【SS】 曜「死神との契約」
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曜「えへへ……今日は千歌ちゃんの家にお泊り……♪」
曜「えっと、準備するものはこれで大丈夫かな……う、うん。いざという時のための下着も準備してるし……!」
曜「べ、別にやましい気持ちがあるってわけじゃなくてただ何事にも心の準備ってものがあってもうヨーソローなぁ!」
曜「さて。そろそろ出なきゃ。千歌ちゃんにLINEして、っと……」
曜「それじゃおかーさーん! 行ってくるねー!」 そして、とある夜。
見慣れた影が、病室に揺らめいていた。 死神「………」
曜(ああ、死神さん)
死神「お前の思っていることは我にはわかる。神だからな」
曜(テレパシー、ってやつなのかな。便利だね)
曜(久々に声を聞いた気が……声なのかなぁ、これ)
死神「さて……刻限だ」
曜(そっか……今回は、長かったなぁ)
死神「命に等しいものを賭したのだからな」 死神「……どうする。お前の当初の望みの刻限までは延命できたのではないか?」
曜(そうだね……千歌ちゃんはラブライブで優勝まで果たした)
曜(もう、私は思い残すことはない)
曜(……いや、違う)
曜(輝きを見つけ出した千歌ちゃんに、この先でももっとずっと輝いていて欲しい)
曜(……毎日、お見舞いに来てくれることは本当に嬉しい)
曜(でも、このまま千歌ちゃんを縛り付けておくわけにもいかないんだ)
死神「………」
曜(死神さん。最後の、本当に最後の最後の契約延長を)
死神「………何を、差し出す」
曜(全部。私の、持てるもの。私の、差し出せるものを全部) 死神「……お前は"全部"という言葉の意味を理解しているのか?」
曜(どういうこと?)
死神「全部とは正に"全部"だ」
死神「お前の存在、縁、絆、この世に残した証、何もかも一切合切」
死神「その全てを失うということは、お前は"この世界にいなかったことになる"ことと等しい」
曜(………)
死神「お前が築き上げてきたもの、積み上げてきたもの。何もかもが無に帰す」
死神「当然、お前の想う少女はお前のことの全てを忘れる」
死神「9人の絆も、8人の絆として上書きされる」 死神「お前が、その存在をかけて守り抜いた少女もーーーお前の存在を忘れ去ってしまう。否、はじめから居なかったものとして扱われるのだぞ」
曜(……そっか)
曜(……………)
曜(いいよ)
死神「正気か?」
曜(うん) 死神「……何か、言い残したことはないのか」
曜(未練はあるよ。でも、それをわざわざ千歌ちゃんに言う必要もないかな、って)
死神「確かに。何を言い残しても、この先の世界の彼女はそのことを覚えていない」
曜(そう、だね)
死神「……再度確認するぞ。本当に、よいのだな」
曜(うん。千歌ちゃんが、新しい未来へと踏み出せるのなら) 死神「ならばーーーー契約は成立だ」
死神「お前は、その存在全てを失う」
曜(………さよなら、千歌ちゃん)
曜(でも、それでも)
曜(私は、きっと、忘れないからーーー) ーーーー緩やかな眠りに落ちるように。意識は闇へと拡散していく。
死とは、ただひたすらに暗黒の水底へ落ちるものだと、そう考えていた。
……だが、これは"死"ですらない。
存在の消滅。
何も残さず、何も残せず、まるで水泡のように消えていく。
それはまるで、おとぎ話の結末のようなあっけなさで。
渡辺曜という存在は、ここで終了した。 ーー静けさが聞こえる、というと日本語がおかしい気もするけど。
俗に言う「シーン」という音。音じゃないけど、そういうモノが聞こえてきそうな空気。
曜「………」
曜「ううん………」
曜「………」
曜「ふぁあ……」
そしてその静寂に、気の抜けたあくびが響く。 曜「……ここは」
曜「……千歌ちゃんの、部屋?」
曜「……私って、死んだんじゃ……いや、存在自体が消えたはず」
曜「もしかして、死後の世界ってやつ?」
曜「……死後の世界が千歌ちゃんの部屋って、未練たらたらだなぁ……あはは」
曜(……でも、死後の世界ならちょっとくらい探索してもいいのかな?)
ドタドタドタドタ……
曜(ん? 足音?) ガララッ!
千歌「曜゛ち゛ゃ゛ん゛っっ!!!」
曜「!?」
千歌「曜ちゃん曜ちゃん曜ちゃん曜ちゃんよぉおおちゃぁああん!!!!」ダキツキッ
曜「うわぁああちちかちゃんっ!?」
千歌「よぉおおおおおちゃああああああん!!!!!!」ギュウウウウウウッ
曜「千歌ちゃん苦しいっっ!! 苦しい苦しいってばぁ!!」
千歌「よぉおおおおちゃあああん!! よかったよぉおお!!!!」
曜「えっ、えっ……これは……」
曜(ついに千歌ちゃんをこじらせすぎて死後の世界でも千歌ちゃんの幻を?) 死神「目が覚めたか、娘よ」
曜「し、死神さん!?」
死神「ーーしてやられた」
曜「え?」 死神「お前と魂の契約を交わした後、お前が救おうとした少女に伝えたのだ」
曜「千歌ちゃんに……?」
死神「そう、事の顛末をな。どうせ全てを忘れ去ってしまうのだから、最後にお前の証を立ててやろうとしてのことだったが」
死神「ーーー思えば、これがよくなかった」
曜「?」
死神「……一通り、お前との契約の内容について話し終えるや否や、我に掴みかかるほどの勢いでこう言ってのけたのだ」
"千歌「だったら!! 私の全部全部ぜーーーーんぶをもっていっていいから、曜ちゃんのことは助けてあげて!! ううん!! なんだったら私の大好きなみかん一箱もおまけでつけるから、だから……私と契約して!!」"
死神「とな」 曜「千歌ちゃん……」
死神「これが、我にとって想定外であった」
死神「我は契約を拒まない。相応の代償があるのであればな」
曜「そ、そうなんだ」
死神「だが、この契約を果たそうとすればーー」
曜「……そんなの、私が認めるはずない」
曜「その千歌ちゃんの契約を、更に上書きするまでだよ」
曜「例え忘れ去ってしまっても……絶対に思い出して、そして、絶対に契約する」
死神「……そう答えると思っていた」
死神「だがこれでは堂々巡りだ。契約に次ぐ契約の更新。どちらかが折れるまで、これが延々と続くことは想像に難くない」
曜「少なくとも私は絶対に譲らないよ」
死神「……いかに興味深い魂であっても、手に入れられなければ意味がない」 死神「なので、我は貴様らに関わるのを諦めることにした」
曜「なるほどなるほど……へっ?」
死神「我とて暇ではない。手に入れることが叶わぬならば、他の魂を蒐集するまで」
曜「あっ……そう、ですか」
死神「……その魂の輝きは確かに魅力的ではあった。だが、それほどの輝きを持つに至るには、何らかしらの理由があった」
死神「それは、その魂の持ち主の輝きでもあり、その魂に寄り添う者の輝きでもある」
死神「お互いがお互いを強く想うその輝きは、神であろうと戯れには手を出せぬのだ、と」
死神「若輩の身に、よい経験となった」
曜(死神にも若いとかそういうのがあるんだ……) 死神「よって、当初の契約から全てを巻き戻させてもらった」
曜「じゃあ今日は……あの、千歌ちゃんの家に泊まった日だ」
死神「そうだ。今後は、順当に死が迎えに来るのを待つが良い」
死神「人類は、生まれながらにして絶対の契約を交わしている」
死神「こればかりは、誰かが肩代わりすることのできない契約をな」
曜「死神さん……」
千歌「曜ちゃんっ!!!」ドンッ
曜「ぐぇっ!?」 千歌「さっきから曜ちゃん曜ちゃんって呼んでるのに、無視しないでよ!!!」
曜「ごめんごめん……でも、本当によかった! 二人共無事で」
千歌「……よくない」
曜「?」
千歌「チカは、ぜんぜんよくない」
曜「え、だって……千歌ちゃんも私も、何事もなくー……」
曜(ってわけにはいかないか……) 千歌「……曜ちゃん」
曜「……」
千歌「どうして……どうして、あんな無茶なことしたの……?」
曜「……
千歌「曜ちゃんのバカ! バカヨーソロー!! あんな……あんな無茶してぇ……!!」
曜「ごめんね、千歌ちゃん。でも」
曜「これからは、ずっと、一緒にいるから」 千歌「本当?」
曜「うんっ!」
千歌「絶対?」
曜「もちろん!!」
千歌「ずっと?」
曜「ずっと!!!」
千歌「……でもなぁ」
曜「信用ないなぁ私!?」 千歌「……けーやく」
曜「?」
千歌「契約! 契約だよっ!!」
曜「け、契約?」
千歌「そう!! 私に黙って勝手に突っ走ったりしないで!! ずっと一緒にいて!!」
曜「う……うん」 千歌「……ってことは、代償が必要だよね」
曜「さ、さっきの死神さんみたいな……?」
千歌「そうそう。契約には代償が必要なのだ」
曜「………えっと、じゃあ、何を差し出す?」
千歌「……じゃあ」
チュッ
曜「ふぇっ?」 千歌「曜ちゃんを、差し出してもらおうかな……なんてねっ」
曜「あははは……まいったなぁ」
曜(この契約の刻限は、一体いつになるのだろうか)
曜(でも、それはきっと。遠く、永く、ずっと続く契約)
曜「大好きだよ、千歌ちゃん!」
千歌「私もだよ、曜ちゃん!」 |c||^.-^||おしまいですわ!
前作
聖良「迎えに来ましたよ。善子さん」 ダイヤ「!?」
|c||^.-^||「あらルビィ、おかえりなさい」理亞「た、ただいルビィ……」 曜ちゃんほど闇墜ちが似合うキャラいないのに 暗黒面に墜ちた曜ちゃん見たいなぁ ハッピーエンドね
面白かったよおつ
一歩間違えたらまどまぎのまどか夫妻みたいな事になってた曜ちゃんパパママ つまんない上に2日もかけて終わってる。二度と書くなよ。 二人とも一周目の記憶を持ちつつやり直すのね
ハッピーエンド乙 おつおつ
毎日お見舞いに来てた千歌ちゃんも曜ちゃんと同じぐらい辛そうだよね
あと、>>64のここから自分のいない日常を痛感させられる曜ちゃんの胃痛展開来るかと身構えてしまったがハッピーエンドで本当に良かった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています