「……けてっ、たす……けてっ」
 
彼女の全身に影のように黒い蛇の群れがまとわりついてゆく
 
(ch……うっ……)
 
彼女の名前を叫びたくとも声が出せない
一歩を踏み出すことも、手を伸ばすこともできない
 
そうこうしている間に彼女の身体は蛇の濁流に呑み込まれつつあった
 
「り、こ……ちゃんっ……ぐっ」
 
彼女の真っ赤な瞳に映る自分の姿を見て、身動きが取れない理由がわかった
わたしは神話に出てくるバジリスクやメデューサに睨まれた獲物のごとく、石像となっていたからだ