あのオフロード多目的作業車「ウニモグ」はどのようにカーボンニュートラル化するのか? ダイムラーが採った道とは!

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しかし、ウニモグは、電動化が不可能なトラックだ。

PTOも油圧システムも、その動力の源は、最終的にウニモグの主機たるディーゼルエンジンに行き着く。
その主機が電気モーターになるだけでは……という話にならないのは、電動車にする場合、PTOと油圧システムが、それぞれを駆動するための専用モーターを必要とするからだ。

しかも、これらと接続することになる作業装置のほうも、駆動用モーターの制御に対応した装置の開発・製造には、高度な技術と多額のコストが必要だ。
そうなると、もともと決して安くはない特殊な作業装置が、いよいよ非現実的な値段になってしまう。

このように、もしも今ウニモグを電動化してしまうと、作業装置で維持されてきた公共インフラを、メンテナンスあるいは修繕できなくなる。
これは決してオーバーな表現ではない。
ウニモグにとって代われる電動の多目的作業車など、これもまた、どこにも存在しないからである。

そこでダイムラーが選んだのは、EV化でもFCEV化でもなく、ウニモグを引き続きエンジンで動かすが、かわりに燃料として水素を使う、いわゆる「水素エンジン」の採用である。

その水素エンジンを搭載したウニモグのプロトタイプ「WaVeデモンストレーター」が2023年3月、ついに公表された。

水素エンジンも、ベース車が搭載する排気量7.7リッター・直列6気筒ターボ付ディーゼル「OM936LA」を使って、火花点火式のオットーサイクル機関へ改造したものだ。

水素燃料は、重量換算12.4kgの圧縮水素ガス(気体)で、4本の圧力タンクに70メガパスカル(約700気圧)の圧力で貯蔵する。
これをキャブ後方へ搭載するため、荷台の長さをいくらか短縮しており、積載性という機能についてはやや損なわれた。
この12.4kgという量は、1日あたりの作業を含めた運行(8~10時間)にちょうど必要な量とされる。