【SS】ダイヤ・ルビィ 「「ブレイブ・ストーリー」」
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大空へと放り出された私の体。
翔ぶための翼も持たない私は、真っ逆さまに広大な草原へと落ちていく。
私の体は、背にした陽の光と、凄まじい風とで挟み撃ちにされる。くるくると回りながら、徐々に落ちるスピードを増していく。
藁にもすがる思いで、携えていた貰ったばかりの“剣”を抱きしめるが、剣も私と同じように、地へと引き付けられていくだけだ。
ルビィ 「お姉ちゃぁぁぁぁん! 助けてぇぇ!」
――これは私の、勇気の物語。
ーーーーーー
ーーーー
ーー 迫ってきた人らしき影に駆け寄る。
まずはこの世界のことを知らなければ。宝玉を集めるためには情報が必要だ。
ルビィ 「はぁっ、はぁっ……あれっ?」
ルビィ 「違う……あれ、人じゃない!」
迫ってきていた影は人ではなかった。
それはおびただしい数の、オークだった。
ルビィ 「敵だぁぁぁぁ!!!」 ルビィ 「待って! 宝玉がどこにあるのかとか、まだ聞きたいことがぁぁぁ!!」
ゴスッ
グジュリッ プシャアアアア
ルビィ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!」
鞠莉(これは痛いわねぇ)
鞠莉(もんどりうっちゃって面白い)くすくす
果南「おや?鞠莉今のウけたかい?」
鞠莉「GOODよ、かなぁん」 昔マンガで見た事があるもの、そのままのオークが、集団で迫ってくる。一目でそれらは味方でないことが、その瞳の狂気で分かる。
ルビィ 「む、無理無理! あんなのと闘うなんて、絶対無理!!」
オーク達 「「「「△※〇◇☆!!」」」」
ルビィ 「どこまで追いかけてくるの!? 助けてぇ!!」
?? 「捕まって!! 早く!!」 りきゃこ「えーw これが?w」
ツンツン
小林「んひゃっ! も、もう……べつにいいじゃん、あたしのなんだから名前くらい好きに付けたって……」
りきゃこ「ギルティスティックww 名前負けにも程があるでしょww」
りきゃこ「それに、きゃんきゃん夜鳴きしてどうしようもないからって私を呼び出したの誰だったかなぁー?」
小林「ち、ちがうもん……夜鳴きなんて……あたしはただ、りきゃこに会いたかったから……」
りきゃこ「じゃあしなくていいの?」
小林「……す、する」
りきゃこ「ふふw」
小林「じゃ、じゃあ……おっぱい触っていい……?」
りきゃこ「そういうのいいからw」
小林「え…?」
りきゃこ「いきなり挿れていいよ。そのきゃんきゃんスティック見てたら私も興奮してきたし」
小林「ほ、ほんと!?」
りきゃこ「ほんとほんとw」 突如声をかけられ、差し出された手を咄嗟にに握る。馬車に乗っていたその人物は、私の体を軽々と抱えると、オークの集団を一瞬にして撒いてしまった。
フルフェイスの兜に、見るからに頑丈そうな、緑を基調とした鎧に身を包んだその人は、私を隣に座らせ、軽くため息をついた。
?? 「まったく、女の子ひとりがこんな所で何してるの。ここらはオークのキャンプ地だよ」
ルビィ 「す、すごい。ありがとうございます」
?? 「気にしないで。困ってる人を助けるのも、冒険者の務めだからね」 小林「挿れるね……?」
りきゃこ「あ、電話だ。もしもしー?あんじゅー?」
ピッ
小林「ぁ……」
りきゃこ「あんじゅ、ちょっと待ってて」
りきゃこ「ねぇあいきゃん、気にしないで続けていいよ」
小林「う、うん…」
小林(気にしないでって言われても……)
りきゃこ「もしもしー? あーなんでもないなんでもない。え? そうそうw ヤってるとこw」
小林「んっ……」
小林(挿った……やば、やっぱりりきゃこのなか、すんごいあったかくてきもちいい……////)
りきゃこ「あははw えーマジでー? ウソだろー?w」
小林「ふっ……んっ、ぅっ……!」
ギッギッ
りきゃこ「え、近くいるのー? 私もそっち行きたーいw」
小林「りきゃこ……っ、りきゃこっ……////」 ?? 「剣を持ってるってことは私と同じ冒険者?」
ルビィ 「いえ、冒険者というか、見習い勇者……? みたいで」
?? 「勇者? 聞かない職だねぇ」
ルビィ 「あの、失礼かもしれませんけど」
?? 「ん、なに?」
ルビィ 「その声……もしかして女性ですか? なのに冒険者って凄いですね」
?? 「あぁそっか。これかぶってるから、男か女か分からないよね」 小林「んっ……く、んぅっ……!」
りきゃこ「きゃははw なにそれなにそれー? やばw 優勝w」
小林(りきゃこはあたしとエッチするより友達と喋ってる方が楽しいのかな……)
りきゃこ「優勝w 私の中での優勝w」
小林(ていうか突きまくってるのに普通に電話してるとか……りきゃこ、不感症なの……?)
小林(こうなったらあたしのギルティスティックでひゃんひゃん喘がせて……あっ)
小林「んぁっ、きもちいぃ……イ、イクっ……!」
シュビュビュビュッ
小林(はぁ……またすぐイっちゃった……でも気持ちよかったからいっか……////)
りきゃこ「ん? あ、終わった? って……はぁ?」
小林「りきゃこ」
りきゃこ「え、なんで中に出してんの?w」
小林「ご、ごめん……なんていうか、その……抜きそびれちゃって」
りきゃこ「はぁ?w」
りきゃこ「もしデキちゃったらどうするつもりなの?w」
小林「せ、責任とるからっ…」 りきゃこ「あ、ごめんごめん。なんでもなーいw それで、今から行っていいの?」
りきゃこ「ホント? すぐ行くすぐ行くーw」
小林「ね、ねぇ、りきゃこ…」
りきゃこ「あいきゃん、シャワー借りるね。その間に服アイロンかけといてーw」
小林「え? 泊まっていくんじゃないの?」
りきゃこ「急用できちゃったw」
小林「……」
りきゃこ「んじゃ行ってくるねー!」
小林「ねぇ、りきゃこ……あたしたち、付き合ってるんだよね?」
りきゃこ「ばいばーいw」
小林「……い、いってらっしゃい…」
小林「…………」
小林「はぁ……今日は一緒にいられると思ったのに……」
小林(でも、今日もかわいかったなぁ……りきゃこ)
小林(りきゃこはあたしの恋人……見ての通り、超ド級のまぐろ)
小林(まぐろとりきゃこ……いや、まぐろのりきゃこ) フルフェイスの兜を取り外し、頭を左右に振って長い髪を振り下ろす。
果南 「私は松浦果南。よろしくね」
ルビィ 「………………ピッ」
果南 「ぴ?」
ルビィ 「ピギャァァァァァァァァ!!?」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 翌日
小林(昨日はうっかり中出ししちゃったけど、大丈夫だったかな……)
小林(りきゃこ、まったく返信してくれないし)
小林「……まぐろ」
あいにゃ「まぐろ?」
小林「あ、いや、こっちの話!」
あいにゃ「なにそれ? ま、いいや。小林、まぐろ買ってきてー!」
小林「なんで!?」
あいにゃ「小林がまぐろまぐろ言ってるから食べたくなっちゃったのー! ねー小林ー! はーやーくー!」
小林「やだよっ! てか小林小林ってあたしの方が歳上だからね!?」
あいにゃ「ここでは私の方が先輩じゃーん!」
小林「それはそうだけど……まぁべつにいっか。ていうかバイト中なんだからちゃんと働いて!」
あいにゃ「はぁーい!」
あいにゃ「ね、小林。終わったらお寿司食べいこうよ!めっちゃお寿司の気分になっちゃった!」
小林「あ、ごめん。今日はこの後、約束あるんだ」
あいにゃ「えーー!! つまんなーーい!!」 あいにゃ「…なに、まさか彼女とかー?」
小林「違うって。友達だよ、友達」
あいにゃ「だよねー! 小林に彼女とかいるわけないもんねー!」
小林(いるし…)
あいにゃ「小林ってモテなさそうだもんね」
小林「うるさいよっ」
小林(まぁ事実だけど……恋人だってりきゃこが初めてだから……)
小林(だからこそ、りきゃこを満足させてあげたいけど……どうしたらいいんだろ)
あいにゃ「小林? なんか今日微妙に元気なくない?」
小林「昨日ちょっとあって…」
あいにゃ「……?」
小林「そうだ、あいにゃってさ」
あいにゃ「うーん?」
小林「エッチする時、声どんくらい出すの?」
あいにゃ「え?」 あいにゃ「むぅ…」
小林「機嫌直してよー! あいにゃー!」
あいにゃ「……お好み焼き食べる」
ジュー
小林「それ、これからお客さんに出す用の…」
あいにゃ「そんなのもう1枚焼けばいいじゃん」
小林「え、えぇー……」
あいにゃ「小林はいらないの? はい、あーん?」
小林「い、いいのかな……でもおいしそうだし……」
小林「…あーん……はむっ、んんっ、熱っ、あちゅいっ!」
あいにゃ「あははっ! そりゃ熱いに決まってるじゃーん! 小林っておもしろっ!」
小林「はふはふっ……けほっ、けほっ……し、死ぬかと思った……口の中、ヤケドしちゃったよ……」
あいにゃ「はい、お水」
小林「ん、ありがと……ごくっ」
あいにゃ「小林。あーんしてあげたんだから、私にも食べさせて」
小林「え、そんなの自分で食べれば…」
小林(なんて言ったらまたぎゃーぎゃー言われるんだろうなぁ)
小林「熱いから気を付けてね……ふーふー……はい、あーん」
あいにゃ「ん、はむっ……もぐもぐ」 あいにゃ「優しいよね、小林って」
小林「そう?」
あいにゃ「そういうとこ嫌いじゃないかな」
小林「素直に好きって言ってくれればいいのに」
あいにゃ「す、好きとかっ……そんな、恥ずいこと言わないしっ…」
小林「そんなもの?」
あいにゃ「じゃあ小林は私のこと、好きなの…?」
小林「普通に好きだよ。なんだかんだ一緒にいて楽しいし」
あいにゃ「そ、そう…? …………あり、がと…」
小林「??」
小林(よかった。機嫌直してくれたみたい)
あいにゃ「…で、さっき変なこと聞いてきたけど」
あいにゃ「なんなの? そのアンケートって」
小林「え? あ、えっと……その、友達の……そうっ、友達の話なんだけどね! あたしじゃないよ絶対に!」
あいにゃ「…?」
小林「と、友達がね、彼女とエッチする時に……その彼女が全然感じてくれない、というか感じてるかもしれないけど、それを表情とかに出さないって悩んでて…」 果南 「なるほど、旅人さんか。通りでここらのこととか何も知らないわけだ」
ルビィ 「果南ちゃ……いや、果南さんは、ずっとこうやって旅してるんですか?」
果南 「ちゃん付けでもいいよ。向こうの世界の私と知り合いだったんでしょ? 呼びやすい方でいいよ」
ルビィ 「知り合いというか、一緒にアイドルやってて」
果南 「アイドル? なにそれ」
ルビィ 「えっと、歌って踊るグループというか……」
果南 「なるほど、歌劇団みたいなものか」 近くの街まで連れていくと言って、果南ちゃんは私を乗せて馬車を動かす。
途中、私たちは言葉を交わす中で、お互いに知っていることを教えあった。
果南ちゃん曰く、
果南 『この世界は一種のパラレルワールドみたいなものでね。現世と同じ人間が生活してるんだ。性格とかは違うみたいだけど』
ということらしい。
果南 「たまに来るんだよ。願いを叶えるために、現世から旅人が」
ルビィ 「私以外にも、いるんですか?」
果南 「うん。過去にも願いを叶えた旅人は、何人もいたらしいよ。会ったことは無いけどね」
果南 「ルビィは、どんな願いを叶えるために来たの?」 ルビィ 「ルビィは……お姉ちゃんの病気を、治すために」
果南 「優しいんだね、ルビィは。私に手伝えることがあったらなんでも言って」
ルビィ 「すいません、こんなに良くしてもらっちゃって」
果南 「気にしないで。それに、旅人さんは私達にとって、幸運の証なんだから」
ルビィ 「幸運の証?」
果南 「運命の女神様を信仰してる人にとって、現世からやってくる旅人は幸運の証なんだ。ほら、私も信者の一人なんだ」
そう言って、果南ちゃんは鎧の下から羽のような形の紋章がついたネックレスを取り出した。その紋章は、この世界へと繋がる扉にあった紋章と同じものだった。 果南 「これは運命の女神様の、信者の証でね。常に身につけてるんだ」
ルビィ 「へぇ……綺麗」
果南 「旅人に出会った信者の中には、美人と結婚した人、一夜にして億万長者になった人……挙げればキリがないほどの伝説があるんだ」
ルビィ 「じゃあ果南ちゃんも、きっと幸運になれるね」
果南 「そうだといいね。……あっ、ほら。そろそろ着くよ」 大きな門をくぐり、街の中へ入る。
多くの人で賑わう商店街、中央にある大きな建物。目に入る全てが現世とはまるで雰囲気が違い、とても新鮮だった。
果南 「ここがインベイ地区の街。すごく賑やかでしょ? ここらじゃ特に活気のある街なんだ」
ルビィ 「すごい……。人が沢山!」
果南 「さて、宝玉探しだよね。それなら、あの中央の建物に行こうか」
ルビィ 「あそこってなんなんですか?」
果南 「あそこはこの地区の“ハイランダー”の本部だよ」
ルビィ 「ハイランダー?」 果南 「罪人を捕まえたり、裁いたりする人達って言えばいいかな。こういう小さな街だと、政治もハイランダーに一任されてることもあるんだ」
ルビィ 「なるほど! じゃあそこに行けば、いろんな情報が入るかもですね」
果南 「この地区ではそれなりに私の名前も知られてるから、すぐ上の人にも会えると思うよ」
ルビィ 「果南ちゃん、そんなに凄い人だったんだ……」
果南 「むー……私そんな弱そうに見えた?」
ルビィ 「いやっ、そういう訳じゃ!」
果南 「冗談。さ、行こ?」
ーーーーーー
ーーーー
ーー ルビィ 「鞠莉ちゃん!?」
鞠莉 「……ねぇ果南。この子、地区隊長をいきなり“ちゃん”付けで呼ぶって、どういうこと?」
果南 「もしかして、鞠莉とも向こうの世界で知り合いだったの?」
鞠莉 「向こうの世界ってことは……Wow! もしかして旅人さん!?」
ルビィ 「は、はい! 黒澤ルビィです! 見習い冒険者で……」
鞠莉 「すっごいじゃない果南! 旅人を見つけてくるなんて」
果南 「偶然だよ。それで鞠莉、相談なんだけど」 鞠莉 「旅人さんを連れてきたってことは、宝玉のことでしょ? でもごめんね、この辺りでは宝玉の話、最近聞かないの」
果南 「そっか……残念」
鞠莉 「まぁきっと、旅をしていればその内見つかるわよ。果南がルビィの面倒、しばらく見るんでしょ?」
果南 「まぁ、そのつもりだったけど」
鞠莉 「じゃあ果南、宝玉探しついでに、ルビィのこと鍛えてあげなさい。その体じゃ、最下級のモンスターにも手を焼いちゃうわよ」
果南 「そうだね。じゃあルビィ、しばらくは宝玉探しより、体作りを優先して……」
ルビィ 「だ、駄目ですっ!!」 鞠莉 「ルビィ……?」
ルビィ 「ダメなんです……。お姉ちゃんは病気で、もう長くないんです。だから、急いで宝玉を見つけないと!」
果南 「それなら安心しなよ。この世界と現世では時の流れが違うんだ」
鞠莉 「そうそう。ルビィがこの世界にどれだけ滞在しても、現世では1秒も経過しないのよ」
ルビィ 「……来てるんです。お姉ちゃんが」
果南 「来てるって、まさかここに?」
鞠莉 「……それは大問題ね」 果南 「あれ、でもお姉ちゃんが来てるなら、なんでルビィも来たのさ。お姉ちゃんが自分で願いを叶えれば、ルビィがわざわざ危険を犯す必要なんて」
ルビィ 「もう1ヶ月しか生きられないんです! そんな体で無茶してたら、願いを叶える前に……」
果南 「……鞠莉、願いを叶える前にこの世界で力尽きたら、どうなるんだっけ」
鞠莉 「その魂は、永遠に幻界を彷徨う。つまり、二度と現世には帰れない。行方不明のまま、永遠に見つからなくなる」
ルビィ 「そんな……っ!」 鞠莉 「これはVery hardな問題だね。そういうことなら、一刻も早く宝玉を集めないと」
果南 「何か、いい手は無い?」
鞠莉 「そうねぇ……それなら、」
『緊急! 緊急!』
ルビィ 「ピィッ!? な、なにこれ!?」
鞠莉 「緊急警報……!? 一体どこで!?」
梨子 「隊長!」 ルビィ 「えっ、梨子ちゃん!?」
梨子 「ん? どこかで会った? あぁ、それどころじゃない! 隊長、隣のマーシワ地区の街で、大規模な放火が!」
鞠莉 「放火……? って、まさか」
梨子 「恐らく、先日の山火事と、同一犯と見られます」
果南 「待って、なんの話……?」
鞠莉 「最近、各地で大規模な放火が相次いでるの。目撃者によると、一人の魔法使いが、強大な魔法で焼き払ってるって……」
果南 「山1つを焼き払うほどの魔力って、そんなの聞いたことないよ。一体誰が」 梨子 「私たちも、まだ何一つ手掛かりが掴めていない状況です。あなた、たしか冒険者の果南さんですね? よろしければご一緒に……」
果南 「言われなくてもそうする。ルビィ、アンタはここで待ってて」
ルビィ 「そんな、ルビィも行くよ!」
果南 「危ないって! 願いを叶える前に、倒れでもしたらどうするつもりさ!」
ルビィ 「でもっ!」
鞠莉 「果南、大丈夫。いざという時はルビィのこと、私たちも全力で援護する。それにもしかしたら、宝玉の手掛かりもあるかもしれない」 果南 「でもっ……もし何かあったら」
梨子 「あぁもう! 早く決めてくださいっ! そうこうしているうちに犯人が!」
果南 「っ! ルビィ、危なくなったら、私の馬車の中に隠れてるんだよ!」
ルビィ 「……! うんっ!」
鞠莉 「じゃあ行くわよ。インベイ地区隊、マーシワ地区に出動します!」
ーーーーーー
ーーーー
ーー 梨子 「……ひどい」
果南 「なにこれ、家ひとつ残ってないじゃんか……」
たどり着いたマーシワ地区は、形容し難いほどの惨状だった。燃え崩れた家々は、まるで薪のように炎を上げ、火の粉を弾き散らしていた。
そしてなによりも、この鼻につく異臭。
ルビィ 「なに、この臭い……うぇっ……」
梨子 「この臭い、恐らく」
鞠莉 「梨子! ……やめなさい。ルビィには、少し刺激が強すぎる」
果南 「こんな幼い子まで……っ! 最っ低」 梨子 「でも、どうしてこの街を? 山のこともですが、何か目的が?」
鞠莉 「分からない。こんなことしてもメリットがあるとは思えないけど。愉快犯にしては、規模が大きすぎる」
ルビィ 「……ん?」
?? 「っ!!」ササッ!
梨子 「どうしたの? ルビィちゃん」
ルビィ 「今、そこに誰かいたような……」
グルルルルル……
ルビィ 「ひっ……!? な、なんの声?」
果南 「ッ!! ルビィ、上だっ!!」
果南ちゃんが私の体を突き飛ばす。
するとさっきまで私がいた場所に、1匹のモンスターが上から飛び掛ってきた。 鞠莉 「あれは……ジャコウビースト!」
果南 「死体に群がるハイエナ野郎か。なるほど、アイツにとって今ここはバイキング状態ってわけか」
梨子 「1匹だけじゃありません! 周りにもうじゃうじゃと!」
果南 「ルビィ! 私の馬車の中に逃げて!」
ルビィ 「そんな、ルビィも戦うよ!」
鞠莉 「この数相手じゃ、さすがに守りきれる保証はない! 今は言う通りにしなさい!」
ルビィ 「鞠莉ちゃん……」
梨子 「ほら、早く! 私の手を握って」 梨子ちゃんに手を引かれ、私は馬車の中へと放り込まれる。
梨子 「しばらくここで大人しくしてて。いい子だから、ね?」
腰からレイピアを抜き、梨子ちゃんはジャコウビーストの群れへと向かう。
果南ちゃんは剣を、鞠莉ちゃんはムチのような武器を使ってバタバタと敵をなぎ倒す。
ルビィ 「3人とも、すごい……!」
『……ずっと隠れてるつもり? ルビィ』 ルビィ 「っ! その声、お試しの洞窟の時の!」
『ガッカリするわ。やっと本格的に冒険が始まったと思ったら、戦いもせずただ眺めてるだけなんて』
ルビィ 「だって、ここで待ってろって!」
『言われたからって、本当にそうしているつもり? はぁ、まぁいいわ。どうせすぐにそこから出ることになるし』
ルビィ 「えっ、それってどういう」
グガァォァォァァァァォァァ!!! 鞠莉 「何……あれ。あんな巨大なジャコウビースト、見たことない!」
梨子 「あの群れの主でしょう。隊長、きますよ」
果南 「ルビィにかっこ悪いとこは見せられないもんね! たぁぁっ!!」
『……あの3人と言えど、アレ相手じゃ苦戦は必至ね。1人くらいやられてもおかしくないかも』
ルビィ 「そんな!! でも、どうしたら……!」
『あなたは旅人でしょ? 導師様からもらったその宝玉は、なんの為にあるの?』 ルビィ 「宝玉……これ?」
剣の柄に埋め込まれた赤い宝玉に手をかざすと、突如、その宝玉が眩く光り出した。
ルビィ 「うわぁっ!?」
『旅人は、手に入れた宝玉に従ってスキルを得る。ルビィのスキルは……説明するより、使ってみた方が早いかもね』
ルビィ 「えぇ!? どんなスキルなのか教えてよ!」
『いいから。さぁ、あの敵めがけて走りなさい』 ルビィ 「うぅ……やるしか、無いんだよね」
剣を力強く握りしめると、宝玉の輝きが一層強くなった。そして私の体は、自然と巨大な敵へと動き出した。
果南 「なに、あの光?」
鞠莉 「聞いたことある。旅人は手にした宝玉によって、強力なスキルを身につけられるって!」
梨子 「まさかルビィちゃんが!?」
ルビィ 「やぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 ルビィ 「てぇぇぇいっ!!!」グサッ!!
梨子 「……! やった、腹部に命中した!」
鞠莉 「でも駄目! 傷が浅すぎる!」
果南 「待って!? あれ見て!」
鞠莉 「何あれ……剣が、回転してる?」
敵の腹部に刺さった剣先が、グルグルと回転しだす。敵はクルクルと回り、傷がどんどん広がっていった末に、木端微塵に消し飛んだ。
グルウォォォァァァァゥォァァ!!?
果南 「す、すごい……!」 消し飛んだジャコウビーストは、緑色に輝く光を残した。その光は次第に一箇所に集まり、やがて形となった。
梨子 「隊長、あれ!」
鞠莉 「緑の宝玉! Congratulations!!」
ルビィ 「はぁっ、はぁっ! やった、2つ目の宝玉!」
果南 「すごいじゃんかルビィ。私たちが苦戦した相手をあんな一瞬で」
ルビィ 「えへへ、あの声のお陰かな……。あっ、そういえば!」クルッ
?? 「……っ!!」ギクッ!
ルビィ 「やっぱりいた! さっきから誰かいるような気がしてたんだ」 振り向くと、物陰からこちらを覗いている人物が目に入った。
その人物は恐る恐る、私たちの前に姿を現した。
花丸 「…………。」
ルビィ 「えっ、花丸ちゃん!?」
花丸 「ひっ……! なんで、私の名前を?」
鞠莉 「あの娘も向こうの世界での知り合い? 私たちといい、偶然にしては出来すぎね」
花丸 「さっきの宝玉……もしかして、旅人?」
ルビィ 「は、はい! 願いを叶えるために、宝玉を探していて……」
花丸 「ッ!! 旅人……ッ!!」 突然息を荒らげ始めた花丸ちゃんは、懐から何かを取り出し、こちらへ向かってきた。
果南 「それ、ナイフ!? どうして!」
花丸 「うるさいっ!! お前らの……旅人のせいでみんながぁぁっ!!!」
鞠莉 「っ! やめなさい!」シュン!
花丸 「なっ!? む、ムチ……? 体を縛るのにも使えるなんてっ! 離して、離してぇ!!」
梨子 「なんでルビィちゃんを襲おうとしたですか? あなたに何も危害は加えてませんよ」
花丸 「……私、見たんです。この街を焼き払った魔法使い……! いや、魔女を!!」 花丸 「あの魔女は、突然私たちの前に現れました。そしてこう聞いてきたんです」
『宝玉を出せ。私には時間が無い』
花丸 「宝玉の在り処なんて知りませんでした。だから、正直に知らないって言ったんです! そしたら……!」
鞠莉 「この街を、焼き払った?」
花丸 「確かに見たんです。あの魔女が持っていた杖に埋め込まれた、3つの宝玉」
花丸 「あれは……旅人でした」 梨子 「まさか……ここ最近の放火事件の犯人は、旅人?」
花丸 「フードをかぶっていたので顔はよく見えませんでしたが、あの瞳だけは……!」
花丸 「あの忌々しい、青緑色の瞳だけは、絶対に忘れないっ!!」
ルビィ 「……っ!?」
鞠莉 「……ルビィ」
ルビィ 「違いますっ!! お姉ちゃんは、絶対そんなことしません!!」 果南 「鞠莉、やめなよ。ルビィ達のほかに旅人が来てる可能性だってあるでしょ」
鞠莉 「……それもそうだけど。“時間が無い”って発言も、ルビィのお姉さんの状況に」
果南 「だからやめなよっ!!!」
ルビィ 「お姉ちゃん……嘘だよ。絶対、何かの間違いだよ」
梨子 「ルビィちゃん、あなたが疑っちゃったらダメだよ! 大丈夫。私も、あなたのお姉ちゃんがそんなことするなんて信じてない」
ルビィ 「……そうだよね。お姉ちゃんがそんなことするはずない。お姉ちゃんは、すごく優しいもん」 花丸 「……あの、ごめんなさい」
ルビィ 「ううん、そんなことがあったなら、気が動転しても仕方ないよ」
花丸 「……来て欲しい場所があるんです。着いてきてくれますか?」
鞠莉 「えぇ。拘束も解いてあげる」シュルル
花丸 「ありがとうございます、こっちです」 梨子 「これって、教会?」
花丸 「周りは見ての通り、全部焼けちゃいました。でもこの教会だけは、崩れずに残ったんです」
ルビィ 「……この銅像って」
果南 「運命の、女神様」
花丸 「……私達にとって、旅人さんは幸運の象徴でした。なのに今回、こんなことになって」
花丸 「死んでいった仲間たちは、どんな気持ちだったんでしょう。幸運の象徴であったはずの旅人に、街や、仲間を焼き払われて」
ルビィ 「あの……」
花丸 「ごめんなさい、あなたを責めてるわけじゃないんです」 花丸 「えっと、ルビィ……さん?」
ルビィ 「ルビィちゃん、って呼んでよ」
花丸 「……ルビィちゃん、あなたは、私たちの幸運の象徴になってくれる?」
ルビィ 「……必ず見つけるよ。こんなことをした犯人」
果南 「ルビィ、でも……」
ルビィ 「違うよ、果南ちゃん。お姉ちゃんは絶対に犯人じゃない」 ルビィ 「本当の犯人は絶対に私が見つける。だから安心して」
花丸 「うんっ……!」
鞠莉 「あなた、これからどうする? 望むのなら、インベイ地区に住居を用意するけど」
花丸 「いえ、私はここに残ります。この教会があれば、しばらくは大丈夫です」
梨子 「そういうことでしたら。ですが定期的に様子は見に来ます」
花丸 「はい、よろしくお願いします」
鞠莉 「……戻りましょう」 花丸 「……あ、あのっ!」
ルビィ 「どうしたの?」
花丸 「……あなた方に、女神様の御加護があらんことを」
力なく笑った花丸ちゃんは、静かに涙を流していた。街が、仲間がこんなことになっても尚、他人を思いやるその優しさは、現世の花丸ちゃんそのものだった。
ルビィ 「ありがとう。花丸ちゃんも、気をつけてね」
花丸 「うんっ……!」
梨子 「馬車出すわよ。急いで」
ルビィ 「はい! じゃあね、花丸ちゃん!」 ルビィ 「…………。」
『違うよ、果南ちゃん。お姉ちゃんは、絶対に犯人じゃない』
確かに自分が発した言葉。
だけど、その旅人の『時間が無い』という発言。青緑色の瞳。
考えたくもない、考えてはいけない疑惑が、帰りの馬車の中で、ずっと頭の中をぐるぐると回っていた。
ーーーーーー
ーーーー
ーー |c||;^.- ^|| わ、わたくしじゃありませんわ! >>166
黒澤ダイヤはしいたけに犯されながら五体引き裂かれて内蔵引き千切られて血反吐撒き散らしてのたうち回って子犬産卵して死に晒せ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています