真姫「ダイヤモンドプリンセスの憂鬱」
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1943年10月、第二次世界大戦末期・米国。
後に日本・広島/長崎への原子爆弾の投下という帰結を迎える「マンハッタン計画」はちょうど中盤に差し掛かっていた。
科学部門責任者、Dr.ニシングストンはマンハッタン計画に自身の優れた頭脳を提供する事と引き換えに、莫大な研究資金は勿論、その他予備費の名目でその年の科学研究予算の2割程度を彼個人が受け取ったとまで囁かれた。
そんな噂を知ってか知らずか、彼はロサンゼルスの一等地に豪奢な屋敷を建てる。
ただ、彼自身は研究の為ロス・アラモスに赴いている今、屋敷では1人のメイドと暇を持て余した令嬢が静かに映画を観るだけである。 ホノマキ「………………」
エリ「あ、マキちゃんマキちゃんいらっしゃい。お姉さんと一緒に帰ろうねー」
ニコ「……ほら、行きなさい」
スタスタ…スタ
エリ「………………」ニヤッ
マキ「……(そろそろ?)」
ガチャン!……アレ?……ガチャン!……!?!?…ガチャンガチャン!!!
ホノカ「何これ…電気、落ちないよ…!」
ニコ「何よ……どういう事…!?」
ヒフミ「……ホノカさんが、失敗した!?」
マキ「何やってるのよ!ホノカァ!!」
リン「(ふむ。リンが作戦を把握してたかはわからんが、とりあえず先にホノカちゃんが失敗したみたいにゃ。ラッキー)」
エリ「責めないであげて…?電源対策なんて、ここに入る前にしてあるわよ」フフッ
エリ「残念ね…貴女たちは約束を破った…全員、ここで死んでもらいます」
ニコ「(何よこの迫力…この圧倒的人数差で…)」
ニコ「…勝てない……」
バタァーン!!
ハナヨ「エリーナ・アヤシェニコフ!じゅ、銃を捨てて大人しくしなさい!!」
マキ「!?ハナヨ!!」
ニコ「もう…誰よ今度は……」
ハナヨ「うわぁぁぁあ!!」パァン パァン パァン −−−−−同時刻 ニシングストン邸-Dr.ニシングストン書斎
海未「これも違う…これも違いますね……ん……(鍵……この部屋のどの鍵穴とも形状が違う…隠されてるのか、それともこの部屋ではない所に最重要機密を…?)」
海未「(見取り図、そして今までの全ての物の購入記録も手に入れてある。
この邸のことは既にインプット済み。
この邸、この邸にあるものは全て確認した…それでもマンハッタン計画についての資料はない…最初から無かった?)」
海未「(いや、そんなことはない…事前に元研究員を誘拐して自白剤を投与した時にそれは確認済みだ…
こんなことなら、警備が常につくからといってニシングストン本人を避けず、やつを誘拐すべきだったか…?)」
海未「(とにかく考えろ…発想が違う?相手はあくまで科学のプロ…情報のプロではない…
そんなやつはどうする?相手と同じ思考に、同じ精神を…)」
海未「(私はDr.ニシングストン。
国家の最重要機密プロジェクトの責任者であり、責任者である以上そのデータを管理している。
では、どこに管理しようか…やはり、自分の書斎が無難だろうか…
いや、いや、そんな所では誰かに盗み出されてしまうかもしれん…ふーむ、意外なところ、意外なところ……)」 海未「(そういえば、ノゾミが言っていた。ドイツのUFO兵器のデータは、マキちゃんの太腿に埋められていると…その発想は、どこから?他人から?かもしれない…でも、以前の経験を元にしたものだとしたら?)」
海未「(やたら催吐薬が多いと思っていた。このうちの大型犬は馬鹿だからすぐ何か飲み込んでしまうのだろうと。そうじゃない、そうじゃないのか)」
海未「わんちゃーん、ポチ、わんわん!」
海未「ほら、これねぇ、飲んで飲んで」
海未「あぁーいい子いい子、お、吐きたい?吐きたいの?良いよぉー」
犬「オエエエエ」
海未「………………当たり。やりましたね」
海未「……………」ペラペラ
海未「……早すぎましたか」
実はこの1943年11月現在、日本への原爆投下は決定していたものの具体的な投下先の都市はまだ候補地すら決まっていなかった。
日本はアメリカの原爆開発の実態を正確に把握しないまま工作員を派遣したのであった。
その為海未は当初の目的であった具体的な原爆投下先を特定することなく、マンハッタン計画の進行具合・詳細といったデータのみを獲得したのである。
海未「さて……一応私の目的は果たした訳ですが…もう日系ロス市警を演ずる必要も無いのですが…」
海未「どうしますかね…マキでも探しますか。それに、ノゾミの方の用事はまだ終わっていないようですし(落ち目のドイツに、わざわざ構って得るものもないですけど)」
海未「せめて、コトリにチェスで勝ってから帰りましょうか(ふふふ、そう簡単に勝てると思わない方がいいよ?海未ちゃあん)」 −−−−−カリフォルニア州-ロサンゼルス郡-サンタモニカ市-NightCafe NikoNie
ハナヨ「うわぁぁぁあ!!!」パァン パァン パァン
ニコ「危ない!マキに当たるわよ!」
ハナヨ「………!」パァン…ピタッ
ホノカ「(最後の1発が…!!)」
ヒフミ「(電球に当たった!!)」
リン「(あれ?なんかチャンス?)」シュイッ!
エリ「ゔっ……!(対応できなかった…でも、平行な蹴りだったのが幸いしたわね、これで間合いから外れた…このまま蹴られた勢いで…!)」
リン「ねぇ!貴女の隣!!!」
ハナヨ「えっ!?私っ!!?(暗くてわかんないよ…)」
エリ「………(扉は空いたまま…逃げられるっ)」シュッ
ニコ「その辺にロウソクがあるわ、着けて」
…ボォッ
ホノカ「いない………」
リン「ちっ……」
ニコ「店に変なの呼び込むんじゃないわよ、当てつけ?」
マキ「子供みたいな難癖つけないでよ。そんなわけないでしょ」
ハナヨ「あの…お二人はどういう御関係で…?」
ニコ「……一年くらい前、仲が良かったのよ。とってもね」
ハナヨ「…!あ…なるほど……」
マキ「私は…まだ」 ニコ「ま、この子はまだ夢見てるみたいだけど。眼を覚まさせるのは、あんたの仕事。“Teenage daydreamer”なのよ」
ニコ「ハイスクールの女の子が、特に今まで大事に大事に、硬い硬い結晶の中で守られて育った“ダイヤモンドプリンセス”はそうなりがち……」
ニコ「“敷かれたレールを走る人生”上等じゃない!あんたの“レール”は、“現実”は、上等じゃないのよ!!誰しも時代と社会が敷いたレールの上を走ってるのよ…?」
ニコ「無理矢理脱線させられて、横転して…!そこで二度と立ち上がれない人だっているのよ…!!
自分で脱線する意気地も無いやつが、わがまま言うんじゃないわ…あんたのことよ、マキ。“ダイヤモンドプリンセス”」
マキ「ニコちゃん…私…」
ニコ「一方私は“ドラムマガジンシンデレラ”、硝煙と灰塵まみれの薄汚れ……あんたの隣は歩けない。あんたの肩が汚れちゃう」
マキ「気にしないわ…そんなの」
ニコ「“私と一緒にどこか遠くに”なんて、“夢みたいなこと”考えてるんじゃないでしょうね」
ニコ「やめときなさい。夢に揺れる美少女なんて、映画だけの出来事で良いわ」
ニコ「そんなこと、本当は誰だってわかるはずでしょ」 ニコ「私たちはどうあがいても、“現実に揺さぶられる”ことくらいしか出来ないし、最後に戻るのも、現実」
ニコ「あんたの“現実”はあの子…良いじゃない、ハナヨ。良家の才媛で、家庭的で、真面目で誠実。
限りなく現実的で、そして求めうる最高の相手よ。あんたみたいなわがまま娘には勿体ないくらいよ」
マキ「それでも、私は……!!」
ニコ「“夢を追いたい”って?馬鹿。いつか覚めるのよ。それが早いか遅いかだわ」
ニコ「もう寝なさい。赤毛。夜ならいくらでも夢を見ていいわ。
だけど、あんたは私みたいに前の見えない夜の世界で生きる必要は無い。
胸を張って昼の世界を生きる資格がある。夜眠って、朝起きて、また違う夢を見ればいい。あんたには戻るべき現実があるわ」
マキ「…マキよ」 ニコ「………そうだったわね。もう帰りなさい…散らかった電球、片付けないと」
ハナヨ「失礼します…おやすみなさい」
マキ「…おやすみなさい」
ホノカ「おやすみー」
リン「おやすみにゃ!」
ヒフミ「おやすみなさーい」
ガチャ…バタン
ニコ「………あの子は“夢”から覚めないと…だから、これで良いのよ」
リン「ニコちゃん、ニコちゃんは自分を、マキちゃんにとって“夢”だと言うけれど、本当にそうなのかな?リンは違うと思う」
リン「2人とも、前は長いこと仲良かったんでしょう?
それって、きっかけは“夢”みたいなものだったとしても、結局覚めなかったと言うことじゃない?」
リン「“覚めない夢”は夢じゃない。
それはもう、現実でしょう?」
ニコ「さっきも言ったはずよ…“いつかは覚める”そのいつかが、まだ来ないだけよ」
ホノカ「昔と今の恋人、その間で揺れる美少女…何だか“カサブランカ”みたいだね?」
ニコ「全っ然違うわよ!良い?あの映画は…」
ホノカ「あぁ、ごめんごめん。
でも、何となくわかったの。
どうして正反対の2人が、同じ映画を大好きになったのか」
ニコ「何よそれ…てか、私その話したっけ?」
ホノカ「だってさっき言ってた、“色々思い出すから嫌なんだけど…!!”って、マキちゃんの事でしょ?」
ホノカ「As time goes by (時が過ぎても)…だね?」 ーーーーーカリフォルニア州-ロサンゼルス郡-サンタモニカ市-ニシングストン邸
マキ「私、どうすれば良いのかしら。ニコちゃんの言うこともわかる。
つい冷たくしちゃうけど、ハナヨは優しいし、私の事を大切にしてくれている。
お金持ちだし、教養だってある。
でも、私は同じくらい、ニコちゃんにも惹かれてしまう」
海未「ニコは、自分のことを“夢”と言ったのですね。夜にしか存在できない儚いものだと」
海未「そうね….そこまでポエミーではないわ」
海未「(園田、紅潮)とにかくまぁ。けれどマキ、夢と現実…これらは容易に2分出来るものでしょうか?」
マキ「当たり前じゃない。」
海未「(園田、失笑)ふふ、浅いですね。マキ」
マキ「……」
海未「わわ、すみません。驕りました」
マキ「(どうやら海未は、自らのインテリジェンスを自慢して楽しむ可愛げを持っているらしかった。可愛い)…いいから、続けて」
海未「えぇ、では…つまり、現実も夢も、きっぱり線引きできるのかという事です。
たとえば、今マキと話している私は、本当に現実の園田海未でしょうか?
もしかしたら、まだマキは夢から覚めていない…いえ、マキそのものが誰かの夢の落とし子なのかもしれません」
マキ「ありえない、私は私。現実にいるマキシナ・ニシングストンよ。夢じゃないわ」
海未「そうでしょうか?“私は夢かもしれない”その懐疑そのもののみが、確実にあるといえると、私は思いますよ」
海未「マキ…貴女は目に見える全てが、現実だと断言できますか?」 マキ「……結局、何が言いたいのよ」
マキ「すみません、脱線しましたね。
私が言いたいのは、現実と夢に大した差はないという事。だから、どちらかを選んでも後悔しないという事です」
マキ「どちらを選ばなくても、後悔するということでは無くて?」
海未「そうとも言いますね」
マキ「あなたはどう思う?私は“夢”と“現実”どちらを選ぶべきかしら」
ノゾミ「うーん。そういえばウチな、一昨日こんな夢みたんよ」 マキ「は?夢?」
ノゾミ「ウチがホットケーキ作ってな…最初めっちゃ不安なんやけど、超上手くできるんよ。美味しかったわぁ」
マキ「え?夢の話よね?」
ノゾミ「うーん、一応ね。その、朝ご飯にホットケーキ作った夢なんよ。
そしたらめっちゃ上手くいったんよねぇ。ウチ、むかーし初めてホットケーキ作ってから、本当に不味いのしか作れたことなかってん。
絶対絶対、今回も上手くいかないと思ってたんよ。だからさっきの夢を見た時も、すごい嬉しいと同時に、寂しくもあった」
マキ「…だから何なのよ」
ノゾミ「現実が非現実的な夢に追いつくこともある、ってこと。
だから現実をつまらないと思っちゃダメ。
そして同時に、夢だからあり得ないなんて思っちゃダメ」
マキ「何よそれ、結局追いつくなら“夢”も“現実”も大差ないじゃない」
ノゾミ「そう、そうなんよ。てか、ウチ、まだ任務達成してないんやで?皆忘れとるかもしれんけど、ウチ、未だにマキちゃんの事狙っとるからな?」
マキ「知ってるわよ…それより、パンケーキ、作ってよ。みんなで食べましょう?…コトリ、明日の朝はパンケーキの用意になさい」
コトリ「はい、お嬢様」
マキ「待って…貴女は、メイドとしてでは無く…コトリはどうすれば良いと思う?」 コトリ「ずっと昔から“マキちゃん”を見てきた私はこう思うんだ…
私は、マキちゃんに沢山の質問や相談をされて、それに答えてきた。
マキちゃんは、大抵その答え通りにきてしまった。そうさせてしまった。
だから、その問いには答えない。マキちゃんが自分で、もしくは“ニシングストン家の外で”考えるべきことだと思うから。
私、メイド失格かな?マキちゃん」
マキ「いいえ、貴女は間違っていないわ。ありがとう」
次の日の朝、私たちは皆を呼んでパンケーキ・パーティをした。
私と海未はあの甘い丸の呼称を『ホットケーキ』と『パンケーキ』のどちらにするかで揉め、ノゾミとニコちゃんは『パーティ』と『パーティー』の違いについての建設的な議論をした。
コトリは嬉しそうにどんどんパンケーキを焼いて、リンちゃんは何だかハナヨと仲良くなっていた。
私と海未の議論は『表をホットケーキと呼び、裏をパンケーキとする』という結論に落ち着いた。
もちろん、ホットケーキ/パンケーキに裏表などはない。
つまり、やはりこの両者も本質的には何も変わらないのだ。“夢と現実”と同じように。 ニコ「あんたたち、よくそんな下らないことで延々と話し合ってられるわね(ニコ、嘆息)」
マキ「小さなニコちゃんには、私たちの高尚な会話がわからないのよ(ニコ、短足)」
ニコ「ちょっと…今馬鹿にしたでしょ。…まぁいいわ。
それに、そんなのわからなくても良いわよ。ホットケーキでもパンケーキでも、変わらないじゃない。表と裏で名前変えたって“それ”に表も裏もないじゃない」
マキ「そうよ。“表と裏”、一見正反対に見えるものでも、そこに本質的違いは無いわ。
表裏一体。バカと天才は紙一重よ」
ニコ「その通りよ。二つの真逆なものの間は決して超えられない何か、例えば一枚の紙によって隔ててあるの。たかが紙一枚、されど紙一枚よ。昼が夕方を挟まずに夜が存在しないように、故に昼と夜が交わることは決してあり得ないの」
マキ「私とニコちゃんの間にも、紙が挟まっているの?」
ニコ「そうよ、1枚の、でも分厚い1枚が」 −−−−−−
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コトリ「…あれ?お嬢様は?」
ニコ「どーせまたどっか行っちゃったんじゃないの?」
ハナヨ「大丈夫かなぁ?」
リン「カヨちん!何ならリンと結婚するにゃあ!」
海未「ノゾミもいません。これはひょっとするとまずいですよ……!……車は!?」
コトリ「あ……旦那様の車が……」
海未「おそらくこっそり合鍵を作っていたんでしょう。平和ボケしていました……
(まぁ、一応枢軸国同士同じ作戦に就いた仲間なので、ノゾミが任務を達成するのは別に困らないんですけど。
ここはこういうノリで行くべきですよね?…多少心配ですし)」
ニコ「連れ去られたって事!?なんでよ…!」
コトリ「2人には言っていなかったんだけど、ノゾミちゃんってドイツのスパイなの…」
ニコ「はぁぁぁあ!?海未とノゾミはロス市警って聞いたわよ!?」
海未「それは偽装です。
マキの太腿にはドイツのUFO兵器のデータメモリが埋め込まれています。ノゾミの任務はその回収です。(まぁ、ここまで来たらもう言っても良いでしょ)」
リン「……その話が本当だとして、同じ枢軸国側の海未ちゃんがどうしてそんなに軽々とノゾミちゃんの話をするの?」
海未「鋭いですね。ただもう、日本はドイツに価値を見出していないのですよ。
敗戦色濃厚ですし。戦後の為にはアメリカに媚びを売っておくのが得策というものです」
ニコ「したたかね…まぁいいわ、とりあえず2人を探さないと…」
リン「でも、どこを…」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b) 海未「ノゾミは任務達成を、帰国を焦っているはずです。それに加えて、マキという大きな荷物を抱えている…………空港でしょう」
ニコ「こっから一番近い空港は…!?」
リン「ここから車で50分、ロサンゼルス国際空港だにゃ!」
コトリ「海未ちゃん!例の写真も無くなってる…!」
海未「間違いないですね、ニコ、車を出して下さい」
ニコ「わーかってるわよ!リン、ほら鍵!」
リン「はいよっ」シュタタタッ
【使用車両:1928年キャデラックタウンセダン (Cadillac townsedan) 防弾装甲仕様】
ハナヨ「あの…私も一緒に…」
海未「…」チラッ
ニコ「……あんたも来るに決まってるでしょ」
ハナヨ「ありがとうございます!」
海未「(でもまぁ素人ですからね…正直来ない方が…)」
コトリ「じゃあ、私は待ってるね?」
海未「え?(読まれた?心読まれた?)」
コトリ「マキちゃんが帰ってくる場所を、守らないといけないし」
海未「……そうですね、それが出来るのは貴女だけです」キリッ
コトリ「海未ちゃんの足でまといになりたくも無いし?」ニヤッ
海未「……………ハナヨやニコには内緒で(軽蔑されます、それはちょっと気まずいです)」
コトリ「はいはい、じゃ、いってらっしゃい」 ニコ「さ、行くわよ。リン!」
リン「久しぶりに飛ばすにゃあ!!!」
ハナヨ「ピャッ…!!まだシートベルトがァ」
海未「(酔ってきましたね、既に)」
−−−ーーカリフォルニア州-ロサンゼルス市-Lincoln Blvd/州道1号線PCH(Pacific Coast Highway)
リン「……?あれ……」
ニコ「ん?どうしたのよ」
リン「……止まる……」
ニコ「……………え」
海未「(やられましたね。ノゾミ、急拵えの計画と思いきや案外周到ですね…)」
ハナヨ「ど、どうしよう………あ、あれ!?」
エリ「あら、何してんのよ」 ニコ「はぁ!?こっちのセリフよ!」
エリ「帰るのよ、ソ連に」
海未「…任務はもう終わったのですか」
エリ「終わったっていうか、まぁ……それで何してるのよ。こんな所で止まってると道の邪魔よ?」
リン「突然止まっちゃったんだにゃ…助けて!エリちゃん!」
ハナヨ「ぇえ、でもこの人…」
エリ「別に良いわよ。乗りなさいよ」
【使用車両:マーキュリークーガー XR-7 コンバーチブル耐火特殊仕様】
ハナヨ「ノセテッテクレルノォ!?」
エリ「なんか勘違いしてるかもしれないけど、任務だから敵対してただけなのよ?それが終わった…っていうかまぁ…うん、とにかく今となっては良いのよ。
別に私、そんな冷たい女でもないし…」
ニコ「なんか腑に落ちないわ…」 −−−−−マーキュリークーガー-車内
リン「暑い……」
ハナヨ「さすがに狭いですね…」
エリ「それで、何であのドイツ人がマキを狙ったのよ」
リン「あのね、ノゾミちゃんはドイツのスパイで…」
エリ「それは知ってるわ。マキにどう狙われる理由があるのかって事よ」
海未「マキの父親は、秘密裏に撃墜されたナチの試作秘密兵器を解析、そのデータを複数のメモリに保存し、1つをマキの太腿に埋めこみました。
ノゾミは残りのメモリを全て回収し、最後の1つをマキから奪おうとしています。マキがその理由まで知っているかはわかりませんが…」
エリ「沈みゆく第三帝国号、最後の希望というわけね。それはアメリカに取られる訳には行かないでしょう。
ただ、ドイツが力を取り戻すのはうちも頂けないわ…やはり、止めた方がいいわね」
海未「まぁ、ノゾミ曰く、総統殿はそれを最後の希望と見ていないようですが」
エリ「…そんなんだから負けるのよ。当然ね」
エリ「貴女は、日本はどうするの?」
海未「負けるでしょうね。大日本帝国も沈みゆく船に同じ。
ですから今のうちにアメリカに媚を売っておこうかと思いまして」
エリ「ふーん」
この協力が功を奏したのか、後の国際軍事裁判において園田海未は一切その咎を責められることは無かった。
これにはアメリカの某研究者からの強い要望があったとか、なかったとか。 −−−−−ロサンゼルス国際空港-空き倉庫
マキ「……………」スゥ……スゥ……
ノゾミ「よく寝てるわ…すまんな、マキちゃん、ちょーっとだけ、脚にメス入れさせてもらうよ…」
ノゾミ「おぉ…スベスベや…わっかいなぁ…」サワサワ
ノゾミ「さて…そんなことはええねん…早速…太腿っちゅうても太腿のどこなのかは把握しきれてへん…適当にザクザク切って起きられても面倒やしな……」
ノゾミ「(上から押して異物感を確認するしかないか…すると…うん……やっぱり起こした方が早いな)」
マキ「……………!?…んー!んー!」モガモガ
ノゾミ「悪いけどマキちゃん、ちょーっとだけ、協力してもらうで?な?ウチがマキちゃんの太腿を圧す。その時異物感があるか教えて欲しいんよ。あったら頷く。無かったら首を振る。ええ?」
マキ「……………」ウン
ノゾミ「偉いな。嘘言ったら痛い目見るのマキちゃんやからな?そこはわかっとくんやで?」 ノゾミ「……………じゃあ、ここ」グイッ ジーッ
マキ「……………」フルフル
ノゾミ「……(本当やね)じゃ、こっち」グイッ ジーッ
マキ「……………」フルフル
ノゾミ「………(さっきより少し…でも嘘ではない。もう少しこっちか?)」グイッ ジーッ
マキ「……………」キッ!
ノゾミ「そんな目で見んでよ…終わったらすぐ帰すから…」 −−−−−ロサンゼルス国際空港ホテル
海未「ロス市警のソノダです。こちらに、先程この人物が部屋を借りませんでした?」
受付嬢「すみません、そういったことは警察の方でも…」
海未「はぁ…(“あのニシングストン家”の令嬢の身の上に関わることです。どうか)」
受付嬢「しかし………ぁ!」
ニコリン「…………」ニヤニヤ
受付嬢「!?……(“ドラムマガジンシンデレラ”と“リボルバー・ワイルドキャット”じゃない!面倒ごとはごめんよ……)いえ、そのようなお客様は…」
海未「…?そうですか、ご協力感謝します。行きますよ」
リン「はーい」
ニコ「この悪名も、捨てたもんじゃないわね」
ハナヨ「……?」
ニコ「なんでもないわ、で、どうするの?」 海未「ホテルにいなければ空港自体でしょう。どこか空き倉庫でも見つけ、中から鍵をかけ短時間稼いで作業を終わらせる。
ドイツらしくない雑なやり口ですが、ノゾミは東欧仕込みのこれを好んでやっていた覚えがあります」
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−−−−−ロサンゼルス国際空港-警備部
海未「ロス市警です。この空港に空き倉庫は?」
警備員「3階のf-6番、地下のU-αとにIV-Ωの3つです」
海未「鍵を。…どうも、ニコとハナヨはf-6へ、私とリンはU-α、貴女はIV-Ωへお願いします」 エリ「あら、1人」
海未「1人でも平気な人間だと記憶していますが?」カキカキ
エリ「ふふ…まぁ、そうね」
ニコ「行くわよ」
ハナヨ「う…うん」
海未「リンも」 カキカキ
リン「何書いてるの?」
海未「作戦です。このウミちゃんメモを各自持ってください」
ハナヨ「(ウミちゃんメモ…)」
ニコ「(なによそれ…)」
リン「(怖)」
エリ「だっさ。まぁいいわ」
海未「……………………………」
ハナヨ「(なんとも言えないよ)」
ニコ「(ちょっと可哀想ね…)」
リン「(スパイってどいつもこいつもろくでもないにゃ)」
エリ「あ…ちょっと待って…」
ニコ「こんな時に何よ」
エリ「もしマキに会ったら伝えてくれる…?あのね……」 ーーーーーロサンゼルス国際空港−地下−第8ブロック『II -α倉庫』
リン「マキちゃん!!」
……………………。
海未「外れか…」
ーーーーーロサンゼルス国際空港−地下−第2ブロック『W−Ω格納庫』
エリ「Жалко…(残念…)」
ーーーーーロサンゼルス国際空港−3階−北棟『f−6番倉庫』
ニコ「マキ!!!」
マキ「んーーー!!ぅーー!!!」
ノゾミ「おぉっと、動かんといてな…この子、なかなかポーカーフェイスが上手やのよ…どこにあるのか……ここか?」
マキ「………」フルフル
ニコ「マキっ!!」
ノゾミ「動かんといてって。切るの、太腿だけじゃすまんよ?」
ニコ「そうだ、伝言があるの、マキ」
ハナヨ「エリさんからです…あのソ連の」
マキ「(え?何であの人が?)」
ニコ「いい、マキ………」 −−−−−−−
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−−−−−
エリ『 “夢”と“現実”、確かに選択しづらいわよね。じゃあ、その2つは何が違うのかしら?』
エリ『私は、“時間”だと思うのよ。
“夢”を構成するものは、経験だったり、知識だったり、必ず過去の物よね。ある意味予定調和。自分の内にあるものからしか生まれないわ。
外の世界から堅固なダイヤモンドで守られてきたお姫様が見がちなのよ。彼女たちは、内にあるもので満たされてるから。
幸せ者よね。』
エリ『じゃあ、“現実”は?確かに“現実”も過去の積み重ねよ。
殆どはそう…でも、“現実”には未来があるの。
まだ知らない、既知でなく未知の要素が。だから、“現実”には時々、“夢にも思わないこと”が起こったりするのよ』
エリ『不幸者は大抵それを願っているわ。
あぁ、いつか“夢にも思わないような”奇跡が起これば…ってね。
“夢のような生活”とは、自分の頭の中の理想がただ淡々と消費されていくという事。
“現実”に生きるなら…それはもう、予想外の連続よ。
“プリンセス”には無理かもしれないわね。でも、今までの自分を変えたいなら……まぁ、貴女に任せるわ?』
ニコ「だそうよ?」
マキ「(“夢にも思わないこと”か…)」 ノゾミ「ふーん、(あのソ連人もマキちゃんに相談されたんかな?…まぁ、今はどうでもいいけど…いやてか、なんであいつから伝言が届くんや…)じゃあここは?」グイッ
マキ「…………」フルフル
ノゾミ「(近い…?いや、わからんなぁ…)」
ニコ「…………」チラッ
ハナヨ「…………」マダデス
ノゾミ「…………ここ」グイッ
マキ「…………」フルフル
ノゾミ「(………怪しかった。今のは、嘘の目だった)」グイッ
ノゾミ「ほんとに、ここやない?」
ニコ「…………」チラッ
ハナヨ「…………」ハイ
ニコ「…………そのマキの顔、嘘よ」
マキ「!?」 ノゾミ「ほぅ……根拠は?」
ニコ「信じても信じなくてもいいわ。でも、私はあんたよりマキの事を知ってる。それだけよ」
ノゾミ「(これ以上嬲られるマキちゃんを見たくないんか…?まぁ、ウチもそろそろ飛行機の時間が丁度いい…乗りかかった船やん?賭けよ…)」
スーーーーーッ ジワァァ
マキ「!?っ……………(痛いっ……!こんなに痛いの!?)」
ニコ「(悪いわね…マキ)」
ハナヨ「(ごめんね、ごめんね)」
ノゾミ「(これか………)」グリッ
マキ「ぁっ……ぅわぁっっっ!………」
ノゾミ「はーい、回収完了…マキちゃん、ほんまにごめんな?マキちゃんの事、後は頼むわ…じゃ、御三方とも、お元気で!」タッ
ハナヨ「マキちゃん!」
マキ「ぷはぁ!はぁ…はぁ…やっと息が…」
ニコ「待たせたわね…」
マキ「ほんとよ、でもどうするの?アイツ、あのデータ持ったままドイツ帰っちゃうわよ」
ハナヨ「良いんです。これが“ウミちゃんメモ”の計画通りですから」
マキ「可愛い名前ね?」
ニコ「そ……そうね!」
ハナヨ「そうだね…そうかも」 −−−−−ロサンゼルス国際空港-発着場
ノゾミ「はぁ…はぁ…(この技術…これさえあればドイツはまた…!)」タッタッタ
ノゾミ「やっほーー!気分最高やわぁ!」
ゴオオオオオオオオオ ゴオオオオオオオオオ
ノゾミ「飛行機のおかげでいくら叫んでも聞こえへんし…叫び放題やなぁ」タッタッタ
ゴオオオオオオオオオ“パァン!”ゴオオオオオオオオオ
ノゾミ「っぅぁあっ!!!っつ!(なんや!?撃たれた!?)」バタッ
エリ「……………」
海未「良く来てくれましたね、ノゾミ」
ノゾミ「(エリ…海未ちゃん……何で!?)」
海未「確かに貴女の計画は緻密で、合理的でした。しかし、いささか合理的過ぎましたね」
海未「正直、貴女がどこで作業を進めるかというのがネックでした……そこは完全に不確定。もしかしたら私たちの選んだ3つの空き部屋でない可能性すらあった」
海未「しかし、一度居場所が確定すれば、後の貴女の行動は自ずと決まってくる……
鍵となったのは、“飛行機の出発時刻”それと“逃走経路”です」
ノゾミ「……!!」 海未「わかってきましたか?幸いこの空港は短間隔で飛行機の出る場所ではありません」
海未「その為貴女が何時に発着場に行こうとするかは把握していました…16:00発、15:45分には発着場に着いていたかったはずです」
海未「そして“逃走経路”…几帳面な貴女の事、多数の経路を用意していたはず…私たちに追われる事も想定したルートもあったはずです。撒く事を想定した複雑な…」
海未「だから私達はその可能性を潰すことにした、時間をギリギリまで引き伸ばし、“最短距離で発着場に着くルート”だけを貴女が走るようにしたんです」
ノゾミ「…………………(くそっ…こんな所で)」
エリ「そして、私たちがここに張り込んだ…“外れ”組の私たちがね。ここなら飛行機の発着音で銃声も聞こえない…急拵えの割には良い作戦だったわね」
ニコ「…………残念だったわね。私たちはあんたの計画を阻止しに行った訳じゃない、成功させたかったのよ」 マキ「そのせいで私、すごい足痛いんだけど」
ハナヨ「大丈夫?」
海未「お、無事でしたか」
エリ「良かったわね」
ニコ「悪かったわよ、マキには…じゃあ、ノゾミ、これ貰うわね」サッ
ノゾミ「あっ………(データ…)」
ニコ「ほら。持ってきなさい。データとチケット」
マキ「え………?」
海未「貴女がDr.ニシングストンの娘という事実は変わりません…今回のようなことがまたいくつあるか…わかりません」
エリ「足の療養ついでに、身隠してなさい」 ニコ「ほら行きなさい。これチケット2人分」
マキ「ニコちゃん…」
ハナヨ「いいんですか。貴女はこんな結末が、貴女の…!」
ニコ「私たちには戻るべき現実がある。それがマキにとっては貴女との未来なのよ」
ハナヨ「そう…ですか。そうですね。いえ、そうします」
ニコ「それで良いのよ。時期戦争も終わる。カンザス辺りで平和に暮らしなさい」
マキ「……いつかは帰るわ。私の家は、サンタモニカだもの」
ニコ「そう…ま、良いわ。行きなさい」
マキ「あ…でも、コトリ……」
ニコ「…………」ヒョイッ
マキ「えっ……何これ」キャッチ!!
ニコ「開けなさい…コトリからよ」
マキ「“マキお嬢様へ……”」
『マキお嬢様へお小遣い、10ドルです。ハナヨさんとの飛行機の中でのお菓子でも買って下さい。 p.s お嬢様のすることなら私、何でもわかってるんですよ?』
ニコ「こういうこと。良いメイド…いや、友人に恵まれたわね…え、何?5ドル要らないの?」
マキ「……空港で何か買っておいて。コトリへの置き土産にするわ」
海未「ほぅ……メイド孝行ですね…では、そろそろ……」
ノゾミ「待てぇ!!」
マキ「………ノゾミ」
海未「貴女の麻酔銃、ポンコツですか」
エリ「おかしいわね、日本製かしら」
海未「……………」 ノゾミ「ウチは……!ウチはまだ!!
わかっとる、わかっとるんよ、ドイツは負ける…」
ノゾミ「そして大戦全ての責任を押し付けられ“悪夢の独裁者”アドルフヒトラーを生み出した狂気の国家として語られる…二度と立ち直れないかもしれんのや…」
ノゾミ「だがあれが!UFO兵器のあの技術さえ隠し通し、更に更に進化させれば……!!世界を空から支配する…!ドイツ第四帝国の誕生や!!」 マキ「………ダメよ。貴女には気の毒だけど、ドイツはやり過ぎた。一回頭を冷やすことね。いつかきっと、やり直せる日が来るわ」
戦後ドイツは様々な国に分割管理され、もはや原型を留めないまでになる。
その後一部統合されるも、東西ドイツの二分割という悲運からは逃れられなかった。
しかし、西ドイツはやがて「奇跡の復興」を成し遂げみるみる発展。
著しい経済成長を遂げることとなる。 ノゾミ「っ………!海未ちゃんは、日本はこれで良いの!?」
海未「日本は今後、長い長い戦後を生きることになるでしょう」
海未「おそらく連合国のどこかの統制下で…しかし“下からの改革”によって近代を迎えなかった我々は、市井の人々の本気を未だ見ていません」
海未「例えその力の源泉が奴隷道徳であったとしても、日本はまた前を向けます」 ノゾミ「何なんよ…海未ちゃんまで!!………マキちゃん!動かないで!!!」チャキッ
プシュッ ドスッ
ノゾミ「うっ…」
エリ「…やめなさい。往生際、悪いわよ」
海未「……まだ隠し持っていたんですね」
マキ「というか、貴女はそもそも何で…協力してくれてる意味が良くわかんないんだけど…」 エリ「諦めたの。アメリカの核開発が進むのはもう良いわ。でもドイツの復活は困る」
エリ「(ていうか、うちの核開発結構進んでるみたいなのよね。
アメリカの開発状況も調べたけど…あんまり進んでないし…危険を侵してまで止めるリターンが無いのよ…あぁ、こんだけ調べて「必要ありませんでした」って…なんかドッと疲れたわ。私何しに来たのよ…まぁ、でも…)」 警官隊「「どうかされましたか…!」」
海未「!…ロス市警のソノダです。同じくロスのトージェル警部補が撃たれました(ちょうど良いタイミングですよ、さすが野生の勘)」
海未「彼女が犯人です。連行して下さい」
エリ「ちょっと…海未…辞めてよ…」
海未「…!馴れ馴れしく下の名前で呼ばないでください!!」
警官?「さ!行くにゃー!」
エリ「あ…そういう事…はいはい、面倒ね………」
ニコ「あんたエリと初対面よね…?なんかあったの?」
海未「………何もありませんよ……それより、ほら」 マキ「………」
ハナヨ「………」
マキ「私の事…好きだった?」
ニコ「……えぇ。だけど、ここに引き止めては置けない。私、あんたの為に自分を傷つけられるくらいには大人だけど、あんたの為にあんた自身を傷つけられるほど、大人じゃないわ」
マキ「そ…」
ニコ「“君の瞳に乾杯”(Here’s looking at you.)」
マキ「………///」
ニコ「一度言ってみたかったのよ…いい顔見れたわ。じゃあね、二人とも」 ーーーーーーーーーーーーーーーーー
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ニコ「(プロペラ旅客機・DC –3が、雲に消えてゆく。もう5時半だ。
朱より紅い空の色に、何かを思い出す。夢を見ていたのは私だ。見させてくれたのがあの子だ)」
海未「楽しかったですね」
ニコ「……はぁ?」
海未「場違いなセリフだと思いますか?でも私は楽しかったです。
“夢を見ているような現実”でしたよ…こんなご時世です。少しくらい、そんなものを楽しんでも誰も怒りませんよ」
ニコ「…そうね。でもあの子には、“真っ当な現実”を生きて欲しいわ」
海未「そのつもりですよ。彼女は“夢”と“現実”に揺れ、“現実”を取った。でもそれは“夢”を諦めたわけじゃない。時々、“夢にも思わないこと”が起こる。その“現実”の可能性を信じたんです」
ニコ「あんた、良いやつね」
海未「ええ。しばらくはロス市警としてサンタモニカに居ます。仲良くしましょう」
ニコ「“海未、これが私たちの友情の始まりね”」
海未「“カサブランカ”ですか?」
ニコ「……えぇ。」
ーーーーfinーーーー これに終わりです。「ダイヤモンドプリンセスの憂鬱」の勝手な解釈をしてしまいました。読んでくれた人、ありがとう。 >>83
あ、前も見てくれてましたか。
ありがとう。 乙乙、当分はあんな超大作見れないと思ってたらまさかね
いやはや流石 本格派はもっと評価されてほしいな
こういうの読みたい >>88
次はLoveless worldでやろうと思ってます >>85
>>86
>>87
堅苦しい部分も多いので、受け入れられにくいかと思っていました。
そういって頂けるとありがたいです。 次はベトナム戦争かキューバ危機か、或いは中東戦争か・・・・ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています