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花丸「紅い唇」
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0001名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/05(日) 23:47:28.25ID:rpEihqQk
「―――ふぅ」

読み終えた小説をぱたんと閉じて、マルは一息。


この本―――浦女の図書室の最後の購入リストの中にあった、1冊なんだ。

もう廃校になっちゃうから―――図書室の購入リクエストも、これでおしまい。

浦女が無くなっちゃうのも、もちろん寂しいけど。


この図書室の本棚には、もう―――本が増えることも無い。


ううん、むしろ―――

最近置かれたばっかりの本棚も、もう古くなって歪んじゃった本棚も―――

そこに住む本たちも、それを読む生徒も、みんな――――

ここから、いなくなっちゃう。


実際、もう学校の備品は少しずつ片付けられていて―――

図書室も例外じゃない。
0023名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/06(月) 00:59:15.84ID:L8Flrlaf
「すっ―――」

「好きな人ぉ!?」


鞠莉ちゃんの一言で、ルビィちゃんとヨハネちゃんが立ち上がる。


「ウ、ウソでしょマル!?」

「ど、どんな人!?ルビィも会ってみたい―――あ、でも男の人は苦手だから、えっと―――」


2人の声が頭に入ってこない。


耳たぶが熱くなるのを感じる。


「って――――もしかして、本当に―――?」


鞠莉ちゃんの笑顔が少し引きつる。


「そ、そうだわマル!ちょっと来てくれる?」


鞠莉ちゃんに腕を引っ張られて、マルは教室を飛び出した。
0024名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/06(月) 01:07:00.14ID:L8Flrlaf
鞠莉ちゃんに連れられてやってきたのは、屋上だった。

太陽の光を浴びて、キラキラ光る駿河湾がまぶしい。


「――ごめん、マル。冗談のつもりだったんだけど―――まさか本当に、恋しちゃってるなんて」


恋。


本の中では、何度も経験してきた。

物語の世界の恋なら、熟知している。

Aqoursの曲で恋の歌も、そんな物語の世界の恋を想像しながら歌ってた。


でも、現実の世界の恋は――――知らない。


「恋、なのかな」

「……ん?どういうこと?」
0025名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/06(月) 01:10:18.86ID:L8Flrlaf
「オラ、恋なんてしたことないから、本当に恋かわからないんだぁ」

「う〜ん」

「それに―――」

「それに?」

「―――鞠莉ちゃん、誰にも言わない?」

「もちろん!マリーは味方よ♪」

「……じゃあ、お話、聞いてほしいずら」


オラは、ルビィちゃんの名前を出すのは伏せたけど―――

あの小説を読んでからのことを、鞠莉ちゃんに話した。


「そ、そっか―――ええと」


いつも飄々と、ハキハキとしている鞠莉ちゃんが―――珍しく、言い淀んでいる。
0026名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/06(月) 01:13:19.72ID:L8Flrlaf
「それはきっと―――恋に、"なってしまった"のかもね」

「なってしまった……?」

「マルはその友達のこと、ずっと大切だったんでしょう?」

「うん」

「きっとそれは―――その気持ちは、friendship…"友情"だったんだと思うの」

「でも、小説がきっかけで、それはlove―――"愛情"に変わったんだわ―――なんてね☆」


鞠莉ちゃんの言葉を聞いて、なんとなく――――

はっきりしたような、気がした。


「あ、えっと―――マル?」

「そうかも、しれないずら」

「え?」

「マル、このもやもやが何かわかって、ちょっとだけスッキリしたずら」

「え、ええ!それならよかったわ!」

「お話聞いてくれてありがとう、鞠莉ちゃん」


マルは屋上を後にした。


「あれってゼッタイ―――ルビィのことよねぇ……」
0041名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 20:49:50.78ID:4x6tpkwX
「あ、帰ってきた」

「マルちゃん、なんのお話だったの?」


教室に戻ると、善子ちゃんとルビィちゃんが心配そうに声を掛けてくれた。


「ねえ、好きな人ができたって本当なの?」

「よ、よっちゃん!?その話はやめようってさっき決めたよね―――」

「あっ―――ごめん」

「うーん……わからないずら」

「わからない?」

「そう。マル、恋なんてしたことなかったから。だから、まだわからないずら♪」

「ふぅん……」

「あ、そうだマルちゃん!欲しい本が出たんだけど、今日一緒にマルサン行かない?」

「えっと―――」

「―――もしかして、お寺のご用事とかある?」
0042名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 20:53:59.14ID:4x6tpkwX
「そうじゃないけど、オラ―――放課後は教室で、図書委員の集まりがあるから」

「じゃあ―――図書室で待ってるね。読みたい本あるし♡ よっちゃんは?」

「私は―――やめとく。今日は行きたいところがあるから」

「そっか」

「あの、ルビィちゃん―――」


キーン、コーン――――。

お昼休み終了のチャイムが、マルの言葉を遮った。


「ん?どしたの、マルちゃん」

「―――ううん、なんでもないずら」
0043名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 21:01:14.48ID:4x6tpkwX
「次なんだっけ?」

「古典だよ。よっちゃん、あの宿題やった?」

「やってなーい。あんな難しい問題、わかるわけないもの」

「えへへ、だよね……マルちゃんはわかった?」

「えっと―――」


ぺらぺらとノートをめくり、ふたりに見せる。


「わぁ―――すごい!さすがマルちゃん♪ねね、ちょっと見せて?」

「もちろんずら!」

「えへへ、ありがとぉ♡」


机に手をついて、ぴょんぴょんと跳ねるルビィちゃん。

飛び跳ねる度にふわりと、ルビィちゃんの匂いがする。

かわいいなぁ、ルビィちゃん。
0044名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 21:05:34.65ID:4x6tpkwX
さすが鞠莉ちゃん―――

マルのお悩みを、すぱっと解決してしまったずら。


オラの心を覆っていたもやもやは―――

胸を刺すちくちくは、今はむしろ心地良い。


さっきまで、眩しくて見えなかった彼女の笑顔も、

この世の何よりも美しく見えた。


―――そっか。


この気持ちが―――そうなんだ。


マルは、幼馴染に恋をした。
0045名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 21:16:40.19ID:4x6tpkwX
今日の図書委員の議題は、残った本の行先を決めるものだった。

生徒向けのポスターを作ったり、図書館や他の学校に電話したり。

浦女の図書室って、あんまり人は来てなかったんだけど―――

図書委員のみんなや先生たちはすごく一生懸命に活動していて。

みんな本を大事にしてくれているんだな、って―――マルは感動しました。


そのおかげで思っていたよりも時間がかかっちゃって―――日も落ち始めていた。


ルビィちゃんが待っている図書室へと向かう。

その足は軽くて―――朝、教室に入るのを躊躇っていたのがウソのようだった。

ルビィちゃんに会いたい。

今すぐ、ルビィちゃんを、感じたい。
0046名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 21:26:44.66ID:4x6tpkwX
「ルビィちゃん、お待たせ!」

がらっ、と勢いよく扉を開ける。

奥の机に、紅い髪がちらりと見えた。


―――ルビィちゃんだ♡


「ごめんねルビィちゃん、すっかり遅くなっちゃった。マルサン閉まっちゃうし、急いで―――」


と―――そこまで言って、初めて。


安らかな寝息に気づいた。


開きっぱなしの本は、ルビィちゃんの涎で濡れている。


あぁ、またやっちゃった―――。
0047名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 21:35:38.04ID:4x6tpkwX
仕方ないなぁ、とマルはハンカチを取り出して―――

口から零れ、頬まで達した涎を拭く。

枕になった本をそっと抜き出して―――

これくらいだったら、大丈夫かな。

水分をハンカチでふき取って、濡れたページにコピー用紙を挟む。


本を乾かしていたら、春のことを思い出した。

ヨハネちゃん―――あのときはまだ、善子ちゃんだったっけ。

ヨハネちゃんがリクエストしたアイドル図鑑を、ルビィちゃんが涎でべたべたにしちゃって―――

そこから、ちょっとずつ、ヨハネちゃんと話すようになって。


まだ、1年も経っていないのに―――なんだか、懐かしいな。


ページを扇風機の風に当てて、水気を飛ばす。

うん、そろそろいいかな―――

コピー用紙を新しいものに交換して本を閉じ、重しをする。


これでよし。
0048名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 21:44:17.77ID:4x6tpkwX
置きっぱなしのハンカチを仕舞おうと思って―――

涎を拭いて湿った部分に、ふと指が触れた。


…………。


う、うわあああああああ〜〜〜〜!


何を考えてるの、オラは―――!


……でも。


―――誰も、見ていない。


――――ちょっとくらい。


そう思って。


ルビィちゃんの涎を拭いた、そのハンカチを―――――


ちろりと。


舐めた。
0049名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 21:51:24.21ID:4x6tpkwX
胸のドキドキが止まらない。


ルビィちゃんへの気持ちが―――

いけないことをしている背徳感が、興奮が―――


なにもかもが、おさまらない。


「ルビィちゃん」


耳元でつぶやき、ぷにと頬をつつく。

起きない。


大丈夫。


こうなったルビィちゃんは、なかなか起きない。
0050名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 22:00:11.04ID:4x6tpkwX
ルビィちゃんのことなら―――ダイヤちゃんだって負けないくらい知っている。


かがんでルビィちゃんの顔を覗き込む。


綺麗な寝顔。


マルの世界で、一番愛おしい寝顔。


ゆっくりと――――顔を、近づける。


ほんのちょっとだけなら、いいよね。


唇を少しだけ尖らせて、目を閉じる。


ルビィちゃん、


大好き―――――――――。
0051名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 22:13:27.33ID:4x6tpkwX
頭にぴりぴりとしたものが走る。


―――――快楽。


紅玉のような彼女の唇は、私の脳を溶かしてしまうような、甘さだった。


いや――――実際、溶かされてしまったのかもしれない。


ルビィちゃんのことしか、考えられない。


愛しくてたまらない。


惜しいけれど唇を離して、そっと目を開けると―――――


「……」


ルビィちゃんと、目が合った。
0052名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 22:22:33.49ID:4x6tpkwX
慌てて飛び退いたけれど―――唇を、糸が伝っていた。

言い逃れはできない。


誰も見ていないわけがなかったんだ。


ここはミッションスクールの浦の星女学院。


マルはお寺の娘。


誰も見ていないように見えても―――神様はちゃんと見ている。


悪いことをしたら、罰が当たるずら。


「ま、マルちゃん―――」


ルビィちゃんが立ち上がった。


血の気が引くのを感じる。


近づいてくるルビィちゃんが怖くて、後ずさってしまう。
0053名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 22:28:55.59ID:4x6tpkwX
――――怖い。


ルビィちゃんに嫌われた。

マルはいけないことをした。


勘違いしていたんだ。

あの小説の女の子に似ているからって、自分を主役だって勘違いしてた。


でも本当は違う。

オラは所詮ただの脇役で――――

主役のルビィちゃんに、触れていい人間じゃなかった。


それを履き違えて、ルビィちゃんを汚してしまった。

ルビィちゃんに嫌われた。


ルビィちゃん、


ごめんなさい―――――――
0054名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 22:39:08.62ID:4x6tpkwX
えっと―――


ルビィ、マルちゃんの図書委員が終わるのを待ってる間、本を読んでたんだけど。


寝ちゃってたみたいで。


起きたらなんだか、息苦しくて。


唇がすごく熱くて。


目を開けたら、目の前にマルちゃんが居て。


何が起こってるのか、全然わからなくて――――


じーっとしてたら、マルちゃんの顔が離れて――――それと同時に、息苦しさも無くなった。


なんだか顔が真っ赤なマルちゃんを見つめていたら、ばっちり目が合って。


マルちゃんの口から、糸が引いているのが見えた。
0055名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 22:40:34.68ID:4x6tpkwX
ルビィの口も、なんだか湿っているような気がして――――


口元に手を当ててみる。


――――ルビィ、またよだれ垂らして寝てた?


じゃ――――ないよね。


いや――――そうかもしれないけど。


じゃあ、なんでマルちゃんの口から、ルビィの方に糸が伸びていたの?


……。


あの息苦しい感じ。


唇に残ってる感覚。


もしかして――――


ち、ちち――――――ちゅー、してた、とか。
0056名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 22:43:51.77ID:4x6tpkwX
―――――あ、あわわわわわわ!!


みるみる顔が熱くなるのがわかった。


熱くて、熱くて、このまま燃えて死んじゃうんじゃないかってくらい、熱かった。


「ま、マルちゃ――――」


うまく、声が出せない。

だからマルちゃんに声が聞こえるように、近づこうとしたら――――

さっきまで真っ赤だったマルちゃんの顔は真っ青になって。


ふらふらと後ずさりして――――


「ごめんなさい――――」


ばたん―――って、糸が切れたみたいに倒れた。


「マルちゃん!?」
0057名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 23:00:06.26ID:4x6tpkwX
ぼんやりと―――意識が戻ってきた。

目を開けようとしたけれど―――

窓から差す夕焼けの眩しさに、また目を閉じてしまう。


「―――マルちゃん!」

「ルビィ、ちゃん―――」

「よかったぁ、目が覚めて―――突然倒れちゃったから、びっくりしたよぉ」


涙目のルビィちゃんが、上から覗きこんでくる。

気まずくて、ぷいと顔を逸らすと―――

目の前にあるのは、ルビィちゃんのお腹。


「あ、ごめんね。ルビィの膝じゃ、寝心地悪かったかな―――」

「ひゃあああ!」


ごん―――と。

慌てて飛び起きたら、ルビィちゃんとオラの頭が、鈍い音を立ててぶつかった。
0058名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 23:03:49.88ID:4x6tpkwX
「いたた……だ、大丈夫、マルちゃん―――」


ルビィちゃんが、オラを心配して伸ばしてくれたその手を―――払ってしまった。


「―――マル、ちゃん……?」


ルビィちゃんがまた、泣きそうになる。


「―――駄目だよ、ルビィちゃん。オラ―――ルビィちゃんに触られる資格なんて、ないずら」


あんなことをしてしまったんだから――

本来なら、もうここで―――


言葉を交わす資格すら、ない。
0059名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 23:14:50.14ID:4x6tpkwX
「そんなこと、言わないで」


ルビィちゃんは目を擦って、泣くのを必死に我慢して―――震える声でオラに話しかける。


「マルちゃん、覚えてるかな―――ルビィたちが、仲良しになったきっかけ」

「そんなの―――忘れるわけ、ないよ」


幼稚園のお泊り会の夜。

怖くておトイレに行けなかったマルに、手を差し伸べてくれたルビィちゃん。

自分だって怖くて仕方なかったのに、オラを助けてくれたルビィちゃん。


忘れたくても、忘れられない。

生まれ変わったって、絶対覚えてる。


「あの時もルビィ、こうやって手を伸ばしてたよね」


オラが払った手を、ルビィちゃんは―――再び、伸ばす。


「マルちゃんに資格が無いなら、ルビィがあげる」
0060名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 23:18:09.03ID:4x6tpkwX
「だって、マルちゃん、は―――ルビィの、一生の、大切なっ、人、だからっ……」

「ぜったい、ずっと、いっしょ、だからっ……!」


涙がぼろぼろと零れる。


オラも、つられて泣いてしまう。


「でもっ…でもオラ、ひどいことを―――」


「ひどくないよっ!!」


「マルちゃん、キスってね、っ―――大好きな人と、するんだよっ……」

「マルちゃんが、ルビィにキスしたのは、嫌いだから?」


それは―――それだけは、絶対に、違う。


「エヘヘ―――;だよね♡」
0061名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 23:24:37.75ID:4x6tpkwX
「ルビィたち、女の子同士だし―――ビックリもしたけど」


「でも、ルビィも、マルちゃんのこと―――大好きだから」


――――――――――――――――――――――――――――。


「えへへ、お返しっ♡」

「あ、あ―――」

「……な、なんて―――恥ずかしいね」


言うに事を欠いたマルは―――


「も―――もう、こんな時間ずら。早く行かないと、書店、閉まっちゃうよ」


なんて言って、誤魔化そうとした。


「いいよぉ、今度で」
0062名無しで叶える物語(風靡く断層)
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2017/11/07(火) 23:34:24.79ID:4x6tpkwX
「でも―――」


「本はいつでも読めるし、買えるでしょ?」

「今日はルビィ、マルちゃんとずっと一緒に居たい気分なんだぁ♪」


「―――ルビィちゃんが、そう言うなら」


「うんっ♪新しい本の代わりに―――この図書室のオススメの本、教えて?」


「でも、オラの好きな本って、ルビィちゃんにはちょっと―――」


「いいからっ!」


すくっと立ち上がったルビィちゃんはまた、手を伸ばす。


「―――いこ♡」


オラは、その手をぎゅっと握る。


「―――うんっ♡」
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