曜「千歌ちゃんがいないとダメみたい。」
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タンッ クルクルクル バシャン
曜「ぷはぁ〜。」
曜「う〜ん・・・、今のはいまいちかなぁ・・・。」
今日はせっかくの休養日だったけど、飛び込みの大会も近かったから自主練をやりにきた。
誰も居ない飛び込み施設にカメラだけを持ち込み、飛び込んではフォームをチェックする作業を繰り返している。
ピッ ピッ
曜「やっぱりダメかぁ〜。」
曜「今日はもう上がったほうがいいのかな・・・。」 ピッ
何度見てもカメラから映し出されるのは回転不足で中途半端な飛込みをしている私の姿だった。
曜「はぁ・・・、こんなんじゃ良い成績残せないよね・・・。」
曜「今回の大会は大切な大会なのに・・・。」ギュッ
高校3年生の最後の大会。
推薦先のコーチも見に来ることもあるけど、何より今のメンバーでやれる最後の大会で絶対に優勝したかった。
曜「昔っからいっつもこうだったな。」
曜「大切な大会が近づけば近づくほど緊張で身体が上手く動かないや・・・。」 いつもは緊張してもここまでにはならないのいなぁ。
はぁ・・・、スランプってこういうこと言うんだね。
曜「とりあえずもう1回飛ぶ前にイメトレしてからにしようかな。」
すっと目を閉じて大会のイメージをする。
出来るだけいい演技が出来るイメージをしようと感覚を研ぎ澄ませて行く。
飛び込み台の上で集中する私。
飛び込む技はもちろん得意技である前逆さ宙返り3回半抱え型。
最高のリズムで踏み切りをし、理想のフォームで身体を動かしてゆく。
最後の入水は可能な限り静かに。
パシャン・・・。 曜「ふぅ・・・イメージは崩れてないね。」
曜「後はイメージ通りに演技をするだけなのになぁ〜。」
曜「よっとっ!それじゃあ最後に頑張りますか!!」
大丈夫・・・、イメージは出来た。
後はそれを実行するだけ・・・。
出来る!私ならきっと!!
曜「集中しろ!せっかく練習に来たんだ!」
曜「よぉ〜しっ!!!」パンッ
曜「・・・。」メヲトジ
タンッ ―――
――
―
曜「はぁ・・・今日はダメだったな・・・。」
部屋に戻って改めて今日飛んだ分のフォームをチェックする。
ピッピッ
曜「何回見ても回転も高さも足りない・・・。」
曜「入水も水が跳ねてるし・・・。」
ピッピッ 曜「ああもう!!」
ピッ
曜「やめやめ!! 今日はもう考えるのやめ!!」ポスン
曜「ああ〜!!!」
曜「こんなんじゃダメなのに!!」バンッ
ヨウ!ナニシテルノ!シズカニシナサイッ!
曜「ご、ごめんなさい・・・。」
曜「はぁ・・・。」
曜「不調の原因か・・・。」 原因は何?
みんなからのプレッシャー?
最後の大会だからってこと?
それとも推薦先のコーチが見てるから?
違う・・・。
本当は原因なんて分かりきっていた・・・。
曜「千歌ちゃん・・・、最近練習見に来てくれないなぁ・・・。」ゴロン
曜「はぁ・・・。」 スマホを取って壁紙にしてる千歌ちゃんとのツーショット写真を眺める。
そこには2人とも満面の笑みを浮かべる姿が映し出されていた。
幸せそうだなぁ・・・。
羨ましいなぁ・・・。
このときに戻りたいなぁ・・・。
なんてまるで他人事のように思えるのが不思議だった。
ただただぼーっと眺めているとスマホの画面が暗転する。
どうやらスリープに入ってしまったみたい。
真っ暗になった画面に映し出されているのはさっきとは打って変わって暗い表情の私だった。 曜「やっぱり東京の大学に推薦で行くって言ったのがダメだったのかな・・。」
曜「あれからなんだか千歌ちゃん元気なくなっちゃったし・・・。」
高校3年生も中盤に差し掛かった頃、飛び込みをやっているコーチからとある東京の大学へ推薦で言って見ないかと言われたんだ。
3年になってからはアイドル活動は衣装のアイディア出しくらいで自粛して水泳のほうに専念してたから、それが功を奏してここ最近良い成績をキープしてたのが決め手になったみたい。
私自身このまま飛び込みを続けて、自分が何処までいけるかを試してみたかったから、二つ返事でOKを出した。
っていうか、断った後でこの大学へ入りたくても自力で入学するのは少しきついっていうものあったんだけどね・・・。
あの時に私は完全に浮かれていたよ。
だって仕方ないじゃん! 飛び込みで推薦がもらえたってことは自分の実力が認められたってことだもん!
それで、一番最初に千歌ちゃんにそのことを伝えに言ったんだ。
そうしたら・・・、
千歌『えっ・・・? ○○大学? 東京の?』
千歌『よーちゃん東京に行っちゃうんだ・・・。』
千歌『・・・そっか。』ウツムキ
千歌『・・・。』
千歌『おめでとうよーちゃん!』
千歌『推薦で行けるなんてすごいね!』
千歌『流石チカの自慢の恋人だよ♪』ニコッ ・・・、あの寂しそうな笑顔が頭から離れない。
それからかな、千歌ちゃんが飛び込みの練習に来てくれなくなったのは。
きっと私が○○大学へ行ったら千歌ちゃんは離れ離れになるって思ったんじゃないのかな?
だから素直に応援する気持ちにもなれなくって来てくれないんだと思う。
曜「千歌ちゃんが来てくれないと私、実力を発揮できないよ・・・。」ゴロン
あれこれ考えが浮かんでは消えていき、モヤモヤが募るばかり。
夜は更けていくけど眠れない。
悪循環ってこういうことを言うのかな? そう 今すぐ君に会いたい 君に会って確かめてみたい はぁ・・・。
とにかく何も考えないようにして目を瞑ろう・・・。
いつかは眠れるでしょ。
眠れるといいなぁ・・。
おやすみ千歌ちゃん。
―数日後
先生「はい、今から進路調査票を配るわよ!」ピラピラッ
先生「来週に回収をするからそれまでに記入をすること!」
先生「白紙回答はダメだからね!」 進路調査票か・・・。
本当なら今すぐに書いて提出したいところなんだけど・・・。
曜「どうしようかな・・・。」
チラッと横目で千歌ちゃんを見ると何だか浮かない顔をしてた。
あれは何かを悩んでいる顔かな?
お昼休みにでも話を聞いてみよう。
―お昼休み 屋上
曜・千歌「「いただきま〜す♪」」
千歌「よーちゃんのお弁当、今日もおいしそうだね♪」パカッ 曜「そう?最近朝早く起きて自分で作ってるんだぁ〜。」
千歌「え?自分で作ってるの!?」
曜「そうだよっ!」
曜「ほらっ、卒業しちゃったら私、東京の大学へ行くつもりだから今の家に自炊とかに慣れたほうがいいかな〜ってね♪」
曜「今までもしてなかったわけじゃないんだけど・・・。」
曜「朝はやっぱり苦手だから・・・。」ニガワライ
曜「モグモグ、ゴクンッ。 うん!今日はいい出来だよ!」
千歌ちゃんのこと気遣うつもりが、なんで追い込むようなこと言っちゃうんだろ・・・。
私、本当に最低だ・・・。 千歌「・・・。」
千歌ちゃんの顔を見てしまったって気持ちになる。
またあの悲しい顔をしてるよ・・・。
ここは何とかしてフォローしないと!
曜「そういえば千歌ちゃん?」モグモグ
千歌「・・・なぁに?よーちゃん?」
曜「さっき教室で言ってた考え事って何?」カタンッ
曜「なんか深刻なことでもあった?」ジー 何で悩んでいるかなんて分かっているつもりだった。
でもあえて分からないふりをする私に少し自己嫌悪する・・・。
千歌「・・・。」
千歌「ううん・・・、深刻なことじゃないよ・・・。」
曜「そうなの?」
千歌「うん。」
あれ?
何か思っていた感じと少し違うような・・・。
私が東京に行くのが嫌じゃなかったのかな? 千歌「・・・。」
千歌「今朝ね・・・、進路調査票を出せって言われたよね?」
曜「うん?え?あっああそうだね。」
急に話題を振られて少しビックリして挙動不審になってしまう。
進路調査票が何か関係しているのかな?
千歌「チカね、将来何をやりたいかって決まってないんだ・・・。」
千歌「ただ漠然と何かをやりたいっていうことも決まってない・・・。」
千歌「だから将来のことが真っ白なんだ・・・。」
千歌「情けないよね?みんなは何となく何かをやりたいだとかどこかへ行きたいって決めてるのに・・・。」シュン 千歌「そのことをずぅ〜っと考えてて・・・。」ウルウル
千歌「でも考えても考えても答えが出てくれなくって・・・。」ポロポロ
千歌「チカっ・・・グスッ・・・どうしたらいいのか・・・っわかんなくって・・・。」ポロポロ
千歌ちゃんの将来のことで悩んでたのか・・・。
何だろ?私のことで悩んでなかったのかと分かってホッとしたのと寂しい気持ちが一気に襲ってきた。
それでも今は目の前の愛しい千歌ちゃんを慰めてあげないと。
曜「それで元気がなかったんだね・・・。」ナデナデ
千歌「よーちゃん・・・。」スリスリ
曜「よしよし、今は私の胸で泣いていいからね。」ナデナデ
千歌「うわ〜ん!!!」 私の胸で泣きじゃくる千歌ちゃんの頭を優しく撫でる。
こんなに泣く千歌ちゃんは久しぶりかも。
今はただただ泣き止むまでこのままで居てあげよう。
私のモヤモヤなんて千歌ちゃんに比べたら大したことが無いんだから・・・。
―夜 曜の部屋
曜「はぁ・・・、千歌ちゃんの悩みは解決できたのかな?」
曜「あの感じじゃまだ吹っ切れてないように思えるけど・・・。」
昼間のやり取りが何だか引っかかって私もすっきりしないでいた。 曜「私もこれどうしようかな・・・。」
机の上に置いている進路票をチラッと見る。
相変わらず白紙のままの進路票。
曜「はぁ・・・。」
今日何度目か分からないため息をつく。
周りの人に聞いたところで返事はどうせ決まってる。
みんな『せっかく推薦もらえたんだから○○大学に行けばいい。』って言うだろう。
千歌ちゃんでさえこの前おめでとうって言ってくれたんだ。
他の人に聞いたところで同じ答えになるのは容易に想像が付くよ。 曜「はぁ・・・。」
もうため息しかつけなくなってきた。
こうでもしないと胸のモヤモヤで心が押しつぶされそうになる。
コンコンッ
ガチャッ
曜ママ「曜?返事が無いけどどうしたの?」
曜「ママ? 何か用?」
曜ママ「さっきからご飯が出来たって言ってるのに全然返事をしないんだから!」
曜「もうそんな時間?」
チラッと時計を見るともう19時に差し掛かっていた。 曜「ごめんごめん、ちょっと考え事してたから聞こえなかったよ・・・。」
本当にママの声が聞こえてなかったみたい。
もう・・・悩みだすといっつもこれだよ。
曜ママ「聞こえなかったって・・・。」
曜ママ「どうしたの?何かあったの?」
曜ママ「あなた悩み出したら周りが見えなくなるから心配だわ。」
曜「何でもないよ。」
この悩みをママに言っても困らせるだけだから・・・。
自分で解決しないとね。 曜ママ「そうなの? 何かあるなら言ってちょうだい?」
曜ママ「私はあなたのお母さんなんだから・・・。」
曜ママ「あら?その紙は何?」
まずい・・・、机の上の進路票を隠すの忘れてた。
今更隠しても仕方ないか・・・。
曜「今日ね、学校から進路調査票貰ったんだ。」
曜ママ「へぇ〜、もうそんな時期なのね。」
曜ママ「曜は○○大学から推薦もらってたんだからそこに行くのよね?」
ママがチラッと進路票に目をやる。 曜ママ「まだ白紙なの?」
曜「・・・うん。」
曜ママ「そう・・・。」ポスン
そういうとママは私のベッドに腰をかけた。
曜ママ「曜、こっちにいらっしゃい。」ポンポン
自分が座った隣をポンポンと叩いて私を呼ぶ。
ママと目が会うとニコッと微笑んでくれた。
それだけで、もう私の涙腺が緩んでくる。
私は椅子から立ち上がりママの隣に座った。 曜ママ「どうしたの? 何か悩んでるの?」ギュッ
そういうとママは私をぐっと抱き寄せて頭を優しく撫でてくれた。
曜ママ「私で良かったら話くらいは聞くわよ。」ナデナデ
もうダメだった。
ママの暖かさで私の心の中のモヤモヤが堰を切ったようにあふれ出てきた。
曜「わたしね・・・、なんだか自分が何をしたいかが分からなくなってきたんだ。」
曜「最初は推薦をもらえた○○大学へ行く気満々だったよ?」
曜「とっても嬉しかったからママには悪いと思ったんだけど、一番最初に千歌ちゃんに報告したんだ。」
曜「そうしたら祝福はしてくれたんだけど、とっても寂しいそうな顔をして・・・。」 曜「その顔が私の頭から離れてくれないの。」
曜ママ「・・・。」
ママは私の話をただ静かに聞いてくれてた。
暖かいその手はいつまでも私の頭を撫でてくれる。
曜「最近ね・・・、千歌ちゃんが私の飛び込みの練習に来てくれないの。」
曜「いつもはよっぽどのことが無い限りは来てくれてたのに。」
曜「やっぱり私と離れ離れになるのが嫌なのかなって・・・。」
曜「東京に行くのを素直に喜んでくれないのかなって・・・。」 曜「そんなことばっかり考えてたら、今まで調子が良かった飛び込みも上手くいかなくって・・・。」ポロポロ
曜「もうね・・・っ、私どうしたらいいのか・・・グスッ、わからないの・・・。」ポロポロ
曜「飛び込みを続けたいって・・・っ、思うのと・・・、ハァ、千歌ちゃんのそばに居たいって気持ちがぶつかって・・・。」ポロポロ
曜「もうどうしたらいいのかわからないんだよ!」ギュッ
最後のほうは何を言ってるか自分でも分からないくらい混乱してた。
今はママに抱きついて泣くことしかできない。
昼間の千歌ちゃんと同じだ。
不安が溢れてそれが涙として溢れかえっている。 曜ママ「そう・・・、そんなことがあったのね。」ナデナデ
曜ママ「全くあなたは本当に私に良く似ているわ。」ナデナデ
曜「・・・?」ポロポロ
ママの言葉に思わず顔を上げる。
曜ママ「昔ね、パパとまだ付き合っていた頃ね今のあなたと同じようなことがあったの。」
曜ママ「パパはね、ほら航海士の実習生として遠征に行くことが多かったの。」
曜ママ「付き合ってすぐの時に離れ離れになっちゃったから寂しくってね・・・。」
曜ママ「今みたいにスマホみたいな便利なものがなかったから、ただ待つしかなかったの。」 曜「・・・そうなんだ。」
ママとパパの間にこんなことがあったことなんて知らなかった。
曜ママ「本当に寂しくてね、夜が来るのが嫌だったなぁ。」
曜ママ「毎晩泣き崩れてたもん。」
曜ママ「こんな寂しい想いするなら別れたほうがいいのかなってさえ思ったくらいよ。」
こんなに寂しい顔をするママを見たことが無い。
やっぱり好きな人と離れ離れになるのってそんなに辛いことなんだね。
私は自分の答えになるかもしれないと必死になってママに縋り付いた。 曜「でも別れなかったんだよね?」
曜「なんで? なんでなの?」
曜「なんでパパを信じ切れたの?」ギュッ
曜ママ「そうね・・・。」
ママは考え込むように目を閉じる。
やがて目を開けると私に語りかけてくれた。
曜ママ「色々考えたんだけどね、あの人と離れて暮らすなんてことを想像出来なかったからかな。」
曜ママ「あの人のことが好きすぎて寂しい思いをしているのに別れたら寂しいどころじゃないじゃない?」 曜ママ「そのことに気がついたらね、待つ寂しさが待つ幸せになってきたの。」
曜ママ「会えない寂しさよりも、会えた時の嬉しさのほうが大きくなったのね。」
曜ママ「ふふふ、私も単純だったのね。」ナデナデ
そういうと再び私の頭を優しくなでてくれた。
離れ離れになる寂しさより、会えた時の嬉しさか・・・。
それには気がつかなかった。
離れていても心が通じ合っていればっていうけど、そういうことなのかな?
私にもそれが分かる時がくるのかな? 曜ママ「今もあの人は家を開けることが多いから寂しいんだけど、まだ毎日連絡をくれるからあの頃よりマシね。」
曜ママ「それに今はあなたがいてくれるから・・・。」
曜ママ「私はちっとも寂しくなくなったわ。」ナデナデ
曜「ママ・・・。」
曜ママ「どう?少しは役に立てたかしら?」
曜「・・・うん。」
曜「私なりにもうちょっと考えてみるね。」
曜ママ「それは良かったわ。」 曜ママ「それじゃあご飯にしましょうか?」
曜「ううん、もうちょっとこのままで居てもいいかな。」ギュッ
曜「今はママにギュってしてもらいたいんだ。」ギュ〜
曜ママ「あらあら、いつまでも甘えん坊さんね。」
曜ママ「いいわよ、あなたの気が済むまでこのままでいても。」
曜「ありがとうママ。」
ママに抱きつきながら今後のことを考えていた。
私はどうするのか?どうしたいのか?
千歌ちゃんとはどうなりたいのかを・・・。 ―翌日 曜の部屋
今朝、千歌ちゃんから久々に私の家に泊まりたいと言われた。
ただのお泊り会というわけじゃないみたい。
私の部屋に来てからもずっと何かを言いたそうにしてたから。
だから私から思い切って聞くことにしたんだ。
曜「ち〜かちゃん♪」ダキッ
千歌「あっ・・・。」
曜「何を迷ってるのか分からない・・・、何を怖がっているのかは分からないけど、大丈夫だよ!」ギュッ
曜「私が絶対に何とかしてあげる!」 曜「私がずっとそばにいてあげるから!」
曜「だから泣かないで?」
曜「千歌ちゃんの泣いてる姿を見ると私まで悲しくなっちゃう・・。」
曜「胸を締め付けられるの・・・。」ギュ〜
千歌「よーちゃん・・・。」ギュッ
自分のことを棚にあげて千歌ちゃんに問いかける。
本当は自分のことも何も決めてないのに・・・。
本当に情けないな私。
千歌ちゃんが意を決したような顔で私に紙を差し出してきた。 千歌「チカ、よーちゃんにこれを見てほしいんだ!」ピラッ
曜「千歌ちゃん?」
千歌「・・・。」コクンッ
これは進路調査票?
曜「・・・分かった。それじゃあ見るね。」
曜「・・・。」ピラッ
曜「〜〜〜っ!?」
曜「ち、千歌ちゃんこれって!!」 進路調査票
氏名:高海 千歌
第1志望:○○大学 スポーツ栄養学科 これって、私が推薦を貰っていた大学じゃ!?
千歌「うん・・・、よーちゃんにこの間推薦で行くって言ってた大学だよ。」
曜「そうだけど・・・、何で急に?」
千歌「昨日色々迷ったんだ・・・。」
千歌「旅館で働く、今の自分にあった大学へ行く・・・。」
千歌「色々考えては違うって思って、考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになっちゃって・・・。」
千歌「訳が分からなくなっちゃって・・・。」ギュッ
曜「千歌ちゃん・・・。」ギュッ
私の胸で泣く千歌ちゃんを抱き寄せ、話を静かに聞くことにした。 千歌「本当はね・・・最初から決まってたんだ。」
千歌「チカはよーちゃんと一緒に居たいって・・・。」
千歌「ずっとずぅ〜っとすばに居たいって・・・。」
千歌「でもね・・・。」ウルウル
千歌「いつもよーちゃんに・・・グスッ・・・支えられてばかりでっ!」ポロポロ
千歌「チカが・・・っ・・・一緒に居たら迷惑ばっかりかけちゃうんじゃないかなって・・・。」ポロポロ
千歌「また悪い方にしか・・・ヒッグ・・・考えられなくって・・・・。」ポロポロ
一緒に居たいって思ってくれてたんだ。 千歌ちゃん、私と一緒に居たいと思ってくれてたんだ!!
それだけで嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。
曜「千歌ちゃん!!」ギュッ
曜「そんなことないよ!」
曜「千歌ちゃんが私と一緒に居てくれるってそれだけで嬉しいし、元気が出るんだ!」
曜「千歌ちゃんのことで迷惑だなんて思ったこと一度もないよ!」
曜「そんな悲しい顔しないで? ね?」ナデナデ
千歌「グスッ、えへへ♪やっぱりよーちゃんは優しいよ///」
千歌「だからそんなよーちゃんを今度は私が支えるって決めたんだ!」 曜「・・・だからこの学科を選んでくれたんだ。」
ただ、一緒に居てくれるだけでも嬉しいのに支えてくれるって言ってくれるなんて・・・。
千歌「そう!」
千歌「よーちゃんは今もすごいスポーツ選手だけど、将来はもっともぉ〜っとすごいスポーツ選手になれるって信じてるから!」
千歌「チカはそんなよーちゃんの元気を守ってあげたいの!」
千歌「スポーツ栄養学を学んで、いつでもよーちゃんのそばに寄り添えるようにね?」
千歌「今までいっぱいよーちゃんに元気をもらってきたから、今度はチカの番!」
千歌「よーちゃんの身体も心もチカがケアしてあげるね!」ギュッ
曜「千歌ちゃん・・・。」ウルウル もうそれだけで胸がいっぱいだった・・・。
私の目から涙が溢れてくる。
今度は私が千歌ちゃんに気持ちを伝える番だ!
曜「前にね、もう東京の大学に行くつもりみたいなこと言ってたんだけど・・・。」ポロポロ
曜「私ね・・・、本当はこの推薦受けようか迷ってたんだ。」ポロポロ
千歌「よーちゃん?」
もう気持ちが溢れて止まらない。
千歌ちゃん・・・。
千歌ちゃん! 曜「私の幸せって何かってことを昨日ずっと考えてたんだ。
曜「千歌ちゃんとずっと一緒に居ることなの・・・。」
曜「今までずっと一緒だったのに、高校卒業したら別々の道に行って、そのままバラバラになっちゃうんじゃないかなって・・・。」
曜「不安で不安で、夜も眠れなかったんだ・・・。」
曜「だからね?千歌ちゃんの進路次第で私も一緒のところに行こうって考えてたんだ・・・。」
曜「見て私の進路票。」ピラッ
千歌「白紙・・・?」
私も自分で持っていた白紙の進路調査票を千歌ちゃんに見せる。
そして昨日決めた自分の進路を千歌ちゃんに言うことにした。 曜「私ね、千歌ちゃんが実家を継ぐって言うなら、私も十千万で働くつもりだったし、地元の大学へ行くって言うなら同じところに行くつもりだった・・・。」
曜「千歌ちゃんのそばから離れないようなところにしたかったんだ・・・。」
曜「ごめんね・・・私、自分のことばっかり考えてたよ・・・。」
曜「千歌ちゃんみたいに相手のことを思ってじゃなくって、自分のことばっかり・・・。」
曜「重いよね・・・こんな想い・・・。」ウツムキ
余りにも身勝手な想いを千歌ちゃんに伝えると私は思わず俯いてしまった。
千歌ちゃんの志に比べたら、私の想いなんてちっぽけだと思ってしまったから・・・。
そんな私を千歌ちゃんは満面の笑みで迎えてくれた。 千歌「嬉しいっ♪」ギュ〜
千歌「よーちゃんもチカと一緒だったんだね♪」
千歌「よーちゃんの想いもチカの想いも同じだよ!」
千歌「だからよーちゃんが気にする必要ないんだよ!」
曜「千歌ちゃん・・・。」
曜「私も嬉しい!!」
曜「千歌ちゃんがそばに居てくれるないと私全然ダメみたい・・・。」
曜「最近練習に千歌ちゃんが来てくれなかったじゃん?」
曜「そのせいで調子が出なくってさ・・・。」 曜「ずっと悩んでたんだ・・・。」
曜「このまま千歌ちゃんと離れ離れになったらどうしようって・・・。」
千歌「そうだったんだ・・・、ごめんねよーちゃん。」ナデナデ
千歌「最近よーちゃんの練習の時に限って旅館が忙しくって・・・。」
千歌「手伝いをさせられて見にいけなかったんだ。」
千歌「本当は全部ほったらかしにして見に行きたかった。」
千歌「よーちゃんが不調だったときにぎゅってしたかった。」
千歌「ごめん・・・、本当にごめんなさい・・・。」ギュッ 曜「千歌ちゃんは悪くないよ。」ギュッ
曜「私のほうこそごめん。」
この後もずっと二人で抱き合いながら涙を流して抱き合っていた。
千歌ちゃんの暖かさを感じながら、改めて隣に居てくれる幸せをかみ締めていた。
ああ、やっぱり私には千歌ちゃんが必要だ。
じゃないと私は何も出来ないや・・・。
曜「ねぇ? 千歌ちゃん?」
千歌「なぁによーちゃん?」 曜「今回のことでね私分かっちゃったんだ。」
曜「千歌ちゃんが一緒じゃないと私本当にダメみたい。」
曜「これからがそうだったように、これからも・・・。」
曜「これからも私のそばに居てくれるないかな?」
千歌「もちろんだよ!」
千歌「チカからお願いしたいくらい。」
千歌「だからチカのそばでよーちゃんは飛び込みを頑張ってほしい。」
千歌「チカにキラキラ輝いてるよーちゃんを見せてほしいんだ!」 千歌「チカはその姿を一番そばで見てるから!」
千歌「一緒に頑張ろう♪」
ニシシっと私に笑いかけてくれた。
本当に全く・・・、千歌ちゃんには叶わないな・・・。
曜「うん!頑張ろう!!」
でも、少しだけ気になることが・・・。
曜「あっ、でもあの大学ってかなり入るの難しいんじゃ・・・。」 そう、東京でも屈指の名門私立大学だから千歌ちゃんの成績を知ってる私としては心配だった。
3年生になってからコツコツと勉強しているおかげで全く届かないってわけじゃないのは知ってるんだけど・・・。
それでも厳しいのは明白だった。
千歌「うぐっ・・・。」
やっぱり苦い顔をしてる・・・。
曜「千歌ちゃん大丈夫?」
千歌「い、今から全力で頑張るよ!」
ふふふ、やる気になっちゃ千歌ちゃんならきっと大丈夫なんだろうなぁ〜。
根拠は無いんだけどきっと合格すると思えてくるから不思議だった。 曜「分からないところがあるなら私も手伝うからね?」
曜「少しずつでいいから頑張ろう?」
千歌「うん!」
千歌「よーちゃんがいるなら絶対に合格できそうだよ!」
千歌「よろしくお願いしますよーちゃん先生!」
曜「よし!それじゃあ一緒に頑張ろう千歌ちゃん!!」
曜「私達の未来に向かって!」
曜「全速前進!!」
千歌・曜「「ヨーソロー!!」」 ちょっと厳しい道のりかもしれないけど。
私たちならきっと出来る!!
だって、私の最愛の人がそばに居てくれるんだから。
愛してるよ、千歌ちゃん。
これからもよろしくね!
Fin 千歌「ずっと隣に居たいから・・・。」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1520078379/
の曜ちゃんパターンとなります。
最近思うんですがどうしてもやっぱりちょっと重めなようちかになっちゃいますね・・・
ご覧頂ありがとうございました! >>47
括弧閉じの前にいらないのを知りませんでした。
以後注意します。
>>64
かかってません!! おつおつ
前回の曜ちゃん視点だったのね
前回の姉達との絡みも良かったけど、今回の親子会話も良かった つまんなすぎだし頭の妄想だけにとどめといた方がいいよ >>65
カッコ閉じる前の句点はつけたかったらつけてもかまわないぞ
近年はつけない出版社が多いというだけで日本語文法の絶対的なルールではない
大して本を読まない人間ほど知ったかで>>47みたいなこと抜かすけど聞き流していい
はい実例
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