そして、辛くても掛け替えの無い時間は終わりを告げる。

彼には自分程の才能がなかったのだ。

与えられる課題をクリアできず、徐々に自分との差が離れていく。

彼の背後に闇が広がる。そこから現れる無数の手。

自分がどれだけ手を伸ばしても、それは決して届くことはない。

無数の手が、一斉に彼に取り付き、闇へ引きずり込もうとする。

手を伸ばし、その名を叫んでも届く気配も無い。

足が、体が、最後には彼の顔が、闇に飲み込まれていく。

声にならない絶叫が響く…