石じじいの話です。

じじいは石探しのために各地の野山を歩きました。その際、石ではない、いろいろなものを見つけたそうです。
私の聞き取りメモには、いろいろな発見例があるのですが、ここでは、無害なものをひとつ。

じじいは、ヤクザの破門状をひろったことがあるそうです。
林道を歩いている時、道の脇に大量の家庭ごみが捨てられていました。
いわゆる、粗大ごみの不法投棄です。
まあ、よくあることなのですが、その粗大ごみの内容がちょっとめずらしい。
男物や女物の衣類、タンスや食器類など、まだ使えそうなものばかりです。
衣類にはクリーニングから戻ってきた状態のものもある。
それに、子供の衣類もありました。
女の子のものらしく、小学校の制服やランドセル、教科書やノート、文房具、おもちゃ、子供用の布団もありました。
夜逃げのあとのようです。
そのなかに、雨に濡れて汚れてはいますが、和紙でできた立派な手紙がありました。
その文面に曰く(縦書きでしょう;書き取りに誤りがあると思います):

破門状
仙道寅吉(仮名)
右のもの、日頃より任侠道上あるまじき行為多々あり、再三にわたり注意しておりましたが、反省の色まったくなく、このたび当組を破門することとなりました。
今後、この者は、当組とは一切関係がないものとご承知いただきますようお願い申し上げます。
なお、この者が、お近くに立ち寄った際は、ご一報くだされば幸いです。
●月●日吉日
XX組

このゴミの出どころとなった家族は、この破門状を出した側なのか?出された側なのか?