【SS】 曜「死神との契約」
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曜「えへへ……今日は千歌ちゃんの家にお泊り……♪」
曜「えっと、準備するものはこれで大丈夫かな……う、うん。いざという時のための下着も準備してるし……!」
曜「べ、別にやましい気持ちがあるってわけじゃなくてただ何事にも心の準備ってものがあってもうヨーソローなぁ!」
曜「さて。そろそろ出なきゃ。千歌ちゃんにLINEして、っと……」
曜「それじゃおかーさーん! 行ってくるねー!」 曜「ちーかーちゃーん!」
志満「あらいらっしゃい。千歌から話は聞いてるからあがって」
曜「えへへ、お邪魔します!」
志満「……にしても、もしかしたら部屋で寝てるのかもね。起こしてきてくれるかな?」
曜「はい! 了解であります!!」 曜「ドアをノックしても反応がない……寝てるね」
曜「ち〜か〜ちゃ〜ん」ガチャ
曜「ちかちゃーん。おきてるー?」
千歌「………」
???「………」
曜「………え」 ???「……何者だ」
曜「…………」
曜「〜〜〜〜〜〜!!!!!」
曜(ななななな、なになになになになに!?!?!?)
曜(全身真っ黒な布と……が、骸骨みたいな顔……!?)
???「混乱しているようだな、娘よ」
曜「!……!!」
曜(声が、出ない……!) ???「我は死神。お前には、私の姿が見えるのか」
曜「!」
曜(し、しにがみっ!?)
???「ちょうどこの娘の魂を貰いに来たところだったのだが……知り合いか?」
曜「しっ……しっ……しん、親友……っ!」
死神「ほう」 曜「親友っ……! 親友っ、ですっ……!!」
死神「そうか。では気の毒だが、この娘の魂は貰っていくぞ」
曜「な、なんっ! なんっ……っっ! なんで……っ!!」
死神「何故、と問うているのか?」
曜「!!」コクコク
死神「そうだな。理由などない。死とは常に唐突に、突然、理不尽に訪れるものである。偶然、我の目に止まったこの娘の魂の輝きが、昨今では見ぬほど美しくてな。つい、蒐集したくなっただけだ」
曜「そ、それだけの理由で……!?」
死神「そうだ」
曜「そ、そんなの認められないよ!!」
死神「ならば、神に抗うというのか?」
曜「ち、千歌ちゃんは連れて行かせないよっ!!!」 死神「……お前には、一つだけ残された道がある」
曜「道?」
死神「我と契約を交わすのだ」
曜「けい、やく?」
死神「この娘の命の代わりに、お前が"代価"を差し出す。その代価に応じて、命をもらうまでの刻限を延長させてやろう」
曜「………」
死神「神に意見しようというのだ。最大限の譲渡と思って欲しいものだ」
曜「……何を、捧げればいいの」
死神「ほう。契約を結ぶのか」
曜「千歌ちゃんの命には代えられない……!」
死神「ならば……"代価"を頂いていくぞーーーー」 千歌「ふぁああ……」
曜「おはよう、千歌ちゃん。もう晩御飯だよ?」
千歌「うぇえっ!? よ、曜ちゃん!?」
曜「あはは……ほら、今日お泊りに来るって言ってたじゃん?」
千歌「ご、ごめーん! 部屋の掃除してたらつい寝ちゃって!!」
曜「いいよいいよ。じゃ、晩御飯食べに行こ?」
千歌「えへへ……じゃ、一緒にいこ!」
曜「うん!」
曜(千歌ちゃん……) 千歌「すぅ……すぅ……」
曜「………千歌ちゃん」
曜(眠れないなぁ……)
死神「時間だ、娘よ」
曜「………私の貯金程度じゃ、数時間が限度かぁ」
死神「どうする?」
曜「……他に、何なら差し出せる?」
死神「差し出せるものは、形あるモノのみとは限らない。例えばーー」 曜「……じゃあ、それを持っていって」
死神「了解した」
曜(もう、後戻りはできないんだ) 部室
千歌「おっはよー!!」
曜「おはヨーソロー!」
梨子「………」
千歌「ん? 梨子ちゃん眉間に皺寄せてどうしたの?」
梨子「……ん」ユビサシ
千歌「あ、シュークリームだ!」
曜「これ、食べていいの!?」
梨子「………」 ちかよう「「いただきまーす!!」」
曜「………」モグモグモグ
千歌「……」モグモ
千歌「はぐぅあっ!?!?」ブフォォッ
曜「え? 千歌ちゃんどうしたの?」
千歌「おっ……あぇぐぁ……っ!! み、みすっ……!」
曜「……うわっ、中真っ赤じゃんこれ」
善子「ドッキリ大ッ成ッ功!!!」
鞠莉「イェーーーーイ!!!」 千歌「ひ、ひどいよりこひゃん!!」
梨子「ごめんね……ふたりとも……私も騙されたんだから……」
曜「これ、中身は堕天使の涙かぁ……」
善子「……って、曜は大丈夫なの?」
曜「あ……あ、あんまり口の中に入らなかったからかな! あははは」
梨子「命拾いしたわね」ジトーッ
曜「なんだか視線が痛いよ梨子ちゃん!?」
千歌「みーーーーーーーずーーーーーーー!!!!!!」
曜「………」 ダイヤ「それでは、今日の練習は此処まで」
千歌「……ダイヤさん。もうちょっと、個人練習見てもらっていいですか?」
ダイヤ「千歌さん?」
千歌「うん……ラブライブ優勝目指す、っていざ考えると、いてもたってもいられなくて!!」
ダイヤ「まったく……無理は禁物ですからね?」
千歌「はいっ!!」
梨子「すっかり、リーダーになっちゃったね、千歌ちゃん」
曜「うん……」
曜「そう、だね」 tp://web.archive.org/web/20171203150717/https://imgur.com/AQpshHL 曜(……晩御飯にも、慣れてきちゃったな)
曜「千歌ちゃん……」
死神「娘よ。刻限だ」
曜「まだ……まだだよ」
死神「ほう。"味覚"を喪失しても尚、次に何かを差し出すつもりでいるのか?」
曜「千歌ちゃんが、何かを成し遂げようと頑張ってるんだ」
曜「こんな……こんなところで、死んじゃいけないんだ」
曜「さあ。また、私から持っていってよ」
曜「もっと……もっと、千歌ちゃんには時間が必要なんだから……!」 死神「では、何を差し出す? 他の五感を失っては、生きることすら困難になるぞ」
曜「何か……何か、ないの?」
死神「ーーーーであれば。その美貌をいただくのはどうか」
曜「えっ……?」
死神「人間の基準はよくわからぬがーーーお前の容姿は、人間の中では秀でている部類のようだ」
曜「……褒められてるはずなんだけど、あまり嬉しくないなぁ」
死神「だが、それを喪えばーーーお前は、あの9人の中にはいられなくなるだろう」
曜「……だろうね。スクール"アイドル"っていうくらいなんだから」 曜「……でもいいよ。もっていって」
死神「よいのか?」
曜「顔がダメになっても、衣装作りくらいはできるんでしょ? みんなを支えることができるなら、私はそれでいい」
死神「そうか。では、契約成立だ」
曜(……もう、千歌ちゃんの隣では踊れないんだね)
曜(……ううん。千歌ちゃんの隣にいることも、難しくなるかもしれない)
曜(それでも、千歌ちゃんのためならば) 〜病院〜
千歌「よ、よよよよよ曜ちゃん!?!?!?」
善子「だ、だだだだ大丈夫なの!?!?!?」
ルビィ「あっ……あぅぁっ……!」
曜「あはは……わ、私は大丈夫だよ。ほら、こうやって喋ることもーー」
千歌「そうじゃなくて!!! 顔が大やけどしたって聞いたよ!!!」
曜「うん。揚げ物の油が……」 曜(契約の結果、私は顔の広い範囲に大きなやけどを負った)
曜(視力などには影響は出なかったが、私の顔の半分はひどく爛れてしまい、表情を作ることも難しくなった)
曜(ーーーーもう、あの頃のように笑うことはできないんだ)
曜(この包帯の下の顔は、もう人の前に明かすことのできないものになっているのだろう)
曜(ステージに立つことはおろか、街中を歩くだけでも、きっと奇異の目線に晒されるような)
曜(だからきっとーー千歌ちゃんと一緒に、街で並んで歩くことも、できない) 果南「……痛みは、ないの?」
曜「うん。ま、まあ感覚もないっていうほうが……だから、笑うとぎこちなくなっちゃって……」
ダイヤ「曜さん……」
曜「そ、そんなお通夜みたいな空気にならないでよ!! 確かに、こんなんじゃもうステージには立てないけど、みんなの衣装作りはできるからさ……」
千歌「やめてよっ!!!」
曜「千歌ちゃん……?」
千歌「曜ちゃんと一緒にライブができないだなんて……嫌だよ……」
曜「千歌ちゃん………」 曜「でも、ラブライブで優勝するって決めたんでしょ?」
千歌「………」
曜「私はこんなのになっちゃったけど……でも、千歌ちゃんが輝きを追いかけるその背中を押してあげたいって気持ちには、全く変わりがない」
千歌「よぉちゃん……」
曜「だから、せめて私のこの気持だけは押し通させて?」
千歌「よぉちゃん……!!」
曜(………だから、お願い。ラブライブまで、時間が続いて) 曜「………来たね。死神さん」
死神「ああ。刻限だ」
曜「ラブライブの決勝まであと少しなんだ。千歌ちゃん、あれからすごい頑張ってさ……すごいよね」
曜「学校のみんなも優しくしてくれるんだ。Aqoursは8人になっても、うまくやっていけてる」
死神「………」
曜「だからーーーまた、契約を延長して」
死神「よいのか。次、お前が何かを差し出すとしたならら、その辛うじて送れている日常すらもーーー」
曜「いいよ。だから、ラブライブの決勝まで保つようにーーーー」 曜「私の、手でも足でも持っていって」
死神「我は契約を拒まない。だがお前は、その残されていた未来の可能性すらも、あの少女のために投げ出すというのだな」
曜「もちろん」 千歌「曜ちゃんっっ!!!!!!! 曜ちゃんっっ!!!!!!!」
曜「………」
曜(……これが、きっと最後の契約だ)
曜(私は、交通事故で病院に救急搬送された)
曜(辛うじて一命を取り留めたが)
曜(両手は、もう衣装を縫うような複雑な動作に耐えられない)
曜(両足は、膝から下が喪われた)
曜(飛び込むことはおろか、一人で水にすら入れない)
曜(そして………) 曜「…………」
千歌「よ……ぉぢゃん……」
曜(ーー声も、喪った)
曜(もう、歌うことも)
曜(それどころか、千歌ちゃんと会話することも、できない)
曜(飛び込み選手としての渡辺曜も)
曜(スクールアイドルAqoursとしての渡辺曜も)
曜(千歌ちゃんの幼馴染としての渡辺曜も)
曜(完全に、壊れてしまった) 千歌「曜ちゃん。お見舞いに来たよ」
曜「………」
曜(ありがとう、千歌ちゃん。そう返したいのに)
千歌「ほら、見てよ。決勝のライブ動画。曜ちゃんが頑張って作ってくれた衣装、すっごくキラキラしてるでしょ!」
曜「……」ウンウン
千歌「それにね……」
曜(千歌ちゃんは、あの日からほぼ毎日お見舞いに来てくれる)
曜(そして、笑顔でいろんな話をしてくれる)
曜(きっと、素敵な、素敵な話をしてくれているのだろう) 曜(でも、私はそれを類推することしかできない)
千歌「それに……ひっく……」
曜(千歌ちゃんはいつも、突然泣き出してしまう)
千歌「ごめんね……よぉちゃん……ずっと、ずっと笑顔で……いなきゃなのに……!」
千歌「千歌が……ひっく……泣き虫だからいつも……!」
曜(私は、そのことがとても悲しい)
曜(私の耳が聞こえなくなっているせいで、千歌ちゃんを悲しませてしまっていることが) よくあるネタだけによくある終わり方にならないよう期待するん こんな展開にしといてご都合主義ハッピーエンドなんかにしたら安っぽさ全開やろなぁ いやいや、もう終わりみたいなもんやろ最後まで書いてや
それともこれから霊界激闘編が始まるんか これが梨子ちゃんと死神の画策でチカちゃんのためなら色んなものを差し出すであろう曜ちゃんの魂を削りとってその報酬、対価を梨子ちゃんが得ている流れは昔見たからやめとけよー ラブライブが終わり、幾つかの季節が過ぎた。
この白く清らかな病室は、時間の感覚を惑わせる。
どれだけの時間が経ったのか、もう私にはよくわからない。
それでも、ただひとつ確かなことはーーー
"曜ちゃん”
千歌ちゃんは、毎日お見舞いに来てくれたということ。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています