私の学校生活はそれなりに満ち足りていた。
 入学早々、自己紹介で少しだけ失敗したりもしたが、今では笑い話に出来るくらいにはなった。
 それくらい、スクールアイドルの活動は充実しているのだけれど、何か少しだけ、物足りなさも感じていた。
 その物足りなさの正体は自分でもわからなかった。


善子「あれ、梨子ちゃん?」

 放課後、今日は練習も休みで、なんとなく手持ち無沙汰になったので中庭に行くと、一つ上の先輩、梨子ちゃんがいた。
 エプロンを着け、手にはパレットを持って。どうやら絵を描いているようだ。

梨子「よっちゃん」

善子「へぇ、上手いものね」

 覗きこんだキャンパスには風景画が描かれていた。完成まで後2,3割といった所だろうか。
 その本格的な様は流石は元美術部だと思った。

梨子「そんなこと、ないよ。暇だったから描いているだけだし」

 梨子ちゃんは顔を赤らめて私の言葉を否定した。彼女はそうだ、どこか自分に自信が持てていない、引っ込み思案なところがある。
 私が言えた口ではないが、もう少し自分に自信を持って良いと思うのだけれど。

善子「あるわよ、そんなこと。ねぇ、少し見ていてもいい?」