3点返して、まだ一・二塁って……」
ライバー「すげえじゃん、Aqours……!」
ライバー「もしかすると……もしかするんじゃ……!?」
ひなひな『μ'sへの声援一色だった場内、Aqoursの信じられない粘りに、徐々にざわめきが大きくなって参りました……!!』
ひなひな『何やら、異様な雰囲気に……!!』
あさみん(来た……! “流れ”が、来た!!)
あさみん(スタンドのファンの空気も、変わってきてる……!)
あさみん(“これ”を味方につける、その度量が、今のAqoursに備わっていれば……あるいは……!) あんちゃん「……すわわが、望みをつないでくれた」
あんちゃん「何がなんでも出よう、つなごうっていう、すわわの強い意志が……Aqoursを、救ってくれた……!」
あいにゃ「すわわ……!」
すわわ「………」
ハァハァ
りきゃこ(そうだ――すわわだって、想いは、ひとつ。勝つために)
りきゃこ(すわわが繋いでくれた“流れ”は、まだ途切れてない! それに――)
ワアアアアッ!!
スワワワァァァッ!!
イイゾォォォォッ!!
アクアァァァァッ!!
ガンバレェェェッ!! きんぐ「な、なんか……スタンドの、雰囲気が……」
ふりりん「ウチらへの、応援が……大きく、なってるような……?」
しゅか「……みんな、見てくれてるんだよ! まだ、終われないじゃん!!」
きゃん「………」
きゃん(まだ……終われない……)
きゃん(だけど……次は……)
『8番、レフト、小林』
きゃん「……っ!」
ビクッ ひなひな『会場のボルテージは、徐々に徐々に、高まっているように見えます!』
ひなひな『土壇場でのAqoursの粘りが、ファンの心に再び火を灯したのか――Aqoursへの歓声は、大きくなる一方!!』
ひなひな『どこか、異様とも言える雰囲気になってきましたが……』
あさみん『………』
あさみん『……野球の有名な格言のひとつに、こんなものがあります』
あさみん『球場――とりわけ、甲子園には、“魔物が棲む”と』
ひなひな『あ、聞いたことあります!』
ひなひな『野球――特に、高校野球での、逆転劇や信じられないプレーを指した、一種の例えみたいなもんですよね?』
あさみん『ところがね。この言葉は、比喩でも誇張でも、なんでもない』
あさみん『“魔物”は――』
あさみん『――実在する』
ひなひな『え……!?』 きんぐ「きゃん! ほら、次だよ! 早く!」
しゅか「ぜってー終われないぞ! 頼んだからね!!」
きゃん「う……うん……」
きゃん(みんな……本気で……)
ザッ…
きゃん(だけど……私、ここまで、全く打ててないし……)
きゃん(すわわみたいに、選球眼も良くない……力も無い……)
きゃん(そんな、私が……)
ドワワアアアッ!!
アイキャァァァン!!
きゃん「!?」
ビクッ! あさみん(そう。“魔物”――“悪魔”と、言い換えてもいい)
あさみん(味方につけることが出来れば、この上なく頼もしくもあるけれど)
あさみん(もし、その“悪魔”に、心が負けて)
あさみん(耐えられず――押し潰されてしまった、その時は――)
ワアアアアッ!!
アイキャァァァン!!
ガンバレェェェッ!!
ウテェェェェッ!!
きゃん(な……なんか……)
きゃん(歓声が……今までよりも、大きくて……雰囲気も……)
ガタ…ガタ…
きゃん「なんなの……これ……!?」
あさみん(今度こそ――)
あさみん(Aqoursは、負ける) ひなひな『さあ、スタンドの声に後押しされて、打席に入るのは8番の小林!!』
ひなひな『しかし、心なしか硬い表情。観客の期待に応え、攻撃をつなぐことが出来るか!?』
ひなひな『はたまた、Aqoursの奇跡も、ここで途切れてしまうのか!?』
ワアアアアッ!!
キャアアァァァッ!!
きゃん「………っ」
ドクンドクン…!
あさみん(雰囲気に……呑まれてしまってる)
あさみん(“悪魔”に、魅入られてしまったら……もう……!) ワアアアアッ!!
アイキャァァァン!!
きゃん(みんなが……応援してる……)
きゃん(それに……応えなきゃ……)
きゃん(みんなが、必死にここまでつないで……)
きゃん(私も……つながなきゃ……!)
ドクンドクン…!
えみつん「………」
ザッ…
ひなひな『さあ、再びマウンドに立ちます、守護神・新田』
ひなひな『先程、諏訪にデッドボールを与えてしまいましたが、ピッチングに影響は――』
グワッ
シュッ!!
きゃん「!!」
ズバンッ!!
\ストライク!/ ひなひな『っ……ストライク!!』
ひなひな『デッドボールの影響など微塵も感じさせない、力強い球!!』
オオオオオッ!!
きゃん「……っ!!」
きゃん(な、なんか……また、力強さを取り戻したような……!?)
きゃん(なんでよ……!! 腰を痛めてて、ベストコンディションじゃないんじゃなかったの……!?)
すわわ「………!」
すわわ(確実に、腰の負傷で、体は悲鳴を上げてるはず……!!)
すわわ(なのに、またこの局面で、渾身の一球を放れる強さ)
すわわ(やっぱり、この人は――)
あさみん(伝説のμ'sを束ねる、リーダー……)
あさみん(新田恵海――!!) えみつん「………」
えみつん(……つらいなんて、言ってられない)
えみつん(みんなが、まだ私のことを、信じてくれてるなら――)
えみつん(私は、最後まで、全力で頑張るだけ)
えみつん(穂乃果も――きっと、そうする、はずだから)
オオオオオッ…!!
ライバー「……やっぱり、えみつん、すげーよ!!」
ライバー「ああ、やっぱりμ'sだな!!」
ライバー「Aqoursに負けんなー!!」
ワアアアアッ!!
ミューズ!! ミューズ!!
アクア!! アクア!!
ひなひな『新田のピッチングに、μ's側応援席も再びヒートアップ!!』
ひなひな『メットライフドームは、μ'sとAqours、双方への声援が渦巻き、大変な状況となって参りました!!』
ウオオオオオッ!!
ワアアアアアアッ!! ひなひな『ところで、姉様……先程、“魔物”は実在する、とおっしゃっていましたが……』
ひなひな『あれは一体、どういう……』
あさみん『……日向も、感じてるんじゃない?』
あさみん『“魔物”の、正体――』
あさみん『それは――スタジアムを埋める、“観客”です』
ひなひな『観客……!?』
ウオオオオオッ!!
ビリビリッ…
きゃん「……!!」
きゃん(歓声が……一層、大きくなって……)
きゃん(まるで、空気が……震えてるみたい……!) あさみん『……プロ・アマ問わず、スタンドからの大きな声援というのは、大きな味方であり、大きな脅威でもあります』
あさみん『特に、甲子園のような大舞台では、それが顕著です』
あさみん『観客は、スター選手がいたり、話題性のあるようなチームに肩入れして、応援したくなる』
あさみん『そして、名勝負やスーパープレーを期待し、「こんな風に盛り上がったらいいな」という願望のもと、声援を送る』
あさみん『その、絶大な声援に後押しされた選手は、時として本当に、観客の“期待通り”のプレー、試合運びを見せてしまうことすらあるんです』
ひなひな『そんな……観客の歓声が、試合まで変えてしまうなんて……』
あさみん『例はいくらでもありますよ。例えば、夏の甲子園を例にとってみても……』
あさみん『2007年の決勝、広陵高校を破った、佐賀北高校の逆転満塁ホームラン』
あさみん『2009年の決勝、優勝校・中京大中京を相手に見せた、日本文理高校の9回の驚異的な追い上げ』
あさみん『記憶に新しい所では、今年の夏の、吉田輝星投手擁する金足農業高校の快進撃もそうでしょう』
ひなひな『……!!』
あさみん『いずれも、甲子園の観客たちの声援が生み出した、一種異様な雰囲気が、試合の展開にすら大きな影響を及ぼした例でしょうね』 あさみん『これこそが――“魔物”の正体』
ひなひな『“魔物”の正体は、スタンドの観客たち……!!』
あさみん『勿論、スーパープレーや快進撃にしても、選手たちが培ってきた努力が実を結んだものであることは疑いありません』
あさみん『しかし、観客の大きな声援と期待が生み出す異様な空間が、選手たちの普段以上の力を引き出すことも、また事実』
あさみん『そして――裏を返せば、観客の歓声を受けていない“相手”のチームにとってみると、とてつもないプレッシャーになります』
ひなひな『言ってみれば、完全アウェーの空気の中でプレーしないといけない訳ですもんね』
あさみん『これが、“魔物”が大きな味方であると同時に、大きな脅威にもなりうる所以です』
あさみん『今――ここ、メットライフドームの中は、Aqoursの粘りに対し、逆転を期待するファンの熱気が高まっています』
あさみん『しかし、新田さんのピッチングで、μ'sへの声援も盛り返しつつある』
あさみん『果たして、観客の熱気は、どちらに傾くのか』
あさみん『そして――それを受け止め、味方につける度量が、今のAqoursにあるのか――』
きゃん「………っ」
ダラダラ…
あさみん(正念場だよ――きゃん) しゅか「おーい、あいきゃん!!」
ありしゃ「一旦、打席外して!!」
ワアアアアアッ!!
ウオオオオオッ!!
ウテェェェェッ!!
きゃん「………」
ハァハァ…
きんぐ「駄目だ、周りの歓声にかき消されて、聞こえてない……!」
ふりりん「きゃん……!!」
きゃん(つながなきゃ……やらなきゃ……)
きゃん(打たなきゃ、とにかく……振らなきゃ……!!)
ドッドッドッ
えみつん「………」
ザッ
シュッ!! きゃん「――っ!!」
ブンッ!!
ズバンッ!!
\ストライク!!/
ワアアアアアッ!!
ひなひな『小林、高め、振らされた!! ツーストライク!!』
ひなひな『追い込まれました、小林!! 大歓声が逆にプレッシャーとなっているのか!?』
ひなひな『粘ってきたAqoursの反撃も、ここで終わってしまうのか!?』
ふりりん「あああ……!!」
あんちゃん「あいきゃん……!!」 きゃん「――っは!! はぁっ!!」
ドッドッドッ
きゃん(駄目だ――打てる、気がしない!!)
きゃん(周りの――スタンドの、声で――体が、潰されそう――!)
ギュッ…
きゃん(助けて……誰か……!)
きゃん(助けて……)
きゃん(ヨハネ……!!)
……………
………
「何やってんのよ。愛香」
きゃん「――っ!?」
ハッ!!
ワアアアアアッ
すわわ「……?」
りきゃこ「あいきゃん……?」
きゃん(今――頭の中に――)
きゃん(……声が……?)
きゃん(今のは……)
「自信持ちなさい。リトルデーモン」
「あんたと、Aqoursの3年間は――無駄じゃない」
「あんたは――」
「いつも通りで、いいんだから」
きゃん「……ヨハネ……?」 ふりりん「な、なに……?」
しゅか「わかんない。こわ……」
あんちゃん「だけど……」
あんちゃん(あいきゃんの、表情が……変わった、ような……)
きゃん「………」
きゃん(もう――聞こえない)
きゃん(今のは――気のせい?)
きゃん(それとも――…)
ワアアアアアッ…
きゃん(なんだか……)
きゃん(視界が、広くなった、気がする)
きゃん(一塁に、すわわ。二塁に、りかこ。ふたりとも――私を、見てくれてる)
きゃん(ベンチには――)
きゃん(あんちゃん。かなこ、あいあい――Aqoursのみんな)
きゃん(そして――) ワアアアアアッ!!
アイキャァァァン!!
ガンバレェェェッ!!
きゃん(そして――)
きゃん(応援してくれてる、ファンのみんな)
きゃん(……最初は、怖かった)
きゃん(受け入れてもらえるか、怖くて、怖くて)
きゃん(メルパルクホールで、初めてお客さんの前に、出た時は。びっくりして、泣いちゃったっけ……)
グッ…
きゃん(そうだ。もう、怖がる必要なんてない)
きゃん(私は。Aqoursと。ヨハネと、一緒に――)
きゃん(これから――もっと、大きいステージに、立つんだから!)
キッ! えみつん「……!」
ピクッ
えみつん(表情が――変わった)
きんぐ「きゃん、ちゃんと球見て!! ボール球に手ぇ出さないで!!」
あんちゃん「ボール3個分、上を叩くつもりで!!」
しゅか「いいから、思い切って叩けー!!」
きゃん(みんなの声も――聞こえる)
きゃん(大丈夫。しっかり、ボールを見て)
グッ
きゃん(恐れるな――!)
えみつん「」
バッ!!
きゃん「ああああっ!!」
ガギンッ! ワアアアアアッ!!
えみつん「!」
あんちゃん「あっ……」
あいにゃ「ああっ!!」
ひなひな『ああっ……打ち上げてしまったぁぁー!!』
ひなひな『ふらふらと、打球は三塁側ファールグラウンドに上がる!!』
アアアアアッ!!
キャアアアアアッ!!
きゃん「っ……!!」 みもりん(やたっ……!!)
みもりん「――くっすん!!」
くっすん「おっけー!!」
ひなひな『サード楠田が、ファールグラウンドでグラブを構えた!!』
ひなひな『Aqours、万事休すか!!』
あさみん(もう……ここまでか……)
りっぴー「はぁー……」
シカコ「やっと終わったか……」
うっちー(ここまで、ずいぶん粘ったけれど……)
ふりりん「あああああー!!」
しゅか「嘘でしょ!?」
きんぐ「もぉー駄目だぁー!!」
あんちゃん「……あきらめちゃ駄目っ!!」
あんちゃん「まだっ……!!」 きゃん(そうだよ……私だって……あきらめたくない……!!)
きゃん(みんなで、ここまで来たんだもの……!!)
きゃん(ここで終わりなんて嫌だ!! だから――)
きゃん「まだ、終わりじゃない……!!」
くっすん「オーライ!」
きゃん「終わりじゃない!!!」
ウオオオオオッ!!
ワアアアアアッ!!
キャアアアアアッ!!
くっすん(うっ……歓声、すご……)
キラッ
くっすん「!?」
ハッ
くっすん(天井の、ライトが――視界に、入って――) バシッ
ポロッ…
みもりん「――!?」
くっすん「あっ……!?」
ポトッ
ひなひな『おっ……落としたぁぁぁぁっ!!!』
ワアアアアアッ!!
ウオオオオオオッ!!
ひなひな『なんだどうした!? 最後のアウトひとつが捕れない、μ's!!』
ひなひな『サード楠田、グラブに当てたものの、落としてしまいましたぁぁぁっ!!!』
きゃん「……あ……」
きゃん「う、嘘……!?」 ふりりん「お……おおお……!!」
あいにゃ「た、たす……」
しゅか「助かった……!!」
きんぐ「し、心臓、止める気か……!」
あんちゃん「そうだよ……!!」
グッ…
あんちゃん「まだ……大丈夫……!!」
ジョルノ「く、くっすん……!?」
ジョルノ(なんだかんだ言って、運動神経良くて、守備は割と安定してる、くっすんが……!?)
くっすん「な、なんで……」
くっすん「なんでー!? くっそー!!」
ガッ!
くっすん(歓声に気をとられたとか、ライトが目に入ったとか、言い訳にならない……!!)
くっすん(えみつんを、助けないといけないのに……ここで、終わりのはずだったのに……!!)
えみつん「くっすん……」 あさみん『一瞬、眩しそうな表情を浮かべましたから、天井の照明と重なって、ボールを見失ってしまったのか……』
あさみん『はたまた、三塁側、Aqoursの応援席からの悲鳴のような歓声に、気をとられたのか……』
あさみん(それでも――“流れ”がある時には、実際に起こる。こういう、信じられないプレーが)
あさみん(そしてそれは、Aqoursの流れが、まだ途切れていないということ……!)
ひなひな『とにかく、首の皮一枚つながりました、Aqours!!』
きゃん「………」
グッ…
きゃん(大丈夫……大丈夫……!!)
きゃん(今のは――きっと、ヨハネが、救ってくれた)
きゃん(それに――初めて、バットに当てられた!!)
きゃん(大丈夫……打てるんだ……!!)
ウオオオオオオッ!!
アイキャァァァンッ!!
ガンバレェェェェッ!!
ビリビリッ…
きゃん「……っ!!」
ゾクゾクッ きゃん(もう、怖くない……!! わかった。ヨハネが、言ってた意味……!!)
きゃん(私は――いつも通り)
きゃん(この、歓声で、空気が震える――この感覚)
きゃん(そうだ。ライブと、一緒なんだ)
きゃん(スタジアムは、ステージ。選手は、キャスト)
きゃん(ブラスバンドや鳴り物の音楽に乗せて、私たちは、全力のパフォーマンスを魅せて)
きゃん(そして、地面を揺らすような、大歓声……!!)
ニッ…!
きゃん(そうだ。いつだって、この歓声に、助けられてきたんだ)
きゃん(この歓声と、Aqoursのみんながいれば――)
きゃん(どこへだって、行ける!!)
きゃん「さぁ――」
ギランッ!
きゃん「行くわよ!! リトルデーモンたち!!」
キャアアアアアッ!!
ウオオオオオオッ!! ひなひな『小林の……表情が、変わった!? 笑っている……!?』
あさみん『……!!』
あさみん(打ち勝った……! 味方に、つけた……!!)
あさみん(“魔物”を……!!)
あんちゃん「あいきゃん……!!」
グッ
あんちゃん「大丈夫……!!」
きゃん「そう、大丈夫……!」
えみつん「ふぅ……はぁ」
ザッ…
シュバッ!!
きゃん(大丈夫!! 絶対、あきらめないから)
きゃん(見てて――ヨハネ!!)
ガキィッ!! ウオオオオオッ!?
ひなひな『これも打ち上げたぁー!!』
ひなひな『しかし、打球はふらふらと上がる!!』
ふりりん「あああっ……!!」
ありしゃ「いや……待って!!」
みもりん(セカンド……!!)
みもりん(いや、センター……ライト……!?)
あさみん『これは面白い所に上がりましたよ!?』
ひなひな『セカンド後方に上がった打球!! 3人が追いかけます!!』
きゃん「……!!」
ダダダッ そらまる「くっ、ちょっと前に出すぎてた……!?」
ダダダッ
りっぴー「捕る、私が……!!」
ダダダッ
うっちー(えみつんを、助けなきゃ……!)
ダダダッ!
ジョルノ「……!!」
ジョルノ「声かけあって!! エラーあるぞ!!」
しゅか「ああー、捕るなぁー!!」
きんぐ「捕るな捕るな捕るなぁー!!」
ふりりん「落ちろぉー!!」
あんちゃん「……大丈夫……!!」
きゃん「……大丈夫!!」
ダダダダッ! うっちー「!!」
りっぴー「あっ……!?」
そらまる「げ、」
ポトンッ
ひなひな『ああー、落ちたぁー!! ポテンヒット!!!』
ワアアアアアアッ!!
キャアアアアアッ!!
すわわ「や……、」
りきゃこ「やった!!」
ダダッ!
あんちゃん「やったあああああっ!!!」
しゅか「きゃあああああんっ!!!」
ひなひな『その間、二塁ランナーの逢田がホームイン!! 諏訪は三塁へ!!』
ひなひな『また1点挙げた!! またつないだ、Aqours!!』
ひなひな『なおも、ツーアウト一・三塁!!!』
ウオオオオオオッ!!
きゃん「やっ……」
きゃん「たぁぁぁぁぁっ!!!」
【μ's 13―8 Aqours】 あさみん『上がった位置が、良かったですね。セカンド、センター、ライトの三者の真ん中、難しい位置でした』
あさみん『外野が定位置、セカンドがゴロを警戒してやや前に出ていたのも功を奏しました。三者も、一瞬判断に迷ってしまいましたね』
ひなひな『しかし小林選手、先程のファールフライ落球、そしてこのポテンヒットと、実に運が良かったといいますか……』
あさみん『勿論、運もあったでしょう』
あさみん『しかしこれも、観客の声援に呑まれず、“魔物”を味方につけたからこそ、とも言えるかもしれません』
あさみん『もう、初めてのステージで、歓声に呑まれて泣いていたAqoursはいない』
きゃん(ありがとう……ヨハちゃん……!!)
きゃん(また、救われちゃったけど……)
きゃん(私が、ちょっとでも、勇気が持てたのは……ヨハちゃんと、Aqoursと……)
きゃん(応援してくれる人たちの、お蔭だよ……!)
ジワ…
ワアアアアアッ!!
アイキャァァァンッ!!
あさみん『3年間の月日は、“魔物”を味方につけるほどに――』
あさみん『彼女たちを、成長させたんです』 くっすん「えみつん……ごめん」
くっすん「あのファールフライ、私がちゃんと捕ってたら……」
そらまる「それ言ったら、ウチらもだよ」
そらまる「りっぴー、内田さんと、ちゃんと声掛けあってれば……」
えみつん「いいんだって!! 誰のせいでもないよ!」
えみつん「それに、わがまま言って投げさせてもらってるのは、私の方なんだから……」
みもりん「………」
みもりん「だけど……認めなきゃね」
みもりん「点差があるとか、あとアウトひとつとか、言ってられない」
スッ…
みもりん「Aqours――強敵だよ」
えみつん「……!」 あんちゃん「りこちゃーん、やったねー!!」
りきゃこ「あーん、あんちゃーん!! みんなのお蔭だよ!!」
パンッ
しゅか「こ……これ……」
ふりりん「ほんとに……勝てる、かも……?」
きんぐ「何言ってんの!! 絶対、勝つんだよ!!」
あいにゃ「………」
ドキドキ…
あいにゃ(みんな、波に乗ってる……あんなにバラバラだったのに、また、ひとつになれた……!)
あいにゃ(嬉しい、嬉しいよ……だからこそ……)
ギュッ
あいにゃ(勝ちたい。終わらせたくない)
あいにゃ(だけど……)
ズキ…ズキ…
『9番、ファースト、鈴木』 ひなひな『さあ、いよいよラストバッターの鈴木まで回ってきました!!』
ひなひな『この回、4点を挙げ、点差はじわじわと縮まっています!!』
ひなひな『しかし鈴木は、ここまで4打数ノーヒット』
ひなひな『Aqoursの打者の中で、唯一、出塁がありません!!』
あさみん『その上、鈴木選手は、8回の守備で足首を痛めています』
あさみん『バッティングにも、その影響が出てしまうとなれば……』
あいにゃ(……でも、やるしかない)
あいにゃ(痛いとか、言ってられない……!)
ドキドキ…!
あいにゃ「よ、よーし……!」
あいにゃ「よっしゃ、行くぜ、ワレ!!」
あんちゃん「………」
あんちゃん「あいな!」 あんちゃん「……あいながいてくれたから、私たち、ここまで頑張れたんだと思う」
あんちゃん「あいなが、あきらめないでいてくれたから。あいなの、言葉があったから」
あんちゃん「私も、Aqoursも、あきらめないで、ここまで粘れた」
あいにゃ「え……?」
りきゃこ「そうだよ! あの、1stの時も……今回も! あいなに励ましてもらって、私もすっごい心強かった!」
きんぐ「そーそー。あいなちゃんが頑張ってると、なんかこっちも頑張らなきゃ、って気になるし」
ありしゃ「なんか、あいなってそういうパワーみたいなのあるよねー」
あいにゃ「そ、そんな……ワシ、照れるわ……///」
あんちゃん「……あいなは、周りに勇気を与えてくれる、すごいパワーを持ってるんだから」
あんちゃん「だから……大丈夫!!」
あいにゃ「あんちゃん……!」 ひなひな『さあ、出てきました!! 鈴木がバッターボックスに向かいます!!』
ひなひな『スタジアム内は、Aqoursの快進撃に、観客の熱気もますますヒートアップ!!』
ひなひな『ランナーは一・三塁!! ノーヒットの鈴木、ここで執念を見せられるか!!』
ワアアアアアッ!!
アイニャァァァァッ!!
ガンバレェェェッ!!
あいにゃ(もー、あんちゃんったら、ほんとイケメンなんだから……///)
あいにゃ(思わず、ほっぺにチューしたくなっちゃう///)
あいにゃ(それに、りかこも、他のみんなも……)
あいにゃ(……信じてくれてる。こんな、あたしを)
あいにゃ(……そして……)
チラッ
すわわ「………」
ニコ
あいにゃ(……すわわ……) あいにゃ(……みんな、ありがとう)
あいにゃ(私が、困ってる時、悩んでる時)
あいにゃ(いつだって、手を差し伸べてくれたのは――Aqoursのみんなだったよね)
あいにゃ(――大好きだよ。そんな、みんなのこと)
グッ…
あいにゃ(だから――)
えみつん「……ふぅー……」
ザッ!
シュバ!! あいにゃ「――!!」
グッ!
ズキィッ!!
あいにゃ「っ!!!」
ブンッ!!
ズバンッ!!
\ストライク!!/
あいにゃ「……っ……!!」
ズキズキ…!!
あいにゃ(痛みになんか……負けない……!)
あいにゃ(Aqoursは、絶対……終わらせないんだから……!!)
ギリ…!
あいにゃ(たとえ、私の体が、どうなっても……!!) >>353
確かに佐賀北や日本文理や金足農業は観客の声がえげつなくて相手チームは完全にアウェーだったな 東京ドームがNHKホールにかわっても微妙になってきたな
年をこすんだろうか…w あいきゃんの打席でマモノのネタ挟んできたのは
魔物→悪魔→リトルデーモン→ヨハネ
って感じのつながりか >>383
それだけになんと言われようと冷静に自分たちの野球を最後までやり遂げた桐蔭はやっぱりすごいよ くっすんのエラーのとこファールやからまだいいけど、実際にやらかして点取られたことあるだけに思い出して胸が締め付けられたわ笑 あいにゃ「ぐっ……!!」
フラッ…
ひなひな『第1球、新田の直球に対し、大きな空振りでワンストライク!!』
ひなひな『しかし鈴木、振ったのち、少しよろめいたような……?』
あいにゃ「はぁ、はぁ……」
ズキ…ズキ…
すわわ「あいな……!?」
りきゃこ「やっぱりあいな、足首が痛いんじゃ……!!」
しゅか「あいなー!!」
ありしゃ「痛いなら、無理しないで!!」
あいにゃ「はっ……がはははっ!!」
あいにゃ「ごめんごめん、勢い余ってちょっとよろけちゃっただけだから!!」
ズキ…ズキ…!
あいにゃ(ここで、無理しなきゃ……)
あいにゃ(全部、終わっちゃうもの……ドームの夢も、何もかも……!) えみつん「―――」
ザッ…
あいにゃ(それに――)
あいにゃ(憧れの、μ'sの、えみつんさんだって。腰の不調を抱えたまま、全力で頑張ってる)
あいにゃ(だったら、私が、弱音を吐いてる場合じゃ……!)
えみつん「」
バッ!!
グッ
ズキィッ!!
あいにゃ「っ!!」
ブンッ…
ズバン!!
\ストライクツー!!/ アアアアアアッ!?
ひなひな『鈴木、どこか力無いスイングで空振り!!』
ひなひな『あっという間に追い込まれてしまいました!!』
あいにゃ「っ……あっ……!!」
ズキズキ…!
ガクッ
りきゃこ「あいな!!」
あんちゃん「やっぱり、あいな、足首が……!!」
ひなひな『鈴木、またもふらつき、膝を落とした!! やはり、先ほどの負傷の影響なのか!?』
あさみん『鈴木選手は左打ちです。スイングの瞬間、軸足である左足から、前に出した右足に、体重を乗せて踏み込まなければいけない』
あさみん『先ほど痛めたのは、右の足首ですから……体重を乗せるたび、激痛が走っていても不思議ではありません……!!』
ひなひな『………!!』 しゅか「見てらんないよ……!!」
りきゃこ「あいな……!!」
きんぐ「………」
きんぐ「でも……」
きんぐ「今の、あいなに……やめてくれ、なんて……言えない」
りきゃこ「え……!?」
きんぐ「だって……あいなは、絶対、あきらめたくないはずだもの……」
きんぐ「あきらめかけた、私と違って……ずっと、Aqoursは勝つって、信じてたはずだもの……!」
きんぐ「だから……」
あんちゃん「………!!」
あいにゃ「く……ふぅ……!」
ズキ…ズキ…
スック…
ひなひな『それでも、鈴木、立ち上がります!! 最後まで、あきらめません!!』
ワアアアアアアッ!!
アイニャァァァァッ!!
ガンバレェェェェッ!! あいにゃ「………」
ハァ…ハァ…
あいにゃ(みんな……ありがとう)
あいにゃ(ほんとにね。みんなからは、救われることばっかり)
あいにゃ(昔の私は、自分のことで精一杯で……自分の殻に閉じこもって、どうにかしなきゃって必死で……)
あいにゃ(でも、そんな私に……Aqoursのみんなは、手を差し伸べてくれたよね)
あいにゃ(困ってる私を助けようとして、みんな、気にしてくれてたんだって、わかって――)
あいにゃ(今は、周りを見渡せば、みんながいるってわかるから。ひとりじゃない。孤独じゃない)
あいにゃ(そんな、みんなのこと――私、大好きなんだよ)
クス… あいにゃ(……幕張ファンミの時だって、迷惑をかけちゃった)
あいにゃ(だけど、あの時も、みんなは私を支えてくれた)
あいにゃ(だから、今度は――私の番)
グッ…
あいにゃ(選球眼も良くない。力も無い)
あいにゃ(そんな、私に出来る――精一杯は――!!)
キッ…!
えみつん「―――」
ザッ…
あいにゃ「――すわわ!!」
すわわ「!?」
あいにゃ「走って!!」
スッ! あさみん『あの構えは――!!』
ひなひな『バント!? スリーバントスクイズ!?』
ウオオオオオオッ!?
えみつん「――!!」
シュバッ!!
あいにゃ(お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん!!)
あいにゃ(私――頑張るから!!)
コツンッ!
あいにゃ(行くよ――)
あいにゃ(――みんな!!)
ダッ!!
あさみん『当てたっ!!』
ひなひな『走ったぁぁぁぁっ!!!』
ワアアアアアアッ!! すわわ「……!!」
ダダダダッ!!
みもりん(まさか、この局面で――!!)
みもりん(痛めたあの足で、セーフティスクイズ!?)
みもりん(駄目だ、私じゃ間に合わない!!)
みもりん「――くっすん!!」
くっすん「わかってる!!」
ダダダッ!!
ひなひな『サード楠田、反応が速い!!』
ひなひな『本塁は間に合わないか!! ファーストで刺せるか!?』
ウオオオオオッ!!
くっすん(今度こそ――!! 私が、刺す!!)
くっすん(終わらせてやるんだ――!!)
パシッ!!
くっすん「――なんちゃん!!」
シュビッ!! ダダダダッ!!
あいにゃ「……っ」
ズキズキッ!!
あいにゃ「っ!!」
りきゃこ「あいな!!」
あんちゃん「あいなぁぁぁぁっ!!!」
あいにゃ(運動神経も良くない、チビで力も無い私が、ちょっとでも、自慢できること――)
あいにゃ(それは、歌と――陸上で鍛えた、この足!!)
あいにゃ(そうゆう体に産んでくれて、ありがとう、お父さん、お母さん!!)
あいにゃ(絶対……立ち止まったり、しない……!!)
ズキズキ!!
ダダダダダッ!!
あいにゃ(私は、私たちは――みんなで、)
あいにゃ(前に、進むんだ――!!)
ズザザザザッ!!
パシィッ!!
ひなひな『滑り込んだぁぁーー!!!』 ひなひな『ファースト捕球のタイミングはほぼ同じ!!』
ひなひな『セーフか、アウトか!?』
\……/
\…セェェーフ!!/
ワアッッ!!
ひなひな『間に合ったぁぁぁぁっ!!! セーフ、セーフです!!』
ひなひな『間一髪、楠田の送球を、鈴木の執念の激走が上回りましたぁぁぁっ!!!』
ひなひな『三塁ランナー、諏訪がホームイン!! つないだ、またもつないだ、Aqours!!!』
ウオオオオオオッ!!
ふりりん「やっ、」
しゅか「たぁぁぁぁっ!!!」
りきゃこ「あいなぁぁぁっ!!」グスッ
【μ's 13―9 Aqours】 くっすん「……!!」
くっすん(間に合わなかった……!!)
くっすん(あと、ちょっとだったのに……!!)
ググッ…!
ひなひな『まさかの、意表を突いたセーフティスクイズ……!! μ's、完全に裏をかかれました……!!』
あさみん『ええ。ツーアウトで後が無いこの局面、しかも足を痛めている鈴木選手が、セーフティを仕掛けてくるなんて……!』
あさみん『しかし、その中でも、サードの楠田選手の反応は完璧でした』
あさみん『三塁線に転がされたボールに、真っ先に反応して飛び出し、すぐさま正確なスローイングで一塁に送球』
あさみん『先ほどのミスを挽回したい、という強い思いもあったのでしょう』
あさみん『バントシフトをとっていなかったとはいえ、楠田選手のプレーにミスはありません』
みもりん(そう……くっすんは、悪くない)
みもりん(予想外だったのは、あの子の想いの強さと、足……!!) あさみん『鈴木選手は、Aqoursいちの俊足の持ち主です。それでも、足首を痛めていますし、本当にタイミングとしては紙一重でした』
あさみん『ですが、鈴木選手が左打ちだったことも、功を奏しましたね』
ひなひな『左打ち?』
あさみん『右打ちと違って、左打ちの選手は一塁側のバッターボックスに立ちますから、右打者よりも僅かに、一塁ベースまでの距離が短くなる』
あさみん『時間にして、ほんのコンマ何秒という差ですが――今回は、正にその僅かな差が、明暗を分けた』
あさみん『自分の左打ちという特性を活かして、足の痛みも構わず、迷うことなく飛び出した』
あさみん『その、鈴木選手の迷いの無さが、Aqoursの未来をつないだんです』
みもりん(ほんと……えみつん、うっちー、なんじょさん……)
みもりん(そして、あの子……みんな、無茶ばっかりするんだから)
えみつん「………」
ハァハァ…
えみつん(だけど……!)
あさみん(だけど、その代償は……!!) あいにゃ「………」
あいにゃ「つ、う……!!」
ジョルノ「ちょ、ちょっと、大丈夫?」
ひなひな『ああー、鈴木、うずくまったまま立ち上がれない!!』
あさみん『やっぱり……!!』
あさみん(あんな無茶をしたら、足は……!!)
あんちゃん「あいな!!」
すわわ「あいなぁぁぁっ!!!」
ひなひな『こ、これは!?』
ひなひな『ホームインした諏訪、真っ先に、鈴木のもとに駆け寄りました!!』 すわわ「あいな!!」
ガバッ
ギュッ!!
あいにゃ「す、すわわ……?」
あいにゃ「もう、なにぃ、こんな所で……ハグ、なんて、恥ずかしいわぁ……」
すわわ「あんな無茶を……!!」
あいにゃ「………」
あいにゃ「……へっ。こちとら、必死よ……」
ハァハァ
あいにゃ「私が、つながなきゃ……みんな、終わっちゃうから」
あいにゃ「みんなのためなら、私――」
すわわ「……馬鹿っ!!!」
ギュウウッ
あいにゃ「へ? すわわ……?」 すわわ「だからって……自分は、どうなってもいいなんて……思わないで……!!」
すわわ「あいなが、足を怪我して……一緒に、ドームに立てなくなったりしたら、私……!!」
すわわ「……幕張の時、一緒に立てなくて、悲しかったのは、あいなだけじゃない」
すわわ「私たちだって……悲しかったんだから……!!」
あいにゃ「……!!」
ハッ
すわわ「………」グス
あいにゃ「すわわ……」
あいにゃ「泣いてる?」
すわわ「泣いてない」
あいにゃ「泣いてる?」
すわわ「泣いてないったら」 あんちゃん「……そうだよー、あいな」
あいにゃ「あんちゃん……!」
あんちゃん「私たちは、9人でAqoursなんだから。ひとりも欠けちゃいけないんだから」
あんちゃん「だから、無理しないで……って、無理して投げた私とか……」
あんちゃん「デッドボールを避けなかった、おすわが言うのもなんだけど」チラッ
すわわ「………」プイッ
あんちゃん「だけど、ありがと……あいな。あいなが、また、私たちをつないでくれた」
あんちゃん「9人で、東京ドーム、立てるように! 一旦、ベンチに退こう」
あいにゃ「……うん」
あいにゃ「ごめん。……ありがとう」
ひなひな『激走を見せた鈴木、一旦ベンチに退くようです!!』
ひなひな『負傷をものともせず、執念で希望をつないだ鈴木に対し、スタンドからは大きな拍手!!』
ワアアアアアッ!!
パチパチパチッ!! ひなひな『鈴木選手の足首の負傷のため、特例として、臨時代走が送られます』
ひなひな『臨時代走を務めるのは、6番の逢田!』
あさみん『本来の臨時代走では、打撃の終わった直後の選手が務めるため、本来なら諏訪選手ですが……』
あさみん『諏訪選手も、頭部にデッドボールを受けているため、今試合のみの特例として、その前の打順の逢田選手の代走が認められたようですね』
りきゃこ(あいなが、あれだけ頑張って、出塁したんだもの)
りきゃこ(あいなの分まで、絶対、ホームに還ってみせる……!)
ひなひな『一塁に逢田、二塁には小林を置いて、試合が再開されます!!』
ワアアアアアッ!! ありしゃ「あいなも、出て……」
ふりりん「一巡……したよ……!」
きんぐ「9点差、あったのに……」
あんちゃん「あと、4点……!!」
ひなひな『9点差が……4点差になりました!!』
ひなひな『しかも、この回……9回、ツーアウト、ランナー無しという状態から……!!』
あさみん『やっぱり、あきらめなければ、こんなことだって起こりうるんです』
あさみん『……そして、ここまで来たら、私も見たくなってきましたよ』
あさみん『“奇跡”が、起きるのを……!!』
あんちゃん「次は――!!」
しゅか「………」
ニッ
『1番、ショート、斉藤』 ワアアアアアアッ!!
シュカシュゥゥゥゥッ!!
ひなひな『アナウンスと同時に、スタンドからは大歓声!!』
ひなひな『打者一巡し、先頭の1番・斉藤を迎えます!!』
あんちゃん「しゅか……!!」
しゅか「………」
しゅか「だいじょーぶだよ。あんじゅ」
しゅか「絶対、つなぐから。Aqoursを、終わらせたりなんか、しないから」
ニッ
しゅか「このさいとーさんに、任せとけ!」 シュカシュゥゥゥゥッ!!
ガンバレェェェェッ!!
ウテェェェェェッ!!
ひなひな『スイッチヒッターの斉藤、左バッターボックスに入ります!!』
しゅか「……うしっ」
みもりん(……この子か。うっちーの球を、最初にヒットにしたのも、この子……)
みもりん(粗削りだけど、センスは抜群。運動神経も、ピカイチ……)
うっちー(この子に回る前に、終わらせたかったけど……仕方ない)
うっちー(えみつん、頑張って……!!)
えみつん(そうだ……)
えみつん(みんなが、まだ……信じて、くれるなら)
えみつん(私は……!!) グワッ…
シュバッ!!
しゅか「――!!」
ピクッ
ズバンッ!!
\ボール!!/
ひなひな『手が出かかりましたが、バット止めてボール!! 僅かに外れた球!!』
ひなひな『しかし、ここに来て……またも、球威が戻ってきたような……!?』
オオオオオオッ!!
しゅか「……!!」
しゅか(すごい……まだ、こんなスピードが……!)
しゅか(でも――)
キッ
しゅか(私だって。私たちだって――)
しゅか(負けられない! 負けられないから――!) きゃん「しゅか……!!」
りきゃこ「頼むよ……!」
えみつん「―――」
ザッ
シュバ!!
しゅか「!」
ピクッ
バシィッ!!
\ボール!!/
ひなひな『……よく見ています、斉藤!! これでツーボール!!』
あさみん『先ほどは、打ち気にはやって、三球三振に倒れてしまいました』
あさみん『落ち着いていますよ、斉藤選手……!!』
あんちゃん「あの、すぐ打ちに行っちゃうしゅかが、あんなにボールをよく見るなんて……!?」
すわわ「それだけ……しゅかも、真剣だし、冷静だってことだよ」
ふりりん「そだね。なんだかんだ、しゅかは、空気が読める子だから……!」 シュッ!!
しゅか「くっ!!」
キンッ!!
ひなひな『ファール!!』
ひなひな『くさい球は、器用にファールでカットします、斉藤!!』
ワアアアアアッ!!
シュカァァァァッ!!
しゅか(……周りから、要領いいね、器用だね、って……よく、言われてきた)
しゅか(でも、ほんとは違う。どんなことでも、練習して、なんとか身につけてるだけ)
キンッ!
あんちゃん「しゅかぁぁぁぁっ!!!」
あいにゃ「頑張れぇぇぇぇっ!!!」 しゅか(だから。本当は全然すごくない、私にとって――曜ちゃんは、私のすべて)
しゅか(曜ちゃんがいなかったら、今の私は無い)
キンッ!
しゅか(私の、憧れの女の子で)
しゅか(でも、悩みながら頑張ってるところとか、私とおんなじだな、と思うところもあって)
しゅか(そんな、曜ちゃんと――)
しゅか(そして、Aqoursを。守りたい。手放したくない!!)
ギンッ!
ひなひな『またもファール!!』
あさみん『決して、緩い球ではないはずなのに……!!』
ひなひな『……恐るべき集中力!! 紙一重で、新田の速球に喰らいついていく斉藤!!』
ひなひな『これが、Aqoursの斉藤朱夏の、本領ということなのでしょうか!?』
オオオオオオッ…!! しゅか「ふぅ、はぁ……!!」
えみつん「はぁ、はぁ……!!」
みもりん(なんて子……!? もう、7球も、ファールで粘ってる……!!)
みもりん(えみつん……!!)
しゅか(……声優としてのキャリアが、一番少ない私のことを、みんなはずっと助けてくれた)
しゅか(だから、私は。得意なダンスと――)
しゅか(今、この打席で、恩返ししたい――!!)
グッ…!
しゅか(そして、立つんだ。曜ちゃんに、見せてあげるんだ)
しゅか(東京ドームに広がる、青い海を――!!)
えみつん「っ!!」
シュバッ!!
ズバンッ!!
しゅか「……!!」
みもりん「……!!」 \ボール!! フォア!!/
ウオオオオオオッ!!
ワアアアアアアッ!!
ひなひな『外れたぁっ!!! フォアボール!!!』
ひなひな『なんと斉藤、新田の豪速球にファールで喰らいつき――』
ひなひな『実に8球粘って、フォアボールを選びましたぁ!!!』
しゅか「――うしっ!!」
しゅか(つないだよ――!! 希望!!)
ありしゃ「しゅか……!!」
あいにゃ「す、すごい……!!」
あんちゃん「しゅか――」
クスッ
あんちゃん「――しゅかは、自分でどう思ってるか、知らないけど」
あんちゃん「やっぱり――お前って、スゴい奴だよ!!」 あさみん『打ち気にはやる気持ちを抑えて、しっかりボールを見極めていました』
あさみん『斉藤選手の、長年のダンスの経験で磨き抜かれた、動体視力と反射神経のたまものだと思いますね』
あさみん『そして、冷静に、次につなげることを第一に考えた――』
あさみん『一見、お調子者に見えて――実は誰よりも空気を読み、冷静な、斉藤選手らしいプレーだったと思います』
えみつん「ふぅ……はぁ」
みもりん(えみつん……)
うっちー(……あの子の場合は、打ち気にはやってくれてた方が、打ち取りやすかった)
うっちー(最後の最後で、こんな冷静さを見せるなんて……!)
ジョルノ(……おいおい)
シカコ(マジか……この、状況……!!) ひなひな『――さぁ!! ついに!! 満塁になりましたぁ!!!』
ひなひな『点差は4点!! 一発出れば、一気に同点!!』
ひなひな『会場の熱気は、最高潮に達しています!!!』
ウオオオオオオッ!!!
ワアアアアアアッ!!!
アークーア!! アークーア!!
ひなひな『そして――この、局面』
ひなひな『打席に立つのは。Aqoursの、命運を、握るのは――!!』
『2番、セカンド、降幡』
ワアアアアアアッ!!
フリリィィィィン!!
ふりりん「………!!」
カタ…
ふりりん(ツーアウト……満塁……!!)
ふりりん(マジかよ……あーしに……)
ガタ…ガタ…!
ふりりん(Aqoursの、命運が……かかってる……!?) 密度が濃くて俺は好き
適当に進められるより作者の気の済むまで最後までやってほしい めっちゃ面白い
けど細かいこと言うとセーフティースクイズは
セーフティーバントでスクイズすることじゃない 更新されるたびに泣いてる。
あいなちゃんもしゅかもほんと…
でもμ'sに勝ってほしいのもある。やっぱり伝説は伝説のままであって欲しいというか。複雑な心境。 あんじゅがサヨナラのランナーか
どっちに倒れてもドラマチックな展開に >あいにゃ「泣いてる?」
>
>すわわ「泣いてない」
>
>あいにゃ「泣いてる?」
>
>すわわ「泣いてないったら」
かわいい ウオオオオオオッ!!
フリリィィィィン!!
ガンバレェェェッ!!
ふりりん「………っ」
フルフル…
ひなひな『大歓声を受けて、降幡が打席に入ります!!』
ひなひな『しかし、プレッシャーからか、いささか固い表情』
ひなひな『チームメイトの、そしてファンの期待に応えることが出来るか!? あいちゃん、正念場です!!』
きんぐ「あいあい……ガッチガチになってる」
ありしゃ「あいあいー!!」
あんちゃん「大丈夫だよ!! 肩の力、抜いてー!!」 ふりりん「………」
ドクンドクン…!
ふりりん(ツーアウト満塁……あーしが打てば……点が入って……)
ふりりん(ホームランなら、同点……? いやホームランとか無理……)
ふりりん(打つ? えみつんさんの球を? じゃあ待つ? フォアボール?)
ふりりん(いや、なに考えてんだあーし……! 頭ごちゃごちゃで……!)
ふりりん(落ち着け、落ち着け……!!)
えみつん「………」
フゥ…ハァ…
キッ!
ふりりん「!!」
ゾクッ
ふりりん(えみつんさん……体、ボロボロのはずなのに……疲れてるはずなのに……)
ふりりん(まだ……こんな、気迫が……!)
ブルッ…
ふりりん(怖い……怖い……!) ザッ…!
ひなひな『新田、足を上げた!!』
ふりりん(来る……来る……!!)
ドクンドクン!
シュバッ!!
ふりりん「――!!」
ズバン!!
\ストライク!!/
ひなひな『ど真ん中を見送ってしまった!!』
ひなひな『降幡、手が出ない!! ワンストライク!!』
ワアアアアアッ!! あいにゃ「あああ……!!」
きんぐ「今の、甘く入ったってやつじゃないの……!?」
あんちゃん(あいあい……!!)
みもりん(危ない……!! 真ん中に入ってきた……!)
みもりん(でも、初球でストライクが取れた。このまま……!)
ふりりん「……っ!!」
ドクンドクン…!
きゃん「あいあい!! 落ち着いて!!」
りきゃこ「深呼吸して!! 大丈夫だから!!」
しゅか「あいあい……」
グッ ふりりん(そうだ……振らなきゃ……打たなきゃ……!!)
ふりりん(振れ、振れ……!)
ドクンドクン…
えみつん「」
ザッ…
ふりりん(振れ!!)
シュバッ!
ブンッ!!
バシィッ!!
\ストライクツー!!/
ひなひな『ああっと、今度は大きく外れたボール球に手が出てしまった!!』
ひなひな『空振り!! これでツーストライク!!』
アアアアアアッ!! ふりりん「はぁ、はぁ……!!」
ふりりん(駄目だ……頭の中、真っ白だ……!!)
ふりりん(どうしよ……どうしたら……!!)
きんぐ「ふり……!!」
ありしゃ「プレッシャーで、テンパっちゃってる……!」
あんちゃん「あいあーい!! 落ち着いてー!!」
ふりりん「ふぅ、はぁ……」
ふりりん「………」
ふりりん(ああ……やっぱり、私……駄目だなぁ……)
ふりりん(こんな、大事な場面で……私を信じて、みんな、送り出してくれたのに……)
ふりりん(期待に……応えられない)
ジワ…
ふりりん(Aqoursの、他のみんなは……すごい人ばっかりで。私、ここにいていいのかって、いっつも悩んで……)
ふりりん(せめて、みんなを引き立てられればって思って、なんとか頑張ってきたけど……)
ふりりん(……引き立て役にすら、なれない)
ポロ…
ふりりん(私……結局、みんなの……お荷物、なんだ……)
しゅか「………!」 しゅか「――こらー、あいあい!!」
しゅか「顔上げろ!! びびってんなー!!」
しゅか「このセクシー家庭教師!!」
ふりりん「!」
ハッ
ジョルノ「……は? セクシー家庭教師?」
ジョルノ「なんで? セクシーなの?」
しゅか「………」
ニッ
ふりりん「………!」
ふりりん(しゅか……) 〜とある生放送収録後、楽屋〜
ふりりん「……もー、セクシー家庭教師ネタばっかやんなよー!」
ふりりん「ほんとしゅか、人のことディスってばっかいるよなー」
しゅか「えへへへ、ごめんってー。だってあいあいの家庭教師、ほんと面白くて好きなんだもーん」
ふりりん「………」
ふりりん「……ま、でもいいんだ。それで、みんなが面白がってくれるなら」
しゅか「へ?」
ふりりん「いやさ……あーしは、しゅかやみんなと違って、別にすごくもなんともないし……」
ふりりん「だったら、引き立て役っていうか……芸人ポジで、せめてみんなを盛り上げられたら、それでもいいかな、って……」
しゅか「………」
バシ!
ふりりん「あだ!? なんでいきなり、背中叩いて、」
しゅか「あいあいさあ」
しゅか「あたしは。あいあいがいないと、ヤだよ」
ふりりん「……え?」 しゅか「だって、あいあい、結構甘えさせてくれるしー」
ふりりん「おい」
しゅか「それにさ。あいあいには、あいあいにしか無い良さ、あると思うよ」
ふりりん「へ?」
しゅか「みんなを楽しくさせてくれるのも、なんだかんだ世話焼いてくれるのも」
しゅか「あいあいじゃなきゃ、できないってゆーかさ。今さら、あいあい抜きのAqoursなんて、考えられないし」
しゅか「あいあい、いいとこいっぱいあるんだからさ。自信持ちなって!」
ニッ
ふりりん「しゅか……」
しゅか「あ! 今、あたしのことイイ奴って、そう思ったっしょ?w」
ふりりん「う、うっせー!/// やっぱ馬鹿にしてるでしょー!!」
しゅか「だから、あいあいは、あいあいらしくでいいんだって!」
しゅか「セクシー家庭教師も、あいあいらしさだから!!w」
ふりりん「やめろー!!」 ワアアアアアッ!!
ふりりん(しゅか……)
ふりりん(私は……私らしく……)
しゅか(そうだよ。いけ、あいあい……!)
あんちゃん「見せてやれ……!」
ありしゃ「遠慮なんか、しなくていい」
きんぐ「あいあいの、すごいところ……!!」
あさみん(いつだって、遠慮がちに一歩引いて。周りを立たせようと、お笑い役になることも多くて)
あさみん(でも――3rdの時、一緒にAwaken the powerを歌った――私も、日向も、知っている)
あさみん(貴方には、目覚めの時を待つ、大きな力――パワーが、あるってことに――!) ふりりん「ふぅー……」
ふりりん「はぁー……」
キッ…
ひなひな『さあ、大きく深呼吸した降幡!!』
ひなひな『再びバッターボックスで、新田に向かい合います!!』
ひなひな(頑張れ……あいちゃん……!)
ワアアアアアッ!!
フリリィィィン!!
ガンバレェェェェッ!!
ふりりん(大丈夫……)
ふりりん(落ち着いて。逃げちゃ駄目だ)
ふりりん(たとえ、相手が……あの、憧れの、えみつんさんでも……!)
えみつん「ふぅ……はぁ」
えみつん「………」
ニコ…
ふりりん「――!!」
ハッ ……………
………
えみつん「……そうなんだ。ふりりん、自分に自信が無いんだね」
ふりりん「……はい。なんか、気が引けることが多くて」
ふりりん「ルビィのことも……大好きだし、追いつきたい、って、頑張ってるんですが……」
ふりりん「なんだか……私が、ルビィの足を引っ張ってるんじゃないか、って……」
えみつん「………」
えみつん「そっか。ふりりん、私とおんなじだねっ!」
ニコッ
ふりりん「……え?」
えみつん「私も、自分に自信が無いもの」
えみつん「私だって、いっつも悩んでた。穂乃果の魅力や想い、表現できてるかなって」
えみつん「ちゃんとみんなに、伝えられてるかなって」
ふりりん「そんな、えみつんさんが、まさか……!!」 えみつん「私の周りで、色んなことが、どんどん加速していって」
えみつん「穂乃果の背中を追うだけで、精一杯だったなあ」
ふりりん「……!」
ふりりん(私と、同じ……!)
えみつん「でもね。ファイナルが終わって、雑誌の企画で、穂乃果に手紙を書いたことがあったんだけど」
えみつん「その時に――ようやくね。穂乃果と、隣で肩を並べて話せてるような、そんな感じになったんだ」
ふりりん「隣で――」
えみつん「だからね。ふりりんも、きっと、大丈夫」
えみつん「自分と、ルビィちゃんを信じて、頑張れば――」
えみつん「きっと、ルビィちゃんの隣に立てる時が、来るよ」
ニコッ
えみつん「だから、ふりりんも――ファイトだよっ!」
……………
……… …ワアアアアアッ
ふりりん「………」
ふりりん(そうだ――いつだったか)
ふりりん(悩んでる私に、えみつんさんは、言ってくれた……)
グッ
ふりりん(――大好きな、ルビィ)
ふりりん(今までは、憧れの貴方に、追いつこうって必死だった)
ふりりん(だけど――いつか。貴方の、隣に立って)
ふりりん(今度は、ルビィのこと、支えてみせるって――絶対、約束するから!!)
えみつん(いくよ――)
えみつん(――ふりりん!)
ザッ…! ふりりん(今は、自分を信じて)
ふりりん(私らしく。私が、出来ることを――)
えみつん「」
グワッ
ふりりん(――やってみせる!!)
スッ…!
くっすん「!!」
ダッ!!
そらまる(バントの構え――!!)
ダダッ!!
えみつん「!」
シュバッ!! ふりりん(サードとセカンド、飛び出してきて――ショートは二塁ベースカバー)
ふりりん(――ここで!!)
スッ!
ひなひな『あっ!?』
あさみん(バットを、戻した――!!)
みもりん(――バスター!?)
ふりりん(力まないで――流せば、いい!!)
ふりりん(狙いは――“一・二塁間”!!)
ふりりん「うああああっ!!」
キィィンッ!! あんちゃん「打った!!」
しゅか(抜けろっ……!!)
ダダダッ
ふりりん(――抜けろ!!)
そらまる「しまっ……!!」
そらまる「くっ……ああっ!!」
ザンッ!
ひなひな『抜けたぁぁぁぁぁっ!!!』
ウオオオオオッ!!!
ワアアアアアッ!!!
ふりりん「……っ!!」
ポロッ…! ひなひな『打球は一・二塁間を抜けていく!!!』
ひなひな『好スタートを切っていた満塁のランナー!! まずは小林が還ってくる!!』
ひなひな『そして逢田も、三塁を回った、回ったぁ!!!』
ウオオオオオオッ!!!
うっちー「くっ……!!」
シュッ!!
ひなひな『ライトからボールが返ってくるが――間に合わないぃぃぃっ!!!』
ひなひな『逢田も、ホームイィィィン!!! 二者生還!! 斉藤は三塁へ!!』
ひなひな『つないだ、つないだ!! Aqoursのライブはまだ終わらなぁぁぁい!!!』
ひなひな『降幡、満塁の場面で、2点タイムリーヒットを放ちましたぁぁぁっ!!!』
ワアアアアアアアッ!!!
キャアアアアアアッ!!!
【μ's 13―11 Aqours】 あいにゃ「おっしゃあああああっ!!!」
ありしゃ「やった……!!」
すわわ「やった!!」
あんちゃん「あいあぁぁぁい!!!」
ひなひな『μ's守備陣の、完全に裏をかいた、降幡の見事なバスターヒット……!!』
あさみん『……降幡選手は、あの一瞬で、μ's守備陣の“穴”を計算したんです!』
あさみん『諏訪選手の打席で、諏訪選手がバントの構えを見せた時、前に飛び出してきたのはサードとセカンドだった。そのことを、覚えていた』
あさみん『負傷しているファーストの南條さん、ピッチャーの新田さんは動けない。そしてショートのPile選手は、ベースカバーに向かう』
あさみん『そうすると、必然的に、最も内野の中で隙が出来るのは、“一・二塁間”ということになる』
ひなひな『あいちゃんは、そこを狙って……!?』 あさみん『まず、降幡選手が、バントの構えを見せる』
あさみん『直前に鈴木選手がバントヒットを決めていること、また降幡選手自身もこの試合、犠牲バントとバントヒットを決めていることが伏線となり――』
あさみん『守備陣は、今回も降幡選手がセーフティバントを狙っていると咄嗟に判断し、バントシフトをとる』
あさみん『しかしそのバントシフトは、ピッチャーとファーストが動けない、不完全なもの』
あさみん『そして、バスターで打ち返す。無理にボールを引っ張らず、上手く流すことで、“穴”となる一・二塁間を狙った――』
あさみん『バスターにしたことで、結果としてバットをボールに当てやすくしたのも、功を奏しました』
ひなひな『あの一瞬で、そこまでのことを――!!』 あさみん『自らの、バントの技術に自信を持っていた――いや、自信が持てたからこその、ファインプレーでしょう』
あさみん『自分に出来ることは何か。自分にしか出来ないことは何か』
あさみん『それを考え――あきらめずに、自分の力を信じた』
あさみん『それが――Aqoursの未来を、つないだんです!』
ひなひな『あいちゃん……!!』
あさみん(彼女の中の――“眠る力”は)
あさみん(東京ドームに、立つことが出来れば。きっと、さらに大きく、開花するはず――!)
ふりりん「う、ひぐっ……!」
ふりりん(やった……やったよ……!)
ふりりん(私……ちょっとでも、ルビィに……近づけたかな……)
きゃん「ふりぃぃー!! サイコー!!」
きんぐ「泣くなー!!」
しゅか「……へへっ」
しゅか「引き立て役なんかじゃ、ないんだよ。あいあい」 ジョルノ(私とえみつんが、動けないことが、あだになっちゃったか……)
ジョルノ(しかし……咄嗟に、動けない私と、そらの間を狙って、流してくるとはね)
えみつん(ふりりん……)
ハァハァ…
えみつん(……頑張ったね)
クスッ
えみつん(……だけど……)
キッ…!
うっちー(だけど……)
りっぴー(ここまで……やるなんてね)
シカコ(何度、突き落とされても……)
くっすん(そのたびに……這い上がってきて)
ぱいちゃん(私たちの背中を――追いかけてきた)
そらまる(そして――いよいよ)
みもりん「」キッ…
みもりん(クライマックス――か) ひなひな『9点差がっ……2点差になりました!!!』
ひなひな『9回裏、ツーアウトランナーなし!! 誰もが勝負あったと思った、絶望的な状態からの、Aqoursの猛反撃!!』
ひなひな『そしてついに、ついに、μ'sの背中が、見えるところまでやって来たのです!!!』
ワアアアアアアアッ!!!
ウオオオオオオオッ!!!
りきゃこ「来た……ここまで……!!」
すわわ「ここまで……つながった……!!」
きんぐ「勝てる……!! 勝てるよ!!」
ひなひな『ランナーは、一塁・三塁!!』
ひなひな『全て還れば同点!! そして、一発が出れば、逆転サヨナラという場面です!!』
ひなひな『そして――この、クライマックスの舞台』
ひなひな『そこに、立つのは――!!』
あんちゃん「―――」
ザッ
『3番、ピッチャー、伊波』
えみつん「………」
えみつん「……あんちゃん」
フッ
えみつん「また――戻ってきて、くれたんだね」
あんちゃん「えみつんさん――」
あんちゃん「これが――正真、正銘」
あんちゃん「最後の、勝負です――!」
👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b) ふりりん…(´;ω;`)
ふりは4thで一皮も二皮もむけたと思う ワアアアアアアアッ!!!
キャアアアアアアッ!!!
アンチャアアアアアンッ!!!
ひなひな『9回裏、長きに渡る激闘のクライマックス!!』
ひなひな『この局面、全てを賭けて打席に立つのは、Aqoursのリーダー、伊波杏樹!!!』
ひなひな『Aqoursの全てを背負って立つのに、彼女ほど相応しい人物はいないでしょう!!!』
すわわ「あんちゃん……!!」
りきゃこ「お願い!! 頑張って!!」
あいにゃ「あんちゃんだったら、絶対打てるよ!!」
きんぐ「こうなったら、ホームラン狙ってけ!!」
きゃん「お願い……お願い……!!」
ありしゃ「――私たちの、想い。Aqoursの、未来」
ありしゃ「あんちゃんに、託すから」
あんちゃん「………」
あんちゃん「任せて。みんな」
クスッ
あんちゃん「打つよ。私!」
ザッ…! ウオオオオオオオッ!!!
ワアアアアアアアッ!!!
ひなひな『さあ、大歓声に迎えられながら、伊波が最後の打席に向かいます!!』
ひなひな『思えば、この9回のAqoursの、奇跡的な追い上げは、この伊波のヒットから始まりました』
ひなひな『小宮が鋭いヒットで続き、高槻が執念の内野安打で1点を返す』
ひなひな『トラウマを克服した逢田の2点タイムリー。諏訪は頭に死球を受けるも出塁、魔物を味方につけた小林も、ヒットを生みました』
ひなひな『足を痛めながらも、決死で駆け抜けた鈴木のバントヒット。粘る斉藤が、四球で望みをつなぎ――』
ひなひな『そして満塁から、降幡のバスターで、ついに2点差まで詰め寄ったのです!』
あさみん『……運よく、拾った点もあるかもしれません』
あさみん『しかし。あきらめない、伊波選手や鈴木選手の想いが、再びAqoursをひとつにし、一丸となって立ち向かったからこそ――』
あさみん『この、奇跡的な反撃を生んだのでしょう』
ひなひな『さあ果たして、“奇跡”は実を結ぶのか!?』
ひなひな『はたまた、厳しい現実が、Aqoursの前に立ちふさがるのか!?』
ひなひな『全ては、この新田と伊波、最後の対決にかかっています!!』 えみつん「………」
えみつん(最後の……勝負、か……)
フゥ…
えみつん(こうして、みんなと、一緒にいられるのも……あと、少し)
クス…
えみつん(最後は……勝ちたいな)
えみつん(あんちゃん……貴方たちに)
みもりん「………」
みもりん「……すみません。タイム、お願いします」
ザッ…
みもりん「……えみつん」
えみつん「!」
えみつん「すず……」
ひなひな『おや……これは?』
ひなひな『マウンドの、新田のもとに……キャッチャーの三森、そして内野陣のみならず』
ひなひな『外野も含めた――全員が、集まります』
ザワザワ…!!
8人「………」
えみつん「……みんな……」 えみつん「………」
えみつん「ごめん……ね」
えみつん「わがまま言って、投げさせてもらってるのに……点、取られちゃって……」
えみつん「みんなの、想いを……μ'sの名前を、背負ってるのに……」
8人「………」
シカコ「……なに言ってんだよ、えみつん!」
えみつん「……え?」
ぱいちゃん「さっきも言ったじゃん。えみつんがいたから、ここまで来れたんだって!」
りっぴー「この試合だけじゃないよ。ファイナルまで、ずっとウチらのこと、引っ張ってくれた」
うっちー「最後のマウンドを、任せられるのは……えみつん以外、いないよ」
えみつん「……!!」
ジョルノ「無茶すんな……とは、言ったけど。いいよ、ここまで来たら、気の済むまでやりなって」
くっすん「そうだよ!! μ'sに勝つなんて100まんねん早いって、見せつけてやれー!!」
そらまる「リーダーの、μ'sのカッコいいとこ、見せてやろうって!」
みもりん「……えみつん」
ニコ…
みもりん「最後は、思いっきり。えみつんの、好きな球を投げなよ」
えみつん「………」
えみつん「みんな……」 えみつん「ありがとう……みんな」
えみつん「………」
えみつん「もうすぐ……この試合も、終わりなんだね」
みもりん「うん……」
えみつん「……久しぶりに、9人でこうやって集まって、思いっきり頑張って……」
えみつん「それも、もうすぐ終わりだって、思うと……」
えみつん「ちょっとだけ……さびしいね」
うっちー「………」
うっちー「――それは違うよ、えみつん」
うっちー「私たちは――μ'sは、ずっと終わらない」
うっちー「離れてても……みんな、つながってるもの」
りっぴー「……さっすが、うっちー、いいこと言う!」
ぱいちゃん「でも……そうだよね。忘れられるはず、ない」
くっすん「離れてたって……ずっと、一緒!」
えみつん「うん……うん……!」
えみつん「………」
えみつん「……ね、みんな」
えみつん「手、つながない?」 グッ…
りっぴー「昔は、ライブの前。みんなで、こうして、手をつないでたっけ」
くっすん「こうやって、ずぅっと一緒に、頑張ってたよね。私たち」
ぱいちゃん「嬉しかったことも、楽しかったことも……」
ジョルノ「つらかったことも。泣いちゃったことも」
シカコ「毎日が、ドキドキで。冒険みたいだったよね、いつも」
そらまる「最初は、こんなにたくさんの人たちに応援されるなんて、夢のまた夢だったけど」
みもりん「そんな、無謀な夢から始まって……」
うっちー「奇跡のように、すべてがつながって……」
えみつん「また、この9人で」
えみつん「ううん。穂乃果たちも入れた、18人で――」
えみつん「こうやって、一緒のステージに立てたのは――」
えみつん「夢みたい、だね」
9人「―――……」
ひなひな『マウンドを囲み、手をつないだμ's――』
ひなひな『9人が――天を、見上げました』
ひなひな『その――見上げた、視線の先には』
ひなひな『天井越しに。どこまでも澄んだ青空が、広がっているのかもしれません――』
うっちー「ずっと――こうしていたいけど」
ジョルノ「だけど、ね。限られた時間の中で、輝くのが――」
りっぴー「スクールアイドル、だからね」
みもりん「そだね。そろそろ、今日のライブも、終わりだし」
シカコ「決着――つけて、やろーぜ」
えみつん「よし……!」
えみつん「行こう。9人で!!」 ワアアアアアアアアッ!!!
ひなひな『さあ、μ's守備陣、元のポジションに戻り――』
ひなひな『マウンド上には、新田!! ピッチャーの変更はありません!!』
ひなひな『μ's、最後まで、リーダーにその命運を託します!!』
えみつん「………」
あんちゃん(えみつんさん……!)
ひなひな『そして、その新田に挑むのも、リーダーの伊波!!』
ひなひな『こちらも、Aqoursの9人の想いを背負って、最後の打席に臨みます!!』
ひなひな『最後に迎えるのが、やはりこのリーダー同士の対決とは――もはや、運命と呼んで差支えないでしょう!!』 \プレイ!!/
ウオオオオオオオオッ!!!
ひなひな『審判の手が上がりました!!』
ひなひな『果たして勝つのは、新田か、伊波か!?』
ひなひな『μ'sか、Aqoursか!?』
あさみん『――おそらく、決まります』
あさみん『この対決で、全てが――!』
うっちー「えみつん……!」
ジョルノ「……いけ!!」
みもりん(思いっきり――ぶちかませ!!)
えみつん「」
ザッ…!
グワッ!!
ひなひな『ランナーがいるのに、振りかぶったぁぁぁ!!!』
ワアアアアアッ!!!
シュバッ!! あんちゃん「――!!」
ブンッ!!
ズバァン!!
\ストライク!!/
ウオオオオオオオッ!!!
ひなひな『新田、振りかぶっての、渾身のトルネードから、全力のストレート!!』
ひなひな『対する伊波も、初球からフルスイング!!』
ひなひな『正に、真っ向勝負です!!!』
ひなひな『そして、新田の球速は――』
ひなひな『――138キロを計測!!!』
オオオオオオッ!!!
あさみん『ここに来て、またしても、球威を取り戻した――!!』
ひなひな『新田も、μ'sとしてのプライド、想い、全てを賭けて臨みます!!!』 きゃん「ああ……あんちゃん、あんちゃん……!!」
りきゃこ「きっと大丈夫……あんちゃんなら……!!」
あいにゃ「だって、私たちの……リーダーだもの!!」
シュバ!!
バシィッ!!
\ボール!!/
ひなひな『これはよく見た!! ボール!!』
すわわ「そうだ、しっかり狙って……!!」
きんぐ「いいぞー、あんちゃん!!」
ありしゃ「絶対、いける!!」
キィンッ!!
\ファール!!/
しゅか「そうだー!! こうなったらどんどん打ってけー!!」
ふりりん「あんちゃぁぁぁん!!!」 みもりん(コースとかっ……駆け引きとか、もういいっ!!)
みもりん(えみつんの、全力の球を! 気持ちを乗せた球に、勝るものなんて無い――!!)
くっすん「そうだよ!! 全力の、えみつんは――!!」
ぱいちゃん「絶対、無敵だから!!」
そらまる「声優界最強、舐めんなよ!!」
ジョルノ「えみつん……!!」
バシィッ!!
\ボール!!/
シカコ「がむしゃらにぶつかってやれ!! それがμ'sだし!!」
りっぴー「えみつんなら、きっとやってくれる!!」
うっちー「頑張れぇぇぇぇっ!! えみつぅぅぅん!!!」
ガキィッ!!
\ファール!!/ ウオオオオオオオオッ!!!
ワアアアアアアアアッ!!!
ミューズ!!! ミューズ!!!
アークーア!!! アークーア!!!
ひなひな『全力でぶつかり合う、両者の姿に――』
ひなひな『スタンドからは、μ'sコールと、Aqoursコールの、大合唱!!!』
えみつん(――ふふっ)
えみつん(体も、痛くて。全身、クタクタの、はずなのに――)
えみつん(――なんだか)
あんちゃん(――はい。えみつんさん)
あんちゃん(なんだか――)
あんちゃん(すごく、楽しいです)
シュバッ!!
キィン!!
\ファール!!/
ひなひな『新田の渾身のストレートに、全力のバッティングで喰らいついていきます、伊波!!!』
ワアアアアアアアアッ!!! えみつん「はっ、はぁ……!!」
クスッ…
あんちゃん「はぁ、ぜぇ……!!」
ニコ…
あさみん『……!?』
あさみん(ふたりとも……笑ってる……?)
あんちゃん(楽しいのは――きっと)
あんちゃん(憧れの、えみつんさんと。憧れの、μ'sと)
あんちゃん(こうして、真正面から、力をぶつけあえるからなのかな、って――)
あんちゃん(私は――千歌と同じ。ただ、μ'sが大好きなだけの、普通の女の子で)
あんちゃん(μ'sは――ライブに行くたび、元気と、勇気をもらえる、憧れの存在で)
あんちゃん(ずっと、μ'sみたいになりたくて――)
あんちゃん(くじけそうになったことも、たくさんあったけど)
あんちゃん(9人で、必死に、頑張ってきて)
あんちゃん(そして今、こうして、全力でぶつかりあえるのが――すごく、嬉しい!!) えみつん(それは、私たちも、同じ――)
えみつん(ファイナルが決まった時は、悲しくて)
えみつん(2代目のグループが出来るって聞いた時も、正直、複雑な想いもあった)
えみつん(だけど――あんちゃんたちに会って。実際に、ライブを観て。確信できた)
えみつん(この子たちなら――私たちの、想いを)
えみつん(ラブライブを――きっと、受け継いでいって、くれるって)
えみつん(最初は、あんなに頼りなかった、貴方たちと――)
えみつん(こうして、全力でぶつかり合えるようになれたことが――)
えみつん(また、私たちが、全力のステージに立てたことが)
えみつん(すごく――嬉しい!!)
シュバ!!
ズバン!!
\ボール!!/
オオオオオオオオッ!!! りきゃこ「ツーストライク……」
ありしゃ「スリーボール……!」
みもりん(フルカウント……!!)
えみつん「………」
フゥ…ハァ…
あんちゃん「………」
ゼェ…ハァ…
ザワザワ…
ザワ…
シィィィ……ン
あさみん『……!!』
ひなひな『フルカウント……!』
ひなひな『大歓声から、一転……場内、水を打ったように、静まり返ります……!』 えみつん「ふぅ、はぁ……」
ニコッ…
あんちゃん「……!」
えみつん「あんちゃん――」
えみつん「次の、球」
えみつん「全力の、全力で――いくね」
あんちゃん「――はい!」
あんちゃん「望むところです。私も――」
あんちゃん「思いっきり――!!」
うっちー「えみつん……!」
しゅか「あんじゅ……!」 ザッ!!
えみつん(――ありがとう)
えみつん(あきらめないでいてくれて。全力で、ぶつかってきてくれて)
グワッ…!!
えみつん(貴方たちとの、ライブ――)
シュバッ!!
えみつん(――楽しかった!!)
あんちゃん「――!!」
ブンッ
カッッ
キンッ
あんちゃん(――Dear えみつんさん)
あんちゃん(私は――μ'sが)
あんちゃん(ラブライブが、大好きです)
あんちゃん(色んなステージで、まぶしいくらい輝いていたμ'sを見て)
あんちゃん(どうしたら、そうなれるのか)
あんちゃん(えみつんさんみたいなリーダーになれるのか)
あんちゃん(ずっと、考えてきました)
ワアアアアアアアッ!!!
ひなひな『打球が大きく上がったぁぁぁーー!!!』
ひなひな『右中間、伸びる、伸びる!!!』
あんちゃん(――やっと、わかりました)
あんちゃん(“私”で。“私たち”で、いいんですよね)
ドカッ!!
ひなひな『フェンス直撃ぃぃぃぃ!!!』
ひなひな『塁上のランナー、全力で走る!!!』
あんちゃん(大切な、仲間たちと一緒に)
あんちゃん(目の前の、景色を見て)
あんちゃん(まっすぐに、走り続ける)
ひなひな『三塁ランナー、ホームイン!!!』
ひなひな『一塁ランナーも、還ってくる!!!』
あんちゃん(それが、μ'sなんですよね)
あんちゃん(それが、輝くってことなんですよね)
ウオオオオオオオオッ!!!
ひなひな『ライト内田、ボールをとって――』
ひなひな『投げたぁぁぁっ!!!』
あんちゃん(だから、私たちは。私たちの、景色を見つけます)
あんちゃん(あなたの背中ではなく――)
あんちゃん(自分だけの景色を探して、走ります)
ひなひな『そして、打った伊波も、三塁を――』
ひなひな『回った、回ったぁぁぁっ!!!』
ひなひな『ピッチャー新田、ボールを中継して――』
ひなひな『バックホォォォォム!!!』
あんちゃん(みんなと――)
あんちゃん(大切な、仲間と、一緒に)
ズザザザザッ!!
バシィッ!!
ドカッ!!!
あんちゃん(――いつか)
あんちゃん(いつか――)
審判「アウトォ!!!」
審判「ゲーム――セット!!!」
μ'sが手つなぐ所とあんちゃんのモノローグが泣ける
シィ……ン
あんちゃん「………!!」
みもりん「………!!」
えみつん「――!!」
あさみん(審判の――宣告の、のち)
あさみん(一瞬、広い球場内は、静寂に包まれた)
あさみん(そして――審判の言葉の、意味を理解した、Aqoursナインは)
あさみん(ひとり、またひとりと、その場に、膝を崩した――) あんちゃん「………」
しゅか「………」
ふりりん「………」
ガクッ…
ありしゃ「………」
すわわ「………」
きんぐ「………」
ガク…
りきゃこ「………」
あいにゃ「………」
きゃん「………」
ズルッ… ひなひな『ゲーム――セット!!!』
…ワァァァァァッ!!
ひなひな『新田の投じた、渾身の1球――』
ひなひな『伊波のフルスイングがとらえた打球は、あわやホームランかという大きな当たり』
ひなひな『スタートを切っていた、三塁ランナー斉藤、一塁ランナー降幡が、ホームイン――』
ひなひな『しかし――μ'sは最後まで、気を緩めることはありませんでした』
ひなひな『ライトの内田が、熱投で痛む肘をものともせず、内野に返球』
ひなひな『中継したピッチャーの新田が、全力のバックホーム』
ひなひな『そして、しっかりとボールを受けたキャッチャー三森が、本塁に突入してきた伊波の生還は許さず、がっちりとブロック』
ひなひな『μ'sの2年生組がつないだリレーが、Aqoursのサヨナラを阻止したのです――』
ひなひな『最終的な、スコアは――』
ひなひな『――13対13――!』 あんちゃん「………」
ガク…
ひなひな『奇跡は――起こりませんでした』
あさみん『………』
あさみん『――しかし。9回ツーアウトランナーなしという、絶望的な状況から――』
あさみん『実に9点差を追いついた、Aqoursの執念と情熱は、本当に素晴らしかったです』
あさみん『一度はあきらめ、バラバラになったチームが――ちっぽけな希望を信じて、再びひとつになって、μ'sを最後まで追い詰めた』
あさみん『彼女たち、Aqoursでなければ、なしえなかったことだと思います』
あさみん『また、それを真正面から受け止め、最後まで戦い抜いたμ'sも、同じく素晴らしい――』
あさみん『伝説の、伝説たる強さ、大きさを、はっきりとAqoursに示しました』
あさみん『本当に――両チームとも、素晴らしいチームでした――!』 あんちゃん「………」
あんちゃん(……勝てなかった)
あんちゃん(“奇跡”は……起こせなかった……)
えみつん「――あんちゃん」
あんちゃん「……!」
ハッ…
あんちゃん(私が、顔を上げると――)
あんちゃん(そこに、いたのは。三森さんと内田さんに、体を、支えられている――)
あんちゃん(えみつんさん、だった)
あんちゃん「えみつんさん……」
えみつん「……あんちゃん」
えみつん「いい試合だったね」
ニコッ あんちゃん「えみつんさん、その……体は……!!」
えみつん「大丈夫――と、言いたいところだけど」
うっちー「無茶しちゃったからね。とーぶん、ゆっくりしないとね」
みもりん「うっちーが、それ言う?」
あんちゃん「えみつんさん……」
あんちゃん「……ごめんなさい。こんな、私たちと試合してくれるために……こんな、無茶を……」
あんちゃん「なんて言ったらいいか、私……!」
えみつん「………」
えみつん「……謝らないで。あんちゃん」
えみつん「だって、私たち。すっごく、楽しかったもの!」
あんちゃん「……!!」
ハッ りっぴー「最後、あれだけ粘るなんてねー。びっくりしちゃった!」
そらまる「そうだぞー、ほめてつかわす!」
あんちゃん「……!」
あんちゃん「μ'sの、皆さん……」
えみつん「………」
えみつん「……私が。私たちが、Aqoursのみんなに、野球の試合を申し込んだ理由」
えみつん「それは、東京ドームに立つ前に――みんなに、大切なことを、知ってもらいたかったから」
しゅか「……!?」
ふりりん「大切な、こと……?」 りっぴー「昔のウチらも、そうだったからさ」
シカコ「きっとこの先も、みんなの周りは、どんどん目まぐるしく変わっていく」
そらまる「同時に、色んな困難だって、降りかかってくる」
ぱいちゃん「大きな壁や、強敵に、ぶちあたることだってあるし――」
ジョルノ「たくさんの、いわれのない批判や、心無い言葉を浴びせられることだってある」
ありしゃ「………」
すわわ「………」
きんぐ「………」
くっすん「――そういう時! そんな、困難とかをぶっとばして、乗り越えられるように!」
みもりん「最後まで、あきらめない、強い気持ち」
うっちー「そして、仲間と、自分自身の力を信じて――本当の意味で、ひとつになる、チームワーク」
えみつん「そういうことを……改めて、みんなに、知って欲しかった」
りきゃこ「………」
あいにゃ「………」
きゃん「………」 えみつん「……だけど。もうみんな、知っていたことばかりだったのかもしれないね」
ジョルノ「こっちも、全力で。手を抜かずに、やったけど」
みもりん「たとえ、絶望的な状況に立たされても――そこから、這い上がり、立ち向かっていく強さ」
うっちー「十分、見せてもらったよ」
あんちゃん「………」
あんちゃん「皆さん……」
うっちー「……まあ、もし私たちに勝てなかったら、東京ドーム取りやめにさせるっていうのは、本気だったけど」ニヤ
あんちゃん「え゛」
みもりん「ねー、ファイナル終わって2年も経つウチらに負けてるようじゃ、ドームなんてねぇ」ニマニマ
えみつん「私たちが勝ったら、思い切ってドームで歌っちゃおうかとか言ってたしねー」プークスクス
あんちゃん「おお……」
ふりりん(やっぱ……この人たち……)
しゅか(ただもんじゃない……)
シカコ「ひひひ。ウチらに負けてたら、ドームライブ絶対阻止しようと思ってたもんねぇー」ギラッ…
りっぴー「ねー! どんな手を使っても……」ギラッ
そらまる「くっくっく……!!」ギラッ!
きゃん「………」
きんぐ(こえー……) えみつん「……ま、それはさておき」
コホン
えみつん「そんな感じでね。みんなに、野球対決を申し込んだんだけど」
えみつん「実際、試合してたら、ほんっっとうに楽しくなっちゃって!」
みもりん「Aqoursのみんなも、なかなかやるじゃん!ってなってきてねー」
うっちー「私たちも、全力でプレーできたの。負けたくない!って、本気で思えたしね」
ジョルノ「……ありがとね。私たち9人に、またこうして、本気で挑めるステージをくれて」
あんちゃん「………」
あんちゃん「皆さん……」 くっすん「ま、結局、私たちには勝てなかった訳だけれど」ドヤッ
ぱいちゃん「負けもしなかった訳だしね」
えみつん「だから、ね。あんちゃん――Aqoursの、みんな」
えみつん「東京ドーム――思いっきり、楽しんできて!」
あんちゃん「……!!」
ジョルノ「この試合、一丸になって戦ったみんななら、大丈夫」
えみつん「東京ドーム、丸さを楽しんでね!!」
そらまる「そうそう、とにかく丸いから!!」
うっちー「お客さん、一面のキラキラで、すっごく綺麗なんだよ〜♪」
えみつん「とにかく、すごいからね!!」
あんちゃん「あ……」
あんちゃん「ありがとうございます!!」
バッ!
きゃん「やっ……!!」
しゅか「たあああああああっ!!」
ダダダダッ! きゃん「あんちゃん、やった、やったよおおおお!!!」
あいにゃ「東京ドームだあああああ!! わああああん!!!」
きんぐ「きゃん、あいなちゃん、泣くな泣くなー!!」
ふりりん「あんちゃん、流石!! よくぞ打った!!」
しゅか「だけど、最後の本塁狙ったのは暴走気味だったんじゃないのー!?w」
あんちゃん「そ、そんなことないし!!」
りきゃこ「私たち……立てるんだ……!!」
すわわ「東京ドーム……!!」
ありしゃ「あの日、μ'sが、立ってた場所へ!」
あんちゃん「よぉぉーっし!!」
あんちゃん「行くぞ!! 東京ドォォォォム!!!」
ワアアアアアアッ!!
ひなひな『伊波のもとに集まり、喜びを爆発させるAqoursの9人!!』
ひなひな『μ'sの、想いを受け継いで――』
ひなひな『ついに、東京ドームの舞台に立ちます!!』
あさみん『この試合を通じて。改めて、諦めずに立ち向かう想いと、仲間との絆を強めた、9人なら――』
あさみん『きっと、大丈夫でしょう。さらに大きく、羽ばたいてくれるはずです――!』 うっちー「……ふふっ」
ぱいちゃん「でも、なーんかね。ちょっとだけ、思っちゃうんだよねー」
りっぴー「ウチらが、勝ってたら――また、9人でドームに立てたかも、って」
シカコ「まーね。でもそれは、言いっこなし」
ジョルノ「あの時の、あの瞬間は、私たちだけのものだし」
みもりん「それを、大切にしたいって気持ちも――確かだしね」
くっすん「仕方ない。今回は、後輩たちに譲ってあげよう!」ドヤッ
そらまる「ウチらの後を継いで、ドームに立つからには、中途半端なライブじゃ承知しないんだからなー」
うっちー「私たちの思いも、受け継ぎつつ――」
えみつん「きっと、あんちゃんたちは――あんちゃんたちだけの景色を、ドームで、見つけてくれるよ!」
ワアアアアアアッ!!
パチパチパチッ!!
ひなひな『9回の激闘を戦い抜き、素晴らしい試合を見せてくれた、μ'sとAqours、両チームのナインに――』
ひなひな『スタンドからは、万雷の拍手が鳴り響いています!!』 審判「それでは――」
審判「両チーム、整列!!」
ひなひな『両チームのナインが、改めて向かい合い、整列いたしました!!』
ひなひな『――素晴らしいピッチングがありました。バッティングがありました。守備がありました』
ひなひな『勝利を願う執念がありました。絶対に負けないという、あきらめない想いがありました』
ひなひな『この試合で、両チームが見せてくれた、すべてのプレーが――』
ひなひな『心を揺さぶってやまない、名場面だったといえることでしょう!!』
ワアアアアアアッ!!
パチパチパチッ!!
ひなひな『スコアは――13対13!!』
ひなひな『μ'sと、Aqours。どちらも、勝利者と呼ぶに、ふさわしい』
ひなひな『――見事な、引き分けでした!!』 審判「――礼!!」
μ's「本日は!!!」
Aqours「本当に!!!」
18人「ありがとうございましたぁぁぁぁっ!!!」
ワアアアアアアッ…
パチパチパチパチ…
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃ ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃
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┃μ┃3 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃9 ┃0 ┃
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┃A ┃0 ┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃3 ┃0 ┃0 ┃9 ┃
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μ'sバッテリー:内田、新田 ― 新田、三森
Aqoursバッテリー:伊波、小宮、伊波 ― 逢田
本塁打:新田(1回)、南條(8回)
あんちゃん(月日は、流れ――)
あんちゃん(私たち、Aqoursは)
あんちゃん(東京ドーム公演、本番を迎えました)
〜2018.11.18 東京ドーム〜
あんちゃん(2日間に及んだ東京ドーム公演も、ここまでは大成功!)
あんちゃん(私たちは、2日目ラストの、お知らせ発表に臨んでいました)
ありしゃ「行きますわよぉ……」ドヤァ
ありしゃ「生徒会長パワー!! はぁ!!!」
シーン
ありしゃ「……鳴りませんわ」
キーンコーンカーンコーン
\ワハハハ/
8人「wwwwwwwww」 \ドン!!/
『Aqours World LoveLive! ASIA TOUR 2019開催決定!!』
\ドドン!!/
『Aqours 5th LIVE開催決定!!』
あんちゃん「そしてそして〜!!」
あんちゃん「なんと、私たち……!!」
\ドドーン!!/
『NHK紅白歌合戦 出演決定!!!』
ワアアアアアアッ!!!
あいにゃ「やったね〜!!」
きゃん「紅白だよ、紅白!!」
あんちゃん「嬉しい〜〜!!」
???『ちょぉっと、待ったぁぁぁぁぁっ!!!』 しゅか「……へっ!?」
きんぐ「え、なに、今の」
ふりりん「ま、マジで聞いてない、聞いてない……」
りきゃこ「……あ!! ちょ、ちょっと、モニター見て!!」
ザザッ…
えみつん『その、紅白出演!!』
えみつん『ちょっと、待たれよ!!』
あんちゃん「え、」
9人「えみつんさん!?!?」
ウオオオオオオッ!!!
ワアアアアアアッ!!!
エミツゥゥゥンッ!!! みもりん『えー、ひとまずは、Aqours……ダッタッケ?……の、みなさん』
うっちー『紅白出演決定、おめでとうございます♪』
ふりりん「な……な……!」
すわわ「他のμ'sの、皆さんまで……!?」
くっすん『……だが!! 私たちは、思ったのです!!』エッヘン
ぱいちゃん『紅白といえば、選ばれたアーティストのみが立つことを許される、憧れの舞台!』
そらまる『果たして、Aqoursのみんなが私たちみたいに、あの紅白という大舞台に立つ資格があるのかどうか?』
りきゃこ「ま……」
しゅか「まさか……!?」
えみつん『……という訳で!! 改めて、紅白出場資格を賭けて!!』
えみつん『野球で、勝負だぁぁぁっ!!!』
Aqours「ええええええ!?!?」 ジョルノ『……ま、ぶっちゃけて言うと、この間の試合で勝てなかったのが悔しい人が、結構多いみたいで……私は別に……』
シカコ『何言ってんの、よしのん!! やるからには勝つよ、絶対!!』
りっぴー『まあ、そんな感じなのでぇ。Aqoursのみんな、改めて、よろしくね♪』
ワアアアアアアッ!!!
ウオオオオオオッ!!!
あいにゃ「え……ちょ……」
きんぐ「ま、マジで……!?」
???「――その話!!」
???「ちょっと、待ったぁぁぁっ!!!」 デンデンデンデン
デンデンデンデン
\サイコーダトイワレタイヨ/
\シンケンダヨWe gotta go!/
ひなひな「紅白出場権を賭けた、野球対決なら――!!」
あさみん「今回は、私たちも――参戦させてもらうわ!!」
あんちゃん「なぁっ!? アサミさん!?」
ふりりん「ひなひなも!?」
ウオオオオオオッ!!!
アサミィィィンッ!!!
ヒナヒナァァァッ!!! あさみん「いやあ、みんな、この間の試合、ほんとすごかった!!」
あさみん「なんかみんなの試合を見てる内に、野球好きの心に火が点いちゃってね!!」
ひなひな「という訳なので。私も、紅白って一度出てみたいし」
ひなひな「みんな、姉様のわがままに、付き合って欲しいなー、なんて」
きゃん「いやいやいや!! Saint Snowって、2人しかいないじゃん!!」
しゅか「どうやって試合するつもりなの!?」
ひなひな「まあ私は、九九組のみんなに声かければ、なんとか……」
あさみん「私も、知り合いの阪神の選手に頼んで、助っ人を……」
きんぐ「いやいやいや、駄目だろそれ!!」 ???「――そういうことなら!!」
???「私たちも、試合を申し込みます!!!」
カッ!!
りきゃこ「こ、今度は何ー!?」
すわわ「あそこ、関係者席に、ライトが当たって……!!」
あぐぽん「私たちも、μ'sとAqoursの皆さんの、ライブや試合を見て、感動しました!!」
ともりる「憧れの先輩方にぃ、追いつけるようにー!!」
あかりん「私たちも、野球で挑みたいです!!」
きゃん「げっ!? 虹ヶ咲まで!?」
きんぐ「あーもう、めちゃくちゃだよー!!」
しゅか「どうするの、あんじゅ!?」
あんちゃん「……!!」 あんちゃん「……決まってるよ」
あんちゃん「私たちは、もう、負けない。迷わない」
あんちゃん「たとえ、この先、どんな困難が待ち受けてても――どんな、強敵が挑んできても――」
あんちゃん「この9人なら、絶対大丈夫!!」
あんちゃん「みんなを信じて――」
あんちゃん「私たちだけの景色を、もっと、もっと、見つけに行くんだから!!」
しゅか「……あーあ」クスッ
ありしゃ「……まあ、でも」
りきゃこ「そうこなくっちゃ、ね!」
えみつん『……ふふっ』
えみつん『うん! あんちゃん、いい返事だねっ!!』
えみつん『――それでは!!』
えみつん『紅白歌合戦で、ライブをしたければ……!!』
あんちゃん「野球で――勝負!!」
〜おしまい〜 東京ドーム公演の前に完結させたいと思っていましたが、ここまで長くなってしまったのは予想外でした
しかし、なんとか紅白前に完結させることが出来て良かったです
読んで頂いた方、どうもありがとうございました
いつか、スクールアイドル合同の野球大会や大運動会が見てみたいですね
そして、紅白の舞台に挑むAqoursを応援しています お疲れ様でした
各キャラへの愛と野球への造詣の深さ、展開の上手さで楽しませて貰った
紅白もいっそう楽しめそうだ 乙でした!
夏からずっと追ってたけど野球もキャストの描写も丁寧ですごく楽しかったよ
九九組や虹ヶ咲との試合も見てみたい 乙です
よく完結してくれた
全員に見せ場があって面白かった おつおつ
めちゃくちゃ面白くて毎回の更新が楽しみだったよ
無事完走してくれてありがとう 9回2アウトから打者1巡するとかやりたいことはわかったがやりたいことは分かるけどグダクダだったわ
まぁ、おつかれ お疲れ様ですた!
やきうはあんまりわからないんだけど、
各メンバーのエピソードがしっかりしてて面白かった!
それでは良いお年を ノシ >>533
おめーのコメントの方がグダグダじゃねーかwww
書き込む前に推敲くらいしろや
作者はお疲れー
ここ最近のSSじゃ一番更新が楽しみだったわ おつおつ、熱すぎて何度泣いたか…
野球もラブライブも知識量とそれを引用できる構成力が素晴らしかった 中の人SSってあんまり読まないけど楽しかった
野球知らなくてもスラスラ読めたよ 中の人SSってあんまり読まないけど楽しかった
野球知らなくてもスラスラ読めたよ 完走乙です
野球はバントくらいしか知らないんですが、このssが最近一番の楽しみでした
中の人ssは、実在する人間へのリスペクトが欠けている感がして、そこまで好きではなかったのですが、>>1さんのssはスラスラ読めました
最後も、なんというか、無印編の最終回の、劇場版を控えている事を知った時のドキドキさがよみがえって、めちゃくちゃ良かったです
良いものを読まさせて頂いてありがとうございます ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています